(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】連結組職中のエラスチン及びコラーゲン生合成増進用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20230731BHJP
A61K 31/401 20060101ALI20230731BHJP
A61K 33/34 20060101ALI20230731BHJP
A61K 31/728 20060101ALI20230731BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230731BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230731BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230731BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230731BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230731BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20230731BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230731BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230731BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230731BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20230731BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20230731BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230731BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230731BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230731BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230731BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20230731BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230731BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20230731BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20230731BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/401
A61K33/34
A61K31/728
A61P9/12
A61P21/00
A61P19/02
A61P43/00 105
A61P17/00
A61P19/04
A61P17/02
A61K8/44
A61K8/19
A61K8/27
A61K8/23
A61K8/73
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q17/04
A61Q1/02
A61K8/02
A23L33/16 ZNA
A23L33/175
(21)【出願番号】P 2020570194
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 KR2020013780
(87)【国際公開番号】W WO2022050479
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0111559
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520489695
【氏名又は名称】エラスティック ラボ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ELASTIC LAB INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】キム マンソク
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07981406(US,B2)
【文献】国際公開第2007/050178(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/024350(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリシン、L-プロリン
、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-リシン塩酸塩及び2価金属イオンを含むエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用組成物であって、
各アミノ酸のグリシンに対する含量比が、
-L-プロリン:0.9~1.1、
-L-アラニン:0.40~0.90、
-L-バリン:0.30~0.80、
-L-ロイシン:0.10~0.30、及び
-L-リシン塩酸塩:0.10~0.25
であり、前記2価金属が銅(Cu)である、組成物。
【請求項2】
前記2価金属は、組成物の総重量を基準に、0.001~5.0重量%含むことを特徴とする、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の組成物を含む、エラスチン又はコラーゲンの生合成増進用医薬組成物。
【請求項4】
経口投与、筋肉注射、経皮注射、外用医薬品又は医療機器の形態に剤形化されることを特徴とする、請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
エラスチン関連疾患、血管弾力低下による高血圧、血行低下、腱靱帯弾力低下、関節弾力低下、光老化による弾性線維症、真皮及び表皮萎縮、真皮萎縮性皮膚疾患、火傷、放射線火傷、皮膚病変、褥瘡、薬物投与によって誘発される真皮無形成症、又は筋肉及び関節病変の予防又は治療の用途に使われることを特徴とする、請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1
又は2に記載の組成物を含む、エラスチン又はコラーゲンの生合成増進用機能性化粧料組成物。
【請求項7】
請求項
6に記載の機能性化粧料組成物を含む、機能性化粧品。
【請求項8】
皮膚弾力改善、しわ除去及び/又は顔のしわ線除去の用途に使われることを特徴とする、請求項
7に記載の機能性化粧品。
【請求項9】
フェイシャルクリーム、ハンドクリーム、保湿クリーム及び日焼け防止クリームなどのクリーム、ローションなどの溶液又は濃縮溶液、クリームパウダー、ファウンデーション、マイクロエマルジョン、軟膏、ペースト、パック又はスプレーの形態であることを特徴とする、請求項
7に記載の機能性化粧品。
【請求項10】
請求項1
又は2に記載の組成物を有効成分として含む、皮膚健康、血液循環、血圧調節、又は関節を含む筋骨格系の健康を改善する健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエラスチン及び/又はコラーゲンの生合成増進用組成物に関するもので、より詳しくはグリシン、L-プロリン及び2価金属イオンを含むエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エラスチンはコラーゲンとともに結合組織に存在し、ゴム弾力性のような伸縮性があるタンパク質であり、組職の柔軟性及び伸縮性に関与している。このような特徴のため、エラスチンが存在する組職は伸びるか収縮した後にも元の形態に戻ることができるので、皮膚の弾力、しわ防止、血管の収縮及び弛緩、肺の収縮及び弛緩などに重要な役割を果たしている。
【0003】
エラスチン線維は、グリシン、バリン、アラニン、プロリンのような簡単なアミノ酸から構成されたエラスチンとフィブリリンから構成されている。エラスチンは多くのトロポエラスチンの結合によって生成される。エラスチンを構成するアミノ酸は疎水性アミノ酸であり、グリシンとプロリンのようなアミノ酸が存在する。これらのアミノ酸はリシン残基と交差結合して動きの自由な疎水性地域を構成する。
【0004】
生体内でエラスチン(elastin)の生合成は、線維芽細胞(fibroblast)、内皮細胞(endothelial cell)、平滑筋細胞(smooth mucsle cell)、軟骨細胞(chondrocyte)が担当する。エラスチンは自体長の7倍まで伸長することができ、著しい分子変形なしにその空間的モジュラス(dimensional modulus)に戻ることができ、理論的にはこのような伸長を無制限に繰り返すことができる。
【0005】
一方、コラーゲンは動物の身体の多様な結合組織(Connective tissues)の細胞外空間を満たす主要組職形成タンパク質である。哺乳動物では、全体タンパク質の25%~35%を占める最も豊かなタンパク質でもある。無機化作用(Mineralization)の程度によって、骨のように堅いか、筋のように柔軟であるか、軟骨のように堅い部分から柔軟な部分まで含むこともある。コラーゲンは非常に長いフィブリル(Fibril)の形態を有し、筋、靭帯、皮膚のような線維組職(Fibrous tissues)からよく捜してみることができ、角膜、軟骨、骨、血管、消化管、椎間板(Intervertebral discs)、歯牙の象牙質からも発見される。筋肉組職では筋内膜(endomysium)の主要要素である。コラーゲンは筋肉組職の1~2%を占め、強く、筋の多い筋肉では6%程度を占める。体内で最も多い細胞である線維芽細胞(fibroblasts)がコラーゲンを生成して分泌する。
【0006】
皮膚老化及び光老化(photoaging)は皮膚表面にしわを引き起こし、真皮組職の遠位部分(真皮網状層(reticular dermis))に位置するエラスチン線維のネットワークが減るにつれて、皮膚の全体弾性力の著しい損失を引き起こし、結局には皮膚結合組職が機械的ストレッチングに適応する能力を減少させ、組織たるみ(tissues agging)及び皮膚弾力性の損失を引き起こす。
【0007】
エラスチンの前駆体であるタンパク質トロポエラスチン(tropoelastin)を暗号化する遺伝子(ELN-遺伝子)は多様な形態のトロポエラスチンをコーディングし、前記遺伝子は既に胎児期(foetal stage)で発現し始め、人生の初期5年の間に活性状態で維持されてから活性が止まるまで急激に鈍化する(Bashir, MM et al., J Biol Chem 264:8887, 1989)。すなわち、結合組織、特に真皮、粘膜、軟骨組織、血管内膜、肺及び弁膜/心筋結合組職の弾性要素は既に人生の初期に合成が中断される。火傷及び深刻な光老化のような深刻な組職損傷が発生する場合を除いては補充されない。このような場合には、トロポエラスチン前駆体分子の中でリシン残基の酸化を触媒する5個の他の酵素を暗号化するLOX(リシンオキシダーゼ)遺伝子の過発現があり、これは機能的エラスチンの合成及びそれが細胞表面に付着する微小線維(microfibrils)内に後で導入されることに必要な段階である。特に、前記酵素依存的過程は、リシン酸化及び架橋化した分子内の結合を生成するためのL-LYSのアミノ基とアルドースとの間のシッフ塩基の同時形成によってなされる(Maki et al., Am J Pathol 167:927, 2005)。エラスチンは実質的に代替できない唯一の結合組職タンパク質であり、70年以上(平均半減期、74年)の間に同一に維持される。
【0008】
一方、タイプIのコラーゲンは人体コラーゲンのうち最も高いパーセントを占めるコラーゲンであり、皮膚、血管、臓器、骨などに多様に分布するタンパク質であり、細胞外基質(extracellular matrix、ECM)の構成と結合組職での構造的及び機能的維持に重要な役割をする。コラーゲンI欠損は、特に皮膚老化及び光老化に典型的な皮膚変性(skin degeneration)現象において、ヒト皮膚の栄養性(trophism)及び弾性力喪失と密接な関連がある。
【0009】
特定のアミノ酸及びオリゴペプチドが局所的に又は経口で適切に運搬されて適用される場合、真皮及び表皮結合組職、特にコラーゲン及びトロポエラスチンの生合成を引き起こす遺伝子発現を促進するものといて知られており(Lupo MP et al., Cosmeceutical peptides. Dermatol Ther 20:343, 2007)、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、ロイシン及びリシン塩酸塩を適切な比で混合したアミノ酸混合物を使った局所又は経口用組成物が開示されたことがあるが、コラーゲンとエラスチンの合成を促進するものについては開示されていない(WO2016/088078A、EP2033689A及びWO2007/048522Aなど参照)。
【0010】
よって、本発明者らはエラスチンとコラーゲン生合成を促進することができる最適のアミノ酸含有組成物を開発しようと鋭意努力した結果、グリシン(glycine)、プロリン(proline)及び2価金属イオンを含む組成物で線維芽細胞を処理する場合、エラスチンとタイプIコラーゲンの発現量が増加することを確認し、本発明を完成することになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的はエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、グリシン、L-プロリン及び2価金属イオンを含むエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用組成物において、グリシン:L-プロリンの組成比が重量基準で1:0.9-1.1であることを特徴とする組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記組成物を含むエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用医薬組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記組成物を含むエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用機能性化粧料組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記エラスチン又はコラーゲンの生合成増進用組成物を有効成分として含む美容又は筋骨格系疾患予防用健康機能食品を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記組成物を投与する段階を含むエラスチン又はコラーゲン生合成を増進させる方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、エラスチン又はコラーゲン生合成増進のための前記組成物の用途を提供する。
【0018】
また、本発明は、エラスチン又はコラーゲン生合成増進用薬剤の製造のための前記組成物の用途を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による組成物の線維芽細胞(Hs27細胞)に対する細胞成長能を確認した結果を示す図である。
【
図2】本発明による組成物処理による線維芽細胞におけるCOL1A2、ELN及びCOL4A1遺伝子の発現量変化をqPCRで確認した結果を示した図である。
【
図3】本発明による組成物処理による線維芽細胞におけるタイプIコラーゲン及びエラスチンタンパク質の生成能をウェスタンブロット法で確認した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する技術分野で熟練した専門家によって通常的に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、この明細書で使用する命名法は当該技術分野でよく知られて通常的に使われるものである。
【0021】
真皮組職の構成成分であるコラーゲンとエラスチンの生合成を増進させるためには、特定のアミノ酸及びオリゴペプチドが局所的に又は経口で適切に運搬されて適用される場合、真皮及び表皮結合組職、特にコラーゲン及びトロポエラスチンの生合成を引き起こす遺伝子発現を促進するものとして知られているが、線維芽細胞でコラーゲンとエラスチンの生成を促進させることができる最適のアミノ酸の組合せ及びこれを補助するミネラル組成に対する研究は充分でない実情である。本発明では、グリシン、L-プロリン及び2価金属イオンを含む組成物が線維芽細胞でコラーゲン及びエラスチン生合成に関与する遺伝子の発現を増進させ、線維芽細胞でコラーゲンタンパク質とエラスチンタンパク質の生成を促進することを確認した。
【0022】
したがって、本発明は、一観点で、グリシン、L-プロリン及び2価金属イオンを含むエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用組成物であって、グリシン:L-プロリンの含量比が重量基準で1:0.9-1.1であることを特徴とするエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用組成物に関するものである。
【0023】
本発明において、グリシン:L-プロリンの含量比は、好ましくは1:0.9~1.1、より好ましくは1:0.95~1.05、最も好ましくは1:0.99~1.01である。
【0024】
本発明の組成物は、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン及びL-リシン塩酸塩からなる群から選択される1種以上のアミノ酸をさらに含むことができ、各アミノ酸のグリシンに対する含量比は、重量基準で、
-L-アラニン:0.40~0.90、
-L-バリン:0.30~0.80、
-L-ロイシン:0.10~0.30、
-L-リシン塩酸塩:0.10~0.25
の比で含むことが好ましく、
-L-アラニン:0.60~0.85、
-L-バリン:0.40~0.75、
-L-ロイシン:0.15~0.25、
-L-リシン塩酸塩:0.12~0.20
の比で含むことがより好ましく、
-L-アラニン:0.70~0.80、
-L-バリン:0.55~0.70、
-L-ロイシン:0.18~0.23、
-L-リシン塩酸塩:0.14~0.18
の比で含むことが最も好ましい。
【0025】
本発明の組成物は、全体アミノ酸組成物を基準に、0.1~30.0重量%、好ましくは0.5~25.0重量%、より好ましくは1.0~20重量%のL-システイン又はN-アセチル-L-システインをさらに含むことができる。
【0026】
本発明による組成物は、アミノ酸を総1~700g/L、好ましくは5~650g/L、より好ましくは10~600g/L、最も好ましくは15~500g/L含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明において、前記2価金属は、銅(Cu)、コバルト(Co)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択されることを特徴とする。前記2価金属イオンは、金属イオンを基準に、全体組成物に対して0.001~5.0重量%、好ましくは0.003~4.5重量%、最も好ましくは0.005~4.0重量%含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
好ましくは、本発明による組成物に含まれる2価金属イオンは銅である。銅は銅金属自体として含むことができるが、好ましくは銅塩化合物又はその水和物の形態として含むことができ、より好ましくは硫酸銅水和物、最も好ましくは硫酸銅5水和物の形態として含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明の組成物に使用される銅(copper、Cu)は微量無機質(micro mineral)であり、鉄のように2種の原子が電子(Cu+とCu2+)の形態で互いに転換されながら体内で酵素を含めた多くのタンパク質の一部として存在する必須な微量元素である。銅はミトコンドリア内の電子伝達系の最終過程でATP生成に関与し、銅の抗酸化機能はSOD(superoxide dismutase)に結合して細胞の酸化的損傷を防止する役割をし、マンガンとチロシン(アミノ酸)とともに皮膚にメラニン色素を沈着させる役割をする。
【0030】
本発明の一様態では、グリシン、L-プロリン及び銅を含む組成物で線維芽細胞(Hs27細胞)を処理し、タイプIコラーゲンの生合成に関与する遺伝子であるCOL1A2遺伝子及びエラスチン生合成に関与する遺伝子であるELN遺伝子及びCOL4A1遺伝子の発現量の変化をqPCRで確認したとき、COL1A2遺伝子及びELN遺伝子の発現が増加することを確認した(
図2参照)。
【0031】
本発明の他の様態では、グリシン、L-プロリン及び銅を含む組成物で線維芽細胞(Hs27細胞)を処理し、タイプIコラーゲン及びエラスチンの生成変化をウェスタンブロット法で確認した結果、タイプIコラーゲン及びエラスチンタンパク質の生成能が増加したことを確認した(
図3参照)。
【0032】
一観点で、本発明は本発明によるエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用組成物を含むエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用医薬組成物に関するものである。
【0033】
本発明の医薬組成物は、エラスチン関連疾患、血管弾力の低下による高血圧、血行低下、腱靱帯弾力低下、関節弾力低下、光老化による弾性線維症、真皮及び表皮萎縮、真皮萎縮性皮膚疾患、火傷、放射線火傷、皮膚病変、褥瘡、薬物投与によって誘発される真皮無形成症又は筋肉及び関節病変の予防又は治療用途に使用が可能であるが、これに限定されるものではない。
【0034】
また、本発明の医薬組成物は、エラスチン及び/又はコラーゲン誘導による血管弾力改善及びこれによる疾病治療又は健康状態改善などに使うことができる。
【0035】
本発明の医薬組成物は、経口投与、筋肉注射、経皮注射、外用医薬品の形態、又は医療機器として注射又は外用剤形に剤形化して使うことができる。
【0036】
また、本発明の医薬組成物は、ヒアルロン酸又はその塩、特に全体組成物の0.01~3重量%範囲であり、平均分子量が500,000~3,000,000Da範囲であるヒアルロン酸又はその塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウム塩を含むことができる。
【0037】
前述したアミノ酸及びヒアルロン酸又はその塩の混合物を含む前記組成物は、経口投与、筋肉注射、経皮注射、外用医薬品又は医療機器の形態として使用可能な用途に適し、このような形態に剤形化して使うことができる。
【0038】
使用可能な梯形の非制限的な例としては、注射剤、ゲル、軟膏、乳剤、経皮パッチ、無菌溶液、フィラー、創傷被覆剤及びヒアルロン酸又はその塩の無菌水溶液に再構成されるように考案されたアミノ酸粉末を含む。
【0039】
注射用製剤は、ヒアルロン酸又はその塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウム塩ゲルを直接(例えば、皮膚移植注射器で)粉末を含むバイアル内に導入することにより、ヒアルロン酸又はその塩の無菌溶液内に粉末形態のアミノ酸を溶解させることによって製造することができる。完全に溶解すれば、生成されたゲル溶液は真皮領域内に注入される。ヒアルロン酸又はその塩の無菌水溶液は、無菌注射可能な薬学的形態に要求される物理化学的及び組職適合性を保障することができる、pH調整緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液)又は浸透圧調整剤(例えば、塩化ナトリウム)及びその他の技術的アジュバントを含むこともできる。
【0040】
さらに他の観点で、本発明は本発明によるエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用組成物を含む化粧料組成物、特に機能性化粧料組成物に関するものである。
【0041】
本発明による機能性化粧料組成物は、皮膚弾力改善、しわ及び/又は顔のしわ線除去の用途に使うことができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
使用目的及びその機能などによって、本発明の化粧料組成物は、溶液(ローション型組成物)、濃縮溶液、ゲル、軟膏、エマルジョン(クリーム、乳剤)、小胞分散剤、パウダー、稠密パウダー(dense powder)、ペースト又は固形剤などの多様な形態に剤形化して機能性化粧品として提供することができる。
【0043】
具体的に、本発明による化粧料組成物を含む化粧品は、フェイシャルクリーム、ハンドクリーム、保湿クリーム及び日焼け防止クリームなどのクリーム、ローションなどの溶液又は濃縮溶液、クリームパウダー、ファウンデーション、ローション、マイクロエマルジョン、軟膏、ペースト、パック、スプレー形態などの全ての製品形態を意味し、これに限定されない。
【0044】
本発明の組成物が弾力改善、しわ及び顔のしわ線の除去、保湿剤などの用途に使われる場合、これらは乳剤又はクリームなどのエマルジョン、ゲル、ローション、軟膏、又は小胞分散剤などの形態として提供することが好ましく、追加的に他の薬学的又は機能性活性成分を含むこともできる。
【0045】
前記機能性化粧品組成物は、植物性又は動物性オイルの改質又は非改質オイルが含むことができる。例えば、スイートアーモンドオイル、アボカドオイル、キャスターオイル、オリーブオイル、ホホバオイル、ひまわりオイル、小麦胚芽オイル、胡麻オイル、ピーナッツオイル、ブドウ種子オイル、豆乳、サフラワーオイル、ココナツオイル、トウモロコシオイル、ヘーゼルナッツオイル、カリトバター、パームオイル、杏仁オイル、カロフィルムオイル又はスクワランなどがある。さらに、オイル相は、液体パラフィン、液体ペトロラタムなどのような無機オイルであることができる。前記オイルは、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ペニシリンオイル(ステアリルオクトネート)のような脂肪酸エステル、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リノール酸、リノレン酸のような不飽和脂肪酸又はC8-C16のイソパラフィンのような揮発性又は非揮発性イソパラフィンなどであることができる。前記オイルは、オレイルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコールのようなC12-C18の脂肪アルコールなどであることができる。
【0046】
エマルジョンとして提供されれば、本発明の乳化組成物は、油相及び水相を含む。前記油相は、組成物の総重量に対して、約1~約75重量%の範囲で提供することが好ましく、より好ましくは約5~約60重量%、最も好ましくは約40~約60重量%の範囲で提供することが好ましい。
【0047】
水相には、水性ゲル及び化粧品エマルジョンに一般的に使われる補助剤を含む。水相は約0.5~約20重量%を提供することができ、低級C2-C6モノーアルコール及び/又はグリセロール、ブチレングリコール、イソプレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールのようなポリオールなどを含むことができる。
【0048】
乳化した化粧品組成物を製造するために、乳化剤を使うことができる。好ましいエマルジョン効果を示す限り、どの量の美容的に許容可能な乳化剤も使用することができる。乳化剤は、公知の塩及び界面活性剤から選択される。乳化剤は、ステアリン酸、セスキオレイン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール(PEG-30)、ジポリヒドロキシステアレート、レシチン、ステアリン酸マグネシウム、及びこれらの誘導体及び混合物から選択されることが好ましい。前記乳化剤は、組成物の総重量に対して、約0.5~約30重量%の範囲で使うことが好ましく、より好ましくは約1~約12重量%、さらに好ましくは約4~約8重量%で使うことが好ましい。
【0049】
他の観点で、本発明は本発明によるエラスチン又はコラーゲンの生合成増進用組成物を有効成分として含む健康機能食品に関するものである。
【0050】
本発明による機能性食品は、皮膚健康、血行改善、血圧調節又は関節を含む筋骨格系疾患の予防及び治療の用途に使うことができ、具体的には、皮膚弾力改善、しわ除去、顔のしわ線除去、高血圧、血行低下、腱靱帯弾力の改善、関節弾力改善、光老化による弾性線維症、真皮及び表皮萎縮、真皮萎縮性皮膚疾患、火傷、放射線火傷、皮膚病変、褥瘡、薬物投与によって誘発される真皮無形成症又は筋肉及び関節病変の予防又は治療の用途に使うことができ、好ましくは美容又は関節疾患予防の用途に使うことができる。
【0051】
また、本発明の機能性食品は、酸化予防のための薬剤、食品及び飲料などに多様に使うことができる。本発明の機能性食品は、例えば各種の食品類、キャンディー、チョコレート、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがあり、粉末、顆粒、錠剤、カプセル又は飲料の形態として使うことができる。
【0052】
本発明の組成物は、種々の営養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成香味剤及び天然香味剤などの香味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤などを含むことができる。その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース及び果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含むことができる。このような成分は単独で又は組合せで使うことができる。
【0053】
さらに他の観点で、本発明は前記組成物を投与する段階を含むエラスチン又はコラーゲン生の合成を増進させる方法に関するものである。
【0054】
さらに他の観点で、本発明はエラスチン又はコラーゲン生合成増進のための前記組成物の用途に関するものである。
【0055】
さらに他の観点で、本発明はエラスチン又はコラーゲン生合成増進用薬剤製造のための前記組成物の用途に関するものである。
【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものと解釈されないというのは当該分野で通常の知識を有する者に明らかであろう。
【0057】
実施例1:本発明による組成物の線維芽細胞に対する毒性確認
【0058】
本発明による組成物を下記表1のように準備し、表1の組成物の線維芽細胞に対する細胞毒性を確認した。
【0059】
線維芽細胞はヒト由来の線維芽細胞であるHs27(ATCC、#CRL 1634)を用い、細胞は10%FBS(fetal bovine serum)と1%ペニシリン-ストレプトマイシンが含まれたDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)培地で培養した。
【0060】
準備した1000μg/10μlの薬物を細胞に処理するために、1%ペニシリン-ストレプトマイシンが含まれた無血清DMEM培地に希釈して準備した。
【0061】
【0062】
Hs27細胞1×105個を48ウェルプレートに播種(seeding)した後、24時間培養した。24時間の後、1.2で準備した薬物で処理した。細胞毒性を確認するために、24時間、48時間、72時間の後、EZ-cytox(Dogen Bio、Korea)細胞生存率(cell viability)測定キットを用いた。キットに含まれた生存細胞に存在する酵素と反応する水溶性タトラゾリウム塩(water soluble tetrazolium salt、WST)で処理し、450nmで吸光度を測定して細胞生存率を計算した。
【0063】
その結果、
図1に示したように、溶媒のみで処理した群であるNC群に比べ、d、EL1、EL11、EL12組成で処理した細胞では、24時間、48時間、72時間の後にも細胞毒性が現れないことを確認することができた。EL4で処理した細胞では、24時間、48時間の後には毒性がなかったが、72時間の後には微細に細胞生存率が減少したことを確認することができた。
【0064】
実施例2:本発明による組成物の処理によるCOL1A2、COL4A1、ELN遺伝子発現量確認
【0065】
本発明による組成物処理によるHs27細胞のコラーゲンとエラスチンの生合成に関与する遺伝子発現量の変化を確認した。
【0066】
Hs27細胞5×106個を100π皿に播種した後、24時間培養した。24時間の後、準備した組成物(d、EL1、EL11及びEL12)で処理した。遺伝子発現量を確認するために、72時間の後にトリゾール(Trizol)を用いてRNAを抽出した。各サンプルから抽出された1μgのRNAをcDNA逆転写酵素を用いてcDNAに合成した後、実時間PCR検出システム(Real-time PCR detection systems)(Biorad CFX connect)を用いてCOL1A2、ELN、COL4A1及びACTB遺伝子の発現量を確認した。各遺伝子を確認するために、表2のプライマーを使い、内部対照群としてACTB(β-actin)を用いて相対的発現量を計算した。
【0067】
【0068】
その結果、
図2に示したように、溶媒のみで処理した群であるNC群に比べ、d、EL1及びEL12組成で処理した細胞では、72時間の後、COL1A2遺伝子及びELN遺伝子発現量に有意な変化がないことを確認することができ、EL4及びEL11で処理した細胞群では、72時間の後、COL1A2遺伝子とELN遺伝子の発現量が有意に増加したことを確認した。また、COL1A2遺伝子及びELN遺伝子とは違い、COL4A1遺伝子の場合には、全ての組成物処理条件で発現量に変化がないことを確認することができた。
【0069】
実施例3:本発明による組成物の処理によるCOL1A2、COL4A1、ELNタンパク質生成能確認
【0070】
本発明による組成物処理によるHs27細胞のコラーゲンとエラスチンタンパク質の生成能の変化を確認した。
【0071】
Hs27細胞5×106個を100π皿に播種した後、24時間培養した。24時間の後、準備した組成物(d、EL1、EL11及びEL12)で処理した。タンパク質発現量を確認するために、72時間の後、タンパク質抽出液(Protein lysis buffer)(cell signaling、#9803)を用いてタンパク質を抽出した。タイプIコラーゲン、エラスチン、βアクチンタンパク質を確認するために、次の方法でそれぞれのタンパク質に対してウェスタンブロット法(Western Blot)を遂行した。
【0072】
タイプIコラーゲン:タイプIコラーゲンのタンパク質発現量を確認するために、天然(native)環境(非変性状態(non-denaturing condition))でウェスタンブロット法を遂行した。抽出されたタンパク質30μgを天然サンプル緩衝液(Native sample buffer)(Biorad、#1610738)に希釈してサンプルを製造した。
【0073】
SDSが含まれない8%アクリルアミドゲルとトリスグリシンバッファー(Tris-glycine buffer)を用いて電気泳動を実施し、ゲル上で分離されたタンパク質をPVDFメンブレインに移動させた後、2時間の間に脱脂乳(skim milk)を用いてブロッキングを行った。その後、抗コラーゲン(Anti-collagen)I抗体(abcam、ab34710)を用いて4℃で一晩放置した後、2次抗体で1時間反応させた。ECL溶液とAmersham Imager 600 imaging systemを用いて抗体の反応を確認した。
【0074】
エラスチン及びβアクチン:エラスチンとβアクチンのタンパク質発現量を確認する一般的なウェスタンブロット環境(non-native and denaturing condition)でウェスタンブロット法を遂行した。抽出されたタンパク質30μgを4X Laemmli sample buffer(Biorad、#1610747)に希釈してサンプルを製造した。SDSが含まれた10%アクリルアミドゲルとトリスグリシンバッファー(Tris-glycine buffer)を用いて電気泳動を遂行した。そして、ゲル上で分離されたタンパク質をPVDFメンブレインに移動させた後、2時間の間に脱脂乳(skim milk)を用いてブロッキングを遂行した。その後、抗エラスチン抗体(Santacruz、sc-166543)及び抗βアクチン(Anti-β-actin)抗体(Santacruz、sc-47778)を用いて4℃で一晩放置した後、2次抗体で1時間反応させた。ECL溶液とAmersham Imager 600 imaging systemを用いて抗体の反応を確認した。
【0075】
その結果、
図3に示したように、溶媒で処理した群であるNC群に比べ、d、EL1及びEL12組成物で処理した細胞では、72時間の後にタイプIコラーゲンのタンパク質発現量の増加が確認された。エラスチンの場合、d及びEL1で処理した群では変化がなかったが、EL4、EL11及びEL12組成で処理した群で有意に増加したことを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明による組成物は線維芽細胞のエラスチン及びコラーゲン生合成能を増進させ、老化や光露出などによって低下した皮膚弾力の復元としわ及び顔のしわ線の除去に有用に使うことができる。
【0077】
以上で本発明の内容の特定部分を詳細に記述したが、当該分野の通常の知識を有する者にとってこのような具体的記述は単に好適な実施様態であるだけで、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかであろう。よって、本発明の実質的な範囲は添付の請求範囲とその等価物によって定義されると言える。
【配列表】