(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20230731BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20230731BHJP
B60W 50/08 20200101ALI20230731BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20230731BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20230731BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20230731BHJP
【FI】
B62D6/00
B60W60/00
B60W50/08
B62D101:00
B62D113:00
B62D119:00
(21)【出願番号】P 2021143572
(22)【出願日】2021-09-02
(62)【分割の表示】P 2018561436の分割
【原出願日】2018-01-12
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2017003737
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017089014
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516212267
【氏名又は名称】望月 貴里子
(74)【代理人】
【識別番号】716000880
【氏名又は名称】望月 玲於奈
(72)【発明者】
【氏名】望月玲於奈
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-148533(JP,A)
【文献】特開2016-159781(JP,A)
【文献】特開2015-147547(JP,A)
【文献】特開2015-137085(JP,A)
【文献】特開2001-039325(JP,A)
【文献】特開2016-074356(JP,A)
【文献】特許第6027292(JP,B2)
【文献】特開2015-016814(JP,A)
【文献】特開2015-229399(JP,A)
【文献】特開2004-034751(JP,A)
【文献】特開2002-308134(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B60W 60/00
B60W 10/00-50/16
B62D 101/00-137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と第二の操作部を備える操作対象値を操作する操作装置であり、
制御状態として連動状態と非連動状態を有し、
前記連動状態とは、前記操作部の状態と動き、もしくはそのどちらかに応じて、前記操作対象値を決定する状態、
もしくは前記操作部による通常の操作が行われている状態であり、
前記非連動状態とは、前記第二の操作部によって、前記操作対象値を決定し、
前記第二の操作部の状態、動きまたは前記操作対象値に応じて、前記操作部の状態を決定する状態である
操作装置であり、
前記操作対象値と前記操作部の状態との関係を定め、前記非連動状態においては、前記操作部を前記関係に応じて動かし、
前記関係とは、前記操作対象値の変化に対する前記操作部の状態の変化の割合の変化が連続的な区間を含む操作装置。
【請求項2】
操作部を備える操作対象値を操作する操作装置であり、
前記操作対象値を制御する制御状態を少なくとも2つ有し、
前記制御状態のうち少なくとも1つは前記操作部の状態を制御し、
前記制御状態を切り替えるとき、操作部の状態を切り替え先の操作対象値によって決まる状態となるように動かし、
その際、操作部の操作によってかかる操作部への負荷が最大負荷以下もしくは未満のときは、操作部を前記操作対象値に対応する状態となるように動かし、
操作部の操作によってかかる操作部への負荷が前記最大負荷を超える、もしくは以上のときは、前記操作対象値を前記操作部の状態によって決定する値に向かって変化させる操作装置。
【請求項3】
前記制御状態の切り替え時に、前記操作部の状態を前記操作対象値に対応する状態に変化させるとき、
前記操作部の状態の変化が最小となるように、あるいは変化の過程を一部省略するように制御する請求項2の操作装置。
【請求項4】
操作部を備える操作対象値を操作する操作装置であり、
前記操作対象値を制御する制御状態を少なくとも2つ有し、
前記制御状態のうち少なくとも1つは前記操作部の状態を制御し、
前記制御状態の切り換え時に、操作部の状態が、切り替え先の前記制御状態での操作対象値に対応する状態ではないとき、
現在の操作部の状態によって、切り替え先の前記制御状態での操作対象値が現在の値となるように、切り替え先の前記制御状態における前記操作部と前記操作対象値との動作に補正を加える操作装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の操作装置であり、
前記制御状態の切り換え時に、前記制御状態の切り替えが完了するまでの間は、前記第二の操作部による操作を行い、その間は必要に応じて、前記操作部の操作に応じて前記第二の操作部の操作に介入することを可能とする操作装置。
【請求項6】
操作対象値を操作部に応じて操作する操作装置であり、
前記操作部によらずとも、前記操作対象値を操作する制御状態2を少なくとも1つ有し、
前記制御状態2において、
前記操作部への所定の操作に応じて、前記制御状態2の操作に介入することを可能とする、
あるいは、前記操作部への所定の操作に応じた信号を、操作装置のシステム内または/及び外に伝え、前記信号の受信元が前記信号に応じた処理を、前記制御状態2で行う操作装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の操作装置であり、
前記操作装置とは自動的に車両の操舵を行う可能を有する車両に備える操舵装置であり、
操作対象値とは操舵量であり、
前記第二の操作部とは自動的に操舵量を操作するシステムによって操作される、
操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動的に操作されている操作部を把持し続けることを容易とする操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、人工知能の発達によって、鉄道や自動車など従来人が操作していたものが自動的に操作されるようになっている。これら、自動化された機械は、センサなどで外界を観測し、自ら判断をして行動を起こす。
【0003】
しかし、これら自動化された機械が適切な判断ができない緊急時には人が介入することが望ましい。
【0004】
特に、自動車の自動運転では、事故時の責任の観点などからも、運転手が自動運転中もハンドルに手を添えておくことが望まれている。
【0005】
しかし、自動運転中、常にハンドルに手を添えた状態を維持することは、ハンドルを握った状態を保つよりも大変である。
【0006】
一方で、自動運転中にハンドルを握る場合は、カーブなどでハンドルが大きく動くため、ハンドルを握り続けることは困難である。
【0007】
特許文献1では、ハンドルにハンドルレストを設けることで、手の疲れを低減し、緊急時にすぐにハンドルを握ることを可能としているが、とっさにハンドルに持ち直す場合に直ちにハンドルの状態を把握し適切な運転を維持することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、ハンドルなどの操作部が自動的に操作されているとき、その動きを制御することによって、自動操作中も操作部を把持していることを容易とし、さらに操作部の動きによって、自動的に操作されている操作対象の状態を把握することが可能な操作装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
操作部と第二の操作部と操作対象値を備える操作対象値を操作する操作装置であり、
制御状態として連動状態と非連動状態を有し、
連動状態とは、操作部の状態と動き、もしくはそのどちらかに応じて、操作対象値を決
定し、必要に応じて、操作対象値の操作部以外による変化に応じて、操作部が動くこと、
もしくは操作部による通常の操作が行われている状態
であり、
非連動状態とは、第二の操作部によって、操作対象値を決定し、その値と必要に応じて第二の操作部以外による操作対象値の変化に応じて、操作部の状態を決定する。
【0011】
非連動状態においては、連動状態であるときよりも、同じ操作対象値に対する操作部の動きを同等以下とする。
【0012】
操作部の動きの範囲を連動と非連動状態とでそれぞれ定め、前記操作対象値が最大最小のとき、前記操作部が前記動きの範囲の最大最小となるように動かす。
【0013】
もしくは、非連動状態においては、前記操作部を前記操作対象値に応じて動かさない。
【0014】
操作対象値の範囲として、知覚提示範囲を一つ以上設定し、前記操作対象値が前記知覚提示範囲内であるとき、前記操作対象値に応じた提示を行う。
【0015】
前記の提示手段は、動画像の表示、操作部の動き、音、電気的刺激、との任意の組み合わせによる。
【0016】
前記連動状態と非連動状態とを切り替えるとき、操作部の状態を操作対象値によって決まる切り替え先の制御状態での状態となるように動かし、その際、最大負荷を定め、操作部の操作によってかかる操作部への負荷が前記最大負荷以下もしくは未満のときは、操作部を前記所定の状態となるように動かし、
操作部の操作によってかかる操作部への負荷が前記最大負荷を超える、もしくは以上のときは、前記操作対象値を前記操作部の状態によって決定する値に向かって変化させる。
【0017】
非連動状態と連動状態との切り換え時に、操作部が、切り替え先の前記制御状態での操作対象値に対応する所定の状態ではないとき、
現在の操作部の状態によって、切り替え先の前記制御状態での操作対象値が現在の値となるように、切り替え先の前記制御状態における前記操作部と前記操作対象値との動作に修正を加える。
【0018】
非連動状態と連動状態との切り換え時に、 前記制御状態の切り替えが完了するまでの間は、前記第二の操作部による操作を行い、その間は必要に応じて、前記操作部の操作に応じて前記第二の操作部の操作に介入することを可能とする。
【0019】
少なくとも、非連動状態のときの前記操作対象値を提示する手段を備える。
【0020】
本願発明のある様態では、
操作装置とは操舵装置であり、
操作対象値とは操舵量であり、
操作部とはハンドルであり、
第二の操作部とは自動的に操舵量を操作するシステムによって操作されるものであり、
操作部の状態とはハンドルの回転量であり、
操作部の操作とはハンドルを回転させることとする。
【0021】
本願発明の別のある様態では、
操作装置とはレバーであり、
操作部とはレバーの持ち手部分であり、
操作部の状態とは前記持ち手部の位置であり、
操作部の操作とは前記持ち手部を動かすことである。
【0022】
前記した特徴を有する操作装置を2つ以上任意の組み合わせで備えた操作装置を提供する。
【0023】
操作部の状態をA、操作対象値に対応する操作部の目標状態をB、AとBの差を表す量をxとすると、操作装置は、xが徐々に減少するようにAを変化させ、Aの変化が妨げられxをその瞬間での目標値にできない場合は、Bを変化させることによってxを所定の値にする。
【0024】
例えば、所定の値xが一定の減少量で減少するものとするとき、AとBを上記のように変化させることによって、xの減少量が一定となるように維持する。このとき、操作部に負荷がかからないならば、操作部は前記一定の変化量でBの状態に近づき、操作部が固定されAが変化しないときは、操作対象値を変化させることによってBをAに近づけることとなる。
【0025】
前記操作対象値に対応する操作部の目標状態Bを第二の操作部の状態として考えてもよい。
【0026】
操作対象値と第一の操作手段と第二の操作手段を有し、
制御状態として、第一の制御状態と第二の制御状態を有する操作装置であって、
前記第一の制御状態とは、前記第一の操作手段による通常の動作が行われている状態であり、
前記第二の制御状態とは、前記第二の操作手段または前記操作対象値に対する前記第一の操作手段の状態の任意の対応関係に応じて、前記第一の操作手段が制御され、
前記第二の操作手段は複数あっても構わず、前記第二の制御状態は複数あっても構わない。
【0027】
前記任意の対応関係とは、少なくとも前記操作対象値あるいは前記第二の操作手段を入力として前記第一の操作手段の状態を出力する任意の対応関係とする。
【0028】
前記任意の対応関係とは、任意の直線と任意の曲線の任意の組み合わせからなる任意の関数によって表現できる。
【0029】
第一の操作手段が目標状態に向かって変化する際、第一の操作手段の動きに制限を設ける。
【0030】
第一の操作手段の状態を所定の目標状態となるように変化させるとき、急な変化をさせない。目標状態が急に変化しても、第一の操作手段の状態を、目標状態の変化に応じて滑らかに変化させる。
【0031】
前記第一の操作手段の目標状態の変化が予測可能である場合は、予測した目標状態に応じて第一の操作手段の状態を制御してもよい。
【発明の効果】
【0032】
本願発明により、ハンドルなどの操作部が自動的に操作されているとき、その動きを制御することによって、自動操作中も操作部を把持していることを容易とし、さらに操作部の動きによって、自動的に操作されている操作対象の状態を把握することが可能な操作装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図18】目標状態の予測を伴う第一の操作手段の動作例
【
図19】一般的なステア・バイ・ワイヤシステムの説明図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本願操作装置のシステムの概要を述べる。
【0035】
システムは、操作部と第二の操作部と操作対象値によって構成される。
【0036】
【0037】
連動状態においては、操作部(1)の動きは操作対象値(3)を決定する数値に変換される。
【0038】
また、外部要因による操作対象値(3)の変化は操作部(1)の動きとしてフィードバックしても良い。
【0039】
本願操作装置の特徴を既存操作装置に適用する実施を行う場合は、連動状態を適用先の既存操作装置の働きに一致させてもよい。このとき、既存の操作部を第二の操作部(2)としても良い。適用にあたって新たな操作部を用意して、操作部(1)、もしくは第二の操作部(2)としても良い。
【0040】
非連動状態においては、第二の操作部(2)の状態、動きによって操作対象値(3)が決定する。さらに、第二の操作部(2)の状態、動きによって、操作部(1)の状態、動きが決定される。
【0041】
第二の操作部(2)は、システムの内部状態でも構わない。
【0042】
第二の操作部(2)は、操作対象値(3)を自動的に操作するシステムによって操作しても良い。
【0043】
本願システムのもう一つの構成例を、
図2、
図3に示す。
【0044】
図2、
図3のシステムでは、連動状態と非連動状態において操作対象値(1)は第二の操作部(2)によって操作される。
【0045】
このとき、本願システムを既存の操作装置に適用するとき、第二の操作部(2)は適用する操作装置の元々の操作部と同等の働きをするもとする。適用に際して、前記元々の操作部を仮想の第二の操作部(2)として実施してもよい。第二の操作部(2)を実デバイスとして実施しても良い。
【0046】
連動状態のときは、操作部(1)の動きを第二の操作部(2)の動きと一致させる。即ち、操作部(1)を操作することによって、第二の操作部(2)を介して操作対象値(3)を操作する。また、
図2、
図3のシステムでは、操作対象値(3)を変化させることは第二の操作部(2)を変化させることと同意であり、第二の操作部(2)を変化させることは操作対象値(3)を変化させることと同意である。
【0047】
さらに、操作対象値(3)の外部要因による変化を第二の操作部(2)を介して操作部(1)に伝える。
【0048】
連動状態での操作装置の働きは、本願操作装置を適用するシステムの元々の働きと等価として良い。即ち、連動状態においては、操作部の動きが本願操作装置によって制御されない場合と同等の働きをする。
【0049】
次に、非連動状態における操作部(1)の動きについて述べる。
【0050】
非連動状態においては、第二の操作部(2)の動き、状態に応じて操作部(1)の動き、状態を制御する。
【0051】
非連動状態においては、
図4に示すように連動状態の時よりも同じ操作対象値に対する操作部の動きを小さくする。
【0052】
より具体的には、
図7に示すように、操作部の最大、最小状態と操作対象値の最大値、最小値を定め、操作対象値が最大値の時に操作部が最大状態、操作対象値が最小値の時は操作部が最小状態となるように操作部の動きを調整する。
【0053】
または、
図5のような、操作部の状態(14)と操作対象値(3)の関係を定める。
図5と
図6に示すように、操作部の動きと操作対象値との関係は比例関係でなくても良い。比例関係であってもよい。また、変曲点を含んでもよい。
【0054】
必要に応じて、操作装置の状態や外的要因によって操作部の状態(14)と操作対象値(3)の関係を変化させても良い。
【0055】
その他には、非連動状態では操作対象値(3)によらず操作部(1)を動かさない。
【0056】
操作対象値(3)の値に応じて、操作者に提示を行う。
【0057】
操作対象値(3)の範囲として、知覚提示範囲を一つ以上設定し、値が前記範囲内であるとき、前記操作対象値に応じた提示を行う。
【0058】
例えば、
図8のように知覚提示範囲(51,52)を設定したとき、
図8における操作部は知覚提示範囲内(51,52)では動かないように制御されるが、
操作対象値(3)が範囲1(51)もしくは範囲2(52)内であるときは、例えば、操作部(1)がそのときの状態で、操作対象値(3)の大きさに応じて振動し操作者に現在の装置対象値を知覚させる。
【0059】
これにより、本願操作装置において操作部(1)が動かない場合や動きが少ない場合であっても、操作対象値(3)の現在の値を知ることができる。
【0060】
上記提示方法は一例であり、他の提示手段として文字や動画像の表示、音、触覚の刺激などがあり、操作者に知覚させる手段であれば何を用いても構わない。また、
図8の例では、知覚範囲内において操作部(1)を動かさないものとしたが、操作部(1)の動きをともなっても良い。
【0061】
以下に、連動状態と非連動状態の切り替え時の動作に関して述べる。
【0062】
連動状態と非連動状態の切り替え時に、それぞれの制御状態において決定する操作部(1)の状態が異なるとき、徐々に操作部(1)の状態を切り替え先の制御状態で決定する操作部(1)の状態となるように動かし、その間に操作者による操作介入があれば、必要に応じてその操作を反映する。
【0063】
前記連動状態と非連動状態とを切り替えるとき、操作部(1)の状態を操作対象値(3)によって決まる切り替え先の制御状態での状態となるように動かし、その際、最大負荷を定め、操作部(1)の操作によってかかる操作部(1)への負荷が前記最大負荷以下もしくは未満のときは、操作部(1)を前記所定の状態となるように動かし(
図9負荷小)、
操作部(1)の操作によってかかる操作部(1)への負荷が前記最大負荷を超える、もしくは以上のときは、前記操作対象値(3)を前記操作部(1)の状態によって決定する値に向かって変化させる(
図9負荷大1もしくは負荷大2)。
図9に動作を図示する。
【0064】
実施形態の例として、
図11のモデルを例として説明する。
目標状態(11)とは切り替え先の制御状態で決定する操作部(1)の状態である。
瞬間目標状態(12)とは操作部(1)のその瞬間での目標状態であり、目標状態(11)を基準とする。差(13)とは目標状態(11)と操作部の状態(14)との差であり、この差(13)を徐々に小さくするなど、差(13)の所定の条件を変化させて瞬間目標状態(12)を変化させることで、最終的に操作部を目標状態(11)に一致させる。
【0065】
本願操作装置は、操作部(1)の、目標状態(11)と瞬間目標状態(12)との差(13)が所定の条件を満たすように制御しながら、操作部(1)と操作対象値(3)、第二の操作部(2)との動き、変化を互いに伝える。
【0066】
加えて、操作部(1)の、目標状態(11)と瞬間目標状態(12)との差(13)の所定の条件を変化させることによって、操作部の状態(14)を目標状態(11)に変化させ、切り替えを完了する。
【0067】
切り替え中においては、操作部の状態(14)を瞬間目標状態(12)に一致するように操作部(1)を動かす。PID制御よる瞬間目標(12)への追従制御などによって実現する。
【0068】
切り替え中においては、目標状態(11)と瞬間目標状態(12)(操作部の状態(14))との差(13)が所定の条件となるように瞬間目標状態(12)を変化させる。これにより、操作対象値(3)、第二の操作部(2)が変化すると、瞬間目標状態(12)が、差(13)を所定の条件にするように動く。
【0069】
即ち、切り替え中は、差(13)が所定の条件以外によって変化しないように操作部(1)と操作対象値(3)を制御する。
【0070】
切り替え中は、差(13)の所定の条件を変化させることによって、操作部(1)、操作対象値(3)、第二の操作部(2)を動かし、前記制御と合わせて、操作部の状態(14)を目標状態(11)に一致させてゆく。
【0071】
差(13)の所定の条件を変化させることとは、例えば、差(13)を時間経過とともに小さくすることであり、これによって、操作部(1)が時間経過とともに目標状態(11)に近づいてゆくこととなる。
【0072】
差(13)は切り替え開始時の操作部の状態(14)と目標状態(13)との差を前記差(13)の初期値とする。
【0073】
切り替え時の動作例として、切り替え中に、第二の操作部(2)によって操作対象値(3)が変化すると、差(13)が所定の条件を満たすように、その操作対象値(3)の変化に応じて瞬間目標状態(12)を変化させ、操作部(1)の動きに反映する。
【0074】
外的要因による操作対象値(3)の変化を操作部(1)に反映する場合も同様に、その操作対象値(3)の変化に応じて目標状態(11)、瞬間目標状態(12)を変化させ、操作部(1)の動きに反映する。
【0075】
切り替え中において、操作部(1)に任意に設定した大きさ以上の力がかかると、その力の大きさに応じた操作対象値(3)の変化として伝える。
【0076】
操作部(1)に、瞬間目標状態(11)から離れる方向への力が働くと、その力に応じて操作対象値(3)と必要に応じて第二の操作部(2)の状態が変化する。
【0077】
もしくは、操作部(1)に、瞬間目標状態(11)から離れる方向への力が働くと、その力に応じて操作部の状態(14)が変化し、それにともなって操作対象値(3)と必要に応じて第二の操作部(2)の状態が変化する。
【0078】
これによって、切り替え中、操作部(1)が切り替え先の制御状態によって決まる状態となるように動いていても、操作者による操作部(1)からの操作を操作対象値(3)に反映することを可能とする。
【0079】
動作の一例は、切り替え中に、操作部(1)が目標状態(11)に向かって動いているときに、操作者がその動きを妨げる力を加えると、代わりに操作対象値(3)が変化することで目標状態(11)が操作部の状態(14)に近づいてゆく。
一定以上の力であるが操作部(1)の動きを止めるもしくは妨げる方向へ動かす程の力がない場合は、操作部(1)と操作対象値(3)がそれぞれ、その力に応じて動く。このとき、その力に応じてどのように動くかは任意に設定可能とする。
また、操作部(1)を目標状態(11)に近づける方向に力を加え動かす場合も、瞬間目標(12)が、操作部の状態(14)に近づくような目標状態(11)となるべく操作対象値(3)を変化させることで、差(13)が所定の条件を満たすようにする。
【0080】
連動状態から非連動状態への移行時の動作は、例えば、非連動状態では、操作部の状態(14)が操作対象値(3)によらずある一定の状態、基準状態であるとき、
目標状態(11)は前記基準状態となり、差(13)は基準状態と切り替え時の操作部の状態(14)との差を初期値として、前記と同様に操作部の状態(14)を目標状態(11)に一致させる。
【0081】
以下に別の、連動状態と非連動状態の切り替え時の動作に関して述べる。
【0082】
連動状態と非連動状態との切り替え時、それぞれの制御状態において決定する操作部(1)の状態が異なるとき、現在の操作部(1)の状態が切り替え先の制御状態における操作部(1)の状態となるように補正を行う。
【0083】
一例では、操作部(1)の状態とは、ある基準からの変化量であり、操作対象値(3)が操作部(1)の変化量に応じて決定されるとき、切り替え先の制御状態において、切り替え時の操作部(1)の状態によって操作対象値(3)が現在の値をとるように、前記基準を変更する。
【0084】
図13のような場合を例に説明する。操作部の状態(21)が数値によって表され、操作対象値(23)を数値であるとすると、操作対象値(23)は、0を基準(20)とした操作部(21)の変化量によって決定する。連動状態では操作部(21)と操作対象値(23)は一致している(
図13 連動状態)。非連動状態に移行し、操作部(21)と操作対象値(23)が一致しないときに(
図13 切り替え時の状態)、非連動状態から連動状態に切り替わったとき、現在の操作部(21)の値によって、現在の操作対象値(23)が決定されるように、前記基準(20)を変更する(
図13 切り替え時の状態)。このとき、操作対象値(23)が0になっても操作部(21)の値は0とならない(
図13 操作対象値が0となるとき)。
【0085】
非連動状態における操作部(1)による操作介入に関して説明する。
【0086】
非連動状態での、操作部(1)への所定の操作を信号として、操作装置のシステム内外に伝える。
【0087】
例えば、自動運転車両では、ハンドルを右に切る操作を行うと、その信号が自動運転システムに伝わり、車両を右側のレーンに移動させる。
【0088】
所定の速さ、力で操作部が操作され、必要に応じて特定の条件を満たすとき、非連動状態から連動状態へと移行する。
【0089】
前記所定の値や操作、条件は、操作装置の適用先のシステムによって任意に決めてよい。
【0090】
操作部(1)に、操作者が操作部(1)を把持しているかを検知する装置を備え、一定期間把持を検知でないとき、操作装置のシステム外に伝える。例えば、これによって、自動操作システムが操作者の把持を検出できないことを検知すると、警告を発し、それでも把持を検出できない場合は、安全を確保した上で自動操作の停止を試みる。
【0091】
本願操作装置を2つ以上組み合わせることも可能とする。
【0092】
例えば、ジョイスティックのようにx方向とy方向の動きを操作部(1)の動きとする操作装置では、x方向とy方向の動きを対応する本願操作装置によってそれぞれ制御する。
【0093】
異なる種類の操作装置を組み合わせることを可能とする。例えば、スロットルレバーとハンドルなどである。
【0094】
自動運転車両における、ステアリングシステムの実施例を示す。本願操作装置を自動運転車両のステアリングシステムに適用する例である。
【0095】
本実施例では、操作部(1)としてハンドル、第二の操作部(2)としてステアリング操作量を示す内部状態を備え、操作対象値(3)とはステアリング量である。
【0096】
本願システムの連動状態が手動運転をしている状態、非連動状態が自動運転をしている状態に対応する。
【0097】
操作部(1)の状態とは、手動運転においてステアリング量が0で直進するときのハンドルの状態を基準として、ハンドルがどれだけ回っているかとする。操作部(1)の変化とはハンドルが回転することである。
【0098】
本実施例の説明では、本願操作装置のシステムは
図2のシステム構成をもとに行う。
即ち、手動運転中は、操作部(1)であるハンドルによって第二の操作部(2)が操作される。また、第二の操作部(2)によって操作対象値(3)であるステアリング量を操作する。これにより手動運転中は、操作部(1)であるハンドルの操作によって操作対象値(3)であるステアリング量を操作する。
【0099】
自動運転中における第二の操作部は、自動運転システムの自動的にステアリングを操作する機能によって操作される。さらに、第二の操作部の状態に応じて、操作部であるハンドルの動きが制御される。本実施例では、第二の操作部は前記自動運転システムの自動的にステアリングを操作する機能によって操作されるシステムの内部状態であるものとするが、当然実デバイスによって第二の操作部を構成してもよい。
【0100】
ここで、手動運転時のハンドルの働きは本願操作装置を適用する前の元の手動運転時の働きと同じであるとする。
【0101】
自動運転中のハンドルは、前記した非連動状態での操作部(1)の動きのいずれかを行う。
【0102】
手動運転から自動運転への切り替えについて述べる。
【0103】
手動運転から自動運転への切り替えは、自動運転システムを備える車両によって定められた手段によって行われる。例えば、自動運転に切り替えるボタンを押したときや、車両のシステムが運転手の運転困難を検知したときなどである。
【0104】
操作部(1)を手動運転に対応する操作部の状態から、自動運転に対応する操作部の状態に変化させる。
このときの操作部(1)は、前記の制御状態の切り替え動作のいずれかの方法によって動かすものとする。
【0105】
自動運転から手動運転への切り替えについて述べる。
【0106】
操作部を自動運転に対応する操作部の状態から、手動運転に対応する操作部の状態に変化させる。
【0107】
自動運転から手動運転への切り替えは、切り替えの要因が緊急事態によるものであることが考えられるため、切り替えによってハンドルが操作装置のシステムによって動いている間も、運転手による操作介入ができることが望ましい。
【0108】
即ち前記の、操作部(1)の、目標状態(11)と瞬間目標状態(12)との差(13)が所定の条件を満たすように制御しながら、操作部(1)と操作対象値(3)、第二の操作部(2)との動き、変化を互いに伝える
方法によって切り替えを行う。
【0109】
前記した、
図11を用いて説明した動作を本実施例で適用すると、
図10に記載のような動作となる。
図10負荷小のときのようにハンドル(80)にかかる負荷が一定以下のときは、ハンドル(80)がステアリング量(82)に向かって動く。
図10負荷大1のときのようにハンドル(80)の動きと逆方向に一定以上の負荷がかかるとき、ステアリング量(82)が負荷と同じ方向、つまり
図10の例ではハンドル(80)の方向に動く。
図10負荷大2のときのようにハンドル(80)の動きと同じ方向に一定以上の負荷がかかるとき、ステアリング量(82)が負荷と同じ方向に動く。
【0110】
つまり、ハンドルが現在のステアリング量によって決まるハンドルの角度になるように現在のハンドルの角度との差を小さくしてゆく。
【0111】
もしくは、直ちに切り替えが完了することが望ましいため、現在のハンドルの状態が切り替え先の操作部の状態となるように補正を行う。
【0112】
例えば、
図12のように、ハンドルはまっすぐだが、ステアリングは右方向に舵を切っているときに手動運転への切り替えが行われると、ハンドルがまっすぐの状態でステアリングが右方向に舵を切るように補正される。このとき、ステアリングをまっすぐにするには、その時の状態からハンドルを左に回すこととなり、まっすぐの状態から左に回した状態が新たなハンドルの基準状態となる。
【0113】
この補正は、ユーザー操作や一定時間後に解除されることが望ましい。
【0114】
解除時は、前記の、操作部(1)の、目標状態(11)と瞬間目標状態(12)との差(13)が所定の条件を満たすように制御しながら、操作部(1)と操作対象値(3)、第二の操作部(2)との動き、変化を互いに伝える
方法によって補正を解除することが望ましい。
【0115】
また、補正が行われている間は、そのことを知らせる通知を行うことが望ましい。
【0116】
自動運転中のハンドル操作による、自動運転による制御への介入について述べる。
【0117】
自動運転中においては、操作装置のシステムによって、ハンドルの動きが制御されている。このとき、運転手が能動的にハンドルを回すことによって、自動運転による制御に介入することを可能とする。
【0118】
例えば、自動運転中に、操作装置システムによる制御に逆らってハンドルを右に回すと、自動運転システムは操作装置システムからその信号を受け取り、走行車線を右側に変更することを試みる。もしくは、自動運転システムによって決定したルートを変更し、本来右折する予定ではなかった箇所での右折を試みる。
【0119】
ハンドルが所定の強さ以上の力で回されたとき、自動運転から手動運転に切り替える。例えば、運転手が緊急時に危険の回避のため、右側にハンドルを回すときである。
【0120】
本願操作装置の適用の別の実施例は、
操作装置とはレバーであり、
操作部とはレバーの持ち手部分であり、
操作部の状態とは前記持ち手部の位置、もしくはレバーの操作状態であり、
操作部の操作とは前記持ち手部を動かすことである
操作装置である。
【0121】
操作対象値と第一の操作手段と第二の操作手段を有し、
制御状態として、第一の制御状態と第二の制御状態を有する操作装置であって、
前記第一の制御状態とは、前記第一の操作手段による通常の動作が行われている状態であり、
前記第二の制御状態とは、前記第二の操作手段または前記操作対象値に対する前記第一の操作手段の状態の任意の対応関係に応じて、前記第一の操作手段が制御され、
前記第二の操作手段は複数あっても構わず、前記第二の制御状態は複数あっても構わない
操作装置。
【0122】
例えば、第二の制御状態1では第二の操作手段1に応じて前記第一の操作手段の状態を決定し、第二の制御状態2では第二の操作手段2の応じて前記第一の操作手段の状態を決定し、第二の制御状態3では前記第二の操作手段1に応じて、前記第二の制御状態1と異なる処理によって前記第一の操作手段の状態を決定する。
また、2つ以上の第二の操作手段に応じて前記第一の操作手段の状態を決定してもよい。
【0123】
前記任意の対応関係とは、少なくとも前記操作対象値あるいは前記第二の操作手段を入力として前記第一の操作手段の状態を出力する任意の対応関係とする。
【0124】
前記任意の対応関係とは、任意の直線と任意の曲線の任意の組み合わせからなる任意の関数によって表現できる。
【0125】
前記任意の対応関係とは、前記操作対象値あるいは第二の操作手段以外の一つ以上の要因に応じても前記第一の操作手段の状態を出力する場合は、その要因に応じて前記対応関係を変化させてもよい。
【0126】
前記操作対象値に応じて前記第一の操作手段の状態が、
線形的に変化する、非線形的に変化する、n次関数的に変化する、前記操作対象値に応じて前記第一の操作手段の状態が変化しない、前記操作対象値の一定方向の変化に応じて前記第一の操作手段の状態が多方向に変化する、離散的に変化する、任意の曲線で表現可能な関数に対応して変化する
領域の任意の組み合わせによって表現する。
【0127】
前記操作対象値に応じて前記第一の操作手段の状態が変化し、その変化の割合の値を2種類以上とする。ただし、変化の割合が0、即ち前記操作対象値の変化に応じて前記第一の操作手段の状態が変化しない変化の割合の値は前記種類の数に含まないものとしてよい。徐々に変化の割合の値が変化する、グラフで表現したとき曲線となる部分は前記変化の割合の値が2種類以上であると判断してよい。
【0128】
直線あるいは曲率が小さく直線に近似可能な曲線となる区間の変化の割合についてのみ考えてもよい。即ち、前記直線、曲率が小さく直線に近似可能な曲線となる区間を接続する曲線部分の変化の割合の値は前記数に含めなくてもよい。
【0129】
他の要因によって前記第一の操作手段の状態を変化させる場合も同様である。
【0130】
操作対象値と第一の操作手段の状態の対応関係に関して、
一つの実現手段とは、任意の関数で表現される、操作対象値に対した第一の操作手段の状態とする。
【0131】
第一の操作手段の状態をy、操作対象値をxと表現するとき、y=f(x)となる対応関係f(x)を設定し、f(x)に応じた第一の操作手段の状態となるように制御する。
【0132】
f(x)は任意のグラフによって表現してもよい。グラフは任意の曲線、直線によって表現可能であるとする。
【0133】
操作対象値の一定方向への変化に対する第一の操作手段の状態を示す値の増加と減少が切り替わってもよい。グラフで表現する場合は極値を含んでもよいということとなる。
【0134】
図14に対応関係の例を示す。横軸を操作対象値、縦軸を第一の操作手段の状態とする。軸の交点を基準として考えてよい。
一定の変化(
図14 a)。変化の仕方が途中で変わる(
図14 b)。ある点から変化し始める(
図14 c)。途中で戻る方向に変化する(
図14 d)。段階的に変化する。不連続に変化する(
図14e,f)。変化の仕方の変化が不連続(
図14 g)。基準を中心に非対称(
図14 h)。
本例に示す以外の任意の関係としてもよい。
【0135】
前記対応関係は、他の要因によって変化させてもよい。即ち、前記f(x)の入力の数を増やす。他の要因をs,複数用いる場合はs1,s2,…のように表現するとき、y=f(x,s)あるいはy=f(x,s1,s2,…)となるような対応関係を設定する。前記関数fは一価関数として考えてもよい。
【0136】
他の要因sが1つの場合は、前記関係は任意の三次元グラフの面で表現可能である。
例えば、横方向に操作対象値、縦方向にsをとり、高さ方向を第一の操作手段の状態とする。
【0137】
sによって、前記f(x)のグラフの形状が変化するともいえる。例えば、操作装置が自動車のハンドルであり、操作対象値が操舵角であり、sを車速としたとき、車速が速いときはf(x)の上限下限を小さくする、変化の仕方を緩やかにする、といったことを可能とする。
【0138】
要因sは任意に設定可能である。例えば、操作装置の内部状態や操作対象値の変化の割合としてもよいし、適用先の装置、機械、システムなどの内部状態や処理に応じた値としてもよい。自動車の場合の具体的な例は、車速やカーブの曲率、加速度、ブレーキ状態、路面の状態、交通の状態などとなる。当然ここに例示したものに限らない。
【0139】
対応関係を示す関数は、異なる入力で同一の出力となってもよい。出力の変化しない範囲を含んでもよい。増減方向が変化してもよい。離散的に変化してもよい。変化の割合または接線の方向の変化が不連続であってもよい。左右非対称であってもよい。
【0140】
前記対応関係を実現する別の手段は、任意のアルゴリズムに基づく処理によって第一の操作手段の状態を決定する。
【0141】
操作対象値の変化の方向に応じて、第一の操作手段の変化の仕方を変えてもよい。
【0142】
図15に示すように、入力値の変化方向に応じて、第一の操作手段の状態の変化の経路を変えてもよい。
図15の例では、操作対象値が基準値から離れる方向に変化して点aをまたぐとき、r1を通り、基準値に近づく方向へ変化して点bをまたぐとき、r2を通る。他の入力に関しても同様にしてもよい。前記状態の変化の経路の数に制限はなく、どの経路を通るかの条件は操作対象値の変化の仕方以外に応じてもよい。例えば、システムの内部状態のいずれかを前記経路の選択に用いてもよい。ここで基準値とは、グラフの軸上の値とする。
【0143】
第一の操作手段が目標状態に向かって変化する際、第一の操作手段の動きに制限を設ける。
【0144】
第一の操作手段の状態を所定の目標状態となるように変化させるとき、急な変化をさせない。目標状態が急に変化しても、第一の操作手段の状態を、目標状態の変化に応じて滑らかに変化させる。
【0145】
これによって、第一の操作手段の状態の急な変化を抑制し、操作者が操作手段を把持し続けることを容易にする。
【0146】
前記制限の一例は、第一の操作手段の状態の変化の割合あるいは変化の割合の変化の割合あるいはその両方に制限を設ける。
第一の操作手段の状態の変化の速度あるいは変化の加速度あるいはその両方に制限を設ける。
【0147】
前記制限は、目標状態あるいは第一の操作手段の状態の変化方向に応じて変えてもよい。例えば、第一の操作手段の状態の基準値から遠ざかる方向への変化と近づく方向への変化でそれぞれ異なる制限を設けてもよい。また、変化の割合の変化方向に応じても前記制限を変えてもよい。例えば、第一の操作手段の状態の変化の加速はゆっくり、減速ははやくなるようにしてもよい。また、前記制限は操作対象値やその他のシステムの内部状態などに応じて変化させてもよい。例えば、第一の操作手段の状態が基準値から遠いほど、速度に関する前記制限を緩和する。即ち、基準値から遠い点では第一の操作部の状態の変化を早くしてもよいこととする。自動車に関する一例では、車速が速いほど速度に関する前記制限を厳しくして、第一の操作手段の状態の動きをゆっくりとする。当然、例示した車速以外の要因を用いることも可能である。
【0148】
第一の操作手段の状態を目標状態に一致させるとき、最短経路をとる、もしくは目標状態(102)の変化を追従するようにしてもよい。
【0149】
最短経路をとるとは、第一の操作手段の状態を現在の目標状態(102)に向かって変化させることである。
図16に動作の一例を示す。破線を目標状態、実線を第一の操作手段の状態の時間変化を示す。
【0150】
変化を追従する場合は、目標状態(102)の変化方向の変化点を追従するようにしてよい。例えば、目標状態の変化をグラフで表したとき、極値となる点を追従するようにする。前記変化点、極値となる点が無ければ現在の目標状態に向かって前記第一の操作手段の状態を変化させる。
図17に動作の一例を示す。破線を目標状態、実線を第一の操作手段の状態の時間変化を示す。追従する点が一定数以上となる場合は、一部あるいは全部を無視してもよい。
図16と
図17では説明のため目標状態を離散的に変化するものとしたが、当然滑らかに変化させてもよく、もともとの変化が前記制限を満たすなら第一の操作手段の状態の変化は目標状態の変化に一致するものとしてもよい。
【0151】
予測した目標状態の変化に応じて、第一の操作手段の状態を変化させてもよい。
【0152】
目標状態が自動的に制御される場合や目標状態の変化に対して第一の操作手段の状態の変化を遅れて行う場合など、目標状態の変化が予測可能である場合は、予測した目標状態に応じて第一の操作手段の状態を制御してもよい。
【0153】
動作の一例は、操作手段の状態を数値によって表現し、目標状態が100になるように変化することがわかっている場合は、操作手段の状態が100に近づくと、変化の割合を減少させ、100の状態で停止できるようにする。
【0154】
予測した、現在よりも先での目標状態に向かって操作手段の状態を変化させる。このとき、目標状態の変化の割合と操作手段の変化の割合が近づくように操作手段の状態の変化を制御してもよい。
【0155】
予測した、目標状態の変化をグラフで表現したとき、操作手段の状態の変化が、前記制限を満たすような前記グラフの近似曲線となるように操作手段を制御する。
【0156】
前記予測の動作は、目標状態の変化の開始あるいは変化の終わりあるいはその両方において行う。また、前記予測を反映させるか否かや反映のさせ方は、目標状態の変化の仕方やその他の任意の要因よって変化させてもよい。例えば、目標状態が操作手段の状態の基準値に近づく方向に変化するときは、目標状態の変化のし始めも反映させ、遠ざかる方向への変化では反映させないなどである。
図18に動作の一例を示す。破線を目標状態、実線を第一の操作手段の状態の時間変化を示す。前記予測を行わない場合は、目標状態の急な変化に対して、第一の操作手段の状態の変化が遅れる場合や目標状態に対して、行き過ぎてしまう場合が懸念される(例:
図18 (a))。少なくとも、予測した目標状態を考慮して、変化を緩やかにすることによって、目標状態を行き過ぎてしまうことを防ぐ(例:
図18 (b))。また、目標状態の、現在の第一の操作手段の状態から遠ざかる方向への変化を予測し、はやめに第一の操作手段の状態の変化を始めることによって、目標状態の変化に追従しやすくする。(例:
図18 (c))
【0157】
ここで、第一の操作手段とは、前記操作部(1)に相当するものとして考えてよい。
第二の操作手段とは、前記第二の操作部(2)に相当するものとして考えてよい。
【0158】
第一の制御状態と第二の制御状態とで扱う第一の操作手段の状態を変えてもよい。例えば、第一の制御状態では第一の操作手段の状態を変位の微分に相当する量を示す状態で表現し、第二の制御状態では第一の操作手段の状態を変位に相当する状態で表現する。他の場合も然り。例えば、操作手段を操舵輪としたとき、第一の制御状態では操舵輪の回転速度に応じて操作対象値を決定し、第二の制御状態では、操作対象値に応じて操舵輪の回転角度を決定する。
【0159】
操作手段の状態に応じて操作対象値を変化させるとき、操作手段の状態の変化量に応じた操作対象値の変化の仕方を任意の入力に応じて変化させる。
【0160】
前記任意の入力に応じて、操作対象値の変化可能な範囲に上限を設ける。前記上限を超えるような操作手段への操作がされても、操作対象値を変化させない。
【0161】
自動車の操舵において、操作手段をハンドル、操作対象値を操舵量とし、前記任意の入力を車速であるとしたときの例は、車速が速いほどハンドルの操作量に対する操舵量の変化を少なくする。
また他の動作例は、前記車速が速いほど、操舵量の取りうる範囲を小さくする。
以上によって、車速の早い状態において、操舵量、即ち車両の走行の曲がり具合に制限を設けることによって、スリップを抑制する。車速以外の他の要因を用いてもよい。例えば、カーブの曲率、加速度、ブレーキ状態、路面の状態、交通の状態などとなる。当然ここに例示したものに限らない。
【0162】
操作部の状態を、目標の状態に変化させるとき、操作部の状態の変化量が最小になるように、あるいは、変化の過程を一部省略するように制御してもよい。一例として、操作対象値をある一方向に変化させ続けるとき、同じ操作部の状態が現れる場合の動作に関して説明する。説明のためのより具体的な例として、自動車のハンドルのような、ある基準状態からの回転量に応じて操作対象値が変化する場合について説明する。
【0163】
操作対象値が、操作部の回転角度に対応する場合、例えば、10度回転したときの操作対象値が10となる場合であって、一回転、即ち360度回転させたときの状態が同じであると扱う場合について説明する。操作部の状態を0度から370度に変化させるとき、370度回転させるのではなく、10°回転させる。同様に0度から350度に変化させるときは、350度回転させるのではなく、-10度回転させる。このとき、操作部の変化方向に制限を設けてもよい。例えば、現在の操作部の状態から目標状態への変化方向にのみ変化可能であるとしたとき、+10度から-270度に変化させる場合は、操作部を負方向に変化させるので、+80度回転させるほうが操作部の変化量が少なくなるが、負方向にのみ変化可能なので-280度回転させる。この制限は例示した以外に任意に設定してよい。
【0164】
また、前記変化の過程を一部省略するとは、例えば操作部を3回転+a度、即ち1080+a度回転させるとき、1回転+a度だけ回転させるようにしてもよいということである。
【0165】
上記の例は、360度回転した操作部の状態が同じとして扱う場合の例である。例えば、操作部の形状が四角形ならば90度回転した操作部の状態を同じものとして扱うようにして、操作部の状態の変化量が最小になるように、あるいは、変化の過程を一部省略するように制御してもよい。どのような状態を同じ状態とするかは任意に設定してよい。
【0166】
これにより、操作部をより早く目標の状態に変化させることが可能となるので、前記制御状態の切り替え時においては、切り替えにかかる時間を短縮することが可能となる。
【0167】
ステア・バイ・ワイヤシステムにおける適用例について説明する。
【0168】
図19に示すような一般的にステア・バイ・ワイヤシステムは、ハンドル(115)とステアリング(116)を操作するアクチュエータ1(111),2(112)をそれぞれ備える。アクチュエータの一例はモータである。ステア・バイ・ワイヤシステムでは、ハンドル(115)とステアリング(116)が機械的に切り離されているので、アクチュエータ1(111)によって、ステアリング(116)によらずハンドル(115)を回転させることやハンドル(115)の回転によらずステアリング(116)を変化させることが可能となる。ここで、ステアリング(116)を操作するアクチュエータ2(112)が第二の操作部(2)に当たると考えてもよい。また、ハンドル(115)にはトルクセンサ(113)のようにハンドル(115)の回転や操作者がハンドル(115)を回転させたことによってハンドル(115)にかかる負荷を検出できる手段が備わっている。アクチュエータ1(111),2(112)は制御装置(114)によって制御される。
【0169】
非連動状態において、ハンドル(115)はハンドルを操作するアクチュエータ1(111)によって動かされることとなる。また、アクチュエータ1(111)は操作者がハンドルを回す操作に対して、負荷を与えることもできる。
【0170】
非連動状態において、ステアリング(116)はアクチュエータ2(112)によって操作される。ステア・バイ・ワイヤシステムでは、ハンドルとステアリング部分が機械的に切り離されているため、それぞれを独立して動かすことが可能であり、本願操作装置の非連動状態における操作部(1)の動きを実現することができる。
【0171】
また、
図10に記載の動作を行う場合に、ハンドルなど操作部にかかる負荷を、前記トルクセンサなどを用いて検出することができる。
【0172】
レバーやジョイスティックのような他の入力装置の場合であっても、同様の形態で実施することができる。即ち、少なくとも操作部(1)を動かす手段と操作部の状態を検出する手段を備え、操作者による操作部(1)への操作を検出する手段を備えればよい。
【0173】
以上の制御は、一般的なコンピュータや、回路の込み合わせによって実施することができる。
【符号の説明】
【0174】
1 操作部、 2 第二の操作部、 3 操作対象値、 4 第二の操作部を操作する手段、 11 目標状態、 12 瞬間目標状態、 13目標状態と操作部の状態との差、 14 操作部の状態、 20 基準、 21 操作部の状態、 22 第二の操作部、 23 操作対象値、 51 知覚提示範囲1、 52 知覚提示範囲2、 80 ハンドル、 81 ステアリング基準量、 82 ステアリング量、 101 第一の操作手段、 102 目標状態、 111 アクチュエータ1、 112 アクチュエータ2、 113 センサ、 114 制御装置、 115 ハンドル、 116 ステアリング