(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】電源、および電力を供給するための方法
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20230731BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230731BHJP
B60T 8/92 20060101ALI20230731BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20230731BHJP
H02J 1/10 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
H02J9/06 110
B60R16/02 645Z
B60T8/92
B60T17/18
H02J1/10
(21)【出願番号】P 2021538913
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2019073653
(87)【国際公開番号】W WO2020057987
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-12
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】タマーシュ ラップ
(72)【発明者】
【氏名】ベネデック ポウル
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-282850(JP,A)
【文献】特開2016-213965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/00 - 11/00
B60R 16/00 - 17/02
H02J 1/00 - 1/16
B60T 15/00 - 17/22
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギ管理および監視ユニット(4)のための電源において、
それぞれ電力供給のための少なくとも1つの電力線路を含む、入力側または出力側を表す複数の線路を有する線路装置(5)と、
前記線路装置(5)の電力線路を1つの全電圧へと結合する統合ユニット(1)と、
当該全電圧を、前記エネルギ管理および監視ユニット(4)に提供される少なくとも2つの冗長電圧に分割するように構成された分割ユニット(2)と
が設けられており、
前記統合ユニット(1)と前記分割ユニット(2)との間に配置された単一の共通電圧線路(15)が設けられており、前記単一の共通電圧線路(15)は、少なくとも1つの電力線路(5)が電力供給を行うかぎり、ゼロでない全電圧が前記分割ユニット(2)に供給されるように、前記分割ユニット(2)に全電圧を供給する、
ことを特徴とする、電源。
【請求項2】
前記線路装置(5)は、前記複数の線路のうちの少なくとも1つの線路上で発生しうる短絡の負の効果を防止するための少なくとも1つのフューズまたはスイッチを含む、
請求項1記載の電源。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフューズまたはスイッチは、短絡が発生した場合の電圧降下を防止するための少なくとも1つのダイオードを含む、
請求項2記載の電源。
【請求項4】
前記分割ユニット(2)は、前記共通電圧線路(15)上の全電圧から個別の電圧線路(21,22)に供給される冗長電圧への電圧変換を行う少なくとも2つの電圧変換器(3)を含む、
請求項1から3までのいずれか1項記載の電源。
【請求項5】
前記統合ユニット(1)および/または前記分割ユニット(2)は、1つのユニットに統合されているか、または複数のユニットに分散されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の電源。
【請求項6】
車両において、
請求項1から5までのいずれか1項記載の電源が設けられている
ことを特徴とする、車両。
【請求項7】
エネルギ管理および監視ユニットに電力を供給するための方法において、
入力側または出力側を表す複数の線路を有する線路装置(5)上の電力を統合ユニット(
1)へ供給し、
前記線路装置(5)の前記複数の線路上の電力を共通電圧線路(15)上の1つの全電圧へと統合し、
分割ユニット(2)において、当該全電圧を少なくとも2つの冗長電圧に分割し、
当該少なくとも2つの冗長電圧を前記エネルギ管理および監視ユニット(4)に提供することを含み、
前記統合ユニット(1)と前記分割ユニット(2)との間に配置された単一の共通電圧線路(15)が設けられており、前記単一の共通電圧線路(15)は、少なくとも1つの電力線路(5)が電力供給を行うかぎり、ゼロでない全電圧が前記分割ユニット(2)に供給されるように、前記分割ユニット(2)に全電圧を供給する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例示のエネルギ管理および監視ユニットのための、電源、および電力を供給するための方法に関し、特に、安全性に関連するエネルギ貯蔵管理および監視ユニットのための電源に関する。
【0002】
商用車両のブレーキシステムおよび他の安全性に関連するシステムの従来の制御および作動は、エネルギ源としての圧縮空気を基礎としていることが多い。よって、エネルギは、圧縮空気リザーバ内に圧縮空気として貯蔵され、圧縮器によって生成される。こうしたシステムの管理および監視は、中央制御ユニット、例えばEAC(電子空気制御部)またはAPU(空気処理ユニット)によって行われる。
【0003】
しかし、圧縮空気エネルギ源は、特に電気車両において、電子システムによって置換されることが増えてきている。したがって、完全なシステムアーキテクチャおよび多くのコンポーネントは、システムがエネルギ源としての圧縮空気にもはや依存しないよう、それぞれ電気コンポーネントもしくは電子コンポーネントによって置換されており、圧縮空気システムと同等のレベルの、電気動力システムでの安全性を提供するという需要が存在する。
【0004】
特に、自律運転車両は、車両内の多くの電気ユニットの制御および/または作動のための冗長電源を提供するアーキテクチャを必要とする。さらにまた、特に安全性に関連するエネルギ貯蔵ユニットについては、その情報が車両通信ネットワークにおいていつでも利用可能であるべきであり、監視が連続的に保証されなければならない。
【0005】
従来の電源は、例えば、独国特許出願公開第10053584号明細書に開示されており、ここでは、第1の電圧源および第2の電圧源が安全性に関連する負荷に接続されており、それぞれ別個の分離エレメントを介して電圧が供給される。ただし、当該システムは、商用車両への冗長電源の提供には容易に適用できない。なぜなら、当該システムは、バッテリから各消費装置への2つの別個の電流路に依存しているからである。商用車両では、トレーラを接続することもできる中央給電線路の使用が通例である。
【0006】
したがって、商用車両に適する冗長的な手法でエネルギ管理および監視ユニットを提供する、新たなアーキテクチャへの需要が存在する。
【0007】
上述した問題のうち少なくとも幾つかは、請求項1記載の電源または対応する請求項8記載の方法により克服される。各従属請求項は、各独立請求項の主題のさらに有利な実現形態を挙げるものである。
【0008】
本発明の実施形態は、エネルギ管理および監視ユニットのための電源に関する。当該電源は、線路装置と、統合ユニットと、分割ユニットとを含む。線路装置は、それぞれ電力供給のための少なくとも1つの電力線路を含む、例えば入力側または出力側を表す複数の線を有する。統合ユニットは、線路装置の電力線路を1つの全電圧へと結合するように適合化されている。分割ユニットは、全電圧を、エネルギ管理および監視ユニットに提供される少なくとも2つの冗長電圧に分割するように構成されている。
【0009】
エネルギ管理および監視ユニットは、エネルギ貯蔵およびその使用を監視、制御および最適化することができる任意のユニット(典型的には1つもしくは複数のマイクロコントローラによってコンピュータ支援されるユニット)であってもよい。同様に、線路装置は、複数の線路上に電力を供給することができる任意の可能なシステムを広く含むものと理解されたい。これらの線路は、幾つかの回路の入力側/出力側となることができ、また、エネルギ管理および監視ユニットからの情報をやり取りする(例えば車両のいずれかの電子制御ユニットへ、また車両のいずれかの電子制御ユニットから、情報をやり取りする)データ線路を含むことができる。電力線路の統合により、複数の電圧線路からの電流が流れる、全電圧のための共通電圧線路を得ることができる。例えば、種々の電圧源、例えばバッテリセルまたは車両電力網からの全電流のための唯一の電流路が存在する。
【0010】
したがって、電源は、統合ユニットと分割ユニットとの間に配置された単一の共通電圧線路を含むことができ、当該単一の共通電圧線路は、少なくとも1つの電力線路が電力供給を行うかぎり、ゼロでない全電圧が分割ユニットに供給されるように、分割ユニットに全電圧を供給する。
【0011】
任意手段として、線路装置は、複数の線路のうち少なくとも1つの線路上で発生しうる短絡の負の効果を防止するための少なくとも1つのフューズまたはスイッチを含む。少なくとも1つのフューズまたはスイッチは、短絡が発生した場合の電圧降下を防止するための少なくとも1つのダイオード(例えばいわゆる保護ダイオード)を含むことができる。
【0012】
任意手段として、分割ユニットは、全電圧から冗長電圧への電圧変換を行う少なくとも2つの電圧変換器、特に1つもしくは複数のDC/DC変換器を含む。任意手段として、統合ユニットおよび/または分割ユニットは、1つのユニットに統合されているか、または複数のユニットに分散されている。例えば、例示のDC/DC変換器のそれぞれは、相互に電気的に分離された別個のユニットとして形成されうる。
【0013】
さらなる実施形態は、上述した電源を備えた、(動力を有するまたは動力を有さない)車両に関する。
【0014】
別の実施形態は、エネルギ管理および監視ユニットに電力を供給するための方法に関する。当該方法は、
‐入力側または出力側を表す複数の線路を有する線路装置上の電力を統合ユニットへ供給するステップと、
‐線路装置の複数の線路上の電力を共通電圧線路上の1つの全電圧へと統合するステップと、
‐当該全電圧を少なくとも2つの冗長電圧に分割するステップと、
‐当該少なくとも2つの冗長電圧をエネルギ管理および監視ユニットに提供するステップと
を含む。
【0015】
当該方法またはその一部はソフトウェアまたはコンピュータプログラム製品として実現可能であり、またECU(電子制御ユニット)内のソフトウェアまたはソフトウェアモジュールによって実現可能である。したがって、実施形態は、コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行される際に当該方法を実行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラムにも関する。実施形態はさらに、プログラムストレージデバイス、例えばディジタルデータストレージ媒体をカバーすることも意図しており、当該プログラムストレージデバイスは、機械可読もしくはコンピュータ可読であり、機械により実行可能もしくはコンピュータにより実行可能であってコンピュータ上もしくはプロセッサ上で実行される際に上述した方法の幾つかもしくは全ての動作を実行するためのプログラム命令を符号化している。
【0016】
本発明の実施形態は、このように、特に安全性に関連するエネルギ管理ユニットのための冗長電源を提供する。こうした冗長性は、複数の線路上の電力を共通電圧線路上に(全電圧に)統合することによって達成される。
【0017】
システムおよび/または方法の幾つかの実施例を、以下に、単に例示としてではあるが、添付の図を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態によるエネルギ管理および監視ユニットのための電源アーキテクチャを示す図である。
【0019】
図1には、エネルギ管理および監視ユニット4に適する電源アーキテクチャが示されている。電源は、それぞれ電力供給のための少なくとも1つの電力線路を含む、入力側または出力側を表す複数の線路を有する線路装置5を含む。当該複数の線路5により、統合ユニット1に電力が供給され、当該統合ユニット1で各電力線路が全電圧(または共通電圧)に結合され、共通線路15を介して分割ユニット2に供給される。分割ユニット2は、共通線路15上の全電圧を、2つの別個の線路21,22によってエネルギ管理および監視ユニット4に提供される少なくとも2つの冗長電圧に分割するように構成されている。
【0020】
したがって、図示の実施形態では、少なくとも1つの電力線路5が電力を統合ユニット1に供給するかぎり、電気エネルギ管理および監視システム4のための2つの冗長電圧線路21,22による電源が提供される。統合ユニット1がシステムの種々の入力線路および/または出力線路の電力を結合(例えば加算)して共通電圧線路のための電力を供給するので、共通線路15は、電力が統合ユニット1に到達しない場合にのみ、電力のない状態となる。
【0021】
当該入力線路および/または出力線路5は、例えば、1つもしくは複数のバッテリまたはバッテリセルまたは車両ネットワークに接続されている。本発明は、線路装置5に電力を供給するための特定のアーキテクチャに限定されるべきでない。線路5または統合ユニット1への接続部は、複数の線路5のうち少なくとも1つの線路上で発生しうる短絡の負の効果を防止するための1つもしくは複数のフューズまたはスイッチ(
図1には図示せず)を含むことができる。少なくとも1つのフューズまたはスイッチは、一方向の電流の流れのみを許容する少なくとも1つの保護ダイオードを含むことができ、これにより、(例えば統合ユニット1の下流で)短絡が発生した場合の電圧降下が防止される。
【0022】
任意手段として、分割ユニットは、共通線路15上の全電圧から電圧線路21,22上の冗長電圧への電圧変換を行うように適合化された少なくとも2つの電圧変換器(例えばDC/DC変換器)を含む。当該冗長電圧は、同じ電圧値または異なる電圧値を有することができる。任意手段として、統合ユニット1および/または分割ユニット2は、(例えば種々のハウジング内の)1つもしくは複数のユニットに統合されている。例えば、例示のDC/DC変換器のそれぞれは、相互に電気的に分離された別個のユニットとして形成可能である。よって、分割ユニット2は、エネルギ管理および監視ユニット4の例示のマイクロコントローラのための少なくとも2つの分離された電力線路を提供する。
【0023】
少なくとも2つの分離された電力線路21,22は相互に別個であって独立させることができ、このため、当該線路21,22のうち一方に誤動作(例えば中断または短絡)があっても、他方の線路に負の効果が影響しない。結果として、例示の安全性に関連する管理ユニット4は、2つの線路21,22のいずれかを通した電源を有することになり、エネルギ管理および監視ユニット4の制御および通信は、高い信頼性をもって保障可能となる。
【0024】
したがって、各実施形態の利点は、特に安全性に関連する電気消費装置用の電気エネルギ貯蔵の管理および監視のタスクを実行することのできる管理および監視ユニット4のマイクロコントローラのための冗長電源を提供する能力に特に関する。さらに、エネルギ貯蔵ユニットの条件に関する情報が、車両システムに高い信頼性をもって提供される。したがって、線路装置の複数の線路のうち少なくとも1つの線路が利用可能であるかぎり、電源が保証される。開示しているシステムによって、公知の圧縮空気ベースの冗長エネルギ源を置換することができる。最終的に、信頼性の高い電源によって、システムをスタンバイモードに移行させることができ、線路装置の少なくとも1つの線路に信号が生じればいつでもウェイクアップさせることができる。
【0025】
説明および図面は単に開示の基本方式を例示するものである。したがって、当業者であれば、本明細書において明示的に説明または図示されていなくても、開示の基本方式を実現しかつその範囲内に含まれる種々の装置を考察することができるであろう。
【0026】
さらに、各実施形態は別個の実施例として独立しうるが、他の実施形態において定義された特徴を別様に組み合わせることができ、つまり、一実施形態における特定の特徴も他の実施形態において実現可能であることに注意されたい。こうした組み合わせも、特定の組み合わせを意図しないことが言明されていないかぎり、本明細書の開示によってカバーされる。
【符号の説明】
【0027】
1 統合ユニット
2 分割ユニット
3 電圧変換器
4 エネルギ管理および監視ユニット
5 線路装置/複数の電力線路
15 共通電圧線路
21,22 冗長電圧供給線路