(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20230731BHJP
【FI】
G01N35/02 D
(21)【出願番号】P 2021575643
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047101
(87)【国際公開番号】W WO2021157216
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2020019676
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】川辺 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】西尾 朋久
(72)【発明者】
【氏名】松下 博俊
(72)【発明者】
【氏名】瀧森 祥太
(72)【発明者】
【氏名】山口 豊美
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-046836(JP,A)
【文献】特開2019-082419(JP,A)
【文献】特開2014-126415(JP,A)
【文献】特開2009-270941(JP,A)
【文献】特開平04-296654(JP,A)
【文献】特開2009-210563(JP,A)
【文献】特開平05-180849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が分注された反応容器を保持する反応部と、試薬を供給する試薬供給部とを備え、前記試薬供給部から供給される試薬を検体と反応させてその反応過程を測定することにより所定の検査項目に関して測定情報を得る自動分析装置であって、
前記試薬供給部に設けられ、前記試薬を収容した試薬容器を保持する回転可能な試薬テーブルと、
前記試薬テーブルを回転駆動させるテーブル回転駆動部と、
前記テーブル回転駆動部を含む自動分析装置の駆動部の動作を制御する制御部と、
を有し、
前記試薬テーブルには、該試薬テーブルの回転軸を中心として同心円状にその周方向に沿って所定の間隔を隔てて前記試薬容器を個別に保持する複数の保持部が設けられ、
前記試薬テーブルの下方には、前記保持部に保持されて前記試薬テーブルの回転駆動に伴って円周上を移動する前記試薬容器の移動経路に沿って、複数の磁石がその磁極の向きを固定して配置され、
前記複数の磁石は、その固定された磁極の向きが前記試薬容器の移動経路に沿って変化するように配置されて、各試薬容器内に配置される磁性を有する撹拌子に磁力を作用させ、
前記テーブル回転駆動部により前記試薬テーブルが回転して前記試薬容器が前記複数の磁石の上方を通過することにより前記試薬容器内の撹拌子が磁石から受ける磁力によって
回転して試薬を撹拌させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記複数の磁石は、その固定された磁極の向きが前記試薬容器の移動経路に沿って時計回り又は反時計回りに変化するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記試薬テーブルの回転速度を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記試薬容器から試薬を吸引するための吸引位置へと前記試薬テーブルを回転させる試薬吸引動作と、前記試薬テーブルを回転させて前記試薬容器内の前記撹拌子を前記磁石からの磁力によって
回転させる試薬撹拌動作とを制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記試薬吸引動作を含む分析動作を行なっていない状態で前記試薬撹拌動作を連続的または不連続的に行なうように前記テーブル回転駆動部を制御することを特徴とする請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記磁石が交換可能に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記磁石は、その磁極の向きを変化可能に固定配置されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記複数の磁石の少なくとも1つを回転駆動させる磁石回転駆動部を更に備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などのサンプル(検体)を種々の試薬と反応させてその反応過程を測定することにより様々な検査項目に関して測定情報を得ることができる自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固分析装置や、免疫測定法を用いた分析装置など、血液や尿などの生体サンプルを種々の試薬と反応させてその反応過程を測定することにより様々な検査項目に関して測定情報を得ることができる自動分析装置は、従来から様々な形態のものが知られており、例えば、サンプルとしての検体を検体容器から反応容器に分注し、その分注した検体に検査項目に応じた試薬を分注混合させて各種の測定及び分析を行なう(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような自動分析装置では、検体に分注される試薬を収容する試薬容器が試薬供給部に保持されており、その場合、試薬供給部は、一般に、試薬容器を保持する回転可能な試薬テーブルと、試薬テーブルを回転駆動させる駆動モータとを有している。そして、このような状態で試薬供給部に保持される試薬には、試薬容器内の試薬の濃度などを均一に保つために撹拌が必要となるものがある。
【0004】
そのような撹拌を行なうための撹拌機構としては、試薬容器内に配置される撹拌子に対して試薬容器の外部から磁力を作用させて撹拌子を回転させることにより試薬を撹拌させるタイプのものが知られている(例えば、特許文献2参照)。そのような撹拌機構の一例が
図4に示されている。図示のように、この撹拌機構は、試薬容器110を保持する試薬供給部100の回転可能な試薬テーブル102の下方の所定の位置、具体的には、試薬テーブル102の回転駆動に伴って円周上を移動する試薬容器110の移動経路に沿う所定の位置(試薬容器110の例えば底部の中心との相対位置を一致させることができる位置)に、回転可能な磁石130を有する撹拌部150を備える。この撹拌部150は、試薬テーブル102の下方に位置して、試薬庫の底面160上に設けられる。そして、試薬を撹拌する場合には、テーブル回転駆動モータ142を駆動させて試薬テーブル102を回転させることにより、撹拌されるべき試薬が収容された試薬容器110を
図4の(a)に示されるように撹拌部150の上方に位置決めし、その位置決め状態で、磁石回転駆動モータ144を駆動させることにより磁石130を回転させて、その磁気作用によって試薬容器110内の撹拌子120を回転させることにより試薬の撹拌を行なうようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-135497号公報
【文献】特開2018-192384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような撹拌機構では、磁石及び撹拌子以外に、磁石を回転させるための回転機構が別個に必要となる。また、試薬を撹拌させるために試薬テーブルを回転させて試薬容器を撹拌部の上方に位置決めする必要がある。そのような位置決め動作を含めた撹拌動作のための時間は、試薬分注動作のための時間とは別に確保される必要があり(撹拌が必要な試薬の数だけ撹拌時間を割り当てる必要がある)、それにより、動作サイクル時間が長くなり、分析処理能力が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、簡単な構成で分析処理能力を低下させることなく試薬の撹拌を行なうことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、検体が分注された反応容器を保持する反応部と、試薬を供給する試薬供給部とを備え、前記試薬供給部から供給される試薬を検体と反応させてその反応過程を測定することにより所定の検査項目に関して測定情報を得る自動分析装置であって、前記試薬供給部に設けられ、前記試薬を収容した試薬容器を保持する回転可能な試薬テーブルと、前記試薬テーブルを回転駆動させるテーブル回転駆動部と、前記テーブル回転駆動部を含む自動分析装置の駆動部の動作を制御する制御部とを有し、前記試薬テーブルには、該試薬テーブルの回転軸を中心として同心円状にその周方向に沿って所定の間隔を隔てて前記試薬容器を個別に保持する複数の保持部が設けられ、前記試薬テーブルの下方には、前記保持部に保持されて前記試薬テーブルの回転駆動に伴って円周上を移動する前記試薬容器の移動経路に沿って、複数の磁石がその磁極の向きを固定して配置され、前記複数の磁石は、その固定された磁極の向きが前記試薬容器の移動経路に沿って変化するように配置されて、各試薬容器内に配置される磁性を有する撹拌子に磁力を作用させ、前記テーブル回転駆動部により前記試薬テーブルが回転して前記試薬容器が前記複数の磁石の上方を通過することにより前記試薬容器内の撹拌子が磁石から受ける磁力によって回転及び/又は揺動して試薬を撹拌させることを特徴とする。
【0009】
上記構成の自動分析装置によれば、試薬テーブルの回転駆動に伴って円周上を移動する試薬容器の移動経路に沿って試薬テーブルの下方に複数の磁石をその磁極の向きが前記移動経路に沿って変化するように配置し、試薬テーブルの回転駆動によって試薬容器が複数の磁石の上方を通過することで試薬容器内の撹拌子を磁力によって回転及び/又は揺動させて試薬を撹拌させるようにしているため、例えば、通常の試薬分注動作に伴って行なわれる試薬テーブルの回転の際に同時に試薬の撹拌も可能となる。そのため、
図4に関連して前述した従来技術のような磁石を回転させるための回転機構を備える撹拌部を別個に設ける必要がなく、また、試薬を撹拌させるために試薬テーブルを回転させて試薬容器を撹拌部の上方に位置決めする必要もない。したがって、簡単な構成で分析動作中に試薬の撹拌を行なうことができるとともに、試薬分注動作のための時間とは別に撹拌のための時間を確保する必要がなくなることから、試薬撹拌のための分析動作サイクル時間を不要化或いは短縮化することにより、分析処理能力を向上させることが可能となる。
【0010】
なお、上記構成において、試薬容器を個別に保持する複数の保持部は、試薬テーブルの回転軸を中心として同心円状にその周方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられるが、そのように円形状に配置される保持部の配置円は1つに限らない。例えば、半径が異なる同心的な複数の円に沿って保持部を試薬テーブル上に配置しても構わない。その場合には、そのような配置形態に対応して磁石も同心円状に設けられる。また、上記構成において、試薬テーブルの下方に複数設けられる磁石は、交換可能に配置されてもよく、或いは、その磁極の向きを変化可能に固定配置されてもよい。これによれば、磁石の磁力やその作用形態を任意に変えることが可能となり、試薬に応じた所望の撹拌状態を実現できる。また、上記構成では、前述した従来の撹拌部が更に設けられていても構わない。すなわち、本発明の自動分析装置は、複数設けられる磁石のうちの少なくとも1つを回転駆動させる磁石回転駆動部を有していてもよい。
【0011】
また、上記構成において、複数の磁石は、その固定された磁極の向きが試薬容器の移動経路に沿って変化するように配置されるが、そのような磁極の向きの変化は、不規則な変化形態であってもよく、或いは、規則正しくてもよい。規則正しい磁極の向きの変化は、例えば、磁極の向きが試薬容器の移動経路に沿って時計回り又は反時計回りに変化するように複数の磁石を配置する配置形態によって実現されてもよい。
【0012】
また、上記構成において、制御部は、試薬テーブルの回転速度を制御してもよい。試薬テーブルの回転速度を変えることによって撹拌子に作用する磁力、又はその作用態様を変えることができ、試薬に応じた所望の撹拌状態を実現できる。
【0013】
また、上記構成において、制御部は、試薬容器から試薬を吸引するための吸引位置へと試薬テーブルを回転させる試薬吸引動作と、試薬テーブルを回転させて試薬容器内の撹拌子を磁石からの磁力によって回転及び/又は揺動させる試薬撹拌動作とを制御してもよい。この場合、制御部は、分析動作サイクル内で試薬分注動作及び試薬撹拌動作の2つの動作を別々に行なうように制御してもよく、或いは、分析動作サイクル内で試薬吸引動作を行ない且つ分析動作サイクル外で試薬撹拌動作を行なうように制御してもよい。後者の例としては、例えば、試薬吸引動作を含む分析動作を行なっていない状態(例えば、自動分析装置のスリープ状態や分析開始準備状態など)で試薬撹拌動作を連続的または不連続的に行なうようにテーブル回転駆動部を制御することが挙げられる。試薬テーブルを連続して回転させ続けることによって、試薬撹拌により、試薬組成の均一化だけでなく、試薬容器内の試薬温度分布も均一化させることができるという副次的効果を得ることができる。また、試薬分注位置の下方に磁石を設置する場合には、撹拌子が試薬容器の底部で水平面の中心部から離れるように撹拌子に磁力を作用させるべく磁石を配置することにより、試薬プローブによる試薬吸引時に、プローブと撹拌子との接触が回避できるため、試薬のデッドボリュームを減少させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構成で分析処理能力を低下させることなく試薬の撹拌を行なうことができる自動分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動分析装置の概略的な全体外観図である。
【
図2】図
1の自動分析装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の自動分析装置の試薬供給部を示し、(a)は試薬供給部の概略側断面図、(b)は、試薬庫の磁石保持面を形成する底面の概略平面図である。
【
図4】従来の試薬供給部を示し、(a)は試薬供給部の概略側断面図、(b)は、撹拌部を有する試薬庫の底面の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態の自動分析装置の概略的な全体外観図、
図2は
図1の自動分析装置の概略的な内部構成を示すブロック図である。本実施形態の自動分析装置1は、
図2に示されるように、血液や尿などの人から採取した検体が分注された反応容器54を保持する反応部40と、試薬容器74内の試薬を反応容器54に供給する試薬供給部70とを備え、試薬供給部70から反応容器54に供給される試薬を検体と反応させて反応過程を測定する(試薬と検体とを混合して反応させた混合液を測定する)ことにより所定の検査項目に関して測定情報を得るものである。
具体的に、本実施形態の自動分析装置1は、筐体100によってその外枠が形成されるとともに、筐体100内の上部に検体処理空間を形成して成る(
図1参照)。
【0017】
図2に明確に示されるように、自動分析装置1は、制御ユニット10と、測定ユニット30と、表示・操作ユニットとを備える。本実施形態では、表示・操作ユニットとして例えばタッチスクリーン190が設けられる。
【0018】
制御ユニット10は、自動分析装置1の全体の動作を制御する。制御ユニット10は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)によって構成される。制御ユニット10は、バスライン22を介して互いに接続されたCentral Processing Unit(CPU)12と、Random Access Memory(RAM)14と、Read Only Memory(ROM)16と、ストレージ18と、通信インターフェース(I/F)20とを備える。CPU12は、各種信号処理等を行なう。RAM14は、CPU12の主記憶装置として機能する。RAM14には、例えば、Dynamic RAM(DRAM)、Static RAM(SRAM)等が用いられ得る。ROM16は、各種起動プログラム等を記録している。ストレージ18には、例えば、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)等が用いられ得る。ストレージ18には、CPU12で用いられるプログラム、パラメータ等各種情報が記録されている。また、ストレージ18には、測定ユニット30で取得されたデータが記録される。RAM14及びストレージ18は、これに限らず各種記憶装置に置換され得る。制御ユニット10は、通信I/F20を介して外部の機器、例えば測定ユニット30及びタッチスクリーン190との通信を行なう。
【0019】
タッチスクリーン190は、表示部としての表示装置192と、操作部等としての例えばタッチパネル194とを備える。表示装置192は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)又は有機ELディスプレイ等を含み得る。表示装置192は、制御ユニット10の制御下で、各種画面を表示する。この画面には、試薬量に関連する表示画面、自動分析装置1の操作画面、測定結果を示す画面、解析結果を示す画面など、各種画面が含まれ得る。タッチパネル194は、表示装置192の上に設けられている。タッチパネル194は、ユーザからの入力を取得し、得られた入力情報を制御ユニット10へと伝達する。
【0020】
制御ユニット10は、通信I/F20を介して、プリンタ、ハンディコードリーダ、ホストコンピュータなど、他の機器と接続してもよい。
【0021】
測定ユニット30は、制御回路42と、データ処理回路44と、恒温槽52と、反応容器54と、光源62と、散乱光検出器64と、透過光検出器66と、検体容器72と、試薬容器74と、検体プローブ76と、試薬プローブ78とを備える。本実施形態では、一例として、反応容器54、散乱光検出器64、及び、透過光検出器66が恒温槽52に設けられているが、そのような配置形態に限定されない。
【0022】
制御回路42は、制御ユニット10からの指令に基づいて、測定ユニット30の各部の動作を制御する。制御回路42は、図示を省略しているが、データ処理回路44、恒温槽52、光源62、散乱光検出器64、透過光検出器66、検体プローブ76、試薬プローブ78等と接続し、各部の動作を制御する。
【0023】
データ処理回路44は、散乱光検出器64及び透過光検出器66に接続されており、散乱光検出器64及び透過光検出器66から検出結果を取得する。データ処理回路44は、取得した検出結果に対して各種処理を行ない、処理結果を出力する。データ処理回路44が行なう処理には、例えば、散乱光検出器64及び透過光検出器66から出力されるデータの形式を、制御ユニット10で処理できる形式に変更するA/D変換処理等が含まれ得る。
【0024】
制御回路42及びデータ処理回路44は、例えば、CPU、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、又はField Programmable Gate Array(FPGA)等を含み得る。制御回路42及びデータ処理回路44は、それぞれ1つの集積回路等で構成されてもよく、或いは、複数の集積回路等が組み合わされて構成されてもよい。また、制御回路42及びデータ処理回路44が1つの集積回路等で構成されてもよい。制御回路42及びデータ処理回路44の動作は、例えば記憶装置や当該回路内の記録領域に記録されたプログラムに従って行なわれ得る。
【0025】
検体容器72には、例えば患者から採取した血液から得られた検体が収容される。試薬容器74には、測定に用いる各種試薬が収容される。検体容器72及び試薬容器74は、それぞれいくつ設けられていてもよい。分析に用いられる試薬は通常複数種類あるので、試薬容器74は一般に複数ある。検体プローブ76は、制御回路42の制御下で、検体容器72に収容された検体を反応容器54に分注する。試薬プローブ78は、制御回路42の制御下で、試薬容器74に収容された試薬を反応容器54に分注する。検体プローブ76及び試薬プローブ78の数もいくつであってもよい。
【0026】
恒温槽52は、制御回路42の制御下で、反応容器54の温度を所定の温度に維持する。反応容器54内では、検体プローブ76によって分注された検体と、試薬プローブ78によって分注された試薬とが混合された混合液が反応する。なお、反応容器54は、いくつあってもよい。
【0027】
光源62は、制御回路42の制御下で、所定の波長の光を照射する。光源62は、測定の条件に応じて、異なる波長を有する光を照射するように構成されていてもよい。したがって、光源62は、複数の光源素子を有していてもよい。光源62から照射された光は、例えば光ファイバによって導かれ、反応容器54に照射される。反応容器54に照射された光は、反応容器54内の混合液の反応過程状態によって、一部は散乱し、一部は透過する。散乱光検出器64は、反応容器54で散乱した光を検出する。透過光検出器66は、反応容器54を透過した光を検出する。データ処理回路44は、散乱光検出器64で検出された散乱光量の情報を処理したり、透過光検出器66で検出された透過光量の情報を処理したりする。透過光量の情報を処理する場合、検査項目に応じて吸光度に変換してから測定値の演算を行なう。散乱光検出器64及び透過光検出器66は、測定条件に応じて何れか一方が動作してもよい。したがって、データ処理回路44は、測定条件に応じて、散乱光検出器64で検出された散乱光量の情報と透過光検出器66で検出された透過光量の情報とのうち何れかを処理してもよい。データ処理回路44は、処理済のデータを制御ユニット10に送信する。なお、
図2に示される測定ユニット30は、散乱光検出器64と透過光検出器66との2つを備えているが、どちらか一方のみを備えていてもよい。
【0028】
制御ユニット10は、測定ユニット30から取得したデータに基づいて、各種演算を行なう。この演算には、混合液の反応量の算出、反応量に基づく被検体中の測定目的物質の物質量や活性値の定量演算等が含まれる。これらの演算の一部又は全部を、データ処理回路44が行なってもよい。
【0029】
なお、ここでは、測定ユニット30の動作を制御するPCと、データ演算及び定量演算を行なうPCとが同一の制御ユニット10である場合を示したが、これらは、別体であってもよい。言い換えると、データ演算及び定量演算を行なうPCは、単体として存在し得る。
【0030】
次に、
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る自動分析装置1の特徴的構成である試薬撹拌構成の一例について説明する。
図3に示されるように、試薬供給部70には、試薬を収容した試薬容器74を保持する回転可能な試薬テーブル34が試薬庫70A内に位置して設けられる。試薬テーブル34は、それに結合される回転軸37を介して、駆動モータを有するテーブル回転駆動部32により回転駆動されるようになっている。また、テーブル回転駆動部32は、自動分析装置1のその他の図示しない駆動部の動作を制御する制御部である制御ユニット10によってその駆動が制御されるようになっている。
【0031】
試薬テーブル34には、該試薬テーブル34の回転軸を中心として同心円状にその周方向に沿って所定の間隔を隔てて試薬容器74を個別に保持する複数の保持部34aが例えば断面凹陥状を成して設けられている。特に、本実施形態では、保持部34aが試薬テーブル34の全周にわたって1つの円に沿って設けられている。また、試薬テーブル34の下方には、保持部34aに保持されて試薬テーブル34の回転駆動に伴って円周上を移動する試薬容器74の移動経路Rに沿って、複数の磁石36がその磁極の向きを固定して配置されている。この場合、これらの磁石36は、試薬庫70Aの磁石保持面を形成する底面70Aa上に設けられて、その固定された磁極の向き(
図3の(b)に矢印で示される)が試薬容器74の移動経路Rに沿って変化するように配置され、各試薬容器74内に配置される磁性を有する撹拌子39に磁力を作用させる。特に、本実施形態において、これらの磁石36は、その固定された磁極の向きが試薬容器74の移動経路Rに沿って時計回り(又は反時計回りであってもよい)に変化するように配置されている。具体的には、本実施形態において、磁石36は、その固定された磁極の向きが円形の移動経路Rの半周にわたって完全に360°時計回りに変化するように配置されている。言い換えると、磁石36は、その磁極の向きが移動経路Rの全周にわたって時計回りに2周り変化するように配置されている。そして、更にこの例では、試薬庫70Aの底面70Aaの中心(したがって、試薬テーブル34の回転中心)を挟んで互いに対向して位置される一対の磁石36の磁極の
向きがほぼ同一となっている。しかしながら、磁石36は、その磁極の向きが移動経路Rの全周にわたって反時計回りに2周り変化するように配置されてもよく、その磁極の向きが移動経路Rの全周にわたって時計回り又は反時計回りに3周り以上又は1周り変化するように配置されてもよく、或いは更には、時計回り又は反時計回りといった規則性を伴うことなく磁極が不規則に配向されていてもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、各磁石36が試薬庫70Aの磁石保持面を形成する底面70Aaに対して回転可能に且つ着脱可能に配置固定されており、磁石36の磁極の向きを変えることができる(その変えた位置で位置決めできる)とともに磁石36を交換できるようになっている。
【0033】
このような試薬撹拌構成において、制御ユニット10は、適時に、テーブル回転駆動部32の駆動を制御して試薬テーブル34を回転させることにより、試薬容器74が複数の磁石36の上方を通過するようにし、それにより、試薬容器74内の撹拌子39に磁石36からの磁力を作用させて撹拌子39を回転及び/又は揺動させることで試薬を撹拌する。この場合、制御ユニット10は、試薬テーブル34の回転速度を制御してもよい。試薬テーブル34の回転速度を変えることによって撹拌子39に作用する磁力又はその作用態様を変えることができ、試薬に応じた所望の撹拌状態を実現できる。
【0034】
また、本実施形態において、制御ユニット10は、試薬容器74から試薬を吸引するための吸引位置へと試薬テーブル34を回転させる試薬吸引動作と、試薬テーブル34を回転させて試薬容器74内の撹拌子39を磁石36からの磁力によって回転及び/又は揺動させる試薬撹拌動作とを制御できる。この場合、制御ユニット10は、分析動作サイクル内で試薬撹拌動作を兼ねて試薬分注動作を行なうように制御してもよく、又は、分析動作サイクル内で試薬分注動作及び試薬撹拌動作の2つの動作を別々に行なうように制御してもよく、或いは、分析動作サイクル内で試薬吸引動作を行ない且つ分析動作サイクル外で試薬撹拌動作を行なうように制御してもよい。分析動作サイクル外で試薬撹拌動作を行なう場合、制御ユニット10は、例えば、試薬吸引動作を含む分析動作を行なっていない状態(例えば、自動分析装置1のスリープ状態や分析開始準備状態など)で試薬撹拌動作を連続的または不連続的に行なうようにテーブル回転駆動部32を制御してもよい。このように試薬テーブル34を連続して回転させ続けることによって、試薬撹拌により、試薬濃度などの均一化だけでなく、試薬容器74内の試薬温度分布も均一化させることができるという副次的効果を得ることができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の自動分析装置1によれば、試薬テーブル34の回転駆動に伴って円周上を移動する試薬容器74の移動経路Rに沿って試薬テーブル34の下方に複数の磁石36をその磁極の向きが移動経路Rに沿って変化するように配置し、試薬テーブル34の回転駆動によって試薬容器74が複数の磁石36の上方を通過することで試薬容器74内の撹拌子39を磁力によって回転及び/又は揺動させて試薬を撹拌させるようにしているため、例えば、通常の試薬分注動作に伴って行なわれる試薬テーブル34の回転の際に同時に試薬の撹拌も可能となる。そのため、
図4に関連して前述した従来技術のような磁石を回転させるための回転機構を備える撹拌部を別個に設ける必要がなく、また、試薬を撹拌させるために試薬テーブルを回転させて試薬容器を撹拌部の上方に位置決めする必要もない。したがって、簡単な構成で試薬の撹拌を行なうことができるとともに、試薬分注動作のための時間とは別に撹拌のための時間を確保する必要がなくなることから、分析動作サイクル時間を短くして、分析処理能力を向上させることが可能となる。
【0036】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、試薬テーブル上における試薬容器保持部の配置形態及びそれに対応した磁石の配置形態は任意に設定できる。例えば、前述した実施形態では、試薬容器保持部が試薬テーブルの全周にわたって設けられているが、試薬容器保持部は試薬テーブルの全周にわたって設けられている必要はなく、また、磁石の固定された磁極の向きは、試薬容器の移動経路に沿って変化するように配置されてさえいれば、どのような配向形態であっても構わない。また、
試薬テーブルの回転駆動形態も任意に設定できる。例えば、
試薬テーブルの回転方向は一方向に限らず、正転及び逆転の組み合わせによって撹拌を実行することもできる。また、
図3に鎖線で示されるように、複数の磁石の少なくとも1つを回転駆動させる磁石回転駆動部90が随意的に設けられても構わない。このようにして本発明の試薬撹拌構成と従来型の撹拌部とを併用することも可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施の形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施の形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 自動分析装置
10 制御ユニット(制御部)
32 テーブル回転駆動部
34 試薬テーブル
34a 保持部
36 磁石
39 撹拌子
40 反応部
70 試薬供給部
74 試薬容器
R 移動経路