(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】無段変速機用の駆動ベルトための横断セグメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/02 20060101AFI20230731BHJP
B21D 22/02 20060101ALI20230731BHJP
B21D 53/14 20060101ALI20230731BHJP
F16G 5/16 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B21D28/02 Z
B21D22/02 A
B21D53/14
F16G5/16 C
(21)【出願番号】P 2020536238
(86)(22)【出願日】2018-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2018025339
(87)【国際公開番号】W WO2019129386
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-08
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム ヘラルト フーベルテュス ロンペン
(72)【発明者】
【氏名】マウト フルーナー
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト ファン デン ヘーフェル
(72)【発明者】
【氏名】イェルーン ヨハネス アーノルデュス マリニュス ボルフハーツ
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/02
B21D 22/02
B21D 53/14
F16G 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無段変速機の駆動ベルト(3)での使用に適した横断セグメント(8)の製造方法であって、ダイ(80)、ガイドプレート(70)、打抜きパンチ(30)およびカウンタパンチ(40)を備える打抜きデバイス(60)によって、前記横断セグメント(8)を、比較的厚い平坦な部分(51)および比較的薄い平坦な部分(52)が設けられた基本材料(50)から打ち抜く、横断セグメント(8)の製造方法において、
前記打抜きパンチ(30)または前記カウンタパンチ(40)のいずれかの端面(41)に突起(42)を設け、前記打抜きパンチ(30)および前記カウンタパンチ(40)を、前記基本材料(50)の両側から該基本材料(50)に押し付けることで、先ず窪み(100)を前記基本材料(50)の前記比較的薄い平坦な部分(52)に押圧形成し、その後、前記打抜きパンチ(30)を前記基本材料(50)に押し通すことで、前記横断セグメント(8)が前記基本材料(50)から切り離され
、
前記基本材料(50)の前記比較的厚い平坦な部分(51)と前記比較的薄い平坦な部分(52)との間に、
突然の厚さの減少、すなわち本質的に段階的な厚さの減少を規定する段差を設ける、
漸減する厚さを規定するテーパを設ける、または
このような段差とこのようなテーパを並んで設け、
前記窪み(100)は、切り抜かれる前記横断セグメント(8)の局部の全幅に亘って延びる細長の形状に形成されることを特徴とする、横断セグメント(8)の製造方法。
【請求項2】
無段変速機の駆動ベルト(3)での使用に適した横断セグメント(8)の製造方法であって、ダイ(80)、ガイドプレート(70)、打抜きパンチ(30)およびカウンタパンチ(40)を備える打抜きデバイス(60)によって、前記横断セグメント(8)を、比較的厚い平坦な部分(51)および比較的薄い平坦な部分(52)が設けられた基本材料(50)から打ち抜く、横断セグメント(8)の製造方法において、
前記打抜きパンチ(30)または前記カウンタパンチ(40)のいずれかの端面(41)に突起(42)を設け、前記打抜きパンチ(30)および前記カウンタパンチ(40)を、前記基本材料(50)の両側から該基本材料(50)に押し付けることで、先ず窪み(100)を前記基本材料(50)の前記比較的薄い平坦な部分(52)に押圧形成し、その後、前記打抜きパンチ(30)を前記基本材料(50)に押し通すことで、前記横断セグメント(8)が前記基本材料(50)から切り離され、
切り抜かれる前記横断セグメント(8)は、比較的厚い上部と比較的薄い下部とを備え、
前記窪み(100)は、前記横断セグメント(8)の前記下部で、該横断セグメント(8)の半径方向内側縁部、すなわち下縁部(23)の上方に形成されることを特徴とする
、横断セグメント(8)の製造方法。
【請求項3】
無段変速機の駆動ベルト(3)での使用に適した横断セグメント(8)の製造方法であって、ダイ(80)、ガイドプレート(70)、打抜きパンチ(30)およびカウンタパンチ(40)を備える打抜きデバイス(60)によって、前記横断セグメント(8)を、比較的厚い平坦な部分(51)および比較的薄い平坦な部分(52)が設けられた基本材料(50)から打ち抜く、横断セグメント(8)の製造方法において、
前記打抜きパンチ(30)または前記カウンタパンチ(40)のいずれかの端面(41)に突起(42)を設け、前記打抜きパンチ(30)および前記カウンタパンチ(40)を、前記基本材料(50)の両側から該基本材料(50)に押し付けることで、先ず窪み(100)を前記基本材料(50)の前記比較的薄い平坦な部分(52)に押圧形成し、その後、前記打抜きパンチ(30)を前記基本材料(50)に押し通すことで、前記横断セグメント(8)が前記基本材料(50)から切り離され、
切り抜かれる前記横断セグメント(8)は、比較的厚い上部と比較的薄い下部とを備え、
前記窪み(100)は、前記横断セグメント(8)の前記下部に形成され、該横断セグメント(8)の半径方向内側縁部、すなわち下縁部(23)と合流することを特徴とする
、横断セグメント(8)の製造方法。
【請求項4】
切り抜かれる前記横断セグメント(8)の前記下縁部(23)は、高さ方向で前記窪み(100)と交差し、それにより該窪み(100)は2つの部分(100a,100b)から構成されることを特徴とする、請求項
3記載の横断セグメント(8)の製造方法。
【請求項5】
前記窪み(100)は、切り抜かれる前記横断セグメント(8)の高さ方向で、少なくとも0.5mm、最大で1.5mmに亘って延びることを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項記載の横断セグメント(8)の製造方法。
【請求項6】
前記窪み(100)には、切り抜かれる前記横断セグメント(8)における直接隣接する部分に対して、10~100ミクロンの深さが設けられることを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1記載の横断セグメント(8)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、2つのプーリと駆動ベルトとを備える無段変速機用の該駆動ベルトの一部となる予定の横断セグメントの製造方法に関する。このような駆動ベルトは一般に知られており、2つの変速機プーリの周りかつ間を走行するように主として適用され、これらのプーリは可変幅のV字形の溝をそれぞれ画定し、該V字形の溝内に駆動ベルトのそれぞれの周部分が保持される。
【0002】
既知のタイプの駆動ベルトは、鋼、特にDIN 1.2003鋼(75Crl)から作られた横断セグメントの本質的に近接する列を備え、これらの横断セグメントは、同様に鋼、特にマルエージング鋼から作られた無端キャリアにまたはその周囲に取り付けられる。そのような各横断セグメントは、駆動ベルトの半径方向外側またはその軸線方向側のいずれかに向かって開きかつ無端キャリアのそれぞれの周区域を収容し、かつ閉じ込める一方、横断セグメントが無端キャリアの周囲に沿って移動できるようにするスロットを画定する。無端キャリアは、半径方向に相互に積み重ねられたいくつかの平坦で薄いリングによって形成される。当技術分野ではプッシュベルトとも呼ばれるこの特定のタイプの駆動ベルトは、例えば、国際公開第2015/177372号および国際公開第2015/101659号から知られている。
【0003】
上記および下記の説明において、軸線方向、半径方向、および周方向は、円形姿勢に置かれたときの駆動ベルトに対して定義される。横断セグメントの厚さ方向および厚さ寸法は、駆動ベルトの周方向で定義され、横断セグメントの高さ方向および高さ寸法は、前記半径方向で定義され、横断セグメントの幅方向および幅寸法は、前記軸線方向で定義される。リング積層体の厚さ方向および厚さ寸法は、前記半径方向で定義され、リング積層体の幅方向および幅寸法は、前記軸線方向で定義される。
【0004】
駆動ベルトの横断セグメントの列では、横断セグメントの本体部分前面の少なくとも一部分が、前記列内のそれぞれ先行する横断セグメントの本体部分後面の少なくとも一部分に当接し、その一方で、横断セグメントの本体部分後面の少なくとも一部分は、それぞれ後続する横断セグメントの本体部分前面の少なくとも一部分に当接する。横断セグメントのこれらの前面および後面の少なくとも一方、例えば前面は、軸線方向に延びる凸状に湾曲した表面区域を含み、これを以下では揺動縁部と呼ぶ。この揺動縁部は、横断セグメントを半径方向外側または上部と、半径方向内側または下部とに分割し、そのうち下部は、下方に、すなわち半径方向内方に薄くなり、一方、上部は、少なくとも比較的一定の厚さを有する。そのようなより薄い下部によって、駆動ベルト内の当接する横断セグメントは、揺動縁部を軸として枢動するとともに該揺動縁部を介した相互接触を維持しながら、互いに対して傾斜する、すなわち回転することができる。このように、揺動縁部と横断セグメントのより薄い下部との特徴が協働して、駆動ベルトは、変速機プーリによって与えられる湾曲した軌道をたどることができる。
【0005】
とりわけ、横断セグメントのより薄い下部は、基本材料の突然の、すなわち本質的に段階的な厚さ減少を提供する段差から開始してもよく、または基本材料には、基本材料の漸減する厚さを提供するテーパ状の中央部分もしくはそのようなテーパ状の中央部分と厚さ段差との組合せが設けられてもよいことに留意されたい。
【0006】
横断セグメントは、通常、既知の打抜き装置による既知の打抜きプロセスにおいて、基本材料のストリップまたはプレートから製造される、すなわち切り抜かれて形作られる。既知の打抜き装置は、ダイ、ガイドプレート、および打抜きパンチを備え、そのうち打抜きパンチには、形成すべき横断セグメントの外側輪郭に本質的に対応する輪郭が設けられ、一方でダイおよびガイドプレートには、対応する輪郭を有する内部キャビティが設けられ、これらのキャビティには打抜きパンチが収容される。既知の打抜きプロセスでは、基本材料はガイドプレートとダイとによってガイドプレートとダイとの間にクランプされ、打抜きパンチが基本材料をガイドプレートの側からダイの側まで押し通すことにより、横断セグメントが基本材料から切り抜かれる。さらに、既知の打抜き装置および打抜きプロセスでは、カウンタパンチまたはエジェクタが、打抜きパンチに対して基本材料の反対側に適用される。この後者の打抜き装置の配置により、打抜きパンチとカウンタパンチとのそれぞれの端面によってこれらの間に基本材料をクランプし、該端面を基本材料のストリップまたはプレートにその両側から係合させることによって基本材料を塑性変形させて、横断セグメントの打抜き中に、横断セグメントの前面および/または後面を厚さ方向に形作ることができる。特に、揺動縁部は、カウンタパンチの端面の凹状に湾曲した区域によってこのように形作られる。
【0007】
本開示によれば、既知の打抜きプロセスは、横断セグメントの結果として生じる厚さに関して、大量生産において制御することが困難である。特に、比較的小さい厚さの変動が、横断セグメントの幅または高さに沿って、特に揺動縁部の幅に沿って、または揺動縁部と横断セグメントの上部との間に発生する可能性がある。前記カウンタパンチを使用することにより、そのような厚さの変動自体は比較的小さい(すなわち、ミクロンオーダにすぎない)が、駆動ベルトにおけるこれらの変動は、当接する横断セグメントの前記列に不利に蓄積して、駆動ベルトの動作中に望ましくない振動を引き起こすか、かつ/または応力レベルを増加させる可能性がある。したがって、実際には、基本材料の前記より厚い部分および前記より薄い部分の厚さおよび平面度に関して、ならびに打抜きプロセスおよび打抜き装置の精度および一貫性に関して、非常に高い要件が定められている。
【0008】
本開示は、これらの要件を解消しつつ、このようにして製造される横断セグメントの慣例的な生産速度および/または(形状)精度を維持あるいは可能であれば改善することを目的とする。
【0009】
本開示によれば、そのような目的は、以下の両方、すなわち、
-一定であるが相互に異なる厚さの2つの平坦な部分が予備成形された基本材料であって、そのうちより厚い部分が、少なくとも、形成すべき横断セグメントの前記上部の半径方向最外部分に対応し、より薄い部分は、少なくとも、形成すべき横断セグメントの前記下部の半径方向最内部分に対応する基本材料と、
-形成すべき横断セグメントの幅方向に延在し、基本材料のより薄い部分に係合する突起、すなわち高位区域が設けられた端面を有するカウンタパンチおよび/または打抜きパンチと、を適用し、さらに
-打抜きパンチを基本材料に押し通すことによって横断セグメントを実際に切り抜く前に、前記突起を基本材料に押し込むことにより、基本材料のより薄い部分に窪みを形成することを適用した新規の打抜きプロセスで実現することができる。
【0010】
本開示によれば、打抜きパンチとカウンタパンチとの間でその前記突起で加えられる圧力によって、形成すべき横断セグメントは、横断セグメントの実際の切抜き中に、その揺動縁部および該揺動縁部の半径方向外方でだけでなく、揺動縁部から半径方向内方に或る程度の距離離れた位置でも堅固にクランプされ、所定の位置に保持される。これにより、横断要素はより高い精度で形成される。より詳細には、ここでは、カウンタパンチによって、形成すべき横断セグメントには、その揺動縁部およびそのより厚い上部にだけでなく、または少なくとも主としてではなく、そのより薄い下部にも、または少なくもなおさら、圧力が加えられる。形成すべき横断セグメントの高さに亘るそのようなより広く、より均等に分布した圧力分布は、切抜き中に基本材料が打抜きパンチおよび/またはカウンタパンチに対してシフトする傾向および/または傾斜する傾向を有利に低減させる。
【0011】
好ましくは、突起は、形成すべき横断セグメントの局所的な幅全体に亘って延びるように細長に形成され、それにより突起を、カウンタパンチおよび/または打抜きパンチの端面に比較的容易に設けることができる。好ましくは、細長の突起の長手方向、より具体的には、その好ましい二等辺台形形状の基礎部は、横断セグメントの幅方向に、より好ましくは横断セグメントの下部の全幅に亘って延びる。横断セグメントの高さ方向において、細長の突起は、好ましくは少なくとも0.5mm、最大でも1.5mm、より好ましくは約1mmに亘って延びる。好ましくは、細長の突起は、カウンタパンチおよび/または打抜きパンチの端面の直接隣接する区域に対して10~100ミクロン、好ましくは10~50ミクロン突出し、それにより、突起によって横断セグメントの下部に形成される窪みも、約10~100ミクロンの深さを示す。
【0012】
細長の突起および該突起によって形成される前記窪みの前述の寸法は、特に、前記より厚い部分が1~2mmの範囲の厚さを有し、前記より薄い部分が0.5~1.5mmの範囲の厚さを有する基本材料に適用される。
【0013】
カウンタパンチおよび/または打抜きパンチの突起によって横断セグメントに形成される窪みは、横断セグメントの半径方向内側縁部、すなわち横断セグメントの下縁部から或る程度の距離を置いて位置させることができる。本開示による打抜きプロセスのこの特定の実施形態では、基本材料は、横断セグメントの実際の切抜き中に、最適にクランプされ、所定の位置に保持される。好ましくは、この実施形態では、溝は、横断セグメントの下縁部から0.5~1.5mmだけ、特に、前記高さ方向における溝の寸法に対応する距離だけ離れている。
【0014】
本開示による打抜きプロセスの代替的な実施形態では、カウンタパンチおよび/または打抜きパンチの前記細長の突起は、横断セグメントの下縁部と合流する。この場合、打抜きプロセスにおいて、細長の突起によって横断セグメントの下部に段差が形成され、該段差の半径方向内方に前記窪みが横断セグメントの下縁部まで延びる。したがって、打抜きプロセスのこの特定の実施形態では、横断セグメントの下部の半径方向最内部分は、横断セグメントの他の部分に比べて厚さが減少させられている。この後者の特徴は、駆動ベルト内で当接する横断セグメントを、そのような厚さの減少した半径方向最内部分がない場合よりも互いに対してさらに傾けることができるという利点を有する。したがって、そのような厚みの減少した半径方向最内部分により、駆動ベルトは変速機プーリでより狭く湾曲した軌道をたどることができ、それにより、例えば、変速機によって提供される変速比の範囲を有利に拡大させることができる。これに関して、代替的には、基本材料に、横断セグメントのそのような厚みの減少した半径方向最内部分に対応する第3の平坦な部分を予備成形できることに留意されたい。しかしながら、この後者の解決策はもちろん、ここで考慮した改善を打抜きプロセスに提供しないであろう。
【0015】
好ましくは、前記細長の突起は、横断セグメントの揺動縁部を形成するために凹状に湾曲した区域も設けられる、カウンタパンチの端面に設けられる。この場合、打抜きパンチの端面は、主として平坦な表面として設けることができる。
【0016】
次に、横断セグメントを製造するための上記の方法を、図面を参照した以下の説明に基づき、一例としてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】2つのプーリおよび1つの駆動ベルトを有する変速機の簡略化された概略斜視図である。
【
図2】既知の駆動ベルトの、その周方向に向いた断面図を示し、該駆動ベルトの横断セグメントのみの別個の側面図も含む。
【
図3】打抜き装置の打抜き領域の断面において、基本材料から横断セグメントを打ち抜く基本プロセスを示す概略図である。
【
図4】
図3の打抜きプロセスで使用される基本材料の上面図、および該基本材料の断面図である。
【
図5】基本材料の代替的な実施形態における基本材料の断面図である。
【
図6】本開示の第1の実施形態における本開示による新規の打抜きプロセスを示す概略図である。
【
図7】
図6にしたがう新規の打抜きプロセスの第1の実施形態で得られる横断セグメントの実施形態を示す概略図である。
【
図8】本開示の第2の実施形態における本開示による新規の打抜きプロセスを示す概略図である。
【
図9】新規の打抜きプロセスの第2の実施形態で得られる横断セグメントの第1の実施形態を示す概略図である。
【
図10】新規の打抜きプロセスの第2の実施形態で得られる横断セグメントの第2の実施形態を示す概略図である。
【0018】
図1は、自動車の駆動系におけるエンジンと駆動輪との間に一般的に適用される既知の無段変速機またはCVTの中心的な部分を示している。この変速機は、プーリシャフト6または7に取り付けられた一対の円錐プーリディスク4,5がそれぞれ設けられた2つのプーリ1,2を備え、プーリディスク4,5の間には、主としてV字形の周プーリ溝が画定されている。各対のプーリディスク4,5の、すなわち各プーリ1,2の少なくとも一方のプーリディスク4は、それぞれのプーリ1,2のプーリシャフト6,7に沿って軸線方向に移動可能である。プーリシャフト6,7間で回転運動および付随するトルクを伝達するために、駆動ベルト3が、プーリ1,2の周りに閉ループ式に巻き付けられ、プーリ1,2のプーリ溝内に位置している。
【0019】
変速機は、通常、作動手段(図示せず)をも備え、作動手段は、駆動ベルト3がそのような各ディスク対4,5の間にクランプされるように、少なくとも動作中に、各プーリ1,2において軸線方向に移動可能な前記プーリディスク4に、該プーリ1,2におけるそれぞれ他方のプーリディスク5に方向付けられた、軸線方向に向けられたクランプ力を加える。これらのクランプ力は、前記トルクを伝達するために駆動ベルト3とそれぞれのプーリ1,2との間で最大限に発揮され得る摩擦力を決定するだけでなく、プーリ溝内での駆動ベルト3の半径方向位置Rも決定する。これらの半径方向位置Rは、変速機の速度比を決定する。この種の変速機およびその動作は、それ自体よく知られている。
【0020】
駆動ベルト3は、相互に入れ子にされたいくつかの連続バンドまたはリング10の束からなる2つの無端キャリア9を備える(
図2を参照)。横断セグメント8は、キャリア9上に配置され、該キャリア9の全周に沿って本質的に隣接する列を形成する。明瞭さを改善するために、これらの横断セグメント8のいくつかだけが
図1に個別に示されている。横断セグメント8は、無端キャリア9に対して、少なくともその周方向に移動可能に設けられる。
【0021】
図2は、既知の駆動ベルト3の横断セグメント8をより詳細に示している。
図2では、横断セグメント8の正面図が、駆動ベルト3の周方向を向く、該駆動ベルト3の断面で示され、横断セグメント8のみの側面図も
図2に同様に含まれている。
【0022】
図2の垂直方向において、この垂直方向は、変速機の外部で円形姿勢に置かれたときの駆動ベルト3の半径方向に対応し、横断セグメント8は、主として台形形状の本体部分13と、比較的狭いネック部分14と、主として三角形状のヘッド部分15とを順に備える。駆動ベルト3において、そのキャリア9は、ネック部分14の両側に、すなわち、横断セグメント8の本体部分13とヘッド部分15との間に位置する。
【0023】
横断セグメント8の周面16,17は、ネック部分14の両側にある、本体部分13の2つの支持面16を備え、各支持面16は2つの無端キャリア9のそれぞれ1つを半径方向外向きに支持するのに役立つ。さらに、横断セグメント8の周面16,17は、横断セグメント8の各軸線方向側に本体部分13の2つの接触面17を含み、該接触面17は、横断セグメント8がそれぞれのプーリ1,2の周りを移動するときにプーリディスク4,5に接触するのに役立つ。
【0024】
横断セグメント8の本体部分前面は、概して参照符号11によって示され、一方、横断セグメント8の本体部分後面は、参照符号12によって概して示される。横断セグメント8の本体部分13の前面11に、揺動縁部18が画定される。揺動縁部18は、前面11の凸状に湾曲した領域によって表され、この領域は、前記前面11の、互いに対してある角度で配向された2つの区域を分離するとともに、横断セグメント8の全(軸線方向)幅に沿って延びる。揺動縁部18は、支持面16の近くに位置するが、それでもなお支持面16の下方に、すなわち支持面16の半径方向内方に或る程度の距離離れて位置している。揺動縁部18の重要な機能は、前記横断セグメント8がプーリ4,5において互いに対して傾斜した姿勢にあるときに、隣接する横断セグメント8の間に相互の押圧接触を提供することである。
【0025】
揺動縁部18の下方に或る距離離れた位置、すなわち横断セグメント8の本体部分13にも、その前面11に段差20が画定される。段差20は、横断セグメント8の厚さの局所的な、すなわち段階的な変化を表す。したがって、そのような段差20のすぐ下では、横断セグメント8の厚さは、段差20のすぐ上よりも小さい。
【0026】
また、横断セグメント8の前面11には、スタッド21が設けられている。図示の例では、スタッド21は、ヘッド部分15に配置されており、後面12に設けられたわずかに大きい穴22に対応する位置にある。
図2では、穴は破線によって描かれており、参照符号22で示されている。駆動ベルト3において、横断セグメント8のスタッド21は、隣接する横断セグメント8の穴22の内部に少なくとも部分的に位置する。スタッド21および対応する穴22は、駆動ベルト3の周方向に垂直な平面における隣接する横断セグメント8の相互変位を防止または少なくとも制限するのに役立つ。
【0027】
横断セグメント8は、
図3に示されている打抜きプロセスで、基本材料のストリップ50から切り抜かれる。基本材料のストリップ50は輪郭が付けられており、特に、横断セグメント8の前記段差20に対応する厚さ段差53が予備成形されている。
【0028】
図3では、打抜きプロセスの4つの段階が、打抜き装置60の概略断面図で表されている。打抜き装置60には、打抜きパンチ30、カウンタパンチ40、ガイドプレート70およびダイ80が適用される。打抜きパンチ30およびカウンタパンチ40には、形成すべき横断セグメント8の外側輪郭に本質的に対応する外側輪郭が設けられている。ガイドプレート70には内部キャビティ71が設けられ、ダイ80には内部キャビティ81が設けられている。両方のキャビティ71,81にも、横断セグメント8の外側輪郭に本質的に対応する内側輪郭が設けられており、打抜きパンチ30およびカウンタパンチ40が収容される。打抜きパンチ30の端面31は、基本材料50の一方の面と係合するように配置され、カウンタパンチ40の端面41は、基本材料50の他方の面と係合するように配置される。特に、カウンタパンチの端面41は、基本材料50の、前記厚さ段差53を有する面と係合し、基本材料のこの面は、形成すべき横断セグメント8の前面11に対応する。したがって、カウンタパンチの端面41は、揺動縁部18を形成するように、該揺動縁部に対して凹状に湾曲した区域を含むように形作られる。しかしながら、打抜きパンチ30およびカウンタパンチ40のこの特定の配置は、逆にしてもよい。
【0029】
打抜きプロセスの第1の段階Aでは、基本材料50が、一方では打抜きパンチ30とガイドプレート70との間に、他方ではカウンタパンチ40とダイ80との間に導入されるか、少なくとも前進させられる。打抜きプロセスの第2の段階Bでは、ガイドプレート70とダイ80との間にガイドプレート70およびダイ80によって基本材料50が堅固にクランプされ、所定の位置に保持される。打抜きプロセスの第3の段階Cでは、打抜きパンチ30とカウンタパンチ40とは、基本材料50にかなりの圧力をかけるまで、互いに向かって移動させられる。この第3の段階では、打抜きパンチ30の端面31が、横断セグメント8の、さらに形成すべき後面12を形作り、カウンタパンチ40の端面41が横断セグメント8の前面12を形作る。通常、横断セグメント8の後面12は、打抜きパンチ30によって平坦な面として形作られ、一方、カウンタパンチ40は、少なくとも、凸状に湾曲した揺動縁部18、および揺動縁部18と段差20との間の傾斜した表面区域を、横断セグメント8の前面11に形作る。打抜きプロセスの第4の段階Dでは、打抜きパンチ30およびカウンタパンチ40がダイ80のキャビティ81に押し込まれ、横断セグメント8が基本材料50から分離、つまり切り抜かれる。
【0030】
図3中の実線の矢印は、横断セグメント8の打抜き中に打抜きパンチ30およびカウンタパンチ40によってそれぞれ基本材料50に加えられる力を示している。特に、前記第3の段階Cでは、揺動縁部18を含む、横断セグメント8の前面11は、カウンタパンチ40と打抜きパンチ30との間でかつカウンタパンチ40および打抜きパンチ30によって、加えられる力の影響下で塑性変形によって形作られる。前記第4の段階Dでは、カウンタパンチ40によって加えられる力は、少なくとも打抜きパンチ30によって加えられる力と比較して減じられ、それにより、基本材料50は、打抜きパンチ30によって突き通されて横断セグメント8が切り抜かれる。
【0031】
図4は、基本材料50の上面図、およびその断面を提供し、破線は、基本材料50に対して形成すべき横断セグメント8の輪郭を示している。
図4では、基本材料50の厚さ段差53が、横断セグメント8の前面11の段差20に対応することが視認される。したがって、基本材料50には、厚さT1のより厚い部分51と、厚さT2のより薄い部分52とが設けられている。その他の点では、基本材料50には、主として長方形の外側輪郭が設けられている。基本材料50に前記厚さ段差53を設けることにより、少なくとも、厚さの均一な長方形断面を有する基本材料50と比べて、横断セグメント8を正確に形成するためにまたは形作るために変位させるべき材料の少なくとも半径方向の広がりが低減される。これにより、打抜きプロセスの少なくとも前記第3の段階Cは、実施および/または制御がより容易になる。
【0032】
図5に示すように、前記厚さ段差53の代わりに、基本材料のより厚い部分51とより薄い部分52との間で基本材料の傾斜した表面区域を画定するテーパ状の中央部分54を基本材料に設けることも知られている。基本材料50のそのようなテーパ状の中央部分54により、揺動縁部8および/または横断セグメント8の傾斜した表面区域を形成するために、打抜きプロセスで必要とする力および/または圧力をさらに低減することができる。代替的には、
図5の点線で示すように、テーパ状の中央部分54を厚さ段差と組み合わせてもよい。基本材料に段差53のみ、テーパ状の中央部分54のみ、またはそれらの組合せが設けられているかどうかに関係なく、基本材料は一定であるが相互に異なる厚さT1およびT2の前記2つの平坦な部分51および52を備え、そのうちより厚い部分51は、少なくともヘッド部分15を含む、形成すべき横断セグメント8の半径方向最外部分に対応し、そのうちより薄い部分52は、該セグメント8の半径方向最内部分に対応する。
【0033】
本開示によれば、横断セグメント8を製造するための上述の既知の方法、特にその既知の打抜きプロセス部分は、改善することができる。特に、本開示によれば、カウンタパンチ40は、基本材料50に接触し、そして前記圧力を、揺動縁部18に、場合によっては形成すべき横断セグメント8のヘッド部分15にも加えるだけでなく、該圧力を、横断要素8の厚さ段差20および/または傾斜した表面区域より半径方向内方の、横断要素8の下部に対応する、基本材料50のより薄い部分52にも加えるように構成されることが好ましい。これにより、打抜き中に基本材料50および/またはカウンタパンチ40がシフトする傾向および/または傾斜する傾向を有利に低減することができ、したがって、打抜きプロセスの精度がさらに改善される。
【0034】
本開示による打抜きプロセスの第1の可能な実施形態を
図6に示す。
図6は、
図3と同様の打抜き装置60、特に
図3に描かれる第1の段階Aおよび第3の段階Cの断面を表すが、形成すべき横断セグメント8の本体部分13を限定的に表すとともに、打抜き装置60の打抜きパンチ30およびカウンタパンチ40だけを含んでいる。
図6に示す基本材料50の領域は、
図4において点線の円Cによって囲まれた領域として示されている。
図6において、基本材料50を通って引かれた破線は、形成すべき横断セグメント8の本体部分13の輪郭を、該本体部分13の支持面16およびその本体部分13の半径方向内側の下縁部23を含めて示している。
【0035】
本開示によれば、カウンタパンチ40の端面41には、基本材料50の前記より薄い部分52に対向する細長の突起42が設けられている。言い換えれば、カウンタパンチ40には、端面41よりも高い高位区域が設けられ、該高位区域は、打抜きプロセスにおいて、形成すべき横断セグメント8の前記下部、すなわち該横断セグメント8の前記段差20よりも半径方向内方において基本材料50と係合する。打抜きプロセスの前記第3の段階Cでは、細長の突起42が基本材料50のより薄い平坦な部分52に押し込まれ、それにより、窪み100が該部分に形成され、ひいては形成すべき横断セグメント8の前記下部にも形成される。横断セグメント8のそのような窪み100は、それ自体、駆動ベルト3において特定の機能的目的を果たす必要はないが、打抜きプロセスにおいて切抜き段階Dに先立って窪み100を創出することによって、基本材料50は、そのような切抜き段階Dにおいてカウンタパンチ40に対して所定の位置に堅固に保持される。さらに、打抜きパンチ30およびカウンタパンチ40によって基本材料50に圧力が加えられ、有利には、該圧力が、形成すべき横断セグメント8の下部にも、すなわち、横断セグメント8の揺動縁部18およびヘッド部分15に加えられる圧力に加えて、加えられる。
【0036】
好ましくは、カウンタパンチ40の細長の突起42は、該カウンタパンチ40の局部の全幅寸法に亘って、ひいては、形成すべき横断セグメント8の局部の全幅寸法に亘って延び、それにより、細長の突起42によって創出される窪み100は、横断セグメント8の本体部分13の局部の全幅に亘って延びる。本開示による打抜きプロセスのこの第1の実施形態で得られる横断セグメント8を、
図7に概略的に示す。
【0037】
図6および
図7では、カウンタパンチ40の細長の突起42、ひいては横断セグメント8の窪み100は、横断セグメント8の下縁部23から離間している、すなわち該下縁部23と重なり合っていないか、または合流していない。しかしながら、本開示による打抜きプロセスの代替的な第2の可能な実施形態では、細長の突起42は、横断セグメント8の下縁部23と合流する、カウンタパンチ40の縁部に設けられている。新規の打抜きプロセスのこの特定の実施形態は、
図8に示されているが、それによって得られる横断セグメント8は、
図9および
図10の横断セグメント8の2つの実施形態に概略的に示されている。
【0038】
この後者の場合、追加の段差101が、打抜きプロセスにおいて、細長の突起42によって横断セグメント8の下部に形成される。窪み100は、そのような追加の段差101の半径方向内方に横断セグメント8の下縁部23まで延びる。横断セグメント8の下縁部23まで延びるそのような窪み100によって、駆動ベルト3において当接している横断セグメント8は、そのような窪み100がない場合よりも互いに対してさらに傾斜することができ、駆動ベルトの柔軟性を全体として改善する。
【0039】
図9に示すように、半径方向外方に延びる窪み100を形成する前記段差101は、横断セグメント8の下縁部23と交差しない単一の連続表面として形作られる。しかしながら、そのような下縁部23の形状に応じて、前記段差101は、
図10に示すように、2つ以上の別個の部分101a,101bに形成することもできる。この場合、窪み100も複数の部分100a,100bに分割される。
【0040】
したがって、要約すると、本開示は、一定であるが互いに異なる厚さの2つの平坦な部分(51,52)が予備成形された基本材料(50)から横断セグメント(1)を打ち抜く方法に関し、そのうちより厚い部分(51)は、横断セグメント(8)の半径方向最外部分に対応し、そのうちより薄い部分(52)は、横断セグメント(8)の半径方向最内部分に対応する。特に本開示によれば、横断セグメント(8)の幅方向に延びるとともに基本材料(50)のより薄い部分(52)に係合する突起(42)が設けられた端面(41)を有するカウンタパンチ(40)が打抜き方法で適用される。横断セグメント(8)が実際に基本材料(50)から切り離される前に、カウンタパンチ(40)の突起(42)が基本材料(50)に押し込まれ、それにより基本材料(50)に窪み(100)が形成される。
【0041】
本開示は、前述の説明の全体および添付の図のすべての詳細に加えて、添付の一連の請求項のすべての特徴にも関係し、これらを含む。特許請求の範囲において、括弧で囲まれた参照符号は、特許請求の範囲を限定するものではなく、それぞれの特徴の非拘束的な例としてのみ設けられている。特許請求された特徴は、特定の製品または特定のプロセスに個別に適用することができるが、場合によっては特許請求の範囲におけるそのような特徴の2つまたはそれ以上のいかなる組合せを特定の製品または特定のプロセスにおいて同時に適用することもできる。
【0042】
本開示によって表される発明は、本明細書で明示的に言及される実施形態および/または例に限定されず、その改善、修正、および応用、特に、関連分野の当業者が想到する範囲内にあるものをも包含する。