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特許7322265電気化学セルスタック、燃料電池および水素製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】電気化学セルスタック、燃料電池および水素製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2484 20160101AFI20230731BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20230731BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230731BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20230731BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230731BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20230731BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20230731BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230731BHJP
【FI】
H01M8/2484
H01M8/2483
H01M8/04 Z
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B9/77
C25B15/08 302
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022181397
(22)【出願日】2022-11-11
(62)【分割の表示】P 2018164756の分割
【原出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2023010793
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】吉野 正人
(72)【発明者】
【氏名】浅田 隆利
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0193825(US,A1)
【文献】国際公開第2018/154656(WO,A1)
【文献】実開平04-124752(JP,U)
【文献】特開平01-298653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルとセパレータとが交互に積層されると共に、前記セルの側面が前記セパレータに囲われた積層体と、
前記積層体の中間に挟まれ、外部から燃料ガスを導入する燃料導入部および外部から空気を導入する空気導入部をそれぞれ具備するマニホールドと、
前記セルに供給される燃料ガスの流路である燃料供給流路と、
前記セルに供給される空気の流路である空気供給流路と、を備え、
前記セルは、前記マニホールドよりも積層方向上側に第1のセル群および第2のセル群を形成するとともに、前記マニホールドよりも積層方向下側に第3のセル群および第4のセル群を形成し、
前記燃料供給流路は、前記第1のセル群の各セルに燃料ガスを供給するために、前記燃料導入部から前記セパレータを貫き積層方向上側に延びる第1の燃料供給路と、前記第2のセル群の各セルに燃料ガスを供給するために、前記燃料導入部から前記第1の燃料供給路とは異なる位置で前記セパレータを貫き積層方向上側に延びる第2の燃料供給路と、前記第3のセル群の各セルに燃料ガスを供給するために、前記燃料導入部から前記セパレータを貫き積層方向下側に延びる第3の燃料供給路と、前記第4のセル群の各セルに燃料ガスを供給するために、前記燃料導入部から前記第3の燃料供給路とは異なる位置で前記セパレータを貫き積層方向下側に延びる第4の燃料供給路と、を含む、電気化学セルスタック。
【請求項2】
前記空気供給流路は、前記第1のセル群の各セルに空気を供給するために、前記空気導入部から前記セパレータを貫き積層方向上側に延びる第1の空気供給路と、前記第2のセル群の各セルに空気を供給するために、前記空気導入部から前記第1の空気供給路とは異なる位置で前記セパレータを貫き積層方向上側に延びる第2の空気供給路と、前記第3のセル群の各セルに空気を供給するために、前記空気導入部から前記セパレータを貫き積層方向下側に延びる第3の空気供給路と、前記第4のセル群の各セルに空気を供給するために、前記空気導入部から前記第3の空気供給路とは異なる位置で前記セパレータを貫き積層方向下側に延びる第4の空気供給路と、を含む、請求項1に記載された電気化学セルスタック。
【請求項3】
セルとセパレータとが交互に積層されると共に、前記セルの側面が前記セパレータに囲われた積層体と、
前記積層体の中間に挟まれ、外部から燃料ガスを導入する燃料導入部および外部から空気を導入する空気導入部をそれぞれ具備するマニホールドと、
前記セルに供給される燃料ガスの流路である燃料供給流路と、
前記セルに供給される空気の流路である空気供給流路と、を備え、
前記セルは、前記マニホールドよりも積層方向上側に第1のセル群および第2のセル群を形成するとともに、前記マニホールドよりも積層方向下側に第3のセル群および第4のセル群を形成し、
前記空気供給流路は、前記第1のセル群の各セルに空気を供給するために、前記空気導入部から前記セパレータを貫き積層方向上側に延びる第1の空気供給路と、前記第2のセル群の各セルに空気を供給するために、前記空気導入部から前記第1の空気供給路とは異なる位置で前記セパレータを貫き積層方向上側に延びる第2の空気供給路と、前記第3のセル群の各セルに空気を供給するために、前記空気導入部から前記セパレータを貫き積層方向下側に延びる第3の空気供給路と、前記第4のセル群の各セルに空気を供給するために、前記空気導入部から前記第3の空気供給路とは異なる位置で前記セパレータを貫き積層方向下側に延びる第4の空気供給路と、を含む、電気化学セルスタック。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載された電気化学セルスタックを備える燃料電池。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載された電気化学セルスタックを備える水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気化学セルスタック、燃料電池および水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平板型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)および固体酸化物形電解セル(SOEC)の最小構成単位である電気化学セル(以下ではセルという)は、燃料極と、電解質と、空気極とを順次積層して形成される。このセルがSOFCに搭載される場合には、燃料極に燃料ガス(水素や一酸化炭素)を、空気極に空気をそれぞれ外部から供給し、セルにおいて電気化学反応を引き起こす。その結果、セルでは電気エネルギーが生成される。一方、このセルがSOECに搭載される場合には、外部から燃料極に燃料ガス(水蒸気)を供給すると共に、外部からセルに電気エネルギーを供給し、セルにおいて水蒸気を酸素と水素とに電気分解する。
【0003】
平板型の電気化学セルスタック(以下ではセルスタックという)は、セルとセパレータとを交互に積層した積層体であり、このセルスタックに隣接して外部から燃料ガスと空気とをそれぞれ導くマニホールドが設けられる。このマニホールドは、例えばセルスタックの積層方向上下側の端面や、セルスタックの側面に配置されている。セパレータには、積層方向に貫設された燃料供給孔および空気供給孔と、燃料供給孔に連結される燃料供給横孔と、空気供給孔に連結される空気供給横孔とが設けられる。燃料供給孔と空気供給孔とは、積層体の積層方向に延びる流路をそれぞれ形成する。燃料供給横孔は、燃料供給孔と各セルの燃料極とを連結して、燃料供給孔と共に燃料ガスの流路を構成する。空気供給横孔は、空気供給孔と各セルの空気極とを連結して、空気供給孔と共に空気の流路を構成する。
【0004】
すなわち、外部からマニホールドに導かれた燃料ガスは、燃料供給孔、燃料供給横孔を順次経て燃料極へ供給される。また、セルスタックがSOFCに搭載される場合には、外部からマニホールドに導かれた空気が、空気供給孔、空気供給横孔を順次経て空気極へ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-81813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、SOFCにおける電気エネルギーの発電量や、SOECにおける酸素および水素の生成量を増やす(以下、これらを総称してセルスタックの大容量化という)には、複数のセルスタックを集積するか、一つのセルスタックに積層されるセルの積層数を増やすことが必要である。このうち、複数のセルスタックを集積する場合には、積層方向と直交する方向にセルスタック同士を集積するため、その設置に広いスペースを要する。したがって、大容量かつ設置スペースによらないセルスタックの実現のためには、一つのセルスタック内部に積層されるセルの数を増やすことが求められる。
【0007】
しかしながら、一つのセルスタックに積層されるセルの積層数が増加すると、燃料ガスや空気の供給量がマニホールドにより近い側のセルほど多くなり、その積層方向で偏りを生じる。燃料ガスや空気の供給量に偏りが生じると、各セルでの反応量に差が生じるために反応量の多いセル(マニホールドにより近い側のセル)に局所的な熱応力がかかり、セルスタックの性能低下を引き起こす可能性がある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、設置面積を変えずに各セルへ供給される燃料ガスや空気の偏りを小さくできる電気化学セルスタック、燃料電池および水素製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、実施形態の電気化学セルスタックは、セルとセパレータとが交互に積層されると共に、前記セルの側面が前記セパレータに囲われた積層体と、前記積層体の端面に配置され、外部から燃料ガスを導入する燃料導入部および外部から空気を導入する空気導入部をそれぞれ具備するマニホールドと、前記セルに供給される燃料ガスの流路であって、前記燃料導入部から前記セパレータを貫き、その積層方向に延びた燃料供給流路と、前記セルに供給される空気の流路であって、前記空気導入部から前記セパレータを貫き、その積層方向に延びた空気供給流路と、を備え、前記セルは、その積層方向に複数のセル群を形成し、前記燃料供給流路および前記空気供給流路の少なくともいずれかは、前記セル群ごとにそれぞれ設けられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、設置面積を変えずに各セルへ供給される燃料ガスや空気の偏りを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一の実施形態に係るセルスタックの構成を示す図である。
図2図1の一部を拡大した図である。
図3図1の断面図であって、(a)P-P断面図、(b)Q-Q断面図をそれぞれ示す。
図4】第一の実施形態の変形例に係るセルスタックの構成を示す図である。
図5】第一の実施形態の他の変形例に係るセルスタックの構成を示す図である。
図6】第二の実施形態に係るセルスタックの構成を示す図である。
図7】第二の実施形態の変形例に係るセルスタックの構成を示す図である。
図8】第二の実施形態の他の変形例に係るセルスタックの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る電気化学セルスタックについて、図1から図3を用いて説明する。図1は第一の実施形態に係るセルスタックの構成を示す概要図であり、図2図1の一部を拡大した図である。また、図3は、図1の断面図であって、(a)P-P断面図、(b)Q-Q断面図をそれぞれ示している。以降の説明においては、電気化学セルをセル、電気化学セルスタックをセルスタックと表記して説明する。
【0013】
図1および図3に示すように、セルスタック1は、積層体10と、マニホールド20と、燃料供給流路30と、空気供給流路35と、燃料排出流路40と、空気排出流路45とを備える。以降の説明では、後述するセル11およびセパレータ12を積層する方向を積層方向(z方向)とし、その方向や特定の面を表す際には、積層方向を基準として表記する。例えば、上面とは積層方向を基準とした上面、側面とは積層方向を基準とした側面、下側とは積層方向を基準とした下側をそれぞれ示す。なお、ここでいう積層方向は、重力方向とは必ずしも一致しない。
【0014】
図2に示すように、積層体10は、セル11と、セパレータ12と、封止板13と、シール材14とを備える。ここでいう積層体10とは、セル11を配置したセパレータ12、封止板13、およびシール材14を順次積層配置したものを一単位とし、この単位を複数積層した積層物全体を指す。
【0015】
セル11は、燃料極11aと、電解質11bと、空気極11cとを順次積層した平板型のセルである。セル11は、後述する燃料室15に燃料ガスを、後述する空気室16に空気をそれぞれ供給して化学反応を引き起こす。ここでいう化学反応とは、SOFCとして用いる場合には電気エネルギーを生成する反応(発電反応)、SOECとして用いる場合には電気分解反応をそれぞれ示す。なお、燃料ガスとは、例えばSOFCに用いる場合には水素や一酸化炭素を、SOECに用いる場合には水蒸気をそれぞれ示す。
【0016】
セパレータ12はセル11の側面を囲うように配置された板状の部材であり、導電性を有する。本実施形態においては、セパレータ12がセル11の側面から所定の間隙を経てこのセル11を囲うように配置される。すなわち、セパレータ12の上面には、この面から下側に凹んだセル収容部12aが設けられており、セル収容部12aよりも内側にセル11が配置される。ただし、セル11の側面を囲うとは、セル11の側面とセパレータ12のセル収容部12aとが所定の間隙だけ離間して設けられる場合に限定されるものではなく、セル11の側面がセル収容部12aの内周面と隣接してもよい。
【0017】
封止板13は導電性を有する板状の部材であり、セパレータ12の上面に設けられる。より具体的には、封止板13は少なくともその中央に開口部を有し、封止板13の上面から見た場合に、この開口部を介してセル11の上面が見えるようにセパレータ12の上面に配置される。
【0018】
シール材14は、導電性を有する板状の部材である。シール材14は、封止板13の上面に配置される。
【0019】
積層体10を構成する各単位では、燃料室15がセル収容部12aおよび封止板13との間に設けられ、この燃料室15に燃料ガスが供給される。また、封止板13の開口部、シール材14、およびシール材14に接する別の単位のセパレータ12との間には空気室16が設けられ、この空気室16には空気が供給される。
【0020】
マニホールド20は、積層体10下側の端面に設けられ、外部から燃料ガスを導入する燃料導入部20aおよび空気を導入する空気導入部20b(図示していない)を有する。本実施形態においては、燃料導入部20aおよび空気導入部20bが同じマニホールド20に設けられる場合を例示して説明するが、燃料導入部20aと空気導入部20bとが別々のマニホールドに設けられてもよい。
【0021】
燃料供給流路30は、燃料導入部20aから積層方向に沿って延びる二つの燃料供給孔31aおよび31bと、燃料供給孔31aもしくは31bのいずれか一方および各単位内に設けられた燃料室15を連結させる燃料供給横孔32とを備える燃料ガス供給側の流路である。
【0022】
ここで、燃料供給流路30について、図2および図3を用いてより詳細に説明する。なお、以降の説明において、積層体10内部のうち上側および下側とは、各単位の設置位置を相対的に表すものとする。例えば合計41単位分を積層して電気化学セルスタック1を構成する場合には、積層方向上端から数えて20単位分が積層体10内部のうち上側、残る21単位分が積層体10内部のうち下側である。
【0023】
図2および図3(a)に示すように、積層体10内部のうち下側においては、セル11の側面よりも外側(z軸を中心とする径方向外側)から、各単位を構成するセパレータ12、封止板13およびシール材14の縁部を貫いて積層方向に延びた燃料供給孔31aおよび31bがそれぞれ設けられる。それぞれのセパレータ12に設けられた燃料供給孔31aは、互いに積層方向で隣接し、積層方向に延びた一本の流路を構成する。それぞれのセパレータ12に設けられた燃料供給孔31bについても、燃料供給孔31aと同様に互いに積層方向で隣接し、積層方向に延びた一本の流路を構成する。積層体10内部のうち下側では、これら二本の流路がそれぞれ設けられるが、このうち燃料供給孔31aは、燃料供給横孔32と連結し、積層体10内部のうち下側に位置するそれぞれの燃料室15に対して燃料ガスを供給する流路を構成する。燃料供給孔31bは、積層体10内部のうち下側の燃料供給横孔32とは連結しない。
【0024】
一方、図2および図3(b)に示すように、積層体10内部のうち上側においては、積層体10の下側から延びた燃料供給孔31bが設けられている。すなわち、それぞれのセパレータ12に設けられた燃料供給孔31bは、積層体10内部のうち下側の燃料供給孔31bと連結し、燃料導入部20aから積層方向に延びた一本の流路を構成する。この燃料供給孔31bは、燃料供給横孔32と連結し、積層体10のうち上側に位置するそれぞれの燃料室15に対して燃料ガスを供給する流路を構成する。
【0025】
なお、燃料供給孔31aおよび31bそれぞれの積層方向に垂直な断面における流路断面積は、積層体10内部のうち上側と下側とを流れる燃料ガスの流量の偏りが小さくなるように設計されている。ここでいう燃料ガスの流量の偏りが小さくなるとは、積層体10の一部に局所的に燃料ガスが流れないことを示すものであり、積層体10内部での流量が均一になる場合も含まれる。
【0026】
図3に示すように、空気供給流路35は、空気導入部20bから積層方向に沿って延びる二つの空気供給孔36aおよび36bと、空気供給孔のいずれか一方と各単位内に設けられた空気室16とを連結させる空気供給横孔37とを備える空気の供給側の流路である。空気供給流路35は、積層方向に垂直な断面(P-P断面およびQ-Q断面)から見て、燃料供給流路30に接触しない位置に配置される。空気供給流路のその他の構造については、燃料供給流路30と同様である。
【0027】
燃料排出流路40は、セパレータ12のうち、セル収容部12aを境として燃料供給流路30と対向する側に設けられ、積層方向に沿って延びる燃料排出孔41と、燃料排出孔41および各単位内に設けられた燃料室15を連結する燃料排出横孔42を備える。燃料排出孔41は、燃料導入部20aとは別にマニホールド20に設けられた燃料排出口43に連結されている。
【0028】
空気排出流路45は、セパレータ12のうち、セル収容部12aを境として空気供給流路35と対向する側に設けられ、積層方向に沿って延びる空気排出孔46と、空気排出孔および各単位内に設けられた空気室16を連結する空気排出横孔47を備える。空気排出孔46は、空気導入部20bと別に設けられた図示していない空気排出口に連結されている。空気排出流路のその他の構造については、燃料排出流路40と同様である。
【0029】
次に、本実施形態の作用について説明する。以降の説明において、セルスタック1がSOFCとして用いられる場合には燃料ガスとして水素を、セルスタック1がSOECに用いられる場合には燃料ガスとして水蒸気をそれぞれ用いる場合を説明する。
【0030】
(SOFCとして動作する場合)
外部からマニホールド20の燃料導入部20aに導入された水素(燃料ガス)は、燃料供給孔31aまたは31bを経て各単位内に設けられた燃料供給横孔32を通り、燃料室15に供給される。すなわち、積層体10内部のうち下側では、燃料導入部20aから燃料供給孔31a、燃料供給横孔32を順次経て燃料室15に水素が供給され、積層体10内部のうち上側では、燃料導入部20aから燃料供給孔31b、燃料供給横孔32を順次経て燃料室15に水素が供給される。この水素は、セル11での発電反応(電気エネルギーを生成する反応)の反応物として用いられる。一方、セル11での発電反応に用られなかった水素は、燃料排出横孔42、燃料排出孔41を経て、燃料排出口43から外部へ排出される。
【0031】
また、外部からマニホールド20の空気導入部20bに導入された空気は、水素と同様に空気供給孔36aおよび36bのいずれかを経て、各単位内に設けられた空気供給横孔37を通り、空気室16に供給される。この空気は、各単位のセル11で発電反応の反応物として用いられる。一方、セル11での発電反応に用いられなかった空気は、空気排出横孔47、空気排出孔46を経て、図示していない空気排出口から外部へ排出される。
【0032】
(SOECとして動作する場合)
外部からマニホールド20の燃料導入部20aに導入された水蒸気(燃料ガス)は、燃料供給孔31aまたは31bを経て各単位内に設けられた燃料供給横孔32を通り、燃料室15に供給される。すなわち、積層体10内部のうち下側では、燃料導入部20aから燃料供給孔31a、燃料供給横孔32を順次経て燃料室15に水蒸気が供給され、積層体10内部のうち上側では、燃料導入部20aから燃料供給孔31b、燃料供給横孔32を順次経て燃料室15に水蒸気が供給される。この水蒸気は、セル11での電気分解反応の反応物として用いられる。一方、セル11での電気分解反応に用いられなかった水蒸気は、水蒸気は燃料排出横孔42、燃料排出孔41を経て、燃料排出口43から外部へ排出される。
【0033】
つまり、本実施形態においては、同じ積層体10の上側と下側とを異なるセル群としてみた場合に、これらのセル群ごとに燃料供給孔および空気供給孔をそれぞれ設けることで、積層体10内部の上側と下側それぞれに偏りなく燃料ガスおよび空気を供給できる。
【0034】
上述した第一の実施形態によれば、積層方向上側と下側とに対応する燃料供給孔および空気供給孔をそれぞれ複数設けることで、セル11とマニホールド20との距離によらず、各セル11に偏りなく燃料ガスおよび空気を供給できる。その結果、積層体10では、積層方向でのセル11それぞれの反応量に偏りがなくなり、局所的な熱応力が発生しにくくなる。したがって、積層体10を構成するセル11の積層数を増やした場合でも、その性能は低下しにくくなる。また、燃料供給孔31a、31bと、空気供給孔36a、36bは既存のスペースを有効に活用して設けられるため、セルスタック1は、積層体10の外側に新たに配管などを設けることも、その設置スペースを確保する必要もなくなる。
【0035】
なお、本実施形態においては、燃料供給流路30が二つの燃料供給孔31aおよび31bを、空気供給流路35が二つの空気供給孔36aおよび36bをそれぞれ備える場合を例示して説明したが、例えば、燃料供給孔と、空気供給孔のいずれかが複数である構成としてもよい。すなわち、二つの燃料供給孔31a、31bと一つの空気供給孔を有する構成や、一つの燃料供給孔と二つの空気供給孔36a、36bとを有する構成でもよい。また、燃料供給孔および空気供給孔は、同じ積層体10内部のセル群それぞれに設けられていればその本数は限定されない。例えば、同じ積層体10内部に三つのセル群を構成する場合は、燃料供給孔と空気供給孔とを三本ずつ具備してもよいし、四つのセル群を構成する場合は、燃料供給孔と空気供給孔とを四本ずつ具備してもよい。さらに、上述した変形例と組み合わせ、燃料供給路と空気供給路の一方だけが複数であり、他方が一本である構成としてもよい。この流路の本数に関する関係は、後述する他の実施形態においても成り立つ。
【0036】
また、本実施形態においては、マニホールド20が積層体10の下側の端面に設置される場合を例示して説明したが、この設置位置は積層体10の端面に配置されればよく、例えば上側の端面や、積層体10の側面に設けてもよい。
【0037】
さらに、本実施形態においては、燃料供給孔31aおよび31bと、空気供給孔36aおよび36bとが積層方向に延びた流路を形成する場合を説明したが、ここでいう積層方向に延びた流路とは、積層方向に延びる線分状の流路に限定されるものではなく、例えば図4に示すように、燃料供給孔31aおよび31bが、積層方向の途中で折れ曲がる構造でもよい。すなわち、本実施形態における燃料供給流路30は、積層体10内部の上側のセル11と下側のセル11とで燃料ガスを供給する流路が異なっていればよく、必ずしも、燃料供給孔31aおよび31bが積層方向にだけ延びた構造である必要はない。この流路構造に関する関係は、本実施形態における空気供給流路35においても同様である。
【0038】
さらに、本実施形態においては、燃料供給孔31a、31bと、空気供給孔36a、36bが複数あることを示すため、積層体10の側方断面(図1図2、および図4の向き)からみて、これらの供給孔が互いに重ならない場合を例示して説明した。しかし、この配置位置は、燃料供給流路30と空気供給流路35とが互いに接触しない限りにおいて限定されず、例えば図5に示すように配置し、側方断面からみてこれらの供給孔が互いに重なるようにてもよい。
【0039】
(第二の実施形態)
第二の実施形態に係る電気化学セルスタックについて、図6を用いて説明する。図6は、第二の実施形態に係るセルスタックの構成を示す概要図である。以降では、第一の実施形態と異なる箇所について説明し、それ以外の箇所は第一の実施形態と同じものとして同じ図番を付すと共に、その説明を省略する。
【0040】
図6に示すように、セルスタック1は、積層体10と、マニホールド50と、燃料供給流路60と、空気供給流路65(図示していない)と、燃料排出流路70と、空気排出流路75(図示していない)を備える。第二の実施形態では、燃料供給孔および空気供給孔が第一の実施形態と異なる配置になっている。
【0041】
マニホールド50は、積層体10の中間に挟まれ、外部から燃料ガスを導入する燃料導入部50aと、空気を導入する空気導入部50b(図示していない)とを備える。すなわち、一つの積層体10の中で、マニホールド50よりも積層方向上側と下側にそれぞれセル11が設けられている。燃料導入部50aは、後述する燃料供給孔61aおよび61bのそれぞれと連結し、空気導入部は、後述する二つの空気供給孔のそれぞれと連結する。
【0042】
燃料供給流路60は、燃料供給孔61aおよび61bと、燃料供給横孔62とを備える。燃料供給孔61aはマニホールド50の燃料導入部50aよりも上側に、燃料供給孔61bはマニホールド50の燃料導入部50aよりも下側にそれぞれ設けられる。燃料供給横孔62は、これら積層体10のそれぞれを構成する各単位の燃料室15に連結される。すなわち、燃料導入部50aよりも上側の燃料供給横孔62は燃料供給孔61aに、燃料導入部50aよりも下側の燃料供給横孔62は燃料供給孔61bにそれぞれ連結されている。なお、燃料供給孔61aおよび61bの積層方向に垂直な断面での流路断面積は、それぞれの積層体10に偏りなく燃料ガスが供給されるように設計されている。その他の構成については、第一の実施形態における燃料供給流路30と同様である。
【0043】
空気供給流路65(図示していない)は、二つの空気供給孔66a、66bと、空気供給横孔67とを備える。空気供給孔66a、66bは、マニホールド50の空気導入部よりも上側と下側とに一つずつ設けられる。空気供給横孔67は、積層体10を構成する各単位の空気室16と、いずれかの空気供給孔とを連結する。つまり、空気導入部50bよりも上側の空気供給横孔67は、空気導入部50bよりも上側の空気供給孔66aと連結し、空気導入部50bよりも下側の空気供給横孔67は、空気導入部50bよりも下側の空気供給孔66bと連結する。なお、それぞれの空気供給孔の積層方向に垂直な断面での流路断面積は、上側および下側の積層体10のそれぞれに偏りなく空気が供給されるように設計されている。その他の構成については、第一の実施形態における空気供給流路35と同様である。
【0044】
燃料排出流路70は、燃料導入部50aよりも上側に設けられた燃料排出孔71aと、燃料導入部50aよりも下側に設けられた燃料排出孔71bと、燃料排出横孔72を有する。
【0045】
空気排出流路75(図示していない)は、空気導入部よりも上側と下側とにそれぞれ設けられ、空気排出孔76と、空気排出横孔77とを備える。この空気排出流路75のその他の構成については、第一の実施形態における空気排出流路45と同様である。
【0046】
すなわち、本実施形態においては、マニホールド50よりも上側と下側とを別のセル群としてみた場合に、これらのセル群に燃料供給孔および空気供給孔をそれぞれ設け、マニホールド50よりも上側と下側それぞれのセル11に、燃料ガスおよび空気を偏りなく供給する。
【0047】
上述した第二の実施形態によれば、マニホールド50を積層体10の間に配置し、このマニホールド50よりも積層方向上側と下側とにそれぞれ燃料供給孔および空気供給孔を設けることにより、一つの積層体10を構成する各セル11に偏りなく燃料ガスおよび空気を供給できる。その結果、各セル11の反応量に偏りがなくなり、第一の実施形態と同様の効果が得られる。
【0048】
なお、本実施形態においてマニホールド50よりも上側と下側それぞれに位置するセル11の数(単位数)は、これらのセル11に偏りなく燃料ガスおよび空気が供給される限りにおいて限定されない。すなわち、燃料供給孔61aと61bが流量の偏りが小さくなるように設計され、この設計に応じて上側の積層体10と下側の積層体10を構成するセル11の単位数を適宜変更してよい。
【0049】
また、本実施形態においては、マニホールド50が一つ設けられる場合を例示して説明したが、その個数は限定されず、例えば図7に示すように一つの積層体10の内部に複数のマニホールドを設けた構成としてもよい。加えて、本実施形態と第一の実施形態とを組み合わせて、例えば図8に示すように、マニホールド50のよりも上側と下側それぞれに燃料供給孔および空気供給孔をそれぞれ複数設けた構成としてもよいし、マニホールド50よりも上側と下側いずれか一方には燃料供給孔および空気供給孔をそれぞれ複数設け、他方には燃料供給孔および空気供給孔を一つずつ設けた構成としてもよい。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1.セルスタック、10.積層体、11.セル、11a.燃料極、11b.電解質、11c.空気極、12.セパレータ、12a.セル収容部、13.封止板、13a.開口部、14.シール材、15.燃料室、16.空気室、20、50.マニホールド、20a、50a.燃料導入部、20b、50b.空気導入部、30、60.燃料供給流路、31a、31b、61a、61b.燃料供給孔、32、62.燃料供給横孔、35、65.空気供給流路、36a、36b、66a、66b.空気供給孔、37、67.空気供給横孔、40、70.燃料排出流路、41、71a、71b.燃料排出孔、42、72.燃料排出横孔、43、73.燃料排出口、45、75.空気排出流路、46、76.空気排出孔、47、77.空気排出横孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8