(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】取り外し工具を用いてワークピースを取り扱う方法およびこの方法を実施する機械
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20230731BHJP
B21D 45/00 20060101ALI20230731BHJP
B23Q 7/00 20060101ALI20230731BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B21D45/00 E
B23Q7/00 A
B23Q17/24 C
(21)【出願番号】P 2020565271
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2019061794
(87)【国際公開番号】W WO2019224004
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】102018208126.3
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン エス・エー プルス コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Werkzeugmaschinen SE + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, 71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス オトナート
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ブレンカー
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03093078(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012012988(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009040434(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
B21D 45/00
B23Q 7/00
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸引ピン(20)を有する吸引装置の形態の取り外し工具(18)を用いてワークピース(14)を取り扱う方法(28)であって、前記方法は、
B)前記取り外し工具(18)に対する少なくとも1つのパラメータを生成するステップと、
C)前記少なくとも1つのパラメータと少なくとも1つのワークピース情報とから少なくとも1つの特性変数を特定するステップと、
D)前記特性変数と取り外し結果記憶装置(24)からの少なくとも1つの取り外し結果とを考慮して、取り外し予測を作成するステップと、
E)前記取り外し予測を評価するステップと、
F)ポジティブな取り外し予測の際に前記ワークピース(14)を取り外すステップと、
G)前記取り外し結果を検出するステップと、
H)前記取り外し結果を前記取り外し結果記憶装置(24)内に保存するステップと、
を含
み、
前記ステップC)において、吸引ピン駆動制御に対する前記少なくとも1つのパラメータと前記少なくとも1つのワークピース情報とから間接的な特性変数を特定し、
前記間接的な特性変数は、
a)前記吸引ピン(20)の吸引力と前記ワークピース(14)の重量力との比、
b)前記ワークピースの面と前記吸引ピン(20)の面との重なり、
c)前記ワークピース(14)の重心と前記吸引ピン(20)の重心との間の間隔、および/または
d)前記吸引ピン(20)のボロノイ面の特定、
に基づいている、
取り外し工具(18)を用いてワークピース(14)を取り扱う方法(28)。
【請求項2】
前記ステップB)の前に、
A)前記ワークピース(14)を形成するステップ
を実行する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップF)において、吸引装置の形態の取り外し工具(18)を使用し、前記ステップB)において、吸引装置の形態の前記取り外し工具(18)に対する少なくとも1つのパラメータを生成する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ステップF)において使用される前記吸引装置は複数の吸引ピン(20)を有しており、前記ステップB)において少なくとも1つのパラメータを吸引ピン駆動制御に対するパラメータの形態で生成する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
サーバーベースまたはクラウドベースの取り外し結果記憶装置(24)の形態の取り外し結果記憶装置(24)を、前記ステップD)およびH)において使用する、請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ステップE)の後に、取り外し予測がネガティブである場合、前記ステップB)から、前記方法を新たに実施する、請求項1から
5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
すでに使用されている少なくとも1つのパラメータ、すでに使用されている少なくとも1つのワークピース情報および/またはすでに使用されている少なくとも1つの特性変数を考慮して、前記ステップB)から前記方法を新たに実施する、請求項
6記載の方法。
【請求項8】
前記ステップG)における前記取り外し結果の前記検出を、少なくとも1つのセンサー(22)によって行う、請求項1から
7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法(28)を実施する機械(10)であって、前記機械(10)は、
i)パラメータ制御された取り外し工具(18)と、
ii)取り外し結果を保存するための取り外し結果記憶装置(24)と、
iii)前記取り外し工具(18)に対する少なくとも1つのパラメータおよびワークピース情報を特性変数に処理する、前記取り外し工具(18)と前記取り外し結果記憶装置(24)とに接続されている制御ユニット(26)とを備え、
前記制御ユニット(26)は、前記特性変数と、前記取り外し結果記憶装置(24)からの少なくとも1つの取り外し結果とを考慮して、取り外し予測を作成するために構成されており、
前記制御ユニット(26)は、前記取り外し予測を評価するために構成されており、
前記制御ユニット(26)は、取り外し予測がポジティブな場合に、前記ワークピース(14)を取り外すように、前記取り外し工具(18)を駆動制御するために構成されている、
請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法(28)を実施する機械(10)。
【請求項10】
前記機械(10)は、前記ワークピース(14)を形成するための工作機械(12)を
有する、請求項
9記載の機械。
【請求項11】
前記取り外し工具(18)は吸引装置を
有する、請求項
9または
10記載の機械。
【請求項12】
前記吸引装置は複数の吸引ピン(20)を
有する、請求項
11記載の機械。
【請求項13】
前記取り外し結果記憶装置(24)は、サーバーベースまたはクラウドベースで構成されている
、請求項
9から
12までのいずれか1項記載の機械。
【請求項14】
前記機械(10)は、前記取り外し結果を検出する少なくとも1つのセンサー(22)を
有する、請求項
9から
13までのいずれか1項記載の機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り外し工具を用いてワークピースを取り扱う方法およびこのような方法を実施する機械に関する。
【0002】
金属加工機械および板金加工機械、特に(部分的に)自動化されたレーザー切断システム/パンチングシステムでは、取り外し工具を使用して、製造されたワークピースが機械から取り外され、保管場所に運ばれる。取り外し工具には典型的に、たとえば吸引ピン(吸引カップ)および/または伸縮ピン等の個別の操作要素が多数含まれている。機械からのワークピースの取り外しを成功させるには、取り外し工具の多数の操作要素のうちのどの個別の操作要素が各ワークピースもしくは各ワークピースタイプに対して使用されるべきか、およびどのように、どの箇所で使用されるべきかを定義するパラメータを機械制御部に保存する必要がある。実際には、使用されるべき操作要素の選択は、多くの場合、ワークピースの寸法、重量、重心または同様の判断基準に基づいてそれらを選択するプログラムの役目である。使用されるべき操作要素の選択を誤ると、ワークピースを自動的には取り外せなくなること、または取り外し時に困難が発生することがある。これは機械の停止につながり、機械のオペレータはコストをかけてこれを修復しなければならない。
【0003】
特に、新しい、異質のワークピースが定期的に取り外されるべき場合、これまでは、この取り外しプロセスに適したパラメータを求めるためにかなりの労力が必要であった。さらに、多くの場合には(たとえば一連の実験の範囲においては)取り外しの成功をもたらすが、常に(たとえば一連の動作において)取り外しの成功をもたらすのではないパラメータが使用されている場合、通常の動作において、取り外しの失敗が生じてしまう可能性がある。
【0004】
本発明の課題
したがって、本発明の課題は、より高い信頼性で、種々のタイプのワークピースを取り外すことを可能にする方法および機械を提供することである。
【0005】
本発明の説明
上述の課題は、本発明に相応に、請求項1に記載の方法および請求項12に記載の機械によって解決される。有利な変形および実施形態は、従属請求項および明細書に記載されている。
【0006】
本発明の方法
本発明では、取り外し工具を用いてワークピースを取り扱う方法が提供され、この方法は
B)取り外し工具に対する少なくとも1つのパラメータを生成するステップと、
C)少なくとも1つのパラメータと少なくとも1つのワークピース情報とから少なくとも1つの特性変数を特定するステップと、
D)特性変数と取り外し結果記憶装置からの少なくとも1つの取り外し結果とを考慮して、取り外し予測を作成するステップと、
E)取り外し予測を評価するステップと、
F)ポジティブな取り外し予測の際にワークピースを取り外すステップと、
G)取り外し結果を検出するステップと、
H)取り外し結果を取り外し結果記憶装置内に保存するステップと、
を含んでいる。
【0007】
少なくとも1つのパラメータによって取り外し工具を制御することができる。少なくとも1つの特性変数によって、少なくとも1つのパラメータから生じた、取り外し工具の駆動制御を、少なくとも1つのワークピース情報と結び付けることができる。取り外し予測を作成するために、ステップC)において求められた少なくとも1つの特性変数を、取り外し結果記憶装置からの少なくとも1つの取り外し結果の対応する特性変数と比較することができる。取り外し予測は、取り外しが成功する確率を示すことができる。取り外しとは、ここでは、プロセス全体を意図していてよく、たとえばこれには、ワークピースをスクラップスケルトンから分離すること、ワークピースを目標位置に搬送することおよび場合によってはワークピースの回転と加速とを実行して、ワークピースを目標位置に下ろすことが伴う。取り外し予測は、たとえば分離する、引き出す、回転させる、搬送する、下ろすための複数の異なる予測値を有していてよい。しかし、取り外し予測は特に、スクラップスケルトンからのワークピースの分離に関する。取り外し予測の評価を、取り外しが成功する最小確率との比較によって行うことができる。より一般的には、取り外し予測の評価は、算術演算および/または論理演算であってよい。複数の予測を1つのベクトルまたは値に集約し、対応する最小確率のベクトルまたは値と比較することができる。他の算術演算および論理演算も可能である。取り外し予測の評価の結果は、ポジティブな取り外し予測またはネガティブな取り外し予測であってよい。取り外し予測がポジティブな場合には、取り外しが、所定の確率で誤りなく、かつ確実に行われることが仮定される。その後、このパラメータに相応に、ワークピースを取り外すことができる。
【0008】
取り外し結果(すなわち、取り外しが成功したか否か)が検出され(ステップG)、保存される(ステップH)ことによって、方法を新たに実施する度に、ステップD)において取り外し予測を作成するためのデータベースを拡張することができる。換言すると、方法を新たに実施する度に、取り外し結果記憶装置に取り外し結果がより多く提供される。これによって、より正確な取り外し予測を得ることができる。したがって、特に、方法が複数回実施された後には、取り外し工具に対する選択されたパラメータによって、取り外しが成功するか否かを確実に予測することができる。取り外し結果はここで、ワークピース情報、特性変数および/またはパラメータに対する割り当てを有することができる。
【0009】
取り外し工具に対する機能的なパラメータがまだ判明していない新しいワークピースが取り外されるべき場合、本発明の方法によって、取り外し工具に対する、設定されたパラメータが取り外しの成功をもたらす可能性があるか否かを推定することができる。これによって、不適切なパラメータを用いた取り外し実験を回避することができる。本発明の方法は、時間およびコストのかかる実験を実行する必要なく、不適切なパラメータを識別するので、特に、取り外し工具に対する適切なパラメータを求める際に必要な手動操作が少なくなる、またはなくなる。特に、新しいワークピースは、取り外し工具に対する機能的なパラメータが判明している既知のワークピースとは異なる幾何学的形状を有することがある。新しいワークピースが自身の幾何学的形状においても、既知のワークピースに相応していることがあるが、特に異なる位置でかつ/または異なる配向で、機械内に異なって配置されている可能性がある。
【0010】
より正確な取り外し予測を作成できるようにするために、上述したステップを有する本発明の方法を使用する前に、変更を伴って、この方法を実行することができる。この変更とは、取り外し予測がネガティブな場合でも取り外しが試験的に実行される、またはおそらく成功するだろう取り外しに関する評価判断基準が下げられるというものである。その結果、取り外しの失敗が誘発されるので、少なくとも1つの特性変数の値が取り外しの成功を示しているのか、または失敗を示しているのかを、より確実に推定することができる。
【0011】
有利には、ステップB)において、取り外し工具に対する複数のパラメータが生成される。有利には、ステップC)において、少なくとも1つの特性変数が、複数のパラメータおよび/または複数のワークピース情報から生成される。有利には、複数の特性変数が生成される。有利には、ステップD)において、複数の特性変数および/または複数の取り外し結果が考慮される。
【0012】
取り扱いは、ワークピースを自動的に掴むこと、下ろすこと、落とすこと、仕分けること、ピッキングすること、振り動かすこと、揺り動かすことまたは同様の運動であってよい。典型的に、ワークピースは取り扱い時に、特に製造機械内の第1の領域から、特に製造機械外の第2の領域に移される。択一的または付加的に、取り扱い時に、ワークピースの配向を、たとえば垂直軸を中心に回転させることによって、変えることができる。ワークピースを取り扱うために、取り外し工具が使用される。取り外し工具は、制御されたプッシュメカニズム、仕分け装置またはピッキング装置、グリップシステム、たとえば機械式、接着式、特に静電式、磁気式、空気式のグリッパー、特に吸引グリッパー等であってよい。取り外し工具は、上述した機器の組み合わせを含むこともできる。典型的に、取り外し工具は、ワークピースに係合するための多数の操作要素を含んでいる。
【0013】
取り外し工具に対する少なくとも1つのパラメータは、以下の情報のうちの1つ、または以下の情報のうちの複数を組み合わせたものを有することができる。
・取り外し工具の多数の操作要素のうちの、どの選択された操作要素が使用されるべきかに関する情報および/または
・取り外し工具に対する動作パラメータ、たとえば、使用されるべき吸引圧力、プレス圧力、空気圧、把持力および/または離脱経路
【0014】
動作パラメータは、取り外し工具の選択された操作要素のすべての操作要素または個別の操作要素、特に個別の操作要素に関連していてよい。
【0015】
少なくとも1つのパラメータからの少なくとも1つの特性変数は、以下の変数のうちの1つ、または以下の変数のうちの複数を組み合わせたものを有することができる。
・取り外し工具によってワークピースに加えられるつり上げ力
・ワークピースに作用する、取り外し工具の多数の操作要素の、操作力、特につり上げ力から生じる係合点に関する情報
・ワークピースに作用する、取り外し工具の操作要素の数および/または
・特に水平方向に延在する傾斜軸線の周りに作用するトルクであって、このトルクは、取り外し工具に対する選択されたパラメータでワークピースを取り扱うときにワークピースに作用し、特にここでは、トルクの計算時にワークピースの重量が考慮される、または傾斜軸線がワークピースの質量中心を通って延在する
【0016】
ワークピース情報は、以下の情報のうちの1つ、または以下の情報のうちの複数を組み合わせたものを有することができる。
・ワークピースの外側輪郭
・ワークピースの厚さ、重量もしくは質量
・ワークピースの位置および/または配向に関する記述
・その前にワークピースが板金から形成されていた場合に、スクラップスケルトンからワークピースを解放するために克服しなければならない予期される力および/または
・ワークピースを傾ける勾配
【0017】
典型的に、多数の取り外し結果が取り外し結果記憶装置内に保存されている。取り外し結果記憶装置内の取り外し結果は、この取り外し工具自体の取り外し実験から生じてよい、かつ/または比較可能な、特に同じ構造の取り外し工具の取り外し実験から生じてよい。本発明の方法が初めて実施される前に、比較可能な、特に同じ構造の取り外し工具によって以前に求められた多数の取り外し結果を、取り外し結果記憶装置に保存することができる。多数の取り外し結果は典型的に、それぞれ少なくとも1つのワークピース情報が割り当てられているさまざまなタイプのワークピースの取り外しに関している。新しいタイプのワークピースが取り外されるべき場合には、この方法を実施するために、既知のワークピースの取り外し結果を用いることができる。これらの既知のワークピースは、自身のワークピース情報に従って、新しいタイプのワークピースと比較可能である。
【0018】
本発明の方法は、有利には、以降で説明される本発明の機械で実施される。
【0019】
有利には、ステップB)の前に
A)ワークピースを形成するステップ
が実行される。
【0020】
これによって本発明の方法は、有利には、ワークピースの製造プロセスに統合される。ワークピースを、特にベース本体から、有利には板金から形成することができる。有利には形成は、レーザー切断および/またはパンチングによって行われる。形成はさらに、切断、特に水ジェット切断、プラズマ切断またはレーザー切断、パンチング、ベンディング、ニブリング等であってよい。
【0021】
有利には、ステップF)において、吸引装置の形態の取り外し工具が使用され、ステップB)において、吸引装置の形態の取り外し工具に対する少なくとも1つのパラメータが生成される。吸引装置は、特にこれらが板金から形成されている場合、種々のワークピースを柔軟に操作するのに特に適している。取り外し工具に対するパラメータは有利には、吸引装置配置に対するパラメータの形態で生成される。有利には、複数のパラメータが生成される。吸引装置の形態の取り外し工具は、たとえば、吸引グリッパーである。このような吸引グリッパーでは、周囲の圧力が吸引グリッパーとワークピースとの間の圧力よりも大きくなるとすぐに、周囲の圧力がワークピースを吸引グリッパーに押しつける。吸引グリッパーを負圧発生器または真空発生器に接続することによって圧力差が得られる。これは、吸引グリッパーとワークピースとの間の空気を吸引する。吸引グリッパーがワークピースの表面に接触し、周囲の圧力に対して密閉するとすぐに、負圧が生成される。周囲の圧力と吸引グリッパー内の圧力との間の圧力差が大きいほど、すなわち、特に、吸引グリッパーとワークピースとの間の圧力が低減されるほど、保持力が大きくなる。
【0022】
特に有利には、ステップF)において使用される吸引装置は複数の吸引ピンを有しており、ステップB)において少なくとも1つのパラメータが吸引ピン駆動制御に対するパラメータの形態で生成される。これによって、吸引装置を特に良好に、ワークピースに合わせることができる。有利には、取り外し工具に対する複数のパラメータ、特に吸引ピン駆動制御に対する複数のパラメータが生成される。吸引ピン駆動制御に対するパラメータは、ワークピースの取り扱いに使用されるべき、吸引装置の吸引ピンの選択を特定することができる。択一的または付加的に、吸引ピン駆動制御に対するパラメータは、生成されるべき負圧を、すべての(場合によっては使用されるべきすべての)吸引ピンに対して一緒に、または個別の吸引ピンに対してそれぞれ別々に指定することができる。吸引ピンは、吸引カップまたは吸引ニップルとも称され得る。複数の吸引ピンは典型的に、吸引装置に複数の列で配置されている。
【0023】
吸引装置は、ワークピースを搬送するために、かつ/またはワークピースが板金から形成されている場合にはスクラップスケルトンからワークピースを取り外すために用いられる。吸引装置の形態の取り外し工具に対して付加的または択一的に、たとえばグリッパーおよび/または伸縮ピン(スラストピンまたはリフティングピン)である別の取り外し工具を使用することができる。ワークピースが板金から形成されている場合、スクラップスケルトンからワークピースを取り外すときに、吸引装置を1つまたは複数の伸縮ピンによって支えることができる。択一的に、1つまたは複数の伸縮ピンによって、ワークピースをスクラップスケルトンから押し出すか、場合によっては抜き出すことができる。その後、吸引装置は、スクラップスケルトンから解放されたワークピースを受け入れることができる。伸縮ピンを同様に、パラメータに基づいて駆動制御することができ、特に、吸引装置から独立して配置することができる。特に、本発明の方法および本発明の方法の発展した変形を、伸縮ピンの駆動制御にも使用することができ、たとえばここで、少なくとも1つのパラメータはその位置、つり上げ高さおよび/またはつり上げ力を特定することができる。
【0024】
有利には、特性変数は、ステップC)において、少なくとも1つのパラメータと少なくとも1つのワークピース情報とから間接的な特性変数を特定する形態で特定される。このような方法の変形の有利な発展形態では、ステップF)において使用される吸引装置は複数の吸引ピンを有しており、ステップB)において少なくとも1つのパラメータが、吸引ピン駆動制御に対するパラメータの形態で生成され、間接的な特性変数が、吸引ピン駆動制御に対する少なくとも1つのパラメータと、少なくとも1つのワークピース情報とから特定される。特に有利には、複数の間接的な特性変数が特定される。間接的な特性変数は直接的には利用することができず、他の(直接的な)特性変数から計算することができる。直接的な特性変数は、たとえば、ワークピースの2次元の外側輪郭を表すことができる。間接的な特性変数を計算する場合には、幾何学的形状の関係を適切に簡易化することができる。典型的に、多くの、たとえば約50個の間接的な特性変数が計算される。機械学習アルゴリズムを用いて、相関分析を介して、重要な特性変数を識別することができる。この際に、分類のためのアルゴリズム、特に自己改善アルゴリズムに基づくデータ評価を使用することができる。
【0025】
分類のためのアルゴリズム、特に自己改善アルゴリズムに基づくデータ評価は、以下の評価ステップのうちの1つまたは複数を有することができる。
a)第1の処理データセットおよび第1の処理アルゴリズムによる、中間データへの、入力データのデータ技術的な処理
b)特に、別の処理データセットおよび別の処理アルゴリズムによる、別の中間データへの、この中間データおよび以降で得られる別の中間データのデータ技術的な処理
c)所定の繰り返しアルゴリズムに従ったステップb)の繰り返し
d)ここで、テストデータセットを用いて、処理データセットと処理アルゴリズムとが求められ、テストデータセットは、
・入力データおよび
・ワークピース情報、特性変数および/またはパラメータおよび有利には
・属する取り外し予測(たとえば、取り外しの成功/失敗もしくは取り外しの可能性があること/取り外しの可能性が低いこと)
を有し、
e)ここで処理データセットおよび処理アルゴリズムを求めることは以下のステップを含んでいる
・テストデータセットの入力データを読み込むステップ
・所定の処理データセットおよび/または処理アルゴリズムによって、ワークピース情報、特性変数および/またはパラメータを求めるステップ
・求められたワークピース情報、特性変数および/またはパラメータを、読み込まれた入力データに割り当てられたワークピース情報、特性変数および/またはパラメータと比較するステップ
・この比較の結果に基づいて、所定の改善アルゴリズムに従って、処理データセットおよび/または処理アルゴリズムを変更するステップおよび
・テストデータセットの入力データから求められたワークピース情報、特性変数および/またはパラメータが、所定の最小一致率で、テストデータセットからのそれと一致するまでの間、e)の上述したステップを新たに実行するステップ
【0026】
処理データセットは、ファクターを含むデータセットであってよく、ここでこれらのファクターは、処理されるべきデータを個別に重み付けする。処理アルゴリズムは、算術的に、組合せ数学的に、かつ/または論理的に処理するアルゴリズムであってよく、これらは、処理されるべきデータを所定の組合せ数学、算術および/または論理に従ってさらに処理する。
【0027】
データ評価はさらに、複数の改善アルゴリズムを使用するように設計されていてよく、かつ所定の基準で所定の一致目標により迅速にまたはより確実に到達する改善アルゴリズムを有利に使用するように設計されていてよい。データ評価はさらに、複数の改善アルゴリズムを使用するように設計されていてよく、かつ所定の基準で所定の一致目標により迅速にまたはより確実に到達する改善アルゴリズムを有利に使用するように設計されていてよい。データ評価はさらに、複数の繰り返しアルゴリズムを使用するように設計されていてよく、かつ所定の基準で所定の一致目標により迅速にまたはより確実に到達する繰り返しアルゴリズムを有利に使用するように設計されていてよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、ワークピース情報、特性変数および/またはパラメータのアルゴリズム的評価は、少なくとも1つのニューラルネットワークによって実行されてよい。ここでニューラルネットワークは、工業生産工場における特有のワークピース情報、特性変数および/またはパラメータに対して設定されている。さらに、これは択一的または付加的に継続的に自発的に改良されてよい。ワークピース情報、特性変数および/またはパラメータは、ニューラルネットワークのデジタル入力値であり、取り外し結果はニューラルネットワークのデジタル開始クラスとして再現されている。
【0029】
本明細書に開示されたコンセプトによって、ワークピースをより確実に取り扱うことが可能になる。機械が停止する数を大幅に減らすことができる。
【0030】
さらに、収集されたデータから、たとえばいわゆる決定木が自動的に生成されてよく、すなわち、取り外しの成功を想定することを可能にするために、各特性変数がどのような値範囲になければいけないのかの一連の連続する決定である。間接的な特性変数を使用することによって、同様の幾何学的形状の特性を有するワークピースへの取り外し結果の転用性を向上させることができる。これによって、より正確な取り外し予測が可能になる。
【0031】
有利には間接的な特性変数は、
a)吸引ピンの吸引力とワークピースの重量力との比
b)ワークピースの面と吸引ピンの面との重なり
c)ワークピースの重心と吸引ピンの重心との間の間隔、および/または
d)吸引ピンのボロノイ面の特定
に基づいている。
【0032】
これらの間接的な特性変数を使用して、特に良好な取り外し予測を作成するができることが判明している。ボロノイ面を、面、たとえば処理されるべき板金の面を複数の領域に分解することによって特定することができる。ここでこれらの領域は、所定の数の、ここでは中心と称される、面の点によって規定される。各領域は厳密に1つの中心によって特定され、他の各中心よりも、この領域の中心に近い、面のすべての点を含んでいる。このような領域は、ボロノイ領域とも称される。ボロノイダイアグラムは、1つよりも多くの、最も近い中心を有しており、したがって領域の境界を形成するすべての点から作成される。本発明では、(作動している)吸引ピンのボロノイ領域の全体を、吸引ピンのボロノイ面として使用することができる。このようなボロノイ面は、吸引ピンがまたがる凸状のエンベロープを規定することができる。
【0033】
有利には、サーバーベースまたはクラウドベースの取り外し結果記憶装置の形態の取り外し結果記憶装置が、ステップD)およびH)において使用される。これによって、データベース、すなわち取り外し記憶装置内の取り外し結果の数を増やすことができる。これによって、より正確な取り外し予測を作成することができる。
【0034】
サーバーベースの取り外し結果記憶装置は、データを、特に電子的に格納し、データストアに提供するように設計されている記憶装置であってよい。データストアは、このデータストアから離れた複数のデータ処理装置に接続されている。サーバーベースの取り外し結果記憶装置は、組織単位、すなわちたとえば工場または会社の内部または外部に配置されていてよい。取り外し結果記憶装置は、この組織単位からのみアクセス可能である。
【0035】
クラウドベースの取り外し結果記憶装置は、組織単位、すなわちたとえば工場または会社の外部に配置されていてよい取り外し結果記憶装置である。これは、複数の独立した組織単位に対するデータ記憶装置として設計されている。これらは機能、たとえばデータ格納とデータ処理とを共有していてよい。ここで、事前に設定可能な情報コンテンツを含む、格納されているデータは、第三者、特にクラウドベースの取り外し結果記憶装置の提供者によっても、さらなる処理が可能である。たとえば、ワークピースと成功した取り外しの頻度とに関する情報を読み出すことができる。これらの取り外し結果は、取り外し予測を作成するために、クラウドベースの取り外し結果記憶装置のすべてのユーザーに提供されてよい。これは、さまざまなレベルの機密性で、たとえば匿名化されたデータの形態で行われてよい。
【0036】
有利には、ステップE)の後に、取り外し予測がネガティブである場合、ステップB)から、この方法が新たに実施される。ここでは原則として、取り外し工具に対するパラメータの新たな値もしくは取り外し工具に対する別のパラメータが使用される。このような手順を、ステップE)においてポジティブな取り外し予測が得られるまで繰り返すことができる。特に有利には、すでに使用されている少なくとも1つのパラメータ、すでに使用されている少なくとも1つのワークピース情報および/またはすでに使用されている少なくとも1つの特性変数を考慮して、ステップB)からこの方法が新たに実施される。このようにして、ポジティブな取り外し予測を有するパラメータをより迅速に求めることができる。
【0037】
ステップG)における取り外し結果の検出を、少なくとも1つのセンサーによって行うことが可能である。有利には、取り外し結果は、複数のセンサーによって検出される。1つもしくは複数のセンサーは、たとえば、リミットスイッチ、カメラおよび/または光バリアであってよい。このようにして、取り外し結果を特に確実に検出することができる。
【0038】
特に単純なケースでは、取り外し結果はデジタル的に「良い」または「悪い」であってよい。ここから、取り外し予測を一般的に、確率として計算することができる。取り外し結果を継続的または段階的な表明として提供し、保存することも可能であり、これはたとえば、「非常に良い」、「良い」、「悪い」、「不成功」である。しかし、結果の種類に関する付加的な情報を取り外し結果に追加することもできる。これはたとえば、
・「スクラップスケルトンからの分離:「成功」、「複数回の実験で成功」、「失敗」」、
・「搬送:「成功」、「複数回の実験で成功」、「失敗」」、
・「搬送時の回転:「成功」、「複数回の実験で成功」、「失敗」」、および/または
・「保管:「成功」、「複数回の実験で成功」、「失敗」」
である。
【0039】
本発明の装置
本発明には、本発明の方法を実施する機械も含まれており、ここでこの機械は、以下のものを備えている。すなわち、
i)パラメータ制御された取り外し工具
ii)取り外し結果を保存するための取り外し結果記憶装置
iii)取り外し工具に対する少なくとも1つのパラメータおよびワークピース情報を特性変数に処理する、取り外し工具と取り外し結果記憶装置とに接続されている制御ユニット
【0040】
制御ユニットは、取り外し工具に対するパラメータを生成するために構成されていてよい。制御ユニットは、特性変数と、取り外し結果記憶装置からの少なくとも1つの取り外し結果とを考慮して、取り外し予測を作成するために構成されている。さらに、制御ユニットは、取り外し予測を評価するために構成されている。さらに制御ユニットは、取り外し予測がポジティブな場合に、ワークピースを取り外すように、取り外し工具を駆動制御するために構成されている。換言すると、ポジティブな取り外し予測の場合、機械は取り外し工具に対するパラメータを使用して、取り外しプロセスを実行する。このような機械によって、本発明の方法を特に有利に実施することができる。
【0041】
機械は、ワークピースを形成するための工作機械を有していてよい。工作機械は、有利には、レーザー切断工作機械および/またはパンチング工作機械の形態に構成されている。そのような機械の場合に、本発明の方法を、製造プロセスに特にスマートに統合することができる。
【0042】
取り外し工具は吸引装置を有することができる。この場合、この機械は、吸引装置の形態の取り外し工具が使用される方法を実施するのに特に適している。吸引装置は、板金から製造されたワークピースの取り扱いに特に適している。有利には、吸引装置は、複数の吸引ピンを有する。吸引ピンが吸引ピン駆動制御に対するパラメータによって駆動制御されることによって、複数の吸引ピンを備える吸引装置を、種々のワークピース、特に複雑な幾何学的形状のワークピースに特に良好に適合させることができる。吸引ピン駆動制御に対するパラメータは、特に、上述した本発明の方法のステップB)において生成されてよい。
【0043】
吸引装置に対して択一的または付加的に、取り外し工具は、たとえばグリッパーおよび/または伸縮ピン(スラストピンまたはリフティングピン)を含むことができる。ワークピースが板金から形成されている場合、板金のスクラップスケルトンからワークピースを取り外すときに、吸引装置を1つまたは複数の伸縮ピンによって支えることができる。択一的に、1つまたは複数の伸縮ピンを使用して、ワークピースをスクラップスケルトンから押し出すか、場合によっては抜き出すことができる。その後、吸引装置は、スクラップスケルトンから解放されたワークピースを受け入れることができる。伸縮ピンを同様に、パラメータに基づいて駆動制御することができ、特に、吸引装置から独立して配置することができる。伸縮ピンを制御するためのパラメータは、その位置、つり上げ高さおよび/またはつり上げ力を特定することができる。グリッパーは、以下の技術を個別に、または組み合わせて有していてよい。
・たとえば機械によって模倣された手の形態の機械的な力
・静電力
・磁力
【0044】
吸引装置、グリッパーおよび/または伸縮ピンに対して択一的または付加的に、取り外し工具は、ワークピースが分類されて投下される、制御可能な投下装置を有することができる。これは、たとえば、制御可能なシュートまたは制御可能な加速装置を有することができる。
【0045】
機械の取り外し結果記憶装置は、サーバーベースまたはクラウドベースで構成されていてよい。ここで、サーバーベースの記憶装置とは、特に製造所在地にある製造単位(企業、組織単位)だけがアクセスできるサーバーに格納されている記憶装置を意味する。これには、そこに格納されているデータが製造単位のもとに残り、他の製造単位と交換されないという利点がある。機械のサーバーベースの取り外し結果記憶装置を、有利には機械、たとえば制御ユニット内に統合することができる。そのような機械は、別のインフラストラクチャーとは無関係に、本発明の方法を実施することができる。複数の製造単位もしくは所在地と結び付けられた(クラウドベースの)取り外し結果記憶装置によって、他の機械、特に他の製造単位との取り外し結果の交換が簡単になる。したがって、格段に多くの数の取り外し結果および特性変数にアクセスすることができる。データを匿名化して、すなわち製造単位に関する情報を伴わずに格納することができる。したがって、製造単位に不利な点はなく、競合他社間で反競争的なデータを交換することはできない。特に、クラウドベースの取り外し結果記憶装置を備える機械は、それぞれがパラメータ制御された取り外し工具を備える複数の工作機械を含むことができる。クラウドベースの取り外し結果記憶装置は、相互接続されていない複数の企業(製造単位)から離れた場所に配置されていてよい。
【0046】
機械は、取り外し結果を検出する少なくとも1つのセンサーを有していてよい。有利には、機械は、取り外し結果を検出する複数のセンサーを有している。1つもしくは複数のセンサーは、たとえば、リミットスイッチ、カメラおよび/または光バリアであってよい。制御ユニットは典型的に、1つもしくは複数のセンサーを使用して取り外し結果を検出し、取り外し結果を取り外し結果記憶装置内に保存するために構成されている。
【0047】
本明細書で提案された装置および/または方法によって、取り扱いの正しい知識をより正確に得ることができる。これらは特に、製造制御システムにおいて使用可能である。製造制御システムは、MES(製造実行システム)を含むことができる。MESは、製造ホールに配置された1つまたは複数の手動ワークステーションまたは自動ワークステーション、たとえば工作機械と、無線または有線接続された通信リンクを介して接続されるように設計されていてよい。一般的に、MESを、ワークステーションでのワークピースの工業製造時のプロセスシーケンス/製造ステップを制御するために使用できる。このために、MESは、プロセスシーケンス/製造ステップに関する情報ならびにワークステーションのステータス情報を受け取ることができる。MESが、データ処理装置に実装されていてよい。これは、個々の電子データ処理装置(サーバー)または複数のデータ処理装置の結合体(サーバー結合体/クラウド)であってよい。データ処理装置または結合体を、製造施設内に局所的に設けることも、または外部に分散して構築することもできる。
【0048】
本発明の構成要件のさらなる利点および有利な構成は、明細書、特許請求の範囲および図面から明らかになる。上述した特徴および以降に記載する特徴を、個別に、またはまとめて任意の組み合わせで使用することができる。示され、説明される実施形態は、網羅的なリストとして理解されるべきではなく、むしろ、本発明を記述するための例示的な特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】パラメータ制御された取り外し工具およびクラウドベースの取り外し結果記憶装置を備える、本発明の機械の概略図である。
【
図2】本発明の方法の概略的なフローチャートである。
【0050】
本発明および図面の詳細な説明
図1は、本発明の機械10を極めて概略的に示している。機械10は、工作機械12を含んでいる。工作機械12は、ここでは、レーザー切断機械として構成されている。工作機械12によって、ワークピース14がベース本体16から形成される。ここではワークピース14は、板金の形態のベース本体16から切り出される。
【0051】
機械10はさらに、取り外し工具18を含んでいる。取り外し工具18はここでは、複数の吸引ピン20を有する吸引装置として構成されている。吸引ピン20(吸引カップ)は、ここでは規則的なマトリックスに配置されており、特にこれらはここで、互いに平行に、もしくは直交して延在している、等距離の列にある。
【0052】
取り外し工具18はパラメータ制御されている。取り外し工具18に対する少なくとも1つのパラメータによって、ベース本体16および製造直後にそこに配置されているワークピース14に対して相対的なその位置を調節することができる(
図1の双方向矢印を参照)。さらに、取り外し工具18に対するパラメータを介して、特定のワークピース14を取り外すためにどの吸引ピン20が使用されるべきかを選択することができる。ワークピース14の配向に応じて、ワークピース14の形状が同じであっても、特定のワークピース14を取り外すために、異なる吸引ピン20を使用することが必要な場合がある。別のパラメータによって、吸引ピン20に加えられる負圧を調節することができる。負圧は、特に、ワークピース14の重量およびワークピース14と係合している吸引ピン20の数に関連して選択されてよい。
【0053】
機械10は、センサー22も含んでいる。センサー22は、ここではカメラとして構成されている。カメラは、ワークピース14を伴うベース本体16に向けられている。ワークピース14の1つが取り外された後、適切な画像処理アルゴリズムによって、カメラの画像に基づいて、ワークピース14がもはやベース本体16内に配置されていないこと、すなわち取り外しが成功したことを識別することができる。同様に、取り外し実験の後に、ベース本体16内にワークピース14がまだ残っていること、すなわち取り外しが失敗したことを識別することができる。このような取り外し結果を、ワークピース14に関する情報および取り外し工具18に対する1つもしくは複数のパラメータと共に、機械10の取り外し結果記憶装置24内に保存することができる。取り外し結果記憶装置24は、ここではクラウドベースで、すなわちクラウド記憶装置として構成されている。
【0054】
機械はさらに、制御ユニット26を有する。制御ユニット26は、取り外し工具18および取り外し結果記憶装置24と接続されている。換言すると、制御ユニット26は、取り外し工具18を駆動制御し、取り外し結果記憶装置24からデータを呼び出し、典型的には、データを取り外し結果記憶装置24に格納することもできる。
【0055】
制御ユニット26は、取り外し工具18に対する少なくとも1つのパラメータおよび少なくとも1つのワークピース情報を特性変数に処理するために使用される。換言すると、制御ユニット26は、取り外し工具18に対するパラメータおよびワークピース情報から特性変数を計算するために構成されている。取り外し工具18に対するパラメータは、制御ユニット26自体によって生成されるか、または外部から、たとえば機械10のオペレータまたはマスターコンピュータ(図示されていない)からそこに供給されてよい。
【0056】
制御ユニット26はさらに、ワークピース14の1つに対して取り外し予測を作成し、評価するために構成されている。取り外し予測を作成するために、制御ユニット26は、以前に求められた特性変数および少なくとも1つの取り外し結果を取り外し結果記憶装置24から引き出す。制御ユニット26はここで特に、取り外し結果記憶装置24からの取り外し結果の場合には、同じまたは比較可能な特性変数の値がどれだけ大きかったのか、および保存されている取り外しが成功したか否かを考慮することができる。取り外し予測を評価するために、制御ユニット26は、求められた特性変数の値と、取り外し結果記憶装置24からの特性変数の値とを比較することができる。たとえば、保存されている取り外しが成功しており、取り外しが成功する確率の増加と共に特性変数が上昇する場合には、求められた特性変数の値が取り外し結果記憶装置24からの特性変数の値よりも大きいときに、制御ユニット26は取り外し予測をポジティブであると評価することができる。
【0057】
制御ユニット26はさらに、ワークピース14を取り外すために取り外し予測がポジティブであった場合には、このパラメータを用いて取り外し工具18を駆動制御するために構成されている。上述したように、センサー22は、このような取り外し実験の取り外し結果を検出し、それを取り外し結果記憶装置24に保存するために提供することができる。制御ユニット26は、たとえば、センサー22からのデータ、ここではカメラからの画像に必要な評価アルゴリズムを適用することによって、取り外し結果の検出に協力することができる。ここで、制御ユニット26は、取り外し工具18に対するパラメータおよびワークピース14に対するワークピース情報と共に、取り外し結果を取り外し結果記憶装置24内に格納することができる。
【0058】
図2は、本発明の方法28のフローチャートを示している。方法28は、
図1に示されている機械10を用いて実施可能である。第1のステップAにおいて、ワークピース14が、たとえば、
図1の工作機械12によって形成される。次に、ステップBにおいて、取り外し工具18に対する少なくとも1つのパラメータが生成される。示されている方法の変形では、取り外し工具18に対する複数のパラメータが生成される。これらのパラメータは、ここではワークピース14上の取り外し工具18の吸引装置の位置および吸引装置の吸引ピン20の作動を表す。
図2では、作動している吸引ピン20は黒で塗りつぶされて示されており、作動していない吸引ピン20は、塗りつぶされていない円として示されている。
【0059】
後続のステップCにおいて、取り外し工具18に対するパラメータとワークピース情報とから特性変数が特定される。ここでこの特性変数は間接的な特性変数であり、ワークピース14のワークピース面と作動している吸引ピン20の面との重なりを示している。
【0060】
後続のステップDにおいて、この特性変数から取り外し予測が特定される。ここでは、取り外し結果記憶装置24からの少なくとも1つの取り外し結果の影響32が考慮される。換言すると、同じまたは比較可能な特性変数の値と、保存されている取り外しの結果とが、取り外し予測を求めるために使用される。典型的には、保存されている多数の取り外しが考慮される。次に、有利には、取り外し予測を作成する際に、取り外し工具18に対する選択されたパラメータを用いて取り外しが成功する確率を計算することができる。
【0061】
次に、取り外し予測がステップEにおいて評価される。取り外し予測が、取り外しが成功する確率を示す場合には、ここで、このような確率が境界値を超えているか否かを検査することができる。択一的に、「取り外しが成功するだろう」によって、この取り外し予測を要約することができるか否かを検査することができる。取り外し予測30がネガティブな場合、この方法はステップBから繰り返される。ここで、取り外し工具18に対するパラメータのうちの少なくとも1つが変更される。有利には、取り外し工具18に対するパラメータを変更するために、取り外しが成功した際の、取り外し結果記憶装置24からの履歴パラメータが考慮される。たとえば、取り外し結果記憶装置24内の成功した取り外しから、取り外し工具18のより大きな保持力が必要であることが示されると、吸引ピン20に対して、より大きな負圧を設定することができる。
【0062】
取り外し予測がポジティブである場合、ステップFにおいて、ワークピース14の取り外しが、取り外し工具18に対する選択されたパラメータを用いて実行される。後続のステップGにおいて、取り外し結果が確定され、たとえば、センサー22によって検出される。次に、この取り外し結果はステップHにおいて、取り外し工具18に対する、使用されたパラメータおよび少なくとも1つのワークピース情報と共に、取り外し結果記憶装置24内に保存される。さらに、取り外し結果記憶装置24は、本発明の方法が新たに実施されるときに、ステップEにおいて、取り外し予測を作成するために使用され得る、拡大されたデータベースを含んでいる。換言すると、ここで、本発明の方法の新たなフローのステップEにおいて取り外し予測を作成するときに、本発明の方法の範囲内で実行された取り外しプロセスの取り外し結果の影響32を考慮することができる。これによって、取り外し予測の信頼性もしくは正確さは、方法を実施する度に向上する。