(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
G01L3/10 311
(21)【出願番号】P 2021564054
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2020046224
(87)【国際公開番号】W WO2021117855
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2019225186
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000150707
【氏名又は名称】長野計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 香織
(72)【発明者】
【氏名】邉見 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 治彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寿紀
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-537032(JP,A)
【文献】特表2019-503483(JP,A)
【文献】特開2013-11567(JP,A)
【文献】特表2007-517213(JP,A)
【文献】米国特許第4932270(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00- 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と、
前記第1領域の周囲に配置される第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域とを接続する複数の梁部と、
前記第1領域と前記第2領域との間に作用するトルクを検出可能に構成され、前記第1領域に配置される検出部と、を備え、
前記検出部は、
前記第1領域に積層される絶縁膜と、
前記絶縁膜に積層され、前記トルクに応じて変形可能に構成される歪みゲージと、を有する
ことを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のトルクセンサにおいて、
前記絶縁膜は、複数の層から構成される
ことを特徴とするトルクセンサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のトルクセンサにおいて、
前記検出部は、前記歪みゲージに積層される保護膜を有する
ことを特徴とするトルクセンサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のトルクセンサにおいて、
前記第1領域は、前記梁部に対応する位置に設けられる接続部を有し、
前記歪みゲージは、前記接続部に配置される
ことを特徴とするトルクセンサ。
【請求項5】
請求項4に記載のトルクセンサにおいて、
前記接続部は、前記第1領域と前記第2領域との間に形成される開口に沿って湾曲する端縁部を有し、
前記歪みゲージは、前記端縁部に対向する位置に配置される
ことを特徴とするトルクセンサ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のトルクセンサにおいて、
前記絶縁膜は、絶縁性のガラスにより構成される
ことを特徴とするトルクセンサ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のトルクセンサにおいて、
前記歪みゲージを有して構成される第1ブリッジ回路および第2ブリッジ回路と、
前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との出力の差が、所定の範囲を超えるか否かを判定する判定部と、を備える
ことを特徴とするトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットの関節部分等で用いられるトルクセンサが知られている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
特許文献1のトルクセンサでは、内環状部、外環状部、および、これらを連結させるスポーク部から起歪体が構成される。そして、スポーク部を覆うように絶縁層が設けられ、当該絶縁層の上に抵抗部が設けられている。これにより、特許文献1のトルクセンサは、抵抗部の抵抗値を検出することで、起歪体に加わったトルクを検出可能に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のトルクセンサでは、起歪体と抵抗部との間を絶縁するために、抵抗部が配置されるスポーク部を絶縁層で覆う必要がある。この場合、スポーク部の形状に合わせて絶縁層を形成する必要があるので、絶縁層を形成しにくくなる。そのため、絶縁層の形成工程が煩雑になってしまうといった問題があった。
【0006】
本発明の目的は、製造工程を容易にできるトルクセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトルクセンサは、第1領域と、前記第1領域の周囲に配置される第2領域と、前記第1領域と前記第2領域とを接続する複数の梁部と、前記第1領域と前記第2領域との間に作用するトルクを検出可能に構成され、前記第1領域に配置される検出部と、を備え、前記検出部は、前記第1領域に積層される絶縁膜と、前記絶縁膜に積層され、前記トルクに応じて変形可能に構成される歪みゲージと、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、第1領域に絶縁膜が積層され、当該絶縁膜に歪みゲージが積層される。そのため、第1領域と第2領域とを接続する複数の梁部に絶縁膜を設ける必要がないので、絶縁膜の形成工程を容易にできる。
【0009】
本発明のトルクセンサにおいて、前記絶縁膜は、複数の層から構成されることが好ましい。
この構成では、絶縁膜の厚さを調整しやすくすることができる。
【0010】
本発明のトルクセンサにおいて、前記検出部は、前記歪みゲージに積層される保護膜を有することが好ましい。
この構成では、歪みゲージに保護膜が積層されるので、例えば、イオン性の汚れ等が歪みゲージに付着してしまうことを防ぐことができる。そのため、イオン性の汚れ等による歪みゲージの表面電荷への影響を抑制でき、歪みゲージの検出精度を良好に保つことができる。
【0011】
本発明のトルクセンサにおいて、前記第1領域は、前記梁部に対応する位置に設けられる接続部を有し、前記歪みゲージは、前記接続部に配置されることが好ましい。
この構成では、歪みゲージが梁部の近傍の接続部に配置されるので、第1領域と第2領域との間に作用するトルクによって梁部が歪んだ際に、その梁部の歪みが歪みゲージに伝達しやすくすることができる。そのため、歪みゲージの検出値から、上記トルクを精度良く検出することができる。
【0012】
本発明のトルクセンサにおいて、前記接続部は、前記第1領域と前記第2領域との間に形成される開口に沿って湾曲する端縁部を有し、前記歪みゲージは、前記端縁部に対向する位置に配置されることが好ましい。
この構成では、第1領域と第2領域との間にトルクが作用した際に、応力が集中しやすい端縁部が湾曲しているので、偏った応力集中を緩和することができる。そのため、偏った応力集中によって歪みゲージによるトルクの検出精度が悪化してしまうことを抑制できる。
【0013】
本発明のトルクセンサにおいて、前記絶縁膜は、絶縁性のガラスにより構成されることが好ましい。
この構成では、絶縁膜が絶縁性のガラスにより構成されるので、例えば、絶縁膜が絶縁性の樹脂で構成される場合に比べて、第1領域と第2領域との間にトルクが作用した際に、当該トルクによって絶縁膜が弾性変形する量を小さくできる。そのため、上記トルクによる歪みがより直接的に歪みゲージに伝達されるので、歪みゲージによるトルクの検出感度を高くすることができる。
【0014】
本発明のトルクセンサにおいて、前記歪みゲージを有して構成される第1ブリッジ回路および第2ブリッジ回路と、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との出力の差が、所定の範囲を超えるか否かを判定する判定部と、を備えることが好ましい。
この構成では、第1ブリッジ回路と第2ブリッジ回路との出力の差が、所定の範囲を超えたことを判定部により判定することができる。そのため、歪みゲージを有して構成される第1ブリッジ回路または第2ブリッジ回路のいずれかに異常が生じた場合に、当該異常を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るトルクセンサの概略を示す平面図。
【
図2】第1実施形態のトルクセンサの要部の概略を示す拡大平面図。
【
図3】第1実施形態のトルクセンサの要部の概略を示す拡大断面図。
【
図4】第2実施形態に係るトルクセンサの概略を示す平面図。
【
図5】第2実施形態のトルクセンサの要部の概略を示す拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態のトルクセンサ1について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態のトルクセンサ1の概略を示す平面図である。なお、本実施形態のトルクセンサ1は、ロボットの関節部分等に搭載され、第1領域2と第2領域3との間に作用するトルクを検出可能に構成されている。
図1に示すように、トルクセンサ1は、第1領域2と、第2領域3と、梁部4と、検出部10とを備える。
【0017】
[第1領域2]
第1領域2は、金属製で円板状に形成されている。本実施形態では、第1領域2は、例えば、モーター等の駆動装置の出力軸に接続されている。これにより、第1領域2は、モーター等の駆動装置によって発生したトルクが伝達されるように構成されている。
第1領域2には、検出部10が配置されている。
【0018】
また、第1領域2は、第1接続部21(
図2参照)を有している。第1接続部21は、第1領域2において梁部4に対応する位置、すなわち、梁部4の端部と接続する領域に設けられている。本実施形態では、梁部4に応じて第1接続部21が4箇所に設けられている。なお、第1接続部21は、本発明の接続部の一例である。また、
図2では、第1接続部21に対応する領域を破線で示している。
そして、それぞれの第1接続部21は、第1領域2と第2領域3との間に形成される開口Oに沿って湾曲する第1端縁部211を有している。本実施形態では、それぞれの第1接続部21は、第1端縁部211を2箇所ずつ有している。なお、第1端縁部211は、本発明の端縁部の一例である。
【0019】
また、本実施形態では、第1領域2には、アライメントマーク22が表示されている。このアライメントマーク22は、後述する検出部10の歪みゲージ12、導体14、電極15を設ける際に、位置合わせの基準になるものである。本実施形態では、2つのアライメントマーク22が、第1領域2の中心Pを挟んで対向する位置に表示されている。
【0020】
[第2領域3]
第2領域3は、金属製で円環状に形成されており、平面視で第1領域2の周囲に配置されている。本実施形態では、第2領域3は、第1領域2と同心円状に配置されている。
また、本実施形態では、第2領域3には、図示略の孔部が複数設けられている。これにより、当該孔部にボルト等の締結具が挿入されることで、当該締結具によって固定部材等に固定されている。
【0021】
[梁部4]
梁部4は、第1領域2の外周と、第2領域3の内周との間に配置され、第1領域2と第2領域3とを接続する部材である。そのため、梁部4は、駆動装置によって発生したトルクが第1領域2に伝達された際に、当該トルクを第2領域3に伝達する。ここで、本実施形態では、第2領域3は固定部材に固定されているので、梁部4には第1領域2と第2領域3との間のトルクが作用する。そのため、梁部4は当該トルクによる歪みが生じやすい箇所である。
本実施形態では、梁部4は、第1領域2および第2領域3と一体に、金属製の板部材により設けられている。すなわち、本実施形態では、金属製の板部材を加工することにより、第1領域2、第2領域3、および、梁部4が形成されている。なお、金属製の板部材は、曲げ撓み可能な程度の厚みを有している。
【0022】
また、本実施形態では、梁部4は、第1梁部41、第2梁部42、第3梁部43、および、第4梁部44の4個の梁部を有している。
そして、それぞれの梁部41,42,43,44は、第1領域2を挟んで、一対となる梁部41,42,43,44に対して対向する位置に配置されている。具体的には、一対となる第1梁部41と第2梁部42とは、第1領域2を挟んで対向する位置、つまり、第1領域2を構成する円の同一直径線上に配置される。また、一対となる第3梁部43と第4梁部44とは、第1領域2を挟んで対向する位置、つまり、第1領域2を構成する円の同一直径線上に配置される。
【0023】
また、本実施形態では、各梁部41,42,43,44は、第1領域2側の端部および第2領域3側の端部が、中央部分よりも幅広になるように形成されている。これにより、各梁部41,42,43,44にトルクが作用した際に、応力が集中しやすい端部が幅広になっていることから、当該トルクによって各梁部41,42,43,44が損傷してしまうことを抑制できる。
なお、本実施形態では、各梁部41,42,43,44は、第2領域3側の端部が、第1領域2側の端部よりもやや幅広になるように形成されている。
【0024】
[検出部10]
図2は、トルクセンサ1の要部の概略を示す拡大平面図であり、
図3は、トルクセンサ1の要部の概略を示す拡大断面図、具体的には、
図2におけるIII-III線に沿って切断した拡大断面図である。本実施形態では、検出部10は、第1領域2と第2領域3との間に作用するトルクによって生じる歪みを検出可能に構成されている。なお、
図3では、検出部10の層構成をわかりやすくするために、絶縁膜11、歪みゲージ12、保護膜13、および、導体14の厚さを誇張して示している。
図1~
図3に示すように、検出部10は、絶縁膜11と、歪みゲージ12と、保護膜13と、導体14と、電極15とを有している。
【0025】
[絶縁膜11]
絶縁膜11は、第1領域2の略表面全体を覆うように積層されており、歪みゲージ12や導体14等と第1領域2との間を絶縁するための膜である。
本実施形態では、絶縁膜11は、複数の層から構成されている。具体的には、第1絶縁層111、第2絶縁層112、および、第3絶縁層113の3層の絶縁層から構成されている。そして、それぞれの絶縁層111,112,113は、第1領域2の表面に絶縁性のガラス材料が積層されることにより形成されている。すなわち、本実施形態では、絶縁膜11は絶縁性のガラスによって構成されている。そのため、本実施形態では、例えば、絶縁膜11が絶縁性の樹脂により構成される場合に比べて、第1領域2と第2領域3との間にトルクが作用した際に、当該トルクによって絶縁膜11が弾性変形する量を小さくできる。
また、本実施形態では、絶縁膜11は透明な絶縁性のガラスによって構成されている。そのため、第1領域2の表面に表示されたアライメントマーク22を、絶縁膜11を通して視認することができる。
さらに、本実施形態では、絶縁膜11が複数の層から構成されているので、絶縁膜11の厚さを調整しやすくすることができる。
【0026】
[歪みゲージ12]
歪みゲージ12は、絶縁膜11に積層され、前述した各梁部41,42,43,44に対応する位置に設けられている。そして、歪みゲージ12は、第1歪みゲージ121、第2歪みゲージ122,第3歪みゲージ123,第4歪みゲージ124の4つの歪みゲージを有している。
そして、各歪みゲージ121,122,123,124は、それぞれ2つの抵抗体R1およびR2を備えて構成されている。なお、本実施形態では、抵抗体R1,R2は、印刷によって形成されている。
【0027】
各歪みゲージ121,122,123,124を構成する抵抗体R1,R2は、それぞれ各梁部41,42,43,44に対応する第1接続部21に配置されている。具体的には、抵抗体R1,R2は、第1接続部21において、第1端縁部211に対向する位置に配置されている。これにより、第1領域2と第2領域3との間にトルクが作用し、当該トルクによって各梁部41,42,43,44に歪みが生じた際に、その歪みが第1接続部21を介して抵抗体R1,R2に伝達し、当該歪みによって抵抗体R1,R2は変形するように構成されている。すなわち、抵抗体R1および抵抗体R2は、第1領域2と第2領域3との間に作用するトルクに応じて変形可能に構成されている。
【0028】
この際、各歪みゲージ121,122,123,124の抵抗体R1,R2は、第1端縁部211に対向する位置に配置されている。そして、第1端縁部211は、開口Oに沿って湾曲しているので、第1領域2と第2領域3との間にトルクが作用した際に、当該第1端縁部211に対して偏って応力が集中することを抑制できる。これにより、上記トルクによって各梁部41,42,43,44に歪みが生じた際に、偏った応力集中による局所的な歪みが生じることを抑制できる。そのため、偏った応力集中による局所的な歪みが歪みゲージ12に伝達されることを抑制できるので、歪みゲージ12の検出精度が悪化してしまうことを抑制できる。
【0029】
また、抵抗体R1,R2は、導体14および電極15により図示略の回路基板に電気的に接続されて、ブリッジ回路を構成している。具体的には、抵抗体R1は、電源電位VDDに接続され、抵抗体R2は接地電位GNDに接続される。これにより、各歪みゲージ121,122,123,124は、電源電位VDDと接地電位GND間に直列に接続されている。
そして、本実施形態では、トルクセンサ1は、上記トルクに応じた抵抗体R1,R2の変形によって、抵抗体R1,R2間の電圧の変化量を検出することにより、第1領域2と第2領域3との間に作用するトルクを検出可能に構成されている。なお、抵抗体R1,R2間の電圧の変化に基づくトルクの検出方法は公知であるため、詳細な説明は割愛する。
【0030】
[保護膜13]
保護膜13は、電極15が配置されている箇所を除いて、第1領域2の略表面全体を覆うように円環状に積層されている。なお、
図1、2では、保護膜13は、1点鎖線で囲まれた領域として示している。
本実施形態では、保護膜13は、絶縁性のガラス材料がコーティングされることにより形成されている。すなわち、本実施形態では、保護膜13は絶縁性のガラスによって構成されている。これにより、本実施形態では、イオン性の汚れ等による抵抗体R1,R2の表面電荷への影響を抑制できる。つまり、イオン性の汚れ等によって抵抗体R1,R2間の電圧が変化して、歪みゲージ12の検出精度が悪化してしまうことを抑制できる。
なお、保護膜13は、上記構成に限られるものではなく、例えば、絶縁性の樹脂により構成されていてもよい。また、保護膜13は、電極15が配置されている箇所を除いて、第1領域2の略表面全体を覆うように円環状に積層されることに限られるものではなく、例えば、歪みゲージ12を覆うように帯状に形成されていてもよい。
【0031】
[導体14]
導体14は、絶縁膜11に積層され、金等の導電性の金属により構成されている。本実施形態では、導体14は、歪みゲージ12と、電極15とを電気的に接続させている。また、導体14は印刷により形成されている。
【0032】
[電極15]
電極15は、歪みゲージ12を、図示略の回路基板に電気的に接続させるための電極である。本実施形態では、各歪みゲージ121,122,123,124の抵抗体R1,R2に応じて、12個の電極15が第1領域2の中央付近に設けられている。
そして、前述したように、歪みゲージ12を構成する抵抗体R1,R2は、当該電極15を介して回路基板に接続されることにより、ブリッジ回路を構成している。なお、本実施形態では、電極15は、導体14と同様に印刷により形成される。
【0033】
[トルクセンサ1の製造方法]
次に、トルクセンサ1の製造方法について説明する。
先ず、ステンレス等の金属の板材を加工して、第1領域2、第2領域3、および、梁部4を成形する。この際、第2領域3に、ボルト等の締結具を挿通することができる孔部を形成してもよい。また、第1領域2に、電極15に接続される回路基板を固定させるための固定ネジを螺合させることができるネジ孔を形成してもよい。
【0034】
次に、第1領域2の表面にアライメントマーク22を印字する。そして、第1領域2の表面に、絶縁性のガラス材料をコーティングすることで絶縁膜11を形成する。この際、スピンコートにより絶縁膜11を形成してもよい。
【0035】
次に、絶縁膜11の上に、導体14および電極15を印刷により形成する。この際、アライメントマーク22を基準にして、導体14および電極15を位置決めする。
そして、導体14に接続するように、歪みゲージ12を印刷により形成する。この際、アライメントマーク22を基準にして、歪みゲージ12を位置決めする。そのため、導体14に対して、歪みゲージ12の位置がずれてしまうことを防止できる。
【0036】
その後、電極15が配置されている中央付近を除いて、第1領域2の略表面全体を覆うように、絶縁性のガラス材料を円環状に塗布して、保護膜13を形成する。
そして、最後に、電極15に回路基板を電気的に接続させる。
【0037】
以上のような本実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、第1領域2に絶縁膜11が積層され、当該絶縁膜11に歪みゲージ12が積層される。そのため、第1領域2と第2領域3とを接続する複数の梁部4に絶縁膜11を設ける必要がないので、絶縁膜11の形成工程を容易にすることができる。
【0038】
(2)本実施形態では、絶縁膜11は複数の層から構成されているので、絶縁膜11の厚さを調整しやすくすることができる。
【0039】
(3)本実施形態では、歪みゲージ12に保護膜13が積層されているので、例えば、イオン性の汚れ等が歪みゲージ12に付着してしまうことを防ぐことができる。そのため、イオン性の汚れ等による歪みゲージ12の表面電荷への影響を抑制でき、歪みゲージ12の検出精度を良好に保つことができる。
【0040】
(4)本実施形態では、歪みゲージ12が梁部4の近傍の第1接続部21に配置されるので、第1領域2と第2領域3との間に作用するトルクによって梁部4が歪んだ際に、その梁部4の歪みが歪みゲージ12に伝達しやすくすることができる。そのため、歪みゲージ12の検出値から、上記トルクを精度良く検出することができる。
【0041】
(5)本実施形態では、第1領域2と第2領域3との間にトルクが作用した際に、応力が集中しやすい第1端縁部211が湾曲しているので、偏った応力集中を緩和することができる。そのため、偏った応力集中によって歪みゲージ12の検出精度が悪化してしまうことを抑制できる。
【0042】
(6)本実施形態では、絶縁膜11が絶縁性のガラスにより構成されるので、例えば、絶縁膜11が絶縁性の樹脂で構成される場合に比べて、第1領域2と第2領域3との間にトルクが作用した際に、当該トルクによって絶縁膜11が弾性変形する量を小さくできる。そのため、上記トルクによる歪みがより直接的に歪みゲージ12に伝達されるので、歪みゲージ12の検出感度を高くすることができる。
【0043】
(7)本実施形態では、第1領域2にアライメントマーク22が表示されている。そのため、歪みゲージ12、導体14、電極15を設ける際に、位置合わせを容易にすることができる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面に基づいて説明する。
第2実施形態では、第2領域3Aに歪みゲージ12Aが配置される点で第1実施形態と異なる。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一または同様の構成には同一符号を付し、説明を省略する。
【0045】
図4は、本実施形態のトルクセンサ1Aの概略を示す平面図であり、
図5は、トルクセンサ1Aの要部の概略を示す拡大平面図である。
図4、
図5に示すように、トルクセンサ1Aは、前述した第1実施形態のトルクセンサ1と同様に、第1領域2Aと、第2領域3Aと、梁部4Aと、検出部10Aとを備える。
【0046】
[第1領域2A]
第1領域2Aは、金属製であり、平面視で円形状に形成されている。そして、本実施形態では、第1領域2Aには、中央に孔部23Aが形成されている。
【0047】
[第2領域3A]
第2領域3Aは、前述した第1実施形態と同様に、金属製で円環状に形成されており、平面視で第1領域2Aの周囲に配置されている。
本実施形態では、第2領域3Aには、検出部10Aが配置されている。
また、本実施形態では、前述した第1実施形態と同様に、第2領域3Aには、ボルト等の締結具が挿入される孔部(図示略)が複数設けられている。
【0048】
また、第2領域3Aは、第2接続部31Aを有している。第2接続部31Aは、第2領域3Aにおいて梁部4Aに対応する位置、すなわち、梁部4Aの端部と接続する領域に設けられている。本実施形態では、梁部4Aに応じて第2接続部31Aが4箇所に設けられている。なお、
図5では、第2接続部31Aに対応する領域を破線で示している。
そして、それぞれの第2接続部31Aは、第1領域2Aと第2領域3Aとの間に形成される開口Oに沿って湾曲する第2端縁部311Aを有している。本実施形態では、それぞれの第2接続部31Aは、第2端縁部311Aを2箇所ずつ有している。
【0049】
[梁部4A]
梁部4Aは、前述した第1実施形態と同様に、第1領域2Aの外周と、第2領域3Aの内周との間に配置され、第1領域2Aと第2領域3Aとを接続する部材である。
本実施形態では、梁部4Aは、第1領域2Aおよび第2領域3Aと一体に、金属製の板部材により設けられている。
【0050】
また、本実施形態では、梁部4Aは、第1梁部41A、第2梁部42A、第3梁部43A、および、第4梁部44Aの4個の梁部を有している。
そして、それぞれの梁部41A,42A,43A,44Aは、第1領域2Aを挟んで、一対となる梁部41A,42A,43A,44Aに対して対向する位置に配置されている。
【0051】
また、本実施形態では、前述した第1実施形態と同様に、各梁部41A,42A,43A,44Aは、第1領域2A側の端部および第2領域3A側の端部が、中央部分よりも幅広になるように形成されている。
【0052】
[検出部10A]
本実施形態では、検出部10Aは、第1領域2Aと第2領域3Aとの間に作用するトルクによって生じる歪みを検出可能に構成されている。そして、検出部10Aは、絶縁膜11Aと、歪みゲージ12Aと、保護膜13Aとを有している。なお、
図4、5では、歪みゲージ12Aに接続される導体および電極の図示を省略しているが、導体および電極は歪みゲージ12Aと同様に第2領域3Aに配置される。
【0053】
[絶縁膜11A]
絶縁膜11Aは、第2領域3Aの表面の略半分を覆うように積層されており、歪みゲージ12Aや導体(図示略)等と第2領域3Aとの間を絶縁するための膜である。
本実施形態では、絶縁膜11Aは、前述した第1実施形態と同様に、複数の絶縁層(図示略)から構成されている。そして、それぞれの絶縁層は、第2領域3Aの表面に絶縁性のガラス材料が積層されることにより形成されている。
【0054】
[歪みゲージ12A]
歪みゲージ12Aは、絶縁膜11Aに積層され、前述した各梁部41A,42A,43A,44Aに対応する位置に設けられている。そして、歪みゲージ12Aは、前述した第1実施形態と同様に、第1歪みゲージ121A、第2歪みゲージ122A,第3歪みゲージ123A,第4歪みゲージ124Aの4つの歪みゲージを有している。
そして、各歪みゲージ121A,122A,123A,124Aは、それぞれ2つの抵抗体R1およびR2を備えて構成されている。
【0055】
各歪みゲージ121A,122A,123A,124Aを構成する抵抗体R1,R2は、それぞれ各梁部41A,42A,43A,44Aに対応する第2接続部31Aに配置されている。具体的には、抵抗体R1,R2は、第2接続部31Aにおいて、第2端縁部311Aに対向する位置に配置されている。これにより、第1領域2Aと第2領域3Aとの間にトルクが作用し、当該トルクによって各梁部41A,42A,43A,44Aに歪みが生じた際に、その歪みが第2接続部31Aを介して抵抗体R1,R2に伝達し、当該歪みによって抵抗体R1,R2は変形するように構成されている。
【0056】
この際、各歪みゲージ121A,122A,123A,124Aの抵抗体R1,R2は、第2端縁部311Aに対向する位置に配置されている。そして、第2端縁部311Aは、開口Oに沿って湾曲しているので、第1領域2Aと第2領域3Aとの間にトルクが作用した際に、当該第2端縁部311Aに対して偏って応力が集中することを抑制できる。
【0057】
[保護膜13A]
保護膜13Aは、絶縁膜11Aを覆うように円環状に積層されている。なお、
図4、
図5では、保護膜13Aは、1点鎖線で囲まれた領域として示している。
本実施形態では、保護膜13Aは、前述した第1実施形態と同様に、絶縁性のガラス材料がコーティングされることにより形成されている。これにより、イオン性の汚れ等による抵抗体R1,R2の表面電荷への影響を抑制できる。つまり、イオン性の汚れ等によって抵抗体R1,R2間の電圧が変化して、歪みゲージ12Aの検出精度が悪化してしまうことを抑制できる。
なお、保護膜13Aは、上記構成に限られるものではなく、例えば、絶縁性の樹脂により構成されていてもよい。また、保護膜13Aは、絶縁膜11Aを覆うように円環状に積層されることに限られるものではなく、例えば、歪みゲージ12Aを覆うように帯状に形成されていてもよい。
【0058】
以上のような本実施形態では、次の効果を奏することができる。
(8)本実施形態では、第2領域3Aに絶縁膜11Aが積層され、当該絶縁膜11Aに歪みゲージ12Aが積層される。そのため、第1領域2Aと第2領域3Aとを接続する複数の梁部4Aに絶縁膜11Aを設ける必要がないので、絶縁膜11Aの形成工程を容易にすることができる。
【0059】
(9)本実施形態では、歪みゲージ12Aが梁部4Aの近傍の第2接続部31Aに配置されるので、第1領域2Aと第2領域3Aとの間に作用するトルクによって梁部4Aが歪んだ際に、その梁部4Aの歪みが歪みゲージ12Aに伝達しやすくすることができる。そのため、歪みゲージ12Aの検出値から、上記トルクを精度良く検出することができる。
【0060】
(10)本実施形態では、第1領域2Aと第2領域3Aとの間にトルクが作用した際に、応力が集中しやすい第2端縁部311Aが湾曲しているので、偏った応力集中を緩和することができる。そのため、偏った応力集中によって歪みゲージ12Aの検出精度が悪化してしまうことを抑制できる。
【0061】
[変形例]
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0062】
前記各実施形態では、第1領域2,2Aが駆動装置に接続され、第2領域3,3Aが固定部材に固定されていたが、これに限定されない。例えば、第2領域3,3Aに駆動装置が接続され、第1領域2,2Aが固定部材に固定されていてもよい。
【0063】
前記各実施形態では、第1領域2,2Aは円板状に形成されていたが、これに限定されない。例えば、第1領域は、平面視で矩形状に形成されていてもよく、あるいは、十字状や円環状に形成されていてもよい。さらに、第1領域には、厚さ方向に対して凹部や凸部が形成されていてもよく、あるいは、段差が形成されていてもよい。
【0064】
前記各実施形態では、第2領域3は円環状に形成されていたが、これに限定されない。例えば、第2領域は、多角環状に形成されていてもよく、第1領域の周りを囲うように配置されていればよい。さらに、第2領域には、厚さ方向に対して凹部や凸部が形成されていてもよい。
【0065】
前記各実施形態では、第1領域2,2A、第2領域3,3A、および、梁部4,4Aは、金属製の板部材から一体に形成されていたが、これに限定されない。例えば、第1領域、第2領域、および、梁部は、樹脂部材や磁器部材から形成されていてもよい。また、第1領域、第2領域、および、梁部は、別々の部材により形成され、これらが溶接等により接合されていてもよい。
【0066】
前記各実施形態では、梁部4,4Aは4個設けられていたが、これに限定されない。例えば、梁部は5個以上設けられていてもよく、あるいは、3個以下であってもよく、複数の梁部が設けられていればよい。また、各梁部は、一対となる梁部に対して、第1領域を挟んで対向する位置に配置されていなくてもよい。
【0067】
前記各実施形態では、各梁部41,41A,42,42A,43,43A,44,44Aは、第1領域2,2A側の端部および第2領域3,3A側の端部が、中央部分よりも幅広になるように形成されていたが、これに限定されない。例えば、梁部は、端部と中央部分とが同じ幅になるように形成されていてもよい。
【0068】
前記各実施形態では、絶縁膜11,11Aは、絶縁性のガラスにより構成されていたが、これに限定されない。例えば、絶縁膜は、絶縁性の樹脂により構成されていてもよい。
また、前記各実施形態では、絶縁膜11,11Aは、複数の層から構成されていたが、これに限定されない。例えば、絶縁膜は、単層の絶縁層から構成されていてもよい。
さらに、絶縁膜は、例えば、絶縁性のガラスにより構成される絶縁層と、絶縁性の樹脂により構成される絶縁層とにより構成されていてもよい。すなわち、特性の異なる複数の絶縁層から構成されていてもよい。このように構成することにより、所望の線膨張係数を有する絶縁膜を得ることができる。すなわち、第1領域と同等の線膨張係数を有する絶縁膜を得ることができる。
【0069】
前記第1実施形態では、第1接続部21の第1端縁部211は開口Oに沿って湾曲していたが、これに限定されない。例えば、第1接続部の第1端縁部は、直線部および角部により構成されていてもよい。
また、前記第2実施形態では、第2接続部31Aの第2端縁部311Aは開口Oに沿って湾曲していたが、これに限定されない。例えば、第2接続部の第2端縁部は、直角部および角部により構成されていてもよい。
【0070】
前記各実施形態では、歪みゲージ12,12Aに保護膜13,13Aが積層されていたが、これに限定されない。例えば、歪みゲージに保護膜が積層されない場合も、本発明に含まれる。
【0071】
前記各実施形態では、抵抗体R1,R2は、印刷により形成されていたが、これに限定されない。例えば、抵抗体は、蒸着やスパッタリングにより形成されていてもよい。
【0072】
前記各実施形態では、導体14および電極15は印刷により形成されていたが、これに限定されない。例えば、導体および電極は、蒸着やスパッタリングにより形成されていてもよい。
【0073】
前記第1実施形態では、絶縁膜11は、第1領域2の略表面全体を覆うように積層されていたが、これに限定されない。例えば、絶縁膜は第1領域の一部を覆うように積層されていてもよく、少なくとも、歪みゲージ、導体、電極が配置される位置に積層されていればよい。つまり、絶縁膜は、歪みゲージ、導体、および、電極と、第1領域との間を絶縁できるように配置されていればよい。
また、前記第2実施形態では、絶縁膜11Aは、第2領域3Aの略表面半分を覆うように積層されていたが、これに限定されない。例えば、絶縁膜は第2領域の表面全体を覆うように積層されていてもよく、少なくとも、歪みゲージ、導体、電極が配置される位置に積層されていればよい。つまり、絶縁膜は、歪みゲージ、導体、および、電極と、第2領域との間を絶縁できるように配置されていればよい。
【0074】
前記各実施形態では、導体14は、歪みゲージ12,12Aと、電極15とを電気的に接続させていたが、これに限定されない。例えば、導体14は、歪みゲージに加えて、補正抵抗を電極に電気的に接続させていてもよい。このように構成し、抵抗体間の電圧の変化量から補正抵抗にかかる電圧の変化量を差し引くことで、温度等による抵抗体間の電圧の変化量を補正できるようにすることができる。そのため、歪みゲージの検出精度を向上させることができる。
【0075】
前記各実施形態において、歪みゲージを有して構成される複数のブリッジ回路、例えば、第1ブリッジ回路と第2ブリッジ回路とを備えて構成されていてもよい。そして、第1ブリッジ回路と第2ブリッジ回路との出力の差が、所定の範囲を超えるか否かを判定する判定部を備えて構成されていてもよい。
このように構成することで、歪みゲージを有して構成される第1ブリッジ回路または第2ブリッジ回路のいずれかに異常が生じた場合に、当該異常を検知することができる。
【0076】
前記各実施形態では、トルクセンサ1は、ロボットの関節部分等に搭載されていたが、これに限定されない。例えば、トルクセンサは、車等の輸送機械や、加工装置等の産業用機械に搭載されていてもよく、様々な分野においてトルクが作用する箇所に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1,1A…トルクセンサ、2,2A…第1領域、3,3A…第2領域、4,4A…梁部、10,10A…検出部、11,11A…絶縁膜、12,12A…歪みゲージ、13,13A…保護膜、14…導体、15…電極、21…第1接続部(接続部)、22…アライメントマーク、31A…第2接続部、41,41A…第1梁部、42,42A…第2梁部、43,43A…第3梁部、44,44A…第4梁部、111…第1絶縁層、112…第2絶縁層、113…第3絶縁層、121,121A…第1歪みゲージ、122,122A…第2歪みゲージ、123,123A…第3歪みゲージ、124,124A…第4歪みゲージ、211…第1端縁部(端縁部)、311…第2端縁部、O…開口、R1…抵抗体、R2…抵抗体。