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  • 特許-放射線不透過性ポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】放射線不透過性ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/28 20060101AFI20230731BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230731BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20230731BHJP
   C07C 47/575 20060101ALI20230731BHJP
   C07C 309/11 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C08F8/28
A61K47/32
A61L31/04 110
C07C47/575 CSP
C07C309/11
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020566791
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 IB2019055382
(87)【国際公開番号】W WO2020003147
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】1810777.1
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1810788.8
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518312426
【氏名又は名称】バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ルイス、アンドリュー レナード
(72)【発明者】
【氏名】ブリトン、ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】タン、イーチン
(72)【発明者】
【氏名】ビンス、ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】アシュラフィ、コーロッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ゲガン、ダミアン
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04406878(US,A)
【文献】中国特許出願公開第105968244(CN,A)
【文献】国際公開第2016/115023(WO,A1)
【文献】特開平04-208232(JP,A)
【文献】Eric Brown, et al.,Syntheses and copolymerizations of new water-soluble polyiodinated acrylic monomers,MAKROMOLEKULARE CHEMIE, RAPID COMMUNICATIONS,1985年,Vol.6, Iss.7,pages 503-507,DOI:10.1002/MARC.1985.030060709
【文献】TALEKAR RAHUL SUBHASH, et al.,Nonreductive Deiodination of ortho-Iodo-Hydroxylated Arenes Using Tertiary Amines,JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,2005年,Vol. 70, No. 21,pages 8590-8593,DOI: 10.1021/J0051191X
【文献】PAUL R. JONES, et al.,The Role of Substituents and Solvents in Promoting "Medium-Size" Ring-Chain Tautomerism,JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY,1990年,Vol. 55, No. 12,pages 3891-3896,doi.org/10.1021/jo00299a036
【文献】PI-TAI CHOU, et al.,Studies of the triplet state of the proton-transfer tautomer in salicylaldehydes,CHEMICAL PHYSICS LETTERS,2003年,Vol.370, No. 5-6,pages 747-755,DOI:10.1016/S0009-2614(03)00165-9
【文献】Ashrafi Koorosh, et al.,Characterisation of a novel intrinsically radiopaque Drug-eluting Bead for image-guided therapy: DC Bead LUM(TM),JOURNAL OF CONTROLLED RELEASE,2017年,vol. 250,pages 36-47,DOI:10.1016/J.JCONREL.2017.02.001
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00- 8/50
C07C
A61K
A61L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ibのペンダント基を含むポリヒドロキシル化ポリマーであって、
【化1】

ここで、
Wは、-OH、-COOH、-SOH、-OPO 、-O-(C1~4アルキル)、-O-(C1~4アルキル)OH、-O-(C1~4アルキル)R-O-(C O) 、-(C=O)-O-C1~4アルキル及び-O-(C=O)C1~4アルキルから独立して選択されるか、あるいは-BZ基であり、ここで、-OH、-COOH、-OPO 及び-SOHは、任意選択で薬学的に許容される塩の形態であり、
Bは、結合、又は直鎖若しくは分岐アルカンジイル、オキシアルキレン、アルキレンオキサアルキレン、又はアルキレン(オリゴオキソアルキレン)基であり、任意選択で1つ以上のフッ素置換基を含み、
Zは、アンモニウム、ホスホニウム、又は、スルホニウムホスフェートもしくはホスホネートエステルの双性イオン基であり、
Xは、結合、あるいは、1~8個の炭素、及び任意選択でO、N及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を有する連結基のいずれかであり、
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、-SOH、又は-OPOであり、
qは1~4の整数であり、
nは2~3の整数であり、
pは1~3の整数であり、
n+pは2~5であり、
ここで、-COOH、-OPO及び-SOH、ならびにフェノール性-OHは、任意選択で薬学的に許容される塩の形態である、ポリヒドロキシル化ポリマー。
【請求項2】
前記ポリマーがポリビニルアルコールのポリマー又はコポリマーであり、前記式Ibの基が前記ポリビニルアルコールの前記ポリマー又はコポリマーのヒドロキシル基を介して結合している、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーがポリビニルアルコールのホモポリマー又はコポリマーであり、前記式Ibの基が前記ポリビニルアルコールの前記ホモポリマー又はコポリマーのヒドロキシル基を介して結合している、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記式Ibの基のフェニル環が3,5ジヨード、3,4,5トリヨード、又は2,4,6トリヨードである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
pが1である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
Wが-OH、-COOH、-SOH、-OPO、-O-(C1~4アルキル)、-O-(C1~4アルキル)OH、-O-(C1~4アルキル)R-O-(C O) 、-(C=O)-O-C1~4アルキル及び-O-(C=O)C1~4アルキルから独立して選択されるか、あるいは-BZ基であり、ここで
Bは、結合、C1~6分岐又は非分岐アルカンジイル基、あるいは分岐又は非分岐C1~6オキシアルキレン基であり、
Zは式IIの基であり、
【化2】

ここで、AとAは同一であるか、異なっており、-O-、-S-及び-NH-から選択され、W1+は-W-N であり、WはC1~6アルカンジイルであり、Rは同じであるか、又は異なり、それぞれが水素又はC1~4アルキルであり、
ここで、-OH、-COOH、-OPO及び-SOHは、任意選択で薬学的に許容される塩の形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
Wが-OH、-COOH、-SOH、-OPO、-O-(C1~4アルキル)R及び-O-(C O) から選択され、ここで、-OH、-COOH、-OPO及び-SOHは、任意選択で薬学的に許容される塩の形態である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
qが1、2又は3である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項9】
PVAを含み、前記PVAは次式のペンダント基を含み、
【化3】

ここで
Wは、-OH、-COOH、-SOH、-O-(C O) 又は-O-(C1~4アルキル)Rから独立して選択され、qは1、2、又は3であり、nは2、又は3であり、RはH又は(C1~4アルキル)であり、Rは-COOH又は-SOHであり、
ここで、-SOH、-COOH及びフェノール性-OHは、任意選択で薬学的に許容される塩の形態である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項10】
前記式Ib又はIcの基のフェニル環が以下の式のうちの1つで置換されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー。
【化4】
【請求項11】
架橋されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項12】
水50重量%を超えて含むヒドロゲルの形態にある、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項13】
完全に水和されたポリマー1cmあたり10mgを超えるヨウ素の含有量を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項14】
1000HUを超える放射線密度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項15】
pH7.4で帯電している、W以外の基によって置換されている、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項16】
医薬有効成分をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のポリマーを含んでなるミクロスフェア。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載のポリマーを含んでなる流動性組成物。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載のポリマーを、水性溶媒又は有機溶媒のいずれかの中に、水と混和性を有する溶液として含んでなる組成物。
【請求項20】
式VIIIの化合物であって、
【化5】

ここで、
Mは-CHOであり、
22はH、C1~4アルキル、C1~4ヒドロキシアルキル、C1~4アルキル-R-(C O) 又は-(C=O)C1~4アルキルであるか、あるいは、式-BZの基であり、
ここで、Bは結合、又は直鎖若しくは分岐アルカンジイル、アルキレンオキサアルキレン、又はアルキレン(オリゴオキソアルキレン)基であり、任意選択で1つ以上のフッ素置換基を含み、Zは、双性イオン性のアンモニウム、ホスホニウム、又はスルホニウムホスフェート又はホスホネートエステル基であり、
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、-SOH、又は-OPOであり、
qは1~4の整数であり、
Xは、結合、あるいは、1~8個の炭素、及び任意選択でO、N及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を有する連結基のいずれかであり、
ここで、-COOH、-OPO、-SOH及びフェノール性-OHは、任意選択で薬学的に許容される塩の形態にある、化合物。
【請求項21】
式VIIIa
【化6】

を有し、
Mは-CHOであり、
22はH、-(C O) 、又はC1~4アルキル-Rであり、
ここで
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、又は-SOHである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
式IXの化合物であって、
【化7】

Mは-CHOであり、
23は、C1~4アルキル、C1~4ヒドロキシアルキル、C1~4アルキル-R-(C O) 又は-(C=O)C1~4アルキルであるか、あるいは式-BZの基であり、
ここで、Bは結合、又は直鎖若しくは分岐アルカンジイル、アルキレンオキサアルキレン、又はアルキレン(オリゴオキソアルキレン)基であり、任意選択で1つ以上のフッ素置換基を含み、Zは、双性イオン性のアンモニウム、ホスホニウム、又はスルホニウムホスフェート又はホスホネートエステル基であり、
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、-SOH、又は-OPOであり、
qは1~4の整数であり、
Xは、結合又は、1~8個の炭素と、任意選択でO、N及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を有する連結基のいずれかであり、
ここで、-COOH、-OPO及び-SOHは、任意選択で薬学的に許容される塩の形態である、化合物。
【請求項23】
式IXa
【化8】

の化合物であり、ここで、
Mは-CHOであり、
23は、-(C O) 、又は-(C1~4アルキル)-Rであり、
ここで
qは1~4の整数であり、
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、又は-SOHであり、ここで、-COOH及び-SOHは、任意選択で薬学的に許容される塩の形態である、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
式X
【化9】

を有する化合物であり、ここで、
Mは-CHOであり、
24、C 1~4アルキル-R あり
ここで、
は-COOHまたは-SO Hであり
ここで、-COOHおよび-SO Hは、任意選択で薬学的に許容される塩の形態である、化合物。
【請求項25】
式XI
【化10】

を有する化合物であり、ここで、
Mは-CHOであり、
26とR27は同一であるか異なっており、それぞれが-OH、-COOH、-SOH、-OPO、-O-(C1~4アルキル)、-O-(C1~4アルキル)OH、-O-(C1~4アルキル)R-O-(C O) 、-(C=O)-O-C1~4アルキル及び-O-(C=O)C1~4アルキルからなる基から独立して選択され、
qは1~4の整数であり、
ここで、-SOH、-COOH及びフェノール性-OHは、任意選択で薬学的に許容される塩の形態であ
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、-SOH、又は-OPOであり、
Xは、結合又は、1~8個の炭素と、任意選択でO、N及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を有する連結基のいずれかであり、
ここで、-COOH、-OPO、-SOH及びフェノール性-OHは、任意選択で薬学的に許容される塩の形である、化合物。
【請求項26】
式XIa
【化11】

を有し、ここで、Lは1、2、又は3であり、
27は-COOH又は-SOHであり、
Mは-CHOであり、
ここで、-COOH及び-SOHは、任意選択で薬学的に許容される塩の形態である、請求項25に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線不透過性ポリマーに関し、より詳細には医療デバイスの製造及び医療方法におけるそれらの使用に関する。本発明は、特に、治療滴塞栓術の分野で有用な放射線不透過性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
治療的塞栓術は、血流を遅くしたり止めたりするために、材料を血管に導入して閉塞を生じさせる低侵襲の処置である。通常、このような材料は、脚や手首などの周辺の箇所から標的部位に進められるマイクロカテーテルを介して送達される。このアプローチは、とりわけ、胃腸出血、動静脈奇形、肝細胞癌などの血管過多の悪性腫瘍、子宮筋腫などの良性増殖、及び最近では良性前立腺肥大症(BPH)などの症状の治療に有用であった。
【0003】
生体適合性ミクロスフェアは、標的部位に容易に送達でき、血管サイズに応じてより予測可能な塞栓形成のために定義されたサイズ範囲で提供できるため、有用な塞栓剤である。液体塞栓はまた、液体として送達されるが、インサイチュー、すなわちその場でゲル化、固化、又は沈殿する材料を使用して、いくつかの領域で有用性を見出した。そのようなシステムの中には、ポリマーの形成又はその場でのゲル化によるものもあれば、塞栓物質を残して血液中に急速に消散する有機溶媒での送達によるものもある。液体塞栓には、血管壁に適合し、沈着特性に応じて、通常、個別の球ではなく、均一な塞栓を形成するという追加の利点がある。通常、塞栓物質は合成又は天然のポリマーであり、生体適合性、密度、圧縮性、流動性、薬剤充填量、カテーテル送達の容易さなどの好適な特性を提供するように選択される。液体塞栓では、血管内の流動特性、沈着の速度と予測可能性、及び塞栓の堅牢性などの特性も重要である。
【0004】
ポリマー骨格に共有結合したヨウ素化基を有する放射線不透過性ポリマーミクロスフェアが提案されている(例えば、特許文献1)。ヨウ素化基は、X線ベースの技術を使用してこれらの材料を可視化するが、ヨウ素の存在は、不十分な薬物充填量、不十分な圧縮性、及び懸濁時間の短縮など、最適ではない取り扱い特性につながる可能性がある。
【0005】
ポリマー骨格に結合したヨウ素化基を有する放射線不透過性液体塞栓も記載されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、ポリマーミクロスフェアと同様に、ヨウ素の存在はポリマーの物理的特性を変化させ、予測不能で急速な沈殿、ポリマーの「ストリング化」及び他の好ましくない取り扱い特性などの不十分な取り扱い特性をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2015/033092号パンフレット
【文献】国際公開第2011/110589号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、X線で視認するために十分な放射線不透過性を有するが、改善された使いやすさを有する、改善されたヨウ素化ポリマーを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、これらの問題の1つ以上が、本明細書に記載のポリマーによって対処できることを確認した。
したがって、第1の態様では、本発明は、式Iのペンダント基を含む親水性ポリマーを提供する。
【0009】
【化1】

ここで、Wは-OH、-COOH、-SOH、-OPO、-O-(C1~4アルキル)、-O-(C1~4アルキル)OH、-O-(C1~4アルキル)R-O-(C O) -(C=O)-O-C1~4アルキル及び-O-(C=O)C1~4アルキルから独立して選択され、あるいは、Wは式-BZの双性イオン基であり得、
ここで、-OH、-COOH、-OPO及び-SOHは、薬学的に許容される塩の形態であってもよく、
Xは、結合、あるいは、1~8個の炭素、及び任意選択でO、N及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を有する連結基のいずれかであり、
Gは、式Iの基がポリマーに結合する結合基であり、エーテル、エステル、アミド、カーボネート、カルバメート、1,3ジオキソロン、及び1,3ジオキサンから選択され、
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、-SOH、又は-OPOであり、
qは1~4の整数であり、
nは1~4の整数であり、
pは1~3の整数であり、
n+pは2~5であり、
ここで、-COOH、-OPO及び-SOH、ならびにフェノール性-OHは、薬学的に許容される塩の形態であってもよく、
Wが式-BZの双性イオン基であり、Bは、結合、あるいは、直鎖アルカンジイル、オキシアルキレン、アルキレンオキサアルキレン、又はアルキレン(オリゴオキソアルキレン)基であって、任意選択で1つ以上のフッ素置換基を有し、Zは、双性イオン性のアンモニウム、ホスホニウム、又は、スルホニウムホスフェートもしくはホスホネートといったエステル基である。
【0010】
基Zは双性イオン性であり、カチオン性部分として、アンモニウム、ホスホニウム又はスルホニウム基を含む。好適には、カチオンはアンモニウム基である。双性イオンのアニオンはホスホ部分である。それは一般にリン酸ジエステル、又はホスホン酸エステルベースの部分である。一般にZでは、アニオンはカチオン(非ホスホベタイン)よりもBに近い。ただし、一部の双性イオンでは、カチオンはアニオンよりもB基に近くなる(以下、ホスホベテインという)。
【0011】
好適には、非ホスホベタインにおいて、Zは一般式IIの基である。
【0012】
【化2】
ここで、同一、又は異なる部分A及びAは、-O、-S、-NH-又は原子価結合であり、好適には-O-であり、Wは、アンモニウム、ホスホニウム及びスルホニウムからなる群のカチオン性基と、好適にはC1~12アルカンジイル基である、アニオン性及びカチオン性部分を連結する基とを含む基であって、好適にはW1+は、
-W-N ,-W-P ,-W-S ,又は-W-Hetの基であり、
は、1つ以上、好適には2~6個の炭素原子のアルカンジイルであって任意選択で1つ以上の、エチレン性不飽和二重結合もしくは三重結合、ジ置換アリール(アリーレン)、アルキレンアリーレン、アリーレンアルキレン、又はアルキレンアリールアルキレンを有するアルカンジイル、シクロアルカンジイル、アルキレンシクロアルキル、シクロアルキルアルキレン又はアルキレンシクロアルキルアルキレンであり、これらの基Wは、任意選択で1つ以上のフッ素置換基及び/又は1つ以上の官能基を含む。そして、基Rは同一であり、又は異なっており、それぞれが水素又は1~4個の炭素原子のアルキル、好適にはメチル、又はフェニルなどのアリールである。あるいは、2つの基Rは、それらが結合している窒素原子と一緒に、5~7個の原子を含む脂肪族複素環をなす。あるいは、3つの基Rは、それらが結合している窒素原子と一緒に、各環に5~7個の原子を含む融合環構造を形成し、場合により1つ以上の基Rは親水性官能基で置換されている。R基は同一であり、又は異なっており、それぞれがR又はOR基であり、Rは上記で定義した通りである。Hetは、芳香族窒素、リン、又は硫黄、好適には窒素を含む環、例えばピリジンである。
【0013】
ZがWがW となるような一般式である化合物は、国際公開第93/01221号に記載されているように作製することができる。ホスホニウム及びスルホニウム類似体は、国際公開第95/20407及び国際公開第9416749号に記載されている。Wが-BZである化合物のうち、ZがW1+がWN+R となるような一般式である化合物が好適である。一般に、式IIのZ基は、好適な一般式IIIを有する。
【0014】
【化3】
ここで、基Rは互いに同一であり、又は異なり、それぞれは水素又はC1~4アルキルであり、mは1~4であり、好適には基Rは同一であり、好適にはメチルである。このW基の特に好適な例は、ホスホリルコリン基である。
【0015】
【化4】
ホスホベタインベースの基では、Zは一般式IVを有し得る:
【0016】
【化5】
ここで、Aは原子価結合、-O-、-S-、又は-NH-、好適には-O-である。
【0017】

は、原子価結合(Aと共に)又はアルカンジイルであり、-C(O)アルキレン-又は-C(O)NHアルキレン、好適にはアルカンジイルであり、好適にはアルカンジイル鎖に1~6個の炭素原子を含む。
【0018】
はS、PR、又はNRである。
この基R又は、それぞれの基Rは、水素又は1~4個の炭素原子のアルキルであるか、又は2つの基Rは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、5~7個の原子の複素環を形成する。
【0019】
は、1~20、好適には1~10、より好適には1~6個の炭素原子のアルカンジイルである。
は結合、NH、S又はO、好適にはOである。
【0020】
10は、ヒドロキシル、C1~12アルキル、C1~12アルコキシ、C7~18アラルキル、C7~18アラルコキシ、C6~18アリール、又はC6~18アリールオキシ基である。
【0021】
一般式IVの基を含む化合物は、特許第3031718号に記載の方法により作製することができ、アミノ置換化合物をホスホランと反応させる。
一般式IVの基を含む化合物では好適には、
は結合であり、
はC2~6アルカンジイルであり、
はNRであり、各RはC1~4アルキルであり、
はC2~6アルカンジイルであり、
はOであり、
10はC1~4アルコキシである。
【0022】
式II及びIIの基を有するものなどのホスホベテイン、及び式IVの基を有するものなどの非ホスホベテインでは、Bは好適には結合、C1~6の分岐又は非分岐アルカンジイル基、例えば、メチレン、エチレンプロピレン又はブチレン基、又は分岐又は非分岐C1~6オキシアルキレン基、例えばオキシメチレンオキシエチレン、オキシプロピレン又はオキシブチレン基などである。
【0023】
本発明は、多種多様なポリマーを放射線不透過性にする手段を提供する。好適には、ポリマーは親水性ポリマーであるが、それはそのようなポリマーは一般により生体適合性が高いからである。
【0024】
ポリマーは、通常、アクリレート、アクリルアミド、アクリル、アセタール、アリル、多糖類、メタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリホスフェート、ポリウレタン、シリコーン、スチレン、ビニル、又はそれらの組み合わせ及び/又はそのコポリマーからなる群から選択される。好適には、ポリマーは、ビニルアルコール、エチレン又はプロピレングリコール、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド又はメタクリルアミドから選択されるモノマーを含む。
【0025】
ヨウ素化ポリマーに適した例示的な親水性ポリマーには、ポリビニルアルコール、アクリレート及びメタクリレート、ならびにそれらの塩、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG-メタクリレート、PEG-メチルメタクリレート、トリス(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N,N-メチレン-ビス-アクリルアミド、キトサン、アルギネ-ト、ゼラチン、デンプン、又は上記の少なくとも1つを含む組み合わせ又はコポリマーが含まれる。ポリマーは架橋され得る。
【0026】
特定の実施形態では、ポリマーは、ポリヒドロキシル化ポリマー、すなわち、1つ以上のペンダントヒドロキシルを有する繰り返し単位を含むポリマーを含むか、又はこのポリマーである。好適なポリヒドロキシル化ポリマーには、アクリレートと、メタシレート、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、及びポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)などのポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)のポリオールエステル;トリス(ヒドロキシメチル)メタクリルアミドなどのポリ(ヒドロキシアルキルアクリルアミド)及びポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド);ポリ(PEGアクリレート)及びポリ(PEGメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、又は、(エチレン-ビニルアルコール)コポリマーなどのビニルアルコールを含むポリマー;デンプン、キトサン、グリコーゲン、メチルセルロースなどのセルロース、アルギネートなどの多糖類、及びカラギーナン、グアー、キサンタン、ジェラン、ローカスビーンガム及びアラビアゴムなどの多糖類ガムが含まれる。
【0027】
ポリマーがポリヒドロキシル化ポリマーである場合、Gは、好適には、エーテル、エステル、炭酸塩、カルバメート、1,3ジオキソロン、及び1,3ジオキサンから選択される。
【0028】
さらなる実施形態において、ポリマーは、ポリカルボキシル化ポリマー、すなわち、1つ以上のペンダントカルボキシル基を有する繰り返し単位を含むポリマーであり得る。これらのポリマーには、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらのコポリマーが含まれる。ポリマーがポリカルボキシル化ポリマーである場合、Gは、好適には、エステル及びアミドから選択される。
【0029】
特に好適なのは、PVAのホモポリマー及びコポリマーなどの、PVAであるか又はそれを含むポリマーである。
PVAのコポリマーの1つのタイプは、PVAとエチレン性不飽和モノマーとの反応によって形成される、分子あたり2つ以上のエチレン性不飽和ペンダント基を有するポリビニルアルコールマクロマーである。PVAマクロマーは、例えば、ペンダントビニル基又はアクリル基を有するPVAポリマーを提供することによって形成することができる。ペンダントアクリル基は、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸をPVAと反応させて、いくつかのヒドロキシル基を介してエステル結合を形成することによって提供され得る。ポリビニルアルコールに結合することができるビニル基を含有する化合物は、例えば、米国特許第4,978,713号、好適には米国特許第5,508,317号及び米国特許第5,583,163号に記載されている。したがって、好適なマクロマーは、(アルク)アクリルアミノアルキル部分に結合しているポリビニルアルコールの骨格を含む。そのようなポリマーの一例は、ネルフィルコン-B又はアクリルアミド-PVAとして知られるPVA-N-アクリロイルアミノアセトアルデヒド(NAAADA)マクロマーを含む。
【0030】
好適な一実施形態において、このマクロマーは、任意選択で正又は負の電荷を有するエチレン性不飽和モノマー、例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)と反応させることができる。そのようなポリマー及びそれらを製造する方法は、国際公開第04/071495号明細書に記載されている。
【0031】
ポリマーがポリヒドロキシル化ポリマーである場合、式1の基は、好適には、1つ以上のヒドロキシル基を介して結合される。ポリマーがポリカルボキシル化ポリマーである場合、式Iの基はカルボキシレート基を介して結合し、Gは好適にはエステル又はアミドである。
【0032】
親水性ポリマーがPVAであるか、又はそれを含む場合、ポリマーは、好適には、PVAからペンダントである、式Ia又はIbのペンダント基、特に、1bを含む。
【0033】
【化6】
Gが、環がヒドロキシル基を介してポリマーに結合されるカップリング基であり、エーテル、エステル、カーボネート及びカルバメートから選択され、特にエーテル又はエステルである場合、エーテルが好適である。
【0034】
特に好適な実施形態では、ポリマーは、例えばPVA又はそのコポリマーなどのポリビニルアルコールであるか又はそれを含み、式I、Ia又はIbの基がポリビニルアルコールのヒドロキシル基を介して結合している、ポリヒドロキシル化ポリマーである。別の特に好適な実施形態では、ポリマーは、多糖を含み、式Iの基が多糖の環又は非環ヒドロキシル基を介して結合している、ポリヒドロキシル化ポリマーである。
【0035】
ポリマーは架橋され得る。架橋は共有結合又は非共有結合であり得る。非共有結合には、ポリマー鎖の絡み合いによる、又は結晶領域の存在による物理的架橋が含まれる。イオン性架橋は、ポリマー上の荷電基が反対の電荷を帯びた多価基によって架橋される場合に発生する可能性がある。場合によっては、これはカルシウム、マグネシウム又はバリウムなどの2価以上の金属イオンを介して発生する可能性がある。
【0036】
共有結合架橋は、異なる鎖上の官能基を一緒に共有結合させるための確立された方法のいずれかによって達成することができる。重合段階で達成される場合、これは二官能性モノマーの組み込みによるものである可能性がある。重合の後の場合、ヒドロキシル基又はカルボキシル基などのポリマー上の官能基と反応することができる二官能性種による。
【0037】
架橋剤はまた、架橋分子内又は末端のいずれかに、分解性領域(例えば、国際公開第2001/68720号明細書を参照)を導入し得る。
好適には、架橋ポリマーはヒドロゲルであり、すなわち、ポリマーは水膨潤性であるが水不溶性である。それは、50重量%より多く、好適には98重量%まで、好適には60~85重量%の水を含み得る。
【0038】
帯電し得る任意のW基に加えて、好適な実施形態において、ポリマーは、pH7.4で帯電され得る基によって置換され得る。このような基は、正又は負の電荷を帯びている可能性があり、生理学的pH(pH7.4)で反対の電荷を帯びている化合物に可逆的に結合することができる。スルホン酸塩、リン酸塩、アンモニウム、ホスホニウム及びカルボン酸塩基を含む様々な荷電基を使用することができる。カルボン酸塩及びスルホン酸塩が好適である。
【0039】
Wは、好適には、-OH、-COOH、-SOH、-OPO、-O-(C1~4アルキル)、-O-(C1~4アルキル)OH、-O-(C1~4アルキル)R-O-(C O) -(C=O)-O-C1~4アルキル及び-O-(C=O)C1~4アルキルから独立して選択される。
【0040】
そして、好適には、-OH、-COOH、-SOH、-O-(C O) 、-O-(C1~4アルキル)R、(C=O)-O-C1~4アルキル、-O-(C=O)C1~4アルキルから、より好適には、-OH、-COOH、-SOH、-O-(C O) 又は-O-(C2~4アルキル)R、特に、-COOH、-SOH、-O-(C O) 又は-O-(C2~4アルキル)Rから選択される。
【0041】
ここで、-SOH、-COOH及びフェノール性-OHは、おそらく薬学的に許容される塩の形態であってもよい。
別のアプローチでは、以下でさらに説明するように、Wは-BZ基であり得る。
【0042】
Wが-O-(C1~4アルキル)Rである本明細書のいずれかのポリマーにおいて、それは、好適には-O-(C2~4アルキル)Rであり、より好適には-O-(Cアルキル)R又は-O-(Cアルキル)Rである。
【0043】
Xは、好適には結合であるか、1~4個の炭素及び任意選択でO及びNから選択される1個のヘテロ原子を有する連結基である。より好適には、結合、(C1~4)アルキレン、(C1~4)オキシアルキレン、アミノ(C1~4)アルキレンから選択される。特定の例には、結合、C、C又はCアルキレン、オキシメチル又はオキシエチル、アミノメチレン及びアミノエチレンが含まれる。リンカーが存在する場合、それは特にメチレン、オキシメチレン又はアミノメチレンである。最適には、Xが結合であるように、環は基Gに直接結合している。
【0044】
qは、好適には1、2、又は3である。nは好適には2又は3、最適には3である。Rは好適にはH又はメチルである。Rは好適には-COOH又は-SOHであるが、特に-SOHである。
【0045】
したがって、特に好適な実施形態では、ポリマーは、PVA又はPVAを含むポリマーから選択され、ペンダント基は、次式である。
【0046】
【化7】

ここで
Wは、-OH、-COOH、-SOH、-O-(C O) 又は-O-(C1~4アルキル)R、好適には、-COOH、-SOH、-O-(C O) 又は-O-(C1~4アルキル)Rから独立して選択され、qは1、2、又は3であり、nは1、2、又は3、好適には2又は3であり、RはH又は(C1~4アルキル)、好適にはメチルであり、Rは-COOH又は-SOHであるが、特に-SOHであり、
ここで、-SOH、-COOH及びフェノール性-OHは、おそらく薬学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0047】
一実施形態では、Wが-COOH、-SOH、-O-(C O) 又は-O-(C1~4アルキル)Rから選択されるポリマーの場合、特に-O-(C O) 又は-O-(C1~4アルキル)Rがミクロスフェアに好適である。
【0048】
一実施形態では、ポリマーは、式1のペンダント基の2つ以上のバージョンを含み、それぞれのnの値が互いに異なる。例えば、それぞれがnの値が異なる2、3、4、又はそれ以上のペンダント基が存在する場合がある。
【0049】
例えば、ポリマーは、3つのヨウ素を有するペンダント基及び1つのヨウ素を有するペンダント基、又は4つのヨウ素を有するペンダント基及び1つのヨウ素を有するペンダント基、又は2つのヨウ素を有するペンダント基及び3つのヨウ素を有するペンダント基、又は1つのヨウ素を有するペンダント基、ヨウ素が2つあるペンダント基、及びヨウ素が3つあるペンダント基を含み得る。それぞれの基の比率は、必要な特性に合わせて変更できる。このようにして、ポリマーの全体的な疎水性とヨウ素含有量/放射密度を微調整して、いずれかのカテーテルの取り扱い一般と送達の特性とともに、沈殿、密度、溶解性、液体塞栓における沈殿物の堅牢性、ミクロスフェアへの密度圧縮性薬物充填量などの物理的特性を改善できる。
【0050】
あるヨウ素化値の別のヨウ素化値に対する比率は、出発物質として値nの場合に適切な比率を有するヨウ素化フェニル部分の適切な比率を提供するか、又は適切な比率で異なる値nを有するペンダント基を有するポリマーを混合することによって達成することができる。出発物質の比率を調整することは、ポリマー内の疎水性が変化する領域の分離を回避するので好適である。
【0051】
好適には、ポリマーは、フェニル環が以下の方法のうちの1つ以上で置換されているペンダント基を含む:
【0052】
【化8】
好適な環には以下が含まれる。
【0053】
【化9】
ここで、-COOH、-SOH及びフェノール性-OHは、ナトリウム又はカリウムを含む金属塩などの薬学的に許容される塩の形態であり得る。
【0054】
式1cの置換フェニル基として、環A~Uが特に好適である。これらの環のうち、H、K、L、M、N、O、R、S、T、及びUは、特にミクロスフェアに適する。
ポリマーは、場合により、活性剤をさらに含み、これは、好適には、ポリマー内に可逆的に保持される。薬剤は、本明細書に記載のポリマーの正又は負に帯電した基との相互作用などによるイオン相互作用によってポリマー内に可逆的に結合することができ、あるいは、沈殿などの別の手段(例えば、国際公開第2007/085615号又は国際公開第2007/090897号)によってポリマー内に保持することができる。
【0055】
活性剤は、化学療法剤、セツキシマブ、トラスツジマブ及びニボルマブなどの抗体、抗体フラグメント、ペプチド、低分子量タンパク質、又はそれらの組み合わせであり得る。
例示的な化学療法剤には、ドキソルビシン、ダウナルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンなどのアントラサイクリンクラス;イリノテカン、トポテカン、エキサテカンなどのカンプトテシンクラス;シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ミリプラチンなどのプラチン;マイトマイシンC、5-フルオロウラシルなどの代謝拮抗剤;ソラフェニブ、スニチニブ、レゴラフェニブ、ブリビンブ、ダセタニブ、ボスチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ及びバンデチニブ、ラパマイシン又はそれらの任意の組み合わせなどのマルチチロシンキナーゼ阻害剤;が含まれるが、これらに限定されない。そのような化合物がイオン化可能である場合、そのような化合物は、通常、それらのイオン形態で使用され得る。
【0056】
放射線不透過性、又は放射線密度は、ポリマー中のヨウ素の量を調整することにより、必要に応じて変えることができる。これは、リング上のヨウ素の数を変えるか、ポリマーに対するペンダント基の比率を変えることによって達成できる。
【0057】
本発明のポリマーは、好適には、1cmあたり少なくとも10mg、好適には25mg/cm、より好適には少なくとも50mg/cm、特に少なくとも100mg/cmのヨウ素を含有する。ポリマーが水膨潤性である場合、この数値は、通常の生理食塩水で完全に膨潤した、すなわち完全に水和したポリマー1mlあたりのヨウ素のmgとして測定される。ポリマーがミクロスフェアの形態である場合、完全に水和されたヨウ素含有量は、充填された体積としての完全に水和されたビーズ1mlあたりのヨウ素の量として表される(例えば、メスシリンダーで定量化される)。
【0058】
ポリマー中のヨウ素の量は、乾燥重量でポリマーの少なくとも重量10%、好適には少なくとも重量20%、より好適には少なくとも重量30%、最適には少なくとも35重量%であり得る。これらのポリマーでは、ヨウ素が乾燥ポリマーの40重量%を超える場合に高い放射密度を得ることができる。
【0059】
好適には、本発明のポリマーは、少なくとも500HU、好適には少なくとも1000HU又は1500HU、より好適には少なくとも2500HU、特に少なくとも4000HUの放射線密度を有する。65kVで測定した場合、特に実施例12に従って測定した場合である。
【0060】
ポリマーは生分解性であり得る。本明細書の生分解性ポリマーは、ポリマーが分解するように、体内での加水分解によって切断される結合を有する。生分解性を提供するために、ポリマーは、エステル基などの、人体において加水分解的に切断可能な結合を提供され得る。このような結合は、骨格中、又は存在する場合は架橋剤で発生する可能性がある。ポリマーは、1時間から1年の期間にわたって可溶性成分に分解し得る。あるいは、ポリマーは非生分解性であり得、その結果、それは1年を超える期間にわたって安定した形態で体内に存在し続ける。
【0061】
本発明の放射線不透過性ポリマーは、一般に、移植された医療用デバイスの製造に有用であり、本明細書に記載のポリマーを含むそのようなデバイスは、本発明のさらなる態様を提供する。デバイスには、ミクロスフェア、液体塞栓、基準マーカー、組織間隔材料、注射可能な増量剤、シーラント、有効成分を送達するためのデポー、創傷被覆材、及び医療用デバイスのコーティング、例えばX線で可視化するためのものが含まれる。
【0062】
本発明の一態様は、ミクロスフェアの形態で本明細書に記載されるような放射線不透過性ポリマーを提供する。使用される実際のサイズ範囲は、とりわけ臨床的必要性に依存するが、ポリマーミクロスフェアは、通常、最大2000μmの平均最大直径を有する。そのような粒子は、例えばふるい分けによって、必要とされる任意のサブサイズ範囲で調製することができる。典型的なサイズ範囲には、100~300、300~500、500~700及び700~900μmが含まれるが、とりわけ、それらのより遠位の塞栓特性のために、より小さなサイズ範囲が状況によっては有利である可能性がある。このような小さいサイズ範囲には、70~150又は40~90μmが含まれる。通常、20um未満のサイズは、毛細血管床を通過することによって引き起こされるターゲット外の塞栓のために回避される。したがって、実際の下限は約20~30umである。40~700umの範囲のサイズは、現在、臨床の用途で最も一般的に使用されている。使用されるポリマーは、ミクロスフェアがイオン相互作用による薬物の装填に適するように、本明細書に記載されるように帯電させることができる。
【0063】
ミクロスフェアは、本明細書に記載の任意のポリマーを含み得るが、好適な実施形態では、ミクロスフェアは、親水性ポリマー、特に本明細書に記載のポリヒドロキシル化又はポリカルボキシル化ポリマーを含む。特に好適な実施形態では、ポリマーは、架橋ポリヒドロキシル化ポリマーであり、特に、本明細書に記載のPVAの架橋ポリマー又はコポリマーであり、特に、エチレン性不飽和の荷電モノマー、例えば2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)又はその塩(例えばナトリウム)と反応させたネルフィルコンBのマクロマーであるが、特に国際公開第2001/68720号、国際公開第01/68721号、特に国際公開第2004/071495号の実施例1に一般的に記載されている。
【0064】
本発明のさらなる態様は、式Iのペンダント基を含む親水性ポリマーを含む液体組成物を提供する。これらの組成物は、液体塞栓組成物として適している。好適には、これらの組成物は、注射可能な液体組成物として提供される。
【0065】
液体塞栓組成物は、ポリマーが液体として体内の所望の部位に送達されるが、インビボで血管内に塞栓を形成する組成物であり、特にポリマーがその場でゲル化、固化又は沈殿して塞栓を形成する組成物である。そのような組成物は、典型的には、本明細書に記載の親水性ポリマーと、水性又は有機溶媒であり得る溶媒とを含む。好適には、組成物は、溶媒中に完全に溶解してポリマーの溶媒中の溶液を形成する式1のポリマーを含む。
【0066】
体内の標的部位で沈殿することを意図するそのような組成物は、典型的には、20℃で通常の生理食塩水と接触して沈殿し、これらの条件下でポリマーが沈殿する組成物は、本発明のさらなる実施形態を提供する。これらの沈殿物の放射能密度及びヨウ素含有量は、好適には、ポリマーに関する本発明の他の実施形態に好適な範囲内にある。
【0067】
形成された塞栓は、通常、ボイドを含むことに留意されたい。好適な放射線不透過性(放射線密度)について提供された数値は、塞栓全体の平均ではなく、ポリマーに関するものである。
【0068】
1つのアプローチにおいて、本明細書に記載されるような親水性ポリマーは、有機溶媒中の溶液として提供され得る。通常、このような溶媒は水と混和性がある。水混和性とは、0.5mlの溶媒が20℃で1リットルの生理食塩水に完全に溶解することを意味する。
【0069】
好適には、これらの溶媒は生体適合性を有する。好適には、溶媒は極性非プロトン性溶媒である。好適な溶媒は、DMSO、DMF、DMPU(N、N’-ジメチルプロピレン尿素)、DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、グリセロール、乳酸エチル、NMP及びグリコフロール(2-(オキソラン-2-イルメトキシ)エタノール)である。この実施形態では、溶媒は、好適には、DMSO及びNMP、特にDMSOから選択される。一実施形態では、有機溶媒は、最大50%、好適には最大25%、最適には最大10%の水を含み得る。
【0070】
別のアプローチでは、式1のポリマーを水性溶媒に溶解する。水性溶媒は、上記のものなどの生体適合性有機溶媒を含み得る。好適な溶媒は、DMSO、DMF、DMPU(N、N'-ジメチルプロピレン尿素)、DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、グリセロール、乳酸エチル、NMP及びグリコフロール(2-(オキソラン-2-イルメトキシ)エタノール)から選択される。最大50体積%(最大45%など)、好適には最大20%のそのような溶媒が存在し得る。溶媒は、好適には、DMSO及びNMPから選択される。しかしながら、水性溶媒は有機溶媒を含まないことが好適である。1つの好適な実施形態において、水性溶媒は、薬学的に許容される緩衝液を含む。そのような緩衝液の例には、リン酸塩、クエン酸塩、トロメタミン及び酢酸塩が含まれる。
【0071】
好適には、液体組成物は、3~70重量%、好適には少なくとも10%又は20%のポリマーを含む。5~40%、又は5~25%の溶解ポリマーの組成物には有用な特性があるが、溶媒中のポリマーの実際の比率は、密度、沈殿の速さ、ポリマーの前面の移動距離、沈殿物形状、溶岩のような流動特性があるかなど、必要な特性によって異なる。
【0072】
液体塞栓に使用されるポリマーは、好適には、本明細書に記載されるように、ポリ(ビニルアルコール)又はエチレン-ビニルアルコールポリマー及びコポリマーなどのビニルアルコールを含むものである。最適には、ポリマーは、ポリビニルアルコールホモポリマー又はコポリマーであるが、好適には、PVAホモポリマーである。
【0073】
液体塞栓として本明細書に記載されている親水性ポリマーは、通常、架橋されていない。好適には、親水性ポリマーは、非架橋PVAホモポリマー又はコポリマーであり、最適には、非架橋PVAホモポリマーである。
【0074】
液体組成物の場合、天然PVAポリマーはアセチル化されていても非アセチル化されていてもよく、典型的には天然PVAのアセチル化レベルは50%~100%、好適には80%~100%であるが、使用のために80~100%、典型的には100%加水分解されている。
【0075】
本発明での使用に適した天然PVAは、1KDa~250kDaの範囲の重量平均分子量を有するが、好適には、PVAは、少なくとも10又は20kDa、好適には少なくとも40kDaの重量平均分子量を有する。好適な範囲には、10~250、40~250kDa、及び40~200kDaが含まれる。
【0076】
液体塞栓症では、親水性ポリマーは、上記のように式1a又は1bのペンダント基を含み得、参照を容易にするために以下に再現される。
【0077】
【化10】

液体塞栓に使用される場合、一般的なポリマー、又はミクロスフェアについての上記の優先事項に加えて以下を備える:
Wは、好適には、-OH、-COOH、-SOH、-OPO、-O-(C1~4アルキル)R及び-O-(C O) である。ここで、-OH、-COOH、-OPO及び-SOHは、薬学的に許容される塩の形態であり得る。Wは、より好適には、-OH、-COOH、-SOH又は-O-(C1~4アルキル)Rである。
【0078】
一実施形態では、Wは、-OH、-COOH、-SOH、-OPO及び-O-(C1~4アルキル)R、好適には-OH、-O-(C1~4アルキル)R及び-COOHから選択される。なぜならば、特に多価カチオンの存在下で、ゲルを形成する可能性があるからである。これは、Wが-OHであるポリマーの場合に特に当てはまる。したがって、そのようなポリマーは、例えば、ゲル液体塞栓、有効成分のゲルデポー、ゲル基準マーカー、及び粒子状医療用デバイス及び有効成分のゲルベースのデポーの調製に有用である。これらは、水性液体塞栓の調製に特に関連しており、したがって、本発明のさらなる態様は、式1のポリマーを含む水性組成物を提供する。式1のポリマーでゲルを形成するための適切な水性カチオンには、例えば、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウム及び亜鉛が含まれる。
【0079】
したがって、本発明の一実施形態は、本明細書に記載のポリマー、特に多価カチオンとのゲルを形成するのに適したポリマーを含む水性組成物を提供する。
さらなる態様は、式1のポリマーを含む水性組成物と、水溶液などの多価カチオンの供給源とを含む、インビボでゲルを形成するためのキットを提供する。
【0080】
本発明のさらなる態様は、塞栓を形成するなど、それを必要とする対象の血管に、本明細書に記載の式Iのポリマーを送達することを含む医学的治療の方法を提供する。ポリマーは、ミクロスフェア又は他の粒子形態であり得るか、又は本明細書に記載されるようなポリマーを含む液体塞栓であり得る。
【0081】
ポリマーが液体塞栓の形態である場合、ポリマーは、血流中に散逸して塞栓を提供する溶媒、典型的には上記のような有機溶媒を含む組成物の形態で送達され得るか、又はポリマーは、塞栓を形成するために血管内でゲルを形成させる組成物の形態を取り得る。一実施形態では、ポリマーは、別々に、連続して、又はポリマーにゲルを形成させる多価カチオンと一緒に送達することができる。カチオンは水溶液で送達することができる。あるいは、ゲル化は血液中に存在するカチオンに依存する可能性がある。
【0082】
さらなる実施形態において、本発明はまた、医学的治療の方法で使用するための、本明細書に記載の薬学的活性成分を提供し、治療は、本明細書に記載の活性物質を含む塞栓組成物の形態で患者に活性薬剤を送達して、そこから活性物質が治療中に溶出されることを含む。組成物は、例えば、医薬活性物質を含むミクロスフェア、又は、活性物質を含む液体塞栓を含み得る。
【0083】
本明細書に記載のミクロスフェア及び液体塞栓は、動静脈奇形、胃腸出血、動脈瘤の充満、固形腫瘍、特に肝臓、前立腺、腎臓、脳、結腸 、骨、肺などの血管過多腫瘍の治療を含む様々な症状を治療するために使用され得る。前立腺肥大症や子宮筋腫などの良性過形成状態と同様に。このアプローチは、とりわけ肥満や関節痛の治療にも使用できる。
【0084】
組成物が、化学療法剤、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、低分子量タンパク質、又はそれらの組み合わせなどの上記の活性剤を含む場合、組成物は、固形、特に血管過多の腫瘍の治療に特に有用である。例えば、組成物は、肝細胞癌(HCC)又は遠隔癌の転移、転移性結腸直腸癌又は神経内分泌転移などの肝臓の癌の治療に使用することができる。
【0085】
ポリマーがポリヒドロキシル化ポリマーである場合、Gがエステル結合である式Iの放射線不透過性ポリマーは、ポリヒドロキシル化ポリマーを式VIの化合物と反応させることによって調製することができる。
【0086】
【化11】
ここで、Qはカルボン酸、酸ハロゲン化物(ClやBrなど)又は活性化カルボン酸である。
【0087】
Qがカルボン酸である場合、反応は通常、適切な極性溶媒(DMSO,DMF,NMPなど)中の酸性条件下(硫酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタン硫酸、酢酸中の臭化水素酸、酢酸、メタンスルホン酸など)で行われる。
【0088】
Qが酸ハロゲン化物である場合、反応は通常、適切な極性溶媒(例えば、DMSO、DMF、NMP)中、例えば、穏やかな塩基条件下、例えば緩やかな塩基(例えば、ピリジン、トリメチルアミン、ルチジン、コリジン又はイミダゾール)の存在下で行われる。
【0089】
Qが活性化カルボン酸である場合、カルボジイミド及びカルボジイダゾールなどの活性化剤、例えば、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、EDCI(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド)及びHOBt(ヒドロキシベンゾトラゾール)が、DMSO、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、及びアセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒で使用できる。反応は、典型的には、触媒量の塩基の存在下で、無水条件下で行われ、活性化を達成する。塩基は通常中程度の強度(共役酸のpKaは約10~13)であり、適切な塩基には、さまざまなピリジン、アミン、窒素複素環、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、DMAPなどが含まれる。
【0090】
エステル結合を介したヨウ素化フェニル基のPVAへの結合は、例えば、国際公開第2011/110589号、国際公開第2014/152488号、及びMawadら(2009)Biomatures、30、5667-5674において議論及び例示されている。
【0091】
エーテル結合を形成するために、ポリヒドロキシル化ポリマーを式VIの化合物と反応させることができ、ここで、Qは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物や、メチルスルホネート、メチルトルエンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネートから選択される基である。Qは例えば臭素であってもよい。
【0092】
エーテル結合を介したヨウ素化フェニル基のPVAへの結合については、国際公開第2011/110589号に記載されている。
ポリマーが1,2又は1,3ジオール基を有するポリヒドロキシル化ポリマーである場合、Gが1,3ジオキソラン又は1,3ジオキサンである式Iの放射線不透過性ポリマーは、ポリヒドロキシル化ポリマーをQが、好適には酸性条件下で、ジオール基と環状アセタールを形成することができる基から選択された式VIの化合物と反応させることにより調製される。この場合、Qは、好適には、アルデヒド、アセタール、及びヘミアセタールからなる群から選択される。この方法でヨウ素化基をPVAに結合することは、国際公開第2015/033092号に記載されている。
【0093】
Gがカーボネート結合であるポリマーは、ポリヒドロキシル化ポリマーを、式Vなど、Qがクロロホルメート基である式IVの化合物と反応させることによって調製することができる。
【0094】
【化12】
Gがカルバメート結合であるポリマーは、ポリヒドロキシル化ポリマーを、式VIなど、Qが塩化カルバモイル基である式IV
【0095】
【化13】
又は式VIIなどのイソシアネート基:
【0096】
【化14】
の化合物と反応させることによって調製することができる。これらの反応は両方とも、ピリジン、トリメチルアミンルチジン、コリジン、又はイミダゾールなどの弱塩基によって媒介される。
【0097】
本発明のさらなる態様は、式Iのポリマーを調製するための新規の出発物質を提供する。したがって、本発明は、式VIIIの化合物を提供する:
【0098】
【化15】
ここで、
Mは-CHO、-C(OH)OR20又は-C(OR21)OR20である。ここで、R20及びR21は、C1~6アルキルから独立して選択され、好適には、R20及びR21はメチルである。
【0099】
22はH、C1~4アルキル、C1~4ヒドロキシアルキル、C1~4アルキル-R-(C O) 又は-(C=O)C1~4アルキル、又は、式-BZの基であり、
Bは結合又は直鎖分岐アルカンジイル、アルキレンオキサアルキレン、又はアルキレン(オリゴオキソアルキレン)基であり、任意選択で1つ以上のフッ素置換基を含み、Bは、好適には、結合、又はメチレン、エチレンプロピレン又はブチレン基などC1~6の分岐又は非分岐アルカンジイル基であり、
Zは、本明細書でさらに詳細に記載されるように、双性イオン性の、アンモニウム、ホスホニウム、又はホスホニウムホスフェート又はホスホネートエステル基である。
【0100】
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、-SOH、又は-OPO、好適には-COOH又は-SOHであり、最適には-SOHであり、
Xは上記の通り、好適には結合であり、
ここで、-COOH、-OPO、-SOH及びフェノール性-OHは、薬学的に許容される塩の形態にあってもよい。
【0101】
好適には、R22は、H、C1~4アルキル、C1~4アルキル-(C O) 、又は-(C=O)C1~4アルキルであるか、-BZ基である。より好適には、R22はH、-(C O) 又は-(C=O)C1~4アルキルであり;又は-BZ基である。
【0102】
ただし、これらのそれぞれの中で、-BZ基の優先順位は落ちる。
本発明は、特に式VIIIaの化合物を提供する。
【0103】
【化16】

Mは-CHO、-C(OH)OR20又は-C(OR21)OR20である。ここで、R20及びR21は、C1~6アルキルから独立して選択され、好適には、R20及びR21はメチル、最適には-CHOである。R22はH、-(C O) 、又はC1~4アルキル-Rである。好適には-(C O) 、又はC1~4アルキル-R、最適にはC1~4アルキル-R、特に、R22が(C又はC)アルキル-SOHである場合、
ここで
はH又はC1~4アルキル、好適には-CHであり、
は-COOH、又は-SOH、好適には-SOHである。
【0104】
本発明はまた、次式の化合物を提供する:
【0105】
【化17】
ここで
Mは-CHO、-C(OH)OR20又は-C(OR21)OR20である。ここで、R20及びR21は、C1~6アルキルから独立して選択され、好適には、R20及びR21はメチルである。
【0106】
Xは上記の通り、好適には結合であり、
23は、C1~4アルキル、C1~4ヒドロキシアルキル、C1~4アルキル-R-(C O) 又は-(C=O)C1~4アルキルであるか、式-BZの基である。
【0107】
Bは結合又は直鎖分岐アルカンジイル、アルキレンオキサアルキレン、又はアルキレン(オリゴオキソアルキレン)基であり、任意選択で1つ以上のフッ素置換基を含み、Bは、好適には、結合、又はメチレン、エチレンプロピレン又はブチレン基などC1~6の分岐又は非分岐アルカンジイル基であり、
Zは、本明細書でさらに詳細に記載されるように、双性イオン性の、アンモニウム、ホスホニウム、又はホスホニウムホスフェート又はホスホネートエステル基である。
【0108】
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、-SOH、又は-OPO、好適には-COOH又は-SOHであり、最適には-SOHであり、
ここで、-COOH、-OPO、-SOH及びフェノール性-OHは、薬学的に許容される塩の形であってもよい。
【0109】
好適には、R23は、C1~4アルキル、C1~4アルキル-R-(C O) 又は-(C=O)C1~4アルキルであるか、-BZ基である。より好適には、R23は、C1~4アルキル-R-(C O) 又は-(C=O)C1~4アルキルである。
【0110】
ただし、これらのそれぞれの中で、-BZ基の優先順位は落ちる。
本発明は、特に式IXaの化合物を提供する。
【0111】
【化18】

ここで:
Mは-CHO、-C(OH)OR20又は-C(OH)OR20である。ここで、R20及びR21は、C1~6アルキルから独立して選択され、好適には、R20及びR21はメチル、最適には-CHOである。R23-(C O) 、又はC1~4アルキル-Rである。特にR23がそのC又はCアルキル-SOHである場合
ここで
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、又は-SOH、好適には-SOHである。
【0112】
本発明はまた、式Xの化合物を提供する:
【0113】
【化19】

ここで:
Mは-CHO、-C(OH)OR20又は-(C(OR21)OR20であり、R20及びR21は、C1~6アルキルから独立して選択され、
24は、H、C1~4アルキル、C1~4ヒドロキシアルキル、C1~4アルキル-R-(C O) 又は-(C=O)C1~4アルキルであるか、式-BZの基である。
【0114】
Bは結合又は直鎖又は分岐アルカンジイル、アルキレンオキサアルキレン、又はアルキレン(オリゴオキソアルキレン)基であり、任意選択で1つ以上のフッ素置換基を含み、Bは、好適には、結合、又はメチレン、エチレンプロピレン又はブチレン基などC1~6の分岐又は非分岐アルカンジイル基であり、
Zは、本明細書でさらに詳細に記載されるように、双性イオン性の、アンモニウム、ホスホニウム、又はホスホニウムホスフェート又はホスホネートエステル基である。
【0115】
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、-SOH、又は-OPOであり、
ここで、-COOH、-OPO、-SO3H及びフェノール性-OHは、薬学的に許容される塩の形であってもよい。
【0116】
好適には、R24はH、-(C O) 又は-(C=O)C1~4アルキルであるか、-BZ基である。より好適には、R23は、H、-(C O) 又は-(C=O)C1~4アルキルである。特にR24-(C O) である。
【0117】
ただし、これらのそれぞれの中で、式-BZの基の優先順位は落ちる。
本発明は、特に式Xaの化合物を提供する。
【0118】
【化20】

ここで:
Mは-CHO、-C(OH)OR20又は-C(OR21)OR20である。ここで、R20及びR21は、C1~6アルキルから独立して選択され、好適には、R20及びR21はメチルであり、最適には-CHOである。R24-(C O) 、又はC1~4アルキル-Rであり、特に-(C O) である。
ここで
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、又は-SOH、好適には-SOHである。
【0119】
本発明はまた、式XIの化合物を提供する:
【0120】
【化21】

ここで:
Mは-CHO、-C(OH)OR20又は-(C(OR21)OR20である。ここで、R20及びR21は、C1~6アルキルから独立して選択され、好適にはメチルであり、
26とR27は同一であるか異なっており、それぞれが-OH、-COOH、-SOH、-OPO、-O-(C1~4アルキル)、-O-(C1~4アルキル)OH、-O-(C1~4アルキル)R-O-(C O) 、-(C=O)-O-C1~4アルキル及び-O-(C=O)C1~4アルキルからなる基から独立して選択され、あるいは、代わりに、Wは式-BZの双性イオン基であってもよい。
【0121】
ここで、-SOH、-COOH及びフェノール性-OHは、おそらく薬学的に許容される塩の形態であってもよい。
Bは結合又は直鎖又は分岐アルカンジイル、アルキレンオキサアルキレン、又はアルキレン(オリゴオキソアルキレン)基であり、任意選択で1つ以上のフッ素置換基を含み、Bは、好適には、結合、又はメチレン、エチレンプロピレン又はブチレン基などC1~6の分岐又は非分岐アルカンジイル基であり、
Zは、本明細書でさらに詳細に記載されるように、双性イオン性の、アンモニウム、ホスホニウム、又はホスホニウムホスフェート又はホスホネートエステル基である。
【0122】
はH又はC1~4アルキルであり、
は-COOH、-SOH、又は-OPOであり、
ここで、-COOH、-OPO、-SOH及びフェノール性-OHは、薬学的に許容される塩の形であってもよい。
【0123】
好適には、R26及びR27は同じ又は異なっており、それぞれが-COOH、-SOH、-OPO、-O-(C1~4アルキル)R-O-(C O) 、-(C=O)-O-C1~4アルキルからなる群から独立して選択され、あるいは、Wは式-BZの双性イオン基である可能性がある。
【0124】
より好適には、R26及びR27は同じであるか又は異なるものであり、それぞれが-COOH及び(C=O)-O-C1~4アルキルからなる群から独立して選択される。
ただし、これらのそれぞれの中で、式-BZの基の優先順位は落ちる。
【0125】
式XIの1つの好適な実施形態は、式の化合物である:
【0126】
【化22】
ここで、Lは1、2、又は3、特に1であり、
これらの化合物では、R27は-COOH又は-SOH、特に-COOHである。
【0127】
Mは-CHO、-C(OH)OR20又は-(C(OR21)OR20である。ここで、R20及びR21は、C1~6アルキルから独立して選択され、好適には、R20及びR21はメチルであり、最適には-CHO又は-C(OR21)OR20である。
【0128】
次に、本発明を、図面を参照して以下の非限定的な例によってさらに説明する。これらは、例示のみを目的として提供されており、これらに照らして特許請求の範囲内にある他の例が当業者には理解されるであろう。本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。その参照と本願の間の競合した場合は、本願に準拠するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0129】
図1】以下の実施例に従って調製された本発明のミクロスフェアの選択を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0130】
(実施例)
実施例1:3,5-ジヨード-2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)ベンズアルデヒドの合成
【0131】
【化23】
還流冷却器と懸濁マグネチックスターラーを備えたHEL PolyBlock8並列合成125ml反応器に、3,5-ジヨードサリチルアルデヒド(13.9011g、37.72mmol、1.0当量)とTBAI(2.7481mg、0.802mmol、0.2当量)を加えた。これに水を加え、1MのNaOH(総水量97ml)でpHを9.5に調整した。完全に溶解するまで500rpmに設定して反応器を撹拌しながら明るい黄色の溶液を得て、1-ブロモ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン(5.00ml、37.17mmol、1.0当量)を加えた。反応器ゾーンは120℃に加熱するように設定された。反応を薄層クロマトグラフィー(TLC)(i-hex中30%EA)でモニターし、2時間後に追加の臭化物(2.50ml、18.59mmol、0.5当量)を加えた。さらに0.5時間後、臭化物の消費のためにpHを9.5に再調整した。さらに2時間後、追加の臭化物(1.25ml、9.29mmol、0.25当量)を加え、反応器を50℃に下げ、一晩撹拌したままにした。19時間後、得られた懸濁液を再加熱して1時間還流し、室温に冷却し、酢酸エチル(400ml)中の分液漏斗に移した。有機物を飽和重炭酸ナトリウムで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、トルエンから熱濾過し、トルエン/イソヘキサンから再結晶して、濾過及び高真空乾燥後、所望の生成物を黄色の粉末として得た(15.2990g、収率86.4%);δ(CDCl、500.1MHz)/ppm;10.31(1H、s)、8.31(1H、d、2.2Hz)、8.09(1H、d、2.2Hz)、4.26(2H、app.t、4.5Hz)、3.89(2H、app.t、4.5Hz)、3.67(2H、app.t、4.6Hz)、3.55(2H、app.t、4.6Hz)、3.38(3H、s);δNMR(CDCl、125.8MHz)/ppm;188.71(CH)、161.55(q)、152.43(CH)、137.57(CH)、131.75(q)、94.07(q)、89.19(q)、75.56(CH2)、71.90(CH2)、70.79(CH2)、70.06(CH2)、59.13(CH3)。
【0132】
実施例2:3-ヒドロキシ-2,4,6-トリヨードベンズアルデヒドの合成
【0133】
【化24】
大型の楕円形のスターラーバーを備えた2Lの3つ口丸底フラスコに、3-ヒドロキシベンズアルデヒド(10.007g、81.89mmol)、ヨウ化ナトリウム(0.614g、4.09mmol、0.05当量)及び炭酸ナトリウム(93.028g、877.44mmol、10.7当量)、を加え、合計750mlの脱イオン水ですすいだ。ベンズアルデヒドが溶解して明るい黄色の攪拌溶液が得られたら、ヨウ素ボール(70.008g、275.80mmol、3.37当量)を30分かけて2回に分けて加え、毎回225mlの水ですすいだ。反応の後にTLC(i-hex中60%DCM)が続き、3時間以上かけて、ヨウ素はほぼ完全に溶解し、濃い黄色/オレンジ色の沈殿物が生じた。固体をブフナー濾過により単離し、i-ヘキサンで洗浄して残留ヨウ素を除去した。分離した固体を温水(2L、45?C)に再溶解して、100mlの飽和した透明な茶色の溶液を得た。チオ硫酸ナトリウム溶液を加えて、残っているヨウ素を削減した。溶液のpHは、1M HClを使用して10.2から3.26に慎重に下げた(CO2の発生に注意)。固体を濾過により単離し、水で洗浄し(2×500ml)、30℃の高真空オーブンで乾燥させて、所望の化合物を黄色の固体として得た(37.002g、収率90.3%、HPLC純度97.2%)。δ(CDCl、500.1MHz)/ppm;9.65(1H、s)、8.35(1H、s)、6.42(1H、s);δNMR(CDCl、125.8MHz)/ppm;194.90(CH)、155.12(q)、149.77(CH)、135.69(q)、88.78(q)、87.66(q)、85.70(q)。
【0134】
実施例3:2,4,6-トリヨード-3-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)ベンズアルデヒドの合成
【0135】
【化25】
攪拌棒を含み、還流冷却器を備えた窒素雰囲気下で火炎乾燥した250mlの3つ口丸底フラスコに、3-ヒドロキシ-2,4,6-トリヨードベンズアルデヒド(15.627g、31.3mmol、1.0当量)、ヨウ化ナトリウム(469mg、3.13mmol、0.1当量)、無水炭酸ナトリウム(3.981、37.6mmol、1.2当量)及び無水ジメチルホルムアミド(DMF)(160ml)を加えた。アルデヒドが完全に溶解するまで懸濁液を撹拌し、次に1-ブロモ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン(6.87g、37.5mmol、1.2当量)をシリンジで加え、反応物を加熱還流した。2時間後、TLC分析(i-hex中10%EA)は、出発物質が消費されたことを示し、反応物を室温に冷却、250mlの丸底フラスコに移され、高真空下で蒸発乾固した。得られた懸濁液を500mlの酢酸エチルで希釈し、3×100ml 1M NaOH、2×100ml飽和塩水で洗浄し、活性炭で脱色し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた溶液を濃縮乾固し、シリカカラムクロマトグラフィー(i-ヘキサン中2~20%酢酸エチル)で精製し、高真空下で乾燥させて、目的の化合物を黄色の粉末(7.556g、40.1%)として得た。δ(CDCl、500.1MHz)/ppm;9.65(1H、s)、8.44(1H、s)、4.20(2H、t、6.4Hz)、4.01(2H、t、6.4Hz)、3.79(2H、app.t、5.8Hz)、3.60(2H、app.t、5.8H)、3.41(3H、s);δNMR(CDCl、125.8MHz)/ppm;194.97(CH)、159.10(q)、150.83(CH)、138.27(q)、97.06(q)、95.70(q)、90.40(q)、72.47(CH2)、72.04(CH2)、70.89(CH2)、68.89(CH2)、59.19(CH3)。
【0136】
実施例4:2,4,6-トリヨード-3(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)ベンズアルデヒドの合成
【0137】
【化26】
スターラーを含み窒素ブランケット下で火炎乾燥した100mlの3つ口丸底フラスコに、トリフェニルホスフィン(1.7216g、6.502mmol、1.3当量)及び無水テトラヒドロフラン(THF)(35ml)を加えた。撹拌を開始し、トリフェニルホスフィン(PPh3)が完全に溶解した後、反応器を氷浴中で約0℃に冷却した。無色の溶液に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)(1.28ml、6.502mmol、1.3当量)をシリンジで滴下し、黄色の持続性溶液を得た。5分間攪拌した後、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(1.04ml、6.502mmol、1.3当量)をシリンジで滴下した。さらに5分間撹拌した後、3-ヒドロキシ-2,4,6-トリヨードベンズアルデヒド(2.5077g、5.002mmol、1.0当量)を一度に加えて、即座に色を変えた。反応をTLC(トルエン中5%Et2O)でモニターし、一晩撹拌した。溶液をエーテルで希釈してトリフェニルホスフィンオキシドを沈殿させ、次に濃縮乾固させた。得られた濃厚な油をカラムクロマトグラフィー(トルエン中2~10%EtO)で精製して、濃縮及び高真空乾燥後、目的の生成物を黄色の粉末として得た(3.2077g、収率99%、HPLC純度94.4%)。 δ(DMSO-D6、500.1MHz)/ppm;9.58(1H、s)、8.47(1H、s)、4.08(2H、t、4.9Hz)、3.57~3.53(4H、m)、3.44(2H、app.t、4.8Hz)、3.24(3H、s)。
【0138】
実施例5:3,4,5-トリヨードサリチルアルデヒドの合成
【0139】
【化27】
大型の楕円形の攪拌機を含む3つ口の2L丸底フラスコに、4-ヨード-サリチルアルデヒド(25.01g、100.86mmol、1.0当量)及び酢酸(300ml)を加えた。固体を溶解させるために5分間撹拌した後、予熱した液体一塩化ヨウ素(39.11g、2.4当量)をAcOH(100ml)で希釈し、丸底フラスコの滴下漏斗に移した。この溶液を10分かけて加えた。次に、反応器を、1Lの滴下漏斗、温度計及び凝縮器を備えた大型のシリコーンオイルバッチに入れ、80℃に加熱するように設定した。加熱中、水(700ml)をゆっくりと溶液に加え、黄色/オレンジ色の沈殿を引き起こした。80℃で20分後、加熱をオフにした。さらに30分後、加熱浴を取り外し、黒色の溶液/黄色の懸濁液を室温まで冷却し、65時間撹拌した。反応物はTLC(iHexで20%EA)によって分析された。固体をブフナー濾過により単離し、水(2×500ml)で洗浄した。残留ヨウ素結晶を除去するために、i-ヘキサン上澄みが紫色でなくなるまで、固体をi-ヘキサン(200ml)で繰り返し再スラリー化した。単離された固体をハイバックオーブンで一晩乾燥させて、所望の生成物を黄色の結晶性固体として得た(40.84g、81%の収率、93.2%の純度(HPLC分析による))。生成物は、アセトン:水(9:1)からさらに高純度に再結晶化することができる。δ(CDCl、500.1MHz)/ppm;12.15(1H、s)、9.67(1H、s)、8.09(1H、s);δNMR(CDCl、125.8MHz)/ppm;194.53(CH)、159.58(C)、142.24(CH)、133.39(C)、120.87(C)、101.68(C)、94.02(C)。
【0140】
実施例6:3,4,5-トリヨード-2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)ベンズアルデヒドの合成
【0141】
【化28】
(5gスケール):窒素の陽圧下で小さな八角形の攪拌棒を含む火炎乾燥した3つ口の250ml丸底フラスコに、トリフェニルホスフィン(2.76g、10.5mmol、1.05当量)及び乾燥THF(70ml)をシリンジで加えた。低温温度計を備えたデューワー浴に丸底フラスコを入れ、エタノール/液体窒素浴で-68℃に冷却した。アゾジカルボン酸ジエチル(1.65ml、10.5mmol、1.05当量)をシリンジで1分かけて滴下し、5分間撹拌して黄色の懸濁液を得た。次に、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(1.77ml、15mmol、1.5当量)を滴下し、5分間撹拌した。これに、固体の3,4,5-トリヨードサリシルアルデヒド(5.00g、10.0mmol、1.0当量)を一度に加えた。最初の濃いオレンジ/赤の懸濁液が明るくなり、淡黄色の溶液が得られ、これを2時間撹拌し、TLC分析(トルエン中20%エーテル)でモニターし、室温まで一晩温めた。TLCは、クリーンな反応プロファイルでアルデヒド出発物質の完全な消費を示した。得られた溶液を500mlの丸底フラスコに移し、エーテル(200ml)で希釈し、冷凍庫で冷却した。得られた懸濁液を短いシリカプラグで濾過してトリフェニルホスフィンオキシドを除去し、さらにエーテル(200ml)でフラッシュした。得られた溶液を濃縮乾固し、トルエン中のエーテル(2~20%)で溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物画分を濃縮乾固し、高真空下で乾燥させて、所望の生成物を黄色のアモルファス固体を得た。(4.91g、収率82%、HPLC純度96%);δ(CDCl、500.1MHz)/ppm;10.26(1H、s)、8.34(1H、s)、4.22(2H、t、4.5Hz)、3.90(2H、t、4.5Hz)、3.90(2H、t、4.6Hz)、3.55(2H、t、4.6Hz)、3.38(3H、s);δNMR(CDCl、125.8MHz)/ppm。
【0142】
実施例7:5-((2,2-ジメトキシエチル)アミノ)-2,4,6-トリヨードイソフタル酸の合成
【0143】
【化29】
窒素下で火炎乾燥した500mlの丸底フラスコに、固体の5-アミノ-2,4,6-トリヨードイソフタル酸(46.95g、84.03mmol、1.0当量)、重炭酸ナトリウム(28.21g、335.8mmol、4.0当量)及びカニューレ経由のDMF(約400ml)を加えた。得られた褐色の溶液に、2-ブロモ-1,1-ジメトキシエタン(13ml、110.0mmol、1.3当量)を滴下し、得られた溶液を18時間加熱還流した。室温まで冷却した後、DMFの大部分を真空(9mBar、55℃)下でのロータリーエバポレーターにより除去し、得られたオレンジ色の固体を酢酸エチル(1L)で抽出した。この懸濁液を飽和塩化リチウム溶液(7×400ml)で洗浄して残留DMFと塩を除去し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。得られた固体を酢酸エチルから再結晶化し、i-ヘキサンで洗浄し、濾過した。このプロセスを合計3回繰り返し、得られたオレンジ色の固体を高真空下で乾燥させて、表題の化合物(33.04g、61%、91.7%のHPLC純度)を得た。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM中のMeOH、0~15%)でさらに精製することができた(4.91g、収率82%、HPLC純度96%)。δ(CDCl、500.1MHz)/ppm;8.01(1H、s)、4.86(2H、br、s)、4.76(1H、t、5.5Hz)、4.37(2H、d、5.5Hz)、3.44(6H、s);δNMR(CDCl、125.8MHz)/ppm。
【0144】
実施例8:3-(3-ホルミル-2,4,6-トリヨードフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸カリウム及び3-(1-ホルミル-3,4,5-トリヨードフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸ナトリウム塩の合成
【0145】
【化30】
150mlの3つ口丸底フラスコで、3-ヒドロキシ-2,4,6-トリヨードベンズアルデヒド(10g、20mmol、1.0当量)を、マグネチックスターラーを用いて無水THF(50ml)に溶解した。カリウムt-ブトキシド(2.47g、22mmol、1.1当量)を20mLのTHFと混合し、懸濁液を窒素雰囲気下、室温でフラスコにゆっくりと加え、続いて温度を40℃に上げて生成物を完全に溶解させた。次に、スルトン(15g、120mmol、6.0当量)を15mLのTHFに溶解し、混合物を反応フラスコにゆっくりと加えた。すぐに沈殿物が現れた。40℃で3時間反応させた後、反応混合物を500mLの酢酸エチルに注ぎ、固体の生の生成物を得た。濾過した固体を100mlの酢酸エチルで洗浄し、エタノールから再結晶させた。24時間にわたる真空乾燥後、所望の生成物(10.7g、80%の収率)が単離された。δ(D2O、500.1MHz)/ppm;2.24~2.34(m、2H)、3.12~3.25(t、2H)、3.88~4.02(t、2H)、8.18~8.25(s、1H)、9.42~9.50(s、1H)δNMR(CDCl、125.8MHz)/ppm;元素分析結果:C 18.56、H 2.22、S 5.66、I 52.31、K 6.27。計算値:C 18.20、H 1.22、S 4.85、I 57.68、K 5.92。
【0146】
3-(1-ホルミル-3,4,5-トリヨードフェノキシ)プロパン-1-スルホネート、ナトリウム塩は、3,4,5-トリヨードサリシルアルデヒドから同様に合成された(実施例6)。
【0147】
実施例9: ミクロスフェアの調製
ミクロスフェアは、国際公開第2004/071495号(高AMPS法)の実施例1に従って調製した。生成物を真空乾燥して残留溶媒を除去するステップの後に、プロセスを終了させた。次に、ビーズをふるいにかけて適切なサイズ範囲を与えた。ビーズは乾燥状態又は生理食塩水中で保存し、オートクレーブ処理した。特に明記しない限り、カップリングは直径70~170μmのミクロスフェアのバッチで実行され、反応は使用前に適切な溶媒で膨潤した乾燥ビーズで実行された。
【0148】
実施例10:一般的なミクロスフェアカップリング法
窒素ブランケット下で予備乾燥した反応器に、所望の化学基質(通常、PVAジオール官能基に対して0.6当量)、無水溶媒(通常、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、粒子質量に対して30vol)及び触媒(粒子質量に対して、通常2.2vol)を加えた。撹拌しながら、溶液を反応温度(40~80℃)まで温めた。次に、ビーズ微粒子を加え、さらなる無水溶媒(通常は粒子質量に対して5vol)で反応器に洗い流した。次に、反応物をNブランケットの下で撹拌し、化学基質の消費について高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって反応変換を監視した。所定の時間(通常、化学物質のビーズの取り込みが停止したとき)に、攪拌をオフにし、ビーズを沈降させた。上澄み液をフィルター膜を通して吸引することにより除去し、溶媒(通常、35volの、DMSO又はNMP中の0.5重量%NaClのいずれか)を入れ、最大10分間撹拌した。溶媒洗浄を繰り返し、合計5回の溶媒洗浄を行い、さらに0.9%生理食塩水(通常は粒子質量に対して50vol)で5回洗浄した。得られた粒子懸濁液をPBS中の10mlショットバイアルに移し、121℃で30分間オートクレーブ処理した後、室温まで冷却した。
【0149】
実施例11:放射線不透過性ミクロスフェアの特性評価
ビーズの乾燥重量は、パッキングの生理食塩水を除去し、残りの生理食塩水をティッシュで吸い上げることによって測定された。次に、ビーズを50℃で一晩真空乾燥して水分を除去し、これから乾燥ビーズの重量とポリマーの固形分(重量%)を取得した。単位体積あたりのヨウ素レベルを決定するために、例えばメスシリンダーによって完全に水和されたビーズの沈降体積が決定され、次にビーズが乾燥され、ヨウ素含有量が決定された。乾燥したビーズのヨウ素含有量は、シェーニガーフラスコ法による元素分析によって測定された。
【0150】
実施例12:個々の放射線不透過性ビーズと液体塞栓ポリマーのX線分析
マイクロCTを使用して、上記の一般的な実施例10に従って調製された放射線不透過性塞栓ビーズのサンプルの放射線不透過性を評価した。サンプルは、ヌンク(Nunc、登録商標)クライオチューブバイアル(シグマアルドリッチ製品コードV7634、48mm×12.5mm)で調製した。ビーズを0.5%アガロースゲル(シグマアルドリッチ製品コードA9539で調製)に懸濁した。得られた懸濁液は、一般に「ビーズファントム」と呼ばれる。これらのビーズファントムを調製するには、最初にアガロース(1%)の溶液を約50℃の温度に上げる。次に、既知量のビーズを加え、溶液が固化又はゲル化し始めるまで、2つを穏やかに混合する。溶液が冷えるとゲル化し、ビーズはアガロースゲル内に均一に分散して懸濁した状態に留まる。
【0151】
ビーズファントムは、英国バークシャーのレディングにあるRSSLラボラトリーズでブルカー スカイスキャン 1172 マイクロCTスキャナーを使用してマイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)を使用し、タングステンアノードを取り付けて放射線不透過性をテストした。各ファントムは、64kVの電圧と155μAの電流で動作するタングステンアノードを備えた同じ機器構成を使用して分析した。アルミフィルター(500μm)を使用した。
【0152】
液体塞栓サンプルの場合、2つの部分からなる分析方法が使用される。最初に、プラグと空洞構造を含むようにチューブの内径をカバーする、対象の補間領域が作成され、次に画像がセグメント化されて空洞構造からポリマーが分離され、ポリマーの放射密度が報告される。次に、同日に取得した水レファレンスを使用して、HUの放射密度を計算した。表1に、取得パラメータを示す。
【0153】
【表1】
少量の精製MilliQ(登録商標)水を各サンプルチューブに注意深くデカントした。次に、各サンプルを1回のスキャンを使用してX線マイクロコンピューター断層撮影法で分析し、水のレファレンスとビーズを含めた。次に、NRecon(商標)を使用してサンプルを再構築し、精製水リファレンスの対象ボリューム(VOI)に対してキャリブレーションした。ハウンズフィールドキャリブレーションを検証するために、キャリブレーション後に空気と水の関心領域(ROI)を分析した。
【0154】
放射密度は、ビーズ全体のラインスキャン投影からハウンズフィールド単位で報告された。NRecon(しきい値)のすべてのサンプルのダイナミックレンジに使用される値:-0.005、0.13(最小及び最大減衰係数)。
【0155】
表2は、一般的な実施例10に従って調製されたミクロスフェアの放射密度、ヨウ素及び固形分を示している。放射線密度データは、個々のミクロスフェアの10回のラインスキャンの平均である。各調製物について複数のミクロスフェアを分析した。
【0156】
【表2】
実施例13:ミクロスフェアプロトタイプの薬物充填
1mLのミクロスフェア(70~150オm)を1.5mLのドキソルビシン溶液(濃度25mg/mL)に一定の攪拌下で懸濁した。所定の時点で、上澄み溶液をサンプリングし、既知のレファレンスに対して483nmのUVでドキソルビシン濃度を決定した。表2(上記)は、ミクロスフェアプロトタイプの95%を超える充填までの時間を示している。非放射線不透過性ミクロスフェア(DCビーズM1(70~150μm:英国、バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド社)は、10分未満で95%以上に充填された。1,3ジオキサン基を介してミクロスフェアに結合したトリヨードフェニル基を有する市販の放射線不透過性ミクロスフェア(DCビーズLUMIバイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド社)は、30分で95%を超えて充填された。
【0157】
実施例14:一般的な液体塞栓合成条件
窒素ブランケット下で予備乾燥した反応器に、PVA(通常5~10g)と無水溶媒(通常DMSO又はNMP、PVA質量に対して40vol)及び触媒(例:メタンスルホン酸、通常PVA質量に対して2.2vol)を加えた。攪拌した懸濁液を高温(約90℃)に加熱してPVAを溶解する。均一な溶液が得られたら、混合物を所望の反応温度(通常50~80℃)に冷却し、所望の化学基質(通常、PVAジオール官能基に対して0.1~0.6当量)を追加した。次に、反応物をN2ブランケットの下で撹拌し、化学基質の消費について反応物の転換をHPLCによって監視する。所定の時間(通常、化学基質の消費が停止したとき)に、滴下漏斗から貧溶媒(通常、アセトン、DCM、MeCN又はTBME、約40vol)を滴下する。上澄み液をフィルター膜を通して吸引することにより除去し、さらに反応溶媒(通常40vol)を充填し、固体が完全に溶解するまで撹拌する。この溶剤洗浄段階は最大3回繰り返した。次に、固体を反応溶媒に再溶解し、水をゆっくりと加えることによって沈殿させた(通常は最大100vol)。得られた凝集固体を上澄みから除去し、水中のブレンダー(約1リットル)で均質化する。懸濁液を濾過し、水(通常は100vol)に再懸濁し、最大30分間スラリー化し、濾過する。pHが中性になるまで水のスラリー化を繰り返し、次に湿った固体をアセトン中でスラリー化し(100vol、30分間撹拌、2回繰り返し)、ろ過し、高真空オーブンで30℃で最大24時間乾燥させる。
【0158】
実施例15:液体塞栓プロトタイプの準備
サンプルプロトタイプは、次の方法で調製される。一般的な実施例12に従って調製されたヨウ素化PVAを10mlバイアルに量り取り、全体の濃度が4~20重量%の範囲、かつ、総量が10ml未満になるように目的の溶媒(通常はDMSO又はNMP)を添加する。 これに、イオン性液体塞栓種を作成する必要がある場合は、水酸化ナトリウム(4M)をその時点で追加する。次に、濃厚な懸濁液を収容するバイアルを密封して超音波処理装置に入れ、完全に溶解するまで超音波処理する(通常は約4時間)。
【0159】
実施例16:3,4,5-トリヨードサリチルアルデヒド(TISA)-PVAの調製
窒素ブランケット下の乾燥した600mlのHEL社PolyBLOCK(登録商標)容器にDMSO(200ml、67vol)を加え、500rpmで撹拌を開始した。これにPVA(85~124kDa、100%加水分解、3.0051g)を入れ、DMSO(10ml)で反応器に洗い流し、すべての固体が溶解するまで懸濁液を80℃(内部プローブ)に加熱した。次に、溶液を内部60℃に冷却し、3,4,5-トリヨードサリチルアルデヒド(3,4,5-TISA、6.8140g、13.6mmol、PVA-1,3-ジオール単位に対して0.25当量)を充填し、DMSO(10ml)ですすいだ。完全に溶解した後、メタンスルホン酸(6ml、2vol)を一度に加え、HPLC分析が3,4,5-TISAの消費が停止したことを示すまで反応物を60℃で撹拌した。溶液を室温に冷却し、大型の攪拌棒を含む2Lのガラスブレーカーに移し、これに滴下漏斗で、ジクロロメタン(DCM)(250ml)、次にトルエン(500ml)を加えた。黄色の上清をデカントし、得られた固体をDMSO(150ml)に50℃で1.5時間ゆっくりと再溶解させた。トルエン(500ml)をゆっくりと加えることによりポリマーを沈殿させ、その場での濾過により着色した上澄みを除去した。ポリマーをDMSO(150ml)に一晩再溶解し、次に水(500ml)を滴下して沈殿させた。得られた固体を除去し、水に混合して均一な懸濁液を得た。溶液のpHがpH7であることを確認し、固形物をブフナー漏斗で濾過することにより単離し、水(250ml)及びアセトン(250ml)で洗浄し、高真空オーブンで30℃で一晩乾燥させて、所望の生成物を、黄色/白色の固体として得た(9.1517g、収率83.2重量%)。
【0160】
表3は、PVA及びTISA/PVA比のさまざまな分子量サンプルを使用して、この一般的なプロトコルに従って調製されたサンプル液体塞栓製剤の収量とヨウ素含有量(w/w)を示している。
【0161】
【表3】
同様の方法で、以下の市販のアルデヒドもPVAに結合させることができる:
(a)2-スルホベンズアルデヒドナトリウム塩、(シグマアルドリッチ、英国)
(b)4-ホルミルベンゼン1,3ジスルホン酸二ナトリウム塩、(シグマアルドリッチ、英国)
(c)4-ホルミル安息香酸(シグマアルドリッチ、英国)。
【0162】
実施例17:流動条件下での液体塞栓の沈殿
透明な着脱自在のチューブを流動する系に取り付け、それを通して、蠕動ポンプを使用して着脱自在チューブを通してPBSがポンプで送られ、血流状態を模倣した。2.4Frカテーテルを使用して、液体塞栓製剤を着脱自在チューブに送った。液体塞栓がカテーテルを離れてPBSと接触すると、着脱自在チューブ内に沈殿した。次に、沈殿物の長さをカテーテル先端の端から測定した。流量と速度低下も記録された。「前進の最長距離」が記録された。逆流が起こった場合、その長さは「逆流の最長距離」(cm)として記録した。表4は、液体塞栓製剤の沈殿特性を記録している。
【0163】
【表4】
実施例18:沈殿した液体塞栓サンプルのX線分析
材料の放射線不透過性測定値を取得するために、沈殿した製剤の1cmの切片を切り取り、ポリプロピレンキャップ付きチューブ(Nuncチューブなど)内の温かい(55℃)1%アガロースに包埋し、実施例12に従ってマイクロCTを使用してスキャンした。表5は、実施例13の調製された製剤の放射線不透過性を示している。
【0164】
【表5】
図1