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特許7322164エチレン・α-オレフィン共重合体組成物およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】エチレン・α-オレフィン共重合体組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20230731BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230731BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20230731BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20230731BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20230731BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20230731BHJP
   C09D 123/08 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L101/00
C08F210/16
C08L23/26
C08F4/6592
C09D11/00
C09D123/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021551659
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2020037848
(87)【国際公開番号】W WO2021070811
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2019184454
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠人
(72)【発明者】
【氏名】川辺 邦昭
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-041793(JP,A)
【文献】特開2018-123187(JP,A)
【文献】特開昭63-218769(JP,A)
【文献】特開2000-290513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/08
C08L 101/00
C08F 210/16
C08L 23/26
C08F 4/6592
C09D 11/00
C09D 123/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a-1)~(a-3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)、色材(D)、樹脂(E)および油脂(F)の3種から選ばれる1種以上、並びに、溶剤(C)を含有するエチレン・α-オレフィン共重合体組成物であって、
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の含有量が、組成物全体を100質量%としたとき、20~50質量%であるエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
(a-1)1H-NMRから測定されるメチル基指標が40~60%の範囲にある。
(a-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が3,000~30,000の範囲にある。
(a-3)-100℃~150℃の温度範囲において、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融解ピークが観測されない。
【請求項2】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が、炭素-炭素不飽和結合を有する化合物から選ばれる1種以上により変性されてなる変性共重合体である、請求項1に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【請求項3】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物により変性されてなる変性共重合体である、請求項1または2に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【請求項4】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物によりの変性されてなる変性共重合体であり、且つ下記要件(b-1)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
(b-1)酸価が0.1~200mgKOH/gである。
【請求項5】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を加工性改良剤として含む、請求項1~のいずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【請求項6】
上記溶剤(C)が、脂肪族炭化水素と酢酸エステルから選ばれる溶剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【請求項7】
色材(D)、樹脂(E)および油脂(F)の3種から選ばれる1種以上が色材(D)であることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【請求項8】
上記色材(D)として、顔料を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【請求項9】
下記方法(α)により製造され、かつ、下記要件(a-1)~(a-3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)、色材(D)、樹脂(E)および油脂(F)の3種から選ばれる1種以上、並びに、溶剤(C)を含有するエチレン・α-オレフィン共重合体組成物であって、
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の含有量が、組成物全体を100質量%としたとき、20~50質量%であるエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
(a-1)1H-NMRから測定されるメチル基指標が40~60%の範囲にある。
(a-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が3,000~30,000の範囲にある。
(a-3)-100℃~150℃の温度範囲において、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融解ピークが観測されない。
方法(α):式1で表される架橋メタロセン化合物(a)、ならびに、
有機アルミニウムオキシ化合物(b1)、および、前記架橋メタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(b2)からなる群より選択される少なくとも1つの化合物(b)
を含む触媒系の存在下で、エチレンとα-オレフィンとを溶液重合する工程を含む方法。
【化1】
[式1において、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、隣接する複数の基は、互いに連結して環構造を形成していてもよく、
6およびR11は、互いに同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、
7およびR10は、互いに同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、
6およびR7は、炭素数2~3の炭化水素と結合して環構造を形成していてもよく、
10およびR11は、炭素数2~3の炭化水素と結合して環構造を形成していてもよく、
6、R7、R10およびR11は、同時に水素原子ではなく;
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり;
13およびR14はそれぞれ独立して、アリール基であり;
Mは、Ti、ZrまたはHfであり;
Qは独立して、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン性配位子または孤立電子対に配位可能な中性配位子であり;
jは、1~4の整数である。]
【請求項10】
請求項1~9いずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物からなるインキ。
【請求項11】
請求項1~9いずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物からなる塗料。
【請求項12】
請求項1~9いずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物からなるコーティング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン・α-オレフィン共重合体を含むことを特徴とする、インキ、塗料、コーティング材などに好適に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
インキ、塗料、コーティング材などの液状組成物は、その保存安定性や表面性、発色などの改良のため顔料分散性、タレ防止性、耐ひび割れ性などの加工性の改良が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2014-70119)には、水系インクまたは塗料向けにポリオキシアルキレン化合物と四塩基酸とのエステル化物からなる顔料分散剤が開示されている。特許文献2(特開2007-99847)には、ボールペン等インキのたれを防止する粘度調整剤として、アクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体を使用することが提案されている。また、特許文献3(特開2015-168679)には、エポキシ樹脂に、分子内にチオエーテル結合およびエステル結合を有する特定のイソシアヌレート化合物を添加することで、柔軟性を付与できることが報告されている。
【0004】
これら特許文献に開示されている添加剤を用いることで、顔料分散性、タレ防止性、耐ひび割れ性などの加工性は一部改良され得るが、より加工性の改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-70119
【文献】特開2007-99847
【文献】特開2015-168679
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タレ防止性、顔料分散性、耐ひび割れ性など加工性が改良された組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題の解決に向け、鋭意検討した結果、特定のエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を用いることにより、タレ防止性、顔料分散性、耐ひび割れ性など加工性が改良された組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の[1]~[12]に係る。
[1]
下記要件(a-1)~(a-3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)、
色材(D)、樹脂(E)および油脂(F)の3種から選ばれる1種以上、並びに、
溶剤(C)を含有することを特徴とするエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
(a-1)1H-NMRから測定されるメチル基指標が40~60%の範囲にある。
(a-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が3,000~30,000の範囲にある。
(a-3)-100℃~150℃の温度範囲において、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融解ピークが観測されない。
【0009】
[2]
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が、炭素-炭素不飽和結合を有する化合物から選ばれる1種以上により変性されてなる変性共重合体である、項[1]に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【0010】
[3]
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物により変性されてなる変性共重合体である、項[1]または[2]に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【0011】
[4]
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)が、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物により変性されてなる変性共重合体であり、且つ下記要件(b-1)を満たす、項[1]~[3]のいずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
(b-1)酸価が0.1~200mgKOH/gである。
【0012】
[5]
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の含有量が、組成物全体を100質量%としたとき、0.1~50質量%である、項[1]~[4]のいずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【0013】
[6]
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を加工性改良剤として含む、項[1]~[5]のいずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【0014】
[7]
上記溶剤(C)が、脂肪族炭化水素と酢酸エステルから選ばれる溶剤を含むことを特徴とする、項[1]に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【0015】
[8]
上記色材(D)として、顔料を含むことを特徴とする、項[1]に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
【0016】
[9]
下記方法(α)により製造され、かつ、下記要件(a-1)~(a-3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)、色材(D)、樹脂(E)および油脂(F)の3種から選ばれる1種以上、並びに、溶剤(C)を含有することを特徴とするエチレン・α-オレフィン共重合体組成物。
(a-1)1H-NMRから測定されるメチル基指標が40~60%の範囲にある。
(a-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が3,000~30,000の範囲にある。
(a-3)-100℃~150℃の温度範囲において、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融解ピークが観測されない。
【0017】
方法(α):式1で表される架橋メタロセン化合物(a)、ならびに、
有機アルミニウムオキシ化合物(b1)、および、前記架橋メタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(b2)からなる群より選択される少なくとも1つの化合物(b)
を含む触媒系の存在下で、エチレンとα-オレフィンとを溶液重合する工程を含む方法。
【0018】
【化1】
[式1において、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、隣接する複数の基は、互いに連結して環構造を形成していてもよく、
6およびR11は、互いに同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、
7およびR10は、互いに同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、
6およびR7は、炭素数2~3の炭化水素と結合して環構造を形成していてもよく、
10およびR11は、炭素数2~3の炭化水素と結合して環構造を形成していてもよく、
6、R7、R10およびR11は、同時に水素原子ではなく;
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり;
13およびR14はそれぞれ独立して、アリール基であり;
Mは、Ti、ZrまたはHfであり;
Qは独立して、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン性配位子または孤立電子対に配位可能な中性配位子であり;
jは、1~4の整数である。]
[10]
項[1]~[9]のいずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物からなるインキ。
【0019】
[11]
項[1]~[9]のいずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物からなる塗料。
【0020】
[12]
項[1]~[9]のいずれか1項に記載のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物からなるコーティング材。
【発明の効果】
【0021】
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物は、色材などの添加材の分散性に優れ、加工、使用する際のタレ防止性が改良され、且つ、乾燥された組成物は耐ひび割れ性を有するので、インキ、塗料、コーティング材などに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、例えば「M~N」と表記した場合、特に断りがなければ「M以上、N以下」を意味する。
【0023】
本明細書において、ある重合体を構成するオレフィンをMとしたときに、「Mから導かれる構成単位」なる表現が用いられることがあるが、これは「Mに対応する構成単位」、すなわち、Mの二重結合を構成するπ結合が開くことにより形成される、一対の結合手を有する構成単位をいう。
【0024】
本明細書において、「(メタ)アクリル」なる語は、アクリル、メタクリル、アクリルとメタクリルの両方を包括する概念として用いられる。
《エチレン・α-オレフィン共重合体(A)》
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を構成するエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、下記要件(a-1)~(a-3)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(A)〔以下、「共重合体(A)」と略称する場合がある。〕からなることを特徴とする。
【0025】
(a-1)1H-NMRから測定されるメチル基指標が40~60%の範囲、好ましくは43~57%である。
メチル基指標が上記範囲内にあると、適度な表面張力を有するため、当該組成物に含まれる色材などの添加材の分散性に優れ、また低結晶性または非晶性を有するため、当該組成物に含まれる他成分との相容性に優れ、他成分と容易に混合できる組成物を提供することができる。
【0026】
エチレン・α-オレフィン共重合体のメチル基のプロトンは1H-NMR測定において、高磁場側にピークが観測される(「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店発行、P163~170))。
【0027】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)のメチル基指標は、1H-NMRで測定した時に観測される高磁場側のピークの割合をメチル基の指標として用いた(「メチル基指標」という)。具体的には共重合体(A)を重クロロホルム中に溶解させて1H-NMRを測定し、重クロロホルム中のCHCl3に基づく7.24ppmに現れる溶媒ピークをリファレンスとした時における、0.50~2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50~1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をメチル基指標とした。なお、1H-NMRの具体的な測定方法としては、下記実施例に記載の方法が挙げられる。
【0028】
ここで、0.50~2.20ppmの範囲内には、共重合体(A)に基づくピークがほぼ含まれる。この範囲のうち、メチル基に基づくピークは、0.50~1.15ppmの範囲内に含まれる場合が多い。
【0029】
(a-2)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)が3,000~30,000の範囲、好ましくは3,500~27,000であり、より好ましくは4,000~25,000の範囲である。
【0030】
共重合体(A)のMwが上記範囲にあると、組成物に添加することにより、適度な増粘効果が発揮され、流動性とタレ防止性が改良される。
共重合体(A)のMwは分子量既知の標準物質(単分散ポリスチレン)を用いて較正されたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができ、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0031】
(a-3)-100℃~150℃の温度範囲において、示差走査熱量分析(DSC)で測定される融解ピークが観測されない。
本発明において、融解ピークが観測されないとは、DSCで測定される融解熱量(ΔH、単位:J/g)が上記温度範囲で、実質的に計測されないことをいう。ΔHが実質的に計測されないとは、DSC測定においてピークが観測されないか、あるいは観測された融解熱量が1J/g以下であることである。
【0032】
本発明に係る共重合体(A)は、融解ピークを有しないので、組成物に含まれる他の成分との相容性に優れ、また共重合体(A)を添加した組成物を塗布した場合にその塗膜に耐ひび割れ性を付与できる点で好ましい。
【0033】
本発明における融点は、下記実施例記載の方法で測定できる。
本発明に係る共重合体(A)は、常温(例:20~25℃)で液状であることが好ましい。常温で液状であると、液状組成物に含まれる他の成分との相容性に優れ、本発明の共重合体(A)を添加した液状組成物を塗布した場合にその塗膜に耐ひび割れ性を付与できる点で好ましい。
【0034】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を構成するα-オレフィンは炭素数3~20のα-オレフィンである。炭素数3~20のα-オレフィンの例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等の直鎖状α-オレフィン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、8-メチル-1-ノネン、7-メチル-1-デセン、6-メチル-1-ウンデセン、6,8-ジメチル-1-デセン等の分岐を有するα-オレフィンが挙げられる。これらのα-オレフィンは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0035】
これらα-オレフィンの中では、炭素数3~10のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
本発明に係る共重合体(A)は、1H-NMRから測定されるメチル基指標が40~60%の範囲を満たす限り、エチレン含量(エチレンから導かれる構成単位)は特に限定はされないが、通常、30~75モル%、より好ましくは40~65モル%の範囲にある。
【0036】
なお、本発明に係る共重合体(A)は、炭素数6~20のα-オレフィンから導かれる構成単位の含量は50モル%未満とすることが好ましい。
本発明に係る共重合体(A)は、下記に記載する変性共重合体を含む共重合体であってもよいし、変性共重合体であってもよい。
【0037】
《エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法》
本発明に係る共重合体(A)の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、バナジウム、ジルコニウム、チタニウム、ハフニウムなどの遷移金属含む化合物と、有機アルミニウム化合物(有機アルミニウムオキシ化合物を含む)および/またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒の存在下に、エチレンとα-オレフィンとを共重合させる方法が挙げられる。このような方法としては、例えば、国際公開第2000/34420号、特開昭62-121710号公報、国際公開第2004/29062号、特開2004-175707号公報、国際公開第2001/27124号等に記載の方法が挙げられる。このうち、ジルコノセンなどメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)を含む触媒系を用いる方法などは、高い重合活性で共重合体を製造できる他、得られる共重合体の塩素含量やα-オレフィンの2,1-挿入を低減できるため、より好ましい。
【0038】
また、前記共重合体(A)は、下記方法(α)により製造される。
方法(α):式1で表される架橋メタロセン化合物(a)、ならびに、
有機アルミニウムオキシ化合物(b1)、および、前記架橋メタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(b2)からなる群より選択される少なくとも1つの化合物(b)
を含む触媒系の存在下で、エチレンとα-オレフィンとを溶液重合する工程を含む方法。
【0039】
【化2】
[式1において、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、隣接する複数の基は、互いに連結して環構造を形成していてもよく、
6およびR11は、互いに同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、
7およびR10は、互いに同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基であり、
6およびR7は、炭素数2~3の炭化水素と結合して環構造を形成していてもよく、
10およびR11は、炭素数2~3の炭化水素と結合して環構造を形成していてもよく、
6、R7、R10およびR11は、同時に水素原子ではなく;
Yは、炭素原子またはケイ素原子であり;
13およびR14はそれぞれ独立して、アリール基であり;
Mは、Ti、ZrまたはHfであり;
Qは独立して、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン性配位子または孤立電子対に配位可能な中性配位子であり;
jは、1~4の整数である。]
前記炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~15、さらに好ましくは4~10であり、前記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基が挙げられ、該アリール基の炭素数は、好ましくは6~20、より好ましくは6~15である。
【0040】
前記ケイ素含有炭化水素基の例としては、1~4個のケイ素原子を含む炭素数3~20のアルキル基またはアリール基が挙げられ、具体例としては、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基が挙げられる。
【0041】
式1において、シクロペンタジエニル基は置換されていても無置換でもよい。
式1において、
(i)シクロペンタジエニル基に結合した置換基(R1、R2、R3およびR4)のうち少なくとも1つは、炭化水素基であることが好ましく、
(ii)置換基(R1、R2、R3およびR4)のうち少なくとも1つは、炭素数4以上の炭化水素基であることがより好ましく、
(iii)シクロペンタジエニル基の3位に結合した置換基(R2またはR3)は、炭素数4以上の炭化水素基(例:n-ブチル基)であることが最も好ましい。
【0042】
1、R2、R3およびR4のうち少なくとも2つが置換基である(すなわち、水素原子ではない)場合、該置換基は同一でも異なっていてもよく、少なくとも1つの置換基は、炭素数4以上の炭化水素基であることが好ましい。
【0043】
共重合体(A)を高温溶液重合で合成する場合、重合活性を向上させるため、R6およびR11も水素原子ではないことが好ましく、R6、R7、R10およびR11のいずれも水素原子ではないことがより好ましい。R6およびR11は、例えば、炭素数1~20の同一の炭化水素基であり、tert-ブチル基であることが好ましく、R7およびR10は、例えば、炭素数1~20の同一の炭化水素基であり、tert-ブチル基であることが好ましい。
【0044】
シクロペンタジエニル基とフルオレニル基とを連結する主鎖部(結合部、Y)は、架橋メタロセン化合物(a)に立体的剛性を付与する共有結合架橋部であり、Yは、同一であっても異なっていてもよい2個のアリール基(R13およびR14)を有するため、シクロペンタジエニル基とフルオレニル基とは、アリール基を含む共有結合架橋部によって結合されている。なお、製造容易性の観点から、R13とR14とは同一の基であることが好ましい。
【0045】
13およびR14におけるアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、置換アリール基(フェニル基、ナフチル基またはアントラセニル基の1個以上の芳香族水素(sp2型水素)を置換基で置換した基)が挙げられる。該置換アリール基における置換基の例としては、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のケイ素含有炭化水素基、ハロゲン原子が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0046】
Qは、好ましくは、ハロゲン原子または炭素数1~10の炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子が挙げられる。炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、1,1,2,2-テトラメチルプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,1,3-トリメチルブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシル基、1-メチル-1-シクロヘキシル基が挙げられる。
【0047】
jが2以上の整数の場合、Qは同一であっても異なっていてもよい。
このような架橋メタロセン化合物(a)としては、例えば、
エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](η5-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタメチルオクタヒドロジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)](2,7-ジフェニル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p-トリル)メチレン[η5-(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)][η5-(2,7-ジメチル-3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
【0048】
架橋メタロセン化合物(a)としては、さらに、前記化合物のジルコニウム原子をハフニウム原子やチタン原子に置き換えた化合物、クロロ配位子をメチル基に置き換えた化合物が例示される。
【0049】
前記架橋メタロセン化合物(a)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
前記有機アルミニウムオキシ化合物(b1)としては、従来のアルミノキサンを使用できる。例えば、下記式2~5で表される直鎖状または環状のアルミノキサンを使用できる。前記有機アルミニウムオキシ化合物(b1)には、少量の有機アルミニウム化合物が含まれていてもよい。
【0050】
前記化合物(b1)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0051】
【化3】
式2~4において、Rは独立して、炭素数1~10の炭化水素基であり、Rxは独立して、炭素数2~20の炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立して、2以上の整数、好ましくは3以上の整数、より好ましくは10~70の整数、特に好ましくは10~50の整数である。
【0052】
【化4】
式5において、Rcは炭素数1~10の炭化水素基であり、Rdは独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~10の炭化水素基である。
【0053】
有機アルミニウムオキシ化合物(b1)の一例であるメチルアルミノキサンは、容易に入手可能であり、かつ高い重合活性を有するので、ポリオレフィン重合における活性剤として一般的に使用されている。しかしながら、メチルアルミノキサンは、飽和炭化水素に溶解させ難いため、環境的に望ましくないトルエンまたはベンゼンのような芳香族炭化水素の溶液として使用されてきた。このため、近年、飽和炭化水素に溶解させたアルミノキサンとして、式4で表されるメチルアルミノキサンの可撓性体(flexible body)が開発され、使用されている。式4で表されるこの修飾メチルアルミノキサンは、例えば、米国特許第4960878号明細書、米国特許第5041584号明細書に示されるように、トリメチルアルミニウムおよびトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製され、例えば、トリメチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムを用いて調製される。Rxがイソブチル基であるアルミノキサンは、飽和炭化水素溶液の形でMMAO、TMAOの商品名で市販されている(Tosoh Finechem Corporation、Tosoh Research&Technology Review、Vol 47、55(2003)を参照)。
【0054】
前記架橋メタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(b2)としては、例えば、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン、ボラン化合物、カルボラン化合物を使用でき、これらは例えば、韓国特許第10-0551147号公報、特開平1-501950号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、米国特許第5321106号明細書に記載されている。必要に応じて、例えば、ヘテロポリ化合物、イソポリ化合物、特開2004-51676号公報に記載のイオン性化合物を使用できる。
【0055】
前記化合物(b2)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
前記ルイス酸としては、例えば、BR3で表される化合物(Rは独立して、例えば、フッ化物、置換もしくは無置換の炭素数1~20のアルキル基(例:メチル基)、置換もしくは無置換の炭素数6~20のアリール基(例:フェニル基)である。)が挙げられ、具体例としては、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロンが挙げられる。
【0056】
前記化合物(b2)を用いると、化合物(b1)を用いた場合と比較して、その使用量を低減でき、経済的に有利である。
前記化合物(b2)としては、下記式6で表される化合物を使用することが好ましい。
【0057】
【化5】
e+は、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、または遷移金属を有するフェロセニウムカチオンである。
【0058】
前記カルベニウムカチオンの例としては、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンが挙げられ、前記アンモニウムカチオンの例としては、ジメチルアニリニウムカチオンが挙げられる。
【0059】
f~Riはそれぞれ独立して、有機基、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数1~20の炭化水素基、より好ましくは、置換もしくは無置換のアリール基であり、例えば、ペンタフルオロフェニル基である。
【0060】
式6で表される化合物の好適例としては、N,N-アルキルアニリニウム塩が挙げられ、具体例としては、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0061】
前記触媒系は、必要に応じて、さらに有機アルミニウム化合物(c)を含んでいてもよい。該化合物(c)は、前記架橋メタロセン化合物(a)、前記化合物(b1)、前記化合物(b2)などを活性化する役割を果たす。
【0062】
前記化合物(c)の好適例としては、下記式7で表される有機アルミニウム化合物、下記式8で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物が挙げられる。
前記化合物(c)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0063】
a mAl(ORb)npq ・・・(式7)
式7において、RaおよびRbはそれぞれ独立して、炭素数1~15、好ましくは炭素数1~4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0<m≦3の整数であり、nは0≦n≦3の整数であり、pは0<p≦3の整数であり、qは0≦q<3の整数であり、m+n+p+q=3である。
【0064】
2AlRa 4 ・・・(式8)
式8において、M2はLi、NaまたはKであり、Raは炭素数1~15、好ましくは炭素数1~4の炭化水素基である。
【0065】
式7で表される化合物の例としては、入手容易なトリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが挙げられる。
式8で表される化合物の例としては、LiAl(C25)4、LiAl(C715)4が挙げられる。
【0066】
また、前記化合物(c)としては、式7で表される化合物に類似する化合物、例えば、少なくとも2つのアルミニウム化合物が窒素原子を介して結合した有機アルミニウム化合物(例:(C25)2AlN(C25)Al(C25)2のように、)を使用することもできる。
【0067】
方法(α)において、架橋メタロセン化合物(a)の使用量は、触媒系に含まれる全成分に対し、好ましくは5~50質量%である。
方法(α)において、使用される架橋メタロセン化合物(a)のモル数に対し、化合物(b1)の使用量は、好ましくは50~500当量であり、化合物(b2)の使用量は、好ましくは1~5当量であり、化合物(c)の使用量は、好ましくは5~100当量である。
【0068】
前記触媒系の構成例としては、例えば、以下の[1]~[4]が挙げられる。
[1]架橋メタロセン化合物(a)および化合物(b1)を含む
[2]架橋メタロセン化合物(a)、化合物(b1)および化合物(c)を含む
[3]架橋メタロセン化合物(a)、化合物(b2)および化合物(c)を含む
[4]架橋メタロセン化合物(a)、化合物(b1)および化合物(b2)を含む
架橋メタロセン化合物(a)、化合物(b1)、化合物(b2)、および化合物(c)は、任意の順序で反応系に導入すればよい。
【0069】
前記共重合体(A)は、前記触媒系の存在下で、エチレンとα-オレフィンとを溶液重合することによって製造される。
該α-オレフィンとしては、炭素数3~20のα-オレフィンが好ましく、炭素数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンなどの直鎖状α-オレフィン、イソブチレン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの分岐状α-オレフィンが挙げられる。該α-オレフィンは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0070】
前記α-オレフィンとしては、炭素数3~6のα-オレフィンが好ましく、プロピレンがより好ましい。
前記溶液重合は、例えば、プロパン、ブタン、ヘキサンなどの不活性溶媒またはオレフィン単量体そのものを媒体として使用することにより実施できる。
【0071】
前記溶液重合における、重合温度は、通常80~150℃、好ましくは90~120℃であり、重合圧力は、通常、大気圧~500kgf/cm2、好ましくは大気圧~50kgf/cm2である。これらは反応材料、反応条件などに応じて適宜選択すればよい。
【0072】
前記溶液重合は、回分式、半連続式または連続式で実施でき、好ましくは連続式で実施される。
《エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の変性共重合体》
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の変性共重合体〔以下、「変性共重合体」と略称する場合がある。〕は、共重合体(A)に、飽和炭化水素基以外の置換基や極性基を付与した共重合体であり、より好ましくは、共重合体(A)の、飽和炭化水素基以外の置換基や極性基を有し、かつ炭素-炭素不飽和結合を有する化合物から選ばれる1種以上のグラフトモノマーによるグラフト変性体であり、特に好ましくは、共重合体(A)の、不飽和カルボン酸およびその誘導体から選ばれる1種以上によるグラフト変性体である。
【0073】
なお、変性共重合体における、置換基や極性基のグラフト位置は特に制限されない。
本発明に係る変性共重合体は、好ましくは、上記共重合体(A)が有する特性に加え、下記(b-1)を満たす。
【0074】
(b-1)酸価が0.1~200mgKOH/g、好ましくは1~180mgKOH/g、より好ましくは5~150mgKOH/g、さらに好ましくは10~120mgKOH/gの範囲にある。
【0075】
本発明に係る変性共重合体の酸価は、グラフト量の指標として用いられる。酸価が上記範囲にある変性共重合体は、適切な量の極性部位があり、液状組成物に添加することにより顔料等の分散性が改良され、またネットワーク形成による増粘でタレ防止性を有し、他成分との相容性に優れるためより耐ひび割れ性が改良される。
【0076】
変性共重合体の酸価は、極性基を含有するビニル化合物などのグラフト量によって調整することができ、例えば、変性共重合体の酸価を高めるためには、グラフト量を多くすることが好ましい。
【0077】
本発明における変性共重合体の酸価は、変性共重合体1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数を示し、JIS K2501:2003に準拠した方法で測定することができる。具体的には、実施例に記載の通りである。
【0078】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を変性するに用いる化合物は、好ましくは、飽和炭化水素基以外の置換基や極性基を有し、かつ炭素-炭素不飽和結合を有する化合物から選ばれる化合物である。
【0079】
飽和炭化水素基以外の置換基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、チオフェン環等の芳香環および/または複素芳香環を有する置換基が挙げられ、該極性基としては、例えば、カルボキシ基、酸無水物基、エーテル結合、エステル結合、ヒドロキシ基、エポキシ基等の酸素含有基、アミド基、イミド結合、アミノ基、ニトリル基、イソシアネート基等の窒素含有基、スルフィニル基、スルファニル基、スルホニル基等の硫黄含有基、トリアルキルシリル基、トリアルコキシシリル基などケイ素含有基が挙げられる。
【0080】
本発明に係る炭素-炭素不飽和結合を有する化合物としては、スチレン、アリルベンゼン等の芳香環を有する化合物、酸、酸無水物、エステル、アミド、イミドなど酸または酸誘導基を有する化合物、アルコール、エポキシ、エーテル等の酸素含有基を有する化合物、アミン、ニトリル、イソシアネート等の窒素含有基を有する化合物、スルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホンアミドなど硫黄含有基を有する化合物、ビニルシラン等のケイ素含有基を有する化合物等が挙げられる。
【0081】
これらビニル化合物またはその誘導体の中でも、芳香環を有する化合物、酸または酸誘導基を有する化合物、酸素含有基を有する化合物が好ましく、酸または酸誘導基を有する化合物、酸素含有基を有する化合物がより好ましく、不飽和カルボン酸およびその誘導体がさらに好ましい。
【0082】
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸(エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)等が挙げられる。
【0083】
不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル、アミドおよびイミド等が挙げられる。
不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル等のエステルおよびハーフエステルが挙げられる。
【0084】
不飽和カルボン酸のアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N-モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミドが挙げられる。
【0085】
不飽和カルボン酸のイミドとしては、例えば、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミドが挙げられる。
不飽和カルボン酸およびその誘導体の中では、不飽和ジカルボン酸およびその誘導体がより好ましく、特に、変性共重合体を製造する反応においてホモポリマー等の副生物が生じにくい等の点から、マレイン酸および無水マレイン酸が特に好ましい。
【0086】
また、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を変性する方法としては、上記変性方法の他に、反応性の気体や液体と反応させる方法が挙げられる。
前記反応性の気体や液体としては、空気、酸素、オゾン、塩素、臭素、二酸化硫黄、塩化スルフリルなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらの中では、空気および/または酸素を用いる酸化反応や、塩素を用いる塩素化、塩化スルフリル、塩素と二酸化硫黄、塩素と塩化スルフリル、塩素と二酸化硫黄と塩化スルフリルを用いるクロロスルホン化反応が好ましい。また本法で用いる気体は、窒素、アルゴン、二酸化炭素など不活性ガスを用いて任意の濃度に希釈し使用してもよい。
【0087】
《エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の変性共重合体の製造方法》
本発明に係る変性共重合体は、従来公知の種々の方法、例えば、下記(1)や(2)の方法により製造することができる。
(1)共重合体(A)を押出機、バッチ式反応機などに装入し、そこに、反応させるビニル化合物や反応性の気体・液体を添加して変性する方法。
(2)共重合体(A)を溶媒に溶解させて、反応させるビニル化合物や反応性の気体・液体を添加して変性する方法。
【0088】
前記いずれの方法でも、ビニル化合物および/または反応性の気体・液体を効率よくグラフトするために、1種または2種以上のラジカル開始剤等の存在下でグラフト共重合を行うことが好ましい。
【0089】
ラジカル開始剤としては、例えば、有機ペルオキシド、アゾ化合物が挙げられる。
有機ペルオキシドとしては、ベンゾイルペルオキシド、ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられ、該アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレート等が挙げられる。
【0090】
これらの中でも、特に、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドが好ましく用いられる。
【0091】
ラジカル開始剤の使用量は、変性前の共重合体(A)100質量部に対して、通常は0.001~5質量部、好ましくは0.01~4質量部、さらに好ましくは0.05~3質量部である。
【0092】
その中でも、空気および/または酸素を用いた酸化反応によって変性する場合、反応を促進するために、前記ラジカル開始剤の他に、金属または金属塩、無機酸、有機酸などから選ばれる1種または2種以上の存在下で反応させてもよい。
【0093】
金属または金属塩としては、酢酸マンガンや酢酸コバルト、塩化マンガン、酸化ニッケル、銅などが挙げられ、該無機酸としては、塩酸や硝酸などが挙げられ、該有機酸としては、ギ酸や酢酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸などが挙げられる。
【0094】
前記変性反応における反応温度は、通常20~350℃、好ましくは60~300℃である。また、反応性の気体を用いて変性する場合、反応圧力は、常圧~5MPaが好ましい。
【0095】
変性共重合体における、飽和炭化水素以外の置換基や極性基のグラフト量は、変性共重合体全体の質量を100質量%とした場合に、通常0.01~15質量%、好ましくは0.05~10質量%である。該グラフト量は、例えば、NMR分析やIR分析等の公知の方法で測定することができる。
【0096】
《色材(D)》
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物に含まれてもよい成分の一つである色材(D)は、顔料、染料などが挙げられる。
【0097】
顔料としては、例えば、土製顔料(オーカー、アンバー等)、ラピスラズリ、アズライト、白亜、胡粉、鉛白、バーミリオン、ウルトラマリン、ビリジャン、カドミウムレッド、炭素顔料(カーボンブラック、カーボンナノチューブ等)、金属酸化物顔料(鉄黒、コバルトブルー、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄等)、金属硫化物顔料(硫化亜鉛等)、金属硫酸塩、金属炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、金属ケイ酸塩、金属リン酸塩、金属粉末(アルミニウム粉末、青銅粉末、亜鉛粉末、銅粉末等)等の無機顔料、不溶性アゾ顔料(モノアゾイエロー、モノアゾレッド、モノアゾバイオレット、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、ピラゾロン顔料等)、溶性アゾ顔料(アゾイエローレーキ、アゾレーキレッド等)、ベンズイミダゾロン顔料、β-ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、縮合アゾ顔料、キナクリドン顔料(キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等)、ペリレン顔料(ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等)、ペリノン顔料(ペリノンオレンジ等)、イソインドリノン顔料(イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等)、イソインドリン顔料(イソインドリンイエロー等)、ジオキサジン顔料(ジオキサジンバイオレット等)、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料(キノフタロンイエロー等)、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等)、染料レーキ顔料等の有機顔料、無機蛍光体や有機蛍光体等の蛍光顔料等が挙げられる。
【0098】
染料としては、例えば、ニトロアニリン系、フェニルモノアゾ系、ピリドンアゾ系、キノフタロン系、スチリル系、アントラキノン系、ナフタルイミドアゾ系、ベンゾチアゾリルアゾ系、フェニルジスアゾ系、チアゾリルアゾ系染料等が挙げられる。
【0099】
該色材は、上記のうち1種または2種以上を用いることができる。
《樹脂(E)》
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物に含まれてもよい成分の一つである樹脂(E)は、インキ、塗料、コーティング材などに添加される樹脂状の物質である。
【0100】
本発明に係わる樹脂(E)としては、ロジン、硬化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ケトン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン・マレイン酸樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、クロマン・インデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、石油樹脂、アルキド樹脂、ポリビニルピロリドン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0101】
本発明に係わる樹脂(E)は、上記のうち1種または2種以上を用いることができる。また、これら樹脂は、樹脂となる前のモノマーや、中間体となるプレポリマー、反応後のポリマーのいずれの形であってもよい。
【0102】
《油脂(F)》
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物に含まれてもよい成分の一つである油脂(F)としては、乾性油、半乾性油、不乾性油、加工油などが挙げられる。
【0103】
乾性油としては、亜麻仁油、志那桐油、紅花油、向日葵油、胡桃油などが挙げられる。
半乾性油としては、胡麻油、大豆油などが挙げられる。
不乾性油としては、ひまし油、オリーブ油、菜種油などが挙げられる。
【0104】
加工油としては、重合油ワニス(亜麻仁油や志那桐油を熱重合したワニス)、脱水ひまし油などが挙げられる。油脂は、上記のうち1種または2種以上を用いることができる。
《溶剤(C)》
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を構成する溶剤(C)は、本発明に係わるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)などを溶解、あるいは分散し得る液状の物質である。
【0105】
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を形成する溶剤(C)としては、水、1価アルコール、グリコール(ジオール)とその誘導体、グリセリン、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、アミド、鉱物油などが挙げられる。この中でも特に、1価アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、アミド、鉱物油が好ましい。
【0106】
1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(iso-プロピルアルコール)、1-ブタノール、2-ブタノール、iso-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、シクロへキシルアルコール、2-エチル-1-へキサノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0107】
グリコール(ジオール)とその誘導体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0108】
芳香族系炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、シメンなどが挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0109】
酢酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸iso-ブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。
【0110】
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどが挙げられる。
エーテルとしては、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルtert-ブチルエーテルなどが挙げられる。
【0111】
アミドとしては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどが挙げられる。
鉱物油としては、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系等各種石油系溶剤が挙げられる。
【0112】
これら溶剤(C)は、上記のうち1種または2種以上を用いることができる。
〈その他成分〉
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物は、上記成分の他に種々公知の成分を含んでいてもよい。
【0113】
その他成分としては、フィラー、オイル、高分子成分、界面活性剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、有機系または無機系発泡剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、可塑剤、難燃剤、離型剤、抗菌剤、結晶化助剤、衝撃改良剤、加工助剤等が挙げられる。
【0114】
《組成物》
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物〔以下、「組成物」と略記する場合がある。]はエチレン・α-オレフィン共重合体(A)、
色材(D)、樹脂(E)、油脂(F)の3種から選ばれる1種以上、および、
溶剤(C)を含有することを特徴とする。
【0115】
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物は、上記記載したように、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)および溶剤(C)を必須成分として含み、色材(D)、樹脂(E)、油脂(F)の3種から選ばれる1種以上を含む。
【0116】
本発明の組成物におけるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の含有量は、組成物の用途に応じて、種々決め得るが、通常、組成物全体を100質量%としたとき、0.1~50質量%、好ましくは0.3~40質量%の範囲である。
【0117】
本発明の組成物における溶剤(C)の含有量は、組成物の用途に応じて、種々決め得るが、通常、組成物全体を100質量%としたとき、5~95質量%であり、好ましくは10~90質量%の範囲である。
【0118】
本発明の組成物が上記色材(D)を含む場合は、その含有量は、本発明の組成物の用途に応じて、種々決め得るが、通常、組成物全体を100質量%としたとき、1~90質量%であり、好ましくは2~80質量%である。
【0119】
本発明の組成物が上記樹脂(E)を含む場合は、その含有量は、組成物の用途に応じて、種々決め得るが、通常、組成物全体を100質量%としたとき、0~90質量%であり、好ましくは1~80質量%の範囲である。
【0120】
本発明の組成物が上記油脂(F)を含む場合は、その含有量は、組成物の用途に応じて、種々決め得るが、通常、組成物全体を100質量%としたとき、0~70質量%の範囲である。
【0121】
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体(A)を含む組成物は、顔料分散性、タレ防止性、硬化後の耐ひび割れ性に優れることから、本発明に係わるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、当該組成物の顔料分散、タレ防止、あるいはひび割れ防止剤などの加工性改良剤であるともいえる。
【0122】
また、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)として、変性共重合体を含む場合は、より、顔料分散性、タレ防止性、硬化後の耐ひび割れ性に優れる組成物が得られる。
《組成物の用途》
本発明に係る組成物の例としては、インキ、塗料、コーティング材が挙げられる。
【0123】
本発明の組成物は、タレ防止性、顔料分散性、耐ひび割れ性などの加工性が改良されているので、特に、インキ、塗料、コーティング材などに好適に使用し得る。
≪エチレン・α-オレフィン共重合体組成物の製造方法≫
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物の製造方法としては特に制限されず、上記成分を種々用途に応じてタンクミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、フラッシングニーダー、ミキシングロール、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ディゾルバー、押出機、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合・混練手段によって混合・混練することで製造することができる。
【0124】
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を製造する際の混練温度は、本発明の目的を損なわない範囲であれば特に制限されないが、共重合体(A)が融点を有さないため、その他の成分との相容性が良好であり、20~60℃など比較的低温で混練することができる。
【0125】
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体組成物を塗料して用いる際の塗料の塗布方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、ローラー、刷毛、スプレー、ロールコーター、アプリケーターなどを用いた塗布や、塗料浴への浸漬、基材との間に電流を流す電着、オフセット印刷機、フレキソ印刷機、凸版印刷機、グラビア印刷機、インクジェットプリンターなど各種印刷機による塗布、ペン先からの吐出のよる塗布などが挙げられる。
【0126】
また必要に応じて、得られた塗膜は、基材に塗布後適当な方法で乾燥および/または硬化させた塗膜であってもよい。乾燥や硬化の方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、風通しの良い屋外での自然乾燥や、オーブンによる加熱、紫外線など光の照射などが挙げられる。
【実施例
【0127】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<共重合体(A)および変性共重合体の製造>
共重合体(A)および変性共重合体は以下の合成例および製造例に従って製造した。
【0128】
[合成例1]
[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドの合成
[エチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドは、特許第4367687号公報に記載の方法で合成した。
【0129】
[合成例2]
[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドの合成
[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリドは、特許第6496533号に記載の方法で合成した。
【0130】
[製造例1]
エチレン・プロピレン共重合体(A-1)の合成
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン760mLおよびプロピレン120gを装入し、系内の温度を150℃に昇温した後、水素0.85MPa、エチレン0.19MPaを供給することにより全圧を3MPaGとした。次に、トリイソブチルアルミニウム0.4mmol、[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド0.0002mmol、および、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.002mmolを窒素で圧入し、撹拌回転数を400rpmにすることで重合を開始した。その後、エチレンのみを連続的に供給することにより全圧を3MPaGに保ち、150℃で5分間重合を行った。少量のエタノールを系内に添加することで重合を停止した後、未反応のエチレン、プロピレン、水素をパージした。得られた重合溶液を、0.2mol/Lの塩酸1000mLで3回、次いで蒸留水1000mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、減圧下80℃で一晩乾燥することで、粗エチレン・プロピレン共重合体を得た。
【0131】
内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、0.5質量%のPd/アルミナ触媒のヘキサン溶液100mL、および、得られた粗エチレン・プロピレン共重合体の30質量%ヘキサン溶液500mLを加え、オートクレーブを密閉した後、窒素置換を行なった。次いで、撹拌しながら140℃まで昇温し、系内を水素置換した後、水素で1.5MPaまで昇圧して15分間水添反応を行うことで、エチレン・プロピレン共重合体60.9gを得た。
【0132】
[製造例2]
エチレン・プロピレン共重合体(A-2)の合成
充分に窒素置換した容量2Lの攪拌翼付連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン1Lを入れ、そこに、96mmol/Lに調整したエチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C251.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を500mL/hの量で連続的に1時間供給した後、更に触媒として、16mmol/Lに調整したVO(OC25)Cl2のヘキサン溶液を500mL/hの量、ヘキサンを500mL/hの量で連続的に供給した。一方、反応器上部から、反応器内の重合液が常に1Lになるように重合液を連続的に抜き出した。
【0133】
次にバブリング管を用いて、エチレンガスを36L/hの量、プロピレンガスを36L/hの量、水素ガスを30L/hの量で供給した。共重合反応は、反応器外部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより、35℃で行った。これにより、エチレン・プロピレン共重合体を含む重合溶液が得られた。
【0134】
得られた重合溶液を、該重合溶液1Lに対して、0.2mol/Lの塩酸500mLで3回、次いで、該重合溶液1Lに対して蒸留水500mLで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粘稠性液体を、減圧下130℃で24時間乾燥することで、エチレン・プロピレン共重合体(A-2)を得た。
【0135】
[製造例3]
エチレン・プロピレン共重合体(A-3)の合成
製造例1において、エチレンガスの供給量、プロピレンガスの供給量、水素ガスの供給量を適宜調整し、エチレン・プロピレン共重合体(A-3)を得た。
【0136】
[製造例4]
エチレン・プロピレン共重合体(A-1)の変性共重合体(B-1)の合成
窒素吹込管、水冷コンデンサー、温度計および滴下ロート2個を装着した攪拌機付ガラス製200mL反応器に、製造例1で得られた共重合体(A-1)100gを仕込み、昇温後120℃にて窒素バブリングを開始して系内を160℃に保温した。その後、2個の滴下ロートに各々予め仕込んでおいた無水マレイン酸6.6g(70℃前後に加温して液状にしておく)およびジ-tert-ブチルパーオキサイド1.3gを5時間かけて供給し、供給完了後1時間かけて反応させた。次に、更に175℃に昇温し、系内脱圧後、真空ポンプにて徐々に窒素を通気しながら1時間減圧して不純物(未反応の無水マレイン酸およびジ-tert-ブチルパーオキサイドの分解物)を除去した。以上の操作によりエチレン・プロピレン共重合体の変性共重合体(B-1)を得た。
【0137】
[製造例5]
エチレン・プロピレン共重合体(A-2)の変性共重合体(B-2)の合成
製造例1で得られた共重合体(A-1)を製造例2で得られた共重合体(A-2)に変更し、無水マレイン酸およびジ-tert-ブチルパーオキサイドの量をそれぞれ2.8gおよび0.6gへと変更し、2時間かけて添加したこと以外は、製造例4と同様に反応を行い、同様に不純物の除去を行った。以上の操作によりエチレン・プロピレン共重合体(A-2)の変性共重合体(B-2)を得た。
【0138】
[製造例6]
エチレン・プロピレン共重合体(A-)の変性共重合体(B-3)の合成
製造例1で得られた共重合体(A-1)を製造例3で得られた共重合体(A-3)に変更し、無水マレイン酸およびジ-tert-ブチルパーオキサイドの量をそれぞれ3.8gおよび0.8gへと変更し、3時間かけて添加したこと以外は、製造例4と同様に反応を行い、同様に不純物の除去を行った。以上の操作によりエチレン・プロピレン共重合体(A-3)の変性共重合体(B-3)を得た。
【0139】
製造例1~6で得られた共重合体(A-1)~(A-3)、変性共重合体(B-1)~(B-3)の物性を、以下の方法で測定した。(A-1)~(A-3)の分析結果を表1、(B-1)~(B-3)の分析結果を表2に示す。
【0140】
〔メチル基指標〕
ブルカー・バイオスピン社製のAVANCEIIIcryo-500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒として重クロロホルムを用い、試料濃度を20mg/0.6mL、測定温度を50℃、観測核を1H(500MHz)、シーケンスをシングルパルス、パルス幅を5.00μs(45°パルス)、繰り返し時間を7.0秒、積算回数を64回、ケミカルシフトの基準値を重クロロホルム中のCHCl3に基づく溶媒ピーク(7.24ppm)として、1H-NMRスペクトルを測定した。
【0141】
このようにして測定された1H-NMRスペクトルにおける、0.50~2.20ppmの範囲内にあるピークの積分値に対する、0.50~1.15ppmの範囲内にあるピークの積分値の割合をメチル基指標とした。
【0142】
〔重量平均分子量(Mw)〕
下記の高速GPC測定装置により決定した。高速GPC測定装置:東ソー社製HLC8320GPC
移動相:THF(富士フィルム和光純薬(株)製、安定剤不含有、液体クロマトグラフィー用グレード)
カラム:東ソー社製TSKgel Super MultiporeHZ-M 2本を直列連結
サンプル濃度:5mg/mL
移動相流速:0.35mL/分
測定温度:40℃
検量線用標準サンプル:東ソー社製PStQuick MP-M
〔融解ピークの測定〕
融解ピークの測定は、いずれもセイコーインスツルメント社製X-DSC-7000を用いて測定した。簡易密閉できるアルミサンプルパンに約8mgのサンプルを入れてDSCセルに配置し、DSCセルを窒素雰囲気下にて室温から、150℃まで10℃/分で昇温し、次いで、150℃で5分間保持した後、10℃/分で降温し、DSCセルを-100℃まで冷却した(降温過程)。次いで、-100℃で5分間保持した後、10℃/分で15℃まで昇温し、昇温過程で得られるエンタルピー曲線が極大値を示す温度を融点(Tm)とし、融解に伴う吸熱量の総和を融解熱量(ΔH)とした。ピークが観測されないか、融解熱量(ΔH)の値が1J/g以下の場合、融解ピークは観測されないとみなした。融点(Tm)、および融解熱量(ΔH)の求め方はJIS K7121に基づいて行った。
【0143】
<溶剤(C)>
下記実施例、および比較例では以下の市販の溶剤を使用した。
「C-1」:酢酸ブチル(富士フィルム和光純薬(株)製)
「C-2」:メチルシクロヘキサン(富士フィルム和光純薬(株)製)
「C-3」:パラフィン系鉱物油(出光興産(株)製ダイアナプロセスオイルPW-90、100℃動粘度=11cSt)
<色材(D)>
「D-1」:カーボンブラック(旭カーボン(株)製旭#50)
下記比較例では以下の重合体を使用した。
【0144】
また、(G-1)~(G-3)について、(A-1)~(A-3)と同様の方法で分析し、物性を測定した。その結果を表3に示す。
「G-1」:ポリエチレン系ワックス
「G-2」:液状ポリα-オレフィン
「G-3」:液状ポリイソブチレン
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
[実施例1~8、比較例1~8]
<液状組成物(インキ組成物)の製造>
蓋つきガラスバイアルに、表4、5および6の配合の欄に記載の成分を該欄に記載の数値(質量部)で入れ、手で1分間振り混ぜたのち、超音波にて30分間処理し、組成物を得た。
【0148】
<簡易評価用組成物の評価>
実施例1~8、比較例1~8で得られた組成物を、以下の方法に従い評価した。結果を表4、5および6に示す。
【0149】
〔色材分散性〕
液状組成物を目視で観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
〇:色材の沈降や、色材が凝集した粗大粒子が見られない。
【0150】
△:色材の沈降や、色材が凝集した粗大粒子が、僅かに見られる。
×:色材の沈降や、色材が凝集した粗大粒子が、顕著に見られる。
〔タレ防止性〕
液状組成物を15mg程度PET製ルミラーの上に、直径1cmの円状になるように載せたのち、ルミラーを垂直に立て、5分間放置した後、水平に戻した。このときの円の下端から組成物が垂れた長さを測りとり、以下基準で評価した。
【0151】
(評価基準)
◎:垂れた長さが0cm以上0.5cm未満である。
〇:垂れた長さが0.5cm以上1cm未満である。
【0152】
△:垂れた長さが1cm以上2cm未満である。
×:垂れた長さが2cm以上である。
【0153】
【表4】
【0154】
【表5】
【0155】
【表6】
比較例1および4では、カーボンブラックの粗大粒子がまとまった極めて流動性が悪い塊となり、タレ性を評価できる組成物が得られなかった。
【0156】
比較例3および6では、ワックスが溶解せずカーボンブラックとともに沈殿し、均一な組成物が得られなかった。