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特許7322141フェロクロム製錬プロセスにおいて、金属酸化物を含有する側流を利用するための方法
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  • 特許-フェロクロム製錬プロセスにおいて、金属酸化物を含有する側流を利用するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】フェロクロム製錬プロセスにおいて、金属酸化物を含有する側流を利用するための方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 34/32 20060101AFI20230731BHJP
   C22B 1/243 20060101ALI20230731BHJP
   C22C 33/04 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C22B34/32
C22B1/243
C22C33/04 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021514333
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 FI2019050687
(87)【国際公開番号】W WO2020065134
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】20185805
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】591064047
【氏名又は名称】オウトクンプ オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOKUMPU OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァロ、キモ
(72)【発明者】
【氏名】リンジャ、ペテリ
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-130615(JP,A)
【文献】国際公開第2010/103343(WO,A1)
【文献】特開昭52-088520(JP,A)
【文献】特開昭53-001103(JP,A)
【文献】特開昭58-048642(JP,A)
【文献】特開昭61-163221(JP,A)
【文献】特表2007-523256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
C22C 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業用金属酸化物を含有する側流を利用するための方法であって、金属酸化物を含有する材料をセメントでブリケット化して、前記ブリケットをCO雰囲気下で加熱した後にフェロクロム製造用のサブマージアーク炉に供給し、前記ブリケットの加熱は予熱炉を用いて実行し、該予熱炉内の温度は400~600℃であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記金属酸化物を含有する材料が、鋳造機からのフレーク、圧延機からのフレーク、濾過作業からのダスト、水処理からの側流、又はアニーリング-酸洗ラインからの金属スラリーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブリケットを、総供給量の最大20%を構成するように添加することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属酸化物を含有する材料が、クロム、鉄、ニッケル、チタン、コバルト、マンガン、及び銅からなる群から選択される金属の酸化物を含有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェロクロム製造用のサブマージアーク炉にセメント系ブリケットを使用することによって、金属酸化物をリサイクルして金属を回収することに関する。本方法では、フェロクロム及びファインスチール製造からの側流は、セメントとともにブリケットへと形成され、このブリケットは、標準的な入口システムを通じて、かつ予熱炉を通じて、サブマージアーク炉に供給され得る。サブマージアーク炉では、金属酸化物は、主に炭素で金属に還元され、金属は、フェロクロム製品中で回収される。
【背景技術】
【0002】
フェロクロム炉では、小さい粒径を有する材料は、反応領域に到達しないが、電荷層上に存在するガス流により停止されるので、使用することができない。フェロクロム及びステンレス鋼の製造において作り出される金属酸化物ダストは、典型的には非常に微細であり、サブマージアーク炉などに供給することができない。加えて、微細な金属酸化物は、炉内部の電荷層の導電率を増加させ、製造能力を低減する。これらの上述の理由から、全ての微細な材料は、フェロクロム製造用のサブマージアーク炉に供給する前に、凝集されなければならない。
【0003】
ブリケットへと形成される材料(複数可)は、典型的に、セメント及び水とともに、コンクリートミキサ内で混合される。混合物を使用して、ブリッケットマシンで所望のサイズのブリケットを形成し、所望の期間乾燥させて、必要な強度に到達させる。本明細書の製造方法は、セメント系石板を製造するために使用されるものと同じである。
【0004】
選択された条件下で、サブマージアーク炉で還元することができる、フェロクロム製造からの金属酸化物を使用して、ブリケットを形成することができる。ファインスチール製造では、好適な破片は、例えば、フィルタプラントからのダスト、鋳造及び圧延機からのフレーク、水処理からのスラリー、冷間ローラからのショットブラストダスト、並びにアニーリング-酸洗プロセスでの酸処理によって形成される金属沈殿物である。フェロクロム製造では、好適な破片は、例えば、ペレット化及び炉供給中に形成される微細な材料である。金属収率を改善するために、炭素などの好適な還元材料をブリケットに添加して反応速度を加速させることができる。
【0005】
フェロクロム製造における本発明の潜在性は、クロム収率の改善、廃棄物の低減、原料のより良好な使用、及び埋立費用の回避である。ブリケットの組成を改変することにより、フェロクロムの組成を顧客が望むように改変することができる。ファインスチール製造では、側流の現在のリサイクルを改善し、安価にリサイクルすることが有利であろう。
【0006】
リサイクル側流に関係する問題に対する以前の解決策は、有機結合剤を用いてブリケットを形成する別個のダスト製錬機、及び直接還元プロセスに基づくものであった。ダスト製錬機及び直接還元プロセスは、巨額の投資が必要であること、及び高ランニングコストの可能性に起因して困難である。糖蜜などの有機結合剤を使用すると、フェロクロム製造用のサブマージアーク炉の反応領域に到達する前に、ブリケットの崩壊が生じ得る。ファインスチール製造では、アーク炉にこれらのブリケットを使用するとエネルギー効率が低減され、したがって収率が低減される。
【0007】
米国特許第8409320(B2)号は、酸化物を含有する鋼製造側流を糖蜜でブリケット化し、これらを製錬プラントのアーク炉に供給し、ここで、金属が還元され、スラグが沸騰されることを開示している。この特許は、セメントを用いて酸化物材料をブリケット化し、ブリケットをフェロクロム製造用のサブマージアーク炉に、又は鋼製造用のアーク炉に供給することを扱っていない。
【0008】
米国特許出願公開第2014/0352496号及び同第2013/192422号は、セメント及び糖蜜系のブリケットの調製、及びファインスチール製造用のアーク炉での使用を開示している。この特許は、アーク炉において、ブリケットとともにスラグを沸騰させることに集中している。この特許は、フェロクロム製造で使用されるサブマージアーク炉でのブリケットの使用を扱っていない。
【発明の概要】
【0009】
フェロクロム製造で使用されるサブマージアーク炉を使用する従来技術を提示する公開物はない。サブマージアーク炉は、スラグが沸騰する条件を作り出すことはできず、還元ゾーンでの反応及び乱流ガスにより、沸騰スラグから材料を還元するのに好適ではない。
【0010】
本発明による解決策は、任意の他の技術では使用が困難であろうフェロクロム及びファインスチールの製造の側流からの材料を、フェロクロム炉に供給することに基づく。加えて、金属工業及び採掘工業からの、炭素を用いて還元することができる金属酸化物を含有する他の側流を、フェロクロムアーク炉に供給することが可能であり、かつ合理的である。
【0011】
供給材料の主要較正成分の化学組成を、表1に提示する。
【0012】
【表1】
【0013】
表1による材料を使用して、混合物をセメント及び水で形成する。補強材としてのセメントに加えて、例えば、高炉スラグを所望に応じて使用してもよい。例えば、6つの角を有する60×60×60mmサイズのブリケットとして、混合物を鋳造する。典型的には、完成したブリケットは、2~30%のセメントを含有し、その一部(10~70%)は、例えば、高炉スラグに置き換えてもよい。ブリケットのサイズは、使用されるサブマージアーク炉の供給若しくは入口システムに依存するか、又はそれに影響される。ブリケットは、炉に供給する前に最終的な強度に到達するように、屋外条件下で約4週間乾燥させる。促進剤を使用し、加熱して硬度を調節することも可能である。所望される場合、0~25%の還元剤(コークス、フェロシリコン、アルミニウム、炭化ケイ素)をブリケットに添加してもよく、還元剤自体が金属酸化物に物理的に近いので、それにより還元がより良好になる。
【0014】
好ましくは、CO雰囲気下でブリケットを乾燥させ、かつおよそ500℃に加熱する予熱炉を介して、ブリケットはサブマージアーク炉に供給される。これにより、ケイ酸塩結合が破壊され、炭酸塩結合に置き換えられるが、ブリケットの強度は維持される。ブリケットは、プラグ流として、入口管を通って、サブマージアーク炉のポットへと流れ、炉のガスにより同時に加熱が開始される。ブリケットが融解ゾーンに到達すると、出発還元内の金属酸化物は、最初に酸化鉄がポットガスによって部分的に還元され、最終的に酸化クロムが還元される。フェロクロム製造用のサブマージアーク炉では、ブリケットに含有されるセメントは、スラグのpHを上昇させ、したがって、スラグのクロム含有量をおよそ0.5~5%低減する。還元された金属は融解し、炉内の金属に溶解し、溶融物は、鋳造可能な合金として炉から溶け出し、その組成は、供給物の金属含有量に依存する。実際には、例えば、供給物中の全てのNi、Mo、及びFe破片は、金属に還元される。金属及びスラグの組成を、表2に提示する。
【0015】
【表2】
一実施形態では、触媒などの様々な二次原料を、ブリケット原料として使用して、金属酸化物中の金属をフェロクロム中へと回収することを可能にする。これらの原料は、ニッケル、モリブデン、チタン、銅、マンガン、又はコボルト(cobolt)を含有する金属酸化物であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
次に、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
図1】金属酸化物の還元順序を図示するエリンガムダイアグラムを示す。
図2】供給実験中のフェロクロム製品中のニッケル及びマンガンのレベルの変化を示す。
図3】実験中のフェロクロム製品のクロム含有量の変化を示す。
図4】実験中のフェロクロム製品の炭素及びケイ素含有量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
金属酸化物の還元順序は、図1のエリンガムダイアグラムによって定義される。選択された条件下のアーク炉内で、炭素によって還元され得る異なる金属を見ることができる。炭素は、炭素の反応を提示する線の上方にある金属を還元することが可能である。この還元反応自体は、温度及び圧力に依存する。実際には、希元素は最初に還元されるので、還元順序はNi、Mo、Fe、Crである。ダイアグラムはまた、酸化段階によって変動する、還元の反応式、例えば、鉄の異なる酸化段階の個々の式を示す。
【0018】
本発明によれば、セメントは、400~600度の予熱炉温度でブリケットをまとめることができる唯一の結合材料である。加えて、ブリケットに適切な機械的強度を与えるので、入口システムを通じてブリケットを炉内に供給することができる。セメントの化学結合は、予熱オーブンの熱により炭酸塩結合に変化し、それにより、ブリケットの元の強度はほぼ完全に維持される。また、セメント系ブリケットを使用することにより、スラグのpHを上昇させてクロムのより高い還元度及びより高い収率をもたらす石灰をサブマージアーク炉に提供する。
【0019】
ブリケットの粒径分布は、ブリケットの形成で使用される原料に依存する。使用されるセメントの量を最小限に抑え、原料の節約を提供することを可能にするので、粒径分布は、可能な限り厳密にフラー曲線に従うべきである。添加されるブリケットの量は、現在の得られたスラグ材料の分析に依存して、総材料供給量のうちの最大20重量%、好ましくは3~10重量%であり得る。
【0020】
本発明は、上に提示される原料に限定されない。本方法によって、金属酸化物を含有する他の側流も経済的に使用することができる。例えば、ニッケル業界からの酸化物は、ニッケルをフェロクロムにブレンドし、このように形成されたフェロクロムは、オーステナイト鋼グレードの製造により良好に適するであろう。
【0021】
図2~4は、ファインスチール製造からのフレークを含有するセメント系のブリケットを、フェロクロム製造で使用されるサブマージアーク炉に供給した実験の結果を示す。
【0022】
図2は、供給実験中のフェロクロム製品のニッケル及びマンガン含有量の変化、すなわち、金属酸化物が、最終製品へと還元されることを示している。
【0023】
図3は、実験中の最終製品中のフェロクロム製品のクロム濃度の変化を示す。クロム濃度は、他の金属の割合が増加した際、予想どおりに低下した。
【0024】
図4は、ブリケット実験中の炭素及びケイ素の濃度が、最終製品中で通常のレベルで残存したことを示す。
図1
図2
図3
図4