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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】眼用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/32 20060101AFI20230731BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230731BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230731BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20230731BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20230731BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20230731BHJP
   C08F 226/10 20060101ALI20230731BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20230731BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20230731BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230731BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230731BHJP
   C07F 5/02 20060101ALN20230731BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/34
A61K47/36
A61P27/04
C08F212/14
C08F220/00
C08F226/10
C08K5/053
C08L5/00
C08L33/04
C08L71/02
C07F5/02 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021572888
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 IB2020056039
(87)【国際公開番号】W WO2020261185
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】62/868,220
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520000722
【氏名又は名称】アルコン インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チャン,スティーブ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ブライトコプフ,リチャード・チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ダーチン
(72)【発明者】
【氏名】グゥー,ジュンハオ
(72)【発明者】
【氏名】グビトーシ・ラスピーノ,マリーア・エフ
(72)【発明者】
【氏名】クミ,オーガスティン・トワム
(72)【発明者】
【氏名】リャン,ウェイ
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-518842(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0296264(US,A1)
【文献】特開2007-314736(JP,A)
【文献】国際公開第2009/066746(WO,A1)
【文献】特表2003-528797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C08L 5/00
C08K 5/053
C08L 33/04
C08L 71/02
C08F 220/00
C08F 212/14
C08F 226/10
C07F 5/02
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.05w/v%~約5w/v%のガラクトマンナンポリマー;cis-ジオール、並びに、(a)それぞれがボロン酸を有するアリールボロノ含有繰り返し単位、(b)少なくとも1つのホスホリルコリン含有ビニル系モノマーの繰り返し単位、及び(c)3~16個の炭素原子を有する、少なくとも1つのアクリル系モノマーのアクリル系モノマー単位を含む、約0.5w/v%~約10w/v%の親水性コポリマーを含む眼用組成物であって、前記組成物は0.1%W/V未満のボレートを含み、
前記組成物は、6.5~8.5のpH値を有し、
前記ガラクトマンナンポリマー中のD-ガラクトース:D-マンノースの比率は、約1:2~1:4であり、
それぞれの種類のアリールボロノ含有繰り返し単位は、アリールボロノ含有ビニル系モノマーから誘導され、
前記親水性コポリマーが、(a)約1モル%~約20モル%の前記アリールボロノ含有繰り返し単位、(b)約60モル%~約98モル%の少なくとも1つのホスホリルコリン含有ビニル系モノマーの繰り返し単位、及び(c)約1モル%~約20モル%の、3~16個の炭素原子を有する、少なくとも1つのアクリル系モノマーのアクリル系モノマー単位を含むが、ただし、成分(a)、(b)及び(c)並びに上記されていない他の成分のモル百分率の合計が100%である、眼用組成物。
【請求項2】
なくとも1つのアリールボロノ含有ビニル系モノマーが、次式(II)
【化1】

[式中、
は、H、NO、F、Cl又はCFであり;Qは、
【化2】

の一価ラジカルであり、Lは、直接結合、C~Cアルキレン二価ラジカル、
【化3】

(式中、Yは、CH(OH)又はC~Cアルキレン二価ラジカルであり、Yは、C~Cアルキレン二価ラジカルであり、且つRは、H又はC~Cアルキルである)の二価ラジカルである]のビニル系モノマーである、請求項に記載の眼用組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのアリールボロノ含有ビニル系モノマーが、3-ビニルフェニルボロン酸、4-ビニルフェニルボロン酸、3-(メタ)アクリルアミドフェニルボロン酸、4-(メタ)アクリルアミドフェニルボロン酸、及びその組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の眼用組成物。
【請求項4】
前記ホスホリルコリン含有ビニル系モノマーが、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン、4-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-[(メタ)アクリロイルアミノ]エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、3-[(メタ)アクリロイルアミノ]プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-[(メタ)アクリロイルアミノ]ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブテノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、及びその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の眼用組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの少なくとも1つのアクリル系モノマーが、C1~C12アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリレート、NH2置換C2~C12アルキル(メタ)アクリレート、メチルアミノ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリレート、エチルアミノ置換C2~C10アルキル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ置換C2~C8アルキル(メタ)アクリレート、C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、カルボキシ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、NH2置換C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、エチルアミノ置換C2~C10アルキル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノ置換C2~C8アルキル(メタ)アクリルアミド、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、テトラ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、及びその組合せ、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-トリ(ヒドロキシメチル)メチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレート(GMA)、ジ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、テトラ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、最高1500の数平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、最高1500の数平均分子量を有するポリ(エチレングリコール)エチル(メタ)アクリルアミド、Nメチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、5-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、最高1500の重量平均分子量を有するC1~C4アルコキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、最高1500の数平均分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)エチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、ビニルアルコール、及びその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の眼用組成物。
【請求項6】
記ガラクトマンナンポリマーが、約0.05~約2.0w/v%の濃度で前記眼用組成物中に存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【請求項7】
記ガラクトマンナンポリマーが、約0.2~約1.5w/v%の濃度で前記眼用組成物中に存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【請求項8】
記ガラクトマンナンポリマーが、約0.25~約1.0w/v%の濃度で前記眼用組成物中に存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【請求項9】
前記親水性コポリマーによる前記ガラクトマンナンポリマーの架橋を減少(抑制)する濃度で少なくとも1つのcis-ジオール化合物を含む、請求項1に記載の眼用組成物。
【請求項10】
前記cis-ジオール化合物が、約0.5~約5.0w/v%の濃度で存在する、請求項に記載の眼用組成物。
【請求項11】
前記cis-ジオール化合物が、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール又はその組合せである、請求項又は10に記載の眼用組成物。
【請求項12】
グリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド-ポリブチレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、プロピレングリコール、ポリアクリル酸、及びその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの粘滑剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの粘滑剤が、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール400である、請求項12に記載の眼用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラクトマンナンと、潤滑、水和及びドラッグデリバリー特性を改善するための、(a)それぞれがボロン酸を有するアリールボロノ(arylborono)含有繰り返し単位、(b)少なくとも1つのホスホリルコリン含有ビニル系モノマーの繰り返し単位、及び(c)少なくとも1つのアクリル系モノマーのアクリル系モノマー単位を含む親水性コポリマーとを含有する局所用眼用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
涙液膜の完全性は、眼球表面ホメオスタシス及び機能に関して本質的である。ドライアイ疾病は涙液膜不安定性を特徴とする多因子性の条件であり、眼球不快及び視覚障害をもたらし、そして患者の生活の質に高度に影響を与える。マイバムによって形成される涙液膜の最外部脂質層は、涙液の蒸発速度を減少させることによって涙液膜安定性を維持するのを助ける。マイバムの品質又は量の減少による涙液脂質層の変化は、蒸発亢進型ドライアイ疾病の最も共通の原因の1つである。局所的に投与される人工の涙液代替物/潤滑油点眼液が、全ての種類のドライアイ疾病の治療技術の頼みの綱であり、ドライアイ患者の徴候及び症候を緩和するものである。
【0003】
慢性ドライアイは、眼球表面組織の乾燥及び損傷を導く可能性があり、上皮細胞バリア機能を崩壊させる。水分を補充し、摩擦を減少させる潤滑性の人工涙液の滴下は、ドライアイ治療技術への主要アプローチである。人工涙液組成物は、眼球表面を潤滑し、保護する化合物を含む。ドライアイ疾病に関しては、人工涙液組成物によって痛み及び不快などの徴候を防ぐことが可能であり、また摩擦によって誘導される生体接着及び組織損傷を防止することが可能である。潤滑油及び眼球表面保護剤として有用である多数の可能性のある化合物が利用可能である。例えば、特定の市販の人工涙液製品は、ガラクトマンナン(galactornannans)などの天然ポリマーを含む。他の潤滑油及び眼球表面保護剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、グルコマンナン及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。既存の人工涙液組成物によっていくつかの成功が収められたが、それにもかかわらず、ドライアイ治療における問題は残っている。涙液代替物の使用は、一時的に有効であるが、患者が起きている時間に適用を繰り返すことを一般に必要とする。患者が1日あたり10~20回も人工涙液溶液を適用しなければならないことも珍しくない。そのような作業は厄介で時間のかかるものであるだけでなく、潜在的に非常に高額であり、しばしば患者のコンプライアンスの問題を導く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
良好な潤滑性をもたらすことが可能であり、コンタクトレンズ、眼からの水分蒸発を抑えることが可能であり、眼球表面をコーティングする際により高い有効性を有することが可能であり、且つ/又は既存の涙液膜とより良好に集積化して保護をもたらすことが可能である、改良された眼用組成物を開発することがまだ必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下:約0.05w/v%~約5w/v%のガラクトマンナンポリマー;cis-ジオール、並びに、(a)それぞれがボロン酸を有するアリールボロノ含有繰り返し単位、(b)少なくとも1つのホスホリルコリン含有ビニル系モノマーの繰り返し単位、及び(c)3~16個の炭素原子を有する、少なくとも1つのアクリル系モノマーのアクリル系モノマー単位を含む、約0.5w/v%~約10w/v%の親水性コポリマーを含む局所用眼用組成物であって、ボレートを実質的に含まない眼用組成物に関する。本発明は、ドライアイ、緑内障、高眼圧、感染症、アレルギー及び炎症を含む種々の眼科疾患を治療するためにこれらの組成物を使用する方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に、本明細書において使用される命名法及び実験室手順は、当業者に公知であり、一般的に採用されている。それらの手順では、従来の方法、例えば当業者により実施され、各種の一般的に引用される方法が使用される。用語が単数で与えられている場合でも、本発明者らは、その用語の複数形も考慮に入れている。一般的に、本明細書において使用される命名法及び以下で記載される実験室手順は、当業者に公知であり、一般的に採用されているものである。
【0007】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、「約」を用いられた数が、引用された数プラス又はマイナス引用された数の1~10%を含むことを意味する。
【0008】
「任意選択的な」又は「任意選択的に」という用語は、それに続けて記載される事象又は状況が起きることも起きないことも可能であること、及びその記述が、事象又は状況が起きる場合とそれが起きない場合とを含むことを意味する。
【0009】
「エチレン系不飽和基」という用語は、本明細書では広い意味で用いられ、少なくとも1つの>C=C<基を含む各種の基を包含することが意図されている。例示的なエチレン系不飽和基としては、限定されないが、(メタ)アクリロイル
【化1】

、アリル、ビニル(-CH=CH)、1-メチルエテニル
【化2】

、スチレニルなどが挙げられる。
【0010】
「(メタ)アクリルアミド」という用語は、メタクリルアミド及び/又はアクリルアミドを指す。
【0011】
「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート及び/又はアクリレートを指す。
【0012】
「アクリル系モノマー」という用語は、1つの単独の(メタ)アクリロイル基を有するビニル系モノマーを指す。
【0013】
本出願において使用される場合、「ビニル系架橋剤」という用語は、少なくとも2つのエチレン系不飽和基を有する化合物を指す。「ビニル系架橋剤」という用語は、約700ダルトン以下の分子量を有するビニル系架橋剤を指す。
【0014】
本出願において使用される場合、「ポリマー」という用語は、1種若しくはそれ以上のモノマー、又はマクロマー、又はプレポリマーを重合/架橋させることにより形成される物質を意味する。
【0015】
本出願において使用される場合、ポリマー物質(モノマー物質又はマクロマー物質も含む)の「分子量」という用語は、特に断らない限り、若しくは別の試験条件を示さない限り、重量平均分子量を指す。
【0016】
「アルキル」という用語は、直鎖状又は分岐状のアルカン化合物から水素原子を除去することにより得られる一価のラジカルを指す。アルキル基(ラジカル)は、有機化合物中で他の1つの基と1つの結合を作る。
【0017】
「アルキレンの二価ラジカル」、又は「アルキレンジラジカル」、又は「アルキルジラジカル」という用語は、相互に言い換え可能であり、アルキルから1つの水素原子を除去することにより得られる二価のラジカルを指す。アルキレンの二価の基は、有機化合物中で他の基と2つの結合を作る。
【0018】
「アルキルトリラジカル」という用語は、アルキルから2つの水素原子を除去することにより得られる三価のラジカルを指す。アルキルトリラジカルは、有機化合物中で他の基と3つの結合を作る。
【0019】
「アルコキシ」又は「アルコキシル」という用語は、直鎖状又は分岐状のアルキルアルコールのヒドロキシル基から水素原子を除去することにより得られる一価のラジカルを指す。アルコキシ基(ラジカル)は、有機化合物中で他の1つの基と1つの結合を作る。
【0020】
本出願において、アルキルジラジカル又はアルキルラジカルに関連した「置換された」という用語は、アルキルジラジカル又はアルキルラジカルが、アルキルジラジカル又はアルキルラジカルの1つの水素原子を置き換える、ヒドロキシ(-OH)、カルボキシ(-COOH)、-NH、スルフヒドリル(-SH)、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ(アルキルスルフィド)、C~Cアシルアミノ、C~Cアルキルアミノ、ジ-C~Cアルキルアミノ、ハロゲン原子(Br又はCl)及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を含むことを意味する。
【0021】
本出願において、「アリールボロノ含有ビニル系モノマー」は、1つの結合によってその1つのみのエチレン系不飽和基に結合される1つのみのアリールボロノ基を含むビニル系モノマーを指す。
【0022】
本出願において、「アリールボロ」基は、それぞれフェニル基の1つの水素原子と置き換わる置換基として、1つのボロン酸基(すなわち、-B(OH))及び任意選択的に1つ又はそれ以上の他の基を有する置換フェニル基を指す。
【0023】
本出願において使用される場合、「ホスホリルコリン」という用語は、
【化3】

(式中、t1は1~5の整数であり、且つR、R’及びR’’は、互いに独立して、C~Cアルキル又はC~Cヒドロキシアルキルである)の一価の双性イオンの基を指す。
【0024】
「開始剤」は、フリーラジカル架橋/重合反応を開始することが可能である化学物質を指す。
【0025】
一般的に、本発明は、以下:約0.05w/v%~約5w/v%のガラクトマンナンポリマー;cis-ジオール、並びに、(a)それぞれがボロン酸を有するアリールボロノ含有繰り返し単位、(b)少なくとも1つのホスホリルコリン含有ビニル系モノマーの繰り返し単位、及び(c)3~16個の炭素原子を有する、少なくとも1つのアクリル系モノマーのアクリル系モノマー単位を含む、約0.5w/v%~約10w/v%の親水性コポリマーを含む眼用組成物であって、ボレートを実質的に含まない眼用組成物に関する。本発明は、ドライアイ、緑内障、眼球高血圧、感染症、アレルギー及び炎症を含む種々の眼科疾患を治療するためにこれらの組成物を使用する方法にも関する。
【0026】
商業的な入手可能な眼用組成物、例えば、Systane系製品は、グアー及びホウ酸を含む。天然グアーガラクトマンナンは水溶性多糖類であり、低濃度で水性溶液中に溶解される場合であっても、高い粘度が生じる。このような高い粘度は、一部では、その高い分子量と、ボレートイオンの存在下で生じる分子間会合による。天然グアーは、プロピレンオキシドで処理されて、より疎水性の表面活性ヒドロキシプロピルグアー(HP-グアー)を形成することが可能である。約7.5pHの眼涙液及び表面のpHに暴露されたら、Systane中のHP-グアーは、増加した粘度を有して、そして眼表面微環境を保護するために2つの粘滑剤の保持を促進するように設計される生体接着特性を有する「ソフト」ゲルを形成する。
【0027】
本発明は、潤滑、水和及びドラッグデリバリー特性を改善するための、(a)それぞれがボロン酸を有するアリールボロノ(arylborono)含有繰り返し単位、(b)少なくとも1つのホスホリルコリン含有ビニル系モノマーの繰り返し単位、及び(c)3~16個の炭素原子を有する、少なくとも1つのアクリル系モノマーのアクリル系モノマー単位を含む親水性コポリマーを提供することによって商業的に入手可能な眼用組成物を改良することである。加えて、眼用組成物は、ボレートを実質的に含まない。
【0028】
ボロン酸含有ポリマーは、1,2-又は1,3-ジオールと可逆的な共有結合複合体を形成する能力を有する。水性系中、ボロン酸は、解離していない中性の三方晶型(1)と、解離したアニオン四面体型(2)との間で平衡状態で存在する(スキーム1)。1,2-又は1,3-ジオールの存在下、中性ボロン酸とジオールとの反応によって形成される環式ボロン酸エステルは、一般的に加水分解的に不安定であると考えられる。他方、アニオン性ボロン酸エステルアニオン(2)とジオールとの反応によって、安定なボロン酸エステル(3)が導かれる。したがって、水性媒体中でボロン酸(1)に反応性ジオールを添加することの正味の効果は、アニオン型(2及び3)への平衡の変動である。その結果として、1,2-及び/又は1,3-ジオールを含有するグアーガラクトマンナンは、その高い分子量、及びボレートイオンの存在下と同様にボロン酸の存在下で生じる分子間会合のため、水溶液中に低濃度で溶解される場合であっても、高い粘度を形成することができる。したがって、本発明による眼用組成物は、ボレートを実質的に含まない。ボレートを実質的に含まないとは、0.1%W/V未満のボレート、好ましくは0.05%W/V未満のボレート、より好ましくは0.02%W/V未満のボレートを指す。
【0029】
ボロン酸含有ポリマーが、1,2-シス-ジオールと複合体を形成するその能力のため、ムチンに対して強い親和性を有することが考えられる。加えて、ボロン酸含有ポリマーは、眼内デリバリー特性を提供する。例えば、フェニルボロン酸(PBA)は、1,2-シス-ジオールと高親和性複合体を形成するその能力のため、グルコース検知及びインシュリンデリバリーシステムで広範囲に使用された合成分子である。ボロン酸とジオールとの間のこの親和性は、インターフェロンの膣内デリバリー、インシュリンの鼻内デリバリー及びシクロスポリンA(CycA)の眼内デリバリーなどの他の粘膜接着性ドラッグデリバリーシステムでも利用されている。
【0030】
有機リン酸基の生体膜様構造のため、ホスホリルコリン含有ポリマーが細胞適合性を増加させ、そして潤滑性を強化すると考えられている。加えて、ホスホリルコリン含有ポリマーは、非特異性タンパク質吸着を抑制し、細胞適合性を増加させ、生物付着防止特性及び生体適合性を強化し、そして保水性能を改善する。
【0031】
さらに、(a)それぞれがボロン酸を有するアリールボロノ(arylborono)含有繰り返し単位、(b)少なくとも1つのホスホリルコリン含有ビニル系モノマーの繰り返し単位、及び(c)3~16個の炭素原子を有する、少なくとも1つのアクリル系モノマーのアクリル系モノマー単位を含む親水性コポリマーは、湿潤を強化及び維持するために涙液膜の固定化ムチン層に付着する粘膜接着性ポリマーであると考えられる。
【化4】
【0032】
本発明によると、いずれのガラクトマンナンポリマーも本発明で使用することができる。本明細書で使用される場合、「ガラクトマンナン」という用語は、主な構成成分として、上記の天然ガム、又はマンノース若しくはガラクトース部分を含有する類似の天然若しくは合成ガム、又はその両方の群に由来する多糖体を意味する。好ましいガラクトマンナンポリマーは、(1-6)結合によって結合されたα-D-ガラクトピラノシル単位を有する(1-4)-β-D-マンノピラノシル単位の直鎖から構成される。好ましいガラクトマンナンポリマーに関して、D-ガラクトースとD-マンノースの比率は変動するが、一般的には約1:2~1:4となる。D-ガラクトース:D-マンノース比が約1:2のガラクトマンナンポリマーが最も好ましい。さらに、それらが1,3-ジオール部分を有する限り、他の化学修飾された多糖体の変形形態も「ガラクトマンナンポリマー」の定義に含まれる。例えば、ガラクトマンナンポリマーに、ヒドロキシエチル置換、ヒドロキシプロピル置換及びカルボキシメチルヒドロキシプロピル置換を行ってもよい。ガラクトマンナンポリマーに対する非イオン性の変形形態は、柔らかいゲルを所望する場合、アルコキシ基及びアルキル(C~C)基を含有するようなものが特に好ましい(例えば、ヒドロキシルプロピル置換)。非シスヒドロキシル位置における置換が最も好ましい。本発明のガラクトマンナンポリマーの非イオン性置換の例は、約0.4のモル置換を有するヒドロキシプロピルグアーである。また、アニオン性置換をガラクトマンナンポリマーに行ってもよい。強感応性ゲルが所望である場合、アニオン性置換は特に好まれる。
【0033】
ガラクトマンナンポリマーは、複数の供給源から得てもよい。そのような供給源としては、以下にさらに記載されるように、グアーガム、イナゴマメガム及びタラガムが挙げられる。さらに、ガラクトマンナンはまた、古典的な合成ルートによって得てもよく、又は自然発生のガラクトマンナンを化学修飾することによって得てもよい。
【0034】
グアーガムは、クラスタマメ(Cyamopisis tetragonolobus(L.)Taub)の粉砕した内胚乳である。この水溶性画分(85%)は「グアラン」(分子量220,000)と呼称され、(1-4)-β-Dマンノピラノシル単位及びα-D-ガラクトピラノシル単位とが(1-6)結合により結合された直鎖からなる。グアラン中のD-ガラクトース対D-マンノースの比率は約1:2である。このガムは何世紀にもわたってアジアで栽培されており、その増粘性のために、主として食品及びパーソナルケア製品中に使用されている。これは澱粉の5~8倍の増粘力を示す。その誘導体、例えばヒドロキシプロピル又はヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド置換体を含有するようなものは、10年以上にわたって市販されている。グアーガムは、例えばRhone-Polulenc(Cranbury,N.J.)、Hercules,Inc.(Wilmington,Del.)及びTIC Gum,Inc.(Belcamp,Md.)から入手することができる。
【0035】
イナゴマメガム又はキャロブマメガム(carob bean gum)は、キャロブツリー(carob tree,ceratonia siliqua)の種子の精製内胚乳である。この種類のガムのガラクトース対マンノースの比率は約1:4である。キャロブツリーの栽培は古く、当該技術分野では周知である。この種類のガムは市販されており、TIC Gum,Inc.(Bekamp,Md.)及びRhone-Polulenc(Cranbury,N.J.)から入手することができる。
【0036】
タラガムは、タラツリー(tara tree)の精製種子ガムに由来する。ガラクトース対マンノースの比率は約1:3である。タラガムは合衆国では商業製造されていないが、このガムは合衆国外の種々の供給源から入手可能である。
【0037】
架橋度を限定して、より軟質なゲル特性を与えるために、ヒドロキシプロピルグアーなどの化学修飾ガラクトマンナンが利用されてよい。種々な置換度の修飾ガラクトマンナンは、Rhone-Poulenc(Cranbury,N.J.)から商業的に入手可能である。低モル置換(例えば0.6未満)を有するヒドロキシプロピルグアーが特に好ましい。
【0038】
本発明によると、ガラクトマンナンポリマーは、典型的に、約0.05~約5w/v%、好ましくは約0.5~約2.0w/v%、より好ましくは約0.2~約1.5w/v%、最も好ましくは約0.25~約1.0w/v%の濃度で本明の眼用組成物中に存在する。本発明の好ましいガラクトマンナンポリマーは、グアー及びヒドロキシプロピルグアーである。
【0039】
本発明によると、親水性コポリマーは、(a)約1モル%~約20モル%(好ましくは約1モル%~約20モル%、より好ましくは約2モル%~約15モル%)のそれぞれがボロン酸を有するアリールボロノ含有繰り返し単位、(b)約60モル%~約98モル%(好ましくは約60モル%~約97モル%、より好ましくは約70モル%~約95モル%)の少なくとも1つのホスホリルコリン含有ビニル系モノマーの繰り返し単位、及び(c)約1モル%~約20モル%(好ましくは約2モル%~約20モル%、より好ましくは約3モル%~約15モル%)の、3~16個(好ましくは3~14、より好ましくは3~12、さらにより好ましくは3~10)の炭素原子を有する、少なくとも1つのアクリル系モノマーのアクリル系モノマー単位を含むが、ただし、成分(a)、(b)及び(c)並びに上記されていない他の成分のモル百分率の合計は100%である。
【0040】
本発明によると、親水性コポリマーのそれぞれの種類の繰り返し単位(すなわち、モノマー単位)のモル百分率は、親水性コポリマーを形成するための重合性組成物中の、この種類の繰り返し単位が誘導されるビニル系モノマーのモル百分率に基づいて決定することが可能である。
【0041】
本発明によると、それぞれの種類のアリールボロノ含有繰り返し単位は、アリールボロノ含有ビニル系モノマーから、好ましくは式(I)
【化5】

[式中、Rは、H、NO、F、Cl又はCFであり;Qは、
【化6】

の一価ラジカルであり、Lは、直接結合、C~Cアルキレン二価ラジカル、
【化7】

(式中、Yは、CH(OH)又はC~Cアルキレン二価ラジカルであり、Yは、C~Cアルキレン二価ラジカルであり、且つRは、H又はC~Cアルキルである)の二価ラジカルである]のアリールボロノ含有ビニル性モノマーから直接誘導することが可能である。
【0042】
式(I)のアリールボロノ含有ビニル系モノマーの例としては、限定されないが、3-ビニルフェニルボロン酸、4-ビニルボロン酸、3-(メタ)アクリルアミドフェニルボロン酸、4-(メタ)アクリルアミドフェニルボロン酸、(メタ)アクリル酸ハライドとのアミノ含有フェニルボロン酸誘導体の反応生成物、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド又はその混合物)及びN-ヒドロキシスクシンイミドの存在下でのカルボキシ含有ビニル系モノマーとのアミノ含有フェニルボロン酸誘導体の反応生成物、カルボジイミド(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド又はその混合物)及びN-ヒドロキシスクシンイミドの存在下でのアミノ含有ビニル系モノマーとのカルボキシ含有フェニルボロン酸誘導体の反応生成物、並びにその組合せが挙げられる。
【0043】
ホスホリルコリン含有ビニル系モノマーの例としては、限定されないが、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(別名、MPC又は2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート)、(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン(別名、3-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート)、4-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-[(メタ)アクリロイルアミノ]エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、3-[(メタ)アクリロイルアミノ]プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-[(メタ)アクリロイルアミノ]ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)-エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブテノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、並びにその組合せが挙げられる。
【0044】
3~16個の炭素原子を有するアクリル系モノマーの例としては、限定されないが、C1~C12アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリレート、NH2置換C2~C12アルキル(メタ)アクリレート、メチルアミノ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリレート、エチルアミノ置換C2~C10アルキル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ置換C2~C8アルキル(メタ)アクリレート、C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、カルボキシ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、NH2置換C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノ置換C2~C12アルキル(メタ)アクリルアミド、エチルアミノ置換C2~C10アルキル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノ置換C2~C8アルキル(メタ)アクリルアミド、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、テトラ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、並びにその組合せが挙げられる。
【0045】
本発明によると、眼用組成物は、ボレートを実質的に含まない。ボレートを実質的に含まないとは、0.1%W/V未満のボレート、好ましくは0.05%W/V未満のボレート、より好ましくは0.02%W/V未満のボレートを指す。本発明の組成物に使用され得るボレート化合物は、ホウ酸と、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、ホウ酸カリウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガン及びその他のそのようなホウ酸塩などの製薬的に許容される他の塩である。本明細書で使用される場合、「ボレート」という用語は、製薬的に適する全ての形態のボレートを意味する。ボレートは、生理的pHにおける良好な緩衝能力と、周知の安全性と、広範囲な薬物及び防腐剤に対する適合性とのために、眼用製剤における共通の賦形剤である。ボレートは固有の制菌性及び殺菌性をも有するので、組成物の保存を補助する。
【0046】
ガラクトマンナンポリマー及び親水性コポリマーの具体的な量は、具体的な所望のゲル化特性によって変化するということは理解される。一般に、ゲル活性時に(即ち、投与後に)眼用組成物の適当な粘度に達するために、親水性コポリマー又はガラクトマンナンポリマーの濃度を操作することができる。強度なゲル化組成物が所望の場合、ボレート又はガラクトマンナンポリマーの濃度を高めればよい。例えば部分ゲル化組成物などの、より弱いゲル化組成物が所望の場合、親水性コポリマー又はガラクトマンナンポリマーの濃度を低減すればよい。塩、防腐剤、キレート化剤などの組成物中の追加成分の性質及び濃度などの他の要素も、本発明の組成物のゲル化特性に影響を及ぼし得る。一般に、本発明の好ましい未ゲル化組成物、即ち、眼によってまだゲル活性化されていない組成物は、約5~1000cpsの粘度を有する。一般に、本発明の好ましい、ゲル化した組成物、すなわち、眼によってゲル活性化された組成物は、約50~50,000cpsの粘度を有する。
【0047】
親水性コポリマー及びガラクトマンナン中のボロン酸の架橋は、中でもpHなどの因子によって影響され、そしてそのような架橋及び親水性コポリマーの分子量は、次に溶液の粘度に影響を及ぼす。
【0048】
好ましい実施形態において、本発明の眼用組成物は、約6.5~約8.5、好ましくは約7.0~約8.0で調製され得、そしてゲル化を活性化するためにわずかなpH変化のみを必要とする(すなわち、約0.5~1.0pH単位)。配合物が適用されるか、又は投与される組織に適合する生理的pHを有する局所用配合物(特に上記の局所用眼用配合物)が好ましい。
【0049】
別の好ましい実施形態において、本発明の眼用組成物は、ガラクトマンナンポリマーと親水性コポリマーの架橋結合を抑制する濃度で少なくとも1つのcis-ジオール化合物を含む。点眼後、cis-ジオール化合物は天然涙液膜によって希釈され、ガラクトマンナンポリマー及び親水性コポリマーの架橋の段階的な増加を可能にする。これは、粘度及び弾性の段階的な増加に相当する。粘度、架橋及び弾性のこのような段階的な増加は、有効な拡散と、コンタクト上でのより少ないかすみを可能にするが、長期にわたる潤滑及び角膜表面保護も提供する。cis-ジオール化合物は、隣接する炭素原子に結合するヒドロキシル基を含む任意の化合物である。例示的なcis-ジオール化合物としては、限定されないが、親水性炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニトール)、プロピレングリコール、グリセロール及びその組合せが挙げられる。本発明の好ましいcis-ジオール化合物としては、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール及びその組合せが挙げられる。cis-ジオール化合物は、本発明の組成物の約0.5~5.0w/v%、好ましくは約0.5~2.0w/v%の濃度で存在する。
【0050】
本発明の眼用組成物は、塩化マグネシウムなどの製薬的に許容される二価カチオン塩を任意選択的に含む。カルシウムなどの二価カチオンは、一般に架橋挙動を強化するために、ガラクトマンナン及びボレートと相互作用する。ガラクトマンナン及びボレート含有配合物中に存在する場合、二価カチオンはそのような配合物の全体的な粘度を増加させることができる。二価カチオンとしては、限定されないが、マグネシウム、クロリド及び亜鉛カチオンが挙げられる。一般に、二価カチオンの濃度は0~0.25w/v%でなければならない。
【0051】
本発明の眼用組成物は、1つ又はそれ以上の追加的な賦形剤及び/又は1つ又はそれ以上の追加的な活性成分を任意選択的に含み得る。製薬配合物で一般に使用される賦形剤としては、限定されないが、粘滑剤、等張化剤、保存剤、キレート試薬、緩衝剤及び界面活性剤が挙げられる。他の賦形剤としては、可溶化剤、安定化剤、快適性増強剤、ポリマー、緩和剤、pH調整剤及び/又は潤滑剤が挙げられる。水、水と、C1~C7アルカノールなどの水混和性溶媒との混合物、0.5~5%の非毒性水溶性ポリマーを含む植物油又は鉱油、天然生成物、例えばアルギナート、ペクチン、トラガカントガム、カラヤガム、キサンタンガム、カラゲーニン、寒天及びアカシア、澱粉誘導体、例えば澱粉アセテート及びヒドロキシプロピル澱粉、並びに他の合成生成物、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、好ましくは架橋ポリアクリル酸及びそれらの生成物の混合物を含む、様々な賦形剤のいずれの緩衝剤も本発明の配合物中で使用され得る。
【0052】
本発明の実施形態で使用される粘滑剤としては、限定されないが、グリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド-ポリブチレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、プロピレングリコール、ポリアクリル酸及びその組合せが挙げられる。特に好ましい粘滑剤は、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール400である。
【0053】
適切な等張化剤としては、限定されないが、マンニトール、塩化ナトリウム、グリセリンなどが挙げられる。適切な緩衝剤としては、限定されないが、ホスフェート、アセテートなど、並びにアミノアルコール、例えば2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)が挙げられる。適切な界面活性剤としては、限定されないが、イオン性及び非イオン性界面活性剤が挙げられるが、非イオン性界面活性剤が好ましく、RLM 100、POE 20 セチルステアリルエーテル、例えばProcol(登録商標)CS20、及びポロクサマー、例えばPluronic(登録商標)F68、並びにブロックコポリマー、例えばポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシブチレン)化合物が挙げられ、これは米国特許出願公開第2008/0138310号明細書に記載されている。
【0054】
本明細書に記載される組成物は、1つ又はそれ以上の保存剤を含み得る。そのような保存剤の例としては、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、ペロオキシホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、アルコール、例えばクロロブタノール、ベンジルアルコール又はフェニルエタノール、グアニジン誘導体、例えばポリヘキサメチレンビグアナイド、ペロオキシホウ酸ナトリウム、ポリクオタニウム-1(別名、POLYQUAD(登録商標)若しくはONAMERM(登録商標))、又はソルビン酸が挙げられる。眼用組成物中での低分子量アミノアルコールの使用が記載される。本明細書に記載される組成物は、抗菌性保存剤の有効性を強化するために、低分子量アミノアルコール(60~200グラム/モルの分子量)を含み得る。アミノアルコールは、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-ジメチルアミノ-メチル-1-プロパノール(DMAMP)、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール(AEPD)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、2-アミノ-1-ブタノール(AB)又はその組合せである。特定の実施形態において、保存剤が必要とされないように、組成物は自己保存され得る。
【0055】
本発明の組成物は、被験者の眼への適用に関して眼科学的に適切である。「水性」という用語は、典型的に、賦形剤が50重量%より多い、より好ましくは75重量%より多い、特に90重量%より多い水である水性配合物を意味する。これらの液滴は、好ましくは滅菌されて、したがって配合物の静菌成分を不必要にし得る単一投与アンプルから供給されてよい。代わりに、液滴は、当該技術において既知であるデバイスなどの、それが供給されると、いずれかの保存剤を配合物から抽出するデバイスを好ましくは含み得る複数投与ボトルから供給されてもよい。
【0056】
本発明の組成物は、蒸発及び/又は疾病によって引き起こされる涙液のいずれの高張性も防止するために、好ましくは等張性であるか、又はわずかに低張性である。これは、配合物のモル浸透圧濃度(osmolality)を1キログラムあたり210~320ミリオスモル(mOsm/kg)又はその付近のレベルにするための等張化剤に必要とし得る。本発明の組成物は、一般に220~320mOsm/kgの範囲のモル浸透圧濃度を有し、好ましくは235~300mOsm/kgの範囲のモル浸透圧濃度を有する。眼用組成物は、滅菌水溶液として一般に調製される。
【0057】
別の好ましい実施形態において、本発明の眼用組成物は、水溶液である。
【0058】
別の好ましい実施形態において、本発明の眼用組成物は、本発明のリン脂質を含有する親水性コポリマーと、実質的に別個であり分離している小液滴として連続水又は水相を通して分散させた少なくとも1つの眼用油とを含むエマルジョンである。本明細書で使用される場合、別個であり分離した相とは、いずれかの時点で、液滴が別個であり分離していることを意味することは理解されるべきである。しかしながら、エマルジョンの液滴は、平均液滴径又は直径を維持するために、経時的に組み合わせることができ、分離させることができる。本発明のエマルジョンの液滴は、典型的に約1500ナノメートル(nm)以下、より典型的に約1000nm以下、さらにより典型的に約600nm以下の平均直径を有する。これらの液滴は、典型的に少なくとも2nm、より典型的に少なくとも10nm、さらにより典型的に少なくとも100nmの平均直径を有する。
【0059】
エマルジョン油液滴径を決定するために、粒径又は液滴径分析器が使用されてもよい。例えば、Microtrac S3500 Particle Size Analyzer(Software Version 10.3.1)は、エマルジョン油液滴径を測定するため使用することができるトリレーザー粒径分析器である。その特定の分析器は、流動流中で粒子(例えば液滴)から回折する(散乱する)レーザー光を測定する。2台の光学検出器によって散乱光の強度及び方向が測定される。ソフトウェアによる回折パターンの数学的分析によって、液滴径の体積分布が得られる。体積による累積的なアンダーサイズ分布の90%に相当する液滴直径が使用される。
【0060】
親水性コポリマー中に含まれるリン脂質が涙液膜脂質層を強化及び/又は安定させることができると考えられている。脂質層を安定化することによって、水蒸発を減少させることができ、そして眼の乾燥の症状は緩和され得る。リン脂質がエマルジョンの安定性を維持することを助け、そして眼用油の液滴径を減少することを助けることができるとも考えられている。
【0061】
眼用油の例としては、限定されないが、多数の鉱油、植物油、合成物質、及び/又は動物性及び植物性脂肪、又は油のいずれかの組合せが挙げられる。油は、エーテルなどの種々の有機溶媒中で可溶性であるが、水中では溶解しない。油相は、所望であれば、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質、脂肪アルコール、C12~C28の鎖長を有する炭化水素、ワックスエステル、脂肪酸、鉱油及びシリコーンオイルを含むことができる。鉱油は特に好ましい。シリコーンオイルも使用され得る。油相は、ワックス様炭化水素、例えばパラフィンワックス、水素化ヒマシ油、Synchrowax HRC、Carnauba、蜜蝋、変性蜜蝋、微結晶ワックス及びポリエチレンワックスを追加的に含んでもよい。油は、典型的にエマルジョンの少なくとも0.01w/v%、より典型的に少なくとも0.1w/v%、より典型的に0.8w/v%である。油は、典型的にエマルジョンの約20w/v%以下、より典型的に約5w/v%以下、より典型的に約3つ又はさらには1.5w/v%以下である。
【0062】
エマルジョンは、典型的に親水性界面活性剤(高HLB)及び疎水性(低いHLB)界面活性剤も含む。本発明のエマルジョンは、ドライアイの治療のために使用されることが最も望ましい。しかしながら、限定されないが、エマルジョンがドラッグデリバリー、ビタミンデリバリー、ボタニカルリバリー、コンタクトレンズ湿潤及びコンタクトレンズ潤滑のために使用され得ることも考えられる。
【0063】
本発明のエマルジョンは、典型的に、エマルジョンの乳化を補助する乳化剤として作用する2種以上の界面活性剤を組み込む。典型的に、これらの界面活性剤は非イオン性である。エマルジョン中の乳化界面活性剤の濃度は、0.1~10%w/vの範囲、そして多くの例で0.5~5%w/vの範囲で選択されることが多い。親水性であり、且つ少なくとも8、しばしば少なくとも10(例えば10~18)のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤/界面活性剤を選択することが好ましい。疎水性であり、且つ8未満、特に1~6のHLB値を有する少なくとも1つの乳化剤/界面活性剤を選択することがさらに好ましい。適切な比率で一緒に2つの界面活性剤/乳化剤を利用することによって、エマルジョンの形成を促進する加重平均HLB値を達成することは容易に可能である。本発明によるほとんどのエマルジョンに関して、平均HLB値は、約6~12の範囲、そして多くに関して7~11の範囲で選択される。例えば、例示的な界面活性剤及び鉱油のHLB値は以下の通りである:疎水性界面活性剤(2.1)、親水性界面活性剤(16.9)及び鉱油(10.5)。
【0064】
親水性界面活性剤は、典型的に、少なくとも約0.01w/v%、より典型的に少なくとも約0.08w/v%、より典型的に少なくとも約0.14w/v%の量でエマルジョン中に存在する。親水性界面活性剤は、典型的に、約1.5w/v%以下、より典型的に約0.8w/v%以下、より典型的に約0.44w/v%以下の量でエマルジョン中に存在する。
【0065】
親水性界面活性剤は、脂肪酸、エステル、エーテル、酸又はそのいずれかの組合せであることが可能である。親水性界面活性剤はイオン性又は非イオン性であり得るが、好ましくは非イオン性である。多くの適切な界面活性剤/乳化剤は、しばしば約2~80、特に5~60のオキシエチレン単位を含有するポリオキシアルキレン部分、特にポリオキシエチレン部分を含む非イオン性エステル又はエーテル乳化剤であり、且つ/又は親水性部分として多価化合物、例えばグリセロール若しくはソルビトール若しくは他のアルジトールを含有する。親水性部分は、ポリオキシプロピレンを含むことができる。乳化剤は、追加的に、通常8~50個の炭素、特に10~30個の炭素を含有する疎水性アルキル、アルケニル又はアラルキル部分を含む。親水性界面活性剤/乳化剤の例としては、セテアレス-10~25、セテス-10-25、ステアレス-10-25及びPEG-15-25ステアレート又はジステアレートが挙げられる。他の適切な例としては、C10~C20脂肪酸モノ、ジ又はトリグリセリドが挙げられる。さらなる例としては、ポリエチレンオキシドのC18~C22脂肪アルコールエーテル(8~12EO)が挙げられる。1つの特に好ましい親水性界面活性剤は、商品名MYRJ-52で販売されるポリオキシエチレン-40-ステアレートであり、これはNikko Chemicalsから商業的に入手可能である。
【0066】
疎水性界面活性剤は、典型的に、少なくとも約0.01w/v%、より典型的に少なくとも約0.11w/v%、より典型的に少なくとも約0.16w/v%の量でエマルジョン中に存在する。疎水性界面活性剤は、典型的に、約10.0w/v%以下、より典型的に約2.0w/v%以下、より典型的に約0.62w/v%以下の量でエマルジョン中に存在する。
【0067】
疎水性界面活性剤は、脂肪酸、エステル、エーテル、酸又はそのいずれかの組合せであることが可能である。疎水性界面活性剤はイオン性又は非イオン性であり得るが、好ましくは非イオン性である。疎水性界面活性剤は、典型的に疎水性部分を含む。疎水性部分は、直鎖状又は分岐状であることが可能であり、飽和であることが多いが、不飽和であることも可能であり、任意選択的にフッ素化されている。疎水性部分は、複数の鎖長の混合物、例えば、タロー、ラード、パーム油、ヒマワリ種子油又は大豆油から誘導されるものを含むことができる。そのような非イオン性界面活性剤は、グリセロール又はソルビトール又は他のアルジトールなどの多価化合物から誘導されることも可能である。疎水性界面活性剤の例としては、限定されないが、ソルビタン脂肪酸エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン(sorbitan monoleate)、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、その組合せなどが挙げられる。1つの特に好ましい疎水性界面活性剤は、Croda Worldwideから商業的に入手可能である商品名SPAN-65で販売されるトリステアリン酸ソルビタンである。
【0068】
本発明のエマルジョンは、当業者に既知の様々な組合せ及び混合プロトコル及び技術を使用して形成され得る。しかしながら、1つの好ましい実施形態によると、成分は特定のプロトコルに従って混合及び組み合わせられる。そのようなプロトコルにおいて、複数の混合物が形成され、そしてそれらの混合物を組み合わせて、エマルジョンを形成する。第1の混合物は、高温で油及び界面活性剤を混合して、油相混合物を形成することによって形成される。第2の混合物は、高温でアニオンリン脂質を純水に混入して、水相混合物を形成することによって形成される。その後、油相混合物及び水相混合物を高温で混合し、その後、ホモジナイザーを使用して均質化して、初期エマルジョンを形成する。第3の混合物は、ガラクトマンナンポリマーと水とを混合して、必要に応じてpHを調整し、ガラクトマンナンポリマースラリーを形成することによって形成される。次いで、ガラクトマンナンポリマースラリーを初期エマルジョンと混合し、そしてポリマー強化エマルジョンを形成する。第4の混合物は、以下:ボレート、ポリオール、保存剤及び他のいずれかの成分のいずれかの組合せを混合して、塩溶液を形成することによって形成される。次いで、塩溶液及び強化エマルジョンを混合し、続いて、水及びpH調整剤の十分量(Q.S.)の添加が行われる。
【0069】
本発明の組成物は、製薬的に活性な化合物及び製薬的に許容されるその塩を投与するために使用されることも可能である。そのような化合物としては、限定されないが、麻酔剤、緑内障治療剤、鎮痛剤、抗高血圧剤、神経保護剤、粘液分泌促進剤、血管抑制剤、抗血管形成剤、成長因子、免疫抑制剤、麻酔剤、抗感染剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗血管形成剤、抗近視剤、抗アレルギー剤、ドーパミン作用性拮抗剤、タンパク質及び抗菌剤が挙げられる。
【0070】
緑内障治療剤(又は抗緑内障剤)の例としては、限定されないが、ベタキソロール、チモロール、ピロカルピン、レボベタキソロール、アプラクロニジン、ブリモニジン、炭酸脱水酵素抑制剤(例えばブリンゾールアミド及びドルゾラミド)、並びにプロスタグランジン(例えば、トラボプロスト、ビマトプロスト及びラタノプロスト)が挙げられる。
【0071】
抗感染剤の例としては、限定されないが、シプロフロキサシン及びトブラマイシンが挙げられる。
【0072】
抗炎症剤としては、非ステロイド性及びステロイド性抗炎症剤、例えばトリアムシノロンアクチニド、ナプロキセン、スプロフェン、ジクロフェナク、ケトロラク、ネパフェナク、リメキソロン、テトラヒドロコルチゾール及びデキサメタゾンが挙げられる。
【0073】
抗高血圧症剤の例としては、限定されないが、パラ-アミノクロニジン(アプラクロニジン)が挙げられる。
【0074】
成長因子の例としては、限定されないが、上皮細胞増殖因子(EGF)及び血管内皮成長因子(VEGF)が挙げられる。
【0075】
抗アレルギー剤の例としては、限定されないが、オロパタジン、エピナスチン、ケトチフェン、エメダスチン、クロモリンが挙げられる。
【0076】
抗ウイルス剤の例としては、限定されないが、ガンシクロビル及びバルガンシクロビルが挙げられる。
【0077】
抗近視剤の例としては、限定されないが、アトロピン、ピレンゼピン及びその誘導体が挙げられる。
【0078】
抗血管形成剤としては、アネコルタブアセテート(RETAANE(登録商標))及び受容体型チロシンキナーゼ抑制剤(RTKi)が挙げられる。
【0079】
局所麻酔剤は、一般に化学物質構造に基づき、2つの種類:「アミド」及び「エステル」に分類することができる。Ophthalmic Drug Facts’99,Facts and Comparisons,St.Louis,Mo.(1999),Ch.3を参照のこと。適切な麻酔剤の例としては、プロパラカイン、リドカイン、コカイン、オキシブプロカイン、ベノキシネート、ブタカイン、メピバカイン、エチドカイン、ジブカイン、ブピバカイン、レボブピバカイン、テトラカイン及びプロカインが挙げられる。レボブピバカイン、プロパラカイン及びテトラカインが最も好ましい。
【0080】
本発明の眼用組成物は、ドライアイ状態の徴候を軽減する治療剤、冷却剤、酸化防止剤(オメガ-3及びオメガ-6脂肪酸)、栄養(例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、トコフェロール、ビタミンK、ベータカロチン)及び眼用用途に関する他の生理活性物質のデリバリーに関して特に有用となる可能性がある。一般に、使用される場合、治療剤の量は、使用される薬剤次第で非常に変動することが可能である。そのように、治療剤の濃度は、少なくとも約0.005w/v%、より典型的に少なくとも約0.01w/v%、さらにより典型的に少なくとも約0.1w/v%であるが、典型的に約10w/v%以下、より典型的に約4.0w/v%以下、さらにより典型的に約2.0w/v%以下であることが可能である。
【0081】
任意選択的に、本発明の組成物は、製薬的に活性な化合物を含まずに調製されてもよい。そのような組成物は、眼を潤滑させるか、又は例えばドライアイを治療するための人工涙液溶液を提供するために使用され得る。一般に、人工涙液溶液は、上記の通り、等張化剤、ポリマー及び保存剤を含む。人工涙液溶液に含まれるガラクトマンナン及び親水性コポリマーの量は、上記の通り変動するが、一般に、それぞれ、0.1~1.0%(w/v)及び0.1~4.0%(w/v)であろう。
【0082】
本発明の組成物は、追加的な、又は代わりのポリマー成分及び/又は粘度剤を含み得る。例としては、限定されないが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ヒアルロン酸、そのいずれかの組合せなどが挙げられる。
【0083】
本発明によると、本発明の組成物は1日1回投与される。しかしながら、組成物は、1週間に1回、5日おきに1回、3日おきに1回、2日おきに1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日8回、1時間ごと、又はより高い頻度を含む、いずれかの投与の頻度での投与のために調製されてもよい。また、そのような投与頻度は、治療療法次第で様々な期間で維持される。特定の治療療法の期間は、1回限りの投与から数ヶ月又は数年間の長期療法まで様々であり得る。当業者は、特定の指標に関して治療療法を決定することに精通しているであろう。
【0084】
特定の用語、デバイス及び方法を使用して本発明の種々の実施形態が記載されたが、そのような記載は例証目的のみのためである。使用される用語は、制限する意味よりも、むしろ説明のための用語である。以下の請求の範囲において明示される本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、当業者は変化及び変更を実施してもよいことは理解される。加えて、以下に示すように、種々の実施形態の態様が、全体的に、又は部分的に交換され得るか、或いはいずれかの様式で組み合わせられることが可能であり、且つ/又は一緒に使用されることが可能であることは理解されるべきである。
【0085】
上記開示によって、当業者が本発明を実施することが可能となる。本明細書に記載される種々の実施形態に、種々の修正、変更及び組合せを実施することができる。読者の特定の実施形態及びその利点の理解をより十分可能にするために、以下の実施例への参照が提案される。明細書及び実施例は例示的であると考えられることが意図される。
【実施例
【0086】
化学物質
以下の実施例では、以下の略語が使用される:NVPは、N-ビニルピロリドンを表し;VPBAは、4-ビニルフェニルボロン酸を表し;PVAは、ポリビニルアルコールを表し;MPCは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを表し;PEG300MAは、300ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するポリエチレングリコールモノメタクリレートを表し;PEG950MAは、950ダルトンの数平均分子量(Mn)を有するポリエチレングリコールモノメタクリレートを表し;DMAは、N,N-ジメチルアクリルアミドを表し;BMAは、n-ブチルメタクリレートを表し;DGMEMAは、ジ(エチレングリコール)メタクリレートを表し;AAPH(Vazo-56)は、2,2’-アゾビス-(2-アミジノプロパンジヒドロクロリドを表し;DI水は、脱イオン水を表し;βMEは、β-メルカプトエタノールを表し;HPMCは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを表し;PEG400は、400ダルトンの数平均分子量を有するポリエチレングリコールを表し、AMPは、2-アミノ-2-メチルプロパノールを表す。
【0087】
実施例1
ターポリマー-ポリ(PEG200MA-co-MPC-co-VPBA)ターポリマーの合成
約1.011gのVPBAを25.0gのPrOH中に溶解して、VPBA溶液を得る。これを、5μmのナイロンフィルターを備えたシリンジによって、Nインレット、オーバーヘッド撹拌器、熱電対、冷却器及びバブラーを備えた500mLの反応器に導入する。約12.278gのPEG200MAを20.0gのDI水中に溶解し、反応器中に注ぎ入れ、追加的な15.0gのDI水中ですすぐ。約6.714gのMPCを20.0gのDI水中に溶解し、反応器中に注ぎ入れ、追加的な15.0gのDI水中ですすぐ。約00693gのAAPHを5.0gの脱イオン水中に溶解し、反応器中に注ぎ入れ、追加的な2×5.0gの脱イオン水、続いて、5.0gの脱イオン水及び65.0gのn-プロパノール中ですすぐ。約3.65mLのメルカプトエタノール(βME)溶液(100mLのDI水中0.274gのβME)をマイクロピペットで添加する。
【0088】
150rpmで撹拌しながら、20℃で30分間、窒素(200mL/分)を用いて反応溶液をパージする。窒素フローをブランケットまで低下させ、そして共重合溶液を以下の予定通りに加熱する:2時間かけて61℃に到達させる;約8時間、61℃に維持する;そして2時間かけて20℃まで冷却する。
【0089】
表1で示される様々な量及び種類のビニル系モノマーを除き、上記される手順に従って、種々のコポリマー(2元系又は3元系)を調製する。
【0090】
【表1】
【0091】
実施例2
3元系コポリマーの合成
ポリ(MPC0.4-co-NVP0.5-co-VPBA0.1
20mlのバイアル中、1.18g(4ミリモル)のMPC、0.556g(5ミリモル)のNVP及び0.148g(1ミリモル)のVPBAを添加し、そして10mlのエタノール、vazo64 1.64mg(0.01ミリモル)を添加する。酸素を除去するために窒素ガスを5分間、溶液中に穏やかにバブリングし、そしてバイアルを密閉する。重合を6時間、60℃で実行する。バイアルの冷却後、含有物を多量のジエチルエーテル及びクロロホルム(体積比8/2)の混合物中に注ぎ入れ、いずれの残留モノマーも除去し、ポリマーを沈澱させる。ガラスフィルターを使用して沈殿物を濾過し、真空乾燥させる。
【0092】
ポリ(MPC0.6-co-BMA0.3-co-VPBA0.1
20mlのバイアル中、1.77g(6ミリモル)のMPC、0.426g(3ミリモル)のBMA及び0.148g(1ミリモル)のVPBAを添加し、そして10mlのエタノール、vazo64 1.64mg(0.01ミリモル)を添加する。酸素を除去するために窒素ガスを5分間、溶液中に穏やかにバブリングし、そしてバイアルを密閉する。重合を6時間、60℃で実行する。バイアルの冷却後、含有物を多量のジエチルエーテル及びクロロホルム(体積比8/2)の混合物中に注ぎ入れ、いずれの残留モノマーも除去し、ポリマーを沈澱させる。ガラスフィルターを使用して沈殿物を濾過し、真空乾燥させる。得られたコポリマーは、150KDaの重量平均分子量(Mw)を有することが決定される。
【0093】
ポリ(MPC0.8-co-BMA0.1-co-VPBA0.1
20mlのバイアル中、2.36g(8ミリモル)のMPC、0.142g(1ミリモル)のBMA及び0.148g(1ミリモル)のVPBAを添加し、そして10mlのエタノール、vazo64 1.64mg(0.01ミリモル)を添加する。酸素を除去するために窒素ガスを5分間、溶液中に穏やかにバブリングし、そしてバイアルを密閉する。重合を6時間、60℃で実行した。バイアルの冷却後、含有物を多量のジエチルエーテル及びクロロホルム(体積比8/2)の混合物中に注ぎ入れ、いずれの残留モノマーも除去し、ポリマーを沈澱させる。ガラスフィルターを使用して沈殿物を濾過し、真空乾燥させる。得られたコポリマーは、160KDaの重量平均分子量(Mw)を有することが決定される。
【0094】
ポリ(MPC0.8-co-BMA0.1-co-VPBA0.1
40mlのバイアル中、4.72g(16ミリモル)のMPC、0.285g(2ミリモル)のBMA及び0.296g(2ミリモル)のVPBAを添加し、そして20mlのエタノール、vazo64 3.2mg(0.02ミリモル)を添加する。酸素を除去するために窒素ガスを5分間、溶液中に穏やかにバブリングし、そしてバイアルを密閉する。重合を6時間、60℃で実行する。バイアルの冷却後、含有物を多量のジエチルエーテル及びクロロホルム(体積比8/2)の混合物中に注ぎ入れ、いずれの残留モノマーも除去し、ポリマーを沈澱させる。ガラスフィルターを使用して沈殿物を濾過し、真空乾燥させる。得られたコポリマーは、286KDaの重量平均分子量(Mw)を有することが決定される。
【0095】
ポリ(MPC0.8-co-BMA0.1-co-VPBA0.1
40mlのバイアル中、4.72g(16ミリモル)のMPC、0.285g(2ミリモル)のBMA及び0.296g(2ミリモル)のVPBAを添加し、そして20mlのエタノール、vazo64 1.3mg(0.01ミリモル)を添加する。酸素を除去するために窒素ガスを5分間、溶液中に穏やかにバブリングし、そしてバイアルを密閉する。重合を6時間、60℃で実行する。バイアルの冷却後、含有物を多量のジエチルエーテル及びクロロホルム(体積比8/2)の混合物中に注ぎ入れ、いずれの残留モノマーも除去し、ポリマーを沈澱させる。ガラスフィルターを使用して沈殿物を濾過し、真空乾燥させる。得られたコポリマーは、386KDaの重量平均分子量(Mw)を有することが決定される。
【0096】
ポリ(MPC0.8-co-BMA0.1-co-VPBA0.1
40mlのバイアル中、4.72g(16ミリモル)のMPC、0.285g(2ミリモル)のBMA及び0.296g(2ミリモル)のVPBAを添加し、そして10mlのエタノール、vazo64 3.2mg(0.02ミリモル)を添加する。酸素を除去するために窒素ガスを5分間、溶液中に穏やかにバブリングし、そしてバイアルを密閉する。重合を6時間、60℃で実行する。バイアルの冷却後、含有物を多量のジエチルエーテル及びクロロホルム(体積比8/2)の混合物中に注ぎ入れ、いずれの残留モノマーも除去し、ポリマーを沈澱させる。ガラスフィルターを使用して沈殿物を濾過し、真空乾燥させる。得られたコポリマーは、688KDaの重量平均分子量(Mw)を有することが決定される。
【0097】
実施例3
3元系コポリマーの合成
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)(Mw=295.27)、4-ビニルフェニルボロン酸(VPBA、Mw=147.97)、任意選択的に第3のモノマー(n-ブチルメタクリレート(BMA、Mw=142.20)又はジ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(DGMEMA、Mw=188.22)、エタノール及びDI水を表8に示される量で1Lのジャケット付き反応器中に添加する。250mL/分の窒素フロー速度で30分間、溶液を脱気する。20~30gのDI水中にVazo-56を溶解する。滴下漏斗中約50mL/分の窒素フロー速度で30分間、開始剤溶液を脱気する。反応器中で溶液を49℃まで加熱する。開始剤溶液を添加し、16時間、溶液温度を維持する。
【0098】
精製:
反応後、DI水を用いて、固形分約10%まで溶液を希釈する。粗いフリット付きのフィルターを通して、合成ステップからので溶液を濾過する。30kDaの分画分子量を有するポリエーテルスルホン膜を使用する限外濾過による精製のため、固形分7.5~5.0%まで溶液を希釈する。残留モノマー及び溶媒を取り除くために、8~10ベッド体積(bed volume)の水を使用する。
【0099】
ポリマー特徴決定:
コポリマーのボロン酸含有量は、マンニトールの存在下、酸塩基滴定を実行することによって決定される。結果を表2に報告する。
【0100】
コポリマーの重量平均分子量は、RI検出器及びPEG標準を用いて、GPCを使用して決定される。結果を表2に報告する。
【0101】
【表2】
【0102】
実施例4
眼用組成物
対照1、対照2及び実験2の溶液を下記の組成物(%w/w)として調製する(表3)。%w/wとして提案される量の成分は、ガラスボトル中で量られる。溶液は、完全溶解するまで室温で撹拌される。濾過は、5μmフィルターで実施する。溶液を45分間、121℃でオートクレーブ処理する。通常のpHメーターによって、各溶液のpH値を測定する。
【0103】
【表3】
【0104】
剪断速度に対する粘度:
高剪断速度(4000秒-1)での溶液粘度を調査するために、0.1N HCl(水)を用いてC1及びE2の溶液のpHをpH7.9に調整する。溶液の粘度は、RheoSense microVISC Portable Viscometerで実施される。操作モードは、それぞれ、100秒-1、1000秒-1及び4000秒-1の剪断速度でAdvancedとして設定される。処置温度は34℃に設定される。4000秒-1の剪断速度で、E2はC2より高い粘度を示した。以下の表4に示されるこのような結果は、液滴がボトル中にあるか、又はボトルを通して点滴されて、より低い剪断速度、例えば100秒-1を受ける場合、本配合物は、対照2の配合物より低い粘度を有する(15.99に対して10.59)。したがって、本配合物の液滴を点滴することは、より容易である。しかしながら、液滴を眼に点滴し、液滴流体がまぶたによって眼の上で拡散すると、まばたきの間の剪断の速度は、非常に高い剪断速度、例えば4000秒-1であり、本配合物は対照2の配合物よりわずかに高い粘度を有する(4.42に対して4.55)。したがって、本配合物の液滴は、より長く眼の上に残り得、長期の眼球快適性をもたらし得る。
【0105】
【表4】