(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】患者の照射計画立案に使用するための結果データを提供する方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61N5/10 Q
(21)【出願番号】P 2020510538
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2018069777
(87)【国際公開番号】W WO2019037977
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-06-08
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516308401
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】エイミス,クリストファー ジュード
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ホルツァー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】カートマン,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ケラー-ライヒェンバッハー,マルク-アレクシ
(72)【発明者】
【氏名】クライスラー,ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】リッター,アンドレ
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-252420(JP,A)
【文献】特開2011-010885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0153969(US,A1)
【文献】特開2017-086872(JP,A)
【文献】特開2011-217805(JP,A)
【文献】特開2014-174174(JP,A)
【文献】特開2010-246883(JP,A)
【文献】特開2009-112627(JP,A)
【文献】特表2015-512670(JP,A)
【文献】特開2016-000118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算装置の作動方法であって、前記演算装置が、
量子計数型X線検出器を備えたCT装置により取得された患者のCT測定データを収集するステップであって、前記CT測定データの前記収集に、前記量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるスペクトル分解されたCT測定データの収集が含まれる、ステップと、
前記CT測定データを処理するステップであって、この場合、CT測定データのこの処理に際して、前記CT測定データの取得時に前記量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容が考慮され、さらに、前記CT測定データの処理に際して、患者の照射計画立案に使用するための結果データが生成
され、前記CT測定データの前記処理に、前記スペクトル分解されたCT測定データから定量的材料係数の空間分解分布を計算すること
と、前記スペクトル分解されたCT測定データから第1の定量的材料係数の第1の空間分解分布および第2の定量的材料係数の第2の空間分解分布を計算することが含まれ
る、ステップと、
前記結果データを患者の照射計画立案に使用することができるように、前記結果データをインターフェースへ提供するステップであって、前記結果データの前記提供に、前記定量的材料係数の空間分解分布を前記インターフェースへ提供すること
と、第1の線量計算アルゴリズムのために前記第1の定量的材料係数の第1の空間分解分布を提供すること、及び、第2の線量計算アルゴリズムのために前記第2の定量的材料係数の第2の空間分解分布を提供することが含まれている、ステップと、
を実行する方法。
【請求項2】
演算装置の作動方法であって、前記演算装置が、
量子計数型X線検出器を備えたCT装置により取得された患者のCT測定データを収集するステップであって、前記CT測定データの前記収集に、前記量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるスペクトル分解されたCT測定データの収集が含まれる、ステップと、
前記CT測定データを処理するステップであって、この場合、CT測定データのこの処理に際して、前記CT測定データの取得時に前記量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容が考慮され、さらに、前記CT測定データの処理に際して、患者の照射計画立案に使用するための結果データが生成され、前記CT測定データの前記処理に、前記スペクトル分解されたCT測定データから定量的材料係数の空間分解分布を計算することと、前記スペクトル分解されたCT測定データから第1の定量的材料係数の第1の空間分解分布および第2の定量的材料係数の第2の空間分解分布を計算することが含まれ、前記第1の定量的材料係数が電子密度であり、前記第2の定量的材料係数が有効原子数である、ステップと、
前記結果データを患者の照射計画立案に使用することができるように、前記結果データをインターフェースへ提供するステップであって、前記結果データの前記提供に、前記定量的材料係数の空間分解分布を前記インターフェースへ提供することが含まれている、ステップと、
を実行する方法。
【請求項3】
次の追加のステップ、
患者の照射計画立案を実行するステップであって、この場合、前記結果データが前記インターフェースから読み出され、患者の照射計画立案に際して使用されるステップ、
を含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項
1から3のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1の定量的材料係数及び前記第2の定量的材料係数が、互いに線形に独立した2つのベース材料に基づいている方法。
【請求項5】
請求項
1から
3のいずれか1項に記載の方法であって、前記CT測定データの処理に、前記第1の定量的材料係数の第1の空間分解分布および前記第2の定量的材料係数の第2の空間分解分布の別々の処理、及び、この別々の処理で生成された部分結果データを統合することによる結果データの生成が含まれる方法。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の方法であって、前記CT測定データの収集に、定量的材料係数の空間分解分布を計算するために、前もって取得されたスペクトル分解されたCT測定データをデータベースから読み出すことが含まれる方法。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の方法であって、前記CT測定データの処理に、前記スペクトル分解されたCT測定データから前記定量的材料係数の空間分解分布を計算することに加えて、前記スペクトル分解されたCT測定データにおける標的ボリューム及び/又はリスクボリュームを識別することが含まれる方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の方法であって、前記スペクトル分解されたCT測定データが、前記スペクトル分解されたCT測定データが標的ボリューム及び/又はリスクボリュームを識別するために様々な組織タイプの間で特に適切なコントラストを有するような、量子計数型X線検出器の検出パラメータを用いて取得されている方法。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の方法であって、前記スペクトル分解されたCT測定データが、前記CT装置の1つの軸方向測定層において、患者の全身と、患者の位置決めに使用される位置決め補助具の両方を包含する測定視野をカバーしている方法。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか1項に記載の方法であって、前記CT測定データの処理に、前記スペクトル分解されたCT測定データに含まれるスペクトル情報を使用して、前記スペクトル分解されたCT測定データのビームハードニング補正を行うことが含まれており、この場合、前記定量的材料係数の空間分解分布の計算は前記ビームハードニング補正により補正された、スペクトル分解されたCT測定データに基づいて行われる方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法であって
、
前記CT測定データの処理に、前記CT測定データ内の標的ボリューム及び/又はリスクボリュームを識別することが含まれ、この場合、結果データの提供に、前記識別された標的ボリューム及び/又はリスクボリュームをインターフェースへ提供することが含まれる、
方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の方法であって、前記標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が、前記標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの組織を周囲組織から区別することを含み、この場合、前記標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの組織の周囲組織からの区別は、前記CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を使用して行われる方法。
【請求項13】
請求項
11または
12に記載の方法であって、前記標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が、脂肪組織と筋肉組織を区別することを含み、この場合、前記脂肪組織と筋肉組織の区別は、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を使用して行われる方法。
【請求項14】
請求項
11から
13のいずれか1項に記載の方法であって、前記標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が、灰白質と白質を区別することを含み、この場合、前記灰白質と白質の区別は、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を使用して行われる方法。
【請求項15】
請求項
11から
14のいずれか1項に記載の方法であって、
前記CT測定データの収集に、量子計数型X線検出器による取得から得られるスペクトル分解されたCT測定データの収集が含まれ、
前記CT測定データの処理に、このスペクトル分解されたCT測定データに含まれるスペクトル情報を使用することによる、スペクトル分解されたCT測定データのビームハードニング補正が含まれ、
前記標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別に、前記ビームハードニング補正によって補正された、スペクトル分解されたCT測定データにおける複数の骨構造の境界が含まれる、
方法。
【請求項16】
請求項
15に記載の方法であって、患者の頭蓋底領域内の複数の骨構造が互いに区切られる方法。
【請求項17】
請求項
11から
16のいずれか1項に記載の方法であって、
前記CT測定データが、第1のCT測定データセットと第2のCT測定データセットとを有しており、この場合、前記第1のCT測定データセットは、前記第2のCT測定データセットよりも高い量子計数型X線検出器のエネルギー閾値によって取得されたものであり、
前記CT測定データの処理は、前記第1のCT測定データセットと第2のCT測定データセットとの重み付けされた組合せを生成することを含み、この場合、組み合わされたCT測定データが生成され、
前記標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が前記組み合わされたCT測定データにおいて行われる、
方法。
【請求項18】
請求項
17に記載の方法であって、
前記CT測定データの処理が、前記第1のCT測定データセットからのビームハードニング補正のための情報の抽出と、前記抽出された情報に基づいた、組み合わされたCT測定データのビームハードニング補正とを含み、
前記標的ボリューム及び/又は前記リスクボリュームの識別が、前記ビームハードニング補正により補正され組み合わされたCT測定データにおいて行われる、
方法。
【請求項19】
請求項
17または
18に記載の方法であって、前記第1のCT測定データセットと前記第2のCT測定データセットの重み付けされた組合せが、空間的に変化する複数の重み係数を用いて作成される方法。
【請求項20】
請求項
19に記載の方法であって、前記CT測定データの処理により、最初に、前記標的ボリューム及び/又は前記リスクボリュームの大まかな識別が行なわれ、この場合、前記大まかにセグメント化された標的ボリューム及び/又はリスクボリュームに基づいて、前記空間的に変化する重み係数が定義され、次に、前記組み合わされたCT測定データにおいて前記標的ボリューム及び/又は前記リスクボリュームの詳細な識別が行われる方法。
【請求項21】
演算装置の作動方法であって、前記演算装置が、
量子計数型X線検出器を備えたCT装置により取得された患者のCT測定データを収集するステップであって、前記CT測定データの収集が、前記量子計数型X線検出器による高解像度のCT測定データの取得を含み、この場合、この高解像度のCT測定データを取得するために、前記量子計数型X線検出器の高解像度モードが使用され、前記高解像度モードでは前記量子計数型X線検出器の各ピクセルが別々にカウントされるステップと、
前記CT測定データを処理するステップであって、この場合、CT測定データのこの処理に際して、前記CT測定データの取得時に前記量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容が考慮され、さらに、前記CT測定データの処理に際して、患者の照射計画立案に使用するための結果データが生成され
、前記CT測定データの処理が、前記高解像度CT測定データに基づいて定量的材料係数の空間分解分布を計算することを含み、前記定量的材料係数の空間分解分布の計算が、前記高解像度CT測定データに基づいて阻止能の空間分解分布を計算することを含む、ステップと、
前記結果データを患者の照射計画立案に使用することができるように、前記結果データをインターフェースへ提供するステップ
であって、前記結果データの提供が、前記定量的材料係数の空間分解分布を前記インターフェースに提供することを含み、前記結果データの提供が、患者の粒子線照射の計画を立案するために前記阻止能の空間分解分布を提供することを含む、ステップと、
を実行する方法。
【請求項22】
請求項
21に記載の方法であって、
患者の骨組織の定量的材料係数の空間分解分布の計算のために、前記高解像度CT測定データが変更されずにそのまま入力され、
患者の軟部組織の定量的材料係数の空間分解分布の計算のために、前記高解像度CT測定データが解像度を低下されて入力される、
方法。
【請求項23】
請求項
22に記載の方法であって、前記高解像度CT測定データの前記低下された解像度が、フィルタカーネルを用いて前記高解像度CT測定データをフィルタリングすることにより得られる方法。
【請求項24】
請求項
21または22に記載の方法であって、前記高解像度CT測定データに基づく前記定量的材料係数の空間分解分布の計算が、患者の以下の身体領域、
患者の眼領域、
患者の三叉神経の経路によって記述される身体領域、
患者の頭蓋底、
患者の肺領域、
の少なくとも1つについて行われる方法。
【請求項25】
演算装置の作動方法であって、前記演算装置が、
量子計数型X線検出器を備えたCT装置により取得された患者のCT測定データを収集するステップであって、前記CT測定データの収集に、量子計数型X線検出器による取得により明らかになる、スペクトル分解され且つ時間分解されたCT測定データの収集が含まれる、ステップと、
前記CT測定データを処理するステップであって、この場合、CT測定データのこの処理に際して、前記CT測定データの取得時に前記量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容が考慮され、さらに、前記CT測定データの処理に際して、患者の照射計画立案に使用するための結果データが生成
され、前記CT測定データの処理に、前記スペクトル分解され且つ時間分解されたCT測定データに基づく定量的材料係数の空間及び時間分解分布の計算が含まれる、ステップと、
前記結果データを患者の照射計画立案に使用することができるように、前記結果データをインターフェースへ提供するステップであって、前記結果データの提供に、前記定量的材料係数の空間及び時間分解分布を前記インターフェースに提供することが含まれる、ステップと、
を実行する方法。
【請求項26】
請求項
25に記載の方法であって、前記スペクトル分解され且つ時間分解されたCT測定データが、患者の以下の身体領域、
患者の肝臓領域、
患者の膵臓領域、
患者の胸部領域、
の少なくとも1つから取得される方法。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか1項に記載の方法であって
、
前記患者のCT測定データの収集が、前記量子計数型X線検出器を有するCT装置によるCT測定データの取得を含み、前記CT測定データの取得中に前記量子計数型X線検出器の検出パラメータが変更される
、
方法。
【請求項28】
請求項
27に記載の方法であって、前記CT測定データの取得中に、前記量子計数型X線検出器のエネルギー閾値が変更される方法。
【請求項29】
請求項
27または
28に記載の方法であって、前記CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の解像度が、前記量子計数型X線検出器のピクセルの組み合わせに応じて変更される方法。
【請求項30】
請求項
27から
29のいずれか1項に記載の方法であって、前記CT測定データの取得中に前記量子計数型X線検出器の検出パラメータが、患者の縦方向に沿った第1のz位置におけるCT測定データを取得するために検出パラメータの第1の設定が行なわれ、さらに、患者の縦方向に沿った第2のz位置におけるCT測定データを取得するために検出パラメータの第2の設定が行われるように、変更される方法。
【請求項31】
請求項
27から
30のいずれか1項に記載の方法であって、前記CT測定データの取得中に前記量子計数型X線検出器の検出パラメータが、そのCT装置の検出器-エミッタ系の第1の回転位置におけるCT測定データを取得するために検出パラメータの第1の設定がおこなわれ、さらに、そのCT装置の検出器-エミッタ系の第2の回転位置におけるCT測定データを取得するために検出パラメータの第2の設定がおこなわれるように、変更される方法。
【請求項32】
請求項
27から
31のいずれか1項に記載の方法であって、前記CT測定データの取得中に前記量子計数型X線検出器の検出パラメータが、患者の第1の身体領域のCT測定データを取得するために検出パラメータの第1の設定が行われ、さらに、患者の第2の身体領域のCT測定データを取得するために検出パラメータの第2の設定が行われるように、変更される方法。
【請求項33】
請求項
32に記載の方法であって、前記第1の身体領域および前記第2の身体領域が、CT測定データの取得前に、患者の既存の医学的画像データに基づいて、及び/又は、アトラスデータベースを使用して、確定される方法。
【請求項34】
請求項
32または
33に記載の方法であって、前記第1の身体領域が照射の標的ボリュームを含み、前記第2の身体領域が照射の標的ボリュームの外側にある身体領域を含む方法。
【請求項35】
請求項
32から
34のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1の身体領域は患者が照射されるときにそれが照射範囲内に位置決めされるように構成されており、前記第2の身体領域は患者が照射されるときにそれが照射範囲外に位置決めされるように構成されている方法。
【請求項36】
請求項
32から
35のいずれか1項に記載の方法であって、前記第1の身体領域および前記第2の身体領域は、患者への照射に際して、前記第1の身体領域に対しては前記第2の身体領域に対するよりも高い線量が与えられるように構成されている方法。
【請求項37】
請求項
32から
36のいずれか1項に記載の方法であって、前記CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の検出パラメータが、患者の前記第1の身体領域からのCT測定データの取得のために、患者の前記第2の身体領域からのCT測定データの取得のためよりも高い解像度が設定されるように、変更される方法。
【請求項38】
請求項1から37のいずれか1項に記載の方法であって
、
前記インターフェースが、患者を照射するために使用された放射線治療装置の画像形成デバイスによって収集される更なる測定データを収集し、この場合、患者の照射計画立案のために前記結果データが前記更なる測定データに関連して設定され、
患者を照射するために使用された前記放射線治療装置の画像形成デバイスが同様に量子計数型X線検出器を有しており、この場合、CT測定データ及び更なるCT測定データ取得時に量子計数型X線検出器を使用することによって明らかになる前記CT測定データ及び前記更なるCT測定データの特有の情報内容を利用することによって、前記結果データを前記更なる測定データと関連付けて設定することができる、
る方法。
【請求項39】
請求項1から38のいずれか1項に記載の方法であって
、
前記CT測定データが、異なる時点に収集された少なくとも2組のCT測定データセットを備えており、この場合、前記少なくとも2組のCT測定データセットは、前記CT測定データの取得時に少なくとも1つの前記量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を利用することによって登録され、この場合、前記少なくとも2組の登録されたCT測定データセットが前記インターフェースに提供される方法。
【請求項40】
請求項1から39のいずれか1項に記載の方法であって
、
前記CT測定データの取得中に造影剤が使用されており、この場合、前記CT測定データの取得時に少なくとも1つの前記量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになる前記CT測定データの特有の情報内容を利用することによって、前記CT測定データの処理に、造影剤を有する組織と残りの組織におけるCT測定データの造影剤分離が含まれる方法。
【請求項41】
請求項1から40のいずれか1項に記載の方法であって
、
前記CT測定データの取得中に造影剤が使用されており、この場合、前記CT測定データの取得時に少なくとも1つの前記量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになる前記CT測定データの特有の情報内容を利用することによって、前記CT測定データの処理に、仮想非造影CT画像を生成することが含まれる方法。
【請求項42】
請求項1から
41のいずれか1項に記載の方法を実行するために構成された演算装置であって、少なくとも1つの演算モジュールを備えた演算装置。
【請求項43】
請求項
42に記載の演算装置を備えたCT装置。
【請求項44】
プログラミング可能な演算装置のメモリに直接ロードすることができるコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品が前記演算装置において実行される時に請求項1から
41のいずれか1項に記載の方法を実行するためのプログラムコード手段を備えているコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の照射計画立案に使用するための結果データを提供する方法、演算装置、CT装置、及び、コンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療では、患者のがんなどの標的ボリュームを電離放射線で照射する。この場合、体外から患者の身体の照射する外部放射線治療が知られている。同様に、ブラキ治療法(Brachytherapie)とも呼ばれる内照射療法も知られている。ブラキ治療法では、放射性物質を含む放射線源を患者の身体に取り入れ、患者の体内の標的ボリューム内のがん組織を局所的に損傷または破壊することができる。
【0003】
基本的には、標的ボリュームに含まれるがん組織が破壊されるような十分な放射線量を標的ボリュームに確実に供給することが患者の照射の際の挑戦課題である。同時に、少なくとも1つのリスクボリュームを取り囲んでいるリスク臓器は可能な限り傷めないようにすべきである。これは、照射の計画立案及び/又は準備において高い精度が非常に重要であることを意味する。
【0004】
画像を使用して放射線治療、すなわち、患者への照射、を計画立案する及び/又は準備することが知られている。そのために、通常、3次元画像生成法で得られた患者の医学的測定データを用いて照射計画が作成される。通常、この目的のために、コンピュータトモグラフィー装置(CT装置)によって取得されたコンピュータトモグラフィー測定データ(CT測定データ)が使用される。このコンピュータトモグラフィー測定データに基づいて、一方で照射の標的ボリュームを決定することができ、他方でその周囲のリスクボリュームを局在化することができる。さらに、CT測定データの強度値(いわゆる「ハウンズフィールド単位(Haunsfield Unit)」で測定される)は、対応する位置でのX線の吸収に基づくので、患者の体内の対応する位置での電子密度に良好に近似する。このように、特に照射計画立案のために、このCT測定データを電子密度マップに変換することができる。照射中の放射線の相互作用の強度は身体内の電子密度と相関があるので、放射線が患者の身体を通過するときの放射線の減衰は、CT測定データから比較的容易に計算することができる。さらにこれらのCT測定データは、幾何学的歪みが僅かしかないので、照射を計画立案し照射を実行するための基準幾何学的形状の適切な定義を可能にする。この特性に基づいて、CT測定データはこれまで照射計画立案に際して好適に使用されてきた。
【0005】
CT装置で使用するために、これまで使用されてきた、複数の集積型検出素子を有する従来型の検出器タイプに加えて、最近、次のような量子計数型X線検出器が提案されている。例えば、特許文献1で知られているCT装置では、その検出器は受け取ったX線放射を、量子エネルギーが所定の閾値を超えるX線量子の数に関して、検出することができる。特許文献2には、量子計数型X線検出器を操作する方法が記載されている。特許文献3から、測定場のエネルギーの選択的なX線画像の生成方法が知られている。
【0006】
量子計数型X線検出器(直接変換型X線検出器又は光子計数型X線検出器ともいう)は、高エネルギーの光子が量子計数型X線検出器の半導体材料に衝突した時に、高エネルギーの光子から電子・ホール対への直接換算を可能とするものである。次に、この半導体材料内で生成された電子は、集積回路内で電気信号パルスに変換することができる。この信号パルスのパルス高さは、高エネルギー光子のエネルギーと相関がある。複数の適切なエネルギー閾値を決定することにより、異なるエネルギー帯における個々の高エネルギー光子をカウントすることができる。
【0007】
コンピュータトモグラフィーの分野では、量子計数型X線検出器を使用することにより、様々な利点がある。例えば、前の段落で説明したように、検出された光子のエネルギーを直接検出することができるため、このCT装置によって得られるCT測定データは固有の分光感度を有することができる。さらに、このCT装置によって得られるCT測定データは、この量子計数型X線検出器の検出素子が従来のX線検出器の検出素子よりも通常は小さいので、本質的に高解像度である。さらに、量子計数型X線検出器は通常、低い信号強度において良好な性能を有する。電子ノイズは最初に設定されたエネルギー閾値よりも小さいので、この電子ノイズは、通常、ほぼ完全に抑制されるからである。さらに、個々の光子をカウントすることにより、量子計数型X線検出器固有のエネルギー重み付けを減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第1489969B1号明細書
【文献】独国特許第102007034982B4号明細書
【文献】独国特許第102009032252B3号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、患者の照射計画立案に使用するのに特に適した結果データを提供する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は独立請求項の特徴によって解決される。有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0011】
患者の照射計画立案に使用するための結果データを提供するための本発明による方法は、以下の方法ステップ、
量子計数型X線検出器を備えたCT装置により取得された患者のCT測定データを収集するステップと、
前記CT測定データを処理するステップであって、この場合、CT測定データの処理に際して、CT測定データ取得時に前記量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容が考慮され、さらに、このCT測定データの処理に際して、患者の照射計画立案に使用するための結果データが生成されるステップと、
前記結果データを患者の照射計画に使用することができるように、この結果データをインターフェースへ提供するステップと、
を含む。
【0012】
一般的に、量子計数型X線検出器を使用することにより、患者の照射計画立案に使用するのに特に適したCT測定データの取得が可能となる。さらに、このCT測定データの特有の情報内容に特に有利に適合する、取得されたCT測定データの適切な処理により、患者の照射計画立案に使用するのに特に適した結果データを生成することができる。
【0013】
このCT測定データ、及び/又は、このCT測定データを処理して得られた結果データに対して様々な要件を課すことができるので、これらのデータは患者の照射計画立案における使用に特に適している。
【0014】
このCT測定データが高解像度及び/又は高い軟部組織コントラスト(造影剤の有無にかかわらず)を有することは、CT測定データの処理において、照射のための標的ボリューム及び/又はリスクボリュームを可能な限り正確に識別し区別することができるので、有利である。この前提条件はまた、例えば、胸部、腹部または骨盤領域において患者の臓器の運動が発生した場合にも重要である。このCT測定データは、複数の臓器の臓器境界の識別に特に適しており、これは、例えば、手動、半自動又は自動の輪郭形成及び/又はセグメンテーションによって実行される。すなわち、例えば、筋肉組織と脂肪組織との間、または、灰白質と白質との間の境界設定が、CT測定データの処理に際して必要である。さらに、例えば、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの輪郭形成に際して、機能的なCT測定データ、例えば、灌流測定データ又は換気測定データ、を有利に使用することができる。
【0015】
照射を計画立案する際の線量計算に当たっては、特に、プロトン又は炭素イオンを用いた粒子線治療の場合には、CT測定データの処理において、例えば、電子密度及び/又は質量密度及び/又は実効原子番号及び/又は阻止能(Stopping Power)のような定量的な材料係数を、CT測定データから確実に導き出すことことが特に重要である。そして、これらの定量的材料係数は、患者の照射計画を立案するための線量計算の基礎として役立つ。特に粒子線治療の場合、すなわち患者にイオン化粒子を照射する場合、このCT測定データに基づいて、阻止能及び/又はこれに対応する水等価経路長(water equivalent path length, WEPL)を計算することが有利である。また、量子計数型X線検出器を使用することにより、各々のCT測定データ取得のために正規化画像を取得することが可能となり、その結果、輪郭形成または線量計算のための定量的材料係数の計算が正規化された方法で行えるようになる。
【0016】
照射を準備する際に又は照射中に、量子計数型フラットパネル検出器によって取得されるCT測定データ、特にコーンビームCT測定データは、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームを追跡(トラッキング)するために特に有利に使用することができる。量子計数型X線検出器によって取得されたCT測定データは次に、照射のための、患者の特に標的ボリュームの位置決めを検証するために特に有利に使用することができる。同様にオンライン線量測定の実施も考えられる。
【0017】
最後に、CT測定データは、例えばフォローアップ検査において、治療経過を観察(モニタリング)するために特に有利に使用することができる。すなわち、このCT測定データにより、照射に対する組織の反応、例えば、炎症、腫瘍退縮または腫瘍進行の状態を追跡することができる。したがって、患者への照射の照射パラメータを引き続き、適応照射という意味において、適切に適合させることができる。また、照射に対する患者の反応を、がんの大きさ及び/又はがんの体積及び/又は血管新生のようながんパラメータを評価することにより、さらに、これらのがんパラメータを以前の測定値と比較することによって、調査することができる。患者に対する照射治療の決定をサポートする又は可能にするために、量子計数型X線検出器を使用することにより取得されたCT測定データは、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームにおける特有の画像特徴、例えばテクスチャーパラメータ、についての知見と組み合わせて、特に適切に使用することができる。
【0018】
以下では、どのように量子計数X線検出器を使用することによって、前掲の要件を少なくとも部分的に特に適切に満たすCT測定データを取得することができるか、を説明する。患者の照射計画立案に使用するための、このCT測定データの特に適切な処理についても説明する。
【0019】
このCT装置は、患者の照射計画を立案するための計画画像データを取得するために使用される一般的なCT装置とすることができる。この場合、このCT測定データは通常、時間的には患者への初回照射が開始される前に取得される。次に患者への照射は通常、このCT測定データ取得の少なくとも1日後に行われる。更に、この場合、一般的には、このCT装置は、放射線治療装置を用いて患者を照射する治療室から空間的に分離した検査室内に配置されている。
【0020】
しかしながら、このCT装置は、治療室内に、特に、放射線治療装置を用いて患者の照射が行われる放射室内に、放射線治療装置とともに設置することも考えられる。その場合、このCT装置は、その放射線治療装置の一部とするか、または、その放射線治療装置とは別に設置することができる。患者支持装置は、放射線治療装置とCT装置との間を行ったり来たりすることができる。この段落に記載されたケースでは、取得されたCT測定データは、患者照射の適応計画のために、特に既存の照射計画立案を適合させるために、及び/又は、照射のための患者の位置決めを検証するために、特に有利に使用することができる。
【0021】
特別な場合には、CT装置にCアームを設けることも考えられ、この場合、このCアームの対向する両端にX線源及び少なくとも1個の量子計数型X線検出器が取り付けられている。
【0022】
このCT測定データは、特に、CT装置によって取得された投影データ、又は、この投影データから再構成された画像データである。CT測定データの収集には、データベースからの、量子計数型X線検出器を使用して取得されたCT測定データの読み出しが含まれる。CT測定データの収集は、量子計数型X線検出器を用いたCT測定データの取得を含むこともできる。
【0023】
量子計数型X線検出器を用いて取得されたCT測定データは、コーンビームCT測定データ(CBCT測定データ)であってもよい。CBCT測定データは、特に、患者が放射線治療装置を用いた照射のために放射線治療装置の患者支持装置上ですでに位置決めされている場合に取得される。このCBCT測定データは特に、放射線治療装置による照射に対して患者が配置変更する必要がないように位置決めされている場合に取得される。CBCT測定データの取得は、特に患者への照射開始直前に、または、既に患者の照射が開始されている場合に行われる。この場合、特に、放射線治療装置の画像形成デバイスは量子計数型X線検出器を備えている。このようにして取得されたCBCT測定データは、患者の照射の計画立案または準備の枠組みの中で、様々な有利な用途のために取得される。例えば、
患者照射の適応計画のために、特に既存の照射計画立案を適合させるために、
オンライン線量測定のために、
照射のために患者の位置決めを検証するために、
患者の照射を実施中の、特に患者の呼吸動作中の、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームを追跡するために、
取得される。
【0024】
このCBCT測定データは、上述の用途の1つまたは任意の組み合わせに対して使用することができる。
【0025】
量子計数型X線検出器により得られたCBCT測定データをオンライン線量測定に使用すると、患者に加えられた放射線量の精度を向上することが可能である。特に、CBCT測定データからの放射線量の直接計算が可能である。このように、線量計算のためのモデルベースの方法を省略することができる。量子計数型X線検出器は、患者の異なる臓器、例えば、肺または骨に加えられた放射線量の小さなレベル差を有利に識別することができる。
【0026】
このCT測定データの処理は、特に、処理アルゴリズムによって行われ、CT測定データは入力パラメータとしてこの処理アルゴリズムに入力される。この処理アルゴリズムの出力パラメータから特に結果データが生成される。このCT測定データの処理には、特に、CT測定データから患者の照射計画立案に使用するための結果データが生成されるような、少なくとも1つの処理ステップが含まれる。このようにして、CT測定データのこの処理は、CT測定データの、例えば、材料係数の空間分解分布への変換を含むことができる。また、CT測定データのこの処理には、CT測定データにおける特に標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの臓器構造の輪郭形成及び/又は区別を含めることもできる。当然ながら、このCT測定データの処理のさらなる可能性も考えられる。CT測定データの処理のための様々な可能性は諸実施形態の説明に記載されている。
【0027】
CT測定データ取得時に量子計数型X線検出器を使用することにより、CT測定データの特有の情報内容が明らかになる。このCT測定データの固有の情報内容は、例えば、CT測定データのスペクトル分解能であり、これは量子計数型X線検出器の固有のエネルギー感度から生じる。また、この特有の情報内容は特に高い空間分解能であるとも考えられ、これはCT測定データ取得時に量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになる。また、基本的に、量子計数型X線検出器を使用することによりCT測定データの処理を容易に行うこともできるので、このCT測定データから特に容易に適切な結果データを生成することができる。その上、このCT測定データのこの特有の情報内容は、患者の照射計画立案に使用するための結果データを得るための処理に使用されるCT測定データと特に良好に調和している。このCT測定データの特有の情報内容は、量子計数型X線検出器を使用することによってのみ可能な、特に巧妙なCT測定データの取得により明らかになる。
【0028】
このCT測定データの特有の情報内容は特に、CT測定データの処理に際して、結果データを生成するためのCT測定データの処理が特に容易に及び/又は効率的に可能となるように、考慮される。また、このCT測定データの特有の情報内容によってのみ、そもそもCT測定データの適切な処理が可能となる。
【0029】
したがって、CT測定データのこの処理によって、患者の照射計画立案に使用するのに特に適した結果データを生成することができる。この場合、この結果データは異なる内容を有することができ、例えば、材料係数の空間分解分布の形式で、又は、臓器構造の輪郭の形で提示することができる。基本的には、この結果データは、照射計画アルゴリズムのための適切な入力パラメータであり、それによって患者の照射のための照射計画を作成することができる。もちろん、この結果データに加えて、他のデータも入力パラメータとして照射計画アルゴリズムに入力することができる。量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データは、他の画像診断法からの測定データ、例えば、MR測定データ又はPET測定データと組み合わせて、患者の照射計画立案のために入力することができる。
【0030】
照射計画アルゴリズムは、患者照射の実際の計画立案を実行するために、特にインターフェースに、特にそのインターフェースに提供された結果データに、アクセスすることができる。患者の照射計画立案は、以下の実施形態に記載されるように、特に本発明による方法に後続して行われる特に有利なステップである。
【0031】
一実施形態では、本方法は次の追加的な方法ステップを含む。すなわち、患者の照射計画を立案するステップ。この場合、前記結果データが前記インターフェースから読み出され、患者の照射計画立案に際して使用される。
【0032】
この場合、照射計画アルゴリズムは、特に、インターフェースに格納された結果データにアクセスして、これを読み出し、患者の照射計画を立案する時に使用することができる。例えば、この結果データは、材料係数の空間分解分布を表すことができ、これは照射計画アルゴリズムの線量計算のための入力パラメータとして使用することができる。更なる可能性によれば、この結果データは、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの輪郭形成を含み、これを照射計画立案の基礎として使用することができる。もちろん、この結果データは、当業者に有意義と思われる他の方法でも、照射の計画に入力することができる。
【0033】
一実施形態では、CT測定データの収集に、量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるスペクトル分解されたCT測定データの収集が含まれ、CT測定データの処理に、前記スペクトル分解されたCT測定データから定量的材料係数の空間分解分布を計算することが含まれ、さらに、結果データの提供に、前記の定量的材料係数の空間分解分布をインターフェースへ提供することが含まれている。
【0034】
定量的な材料係数は、特に組織の物理的性質を特徴付ける。したがって、1つの定量的な材料係数は通常は1つの物理的単位を有する。この定量的な材料係数は、特に、CT測定データの各ボクセルについて計算される。定量的材料係数は以下のリスト、すなわち、電子密度、質量密度、実効原子番号、一定のエネルギー又は数種のエネルギー帯域についての線形減衰係数、阻止能(Stopping Power)、水等価経路長(WEPL)、組織の定量的元素構成、から選択することができる。もちろん、このリストからの任意の選択である、多くの定量的材料係数も計算することができる。勿論、当業者が有用と考える他の定量的材料係数も考えられる。
【0035】
定量的材料係数の空間分解分布は、量子計数型X線検出器によって得られたCT測定データから特に適切に計算することができる。その主な理由は、特に、そのCT測定データが、量子計数型X線検出器により取得されていることによって、スペクトル分解されて存在していることである。とりわけ、このことは、CT測定データを取得する場合には、少なくとも2つの異なるエネルギースペクトルについてCT測定データを取得するように、このCT装置の量子計数型X線検出器とX線管とが適切に構成されていることを意味する。固有のエネルギー分解能があるので、定量的材料係数は、元々他の目的にために量子計数型X線検出器を用いて取得された、スペクトル分解されたCT測定データから遡及的に計算することもできる。このやり方については、以下のいずれかの実施形態でより詳細に記述されている。
【0036】
定量的材料係数の算出に際してのスペクトル分解されたCT測定データの使用は、単一エネルギー又は単一エネルギースペクトルのみに限定される従来のCT測定データの使用と比べて有利である。すなわち、定量的材料係数を、特に、スペクトル分解されたCT測定データから直接算出することができる。定量的材料係数の空間分解分布の計算には、特に、スペクトル分解されたCT測定データのみを使用することができる。
【0037】
一方、定量的材料係数は、従来のCT測定データからは通常は間接的にしか計算することができない。これは、従来のCT測定データのハウンズフィールド値(HU値)は、定量的材料係数の計算に直接使用することができないからである。なぜなら、それらはスペクトル分解されたエネルギー情報を含んでおらず、然るに、与えられた材料における減衰は通常はエネルギーの関数であるからである。定量的材料係数を従来のCT測定データから算出できるようにするためには、一般的には校正測定とルックアップテーブルへの変換ルールの保存とが必要である。従って、従来のCT取得に対しては通常は制限を設けなければならず、例えば、管電圧を変更してはならない。
【0038】
これらのデメリットは、スペクトル分解されたCT測定データを取得する際に量子計数型X線検出器を使用することにより、特に適切に対処することができる。というのは、エネルギー分析されているので、スペクトル分解されたCT測定データを定量的材料係数の計算に直接使用することができるのからである。このようにして、通常、従来のCT測定データでは必要な校正測定を省略することができる。さらに、スペクトル分解されたCT測定データを取得する際の制限をなくすることができる。
【0039】
また、このようにして得られたスペクトル分解されたCT測定データから再構成された定量的材料係数の品質又は精度は、従来の技術測定データから得られたものよりも有利である。その理由としては、例えば、校正測定への依存、したがって、取得時に選択した取得パラメータへの依存を排除できることが挙げられる。また、上記の校正で決定された変換ルールに影響を及ぼす可能性のある、組織の元素組成への依存を排除することができる。
【0040】
更に、このスペクトル分解されたCT測定データは、追加作業のために最適化されて、例えば、続いて行われる標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの輪郭形成のために特に最適化されて、量子計数型X線検出器を用いて取得することができる。例えば、特に適切なコントラスト・ノイズ比(CNR)はスペクトル分解されたCT測定データにおいて確保することができるので、スペクトル分解されたCT測定データも、定量的材料係数の計算と並んで、輪郭形成に特に適している。有利なことに、スペクトル分解されたCT測定データの取得に先立って、スペクトル分解されたCT測定データからどの定量的材料係数を再構成すべきかを決定する必要がない。定量的材料係数をスペクトル分解されたCT測定データから再構成するために、理想的には、取得パラメータをスペクトル分解されたCT測定データの取得に適合させる必要はない。さらに、異なる定量的材料係数をスペクトル分解されたCT測定データから再構成することも考えられる。
【0041】
定量的材料係数の空間分解分布は、特に線量計算アルゴリズムに対して提供される。もちろん、定量的材料係数の、患者の照射計画立案に関する他の適用も考えられる。
【0042】
スペクトル分解されたCT測定データを取得するために、標準化された取得手順が定義されていると有利である。これによって有利に、スペクトル分解されたCT測定データから直接、定量的材料係数を標準化された方法で再構築することができる。この標準化された取得手順には、例えば、標準化された複数のエネルギー閾値が含まれており、これらは定量的材料係数、例えば電子密度の計算に特に適している。更に、このスペクトル分解されたCT測定データの標準化された取得により、このスペクトル分解されたCT測定データに含まれている定量的材料係数の空間分解分布の処理を容易にすることができる。例えば、このスペクトル分解されたCT測定データから2つの異なる定量的材料係数の複数の空間分解分布を1つの標準化された計算で行うことは特に有利である。これらの2パラメータモデルは、患者の照射計画を立案するために特に適切な基礎を提供することができる。この手順は、以下の実施形態でより詳細に説明される。
【0043】
CT測定データを用いて計算された定量的材料係数は、放射線診療研究(ラジオミクス、radiomics)またはフォローアップ研究にも適切に使用することができる。患者の特定の身体領域にとって特徴的な定量的材料係数は、特に、以下の複数の段落の1つに更に詳細に記載される、検出パラメータの適合によって取得することができる。この特徴的な定量的材料係数は、例えば、統計的方法又は機械学習方法によって、データベースの中の特徴パターンを識別するために使用することができる。この特徴的な定量的材料係数は組織を分類するためにも、例えば、組織への照射の成功を定量化するために、又は、組織に関する放射線の有害性を定量化するために、使用することができる。
【0044】
基本的には、量子計数型X線検出器を使用することにより、取得したCT測定データの固有のスペクトル感度を得ることができる。このように、以下の実施形態のいずれか1つでより詳細に記述されるように、任意の2つのパラメータモデルから2つの定量的材料係数を計算することができる。これに代えて又はこれに加えて、以下の実施形態のいずれか1つにおいてより詳細に記載されるように、線形に独立した2つのベース材料に関する定量化も可能である。このことは有利に、使用されるCT装置の構成及び使用される取得パラメータとは無関係に、患者の照射計画立案におけるデータ処理のために、1組の絶対的な定量的材料係数を使用することができるという可能性につながる。この処理の枠内での、例えば、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの自動的な輪郭形成のような、または、治療モニタリングに関する、処理ステップは、こうして標準化して実行することができる。
【0045】
最後に言及しておくと、算出された定量的材料係数の空間分解分布、特に電子密度、に基づいて、患者の散乱特性を定義することができる。このようにして、材料係数の空間分解分布をCT測定データの散乱補正アルゴリズムの入力パラメータとして使用することもできる。
【0046】
一実施形態では、前記CT測定データのこの処理に、上記のスペクトル分解されたCT測定データに基づく、第1の定量的材料係数の第1の空間分解分布および第2の定量的材料係数の第2の空間分解分布の計算が含まれる。
【0047】
この場合、第1の空間分解分布も第2の空間分解分布も結果データを形成することができる。第1の定量的材料係数と第2の定量的材料係数は、特に異なって形成されており、特に異なる物理的な組織特性を記述している。有利なことに、単に1組のスペクトル分解された測定データに基づいて、第1の空間分解分布も第2の空間分解分布も計算することができる。
【0048】
一実施形態では、結果データの提供に、第1の線量計算アルゴリズムのために第1の定量的材料係数の第1の空間分解分布を提供すること、及び、第2の線量計算アルゴリズムのために第2の定量的材料係数の第2の空間分解分布を提供することが含まれる。
【0049】
上記の第1の線量計算アルゴリズムは線量計算の入力パラメータとして、特に、第1の定量的材料係数の第1の空間分解分布を使用する。すなわち、患者の照射計画を立案する過程で、特に第1の線量計算アルゴリズムにより、第1の定量的材料係数の第1の空間分解分布を考慮して、第1の線量分布が計算される。同様に、第2の線量計算アルゴリズムは線量計算のための入力パラメータとして、特に、第2の定量的材料係数の第2の空間分解分布を使用する。すなわち、患者の照射計画を立案する過程で、特に第2の線量計算アルゴリズムにより、第2の定量的材料係数の第2の空間分解分布を考慮して、第2の線量分布が計算される。
【0050】
第1の線量計算アルゴリズムと第2の線量計算アルゴリズムとは、特に、異なる形で形成されている。この定量的材料係数の空間分解分布の違いを考慮することにより、第1の線量計算アルゴリズムと第2の線量計算アルゴリズムは、計算結果として異なる線量分布を有することができる。
【0051】
第1の定量的材料係数と第2の定量的材料係数を適切に選択すると、CT測定データの処理のためのアルゴリズムの信頼性を高めることが可能である。一実施形態によれば、第1の定量的材料係数は電子密度であり、第2の定量的材料係数は実効原子番号である。別の実施形態によれば、第1の定量的材料係数及び第2の定量的材料係数は、互いに線形に独立した2つのベース材料に基づいている。線形に独立した2つのベース材料の一例は、水とカルシウムである。もう一つの例は、水とヨウ素である。
【0052】
一実施形態では、前記CT測定データの処理に、第1の定量的材料係数の第1の空間分解分布および第2の定量的材料係数の第2の空間分解分布の別々の処理、及び、この別々の処理で生成された部分結果データを統合することによる結果データの生成が含まれる。
【0053】
この場合、特に、第1の定量的材料係数は第2の定量的材料係数とは無関係に決定される。2つの異なる定量的材料係数を別々に考慮することにより、CT測定データの処理のためのアルゴリズムの信頼性をさらに高めることが可能である。このアルゴリズムは、例えば、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの輪郭形成のために使用することができる。このアルゴリズムは、手動または半自動で生成され輪郭形成された画像ボリュームデータの画像特性を分析するためにも使用することができる。
【0054】
一実施形態では、CT測定データの収集に、定量的材料係数の空間分解分布を計算するために、前もって取得されたスペクトル分解されたCT測定データをデータベースから読み出すことが含まれる。
【0055】
固有のエネルギー分解能に基づいて、定量的材料係数を、元々他の目的のために量子計数型X線検出器により取得された、スペクトル分解されたCT測定データから遡及的に計算することもできる。にもかかわらず、定量的材料係数の空間分解分布は、スペクトル分解されたCT測定データに基づいて後から計算することができる。CT測定データから定量的材料係数の空間分解分布を計算するために、このCT測定データは、例えば、読み出しの少なくとも1日前にデータベースから取得される。
【0056】
一実施形態では、CT測定データの処理に、スペクトル分解されたCT測定データから定量的材料係数の空間分解分布を計算することに加えて、スペクトル分解されたCT測定データにおける標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が含まれる。
【0057】
従って、このスペクトル分解されたCT測定データは有利な二重機能を果たすことができる。すなわち、定量的材料係数の空間分解分布を計算するための基礎、及び、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別のための基礎の双方の役割を果たすことができる。このCT測定データの取得は、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別のために特に適切に適合している。このことは、特に、量子計数型X線検出器に固有のスペクトル感度があるので、CT測定データの取得は特別な特徴を有する必要がなく、これによって、定量的材料係数の空間分解分布をスペクトル分解されたCT測定データから算出することが可能である、ことから可能である。
【0058】
量子計数型X線検出器によって取得された、スペクトル分解されたCT測定データの固有のスペクトル感度のもう一つの利点は、デュアルエネルギーアプリケーションを、特別なデュアルエネルギーの取得を必要とせずに、スペクトル分解されたCT測定データの処理において標準的に使用できることである。このようにして、或るデュアルエネルギーアプリケーションをスペクトル分解されたCT測定データの処理に使用すべきであるということを、スペクトル分解されたCT測定データを取得した後で初めて決定することもできる。デュアルエネルギーアプリケーションは、スペクトル分解されたCT測定データの異なる処理を可能にし、例えば、骨組織と他の組織との差別化を改善することができる。さらに可能なデュアルエネルギーアプリケーションは、骨髄、血管、脳などの特定の臓器領域における特に有利な評価を可能にする。痛風のような特殊な疾病に適合したデュアルエネルギーアプリケーションも考えられる。
【0059】
一実施形態では、スペクトル分解されたCT測定データは、このスペクトル分解されたCT測定データが標的ボリューム及び/又はリスクボリュームを識別するために様々な組織タイプの間で特に適切なコントラストを有するような、量子計数型X線検出器の取得パラメータを用いて取得されている。
【0060】
従って、このスペクトル分解されたCT測定データは、特に、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームを識別するのに特に適した方法で取得される。このように、スペクトル分解されたCT測定データの取得時には、特に以下のような標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が優先され、定量的材料係数の空間分解分布の計算には重点が置かれない。この定量的材料係数の空間分解分布の計算は、CT測定データ取得時の量子計数型X線検出器の固有のスペクトル感度に拠って、一般的にはいずれにしても可能である。
【0061】
この場合、スペクトル分解されたCT測定データから特定の光子エネルギーに対する線形減衰係数の空間分解分布を再構成するという手順が有利である。この場合、この特定の光子エネルギーは好適に、スペクトル分解されたCT測定データが標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別のために異なる組織タイプの間で特に適切なコントラストを有するように選択される。また、種々の組織タイプを特に適切に区別することができるように、種々のエネルギーに対する線形減衰係数を再構成することも考えられる。この場合、線形減衰係数を決定するエネルギーが位置に応じて変わるような再構成も考えられる。これにより、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別のために、局所的に最適なコントラスト・ノイズ比を得ることができる。
【0062】
一実施形態では、スペクトル分解されたCT測定データが、1つの軸方向測定層において、患者の全身と、患者の位置決めに使用される位置決め補助具の両方を包含する測定視野をカバーしている。
【0063】
このようにして、スペクトル分解されたCT測定データから計算した材料係数の空間分解分布が、上述の測定視野をカバーすることを確実にすることができる。このようにして、十分に広い測定視野(field of view, FOV)に対する定量的材料係数を算出することができる。特に、材料係数の空間分解分布を利用して引き続いて行われる線量計算のために、患者の身体の当該部分及びその位置決め補助具が治療ビームの中で患者照射のためのこの測定視野内に位置付けられていることが重要である。
【0064】
データ取得時に量子計数型X線検出器を使用することにより、測定視野全体について、スペクトル分解されたCT測定データを特に容易に計算することができる。この場合、CT装置の全視野が測定視野としての役割を果たすことができる。2つ以上のエネルギーでCT測定データを取得することができるデュアルエネルギーのデータ取得とは対照的に、この測定視野にたいしてはそれ以上の制限はない。さらに、データ取得時に量子計数型X線検出器を使用することにより、スペクトル分解されたCT測定データが測定視野全体に対して一定の精度で得られることを確実にすることができる。このように、測定視野全体に対して定量的材料係数を特に正確に計算することができる。
【0065】
一実施形態では、CT測定データの処理に、スペクトル分解されたCT測定データに含まれるスペクトル情報を使用して、そのスペクトル分解されたCT測定データのビームハードニング補正が含まれており、この場合、定量的材料係数の空間分解分布の計算はこのビームハードニング補正により補正された、スペクトル分解されたCT測定データに基づいて行われる。
【0066】
CT測定データにおけるビームハードニング(beam hardening)は、スペクトル分解されたCT測定データに含まれるスペクトル情報によって特に有利に補正することができる。例えば、スペクトル分解されたCT測定データのビームハードニング補正は、スペクトル分解されたCT測定データに含まれるスペクトル情報を使用して、水組織及び骨組織におけるスペクトル分解されたCT測定データの分離を含むことができる。この分離は、ビームハードニング補正に使用される一般的な閾値技術を有利に置き換えたり補足したりすることができる。このビームハードニング補正により、定量的材料係数の計算におけるシステムエラーを特に有利に回避することができる。こうして、材料係数のこのように計算された空間分解分布によって線量計算の精度を有利に高めることができる。
【0067】
一実施形態では、CT測定データの処理に、CT測定データ内の標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が含まれ、この場合、結果データの提供に、識別された標的ボリューム及び/又はリスクボリュームのインターフェースへの提供が含まれる。
【0068】
基本的に、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別は、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの自動、半自動または手動によるセグメント化及び/又は輪郭形成を意味する。このようにして、この処理によって生成された結果データは、識別された標的ボリューム及び/又はリスクボリュームがCT測定データ内のどの空間領域を有するかについての情報を有する。この結果データはまた、CT測定データにおいて識別された標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの輪郭の外側境界がどのようなプロファイルを持っているかという情報を有することができる。したがって、この結果データは、照射計画立案に必要な、CT測定データにおける標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの空間的位置に関する情報を有することができる。もちろん、多数の標的ボリューム及び/又は多数のリスクボリュームを、スペクトル分解されたCT測定データにおいて識別することもできる。
【0069】
一実施形態では、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの組織を周囲組織から区別することを含み、この場合、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの組織の周囲組織からの区別は、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を使用して行われる。
【0070】
CT測定データ取得時の量子計数型X線検出器の使用は、特に、各X線光子が同等にCT測定データにおける信号に寄与するという事につながる。このように、量子計数型X線検出器によって取得されたCT測定データにおいて検出された有効X線スペクトルは、複数の統合型検出器によって得られるCT測定データと比較して、通常は低エネルギー側にシフトされている。これらの低エネルギーでは、X線放射の吸収に対する光電効果(Photoeffekt)の寄与がコンプトン効果の寄与に比べて特に優勢である。光電効果のより高い寄与は、特に、このCT測定データにおいて異なる元素組成を有する材料間の差異をより明確に測定することができるという事につながる。このことはまた、量子計数型X線検出器を使用して取得されたCT測定データにおいて、異なる組織タイプ間のコントラストを有利に高めることにつながる。同様の電子密度を有するが、異なる元素組成を有する組織タイプ間のコントラストを、特に、より大きい原子番号を有する元素に関して、CT測定データ取得時に量子計数型X線検出器を使用することによって高めることができる。このようにして得られたCT測定データを用いて、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの組織を周囲組織からの特に明確に区別することができる。
【0071】
一実施形態では、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別は脂肪組織と筋肉組織の区別を含み、この場合、その脂肪組織と筋肉組織の区別は、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を使用して行われる。
【0072】
この手順は、特に、CT測定データ取得時の量子計数型X線検出器の使用が、脂肪組織と筋肉組織との間のコントラストの増大をもたらすという考えに基づいている。こうして、このCT測定データにおけるこれら2つの組織タイプ間の特に適切な区別が可能である。これとは対照的に、統合型X線検出器を使用する従来のデータ取得では、両方の組織タイプは、類似した電子密度を有するので、CT測定データにおいて同じように見えるであろう。
【0073】
一実施形態では、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別に灰白質及び白質の区別が含まれ、この場合、この灰白質と白質の区別は、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を使用して行われる。
【0074】
この手順は、特に、CT測定データの取得における量子計数型X線検出器の使用が、灰白質と白質との間のコントラストの増大をもたらすという考えに基づいている。こうして、CT測定データにおけるこれら2つの組織タイプ間のこの特に適切な区別が可能である。これとは対照的に、統合型X線検出器を使用する従来のデータ取得では、両方の組織タイプは類似した電子密度を有するので、これら両方の組織タイプはCT測定データにおいて同じように見えるであろう。
【0075】
一実施形態では、CT測定データの収集に、量子計数型X線検出器による取得から得られるスペクトル分解されたCT測定データの収集が含まれ、このCT測定データの処理に、このスペクトル分解されたCT測定データに含まれるスペクトル情報を使用することによる、スペクトル分解されたCT測定データのビームハードニング補正が含まれ、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別に、ビームハードニング補正によって補正された、スペクトル分解されたCT測定データにおける複数の骨構造の区別が含まれる。
【0076】
既に説明したように、ビームハードニング補正はスペクトル分解されたCT測定データにおいて特に有利に実施することができる。このビームハードニング補正によって補正された、スペクトル分解されたCT測定データにおいては、複数の骨構造は特に良好に相互に区別することができる。標的ボリューム及び/又はリスクボリュームに1つの骨構造もしくは1つの骨構造に直接接した身体領域が含まれる場合には、こうして、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの改善された識別が可能である。
【0077】
一実施形態では、患者の頭蓋底領域内の複数の骨構造が互いに区別される。
【0078】
特に頭蓋底領域における複数の小骨構造は、ビームハードニング補正によって補正されたスペクトル分解されたCT測定データにおいて特に良好に相互に区別することができる。
【0079】
一実施形態では、前記CT測定データが、第1のCT測定データセットと第2のCT測定データセットとを有しており、この場合、第1のCT測定データセットは、第2のCT測定データセットよりも高い量子計数型X線検出器のエネルギー閾値によって取得されたものであり、前記CT測定データの処理は、前記第1のCT測定データセットと第2のCT測定データセットとの重み付けされた組合せを生成することを含み、この場合、組み合わされたCT測定データが生成され、この組み合わされたCT測定データにおいて標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が行われる。
【0080】
この実施形態に記載された手順は、光子重み付け(photon weighting)とも呼ばれる。上記第1のCT測定データセット及び上記第2のCT測定データセットは、特に、エネルギー閾値に関し、量子計数型X線検出器の異なる構成によって取得される。第1のCT測定データセットが、第2のCT測定データセットよりも高い量子計数型X線検出器のエネルギー閾値によって取得されたということは、特に、第1のCT測定データセットが第2のCT測定データセットよりも平均的に高いエネルギー閾値で取得されたことを意味する。従って、第1のCT測定データセットは、第2のCT測定データセットよりも高いエネルギーの光子に関する情報を有利に持っている。なお、第1のCT測定データセット及び第2のCT測定データセットは、特に同一の測定視野をカバーしている。
【0081】
特に、光子重み付けによって生成された組み合わされたCT測定データは、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別に特によく適している。第1のCT測定データセットと第2のCT測定データセットとからの光子エネルギーに関する異なる情報は、複数の重み係数を適切に選択することにより特に有利な方法で組み合わせることができるので、組み合わされたCT測定データにおける標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの改善された識別が可能となる。重み付けされた組合せを形成するためのこれらの重み係数は、第1のCT測定データセット及び/又は第2のCT測定データセットの内容に基づいて追加処理で生成することができる。以下に更に詳しく述べるように、これらの重み係数はCT測定データの大まかな事前のセグメント化によって決定することができる。また、これに代えて又はこれに加えて、照射計画を立案するのに特に適した組み合わされたCT測定データを生成することができる重み係数を、例えば人工ニューラルネットワークなどの機械学習法によって得ることも考えられる。
【0082】
一実施形態では、前記CT測定データの処理が、第1のCT測定データセットからビームハードニング補正のための情報を抽出することと、この抽出された情報に基づいた、組み合わされたCT測定データのビームハードニング補正とを含み、この場合、このビームハードニング補正により補正された、組み合わされたCT測定データにおいて標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が行われる。
【0083】
このように、前記第2のCT測定データセットよりも特に高いエネルギーの光子を特徴とする前記第1のCT測定データセットからの情報は、ビームハードニング補正のために特に適切に使用することができる。
【0084】
一実施形態では、空間的に変化する複数の重み係数を用いて、第1のCT測定データセットと第2のCT測定データセットの重み付けされた組合せが作成される。
【0085】
このように、重み付けされた組み合わせの生成のために特に、CT測定データの第1の空間点には、CT測定データの第2の空間点のためとは異なる重み係数が使用される。これらの重み係数は、例えば、患者の身体の様々な領域ごとに異なることができる。
【0086】
一実施形態では、CT測定データの処理により、最初に、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの大まかな識別が行なわれ、この場合、この大まかにセグメント化された標的ボリューム及び/又はリスクボリュームに基づいて、空間的に変化する重み係数が定義され、次に、上述の組み合わされたCT測定データにおいて標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの詳細な識別が行われる。
【0087】
こうして、例えばその標的ボリューム及び/又はリスクボリュームに対して、その標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの周囲の身体領域に対してとは異なる重み係数を設定することができる。標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの大まかな識別は、このように重み係数を決定するのに有利に役立ち、それによって、第1のCT測定データセット及び第2のCT測定データセットの特に有利な重み付けを実施することができるので、特に適切に重み付けされ組み合わされたCT測定データにおける標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの詳細な識別が可能となる。
【0088】
一実施形態では、CT測定データの収集が、量子計数型X線検出器による高解像度のCT測定データの取得を含み、この場合、この高解像度のCT測定データを取得するために、量子計数型X線検出器の高解像度モードが使用され、この高度解析モードでは量子計数型X線検出器の各ピクセルが別々にカウントされる。
【0089】
一般的には、量子計数型X線検出器を使用することにより、本質的に従来のCTによるデータ取得に比べて解像度が上昇する。なぜなら、量子計数型X線検出器の個々の検出素子(検出ピクセルともいう)は、従来のCT検出器の検出素子よりも小さいはずだからである。というのは、量子計数型X線検出器の個々のピクセル間には、高いピクセル解像度において量子効率を低下させる分離層が不要だからである。同時に、量子計数型X線検出器では隣接する検出ピクセル間の、一般的に従来のCT検出器の検出ピクセルの大きさを小さくすることを困難にする、クロストークの問題は通常は存在しない。
【0090】
基本的に、量子計数型X線検出器を使用することにより、大ボア半径(大ボアシステム)を使用する場合でも、すべての空間方位(x、y、z)および測定視野全体にわたって、CT測定データの高解像度を達成することができる。この場合、取得したCT測定データの解像度は一般的には、カウントパルスを一緒にカウントする量子計数型X線検出器のピクセル数に依存する。量子計数型X線検出器の標準解像度モードにおいては、一般的には量子計数型X線検出器の多数のピクセルが、例えば、2x2ピクセルのピクセルマトリクス又は複数のピクセルの他の相互連結の形で、一緒にカウントされる。ここで提案された、量子計数型X線検出器の各ピクセルが別々にカウントされる超高解像度モード(ultra-high-resolution-mode、UHRモード)を使用することにより、特に高解像度CT測定データを得ることができる。次に、これらの特に高解像度CT測定データは、患者の照射計画立案において特に有利に使用することができる。
【0091】
一実施形態では、このCT測定データの処理が高解像度CT測定データから定量的材料係数の空間分解分布を計算することを含み、結果データの提供がこの定量的材料係数の空間分解分布をインターフェースに提供することを含む。
【0092】
高解像度CT測定データは、骨組織の定量的材料係数の計算に特に有利に入力することができる。CT測定データの高解像度により、例えば、骨組織の異なる骨密度の改善された区別が可能になる。
【0093】
一実施形態では、患者の骨組織の定量的材料係数の空間分解分布の計算にはこの高解像度CT測定データが変更されずにそのまま入力され、患者の軟部組織の定量的材料係数の空間分解分布の計算にはこの高解像度CT測定データが解像度を低下されて入力される。
【0094】
このアプローチは、特に骨組織の定量的材料係数の空間分解分布を計算するためには、軟部組織に対するよりも高い解像度が有意義であるという考慮に基づいている。その理由は、一般的に骨組織では軟部組織におけるよりも細かい構造を区別しなければならないからである。したがって、軟部組織の定量的材料係数の空間分解分布を計算するためには高解像度CT測定データの解像度を低下させても十分であることが多い。一実施形態によれば、高解像度CT測定データの低下された解像度は、フィルタカーネルを用いて高解像度CT測定データをフィルタリングすることにより得られる。
【0095】
一実施形態では、定量的材料係数の空間分解分布の計算が、高解像度CT測定データから阻止能の空間分解分布を計算することを含み、さらに、結果データの提供が、患者の粒子線照射を計画立案するために阻止能の空間分解分布を提供することを含む。
【0096】
粒子線照射は、特に、プロトン、ヘリウムイオン又は炭素イオンにより行われる。粒子線照射の場合の線量計算には一般的には高精度が要求されるので、粒子線照射を計画立案するために、阻止能の空間分解分布を高解像度のCT測定データにより特に有利に計算することができる。
【0097】
一実施形態では、高解像度CT測定データからの定量的材料係数の空間分解分布の計算が、患者の以下の身体領域、すなわち、患者の眼領域、患者の三叉神経の経路によって記述される身体領域、患者の頭蓋底および患者の肺領域、のうちの少なくとも1つについて行われる。
【0098】
すなわち、高解像度CT測定データは、特に高精度が要求される身体領域への照射計画を立案するために特に有利に使用することができる。特に、上述された身体領域への特に精密な放射線の使用、例えば、粒子線照射又はブラキ治療法照射の使用との組合せ、が有利に可能である。すなわち、高解像度CT測定データを使用することにより、例えば、特に精密な照射を行う時に小骨構造の影響を有利に考慮することができる。
【0099】
一実施形態では、CT測定データの収集に、量子計数型X線検出器による取得により得られる、スペクトル分解され且つ時間分解されたCT測定データの収集が含まれており、このCT測定データの処理に、上記のスペクトル分解され且つ時間分解されたCT測定データから定量的材料係数の空間及び時間分解分布を計算することが含まれ、さらに、結果データの提供に、上記の定量的材料係数の空間及び時間分解分布をインターフェースに提供することが含まれている。
【0100】
時間分解されたCT測定データは、しばしば、患者の照射計画を立案する上で重要であり、これによって、この計画立案において患者の運動、特に循環的な呼吸動作を考慮に入れることができる。このことは、標的ボリュームが、特に呼吸動作に伴って大きく動く肝臓などの臓器に近い場合には特に重要である。
【0101】
CT測定データ取得時に際に量子計数型X線検出器を使用することによって、スペクトル分解されたCT測定データを患者の呼吸動作の時間経過にわたって動的にも取得することができる、ことも保証される。この場合、このスペクトル分解されたCT測定データは、患者の呼吸動作の時間的な経過にわたって、完全な時間的および空間的な整合性を有することができる。こうして、前述のデュアルエネルギーアプリケーションを、上記のスペクトル分解され且つ時間分解されたCT測定データの処理において有利に使用することができる。例えば、患者の特定の組織を患者の呼吸動作の時間の経過にわたりこのCT測定データにおいて適切に強調することができ、または、特に肺内に位置する標的ボリュームに対する粒子線治療のための時間分解された線量測定が考えられる。また、時間分解されたCT測定データにおいて、造影剤の除去(contrast removal)またはビームハードニング補正を行うこともできる。
【0102】
一実施形態では、上記のスペクトル分解され且つ時間分解されたCT測定データが、患者の以下の身体領域、すなわち、患者の肝臓領域、患者の膵臓領域、患者の胸部領域、のうちの少なくとも1つから収集される。
【0103】
上記の身体領域の特に造影剤で強調された画像の場合、上記のスペクトル分解され且つ時間分解されたCT測定データは照射計画立案のための特に有利な基礎を提供することができる。
【0104】
一実施形態では、患者のCT測定データの収集が量子計数型X線検出器を有するCT装置によるCT測定データの取得を含み、この場合、このCT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の検出パラメータが変更される。
【0105】
CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の検出パラメータが変更されるということは、特に、この量子計数型X線検出器が、このCT測定データ取得の第1の時点では、このCT測定データ取得の第2の時点とは異なる設定の検出パラメータを用いて操作されることを意味する。この検出パラメータは、CT測定データ取得の異なる段階に対して変更することができる。CT測定データ取得中の検出パラメータの動的で連続的な変更も考えられる。
【0106】
データ取得中の検出パラメータの静的または動的な変更によって、患者の照射計画立案において使用するのに特に適したCT測定データを取得することができる。これを利用する可能性のあるケースについては、以降の段落でより詳細に説明されている。ここでは、特に適した3つの応用について述べる。
輪郭形成すべき臓器の区別が予期される身体領域におけるCT測定データの取得のために、量子計数型X線検出器の解像度を明らかに高めることができる。
造影剤の存在が予期される身体領域において感度又は軟部組織コントラストが高められるように、検出パラメータを調整することができる。
骨組織の存在が予期される身体領域において、複数の骨物質の改良された分離、及び/又は、ビームハードニングに起因するアーチファクトの減少が達成できるように、検出パラメータを調整することができる。
【0107】
また、上述の検出パラメータは、CT測定データを取得した後でそのCT測定データの再構成中に調整することも可能である。したがって、CT測定データの再構成における解像度及び/又はエネルギー閾値の空間的変動が考えられる。また、量子計数型X線検出器の、異なる検出パラメータを有する複数の検出素子の帯を設置することも考えられる。これにより、螺旋形の取得に対する特殊な再構成が可能となる。また、取得プロトコル、及び/又は、標的ボリュームもしくは標的ボリュームの位置決めに基づいて、定量計数型X線検出器の特有の領域に対して固定された検出パラメータのみが使用されることも考えられる。検出パラメータのこの固定は、検出器-エミッタ系の回転に応じて、及び/又は、z-位置に沿った取得の変更に応じて、変化させることができる。
【0108】
一実施形態では、CT測定データの取得中に、量子計数型X線検出器のエネルギー閾値が変更される。
【0109】
CT測定データの取得中に、特に、量子計数型X線検出器の1つのエネルギー閾値も量子計数型X線検出器の複数のエネルギー閾値も変更することができる。CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の複数のエネルギー閾値が変更される場合、この量子計数型X線検出器は、特に、そのCT測定データ取得の第1の時点では、そのCT測定データ取得の第2の時点とは異なる一組のエネルギー閾値で運転される。この場合、異なる光子エネルギーをエネルギー閾値としてkeVで設定することができる。これらの異なるエネルギー閾値は、例えば、光子エネルギーとして、電圧として、又は、電流として、設定することができる。
【0110】
エネルギー閾値を適合させることにより、量子計数型X線検出器を、照射計画を立案するのに特に適したCT測定データを取得するように、例えば、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別のために異なる組織タイプ間で局所的に特に適切なコントラストを有するように、調整することができる。
【0111】
一実施形態では、CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の解像度が、量子計数型X線検出器のピクセルの組み合わせに応じて変更される。
【0112】
このようにして、量子計数型X線検出器は、CT測定データ取得の第1の時点では、CT測定データ取得の第2の時点よりも高い解像度で運転することができる。したがって、この第1の時点では、第2の時点よりも特に少ない量子計数型X線検出器のピクセルが一緒にカウントされる。
【0113】
患者の骨組織から高解像度CT測定データが取得され、他方、患者の軟部組織からは低解像度のCT測定データが取得されることは、特に有用である。さらに、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの領域におけるCT測定データが、患者の身体の残りの部分におけるよりも高い解像度を有していることもまた有用である。
【0114】
さらに、CT測定データの取得中に光量子束が変更されることも考えられる。量子計数型X線検出器を、特に、変更された光量子束に対して伝送のビット深度を適合させることによって、調整することができる。このように、特にX線管の適合されたモジュレーションによって、予期される光量子束をビット深度を調整するための入力パラメータとして使用することができる。例えば、量子計数型X線検出器で最大予期計数率が知られている場合、伝送のビット深度をそれに応じて絞ることができる。例えば、最大の光量子束が予期される場合には、伝送されるべき閾値及び/又は検出器ライン及び/又は個々の検出器のピクセルについての情報、の数を増加させることができる。光量子束は、3つの空間方位(x、y、z)のうち少なくとも1つの方向においてしか変更することができない。例えば、量子計数型X線検出器の解像度を照射の標的ボリュームの近傍で増大させ、同時に、この領域からの取得のために特に高い線量率を設定する、という有利な適用が考えられる。このようにして、量子計数型X線検出器のそのピクセルの大きさに対して十分な線量を与えることができる。
【0115】
更に、CT測定データの取得中に、量子計数型X線検出器の線形の補正パラメータを変更することも考えられる。
【0116】
CT測定データの取得中に、検出パラメータを変更する様々な方法が考えられる。その基本的な目的は、特に、異なる身体領域に対してそれぞれ、できるだけ適切に設定された検出パラメータによってCT測定データを取得することである。
【0117】
第1の実施形態によれば、CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の検出パラメータは、患者の縦方向に沿った第1のz位置におけるCT測定データを取得するために検出パラメータの第1の設定が行なわれ、さらに、患者の縦方向に沿った第2のz位置におけるCT測定データを取得するために検出パラメータの第2の設定が行われるように、変更される。第2の実施形態によれば、CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の検出パラメータは、そのCT装置の検出器-エミッタ系の第1の回転位置におけるCT測定データを取得するために検出パラメータの第1の設定がおこなわれ、さらに、そのCT装置の検出器-エミッタ系の第2の回転位置におけるCT測定データを取得するために検出パラメータの第2の設定がおこなわれるように、変更される。第3の実施形態によれば、CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の検出パラメータは、患者の第1の身体領域のCT測定データを取得するために検出パラメータの第1の設定が行われ、さらに、患者の第2の身体領域のCT測定データを取得するために検出パラメータの第2の設定が行われるように、変更される。
【0118】
以下の諸実施形態では、患者の第1の身体領域のCT測定データの取得のために検出パラメータの上記第1の設定が行われ、さらに、患者の第2の身体領域のCT測定データの取得のために検出パラメータの上記第2の設定が行われる、という可能性が詳細に記載されている。これらの説明はさらに他の可能性に対しても適用できる。
【0119】
一実施形態では、上記の第1の身体領域および第2の身体領域が、CT測定データの取得前に、患者の既存の医学的画像データに基づいて、及び/又は、アトラスデータベースを使用して、確定される。
【0120】
患者の既存の医学的画像データとして、臓器構造の輪郭が既に存在しているかもしれない。この臓器構造の輪郭は、第1の身体領域と第2の身体領域を確定する場合に使用することができる。また、この臓器構成の輪郭がアトラスデータベースに含まれる情報に基づいて確定されることも考えられる。この手法により、その臓器構造からCT測定データを取得するために、その他のCT測定データの取得のためとは異なる検出パラメータを設定することができる。一実施形態によれば、第1の身体領域は照射の標的ボリュームを含み、第2の身体領域は照射の標的ボリュームの外側にある身体領域を含む。
【0121】
一実施形態では、前記の第1の身体領域は患者が照射されるときにそれが照射範囲内に位置決めされるように構成されており、前記の第2の身体領域は患者が照射されるときにそれが照射範囲外に位置決めされるように構成されている。
【0122】
この照射範囲は、特に、既存の照射計画立案により決定される粒子線治療装置の照射設定から既知である。
【0123】
一実施形態では、前記の第1の身体領域および第2の身体領域は、患者への照射に際して、第1の身体領域に対しては第2の身体領域に対するよりも高い線量が与えられるように構成されている。
【0124】
既存の照射計画に基づく既知の3次元の線量分布は、検出パラメータを設定するための入力情報として使用することができる。このとき、この検出パラメータは、特に、既存の照射計画の最適化または適合化のために適したCT測定データを取得することができるように、決定することができる。この手順は、特に、より高い線量が予定されている第1の身体領域については、より低い線量が予定されている第2の身体領域よりも、より正確な画像情報が要求されることを考慮したものである。また、急激な線量勾配がある身体領域、例えば、粒子線治療におけるブラッグピーク(Bragg-Peak)の近傍、又は、ブラキ治療アプリケータ位置の近傍、又は、標的ボリュームもしくはリスクボリュームの近傍、に対しては、このCT測定データはより精度の高いものでなければならないことが考えられる。
【0125】
一実施形態では、CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の検出パラメータが、患者の前記第1の身体領域からのCT測定データの取得のために、患者の前記第2の身体領域からのCT測定データの取得のためよりも高い解像度が設定されるように変更される。
【0126】
この有利な手順は、第1の身体領域に対しては第2の身体領域に対するよりも高い解像度のCT測定データが有利であるという考えによる。
【0127】
この代わりに又はこれに加えて、外部カメラデータ、例えば3Dカメラデータを用いることも考えられ、これにより、量子計数型X線検出器を用いて取得するために検出パラメータを適合しなければならない身体領域、例えば、首-肩領域を確定することができる。
【0128】
一実施形態では、上述したインターフェースが、患者を照射するために使用された放射線治療装置の画像形成デバイスによって収集される更なる測定データを収集し、この場合、患者の照射計画立案のために前述の結果データがこの更なる測定データに関連して設定される。
【0129】
CT測定データ取得時に量子計数型X線検出器を使用することにより、結果データをより容易に前述の更なる測定データと関連づけて設定することができる。例えば、より簡単な散乱放射線補正が可能である。
【0130】
一実施形態では、患者を照射するために使用された放射線治療装置の画像形成デバイスが同様に量子計数型X線検出器を有しており、この場合、CT測定データ及び更なるCT測定データの取得時に量子計数型X線検出器を使用することによって得られる、CT測定データ及び更なるCT測定データの特有の情報内容を利用することによって、結果データをこの更なる測定データと関連付けて設定することがでる。
【0131】
この追加の特有の情報内容を使用することにより、CT測定データを更なる測定データと関連づけて特に簡単に設定することができる。
【0132】
一実施形態では、前記CT測定データが、異なる時点に収集された少なくとも2組のCT測定データセットを備えており、この場合、これら少なくとも2組のCT測定データセットは、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を使用して登録され、この場合、これら少なくとも2組の登録されたCT測定データセットがインターフェースに提供される。
【0133】
このようにして、少なくとも2組のCT測定データセットの登録を改善することができる。このことは、特殊なCT応用、例えば、特に患者の肺の潅流画像形成または機能的画像形成に使用することができる。
【0134】
以下の2つの実施形態において、造影剤に基づくCT測定データの取得を量子計数型X線検出器を用いて適切に実施し評価することができる2つの応用例が記載されている。第1の実施形態では、CT測定データの取得中に造影剤が使用されており、この場合、このCT測定データの取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することによって明らかになるこのCT測定データの特有の情報内容を利用することによって、そのCT測定データの処理に、造影剤を有する組織と残りの組織におけるCT測定データの造影剤分離が含まれる。第2の実施形態では、CT測定データの取得中に造影剤が使用されており、この場合、CT測定データの取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるこのCT測定データの特有の情報内容を利用することによって、そのCT測定データの処理に、仮想非造影CT画像を生成することが含まれる。この場合、kエッジ画像を使用して、仮想非造影画像を作成することができる。
【0135】
最後に、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することによって明らかになるCT測定データの特有の情報内容を利用することによって、このCT測定データの処理が、患者の照射効果を高めるために患者の中に存在する金属ナノ粒子の識別及び/又は定量化を含むことも考えられる。
【0136】
本発明による演算装置は少なくとも1個の演算モジュールを備え、この演算装置は本発明による方法を実行するために構成されている。
【0137】
このように、この演算装置は、患者に対する放射線治療の計画立案に使用するための結果データを提供するための方法を実行すべく構成されている。この演算モジュールは、量子計数型X線検出器を備えたCT装置によって取得された患者のCT測定データを収集するために、及び、そのCT測定データを処理するために構成されており、この場合、そのCT測定データの処理に際して、CT測定データ取得時に量子計数型X線検出器を使用することによって明らかになるCT測定データの特有の情報内容が考慮され、そのCT測定データの処理に際して、患者の照射計画立案に使用するための結果データが生成され、さらに、この演算モジュールはその結果データを患者の照射計画立案に使用できるようにインターフェースに提供するために構成されている。
【0138】
この演算装置の複数のコンポーネントは、大部分がソフトウェアコンポーネントの形式で構成することができる。しかしながら、基本的には、これらのコンポーネントは部分的に、特に高速計算の場合には、例えば、FPGA等のソフトウェアでサポートされたハードウェアコンポーネントの形で実現することも可能である。同様に、必要なインターフェースは、例えば、他のソフトウェアコンポーネントからデータを受け取るだけの場合には、ソフトウェアインターフェースとして構成することができる。しかしながら、このインターフェースは適切なソフトウェアによって制御されるハードウェアベースのインターフェースとしても構成することができる。もちろん、上記の複数のコンポーネントの多くを、個々のソフトウェアコンポーネントと、ソフトウェアでサポートされたハードウェアコンポーネントとを組み合わせて実現することも考えられる。
【0139】
本件発明によるCT装置は、本発明による演算装置を含む。
【0140】
上記の演算装置は、本発明による方法を実行するために、制御信号をCT装置に送り、及び/又は、制御信号を受領し、及び/又は、処理するように構成することができる。この演算装置はCT装置に組み込むことができる。この演算装置はCT装置とは別に設置することもできる。この演算装置はCT装置に接続しておくことができる。
【0141】
本発明によるコンピュータプログラム製品は、プログラミング可能な演算装置のメモリに直接ロードすることができ、さらに、このコンピュータプログラム製品が演算装置において実行される時に、本発明による方法を実行するためのプログラムコード手段を備えている。このコンピュータプログラム製品は、1つのコンピュータプログラムであるか、又は、1つのコンピュータプログラムを含むことができる。これにより、本発明による方法は、迅速に、同一の再現性を有し、かつ、確実に実行することができる。
【0142】
このコンピュータプログラム製品は、本発明による方法ステップを上述の演算装置を用いて実行することができるように構成されている。ここで、この演算装置は、それぞれの方法ステップを効率的に実行できるように、対応するワーキングメモリ、対応するグラフィックカードまたは対応するロジックユニットのようなそれぞれの前提条件を備えていなければならない。このコンピュータプログラム製品は、例えば、コンピュータで読み出し可能な媒体に保存されるか、又はネットワーク若しくはサーバーに保存され、そこからローカルな演算装置のプロセッサにロードすることができる。さらに、このコンピュータプログラム製品の制御情報は、電子的に読取り可能なデータキャリアに保存することができる。電子的に読取り可能なデータキャリアの制御情報は、そのデータキャリアが演算装置において使用されるときに本発明による方法を実行するように構成することができる。このように、このコンピュータプログラム製品はまた、電子的に読取り可能なデータキャリアを表すこともできる。電子的に読取り可能なデータキャリアの例としては、DVD、磁気テープ、ハードディスク、又は、USBスティックであり、これに電子的に読取り可能な制御情報、特にソフトウェア(上記参照)が保存されている。これらの制御情報(ソフトウェア)がデータキャリアから読み取られ、制御装置及び/又は演算装置に記憶されると、上記の方法の本発明による実施形態のすべてを実行することができる。したがって、本発明は、前記のコンピュータで読み出し可能な媒体及び/又は前記の電子的に読み出し可能なデータキャリアに基づくこともできる。
【0143】
本発明による演算装置、本発明によるCT装置及び本発明によるプログラム製品の利点は、本質的に本発明による方法の利点に対応するものであり、これらは予め詳細に説明されている。ここで言及されている特徴、利点又は代替的な実施形態は、他のクレームによる対象にも適用可能であり、その逆も然りである。換言すれば、対象となっているクレームは、方法に関連して記載又はクレームされた特徴によってさらに展開することもできる。本方法のこれに対応する機能的特徴は、対応する対象モジュール、特にハードウェアモジュールによって構成される。
【0144】
以下では、図に示した実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【
図1】本発明による演算装置を備えた本発明によるCT装置を示す。
【
図2】本発明による方法の第1の実施形態のフローチャートを示す。
【
図3】本発明による方法の第2の実施形態のフローチャートを示す。
【
図4】本発明による方法の第3の実施形態のフローチャートを示す。
【
図5】本発明による方法の第4の実施形態のフローチャートを示す。
【
図6】本発明による方法の第5の実施形態のフローチャートを示す。
【
図7】本発明による方法の第6の実施形態のフローチャートを示す。
【
図8】本発明による方法の第7の実施形態のフローチャートを示す。
【
図9】本発明による方法の第8の実施形態のフローチャートを示す。
【
図10】本発明による方法の第9の実施形態のフローチャートを示す。
【
図11】本発明による方法の第10の実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0146】
図1は、本発明による演算装置35を備えた本発明によるCT装置1を示す。
【0147】
CT装置1は、ガントリー20と、トンネル状の開口9と、患者支持装置10と、制御装置30とを有する。ガントリー20は、固定支持フレーム21及びロータ24を備えている。ロータ24は、回転軸受装置により回転軸の周りに、固定支持フレーム21に対して回転可能に、固定支持フレーム21に対して配置されている。トンネル状の開口部9に患者13を挿入することができる。トンネル状の開口部9には取得領域4がある。取得領域4に、電磁ビーム27が放射線源26から画像化される領域に達し、さらに、画像化される領域との相互作用の後で量子計数型X線検出器28に到達することができるように、画像化される患者13の領域、特に測定視野を、配置することができる。患者支持装置10は、患者13を支持するための支持テーブル11及び移動プレート12を備えている。移動プレート12は、移動プレート12を移動プレート12の縦方向に取得部4に挿入できるように、支持テーブル11に対して相対的に移動可能に支持テーブル11上に配置されている。
【0148】
CT装置1は、電磁ビーム27に基づいてCT測定データを取得するために構成されている。CT装置1は、放射線源26、特にX線源と、量子計数型X線検出器28とを備えたCT測定データ取得ユニットを有する。放射線源26はロータ24に配置され、放射線量子27を有するビーム27、特にX線ビームを放射するために構成されている。量子計数型X線検出器28は、ロータ24に配置されており、放射線量子27の検出のために構成されている。放射線量子27は、放射線源26から画像化される患者13の領域に達することができ、画像化される領域との相互作用の後で量子計数型X線検出器28に衝突することができる。このようにして、この収集ユニットを用いて、画像化される領域のCT測定データを収集することができる。
【0149】
制御装置30は、上記の収集ユニットによって収集されたCT測定データを受信し、処理するために構成されている。制御装置30は、CT装置1を制御するために構成されている。
【0150】
CT装置1は、入力ユニット38と表示ユニット39とを有し、それぞれが制御装置30に接続されている。入力ユニット38は、制御情報、例えば、画像再構成パラメータ及び/又は検査パラメータ、を入力するように形成されている。表示ユニット39は特に、取得したCT測定データ、特に、そのCT測定データから再構成されたCT画像データを表示するように形成されている。
【0151】
図示されたCT装置1は、もちろん、このようなCT装置1が通常有する他の要素を含むことができる。CT装置1の一般的な機能も当業者に知られているので、他の構成要素の詳細な説明は省略する。
【0152】
図示の演算装置35は、少なくとも1つの演算モジュール36を含む。このように、このCT装置1は演算装置35と共に、本発明による方法を実行すべく構成されている。この演算装置はCT装置1の制御装置30からCT測定データを取得することができる。この目的のために、演算装置35は好適にデータ交換に関してCT装置11の制御装置30と接続されている。この替わりに、演算装置35は、本発明による方法を実行するために単独で構成することもできる。この目的のために、演算装置35はCT測定データを一般的には、データベースからロードする、及び/又は、CT装置1から読み出す。
【0153】
図2は、患者の照射計画
立案に使用する
ための結果データを提供するための本発明による方法の第1の実施形態のフローチャートを示している。
【0154】
方法ステップ40で、量子計数型X線検出器を備えたCT装置によって取得された患者のCT測定データを収集する。
【0155】
方法ステップ41で上記のCT測定データの処理が行われ、このCT測定データの処理において、CT測定データ取得時に量子計数型X線検出器を使用することによって明らかになるCT測定データの特有の情報内容が考慮され、さらに、このCT測定データの処理において、患者の照射計画立案に使用するための結果データが生成される。
【0156】
方法ステップ42では、この結果データを患者の照射計画立案時に使用できるように、この結果データがインターフェースに提供される。
【0157】
本発明による方法は、方法ステップ43において患者の照射計画立案が実行されるように、拡張することができる。この場合、結果データはインターフェースから読みだされ、患者の照射計画立案時に使用される。
【0158】
以下の記載は基本的に
図2の実施例との相違点に限定されており、同一の方法ステップについては
図2の実施例の記載を参考にされたい。基本的に同一の方法ステップには原則として同じ参照符号が付されている。
【0159】
図3は、本発明による方法の第2の実施形態のフローチャートを示したものである。
【0160】
方法ステップ40におけるCT測定データの収集は、方法ステップ40-1において、量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるスペクトル分解されたCT測定
データの収集を含む。これに代えて又はこれに加えて、このCT測定データの収集は、定量的材料係数の空間分解分布を計算するために、前もって取得されスペクトル分解されたCT測定データをデータベースから読み出すことを含むことができる。このスペクトル分解されたCT測定データは、軸方向の測定層における、患者の全身と、患者の位置決めに使用される位置決め補助具の両方を含む測定視野を有利にカバーしている。
【0161】
方法ステップ41におけるCT測定データの処理は、方法ステップ41-1において、スペクトル分解されたCT測定データから定量的材料係数の空間分解分布を計算することを含む。結果データの提供は、方法ステップ42-1において、この定量的材料係数の空間分解分布をインターフェースへ提供することを含む。
【0162】
図3には、このCT測定データの処理が、2つの異なる定量的材料係数の2つの
空間分解分布の計算を含む、という有利な手順を示している。すなわち、前述の
スペクトル分解されたCT測定データから、方法ステップ41-1において第1の定量的材料係数の第1の
空間分解分布が、そして、方法ステップ41-2において第2の定量的材料係数の第2の
空間分解分布が、計算される。したがって、
図3による方法ステップ42での結果データの提供は、方法ステップ42-1における第1の線量計算アルゴリズムのための第1の定量的材料係数の第1の
空間分解分布の提供と、方法ステップ42-2における第2の線量計算アルゴリズムのための第2の定量的材料係数の第2の
空間分解分布の提供とを含む。この場合、例えば、第1の定量的材料係数は電子密度であり、第2の定量的材料係数は実効原子番号である。また、第1の定量的材料係数及び第2の定量的材料係数は、互いに線形に独立した2つのベース材料に基づいていることも考えられる。
【0163】
図3には示されていない次の手順は有利である。すなわち、CT測定データの処理が、第1の定量的材料係数の第1の
空間分解分布と第2の定量的材料係数の第2の
空間分解分布との別々の処理、および、この別々の処理で得られた部分結果データの組み合わせによる結果データの生成を含む。
【0164】
図3には、また、次の手順が示されている。すなわち、CT測定データの処理が、
スペクトル分解されたCT測定データから定量的材料係数の
空間分解分布を計算することに加えて、方法ステップ41-3において、その
スペクトル分解されたCT測定データにおける標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別を含む。この場合、
スペクトル分解されたCT測定データが標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別のために異なる組織タイプ間の特に適切なコントラストを有するような、量子計数型X線検出器の受信パラメータを用いることによってこの
スペクトル分解されたCT測定データが取得されているという、有利な手順が考えられる。
【0165】
図3に示されたケースでは、CT測定データの処理が、方法ステップ41-4において、
スペクトル分解されたCT測定データに含まれているスペクトル情報を用いて、この
スペクトル分解されたCT測定データのビームハードニング補正が行われることを含み、この場合、定量的材料係数の
空間分解分布の計算は、このビームハードニング補正により補正された、
スペクトル分解されたCT測定データに基づいて行われる。もちろん、
図3に示されている手順とは反対に、補正されていないCT測定データから定量的材料係数を直接計算することもできる。
【0166】
図4は、本発明による方法の第3の実施形態のフローチャートを示す。
【0167】
図4に示されるケースでは、CT測定データの処理が、方法ステップ41-5において、CT測定データ中の標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別を含む。このようにして、方法ステップ42-3において、結果データの提供は、識別された標的ボリューム及び/又はリスクボリュームをインターフェースに提供することを含む。
【0168】
ここで、
図4に示されるケースでは、方法ステップ41-5-1において、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別は、その標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの組織の周囲組織からの区別を含み、この場合、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの周囲組織からのこの区別は、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を利用して行われる。
【0169】
また、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が、脂肪組織と筋肉組織との区別を含むという有利な手順も考えられ、この場合、この脂肪組織と筋肉組織との区別は、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を利用して行われる。
【0170】
これに代えて又はこれに加えて、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が、灰白質と白質の区別を含むという手順も考えられ、この場合、灰白質と白質の区別は、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を利用して行われる。
【0171】
これに加えて、
図4には、次の手順が示されている。すなわち、方法ステップ40-1において、CT測定データの収集が、量子計数型X線検出器を用いて取得された
スペクトル分解されたCT測定データの収集を含み、方法ステップ41-4において、CT測定データの処理が、
スペクトル分解されたCT測定データに含まれているスペクトル情報を使用することにより、
スペクトル分解されたCT測定データのビームハードニング補正を含み、さらに、方法ステップ41-5-2において、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が、ビームハードニング補正によって補正された、
スペクトル分解されたCT測定データにおける複数の骨構造の区別を含む。この場合、患者の頭蓋底領域の複数の骨構造が互いに有利に区別される。
【0172】
もちろん、方法ステップ41-5-1において、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別には、骨構造の識別、及び/又は、灰白質と白質との区別、及び/又は、脂肪組織と筋肉組織との区別を含めることができる。
【0173】
図5は、本発明による方法の第4の実施形態のフローチャートを示す。
【0174】
図5に示された手順では、CT測定データの収集が、方法ステップ40-2における第1のCT測定データセットの収集、及び、方法ステップ40-3における第2のCT測定データセットの収集を含んでいる。ここで、第1のCT測定データセットは、第2のCT測定データセットよりも高い量子計数型X線検出器のエネルギー閾値を用いて取得されている。CT測定データの処理は、方法ステップ41-6において、前記第1のCT測定データセットと前記第2のCT測定データセットとの重み付けされた組合せを作成することを含み、この時、組み合わされたCT測定データが生成される。このようにして、方法ステップ41-5において、この組み合わされたCT測定データにおける標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が行われる。
【0175】
ここで
図5には次のような好適な手順が示されている。すなわち、このCT測定データの処理が、方法ステップ41-7において、第1のCT測定データセットからのビームハードニング補正のための情報の抽出を含み、さらに、方法ステップ41-8において、この抽出された情報に基づく上述の組み合わされたCT測定データのビームハードニング補正を含む。このようにして、方法ステップ41-5において、ビームハードニング補正により補正された、組み合わされたCT測定データにおける標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの識別が行われる。
【0176】
さらに、方法ステップ41-6-1において、空間的に変動する重み係数を用いて、第1のCT測定データセットと第2のCT測定データセットとの重み付けされた組み合わせが作成される。この目的のために、
図5に示されたケースでは、CT測定データの処理の方法ステップ41-6-2において、最初に、標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの大まかな識別が行われ、この場合、大まかに区別された標的ボリューム及び/又はリスクボリュームに基づいて空間的に変化する重み係数が定義され、次に、組み合わされたCT測定データにおいて標的ボリューム及び/又はリスクボリュームの詳細な識別が行われる。
【0177】
図6は、本発明による方法の第5の実施形態のフローチャートを示す。
【0178】
図6によるCT測定データの収集は、方法ステップ40-4において、量子計数型X線検出器による高解像度のCT測定データの取得を含み、この場合、高解像度のCT測定データを取得するために量子計数型X線検出器の高解像度モードが使用され、この場合、高解像度モードでは量子計数型X線検出器の各ピクセルは別々にカウントされる。
【0179】
このようにして、CT測定データの処理には、方法ステップ41-9において、高解像度CT測定データから定量的材料係数の空間分解分布を計算することが含まれる。したがって、方法ステップ42-4において、結果データの提供は、定量的材料係数の空間分解分布をインターフェースへ提供することを含む。
【0180】
図6には、次のような好適な手順が示されている。すなわち、方法ステップ41-9-1において、患者の骨組織に対する定量的材料係数の
空間分解分布の計算には高解像度のCT測定データが変更されずにそのまま入力され、方法ステップ41-9-3において、患者の軟部組織に対する定量的材料係数の
空間分解分布の計算にはこの高解像度CT測定データが解像度を低下されて入力される。この場合、高解像度のCT測定データの低下された解像度は、方法ステップ41-9-2において、フィルタカーネルを用いて高解像度CT測定データをフィルタリングすることにより得られる。
【0181】
また、
図6にはこれに加えて次の好適な手順が示されている。すなわち、方法ステップ41-9-4において、定量的材料係数の
空間分解分布の計算が、高解像度CT測定データから阻止能の
空間分解分布を計算することを含み、さらに、方法ステップ42-5において、結果データの提供が、患者の粒子線照射計画を立案するために阻止能の
空間分解分布を提供することを含む。
【0182】
一般的に、高解像度のCT測定データからの定量的材料係数の空間分解分布の計算は、患者の次の身体領域、
患者の眼領域、
患者の三叉神経の経路によって記述される身体領域、
患者の頭蓋底、
患者の肺領域、
の少なくとも1つについて行われる。
【0183】
図7は、本発明による方法の第6の実施形態のフローチャートを示す。
【0184】
図7には次の手順が示されている。すなわち、
方法ステップ40-5において、CT測定データの収集が、量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになる
スペクトル分解され且つ
時間分解されたCT測定データの収集を含み、
方法ステップ41-10において、CT測定データの処理が、前記
スペクトル分解され且つ
時間分解されたCT測定データから定量的材料係数の
空間分解分布及び
時間分解分布を計算することを含み、
方法ステップ42-6において、結果データの提供が、定量的材料係数の
空間分解分布及び
時間分解分布をインターフェースへ提供することを含む。
【0185】
この場合、スペクトル分解され且つ時間分解されたCT測定データは有利には患者の次の身体領域、
患者の肝臓領域、
患者の膵臓領域、
患者の胸部領域、
のうちの少なくとも1つから収集される。
【0186】
図8は、本発明による方法の第7の実施形態のフローチャートを示す。
【0187】
図8によれば、方法ステップ40-6における患者のCT測定データの収集は、量子計数型X線検出器を有するCT装置によるCT測定データの取得を含み、この場合、CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の検出パラメータが変更される。
【0188】
特に、CT測定データの取得中に以下の検出パラメータ、
量子計数型X線検出器のエネルギー閾値、
量子計数型X線検出器のピクセルの組合せに応じて量子計数型X線検出器の解像度、
のうちの少なくとも1つが変更される。
【0189】
図8に示すケースでは、量子計数型X線検出器の検出パラメータがCT測定データの取得中に次のように変更される。すなわち、方法ステップ40-6-1において、患者の第1の身体領域のCT測定データを取得するために検出パラメータの第1の設定がなされ、方法ステップ40-6-2において、患者の第2の身体領域のCT測定データを取得するために検出パラメータの第2の設定がなされる。方法ステップ40-6-3では、患者の既存の医学的画像データに基づいて、及び/又は、アトラスデータベースを使用して、第1の身体領域および第2の身体領域を、CT測定データの取得前に確定する。CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の検出パラメータは、患者の第1の身体領域からのCT測定データの取得のために、患者の第2の身体領域からのCT測定データの取得のためよりも、量子計数型X線検出器のより高い解像度が設定されるように、有利に変更される。
【0190】
これらの身体領域は、以下の複数の特性に応じて選択することができる。この場合、これらの特性の任意の組み合わせが考えられる。
第1の身体領域が照射の標的ボリュームを含み、第2の身体領域が照射の標的ボリュームの外側に位置する身体領域を含む。
第1の身体領域は患者が照射されたときに照射範囲内に位置するように構成され、第2の身体領域は患者が照射されたときに照射範囲外に位置するように構成される。
第1の身体領域及び第2の身体領域は、患者が照射されたときに、第1の身体領域に対して第2の身体領域よりも高い照射線量が与えられるように構成される。
【0191】
これに代えて又はこれに加えて、図示されていない次の手順も考えられる。すなわち、CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の検出パラメータは、患者の長手方向に沿った第1のz位置におけるCT測定データを取得するために検出パラメータの第1の設定が行われ、患者の長手方向に沿った第2のz位置におけるCT測定データの取得のために検出パラメータの第2の設定が行われる、ように変更される。
【0192】
これに代えて又はこれに加えて、図示されていない次の手順も考えられる。すなわち、CT測定データの取得中に量子計数型X線検出器の検出パラメータは、そのCT装置の検出器-エミッタ系の第1の回転位置におけるCT測定データを取得するために検出パラメータの第1の設定がおこなわれ、さらに、そのCT装置の検出器-エミッタ系の第2の回転位置におけるCT測定データを取得するために検出パラメータの第2の設定がおこなわれるように、変更される。
【0193】
図9は、本発明による方法の第8の実施形態のフローチャートを示す。
【0194】
図9によれば、方法ステップ42-7において、インターフェースは、患者の照射に使用された放射線治療装置の画像形成デバイスによって収集される更なる測定データを収集し、この場合、患者の照射計画
立案のために、方法ステップ42-8において、結果データがこの更なる測定データと関連付けて設定される。好適に、患者を照射するために使用された放射線治療装置の画像形成デバイスが同様に量子計数型X線検出器を有しており、この場合、CT測定データ及び更なるCT測定データを取得する際に量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データ及び更なるCT測定データの特有の情報内容を利用することによって、結果データをこの更なる測定データと関連付けて設定することができる。
【0195】
図10は、本発明による方法の第9の実施形態のフローチャートを示す。
【0196】
図10によれば、方法ステップ40-7において第1のCT測定データセットが収集され、方法ステップ40-8において第2のCT測定データセットが収集される。両方のCT測定データセットは、いずれも異なる時期に収集されている。方法ステップ41-11において、これら少なくとも2つのCT測定データセットが、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を使用して、登録される。方法ステップ42-9において、登録された少なくとも2つのCT測定データセットがインターフェースに提供される。
【0197】
図11は、本発明による方法の第10の実施形態のフローチャートを示す。
【0198】
図11に示されるケースでは、方法ステップ40-9において、CT測定データの取得中に造影剤が使用されている。
【0199】
第1の可能な適用によれば、方法ステップ41-12において、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を利用することによって、CT測定データの処理に、造影剤を有する組織と残りの組織におけるCT測定データの造影剤分離が含まれる。この造影剤分離は、方法ステップ42-10においてインターフェースに提供される。
【0200】
これに代えて又はこれに加えて、第2の適用オプションを使用することができる。この場合には、方法ステップ41-13において、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を利用することによって、CT測定データの処理に、仮想非造影コントラストCT画像を生成することが含まれ、この場合、方法ステップ42-11において、この仮想非造影CT画像がインターフェースに提供される。
【0201】
最後に、
図11には更に次の手順も示されている。すなわち、方法ステップ41-14において、CT測定データ取得時に少なくとも1つの量子計数型X線検出器を使用することにより明らかになるCT測定データの特有の情報内容を利用することによって、このCT測定データの処理に、患者の照射効果を高めるために患者の中に存在する金属ナノ粒子の識別及び/又は定量化が含まれる。
【0202】
図2から11に示した本発明による方法のステップは、演算装置によって実行される。この目的のために、この演算装置には必要なソフトウェア及び/又はコンピュータプログラムが含まれており、これらは演算装置の記憶ユニットに記憶されている。これらのソフトウエア及び/又はコンピュータプログラムにはプログラム手段が含まれており、このプログラム手段は、演算装置内のコンピュータプログラム及び/又はソフトウエアが演算装置のプロセッサユニットにより実行される時に、本発明による方法を実行するように構成されている。
【0203】
本発明を好ましい実施例により詳細に図解し説明したが、本発明は開示された例に限定されるものではなく、そこからその他の変形を、本発明の保護範囲を離れることなく、当業者により導き出すことができる。