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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20230731BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20230731BHJP
   A61M 21/02 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B5/16 120
A61M21/02 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022045788
(22)【出願日】2022-03-22
(62)【分割の表示】P 2020110639の分割
【原出願日】2017-10-13
(65)【公開番号】P2022088472
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2016207030
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀樹
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-137896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0144111(US,A1)
【文献】国際公開第2015/107710(WO,A1)
【文献】特開平07-231880(JP,A)
【文献】特開2007-050144(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002276(WO,A1)
【文献】特表2008-532587(JP,A)
【文献】特開2012-035057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00 - 5/0538
A61B 5/06 - 5/398
A61M 21/00 -21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の顔画像から心拍情報を非接触で検出する検出部と、
前記被験者の前記心拍情報から脈波間隔の揺らぎ度を示す最大リアプノフ指数を算出する算出部と、
前記最大リアプノフ指数と閾値を比較して、前記被験者の感情が脳疲労、不安もしくは抑うつがある負の感情であるか、又は脳疲労、不安及び抑うつがない正の感情であるかを判定する感情判定部と、
前記被験者の意識を集中させて前記被験者を前記正の感情に誘導する感情誘導部と、
を有し、
前記感情誘導部による感情誘導中に前記感情判定部による判定を行い、
前記閾値は-0.6であり、前記感情判定部は前記最大リアプノフ指数が前記閾値以下の場合に前記被験者に負の感情が発生していると判定する、検出装置。
【請求項2】
前記算出部は、以下の式1に基づいて、最大リアプノフ指数λを算出し、
【数1】
ここで、Мは前記心拍情報から生成された脈波間隔の時系列データにおける総サンプリング時間であり、d(k)時刻kにおける前記脈波間隔の時系列データであり、d(k-1)は時刻k-1における前記脈波間隔の時系列データである、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記感情誘導中に発生した正の感情の発生率を算出する算出部と、
前記正の感情の発生率を表示する表示部と、
をさらに有する、請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記感情誘導部は、音楽再生部をさらに備える、請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項5】
前記被験者の心拍数を算出する心拍数算出部をさらに有し、
前記音楽再生部は、前記被験者の心拍数に応じて音楽の再生ピッチを制御する、
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記感情誘導部は、前記被験者が息を吸いかつ吸う速度よりも遅く息を吐く深呼吸を行うように促すことで、前記被験者の意識を呼吸に集中させる呼吸誘導部を有する、請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項7】
表示部をさらに備え、
前記呼吸誘導部は、前記表示部への表示により、息を吸うタイミングと息を吐くタイミングとを前記被験者に報知する、
請求項6に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知症の早期症状である軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment)(以下、「MCI」という)に関係する正負の感情の変動を検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、利用者の生体現象をデータとして計測しこれを連続モニタリングしながら、予めスコア化された判定用スコアリングテーブルの利用者固有の判定用スコアデータと比較して疾病発症予知レベルを判定して、該疾病発症予知レベルを利用者に通報する疾病発症予知通報システム及び方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、生体情報を計測する生体情報計測部と、生体情報を受けてアトラクタを構成するアトラクタ構成手段と、アトラクタに基づいてリアプノフ指数とその特性値を算出する特性値算出手段と、その特性値に基づいて意思疎通又は痴呆度などの精神的免疫度を判定する判定手段とを備える精神的免疫度の測定装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、被診断者の心電を測定する手段と、被診断者に対する負荷試験を指示する手段と、測定された心電データに基づいて心電図R-R間隔変動係数を算出する手段と、算出された負荷試験後の心電図R-R間隔変動係数の値が負荷試験前の値よりも小さい場合に精神疾患の可能性があると判定する手段と、判定結果を表示する手段とを備える精神疾患診断装置及びプログラムが開示されている。
【0005】
特許文献4,5には、循環器に関する被測定者の生体信号を検知し、検知された生体信号から被測定者の心拍間隔の揺らぎ度を算出し、算出された揺らぎ度に基づき、心拍間隔の揺らぎ度と脳疲労度との対応関係を参照して被測定者の脳疲労度を取得し、疲労度に関する情報を出力する疲労度計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-143097号公報
【文献】特開2006-204502号公報
【文献】特開2012-045162号公報
【文献】特開2017-063963号公報
【文献】特開2017-063966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
認知症は一旦発症すると元に戻らない病気であり、進行するとコミュニケーション能力の喪失などで通常の社会生活を営むことが困難になるなど、極めて重篤な精神疾患といわれている。認知症は、発症以前の早期症状であるMCIの段階で検出することができれば、薬で発症を止めたり遅らせたりすることが可能である。しかしながら、これまでMCIの判定又は検出を可能とする技術の開示はなく、特許文献1~3の技術も、単に発症に対する精神免疫度や痴呆症状を検出するものに過ぎない。
【0008】
MCIになるともの忘れと抑うつ感情が頻出するが、もの忘れは、老齢によるもの忘れと区別が付き辛く、抑うつ感情も、老齢性うつ病による仮性認知症と一般には見分けが難しい。しかしながら、MCIと仮性認知症では、脳疲労、不安又は抑うつなどがある負の感情の発生パターンに差異があることが知られている。認知症の発症を早期に検出し、症状の進行や悪化を最小限にするためには、負の感情又はその反対である正の感情の変動を速やかかつ確実に検出することが求められる。
【0009】
本発明の目的は、軽度認知障害に関係する正負の感情の変動を検出する検出装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
被験者の心拍情報を検出する検出部と、心拍情報から心拍間隔の揺らぎ度を示す最大リアプノフ指数を算出する算出部と、最大リアプノフ指数に基づいて、被験者の感情が脳疲労、不安もしくは抑うつがある負の感情であるか、又は脳疲労、不安及び抑うつがない正の感情であるかを判定する感情判定部と、所定期間における負の感情又は正の感情の発生頻度に基づいて被験者の正負感情の変動の有無を判定する変動判定部と、変動判定部の判定結果を出力する出力部とを有することを特徴とする検出装置が提供される。
【0011】
所定期間は3か月以上の期間であり、変動判定部は、負の感情の発生頻度として、負の感情の発生期間と発生時刻とに基づいて、被験者が軽度認知障害であるか否かを判定することが好ましい。変動判定部は、負の感情の発生回数の日内変動に基づいて被験者が軽度認知障害であるか否かを判定することが好ましい。
【0012】
検出部は、所定期間中、少なくとも1日当たり午前と午後の2回以上、被験者の操作によらずに被験者の顔の部位を連続して自動撮影し、得られた複数の画像の輝度変化に基づいて心拍情報を検出することが好ましい。感情判定部は、連続して撮影された複数の画像内における部位の移動量が所定範囲内に収まっている場合に、その複数の画像から検出された心拍情報に基づいて被験者の感情を判定することが好ましい。
【0013】
上記の検出装置は、被験者の意識を集中させて被験者を正の感情に誘導する感情誘導部をさらに有し、所定期間は、感情誘導部が誘導を継続している期間であり、出力部は、感情誘導部の誘導中に感情判定部の判定結果を表示し、感情誘導部の誘導後に変動判定部の判定結果を表示する表示部であることが好ましい。
【0014】
感情誘導部は、被験者が息を吸いかつ吸う速度よりも遅く息を吐く深呼吸を行うように促すことで、被験者の意識を呼吸に集中させることが好ましい。感情誘導部は、表示部への表示により、息を吸うタイミングと息を吐くタイミングとを被験者に報知することが好ましい。
【0015】
感情誘導部は、呼吸の周期よりも長いフレーズを含む音楽を再生することで、被験者の意識を音楽に集中させることが好ましい。感情誘導部は、心拍情報から算出される被験者の心拍数に応じて音楽の再生ピッチを制御することが好ましい。
【0016】
出力部は表示部であり、上記の検出装置は、入力部と、被験者に入力操作を行わせて表示部上の表示物を加工させる課題を提示する提示部とをさらに有し、所定期間は、提示部が課題を提示している期間であり、表示部は、課題を表示し、課題の終了後に変動判定部の判定結果を表示することが好ましい。
【0017】
上記の検出装置は、提示部が提示する難易度が互いに異なる複数の課題を記憶する記憶部と、表示物に対する入力操作の量を検出する操作量検出部とをさらに有し、提示部は、所定期間における負の感情又は正の感情の発生頻度と、入力操作の量とに応じて、異なる難易度の課題を繰り返し提示することが好ましい。
【0018】
提示部は、課題として、表示部上に表示された複数の輪郭線で区分される複数の領域を着色する課題を提示するか、表示部上に表示された文字を表示部上に書き写す課題を提示することが好ましい。表示部は、変動判定部の判定結果として、所定期間中における正の感情の発生頻度に基づく負の感情から正の感情への改善度を表示することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上記の検出装置は、MCIに関係する正負の感情の変動を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】検出装置1の使用状態を示す斜視図である。
図2】(A)及び(B)は撮像部10の外観を示す斜視図である。
図3】検出装置1のブロック図である。
図4】(A)~(C)は脈波から負の感情を判定する原理を説明するためのグラフである。
図5】(A)~(D)は検出装置1の検出結果の表示例を示すグラフである。
図6】検出装置1の動作例を示すフローチャートである。
図7】別の撮像部10aを用いた検出装置1の使用状態を示す斜視図である。
図8】予防装置2のブロック図である。
図9】予防装置2の表示画面の例を示す図である。
図10】予防装置2の動作例を示すフローチャートである。
図11】(A)~(D)は感情誘導の有無による正負感情の変動の差異を示すグラフである。
図12】予防装置3のブロック図である。
図13】(A)~(F)は予防装置3が提示する課題の例を示す図である。
図14】(A)~(C)は課題の難易度による正負感情と入力操作の量の変動の差異を示すグラフである。
図15】予防装置3の動作例を示すフローチャートである。
図16】(A)~(D)は検出部10b,10cを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して各実施形態を説明する。図面では、同一の要素には同一の番号を付与する。図形は説明のため誇張して書くことがある。以下の実施形態及び図面は一例であって、発明の主旨を損なわない範囲であれば他の形態も可能である。
【0022】
図1は、検出装置1の使用状態を示す斜視図である。
図1に示すように、検出装置1は、撮像部10と情報端末5とを備える。図示した例では、撮像部10はスマートホンなどの携帯端末であり、情報端末5はノート型パーソナルコンピュータである。ただし、特にこれに限らず、撮像部10としてタブレット端末又はデジタルカメラを用いてもよく、情報端末5としてタブレット端末又は専用の処理装置を用いてもよい。あるいは、撮像部10と情報端末5は一体化されていてもよい。
【0023】
検出装置1は、認知症発症後の認知症レベルを測定する装置ではなく、あくまで、認知症発症前の早期症状であるMCIの発現の有無を検出する装置である。MCIの人にも仮性認知症の人にも、脳疲労、不安又は抑うつ(以下、「負の感情」という)やもの忘れが現れる。しかしながら、仮性認知症は自律神経異常による疾患のため、負の感情の発生回数の日内変動が生じやすく、症状の継続は週~月単位であるのに対し、MCIでは、負の感情の発生回数に日内変動はなく、数日~数か月の期間にわたって負の感情が持続することが知られている。
【0024】
例えば特許文献4,5に開示されているように、心拍又は脈波の間隔の時系列データから心拍間隔の揺らぎ度を示す最大リアプノフ指数を算出し、その値から脳疲労、不安又は抑うつの程度を定量化する手法が知られている。実際には、心拍よりも脈拍の方がより簡易に測定でき、脈波間隔を心拍間隔として用いても、感情変動の傾向を見る目的上は特に問題はない。そこで、検出装置1は、被験者の脈波を例えば毎日、少なくとも午前と午後の1回ずつ測り、脈波間隔の揺らぎ度を示す最大リアプノフ指数を算出し、その値に基づいて、被験者に負の感情が発生しているか否かを判定する。そして、検出装置1は、月単位の負の感情の発生頻度(負の感情の発生パターン)から数か月程度の期間における負の感情の継続性を判定し、MCIに特有の兆候を検出した場合には外部に通報する。
【0025】
図2(A)及び2(B)は、撮像部10の外観を示す斜視図である。図2(B)では、撮像部10を保持するスタンド90に撮像部10が設置された状態を示している。図2(A)に示すように、撮像部10は、撮像素子11と、撮像部10の動作を設定するための表示部付タッチパネル19とを備える。図2(B)に示すように、スタンド90は、充電コネクタ91を内蔵しており、電源ケーブル92が商用電源に接続されることで撮像部10を充電する機能を備える。
【0026】
特に高齢者の中には、測定に対する恐怖感を抱く人や、測定時のセンサ装着などの測定行為そのものに抵抗を感じる人、測定説明を聞いただけで一時的に負の感情が現れる人などが存在し、適正に負の感情が測定できないことがある。そこで、検出装置1は、測定自体がストレスにならないように、撮像素子(カメラ)11を有する撮像部10を用いて、被験者の皮膚の露出部分(例えば、顔の額又は頬などの部位)を撮影する。そして、検出装置1は、得られた画像から血流に同期した輝度変化を抽出することで、被験者に対して非接触で、かつ被験者が無意識のまま、被験者の心拍情報である脈波信号を自動的に検出する。
【0027】
撮像素子11は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型又はCCD(Charge Coupled Device)型のイメージセンサである。撮像素子11は、測定の度に、図1に示すように、例えば被験者HKの額における測定枠Saの画像Grを、被験者の操作によらずに連続して複数枚、自動撮影する。撮像部10は、内蔵する顔認識のアプリケーションプログラムによって、被験者HKの額の測定枠Saを自動的に追尾する機能を有している。これにより、被験者HKが撮像部10の設置領域内で動き回っても、被験者HKの脈波を捉えることが可能である。図1に示すように、撮像部10は、撮影した被験者HKの画像データを、内蔵する無線通信機能により電波RWを介して情報端末5に送信する。
【0028】
図3は、検出装置1のブロック図である。図3に示すように、検出装置1の情報端末5は、感情検出部20と、判定部30と、報知部40と、計時部50とを備える。感情検出部20は、顔認識部21と、脈波抽出部22と、間隔検出部23と、脈波メモリ24と、カオス解析部25と、測定値判定部26と、個人認識部27とを備える。判定部30は、感情判定部31と、感情データメモリ32と、MCI判定部33とを備える。報知部40は、表示部41と、送信部42とを備える。このうち、脈波メモリ24及び感情データメモリ32はハードディスク又は半導体メモリで構成され、表示部41は液晶表示ディスプレイで構成され、計時部50は公知の時計回路で構成される。その他の要素は、CPU、ROM及びRAMなどを含む情報端末5内のマイクロコンピュータにより、ソフトウエアとして実現される。
【0029】
顔認識部21は、撮像素子11が撮影した被験者HKの画像Grに対して輪郭検知アルゴリズム又は特徴点抽出アルゴリズムを用いて顔の様態を分析し、額などの皮膚露出部分を測定部位として特定する。顔認識部21は、その測定部位における皮膚色を示すデータである時系列信号E1を、脈波抽出部22、測定値判定部26及び個人認識部27に出力する。
【0030】
脈波抽出部22は、時系列信号E1から被験者HKの脈波信号を抽出し、その信号を間隔検出部23に出力する。被験者HKの額における測定枠Saの内部には毛細動脈が集中しているので、画像Grには被験者HKの血流に同期した輝度変化成分が含まれている。特に、画像Grの緑色光の輝度変化成分に脈波(血流変化)が最も反映されているので、脈波抽出部22は、人の脈波が有する略0.5~3Hzの周波数を通過させるバンドパスフィルタを用いて、時系列信号E1の緑色光の輝度変化成分から脈波信号を抽出する。
【0031】
撮像部10、顔認識部21及び脈波抽出部22は、被験者の心拍情報を検出する検出部の一例である。ただし、検出部の機能は必ずしも撮像部10と情報端末5に分かれていなくてもよく、例えば、顔認識部21と脈波抽出部22の機能を撮像部10に持たせてもよいし、撮像部10を情報端末5に含めてもよい。
【0032】
図4(A)~4(C)は、脈波から負の感情を判定する原理を説明するためのグラフである。このうち、図4(A)は脈波信号PWの波形例を示し、横軸tは時間(ミリ秒)、縦軸Aは脈波の振幅の強さである。図4(A)に示すように、脈波信号PWは、心臓の拍動による血流量の変動を反映した三角波状であり、最も血流量が強いピーク点P1~Pnの間隔を脈波間隔d1~dnとする。
【0033】
間隔検出部23は、被験者HKの脈波信号PWのピーク点P1~Pnを検出し、計時部50を用いて脈波間隔d1~dnをミリ秒単位で算出し、さらに脈波間隔d1~dnから脈波間隔の時系列データを生成する。
【0034】
脈波メモリ24は、間隔検出部23により検出された脈波間隔d1~dnを脈波間隔の時系列データとして記憶する。
【0035】
図4(B)は、脈波間隔の揺らぎ度の例を示すグラフである。このグラフはローレンツプロットと呼ばれ、横軸を脈波間隔dn、縦軸を脈波間隔dn-1(ともに単位はミリ秒)とし、n=1,2,・・・について座標(dn、dn-1)上に脈拍間隔の時系列データをプロットしたものである。図4(B)のグラフにおけるドットのバラつき度合いが被験者HKの脳疲労度を反映することが知られているので、表示部41に図4(B)のデータ散布図を表示すれば、被験者HKの測定中の脳疲労度を簡易的にモニタすることも可能である。
【0036】
カオス解析部25は、脈波メモリ24に記憶された脈波間隔の時系列データ、すなわち、図4(B)のローレンツプロットにおける座標(dn、dn-1)を用いて、以下の式1により最大リアプノフ指数λを算出する。
【数1】
ここで、Mは脈波間隔d1~dnにおける総サンプル時間、dは時系列データの時刻kと時刻k-1とのパターン間距離(ローレンツプロットにおける2次元平面上の距離)である。カオス解析部25は、さらに、測定値判定部26から測定値が有効であることを示すデータを取得した場合にのみ、算出した最大リアプノフ指数λを感情判定部31に出力する。間隔検出部23及びカオス解析部25は、心拍情報から心拍間隔の揺らぎ度を示す最大リアプノフ指数を算出する算出部の一例である。
【0037】
測定値判定部26は、顔認識部21から時系列信号E1を取得する度に、以下の2つの判断基準が満たされているか否かを判定し、それらが両方とも満たされている場合に、測定値が有効であることを示すデータをカオス解析部25に出力する。判断基準の1つ目は、時系列信号E1のデータに予め定められた個数分、連続性があり、かつ画像Grの測定枠Saの移動量が所定範囲内に収まっていることであり、これは測定データが安静時のものであるか否かを見分けるための条件である。判断基準の2つ目は、画像Gr内に被験者HK以外の顔がないことであり、これは近くに他の人がいないことを確認するための条件である。
【0038】
個人認識部27は、顔認識部21から取得した画像データを基に、予め検出装置1に登録されている個人認証データを参照して、被験者が登録されている本人であることを確認し、その確認ができた場合にその旨を感情判定部31に通知する。
【0039】
図4(C)は、心拍又は脈波の間隔の揺らぎ度を示す最大リアプノフ指数と負の感情との関係を示すグラフである。このグラフは、成人男女10人を対象に問診アンケートを行って、疲れをどの程度感じるか、及び疲れが脳疲労、不安又は抑うつと感じる状態であるか否かを回答させるとともに、同じ被験者について脈波間隔の最大リアプノフ指数λを測定し、得られた回答内容とλの値との関係をまとめたものである。F0は「疲れなし」に、F1は「年齢相当の疲れあり」に、F2は「一時的な疲れあり」に、F3は「慢性的な疲れあり」に、F4は「負の感情あり」にそれぞれ相当する。グラフの縦軸は最大リアプノフ指数λである。
【0040】
図4(C)から、最大リアプノフ指数は、単なる疲れの状態では0に近い絶対値の小さい値であるが、負の感情があるとマイナスで絶対値の大きな値となることが分かる。当該成人男女10名に関しては、測定のばらつきを考慮して、負の感情を感じるか否かの最大リアプノフ指数の閾値を-0.6程度に設定することができる。
【0041】
感情判定部31は、カオス解析部25から取得した最大リアプノフ指数λが以下の式2を満たす場合に、被験者に負の感情が発生していると判定し、λが式2を満たさない場合には、被験者に負の感情が発生していないと判定する。
λ≦λt ・・・式2
ここで、閾値λtは-0.6であるが、検出装置1に求められる特性によっては他の値を用いることがある。感情判定部31は、負の感情が発生していると判定した場合に、その旨を、測定日時の情報及び被験者に固有の識別情報と対応付けて、感情データメモリ32に記憶する。その際、最大リアプノフ指数λの値も併せて感情データメモリ32に記憶してもよい。感情判定部31は、最大リアプノフ指数に基づいて、被験者の感情が脳疲労、不安もしくは抑うつがある負の感情であるか否かを判定する感情判定部の一例である。
【0042】
MCI判定部33は、感情データメモリ32に記憶された情報を基に、被験者の負の感情の発生頻度を月単位で午前と午後で分けて集計する。そして、MCI判定部33は、集計により得られた負の感情の発生パターンに基づき、表1に示す判定条件に従って、被験者がMCIか又はそれ以外であるかを次のように判定する。
・負の感情の発生回数が月間20回以下であれば、発生時刻や発生期間に係わらず正常である。
・負の感情の発生回数に係わらず発生時刻が午前か午後の何れか一方のみであるか、又は負の感情の発生期間が月間20回以上でも継続が3か月間未満であれば、仮性認知症である。
・午前及び午後の両方で負の感情の発生期間が月間20回以上であり、かつそれが3か月間以上継続していれば、MCIである。
【0043】
ここで、負の感情の発生回数とは、最大リアプノフ指数λの測定値が上記の式2を満たした回数のことである。表1に示した負の感情の発生回数、発生期間、発生時刻及び継続期間の条件は一例であり、検出装置1に求められる特性に応じて他の数値を選択してもよい。MCI判定部33は、所定期間(表1の例では3か月以上の期間)における負の感情の発生頻度に基づいて被験者の正負感情の変動の有無を判定する変動判定部の一例である。
【0044】
【表1】
【0045】
報知部40は、MCI判定部33の判定結果を表示部41に表示させる。特に、報知部40は、MCI判定部33がMCIであると判定した場合に、その旨の警告を表示部41に表示させるとともに、送信部42を介して外部に送信する。報知部40は、変動判定部の判定結果を出力する出力部の一例である。
【0046】
図5(A)~5(D)は、検出装置1の表示例を示すグラフである。図5(A)は正常の被験者に、図5(B)は仮性認知症の被験者に、図5(C)は図5(B)とは別の仮性認知症の被験者に、図5(D)はMCIの被験者に、それぞれ検出装置1を適用した結果であり、これらのグラフは表示部41に表示される。各図の横軸Mは検出装置1を適用した月であり、「1」は適用開始月、「8」は適用最終月である。縦軸Nは負の感情の月間の発生回数であって、白抜きの棒グラフは午前(AM)における負の感情の発生回数、黒抜きの棒グラフは午後(PM)における負の感情の発生回数である。
【0047】
図5(A)の例では、適用開始月から適用最終月までの間、負の感情の発生回数が20回以下である。これは、表1に示す「正常」の範囲内であるので、検出装置1は、正常であることを示す「-」をグラフの左上に表示する。
【0048】
図5(B)の例では、適用開始月から5か月間は負の感情の発生回数が20回以下であり、開始6か月目から適用最終月までの間は負の感情の発生回数が20回以上であるものの、それは午前に集中している。これは、表1に示す「仮性認知症」の一方の条件である「月間の回数に係わらず午前、午後の何れか一方」に該当するので、検出装置1は、仮性認知症であることを示す「±」をグラフの左上に表示する。
【0049】
図5(C)の例では、午前及び午後の何れにおいても負の感情の発生回数が20回以上の月があるが、それらは3か月間継続していない。これは、表1に示す「仮性認知症」の他方の条件である「月間20回以上で継続が3か月未満」に該当するので、検出装置1は、図5(B)と同様に「±」と表示する。
【0050】
図5(D)の例では、適用開始6か月目から適用最終月までの間、午前及び午後の何れにおいても3か月間継続して負の感情の発生回数が20回以上である。これは、表1に示す「MCI」の条件である「月間20回以上で継続が3か月以上」かつ「午前及び午後で月間20回以上」に該当するので、検出装置1は、MCIであることを示す「+」をグラフの左上に表示する。
【0051】
図6は検出装置1の動作を示すフローチャートである。まず、使用者により情報端末5の電源が投入されると、情報端末5は電波RWによって撮像部10の電源を投入する(S1)。こうして検出装置1の電源が投入されると、撮像部10は撮像素子11によって被験者HKの測定枠Saの画像Grを撮影し、その画像データを情報端末5に送信する(S2)。続いて、顔認識部21は被験者HKの画像データから測定部位を特定し、個人認識部27は被験者HKを識別する(S3)。脈波抽出部22は、顔認識部21が特定した測定部位の皮膚色の時系列信号E1から被験者HKの脈波信号を抽出する(S4)。間隔検出部23は、S4の脈波信号から脈波間隔を算出してその時系列データを生成し、その時系列データを脈波メモリ24に記憶させる(S5)。
【0052】
次に、カオス解析部25は、S5で記憶された脈波間隔の時系列データに基づいて脈波間隔の最大リアプノフ指数λを算出する(S6)。感情判定部31は、その値を閾値λtと比較し(S7)、λがλt以下である場合(S7でYes)には、負の感情が発生したと判定して、その旨を測定日時などの情報と対応付けて感情データメモリ32に記憶する(S8)。
【0053】
さらに、MCI判定部33は、負の感情の発生頻度を月単位で集計し、その集計値が正常、仮性認知症又はMCIの何れの条件を満たしているか判定する(S9)。S9でMCIと判定された場合(S9でYes)には、報知部40は、その旨の警告を表示部41に表示させるとともに、送信部42を介して外部に送信する(S10)。その後、情報端末5は、撮像部10による被験者の測定を継続するか中止するかを判断する(S11)。継続する場合(S11でNo)にはS2に戻り、中止する場合(S11でYes)には、情報端末5は撮像部10の動作を停止させて、一連の処理を終了する。
【0054】
検出装置1は、撮像部10を用いて、被験者に対して非接触で、かつ被験者が無意識のまま脈波を測定するため、被験者HKには測定によるストレスが発生しない。例えば光電式センサを用いて脈拍を測定する場合には、指先とセンサとの接触を一定に保たなくてはならないという制約によって被験者にストレスが発生し、このストレスが測定結果に影響することがあるが、検出装置1ではこのような問題は生じない。また、検出装置1では、撮像部10を被験者HKの傍らに置いておけば自動測定が可能となり、被験者の行動が束縛されない。さらに、必ずしもリアルタイムで測定する必要はなく、撮像素子11で撮像した動画データを用いて後からMCIの判定を行うことも可能であるため、被験者に測定を意識させずに自然な状態での脈波信号を取得することができる。
【0055】
検出装置1は、正常、仮性認知症及びMCIの各状態の検出を確実かつ正確に行うことが可能であり、被験者の精神疾患状態の継時的変化を容易に把握可能にする。特に、検出装置1では、MCIの特徴である負の感情の午前及び午後での発生状況を定量的に捉えられるので、MCIに酷似する老齢性うつ病による仮性認知症との判別が可能である。例えば図5(D)に示す例では、適用開始5か月目と6か月目の中間時期Htにおいて被験者がMCIを発症したとの推定が可能であり、検出装置1はMCIの臨床診断においても有用である。
【0056】
図7は、別の撮像部10aを用いた検出装置1の使用状態を示す斜視図である。撮像部10aは、図1の撮像部10に個人特定機能が加わったものである。撮像部10aを用いる場合には、図7に示すように、複数の被験者のそれぞれが、例えば胸部などに、被験者毎に異なる形状の個人特定マークを着ける。図示した例では、被験者HKは星形の形状の個人特定マークNmを着けているが、個人特定マークとしては文字又は記号が記載されたものを用いてもよい。撮像部10aは、撮像素子11が撮影した画像Gr内の個人特定マークNmを画像認識により特定し、予め登録された複数人の中から測定対象の被験者HKを特定したのち、被験者HKの識別情報と測定枠Saの画像Grとを1組のデータ群として情報端末5に送信する。
【0057】
撮像部10aを用いれば、複数の被験者を個々に特定し、各被験者について個別にMCIを検出することが可能である。このため、例えば介護施設などにおいて複数人で検出装置1を共有することができるので、MCIの検出を効率的かつ廉価に行うことができる。
【0058】
認知機能低下に対する防御因子としては、有酸素運動や、行動日記を付けるなどの認知療法は効果があることが知られている。しかしながら、有酸素運動や認知療法は、中高年や高齢者では実践できる人が限定されてしまい、現在のところ、MCIの段階で万人が実践できる認知症の予防法や、MCIの改善法は知られていない。検出装置1はMCIを検出できるが、検出だけでなく、誰でも実践できMCIの段階で認知症の発症を予防できるような付加機能があることが好ましい。
【0059】
近年、脳機能を改善する方法として、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)やマインドフルネス認知療法(MBCT)などが医療に応用されている。マインドフルネス(mindfulness)とは、今現在起こっている内面的な経験及び外的な経験に注意を向ける心理的な過程を言う。マインドフルネスの状態になれば、負の感情から正の感情(脳疲労、不安及び抑うつがない状態、あるいは心拍間隔の揺らぎ度を示す最大リアプノフ指数が0又は正の状態)に転換されるので、上記の手法は適正に実施されれば脳機能の改善に効果がある。しかしながら、マインドフルネスを実現するには、指導者の主観的な指導の下で行われる瞑想的手法その他の訓練が必要であり、実施者が効果を実感しづらく、適正な実施が難しい。
【0060】
そこで、以下では、検出装置1のMCI判定とマインドフルネス療法とを応用し、認知症が進行しないように、健常者及びMCI段階の人が受動的に予防改善をすることができる装置について説明する。
【0061】
図8は、予防装置2のブロック図である。予防装置2は、検出装置の一例であり、例えばスマートホン又はタブレット端末などで構成される。予防装置2は、撮像部110と、感情検出部120と、判定部130と、感情誘導部140と、表示部150と、スピーカ160と、計時部170とを備える。予防装置2は、使用者に対して呼吸誘導と音楽再生による感情誘導を行うことにより、使用者の意識を集中させて脳をマインドフルネス状態に(すなわち、負の感情を正の感情に)転換させるとともに、誘導中の正負感情の変動を使用者にフィードバックする。
【0062】
撮像部110は、検出装置1の撮像部10と同様に、使用者の脈波を検出するために、使用者の皮膚の露出部分を撮影する。撮像部110は、予防装置2内に一体化されているが、検出装置1と同様に、予防装置を構成するタブレット端末などとは別体になっていてもよい。あるいは、撮像部110に代えて、使用者の心電波又は脈波を検出するセンサを用いてもよい。
【0063】
感情検出部120は、検出装置1のものと同じ顔認識部21、脈波抽出部22、間隔検出部23、脈波メモリ24及びカオス解析部25を備え、感情誘導部140による誘導中に、例えば数十秒間隔で、脈波間隔の最大リアプノフ指数を算出する。予防装置2では、感情検出部120は、心拍数算出部28をさらに備える。心拍数算出部28は、最大リアプノフ指数の算出と同様に一定間隔で、間隔検出部23により得られた脈波間隔から使用者の心拍数(脈拍数)を算出する。
【0064】
判定部130は、感情判定部31と、感情データメモリ32と、効果判定部34とを備える。感情判定部31及び感情データメモリ32は検出装置1のものと同様である。ただし、予防装置2の感情判定部31は、カオス解析部25から取得した最大リアプノフ指数λが式2を満たさない場合には、使用者に正の感情が発生していると判定する。さらに、感情判定部31は、感情誘導部140による誘導中に感情判定部31により判定された使用者の感情状態(負の感情と正の感情の何れであるか)を表示部150に表示させる。あるいは、感情判定部31は、最大リアプノフ指数λの値の大小に応じて、使用者の感情状態を例えば「正の感情(ストレスフリー)」、「活動中」、「軽い負の感情(軽疲労状態)」及び「負の感情(疲労状態)」4つに分け、使用者が何れの区分に属するかを表示してもよい。
【0065】
効果判定部34は、変動判定部の一例であり、感情誘導部140が誘導を継続している期間(誘導期間)における使用者の正負感情の変動の有無を判定する。そのために、効果判定部34は、感情データメモリ32を参照して、誘導期間中における正の感情の発生率を算出し、その値を、予防装置2の使用によるマインドフルネスの達成率(負の感情から正の感情への改善度)として、表示部150に表示させる。正の感情の発生率は、(正の感情と判定された回数)/(感情判定部31が判定を行った回数)で定義される値である。すなわち、効果判定部34は、使用者が予防装置2を使用することで感情状態がどの程度改善されたかを数値化して、使用者にフィードバックする。
【0066】
感情誘導部140は、呼吸誘導部141と、音楽再生部142とを備え、使用者を無心化させ、意識を呼吸及び音楽に集中させることで、使用者を正の感情に誘導する。
【0067】
呼吸誘導部141は、被験者が息を吸いかつ吸う速度よりも遅く息を吐く深呼吸を行うように促すことで、被験者の意識を呼吸に集中させる。速く吸って遅く吐く深呼吸をすると、横隔膜を刺激し、結果として自律神経が安定するので、正の感情への感情状態の改善に効果がある。この深呼吸は、例えば2秒で吸って6秒で吐くなど、吐く期間が吸う期間の2~3倍となる呼気延長深呼吸であることが好ましい。そこで、呼吸誘導部141は、表示部150への表示により、息を吸うタイミングと息を吐くタイミングとを使用者に報知する。その際、例えば、後述する図9に示すように、吸う期間と吐く期間の最初から最後まで徐々に長さが変化するバーを表示してもよい。人は、動いているものや変化しているものに意識を集中する習性があるので、こうしたバーの変化を目で追わせることで、意識が表示や呼吸に集中し、負の感情のことを考えなくなる無心化の効果が得られる。
【0068】
音楽再生部142は、呼吸の周期よりも長いフレーズを含む音楽を再生することで、使用者の意識を音楽に集中させる。音楽再生部142が再生する曲は、フレーズ周期が呼吸誘導部141による誘導呼吸の周期よりも長い曲とする。これは、フレーズ周期が誘導呼吸の周期よりも短いと、表示部150の表示バーではなく曲の方に呼吸が合ってしまい、誘導呼吸の効果が半減してしまうためである。
【0069】
このフレーズ周期の条件に加えて、音楽再生部142が再生する曲は、次の3つの条件のうち少なくとも1つを有することが好ましい。
(1)曲のテンポ音が4~6kHzのビートで構成されている。
(2)曲の音階の周波数分布の中心が528Hzである。
(3)曲のテンポの感覚的BPM(Beats Per Minute)と安静心拍数のBPMが一致する。
これらは、自律神経安定に効果があると言われている複数の曲が共通して有する条件である。(1)は、背骨及び脳幹に共鳴し易いビート音の周波数が4~6kHzであるためであり、(2)は、細胞が自己修復する周波数が528Hzと言われているためである。(3)は、曲のテンポが心拍と一致していると安らぎが得られやすいためである。
【0070】
(3)の条件を満たすために、音楽再生部142は、心拍情報から算出される被験者の心拍数に応じて音楽の再生ピッチを制御してもよい。そのためには、音楽再生部142は、心拍数算出部28から使用者の心拍数(脈拍数)を取得し、曲の再生ピッチを心拍数に合うように調整すればよい。例えば、3拍子曲の場合には、感覚的テンポは物理的テンポ(実際のテンポ)の0.66倍であるから、実際のテンポが101.68BPMである曲の感覚的テンポは66.9BPMである。成人の安静心拍数の平均は約65BPMであるから、実際のテンポが101.68BPMである曲を再生する場合には、音楽再生部142は、心拍数に応じて曲の再生速度を微調整すればよい。
【0071】
表示部150は、出力部の一例であり、感情誘導部140の誘導中に、感情判定部31が負の感情と正の感情の何れの判定をしたかを定期的に表示し、感情誘導部140の誘導が終了した後に、効果判定部34が算出した正の感情の発生率(達成率)を表示する。表示部150は、こうした表示することで、使用中の感情状態及び使用後の感情状態の改善効果を使用者に実感させる。
【0072】
スピーカ160は、音楽再生部142が音楽を再生するためのものである。音楽はヘッドホンで使用者に聴かせてもよく、この場合には、予防装置2は、スピーカ160に代えてイヤホンジャックを有してもよい。計時部170は、検出装置1の計時部50と同じものである。
【0073】
図9は、予防装置2の表示画面の例を示す図である。図9に示すように、表示部150には、撮像部110により撮影された使用者の顔画像151が、例えば画面左側に表示される。符号152は顔認識部21により認識された顔領域であり、符号153は、脈波を抽出するための測定枠である。画面の左下には、測定の開始及び終了を指示するためのボタン154,155が表示され、その右隣には、心拍数算出部28により算出された使用者の脈拍数が表示される(符号156)。
【0074】
画面右上には、呼吸誘導部141が呼吸誘導を行うための円形のプログレスバー157が表示される。このバーは、例えば、息を吸う期間中に、図中矢印で示すように、黒色の領域が12時の位置から時間経過とともに時計回りに延びて円上を1周分埋め尽くし、次の息を吐く期間中にも同様に、黒色の領域が12時の位置から時計回りに1周分延びる。こうしたバーの形状は、円形のものに限らず、例えば直線状のものであってもよい。画面右下には、感情判定部31が判定した使用者の感情状態が表示され(符号158)、この表示は例えば40秒毎などの一定間隔で更新される。さらに、画面右下には、呼吸誘導部141による呼吸誘導及び音楽再生部142による音楽再生の終了後に、効果判定部34が算出した正の感情の発生率(達成率)が表示される(符号159)。
【0075】
図10は、予防装置2の動作例を示すフローチャートである。まず、撮像部110と感情検出部120は、検出装置1と同様に使用者の脈波を検出し(S21)、心拍数算出部28は、脈波間隔から使用者の心拍数を算出する(S22)。音楽再生部142は、S22で算出された心拍数と合うように、音楽の再生ピッチを調整する(S23)。その上で、呼吸誘導部141と音楽再生部142は、呼吸誘導と音楽再生を行う(S24)。並行して、カオス解析部25は、S21で検出された脈波から最大リアプノフ指数λを算出し(S25)、感情判定部31は、その値を閾値λtと比較する(S26)。
【0076】
感情判定部31は、λがλt以下である場合(S26でYes)には負の感情が発生したと判定し、λがλtよりも大きい場合(S26でNo)には正の感情が発生したと判定して、その旨を感情データメモリ32に記憶する(S27,28)。続いて、感情判定部31は、最大リアプノフ指数λの値の大小に応じて、使用者の感情状態が「正の感情」、「活動中」、「軽い負の感情」及び「負の感情」の何れの区分に属するかを表示部150に表示させる(S29)。そして、感情検出部120は呼吸誘導部141と音楽再生部142による誘導を終了するか否かを判定する(S30)。終了しない場合(S30でNo)にはS21に戻り、終了する場合(S30でYes)には、効果判定部34は、正の感情の発生率(達成率)を算出し(S31)、その値を表示部150に表示させて(S32)、一連の処理を終了する。
【0077】
図11(A)~11(D)は、感情誘導の有無による正負感情の変動の差異を示すグラフである。各図の横軸tは時間(秒)であり、縦軸λは最大リアプノフ指数である。グラフ中の領域R+(λ>0)は正の感情に、領域R-(λ<0)は負の感情に、それらの間の領域R0(λ≒0)は正負の中間の感情に、それぞれ対応する。時刻0で負の感情であった使用者に対し、図11(A)は呼吸誘導と音楽再生のいずれも行わなかった場合の、図11(B)は音楽再生のみを行った場合の、図11(C)は呼吸誘導のみを行った場合の、図11(D)は呼吸誘導と音楽再生の両方を行った場合の、感情状態の時間変化を示す。図11(B)~11(D)では、時刻t1~t2の長さTの期間で感情誘導が行われたとする。
【0078】
図示した例では、10回の感情判定のうち、図11(A)では2回、図11(B)では8回、図11(C)では9回、図11(D)では10回、正の感情と判定されており、その発生率は、それぞれ20%、80%、90%及び100%である。図11(A)に示すように、感情誘導がなければ負の感情がほぼ維持されるが、図11(B)~11(D)に示すように、感情誘導があると負の感情が正の感情に改善されることが分かる。この改善効果は、音楽再生のみを行った場合の図11(B)よりも、呼吸誘導を行った図11(C)及び11(D)の場合の方がより顕著に現れる。特に、図11(D)に示すように、呼吸誘導と音楽再生の両方を行うと、正の感情が持続し易く、感情状態の改善効果は最も高くなる。
【0079】
このように、感情誘導としては呼吸誘導と音楽再生の両方を行うことが好ましい。ただし、呼吸誘導と音楽再生の一方だけでも感情状態の改善効果は見られるので、予防装置2は、感情誘導部として、呼吸誘導部141と音楽再生部142の一方のみを有してもよい。
【0080】
予防装置2では、装置の前に座り、例えば1日15~20分程度、流れる音楽を聴きながら表示に合わせて呼吸するだけでよいため、誰でも使用することができる。予防装置2では、使用期間中の正の感情の発生率がマインドフルネス達成率として表示されるので、使用者が効果を実感し易く、使用者に使用の動機付けを与えることもできる。
【0081】
呼吸誘導と音楽再生の他にも、例えば塗り絵などの手を動かすだけでできる軽作業を行うと、何も考えずに作業に集中できるため、認知症の予防に効果があると言われている。しかしながら、その軽作業は、難し過ぎても簡単過ぎても、十分な効果が出ないか、逆効果になる場合があるため、使用者に合った難易度のものである必要がある。また、適正な難易度の軽作業であったとしても、それを行うことによる効果は実感し難く、作業を行う動機付けが得られにくい。そこで、以下では、検出装置1のMCI判定と軽作業を伴う課題の提示とを組み合わせて、使用者が能動的に課題に取り組むことで認知症を予防する感情改善の効果が得られる装置について説明する。
【0082】
図12は、予防装置3のブロック図である。予防装置3は、検出装置の一例であり、例えばスマートホン又はタブレット端末などで構成される。予防装置3は、入力部200と、撮像部210と、操作量検出部215と、感情検出部220と、判定部230と、提示部240と、表示部250と、計時部260とを備える。予防装置3は、表示部250に課題を表示し、入力部200を介してその課題を加工させる軽作業を使用者に行わせ、それによって使用者の感情状態を改善させるとともに、軽作業による感情改善の効果を使用者にフィードバックする。
【0083】
入力部200は、タッチペン又はマウスであり、使用者が入力操作を行うために使用される。撮像部210は、予防装置2の撮像部110と同様に、使用者の脈波を検出するために、使用者の皮膚の露出部分を撮影する。入力部200がマウスである場合には、入力部200として脈波センサを内蔵するマウスを使用し、撮像部210に代えてマウスの脈波センサを使用してもよい。
【0084】
操作量検出部215は、入力部200による使用者の入力操作の量を検出する。言い換えると、操作量検出部215は、課題の提示中に表示部250上に表示された図形などに対する使用者の作業による動き数を検出する。入力操作の量(動き数)とは、例えば、入力部200であるタッチペン又はマウスの単位時間毎の座標移動回数である。
【0085】
感情検出部220は、検出装置1のものと同じ顔認識部21、脈波抽出部22、間隔検出部23、脈波メモリ24及びカオス解析部25を備え、提示部240による課題の提示中(軽作業中)に、例えば数十秒間隔で、脈波間隔の最大リアプノフ指数を算出する。
【0086】
判定部230は、感情判定部31と、感情データメモリ32と、効果判定部35とを備える。感情判定部31及び感情データメモリ32は予防装置2のものと同じである。
【0087】
効果判定部35は、変動判定部の一例であり、提示部240が課題を提示している期間(作業開始から終了までの作業期間)における使用者の正負感情の変動の有無を判定する。そのために、効果判定部35は、予防装置2の効果判定部34と同様に、作業期間中における正の感情の発生率を算出し、その値を、予防装置3の使用による正の感情の発生率(負の感情から正の感情への改善度)として、表示部250に表示させる。すなわち、効果判定部35は、使用者が予防装置3を使用することで感情状態がどの程度改善されたかを数値化して、使用者にフィードバックする。
【0088】
提示部240は、複数の課題を記憶する記憶部である課題メモリ241を有し、課題メモリ241に記憶されている課題のうちの1つを選択して、表示部250に表示させる。これらの課題は、何れも、使用者に入力操作を行わせて表示部250上の表示物を加工させるものであり、難易度が互いに異なる。
【0089】
図13(A)~13(F)は、予防装置3が提示する課題の例を示す図である。提示部240は、課題として、例えば、表示部250上に表示された複数の輪郭線で区分される複数の領域を着色する塗り絵の課題を提示するか、あるいは、表示部上に表示された文字を表示部上に書き写す書写の課題を提示する。図13(A)~13(C)は塗り絵の課題の例を示し、図13(D)~13(F)は書写の課題の例を示す。使用者は、例えば、塗り絵の場合には、マウス操作によって各領域を着色し、書写の場合には、表示された文字をタッチペンでなぞる。
【0090】
塗り絵の課題は図13(A)、13(B)、13(C)の順に、書写の課題は図13(D)、13(E)、13(F)の順に難易度が高くなる。塗り絵の場合には、課題の難易度は、例えば、画面当たりの線数、輪郭線数又は最大線密度で定義される。図13(A)~13(C)の例では、輪郭線数nLは、それぞれ5本、12本、約65本である。書写の場合には、課題の難易度は、例えば、下地として表示される薄文字の濃さで定義される。
【0091】
提示部240が提示する課題として適正なものは、例えば数十秒~数分程度持続する作業期間を要するものであり、例えば、塗り絵と書写(写経)の他にも、折り紙、クロスワードパズルなどが挙げられる。特に、塗り絵と書写は電子化し易いため、タブレット端末上での提示に適している。しかしながら、例えば数秒で回答できるクイズなどは、感情状態の判定が難しいため、課題としては適していない。足を動かす運動も、心拍間隔に基づく感情判定ができなくなるため、課題としては適していない。このため、提示部240の課題としては、足を使わず、着座したまま、手の動きだけでできるものが好ましい。
【0092】
図14(A)~14(C)は、課題の難易度による正負感情と入力操作の量の変動の差異を示すグラフである。各図では、上側に、使用者の作業中に感情検出部220が算出した最大リアプノフ指数の時間変化を示し、下側に、操作量検出部215が検出した入力操作の量(操作量)を示す。各図の横軸tは時間(秒)であり、縦軸λ,Nは最大リアプノフ指数及び操作量である。グラフ中の領域R+は正の感情に、領域R-は負の感情に、領域R0は正負の中間の感情に、それぞれ対応する。図14(A)~14(C)は、それぞれ、被験者に図13(A)~13(C)の塗り絵の課題が提示された場合の感情状態と操作量の時間変化を示す。図13(A)の塗り絵は難易度が低く被験者にとって簡単過ぎ、図13(B)の塗り絵は被験者にとって適度な難易度であり、図13(C)の塗り絵は難易度が高く被験者にとって難し過ぎるとする。
【0093】
図14(A)~14(C)に示す結果から次のことが分かる。課題が簡単過ぎると、作業中に、操作量は安定して高いが、集中しなくてもできてしまうため、感情状態が負の感情から正の感情に転換され難い。課題の難易度が適正であると、作業中に、操作量は安定して高く、負の感情が正の感情に転換され、正の感情が維持される。課題が難し過ぎると、作業中の操作量と感情状態にバラつきがあり、課題中の難しい箇所で手が止まるため、操作量が一時的に低下し、全体的に正の感情が続いていてもその前後だけ負の感情になる(図14(C)中の時刻ta,tb)。
【0094】
そこで、提示部240は、課題の提示中の期間に感情判定部31により判定される負の感情又は正の感情の発生頻度と、操作量検出部215により検出される入力操作の量とに応じて、異なる難易度の課題を繰り返し提示する。すなわち、提示部240は、感情データメモリ32に記憶されている使用者の正負感情の発生パターンと、操作量とから、使用者にとって適正な難易度を判定し、課題メモリ241内の複数の課題のうちで、新たな課題としてその判定した難易度のものを提示する。
【0095】
例えば、操作量が所定回数以上であり、操作量に係わらず負の感情が所定頻度以上で発生している場合には、提示部240は、課題が簡単過ぎて感情改善の効果が出ていないと判定し、新たな課題として、より難易度の高いものを提示する。操作量が所定回数以上であり、操作量に係わらず正の感情が所定頻度以上で発生している場合には、提示部240は、課題の難易度が適正であり感情改善の効果が出ていると判定し、新たな課題として、前回と同じ難易度のものを提示する。操作量が所定回数以上である状態から所定回数以下に変化したときのみ負の感情の発生頻度が相対的に高くなる場合には、提示部240は、課題が難し過ぎてストレスになっていると判定し、新たな課題として、より難易度の低いものを提示する。
【0096】
表示部250は、出力部の一例であり、提示部240が提示する課題を表示し、その課題が終了した後に、効果判定部35が算出した正の感情の発生率を表示する。表示部250は、こうした表示することで、予防装置3の使用による感情状態の改善効果を使用者に実感させる。表示部250は、課題の提示中(使用者の作業中)に、感情判定部31が負の感情と正の感情の何れの判定をしたかを定期的に表示することで、使用中の感情状態を使用者に報知してもよい。計時部260は、検出装置1の計時部50と同じものである。
【0097】
図15は、予防装置3の動作例を示すフローチャートである。まず、提示部240は、表示部250に課題を提示する(S41)。そして、撮像部210と感情検出部220は、検出装置1と同様に使用者の脈波を検出し(S42)、カオス解析部25は、S42で検出された脈波から最大リアプノフ指数λを算出し(S43)、感情判定部31は、その値を閾値λtと比較する(S44)。
【0098】
感情判定部31は、λがλt以下である場合(S44でYes)には負の感情が発生したと判定し、λがλtよりも大きい場合(S44でNo)には正の感情が発生したと判定して、その旨を感情データメモリ32に記憶する(S45,46)。また、操作量検出部215は、入力部200による使用者の入力操作の量を検出する(S47)。次に、提示部240は、S45,46で記憶された使用者の正負感情の発生パターンとS47で検出された入力操作の量とから、次回使用者に提示する課題の難易度を判定する(S48)。そして、提示部240は課題の提示を終了するか否かを判定する(S49)。終了しない場合(S49でNo)にはS41に戻り、終了する場合(S49でYes)には、効果判定部34は、正の感情の発生率を算出し(S50)、その値を表示部250に表示させて(S51)、一連の処理を終了する。
【0099】
予防装置3は、使用者にとって適正な難易度の軽作業を伴う課題を提示するため、使用者はその課題に集中することができ、その結果、負の感情のことを考えなくなるので、認知症の予防に効果がある。
【0100】
検出装置の検出部は、画像撮影により脈波を検出するものに限らず、非接触での心拍検知が可能なマイクロ波ドップラー方式のもの、又は常時装着の電極方式もしくは光電方式のものなどであってもよい。
【0101】
図16(A)~16(D)は、検出部10b,10cを示す図である。図16(A)~16(C)に示す検出部10bは、心電波を検知するための1組の電極14L,14Rを有する。図16(A)及び16(B)に示すように、電極14L,14Rは、検出部10bの本体ケースの左側側面と右側側面に設けられている。図16(C)に示すように、被験者が両手で検出部10bの本体ケースをつかみ、左手70Lと右手70Rが電極14L,14Rにそれぞれ触れている間に、検出部10bは、被験者の心電波を連続して検知する。このように、心拍情報を検出する検出部は、画像撮影により脈波を検出するものに限らず、電極を有するセンサであってもよい。さらに、検出部10bなどの電極型のセンサでは、被験者が長時間把持し易いように、例えば電極の上面にバンドを設けてもよい。
【0102】
図16(D)に示す検出部10cは、腕時計型の脈波センサである。検出部10cは、時計の裏面に脈波センサ14を有し、時計のバンド16を手70に着けることで脈波を検知し、測定値を時計の表示部15に表示する。検出部10cのように腕時計型の形態であれば、被験者が違和感なくセンサを身に着けて、心拍情報を検出することができる。
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