(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】携帯型ショック検知装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20230731BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20230731BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20230731BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230731BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20230731BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20230731BHJP
H04M 11/04 20060101ALI20230731BHJP
H04M 1/725 20210101ALN20230731BHJP
【FI】
A61B5/11 100
A61B5/113
A61B5/08
A61B5/00 102A
G08B21/02
G08B25/04 K
H04M11/04
H04M1/725
(21)【出願番号】P 2022081511
(22)【出願日】2022-05-18
【審査請求日】2022-05-18
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】522196412
【氏名又は名称】李宗諺
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李宗諺
(72)【発明者】
【氏名】陳▲けい▼煌
(72)【発明者】
【氏名】王馨慧
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-031732(JP,A)
【文献】特開2001-178693(JP,A)
【文献】特開2019-017998(JP,A)
【文献】特開2020-168437(JP,A)
【文献】特開2014-068783(JP,A)
【文献】特開2010-162069(JP,A)
【文献】特開2021-094068(JP,A)
【文献】特開2014-147594(JP,A)
【文献】特表2020-523103(JP,A)
【文献】特開2019-136114(JP,A)
【文献】特表2016-539758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0323879(US,A1)
【文献】特開2003-290159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11
A61B 5/113
A61B 5/08
A61B 5/00
G08B 21/02
G08B 25/04
H04M 11/04
H04M 1/725
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置であって、被測定者の体表面振動データを検出するための振動検出モジュールと、前記振動検出モジュールに電気的に接続され、外部にデータを伝送するための通信モジュールと
、前記被測定者が静止している間に、前記測定装置を体表面に近接させ、前記測定装置の測定基準面を前記被測定者と同一又は反対方向の向きにするために用いられ、前記測定基準面の向きは、前記振動検出モジュールのX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向である装着構造と、を備える測定装置と、
前記体表面振動データに対して心拍抽出処理を実行して心拍に対応する心拍振動データを取得するように、前記通信モジュールに接続された電子装置を制御し、前記心拍振動データに対して心拍評価処理を実行して、前記心拍振動データに基づいて前記被測定者の心拍評価を生成し、前記心拍評価がショックリスクである場合、前記電子装置を制御してショック警告を発するように設定される監視モジュールと、を含
み、
前記監視モジュールは、前記体表面振動データに対して空間領域から周波数領域への変換を実行して体表面スペクトルデータを取得し、心拍の所定周波数に基づいて前記体表面スペクトルデータから心拍スペクトルデータを抽出し、前記心拍スペクトルデータに基づいて周波数領域から空間領域への変換を実行して前記心拍振動データを取得し、前記体表面振動データから前記心拍振動データを減算し、減算したデータを予め設定された呼吸振幅範囲でフィルタリングして呼吸運動データを取得するように設定されている、或いは、前記監視モジュールは、呼吸の所定周波数に基づいて前記体表面スペクトルデータから呼吸スペクトルデータを抽出し、前記呼吸スペクトルデータに対して前記周波数領域から空間領域への変換を実行して前記呼吸運動データを取得し、前記体表面振動データから前記呼吸運動データを減算し、減算したデータを予め設定された心拍振幅範囲でフィルタリングして前記心拍振動データを取得するように設定されている、
携帯型ショック検知装置。
【請求項2】
前記測定装置は、前記通信モジュールに電気的に接続され、前記被測定者の体温データを検出する体温検出モジュールをさらに含み、
前記監視モジュールは、前記心拍評価がショックリスクであり、且つ前記体温データがショック時の体温変化に適合した場合、前記電子装置を制御して警告を発するように設定されている、
請求項1に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項3】
前記監視モジュールは、前記体表面振動データに対してノイズフィルタ処理を実行して、振幅がノイズ閾値より低いか、又は隣接するデータ点の差が差閾値より小さいデータをフィルタリングし、フィルタリングされた前記体表面振動データに対して前記心拍抽出処理を実行するように設定されている、
請求項1に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項4】
前記監視モジュールは、心拍重畳区間に基づいてデータ重畳処理を実行して心拍重畳データを取得し、前記心拍重畳データに対して前記心拍評価処理を実行するように設定されており、
前記心拍重畳データの各データ点は、前記心拍振動データの各前記心拍重畳区間の複数のデータ点に基づいて取得される、
請求項1に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項5】
前記監視モジュールは、前記心拍振動データが心拍監視時間を継続して心拍強度が低下し、或いは心拍数が心拍数の上限より高い又は心拍数の下限より低い場合に、前記心拍評価がショックリスクであると判定するように設定されている、
請求項1に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項6】
前記監視モジュールは、体温データ及び
前記呼吸運動データのうちの少なくとも一つと前記心拍振動データとに基づいて前記心拍評価処理を実行して、前記心拍評価を決定するように設定されている、
請求項1に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項7】
前記監視モジュールは、前記心拍振動データが心拍監視時間を継続して心拍強度を検出できない場合に、前記心拍評価が心停止リスクであると判定するように設定されており、
前記監視モジュールは、前記心拍評価が前記心停止リスクである場合に、前記電子装置を制御して心停止警告を発するように設定されている、
請求項1に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項8】
前記監視モジュールは、前記体表面振動データに対して呼吸抽出処理を実行して呼吸に対応する
前記呼吸運動データを取得し、前記呼吸運動データに対して呼吸評価処理を実行して、前記呼吸運動データに基づいて前記被測定者の呼吸評価を生成し、前記呼吸評価が呼吸不全リスクである場合、前記電子装置を制御して呼吸不全警告を発するように設定されている、
請求項1に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項9】
前記監視モジュールは、呼吸重畳区間に基づいてデータ重畳処理を実行して呼吸重畳データを取得し、前記呼吸重畳データに対して前記呼吸評価処理を実行するように設定されており、
前記呼吸重畳データの各データ点は、前記呼吸運動データの各前記呼吸重畳区間の複数のデータ点に基づいて取得される、
請求
項8に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項10】
前記監視モジュールは、前記心拍振動データ、前記呼吸運動データ、及び体温データに基づいて前記呼吸評価処理を実行して、前記呼吸評価を決定するように設定されている、
請求
項8に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項11】
前記監視モジュールは、前記呼吸運動データが呼吸監視時間を継続して呼吸が低下するか、或いは呼吸数が呼吸数の上限より高い又は呼吸数の下限より低い場合に、前記呼吸評価が呼吸不全リスクであると判定するように設定されている、
請求
項8に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項12】
前記監視モジュールは、前記呼吸運動データが呼吸監視時間を継続して呼吸強度を検出できない場合に、前記呼吸評価が呼吸停止リスクであると判定するように設定されており、
前記監視モジュールは、前記呼吸評価が前記呼吸停止リスクである場合に、前記電子装置を制御して呼吸停止警告を発するように設定されている、
請求
項8に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項13】
前記振動検出モジュールは、加速度計を備え、
前記監視モジュールは、前記体表面振動データから、前記測定基準面に対応する基準軸方向の複数の検出加速度データを抽出して処理を行う前記体表面振動データとするように設定されている、
請求項
1に記載の携帯型ショック検知装置。
【請求項14】
前記通信モジュールは、BLEインタフェースを備え、
前記測定装置は、
電力を蓄積して供給するための電池と、
前記測定装置の状態を表示するための指示モジュールと、をさらに備える、
請求項1に記載の携帯型ショック検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型装置に関し、特に携帯型ショック検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
循環性ショック(circulatory shock)(以下、ショックと称する)は、血液循環が悪くなるため、身体の組織や臓器が十分な酸素を得ることができず、組織障害や臓器障害が起こる病態である。
【0003】
ショックによる個体障害は、早期では可逆性であるが遷延すれば永久的な障害となり、多重臓器不全、突然の心停止、死に至ることもある。したがって、ショックの疑いがある患者に対し、臨床的にはできるだけ早く原因を特定し、多重臓器不全、突然の心停止、或いは死亡の発生を予防するために適切な治療を行う必要がある。
【0004】
ショックの最もよく知られている表現は低血圧である。
【0005】
一般的な状況(家庭や一般病棟等)でのショック監視は、血圧計を用いて血圧を測定し、収縮期血圧や平均動脈圧が低すぎる場合に、ショックが発生する可能性があると判定することが多い。
【0006】
ただし、血圧計は、1回のショック監視しか実行できず、継続的又は長期間にショック監視を行うことができない。また、血圧計を用いて血圧測定を行う毎に数分を要し、その過程で圧脈帯が腕を圧迫して患者に不快感を与えることがある。
【0007】
救急救護(集中治療室等)でのショック監視は、動脈に動脈カテーテルを留置して継続的な血圧監視を行い、継続的なショック監視を実現する。
【0008】
しかしながら、上記装置は、専門医が侵襲的に動脈穿刺を行う必要があり、自宅では自力で行うことはできない。また、侵襲的監視手段を採用しているため、上記装置の使用には血腫や肢虚血等の副作用のリスクがある。また、上記装置は設置が完了した後、患者も装置も勝手に移動することができず、かなり不便である。
【0009】
そのため、従来の衝撃監視装置には上記の問題点があり、より効果的な解決策が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主な目的は、非侵襲的な方法でショックを検知することができ、携帯に便利な携帯用ショック検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る携帯型ショック検知装置は、測定装置と、監視モジュールとを含む。前記測定装置は、被測定者の体表面振動データを検出するための振動検出モジュールと、前記振動検出モジュールに電気的に接続され、外部にデータを伝送するための通信モジュールとを備える。前記監視モジュールは、前記体表面振動データに対して心拍抽出処理を実行して心拍に対応する心拍振動データを取得するように、前記通信モジュールに接続された電子装置を制御し、前記心拍振動データに対して心拍評価処理を実行して、前記心拍振動データに基づいて前記被測定者の心拍評価を生成し、前記心拍評価がショックリスクである場合、前記電子装置を制御してショック警告を発するように設定されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、いつでもどこでも継続的なショック検知を行うことができ、被測定者がショック時に自発的に救助を求めることができ、被測定者は即時に救護を受けることができ、その結果、生存率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るショック検知方法のフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る呼吸評価のフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る体温データを参照して心拍評価及び呼吸評価を検証することを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係るデータ処理のフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の概略図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の装着を示す概略図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の装着を示す概略図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の装着を示す概略図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の装着を示す概略図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る体表面振動データの波形図である。
【
図13】
図12の体表面振動データから抽出された心拍振動データの波形図である。
【
図14】
図12の体表面振動データから抽出された呼吸運動データの波形図である。
【
図15】
図12の体表面振動データから抽出された心拍振動データの波形図である。
【
図16】
図12の体表面振動データから抽出された呼吸運動データの波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施形態については、図面を参照しながら以下に説明する。
【0015】
本発明は、被測定者(患者、動物、又はショックリスクがある他の生物体等)が携帯して装着することができる携帯型ショック検知装置を提供する。携帯型ショック検知装置は、被測定者に装着され、被測定者に対して継続的かつ即時的なショック検知を行うことができる。
【0016】
本発明は、振動検出モジュールにより心拍によって誘発される体表面振動データを測定し、体表面振動データを分析処理(周波数分析、振幅分析、波状分析等)することにより、心臓の拍動強度に関する心拍振動データを取得し、心拍振動データを監視することで、ショックの発生の有無を検知することができる。
【0017】
本発明は、ショック検知のために体表面振動を検出するものであり、体表面振動は外部媒体を介して伝達可能である。したがって、本発明に係る携帯型ショック検知装置の装着は、被測定者の皮膚に直接接触してもよく(パッチや固定紐等の補助具により皮膚に装着する)、被測定者の皮膚に間接的に接触してもよく(衣類や布団に外掛けし、衣類や布団越しに振動を測定する)、装着が容易であり、侵襲的な処置を必要としない。
【0018】
他の実施形態では、本発明はさらに、心拍状態(心拍数や規則性等)と呼吸状態(呼吸数や規則性等)の測定を可能にするために、同じ体表面振動データを用いて分析処理を行うことを提案する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の構成図である。同図を参照すると、本実施形態に係る携帯型ショック検知装置1は、主に測定装置10と、監視モジュール11とを含む。測定装置10は、振動検出モジュール100と通信モジュール101とを備える。
【0020】
振動検出モジュール100(一つ又は複数の加速度計(Accelerometer)、力センサ又は他のタイプの振動センサであってもよく、加速度計は単軸又は多軸加速度計であってもよいが、これに限定されない)。被測定者の体表面の特定部位(例えば胸部や腹部)の心臓拍動によって誘発される振動を検出し、対応する体表面振動データを生成する。
【0021】
通信モジュール101(Bluetooth(登録商標)ネットワークモジュール、ZigBee(登録商標)ネットワークモジュール、Wi-Fiネットワークモジュール、赤外線ネットワークモジュール、RFID伝送、NFC等の無線伝送機等)は、電子装置2に接続され、データ(体表面振動データ又後述する体温データ等)を電子装置2等の外部に送信するために用いられる。
【0022】
監視モジュール11(マイクロコントローラやプロセッサ等のハードコントローラ、又はアプリケーションやファームウェア等の制御ソフトウェア等)は、電子装置2内に設けられ、電子装置2を制御するために用いられる。具体的には、監視モジュール11は、通信モジュール101から上述の体表面振動データを受信するように電子装置2を制御し、体表面振動データに基づいて心拍評価処理を実行して心拍評価を取得し、心拍評価に基づいてショックリスクの有無を判定することができる。
【0023】
一実施形態において、監視モジュール11は、電子装置2が測定装置10のための専用装置である場合、電子装置2のコントローラ、ファームウェア、又は専用チップ等であってもよい。
【0024】
一実施形態において、監視モジュール11は、電子装置2が汎用装置(被測定者のスマートフォーン、スマートウェアラブル装置、タブレット、又は他の携帯型電子装置等)である場合、電子装置2に格納されたアプリケーションであってもよい。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の構成図である。
図1の実施形態に比べて、
図2に示す測定装置10は、制御モジュール102、体温検出モジュール103、指示モジュール104及び電池105のうちの少なくとも一つをさらに含む。
【0026】
制御モジュール102(システムオンチップ(SoC)、マイクロコントローラやプロセッサ等)は、測定装置10の各モジュールに接続され、各モジュールの動作を制御したり、データ/信号の処理を実行したりするために用いられる。
【0027】
体温検出モジュール103(赤外線体温計や接触体温計等)は、被測定者の体温を測定し、対応する体温データを生成するために用いられる。
【0028】
指示モジュール104は、例えば、ドットマトリクスディスプレイ、インジケータ、ブザー、又は他の低電力出力インタフェースであり、測定装置10の状態、例えば、監視中、ペアリング中、ペアリング完了、低電力、充電完了等の動作状態を、画像、照明、及び/又は音声を通して指示するために用いられる。
【0029】
電池105は、ニッケル水素電池、リチウム電池等の充電池、又は水銀電池、アルカリ電池等の使い捨て電池であり、電力を蓄積し、測定装置10の動作に必要な電力を供給するために用いられる。
【0030】
一実施形態において、電子装置2はプロセッサ20(シングルチップシステム、マイクロプロセッサやCPU等)を含んでもよい。プロセッサ20は、電子装置2の各素子に接続され、各素子の動作を制御したり、データ/信号の処理を実行したりするために用いられる。
【0031】
一実施形態において、電子装置2は、通信インタフェース21を含んでもよい。通信インタフェース21及び通信モジュール101は、互換性のある通信技術(Bluetooth通信、Wi-Fi通信、又はZig-Bee通信等)を用いて、相互通信することができる。
【0032】
一実施形態において、通信モジュール101は、BLE(Bluetooth Low Energy)インタフェースを含んでもよく、通信インタフェース21は、互換性のあるBluetooth通信インタフェースを含んでもよく、Bluetooth技術により互いに通信する。LEを用いた通信モジュール101は、電力消費を節約して測定装置10の継続測定時間を向上させることができる。
【0033】
一実施形態において、通信インタフェース21は、ネットワークを介して所定の別の電子装置(救護装置)に接続されてもよい。前述の救護装置は、被測定者の周りのスマート装置(これらのスマート装置は、監視モジュール11をインストールしているか、又は同じ通信技術を用いて電子装置2によって発される警告を受信できる)、被測定者が事前に設定した緊急連絡先のスマート装置、又は救急救護機関(病院や消防隊の管理センター等)であってもよいが、これらに限定されない。
【0034】
これにより、監視モジュール11は、被測定者にショック又は他のリスクが発生したことが検知された場合、周囲の人員、所定の緊急連絡先、又は救急機関に、自動的かつ即時に警告を送信して、被測定者が最も迅速な救急救護を受けることができる。
【0035】
一実施形態において、電子装置2は、マンマシンインタフェース22、例えばインジケータ、スピーカー、マイク、ボタン、タッチスクリーン又は上記任意の組み合わせを含んでもよい。マンマシンインタフェース22は、ユーザ操作を受けること及び情報を提供することに用いられる。
【0036】
一実施形態において、マンマシンインタフェース22は、スピーカーを通して警告音を再生したり、スクリーンを通して警告画像を表示したり、インジケータを通して警告灯番号を表示したりするような警告を発するために用いられてもよい。
【0037】
ストレージ23は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、他のメモリ、又は上記任意の組み合わせであってもよく、データを格納するために用いられる。
【0038】
一実施形態において、プロセッサ20は、監視モジュール11を含んでもよい。監視モジュール11は、本発明に係る心拍評価(ショック検知、心拍停止検知等を含む)、呼吸評価(呼吸不全検知、呼吸停止検知等を含む)、自動警告、データ処理等の機能を実行するように設定されている。
【0039】
監視モジュール11はモジュール30~37を含んでもよい。これらのモジュール30~37は、それぞれ異なる機能を実行するように設定されている。
【0040】
心拍抽出モジュール30は、体表面振動データから心拍に対応する心拍振動データを抽出するために用いられる。
【0041】
心拍評価モジュール31は、心拍振動データに基づいて心拍評価処理を実行し、ショック検知や心停止検知等を行うための心拍評価を生成する。心拍評価モジュール31は、心拍数や心拍強度等の他の心拍関連情報をさらに監視してもよい。
【0042】
呼吸抽出モジュール32は、体表面振動データから呼吸に対応する呼吸運動データを抽出するために用いられる。
【0043】
呼吸評価モジュール33は、心拍振動データに基づいて呼吸評価を行い、呼吸評価を生成するために用いられる。
【0044】
体温抽出モジュール34は、体温検出データを取得し、体温検出データと体表面振動データとをタイミング合わせして、体表面振動データの各データ点(検出時点や検出タイミング等)の体温値を分析するために用いられる。
【0045】
警告制御モジュール35は、リスク(ショックリスク又は呼吸不全リスク等)が検知された場合に警告を発するために用いられる。
【0046】
データ選別モジュール36は、データ(体表面振動データと体温データ等)に対して分析、変換、フィルタリング等の処理を実行するために用いられる。
【0047】
空間領域-周波数領域変換モジュール37は、データ(体表面振動データと体温データ等)を空間領域と周波数領域の間に変換するために用いられる。
【0048】
前述の監視モジュール11及びモジュール30~37は、相互接続(電気接続及び情報接続であってもよい)であり、ハードウェアモジュール(例えば、電子回路モジュール、集積回路モジュール、SoC等)、ソフトウェアモジュール(例えば、ファームウェア、作業システムやアプリケーションプログラム)、又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0049】
なお、前述の監視モジュール11及びモジュール30~37がソフトウェアモジュール(例えば、ファームウェア、作業システムやアプリケーションプログラム)である場合、ストレージ23は、非一時的なコンピュータ可読記録媒体(図示せず)を含んでもよい。上記非一時的なコンピュータ可読記録媒体には、コンピュータプログラム230が格納され、コンピュータプログラム230には、コンピュータ実行可能なプログラムコードが記憶されている。プロセッサ20は、上記プログラムコードを実行すると、対応する監視モジュール11及びモジュール30~37として機能することができる。
【0050】
図7は、本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の概略図である。
図7に示す測定装置4は、体表面(胸部や腹部等)にフィットする、置く、又は着用するのに適した扁平な外殻体を用いる。
【0051】
一実施形態において、測定装置4の電池105は、充電式電池(又は、充電式電池と使い捨て電池の両方)を用い、充電式電池に接続された充電口40と、関連する充電回路(図示せず)とをさらに設けてもよく、電池交換コストを節約することができる。
【0052】
一実施形態において、測定装置4は、測定装置4の現在の状態を示すために、インジケータ41(複数のLEDや多色LED等)をさらに備えてもよい。
【0053】
図8~
図11を併せて参照されたい。
図8は、本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の装着を示す概略図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の装着を示す概略図である。
図10は、本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の装着を示す概略図である。
図11は、本発明の一実施形態に係る携帯型ショック検知装置の装着を示す概略図である。
【0054】
図8に示すように、電子装置51は、測定装置50とペアリングして接続されてもよい。電子装置51は、接続が完了すると、測定装置50の検出データを取得することができる。次に、被測定者は、測定装置50を上着のポケットに直接置くことができ、測定装置50は、上着越しに被測定者の胸部の振動及び体温を検出し、体表面振動データ及び体温データを電子装置51に即時に伝送することができる。
【0055】
なお、被測定者が歩行した場合に検出される体表面振動データには、歩行による振動(ノイズ)が含まれており、ショック検知の誤判定を引き起こす可能性がある。これに対して、電子装置51は、(波形分析等により)体表面振動データの振動源数を継続的に分析して被測定者が静止状態にあるか否かを判定し、被測定者が静止している間にショック検知を開始することができる。
【0056】
一実施形態では、
図9~
図11に示すように、測定装置52は装着構造を含んでもよい。装着構造は、測定装置50を体表面に近接又はフィットするために用いられ、良好な振幅の体表面振動データを取得することができ、体表面振動データのノイズを低減することができる。
【0057】
図9の実施形態では、装着構造は固定クリップである。測定装置52は、固定クリップを介して上着ポケット内に固定することができ、安定して胸部に密着し、胸部表面の体表面振動データを取得することができる。
【0058】
図10示す実施形態では、装着構造はネックレスチェーン(又は首輪)である。被測定者は、測定装置52をネックレスのように首に吊り下げている。被測定者の移動に伴って測定装置52が揺れるが、被測定者の静止時には、測定装置52が静止して胸部表面にフィットし、胸部表面の体表面振動データを取得することができる。
【0059】
図10の実施形態では、装着構造は固定紐である。被測定者は、固定紐を介して測定装置52を胸部表面に縛ることにより、胸部表面の体表面振動データを安定して取得することができる。
【0060】
図10の他の実施形態では、被測定者は、固定紐を介して測定装置53を腹部表面に縛ることにより、腹部表面の体表面振動データを安定して取得することができる。
【0061】
一実施形態では、装着構造はパッチ構造であってもよい。被測定者は、パッチ構造を介して測定装置52、53を着脱可能に体表面に装着することにより、体表面の体表面振動データを安定して取得することができる。
【0062】
一実施形態において、測定装置は、振動検出モジュール100が3軸加速度計を含む場合には、測定基準面を定義することができる。この測定基準面の向きは、3軸加速度計のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のうちの一つである(基準軸方向)。これにより、測定基準面が体表面と平行するときに、基準軸方向の体表面振動データは体表面振動データである。
【0063】
また、監視モジュール11は、体表面振動データから測定基準面に対応する基準軸方向の複数の検出加速度データを直接抽出して、後続の分析処理を行うための体表面振動データとすることができる。
【0064】
例えば、測定基準面が3軸加速度計の対応するZ軸方向である場合、測定基準面はZ軸に垂直である。
【0065】
図9~
図11に示すように、ユーザが測定装置52の測定基準面を被測定者の前方又は後方、即ち測定基準面を被測定者と同一又は反対方向に向けた場合、Z軸方向がちょうど体表面振動方向となる。これにより、本発明は3軸体表面振動データ(X-Y-Z軸)を受信するときに、X軸とY軸の検出値を直接除去して、Z軸の検出値だけを体表面振動データとする、即ち3次元データを1次元データに下げることになる。
【0066】
図3は、本発明の一実施形態に係るショック検知方法のフローチャートである。本発明の様々な実施形態のショック検知方法は、いずれかの実施形態に係る携帯型ショック検知装置によって実施されてもよいが、以下、
図2の携帯型ショック検知装置1を例にして説明する。
【0067】
被測定者は、測定装置10と監視モジュール11を実行する電子装置2とのペアリングが完了した後、測定装置10を体表面の近傍に配置して、本発明のショック検知方法の実行を開始することができる。
【0068】
ステップS10において、体表面振動データを取得する。測定装置10の振動検出モジュール100は、体表面の振動を検出して体表面の体表面振動データを取得して、通信モジュール101により電子装置2の通信インタフェース21に伝送する。
【0069】
ステップS11において、監視モジュール11は、心拍抽出モジュール30により、取得した体表面振動データに対して心拍抽出処理を実行し、心拍振動に対応する心拍振動データを取得する。
【0070】
ステップS12において、監視モジュール11は、心拍評価モジュール31により、心拍振動データに対して心拍評価処理を実行して心拍評価を取得する。
【0071】
一実施形態において、前述の心拍評価処理は、心拍振動データから心拍振動強度を取得し、ショックや他の心疾患(心停止等)の有無の参考として、心拍が微弱又は停止しているか否かを判定することである。
【0072】
一実施形態において、前述の心拍評価は、正常、心拍数が速すぎる、心拍数が遅すぎる、強度が強すぎる、強度が微弱である、心停止(振動を検出できない)等の心拍状態を直接表してもよく、又は正常とショックの2つの状態のみを表してもよい。
【0073】
一実施形態では、判定誤差を考慮して、本発明は、複数の連続値からなる1群の指定範囲(例えば、1~10)を設定し、指定範囲の両端の値を、それぞれ、プラス評価(例えば、1に近いほど、心拍が正常である可能性が高いことを示す)及びマイナス評価(例えば、10に近いほど、リスク(ショックリスク等)である可能性が高いことを示す)に設定してもよい。また、前述のショック検知では、検知結果の信頼度に応じて指定範囲の値を与えて心拍評価とすることができる。例えば、心拍振動が悪くなった場合には6~10のマイナス評価を与え、心拍振動が良い場合には1~5のプラス評価を与えてもよい。
【0074】
ステップS13において、監視モジュール11は、心拍評価モジュール31により、決定された心拍評価においてショックリスクがあるか否かを判定し、例えば、心拍強度が0であるか又はショックを起こす可能性のある強度閾値より低いか、心拍数がショックを起こす可能性のある心拍数閾値より高いか、又は明らかなマイナス評価(例えば8~10)であるかを判定する。
【0075】
監視モジュール11は、心拍評価がショックリスクと判定した場合にはステップS14を実行し、そうでない場合には、ステップS15を実行する。
【0076】
ステップS14において、監視モジュール11は、通信インタフェース21を通して救護装置に救助要請メッセージを発したり、マンマシンインタフェース22を通して警告音を発したりするように、警告制御モジュール35により警告(ショック警告)を発する。
【0077】
ステップS15において、監視モジュール11は、被測定者が測定装置10を取り外すか、又は測定装置10/監視モジュール11を閉じる場合、ショック検知が終了したか否かを判定する。
【0078】
そうである場合には、監視モジュール11はショック検知を終了し、そうでない場合には、監視モジュール11はステップS10~ステップS15を再度実行してショック検知を継続的に実行する。
【0079】
本発明に係る携帯型ショック監視装置は、振動検出モジュールのみを用いることにより、小型、携帯容易、低コスト等の利点があり、心拍の評価指標を自動的に決定することができるため、ショックのモバイル監視に適している。
【0080】
本発明によれば、いつでもどこでも継続的なショック検知を行うことができ、被測定者がショック時に自発的に救助を求めることができ、被測定者は即時に救護を受けることができ、その結果、生存率を向上させることができる。
【0081】
図3及び
図4を併せて参照されたい。
図4は、本発明の一実施形態に係る呼吸評価のフローチャートである。本実施形態に係るショック検知方法は、ステップS20~ステップS25で実現される呼吸評価機能をさらに含んでもよく、同じ体表面振動データに基づいて呼吸状態を判定し、呼吸異常(呼吸不全等)時に自発的に救助を求めることができる。
【0082】
ステップS20において、監視モジュール11は、測定装置10から体表面振動データを取得する。
【0083】
ステップS21において、監視モジュール11は、呼吸抽出モジュール32により、体表面振動データに対して呼吸抽出処理を実行し、呼吸運動に対応する呼吸運動データを取得する。
【0084】
ステップS22において、監視モジュール11は、呼吸評価モジュール33により、呼吸運動データに対して呼吸評価検出処理を実行することで、呼吸運動データに基づいて被測定者の呼吸評価を生成する。
【0085】
一実施形態において、前述の呼吸評価処理は、呼吸運動データから呼吸運動の強度と呼吸数を取得し、呼吸不全や他の呼吸障害の有無の参考として、呼吸が急速、微弱、又は停止しているか否かを判定することである。
【0086】
一実施形態において、前述の呼吸評価は、例えば、正常、呼吸数が速すぎる、呼吸数が遅すぎる、強度が強すぎる、強度が微弱である、呼吸停止(呼吸運動を検出できない)等の呼吸状態を直接表してもよく、又は正常と呼吸不全の2つの状態のみを表してもよい。
【0087】
一実施形態では、判定誤差を考慮して、本発明は、複数の連続値からなる1群の指定範囲(例えば、1~10)を設定し、指定範囲の両端の値を、それぞれ、プラス評価(例えば、1に近いほど、呼吸が正常である可能性が高いことを示す)及びマイナス評価(例えば、10に近いほど、呼吸が不調である可能性が高いことを示す)に設定してもよい。また、前述の呼吸評価では、検知結果の信頼度に応じて指定範囲の値を与えて呼吸評価とすることができる。例えば、呼吸強度や呼吸数が悪くなった場合には6~10のマイナス評価を与え、呼吸強度や呼吸数が良い場合には1~5のプラス評価を与えてもよい。
【0088】
ステップS23において、監視モジュール11は、呼吸評価モジュール33により、決定された呼吸評価において呼吸不全リスク(他の呼吸障害リスクを含む)があるか否かを判定し、例えば、呼吸強度が呼吸不全を起こす可能性のある強度閾値より低いか、呼吸数が呼吸不全を起こす可能性のある呼吸数閾値より高いか、又は明らかなマイナス評価(例えば8~10)であるかを判定する。
【0089】
監視モジュール11は、呼吸評価が呼吸不全リスクと判定した場合にはステップS24を実行し、そうでない場合には、ステップS25を実行する。
【0090】
ステップS24において、監視モジュール11は、通信インタフェース21を通して救護装置に救助要請メッセージを発したり、マンマシンインタフェース22を通して警告音を発したりするように、警告制御モジュール35により警告(呼吸不全警告)を発する。
【0091】
ステップS25において、監視モジュール11は、被測定者が測定装置10を取り外すか、又は測定装置10/監視モジュール11を閉じる場合、呼吸評価が終了したか否かを判定する。
【0092】
そうである場合には、監視モジュール11は呼吸評価を終了し、そうでない場合には、監視モジュール11は、ステップS20~ステップS25を再度実行して呼吸評価を継続的に実行する。
【0093】
本発明によれば、いつでもどこでも継続的な呼吸評価を行うことができ、被測定者が呼吸不全に陥った場合に自発的に救助を求めることができ、被測定者は即時に救護を受けることができ、その結果、生存率を向上させることができる。
【0094】
図3~
図5を併せて参照されたい。
図5は、本発明の一実施形態に係る体温データを参照して心拍評価及び呼吸評価を検証することを示すフローチャートである。本実施形態に係るショック検知方法は、さらに体温データを参照して心拍評価と呼吸評価の正確性を検証するものである。
【0095】
ステップS30において、監視モジュール11は、測定装置10から体表面振動データを取得するとともに、体温検出モジュール103によって検出された体温データを取得する。
【0096】
ステップS31、ステップS32及びステップS35の実行内容は、
図3のステップS11~ステップS14の実行内容と同様であってもよいので、重複する説明を省略する。
【0097】
ステップS33、ステップS34及びステップS35の実行内容は、
図4のステップS21~ステップS24の実行内容と同様であってもよいので、重複する説明を省略する。
【0098】
一実施形態では、ステップS31、ステップS32及びステップS35において、心拍振動データに基づいて他のリスク(心停止リスク、頻拍リスクや徐拍リスク等)に対する心拍評価を算出し、算出された心拍評価に基づいて対応するリスクが存在するか否かを判定し、リスクが発見された場合に警告を発することができる。
【0099】
心停止リスクを例にとると、心拍振動データが予め設定された心拍監視時間を継続して心拍強度を検出できない場合には、心拍評価が心停止リスクであると判定し、心停止警告を発することができる。
【0100】
頻拍/徐拍を例にとると、心拍振動データが予め設定された心拍監視時間を継続して予め設定された心拍数の上限よりも高いか、又は予め設定された心拍数の下限よりも低い場合には、心拍評価が頻拍リスク又は徐拍リスクであると判定し、頻拍警告又は徐拍警告を発することができる。
【0101】
一実施形態では、ステップS33、S34、S35において、呼吸運動データに基づいて他のリスク(呼吸停止リスク、過剰呼吸リスク、又は減弱呼吸リスク等)に対する呼吸評価を算出し、算出された呼吸評価に基づいて対応するリスクが存在するか否かを判定し、リスクが発見された場合に警告を発することができる。
【0102】
呼吸停止リスクを例にとると、呼吸運動データが予め設定された呼吸監視時間を継続して呼吸強度を検出できない場合には、呼吸評価が呼吸停止リスクであると判定し、呼吸停止警告を発することができる。
【0103】
過剰呼吸リスク/減弱呼吸リスクを例にとると、呼吸運動データの振幅が予め設定された呼吸監視時間を継続して予め設定された呼吸振幅の上限よりも高いか、又は予め設定された呼吸振幅の下限よりも低い場合には、呼吸評価が過剰呼吸リスク又は減弱呼吸リスクであると判定し、過剰呼吸警告又は減弱呼吸警告を発することができる。
【0104】
本実施形態では、いずれかのリスクが検知された後、さらにステップS36を実行してもよい。ステップS36において、監視モジュール11は、体温データの変化がリスクに対応する条件を満たしているか否かを判定する(ショック時の体温低下や呼吸不全時の体温上昇、及び体温が不自然に上昇又は低下しているか否かを検知する)。
【0105】
一実施形態において、本発明は、心拍振動データ、呼吸運動データ及び体温データを併せて参照して、心拍評価及び呼吸評価を総合的に行うことができる。
【0106】
体温変化が条件を満す場合には、ステップS37を実行し、そうでない場合には、監視モジュール11は、ステップS38を実行する。
【0107】
ステップS37において、監視モジュール11は、警告制御モジュール35により警告を発する。
【0108】
ステップS38において、監視モジュール11は、マンマシンインタフェース22を介して被測定者に誤判定であるか否かの確認を要求し、誤判定が確認された場合には、ステップS35で発された警告を直ちに停止又は修正することができる。
【0109】
一実施形態では、ステップS35は、被測定者が予め設定された時間を超えて確認しなかった(意識が失われている)ことが確認された場合のみに警告を発するものであり、即ち、ステップS38において確認が行われていない場合にステップS36を実行するので、誤警告を低減することができる。
【0110】
ステップS39において、監視モジュール11は、被測定者が測定装置10を取り外すか、又は測定装置10/監視モジュール11を閉じる場合、呼吸評価が終了したか否かを判定する。
【0111】
そうである場合には、監視モジュール11は実行を終了し、そうでない場合には、監視モジュール11は、ステップS30~ステップS39を再度実行して継続的に実行する。
【0112】
このようにして、本発明は、体温検出を加えることにより、検知の精度と警告の正確性を効果的に向上させることができ、より多くの心臓と呼吸のリスクを検出することができる。
【0113】
図3~
図6を併せて参照されたい。
図6は、本発明の一実施形態に係るデータ処理のフローチャートである。本実施形態に係る3種類のデータ処理法(閾値フィルタリング、領域変換とデータ重畳)は、ノイズ除去、及び/又は体表面振動データから心拍振動データと呼吸運動データを識別することができる。
【0114】
閾値フィルタリングは、以下のステップS40を含む。
【0115】
ステップS40において、監視モジュール11は、データ選別モジュール36により、体表面振動データに対してノイズフィルタ処理を実行し、ノイズをフィルタリングする。
【0116】
一実施形態において、監視モジュール11は、体表面振動データからノイズ閾値よりも低い振幅を有するデータをフィルタリングする。
【0117】
一実施形態において、監視モジュール11は、体表面振動データの隣接するデータ点の差を算出し、差が差閾値より小さいデータをフィルタリングする。
【0118】
一実施形態において、監視モジュール11は、心拍振動データ及び呼吸運動データに対して上述のノイズフィルタ処理を実行して、心拍振動データ及び呼吸運動データからノイズを除去してもよい。前述の処理では、用いるノイズ閾値が異なってもよい。例えば、心拍のノイズ閾値を高く(心拍振動の変化幅が大きい)、呼吸のノイズ閾値を低く(呼吸運動の変化幅が小さい)にしてもよいが、これらに限定されない。
【0119】
一実施形態において、監視モジュール11は、データ選別モジュール36により、予め設定された心拍振幅範囲又は呼吸振幅範囲に基づいて、体表面振動データから振幅範囲に対応する心拍振動データ又は呼吸運動データをフィルタリングすることができる。
【0120】
領域変換は、以下のステップS50~ステップS52を含む。
【0121】
ステップS50において、監視モジュール11は、空間領域-周波数領域変換モジュール37により、体表面振動データに対して空間領域から周波数領域への変換処理(高速フーリエ変換、離散ウェーブレット変換等)を行い、体表面スペクトルデータを取得する。
【0122】
ステップS51において、監視モジュール11は、体表面スペクトルデータから所定の周波数に適合する周波数帯域の体表面スペクトルデータをフィルタリングする。
【0123】
例えば、一般には、呼吸周波数は1分間に10~20回(呼吸の所定周波数)であり、心拍周波数は1分間に60~100回(心拍の所定周波数)である。監視モジュール11は、上記周波数に基づいて、周波数に適合する呼吸スペクトルデータ又は心拍スペクトルデータを抽出することができる。
【0124】
ステップS52において、監視モジュール11は、空間領域-周波数領域変換モジュール37により、予め設定された周波数に適合する体表面スペクトルデータ(呼吸スペクトルデータ又は心拍スペクトルデータ)に対して周波数領域-空間領域変換処理を行い、空間領域の呼吸運動データ又は心拍振動データを取得する。
【0125】
一実施形態において、監視モジュール11は、心拍振動データを取得した後に、体表面振動データから心拍振動データを減算し、その結果を呼吸運動データとすることができる。
【0126】
一実施形態において、監視モジュール11は、呼吸運動データを取得した後に、体表面振動データから呼吸運動データを減算し、その結果を心拍振動データとすることができる。
【0127】
前述の心拍抽出処理は、体表面振動データから心拍に属さない他の体表面振動データを除去し、残りのデータを心拍振動データとすることを含んでもよい。
【0128】
【0129】
図12は、測定装置10によって感知された体表面振動データを示しており、対応する振動成分には、心拍振動、呼吸運動、及び他の振動(ノイズ)が含まれている。
【0130】
本発明に係る心拍抽出モジュール30は、空間領域の体表面振動データを体表面スペクトルデータに変換し、心拍の所定周波数に基づいて体表面スペクトルデータから心拍スペクトルデータを分離することができる。最後に、心拍スペクトルデータを空間領域の心拍振動データ(
図15に示す)に変換する。
【0131】
さらに、本発明に係る呼吸抽出モジュール32は、呼吸の所定周波数に基づいて体表面スペクトルデータから呼吸スペクトルデータを分離することができる。最後に、呼吸スペクトルデータを空間領域の呼吸運動データ(
図16に示す)に変換する。
【0132】
また、本発明に係る監視モジュール11は、心拍振動データ(
図15)及び呼吸運動データ(
図16)に対して後続の分析と処理を行い、対応する心拍波形図及び呼吸波形図を取得することができる。前述の波状図は心拍と呼吸の関連病症、例えばショック、心拍停止、呼吸不全、呼吸中止等を即時に検知することができる。
【0133】
データ重畳は、以下のステップS60を含む。
【0134】
ステップS60において、監視モジュール11は、体表面振動データ(例えば、心拍振動データ又は呼吸運動データ)に対してデータ重畳処理を行い、簡略化されたデータを取得する。
【0135】
一実施形態において、監視モジュール11は、予め設定された重畳区間(サンプリング周波数及び/又は心拍周波数に基づいて決定することができ、例えば、心拍重畳区間は25又は25~30のうちの他の値であってもいが、これらに限定されない)に基づいて、心拍振動データに対してデータ重畳処理を実行して心拍重畳データを取得し、心拍重畳データに対して前述の心拍評価処理を実行する。前述の心拍重畳データの各データ点は、心拍振動データの各重畳区間の複数のデータ点(の累積又は平均)に基づいて取得される。
【0136】
一実施形態において、ショック検知は、心拍重畳データが予め設定された心拍監視時間(5秒や20秒等)を継続して心拍強度が低下し、及び/又は心拍数が速すぎたり遅すぎたりする場合(予め設定された心拍数の上限よりも高いか、又は予め設定された心拍数の下限よりも低い)場合には、心拍評価がショックリスクであると判定する。
【0137】
一実施形態において、ショック検知は、心拍重畳データが予め設定された心拍監視時間を継続して心拍強度を検出できない場合(心拍がないか、心拍強度が弱い場合)には、心拍評価が心停止リスクであると判定する。
【0138】
一実施形態において、監視モジュール11は、予め設定された重畳区間(サンプリング周波数及び/又は呼吸周波数に基づいて決定することができ、例えば、呼吸重畳区間は300又は200~400のうちの他の値であってもいが、これらに限定されない)に基づいて、呼吸運動データに対してデータ重畳処理を実行して呼吸重畳データを取得し、呼吸重畳データに対して呼吸評価処理を実行する。前述の呼吸重畳データの各データ点は、呼吸運動データの各重畳区間の複数のデータ点(の累積又は平均)に基づいて取得される。
【0139】
一実施形態において、呼吸評価は、呼吸重畳データが予め設定された監視時間(60秒や90秒等)を継続して呼吸強度が低下し、及び/又は呼吸数が速すぎたり遅すぎたりする場合(予め設定された呼吸数の上限よりも高いか、又は予め設定された呼吸数の下限よりも低い)場合には、呼吸評価が呼吸不全リスクであると判定する。
【0140】
一実施形態において、呼吸評価は、呼吸重畳データが予め設定された監視時間を継続して呼吸強度を検出できない場合(呼吸がないか、呼吸強度が弱い場合)には、呼吸評価が呼吸停止リスクであると判定する。
【0141】
図12~
図14を参照されたい。
図12は、本発明の一実施形態に係る体表面振動データの波形図であり、
図13は、
図12の体表面振動データから抽出された心拍振動データの波形図であり、
図14は、
図12の体表面振動データから抽出された呼吸運動データの波形図である。
図13及び
図14では、データ重畳のアルゴリズムを用いて、体表面振動データから心拍振動データ及び呼吸運動データを分離する。
【0142】
図12は、測定装置10によって感知された体表面振動データを示しており、対応する振動成分には、心拍振動、呼吸運動、及び他の振動(ノイズ)が含まれている。
【0143】
本実施形態では、ショック検知を正確に行い、正確な心拍評価を取得するために、体表面振動データの隣接するデータ点の振幅差データを先に算出してもよい。例えば、1つ目と2つ目の振幅差、2つ目と3つ目の振幅差を算出し、以後、同様のことを繰り返す。
【0144】
次に、振幅差データからノイズ閾値(例えば8)より小さいデータを削除し、フィルタリングされた振幅差データを取得する。
【0145】
次に、所定の数(例えば、心拍重畳区間が25)の連続的な振幅差を累積して心拍振動データを取得する。例えば、1~25つ目の振幅差を累積して1つ目の心拍振動データとし、2~26つ目の振幅差を累積して2つ目の心拍振動データとし、以後、同様のことを繰り返す。
【0146】
このようにして、本実施形態では、取得された心拍振動データの波形図により、心拍の強さと周波数を明確に知ることができ、ショックや他の心疾患の発生を即時に検知することができる。
【0147】
また、本実施形態では、正確な呼吸評価を得るために、
図12の体表面振動データの所定の数(例えば、呼吸重畳区間が300)の隣接する複数のデータ点を先に取得して平均化し、処理された呼吸運動データを取得する。例えば、1~300つ目のデータを平均化して1つ目の呼吸運動データとし、2~301つ目のデータを平均化して2つ目の呼吸運動データとし、以後、同様のことを繰り返す。
【0148】
このようにして、本実施形態では、取得された呼吸運動データの波形図により、呼吸の強さと周波数を明確に知ることができ、呼吸不全や他の呼吸障害の発生を即時に検知することができる。
【0149】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、上記変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0150】
1 携帯型ショック検知装置
10 測定装置
100 振動検出モジュール
101 通信モジュール
102 制御モジュール
103 体温検出モジュール
104 指示モジュール
105 電池
11 監視モジュール
2 電子装置
20 プロセッサ
21 通信インタフェース
22 マンマシンインタフェース
23 ストレージ
230 コンピュータプログラム
30 心拍抽出モジュール
31 心拍評価モジュール
32 呼吸抽出モジュール
33 呼吸評価モジュール
34 体温抽出モジュール
35 警告制御モジュール
36 データ選別モジュール
37 空間領域-周波数領域変換モジュール
38 心拍評価モジュール
4 測定装置
40 充電口
41 インジケータ
50、52、53 測定装置
51 電子装置