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特許7322271ポリウレタン樹脂、透湿性フィルム、及び透湿防水布帛
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  • 特許-ポリウレタン樹脂、透湿性フィルム、及び透湿防水布帛 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂、透湿性フィルム、及び透湿防水布帛
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/48 20060101AFI20230731BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20230731BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20230731BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20230731BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C08G18/48 004
C08G18/66 074
C08G18/72 040
C08G18/76 057
D06N3/14 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022211613
(22)【出願日】2022-12-28
【審査請求日】2023-04-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優月
(72)【発明者】
【氏名】松岡 陽一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一弥
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-059959(JP,A)
【文献】特開2022-060141(JP,A)
【文献】特開2015-101625(JP,A)
【文献】特開2021-143261(JP,A)
【文献】特開平01-062320(JP,A)
【文献】特開平07-304841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
D06N 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ポリオール成分、(ii)鎖伸長剤、及び(iii)ポリイソシアネート成分の反応物であるポリウレタン樹脂であって、
前記(i)ポリオール成分が、(i-1)ポリエチレングリコールと、前記(i-1)ポリエチレングリコール以外の(i-2)ポリエーテルポリオールと、を含み、
前記(ii)鎖伸長剤が、(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオールを2種以上含む、又は、
前記(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオールと、前記(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオール以外の(ii-2)直鎖状、分岐状、又は環状アルカンジオールと、を含み、
前記(iii)ポリイソシアネート成分が、(iii-1)芳香族ジイソシアネートと、(iii-2)脂肪族ジイソシアネートと、を含み、
前記(iii-1)芳香族ジイソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートであり、
前記(iii-1)芳香族ジイソシアネートと、前記(iii-2)脂肪族ジイソシアネートとの質量比が、30:70~85:15であり、
下記要件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満たすポリウレタン樹脂。
要件(1):前記(ii)鎖伸長剤が、(ii-3)トリオールをさらに含む。
要件(2):前記(iii)ポリイソシアネート成分が、(iii-3)3官能以上の多官能イソシアネートをさらに含む。
【請求項2】
前記(i)ポリオール成分中、前記(i-2)ポリエーテルポリオールの量が、30~70質量%である請求項1に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記(ii-3)トリオールが、トリメチロールプロパンである請求項1に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項4】
前記(i)ポリオール成分100質量部に対する、前記(ii-3)トリオールの量が、0.06~0.5質量部である請求項1に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項5】
前記(iii-1)芳香族ジイソシアネートに対する、前記(iii-3)多官能イソシアネートの量が、0.1~0.65mol%である請求項1に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項6】
前記(i)ポリオール成分、前記(ii)鎖伸長剤、及び前記(iii)ポリイソシアネート成分の少なくともいずれかが、植物由来の化合物である請求項1に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項7】
透湿性フィルムの構成材料として用いられる請求項1~6のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項8】
請求項7に記載のポリウレタン樹脂で形成された透湿性フィルム。
【請求項9】
基布と、前記基布の表面上に設けられる表皮層とを備え、
前記表皮層が、請求項8に記載の透湿性フィルムである透湿防水布帛。
【請求項10】
前記基布と前記表皮層の間に設けられる接着層をさらに備える請求項9に記載の透湿防水布帛。
【請求項11】
前記基布と前記表皮層の間に設けられるポーラス層をさらに備える請求項9に記載の透湿防水布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂、透湿性フィルム、及び透湿防水布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透湿性及び防水性を示す布帛(以下、「透湿防水布帛」とも記す)を構成するための透湿性材料として、フッ素樹脂製又はポリウレタン樹脂製の微多孔質フィルムや、親水性樹脂製の無孔質フィルム等が用いられている。微多孔質フィルムの場合、汗や汚れ等で目詰まりして透湿性が低下しやすくなることがある。一方、親水性樹脂製の無孔質フィルムの場合、目詰まりによって透湿性が低下することはない。無孔質フィルムを構成する親水性樹脂としては、例えば、親水性セグメントを含むポリウレタン樹脂が用いられている。
【0003】
透湿防水布帛は、例えば、透湿性の表皮層、接着層、及び基布(布帛)が積層された三層構造を有する。そして、表皮層を構成する材料として、親水性のポリウレタン樹脂からなる無孔質の透湿性フィルムが用いられている。なお、関連する従来技術として、例えば、ポリエチレングリコール等の親水性ポリオール、エチレングリコール等の鎖伸長剤、及び有機イソシアネートを反応させて得られる、透湿防水布帛用の親水性ポリウレタン樹脂が提案されている(特許文献1及び2)。
【0004】
透湿防水布帛を構成する透湿性フィルムは、透湿性のみならず、耐洗濯性、耐アルコール性、耐光性、及び柔軟性を有することが要求されている。なお、前述のような三層構造を有する透湿防水布帛を製造する際には、通常、溶剤系又は湿気硬化型の接着剤を用いて接着層を形成する。このため、透湿性フィルムは、接着剤を塗布しても収縮等しにくい性質(いわゆる重ね塗り適性)や、接着時の加温によっても軟化しにくい適度な耐熱性を有することも要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-201675号公報
【文献】特開平10-17764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2等で提案された従来の親水性ポリウレタン樹脂を用いて形成される透湿性フィルムは、ある程度の透湿性を示す一方で、耐洗濯性、耐アルコール性、重ね塗り適性、耐熱性、耐光性、及び柔軟性については必ずしも十分であるとはいえず、さらなる改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、透湿性に優れているとともに、耐洗濯性、耐アルコール性、重ね塗り適性、耐熱性、耐光性、及び柔軟性にも優れた透湿性フィルムを製造することが可能なポリウレタン樹脂を提供することにある。
【0008】
また、本発明の課題とするところは、このポリウレタン樹脂を用いて得られる、透湿性に優れているとともに、耐洗濯性、耐アルコール性、重ね塗り適性、耐熱性、耐光性、及び柔軟性にも優れた透湿性フィルム、並びにこの透湿性フィルムを備えた透湿防水布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示すポリウレタン樹脂が提供される。
[1](i)ポリオール成分、(ii)鎖伸長剤、及び(iii)ポリイソシアネート成分の反応物であるポリウレタン樹脂であって、前記(i)ポリオール成分が、(i-1)ポリエチレングリコールと、前記(i-1)ポリエチレングリコール以外の(i-2)ポリエーテルポリオールと、を含み、前記(ii)鎖伸長剤が、(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオールを2種以上含む、又は、前記(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオールと、前記(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオール以外の(ii-2)直鎖状、分岐状、又は環状アルカンジオールと、を含み、前記(iii)ポリイソシアネート成分が、(iii-1)芳香族ジイソシアネートと、(iii-2)脂肪族ジイソシアネートと、を含み、下記要件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満たすポリウレタン樹脂。
要件(1):前記(ii)鎖伸長剤が、(ii-3)トリオールをさらに含む。
要件(2):前記(iii)ポリイソシアネート成分が、(iii-3)3官能以上の多官能イソシアネートをさらに含む。
[2]前記(i)ポリオール成分中、前記(i-2)ポリエーテルポリオールの量が、30~70質量%である前記[1]に記載のポリウレタン樹脂。
[3]前記(ii-3)トリオールが、トリメチロールプロパンである前記[1]又は[2]に記載のポリウレタン樹脂。
[4]前記(i)ポリオール成分100質量部に対する、前記(ii-3)トリオールの量が、0.06~0.5質量部である前記[1]~[3]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
[5]前記(iii-1)芳香族ジイソシアネートに対する、前記(iii-3)多官能イソシアネートの量が、0.1~0.65mol%である前記[1]~[4]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
[6]前記(i)ポリオール成分、前記(ii)鎖伸長剤、及び前記(iii)ポリイソシアネート成分の少なくともいずれかが、植物由来の化合物である前記[1]~[5]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
[7]透湿性フィルムの構成材料として用いられる前記[1]~[6]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂。
【0010】
また、本発明によれば、以下に示す透湿性フィルムが提供される。
[8]前記[7]に記載のポリウレタン樹脂で形成された透湿性フィルム。
【0011】
さらに、本発明によれば、以下に示す透湿防水布帛が提供される。
[9]基布と、前記基布の表面上に設けられる表皮層とを備え、前記表皮層が、前記[8]に記載の透湿性フィルムである透湿防水布帛。
[10]前記基布と前記表皮層の間に設けられる接着層をさらに備える前記[9]に記載の透湿防水布帛。
[11]前記基布と前記表皮層の間に設けられるポーラス層をさらに備える前記[9]又は[10]に記載の透湿防水布帛。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透湿性に優れているとともに、耐洗濯性、耐アルコール性、重ね塗り適性、耐熱性、耐光性、及び柔軟性にも優れた透湿性フィルムを製造することが可能なポリウレタン樹脂を提供することができる。
【0013】
また、本発明によれば、このポリウレタン樹脂を用いて得られる、透湿性に優れているとともに、耐洗濯性、耐アルコール性、重ね塗り適性、耐熱性、耐光性、及び柔軟性にも優れた透湿性フィルム、並びにこの透湿性フィルムを備えた透湿防水布帛を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の透湿防水布帛の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の透湿防水布帛の他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図3】実施例の評価で使用した試料の形態を説明する模式図である。
図4】実施例の評価で使用したギアオーブンの形態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<ポリウレタン樹脂>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のポリウレタン樹脂の一実施形態は、(i)ポリオール成分、(ii)鎖伸長剤、及び(iii)ポリイソシアネート成分の反応物である、透湿性フィルムを製造するための材料等として好適なポリウレタン樹脂である。以下、本発明のポリウレタン樹脂の詳細について説明する。
【0016】
((i)ポリオール成分)
(i)ポリオール成分は、(i-1)ポリエチレングリコールと、(i-1)ポリエチレングリコール以外の(i-2)ポリエーテルポリオールと、を含む。なお、(i)ポリオール成分は、(i-1)ポリエチレングリコール及び(i-2)ポリエーテルポリオールのみで実質的に構成されることが好ましい。
【0017】
[(i-1)ポリエチレングリコール]
(i-1)ポリエチレングリコールは、形成されるフィルムの透湿性に寄与しうる親水性ポリオールである。(i-1)ポリエチレングリコールの数平均分子量(Mn)は、600~10,000であることが好ましく、1,000~7,000であることがさらに好ましい。
【0018】
[(i-2)ポリエーテルポリオール]
(i-2)ポリエーテルポリオールは、形成されるフィルムの機械的物性を向上させる成分である。(i-2)ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)は、650~3,000であることが好ましく、1,000~2,500であることがさらに好ましい。
【0019】
(i-2)ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリテトラメチレングリコール(ブロック又はランダム)、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、及びポリヘキサメチレンエーテルグリコール等を挙げることができる。なかでも、柔軟性等の観点から、ポリトリメチレンエーテルグリコール、及びポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。
【0020】
(i-2)ポリエーテルポリオールは、例えば、アルキレンオキサイド(プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)及び複素環式エーテル(テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等)のいずれかを重合又は共重合して得ることができる。また、(i-2)ポリエーテルポリオールは、1,3-プロパンジオール等のジオールの脱水縮合反応によっても得ることができる。
【0021】
環境配慮型の樹脂やフィルムとする観点から、(i-2)ポリエーテルポリオールは、植物由来の化合物であることが好ましい。植物由来の化合物である(i-2)ポリエーテルポリオールとしては、例えば、植物由来のジオール類やテトラヒドロフラン等を原料とするポリエーテルポリオール等を挙げることができる。
【0022】
(i)ポリオール成分((i-1)ポリエチレングリコールと(i-2)ポリエーテルポリオールの合計)中、(i-2)ポリエーテルポリオール(疎水性ポリオール)の量は、30~70質量%であることが好ましく、35~60質量%であることがさらに好ましい。(i)ポリオール成分中の(i-2)ポリエーテルポリオールの量を上記の範囲内とすることで、透湿性と柔軟性のバランスにより優れた透湿性フィルムを製造しうるポリウレタン樹脂とすることができる。
【0023】
((ii)鎖伸長剤)
(ii)鎖伸長剤は、(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオールを2種以上含む、又は、(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオールと、(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオール以外の(ii-2)直鎖状、分岐状、又は環状アルカンジオールと、を含む。すなわち、アルキレンの炭素数等が異なる2種類以上のアルカンジオールを組み合わせて(ii)鎖伸長剤として用いることによって、1種類のアルカンジオールのみを鎖伸長剤として用いた場合に比して、溶剤系の接着剤を塗布しても収縮等しにくい、いわゆる重ね塗り適性が向上した透湿性フィルムを製造しうるポリウレタン樹脂とすることができる。このような効果が得られる理由については必ずしも明らかではないが、アルキレンの炭素数等が異なる2種類以上のアルカンジオールを組み合わせて用いることによって、ポリウレタン樹脂の分子鎖に適度な「遊び」が生じ、結晶性がやや低下したためであると推測される。
【0024】
(ii)鎖伸長剤の量は、(i)ポリオール成分及び(ii)鎖伸長剤の合計を基準として、0.2~40質量%であることが好ましく、0.5~20質量%であることがさらに好ましく、12~16質量%であることが特に好ましい。なお、(ii)鎖伸長剤は、アミン化合物を実質的に含まないことが好ましい。アミン化合物を鎖伸長剤として用いると、得られる透湿性フィルムの耐熱性が低下する傾向にある。
【0025】
[(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオール]
(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,4-ブタンジオール等を挙げることができる。環境配慮型の樹脂やフィルムとする観点から、(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオールは、植物由来の化合物であってもよい。植物由来の化合物である(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオールとしては、例えば、植物由来の、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、及び1,4-ブタンジオール等を挙げることができる。また、植物由来の直鎖状アルカンジオールと、石油由来の直鎖状アルカンジオールとを組合せることもできる。
【0026】
[(ii-2)直鎖状、分岐状、又は環状アルカンジオール]
直鎖状アルカンジオールとしては、炭素数5以上の直鎖状アルカンジオールを用いることができる。炭素数5以上の直鎖状アルカンジオールとしては、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,12-ドデカンジオール等を挙げることができる。
【0027】
分岐状アルカンジオールとしては、炭素数3以上の分岐状アルカンジオールを用いることができる。炭素数3以上の分岐状アルカンジオールとしては、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(MPD)、ネオペンチルグリコール(NPD)、2-メチルプロパンジオール、2,2-ジメチルプロパンジオール、2-プロピル-1,4-ブタンジオール、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、2-シクロプロピル-1,4-ブタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール2-ブチル-1,4-ブタンジオール、2-イソブチル-1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-プロピル-1,5-ペンタンジオール、2-イソプロピル-1,5-ペンタンジオール、2-シクロプロピル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-1,5-ペンタンジオール、2-プロピル-1,6-ヘキサンジオール、2-イソプロピル-1,6-ヘキサンジオール、2-シクロプロピル-1,6-ヘキサンジオール、2-ブチル-1,6-ヘキサンジオール、2-プロピル-1,7-ヘプタンジオール、2-イソプロピル-1,7-ヘプタンジオール、2-シクロプロピル-1,7-ヘプタンジオール、2-ブチル-1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-プロピル-1,8-オクタンジオール、2-イソプロピル-1,8-オクタンジオール、2-シクロプロピル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-1,8-オクタンジオール、2-プロピル-1,9-ノナンジオール、2-イソプロピル-1,9-ノナンジオール、2-シクロプロピル-1,9-ノナンジオール、2-ブチル-1,9-ノナンジオール、2-シクロブチル-1,9-ノナンジオール、2-プロピル-1,10-デカンジオール、2-イソプロピル-1,10-デカンジオール、2-シクロプロピル-1,10-デカンジオール、2-ブチル-1,10-デカンジオール、2-プロピル-1,11-ウンデカンジオール、2-イソプロピル-1,11-ウンデカンジオール、2-シクロプロピル-1,11-ウンデカンジオール、2-ブチル-1,11-ウンデカンジオール、2-ドデシル-1,11-ウンデカンジオール、2-プロピル-1,12-ドデカンジオール、2-イソプロピル-1,12-ドデカンジオール、2-シクロプロピル-1,12-ドデカンジオール、及び2-ブチル-1,12-ドデカンジオール等を挙げることができる。
【0028】
また、環状アルカンジオールとしては、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及び2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等を挙げることができる。
【0029】
((iii)ポリイソシアネート成分)
(iii)ポリイソシアネート成分は、1分子中にイソシアネート基(NCO基)を2以上有する化合物であり、(iii-1)芳香族ジイソシアネートと、(iii-2)脂肪族ジイソシアネートと、を含む。
【0030】
[(iii-1)芳香族ジイソシアネート]
(iii-1)芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,2’-MDI、2,4’-MDI、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-TDI、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、4-メトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-イソプロピル-1,3-フェニレンジイソシアネート、4-ブトキシ-1,3-フェニレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5-ナフタレンジイソシアネート、及びベンジジンジイソシアネート等を挙げることができる。これらのなかでも、MDIが好ましい。
【0031】
[(iii-2)脂肪族ジイソシアネート]
(iii-2)脂肪族ジイソシアネートとしては、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、及び1,10-デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添XDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、及び1-メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアナート(水添TDI)等の脂環族ジイソシアネート;等を挙げることができる。これらのなかでも、HDI及び植物由来のPDIが好ましい。
【0032】
(iii-1)芳香族ジイソシアネートと、(iii-2)脂肪族ジイソシアネートとの質量比は、(iii-1):(iii-2)=30:70~85:15であることが好ましく、60:40~80:20であることがさらに好ましい。(iii-1)芳香族ジイソシアネートの量が多すぎると、形成される透湿性フィルムが硬くなりやすい。一方、(iii-2)脂肪族ジイソシアネートの量が多すぎると、形成される透湿性フィルムが柔らかくなりやすい。また、(iii-2)脂肪族ジイソシアネートの量は、(iii)ポリイソシアネート成分の全量を基準として、10~85mol%であることが好ましく、20~60mol%であることがさらに好ましく、30~40mol%であることが特に好ましい。
【0033】
環境配慮型の樹脂やフィルムとする観点から、(i)ポリオール成分、(ii)鎖伸長剤、及び(iii)ポリイソシアネート成分の少なくともいずれかが、植物由来の化合物であることが好ましい。
【0034】
(要件(1)及び(2))
本実施形態のポリウレタン樹脂は、下記要件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満たす。
要件(1):(ii)鎖伸長剤が、(ii-3)トリオールをさらに含む。
要件(2):(iii)ポリイソシアネート成分が、(iii-3)3官能以上の多官能イソシアネートをさらに含む。
【0035】
透湿性フィルムの耐アルコール性や耐熱性等の特性を向上させるべく、原料となるポリウレタン樹脂中のハードセグメントの量を単に増加させると、透湿性フィルムの柔軟性(風合い等)が損なわれやすい。これに対して、上記の要件(1)及び(2)の少なくともいずれかを満たす、すなわち、(ii-3)トリオールや(iii-3)多官能イソシアネートといった3官能以上の化合物を反応させた本実施形態のポリウレタン樹脂は、内部架橋構造を有する分岐ポリマー(熱可塑性樹脂)となっている。このような内部架橋構造としたことで、本実施形態のポリウレタン樹脂は、柔軟性を維持しながら、耐洗濯性、耐アルコール性、及び耐熱性等の特性が向上した透湿性フィルムを製造することができる。これに対して、ポリウレタン樹脂の合成後、(ii-3)トリオールや(iii-3)多官能イソシアネートといった3官能以上の化合物を反応させた場合は、いわゆる網目構造を有する熱硬化樹脂となりやすく、柔軟性(風合い)が劣ることがある。
【0036】
[(ii-3)トリオール]
(ii-3)トリオールは、1分子中に水酸基(OH基)を3つ有する3官能ポリオールである。(ii-3)トリオールの分子量(化学式量)は、500以下であることが好ましく、300以下であることがさらに好ましい。(ii-3)トリオールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、ヘプタントリオール、及びオクタントリオール等を挙げることができる。これらのなかでも、グリセリン及びトリメチロールプロパンが好ましく、トリメチロールプロパンがさらに好ましい。
【0037】
本実施形態のポリウレタン樹脂が、要件(1)を満たす場合、(i)ポリオール成分100質量部に対する、(ii-3)トリオールの量は、0.06~0.5質量部であることが好ましく、0.1~0.45質量部であることがさらに好ましい。(i)ポリオール成分100質量部に対する(ii-3)トリオールの量を上記の範囲内とすることで、耐洗濯性、耐アルコール性、及び耐熱性がさらに向上した透湿性フィルムを製造しうるポリウレタン樹脂とすることができる。
【0038】
[(iii-3)多官能イソシアネート]
(iii-3)多官能イソシアネートは、1分子中にイソシアネート基(NCO基)を3以上有する3官能以上の多官能イソシアネートである。(iii-3)多官能イソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート系、トルエンジイソシアネート系、ヘキサメチレンジイソシアネート系、ペンタメチレンジイソシアネート系及びイソホロンジイソシアネート系;これらのトリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット体、及びヌレート体;ポリメリックMDI;末端イソシアネートプレポリマー;等を挙げることができる。また、これらのブロック体のポリイソシアネートを用いることもできる。これらのなかでも、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートのアダクト体、ビウレット体、及びヌレート体が好ましい。
【0039】
本実施形態のポリウレタン樹脂が、要件(2)を満たす場合、(iii-1)芳香族ジイソシアネートに対する、(iii-3)多官能イソシアネートの量は、0.1~0.65mol%であることが好ましく、0.2~0.5mol%であることがさらに好ましい。(iii-1)芳香族ジイソシアネートに対する(iii-3)多官能イソシアネートの量を上記の範囲内とすることで、耐洗濯性、耐アルコール性、及び耐熱性がさらに向上した透湿性フィルムを製造しうるポリウレタン樹脂とすることができる。
【0040】
(ポリウレタン樹脂の製造方法)
ポリウレタン樹脂は、例えば、(i)ポリオール成分、(ii)鎖伸長剤、及び(iii)ポリイソシアネート成分を、ワンショット法又は多段法により、好ましくは60~150℃、さらに好ましくは60~110℃で反応させることによって製造することができる。反応時には、必要に応じて触媒を併用してもよい。触媒としては、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、テトラn-ブチルチタネート等の金属塩や有機金属誘導体;トリエチルアミン等の有機アミン;ジアザビシクロウンデセン系触媒;等を挙げることができる。
【0041】
(i)ポリオール成分、(ii)鎖伸長剤、及び(iii)ポリイソシアネート成分は、有機溶媒等の溶媒の存在下で反応させることができる。溶媒の存在下で反応させることで、ポリウレタン樹脂が溶媒中に溶解した溶液、又は分散した分散液の状態で得ることができる。溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、β-アルコキシプロピオンアミド、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、及び酢酸エチル等の有機溶媒を挙げることができる。
【0042】
ポリウレタン樹脂の溶液又は分散液には、必要に応じて、熱可塑性樹脂、粘着付与樹脂、触媒、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤、及び発泡剤等の各種添加剤を適量配合してもよい。
【0043】
<透湿性フィルム>
本発明の透湿性フィルムの一実施形態は、前述のポリウレタン樹脂で形成された、透湿性及び防水性のフィルムである。すなわち、本実施形態の透湿性フィルムは、前述のポリウレタン樹脂で形成されたフィルムであることから、透湿性に優れているとともに、耐洗濯性、耐アルコール性、重ね塗り適性、耐熱性、耐光性、及び柔軟性に優れている。このため、本実施形態の透湿性フィルムは、透湿防水布帛を構成するための材料として好適である。
【0044】
透湿性フィルムは、例えば、ポリウレタン樹脂の溶液や分散液を離型紙等の基材に塗工した後、乾燥して溶媒を除去することで製造することができる。ポリウレタン樹脂の溶液等を基材に塗工する方法(塗工方法)としては、コンマコート法、ナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等の従来公知の塗工方法を挙げることができる。
【0045】
透湿性フィルムの厚さは、透湿性及び防水性が発揮される範囲内で適宜設定すればよく、例えば、10~15μmの範囲内とすればよい。透湿性フィルムの厚さは、ポリウレタン樹脂の溶液等を基材に塗工して形成する塗工膜の厚さを変更することで適宜設定することができる。
【0046】
透湿性フィルムの25℃における100%モジュラスは、通常3.0~5.0MPa、好ましくは3.5~4.5MPaである。また、透湿性フィルムの25℃における20%モジュラスは、通常1.5~4.0MPa、好ましくは1.8~3.7MPaである。100%モジュラス及び20%モジュラスの値がそれぞれ上記の範囲内にある本実施形態の透湿性フィルムは、耐洗濯性等の特性と、柔軟性(風合い)とがより良好なバランスで維持されている。
【0047】
<透湿防水布帛>
図1は、本発明の透湿防水布帛の一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態の透湿防水布帛100は、基布2と、基布2の表面上に設けられる表皮層4とを備える。そして、表皮層4が、特定のポリウレタン樹脂で形成された前述の透湿性フィルムである。本実施形態の透湿防水布帛100は、耐洗濯性、耐アルコール性、重ね塗り適性、耐熱性、耐光性、及び柔軟性にも優れた、透湿性及び防水性のフィルムを表皮層4としたものである。このため、本実施形態の透湿防水布帛100は、透湿性及び防水性に優れているとともに、耐洗濯性、耐アルコール性、耐熱性、耐光性、及び柔軟性にも優れている。
【0048】
図2は、本発明の透湿防水布帛の他の実施形態を模式的に示す断面図である。図2に示す実施形態の透湿防水布帛200は、基布2と表皮層4の間に設けられるポーラス層6と接着層8をさらに備える。すなわち、表皮層4は、接着層8を介して基布2上に固着されていてもよく、ポーラス層6及び接着層8を介して基布2上に固着されていてもよい。
【0049】
接着層8は、例えば、透湿防水布帛をはじめとする従来の布帛を製造する際に用いられる、二液硬化型のウレタン系接着剤等によって形成することができる。また、ポーラス層6は、従来の透湿防水布帛を構成するポーラス層と同様の層であり、例えば、ウレタン樹脂、アセチルセルロース、エポキシ樹脂等で形成することができる。
【0050】
基布2としては、例えば、綾織り、平織り等からなる織物、当該織物の綿生地を機械的に起毛して得られる起毛布、レーヨン布、ナイロン布、ポリエステル布、ケブラー布、不織布(ポリエステル、ナイロン、各種ラテックス)、各種フィルム、シート等を挙げることができる。
【0051】
透湿防水布帛は、例えば、前述の方法によって製造した透湿性フィルムを、接着剤を用いて基布上に接着すること等によって製造することができる。また、図1に示すような、表皮層4である透湿性フィルムが基布2上に直接設けられた透湿防水布帛100を製造するには、基布2上にポリウレタン樹脂の溶液や分散液を所望とする厚さとなるように塗布した後、乾燥することによって製造することができる。
【実施例
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0053】
<ポリウレタン樹脂の製造>
(実施例1)
撹拌機及び温度計を装着したガラス製の反応容器中に、(i)ポリオール成分及び(ii)鎖伸長剤として、ポリエチレングリコール2000(数平均分子量:2,000)17.9部、ポリテトラメチレングリコール2000(数平均分子量:2,000)41.7部、エチレングリコール3.6部、1,4-ブタンジオール5.2部、及びトリメチロールプロパン0.2部を入れた。その後、ジメチルホルムアミド(DMF)163.9部及びメチルエチルケトン(MEK)70.2部を添加し、50℃で30分間撹拌した。次いで、(iii)ポリイソシアネート成分として、ヘキサメチレンジイソシアネート10.0部、及びジフェニルメタンジイソシアネート21.9部を添加し、80℃で3時間反応させて、ポリウレタン樹脂を含有する溶液を得た。得られた溶液の固形分は30.0%であり、25℃における粘度は1,000dPa・sであった。
【0054】
(実施例2~28、比較例1~9)
表1-1~1-4の上段に示す配合(単位:部)としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂を含有する溶液を得た。得られた溶液の固形分は、いずれも30.0%であった。また、用いた材料の詳細を表2~4に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
<透湿防水布帛の製造>
(標準布帛)
(1)透湿性フィルムの製造
溶剤系ウレタン樹脂(商品名「ハイムレンY-286FM」、大日精化工業社製)100部、DMF10部、及びMEK5部を混合して、表皮層用の配合液を得た。クリアランスコーターを用いて、得られた表皮層用の配合液を離型紙上に50μm・wetの塗布量で均一に塗工した。80℃で2分間乾燥させた後、120℃で3分間さらに乾燥させて、膜厚10~15μmである透湿性フィルム(表皮層)を得た。
【0063】
(2)表皮層と基布の接着
溶剤系ウレタン樹脂(商品名「Y-173」、大日精化工業社製)100部、溶剤系ポリイソシアネート架橋剤A(商品名「レザミンNE-架橋剤」、大日精化工業社製)10部、溶剤系ポリイソシアネート架橋剤B(商品名「レザミンUD-架橋剤」、大日精化工業社製)1部、DMF20部、及びMEK40部を混合して接着層用の配合液を得た。得られた接着層用の配合液を表皮層(透湿性フィルム)上に塗布及び乾燥して接着層を形成した。形成した接着層上に基布(ナイロンタフタ)を積層し、ラミネート温度40℃で加温圧着した。その後、50℃で48時間熟成させて、透湿防水性の標準布帛を得た。
【0064】
(評価用布帛)
表皮層用の配合液に代えて、製造したポリウレタン樹脂を含有する溶液をそれぞれ用いたこと以外は、前述の標準布帛の場合と同様にして、評価用布帛を得た。
【0065】
<評価>
以下に示す各評価の評価基準のうち、「◎」、「○」、及び「△」を合格とし、「×」を不合格とした。評価結果を表5に示す。
【0066】
(風合い)
製造した標準布帛及び評価用布帛をそれぞれ手で触った感触を比較し、以下に示す評価基準にしたがって風合い(柔軟性)を評価した。
◎:評価用布帛は標準布帛よりも柔らかかった。
○:評価用布帛は標準布帛と同等程度に柔らかかった。
×:評価用布帛は標準布帛よりも固かった。
【0067】
(重ね塗り適性)
表皮層と基布を接着する際に、接着層用の配合液を塗布した直後及び乾燥後の表皮層の状態を目視にて確認し、以下に示す評価基準にしたがって重ね塗り適性を評価した。なお、比較例4については、接着層用の配合液を塗布した直後に表皮層(フィルム)が溶解してしまったため、重ね塗り適性を評価することができなかった。
○:スエリングがなかった。
△:軽微なスエリングがあった。
×:全面にスエリングがあった、又は表皮層が溶解した。
【0068】
(フィルム物性)
製造したポリウレタン樹脂の溶液をそれぞれ離型紙に塗布した後、80℃で2分間及び120℃で3分間乾燥した。乾燥後に離型紙から剥離して、厚さ50μm、幅1.5cm、長さ6cmの半透明フィルムを得た。オートグラフ(商品名「AGS-J」、島津製作所社製)を使用し、温度25℃、湿度30%RH以下の条件下、200mm/minの速度で得られた半透明フィルムを引っ張り、20%モジュラス(MPa)及び100%モジュラス(MPa)をそれぞれ測定した。
【0069】
(熱軟化点)
上述の「フィルム物性」で作製した半透明フィルム(厚さ50μm、幅1.5cm、長さ6cm)を試験片とした。図3に示すように、フィルム10の上下にクリップ12を取り付け、セロハンテープでさらにクリップ12を固定した。一方のクリップ12に吊り下げたときに450g/cmの荷重がかかるような重り14を取り付けて試料16を作製した。なお、フィルム10の中央部(2cm)はセロハンテープで覆われていない。次いで、図4に示すように、試料16の重り14が取り付けられていないクリップ12をギアオーブン20の回転盤22に取り付けた。その後、回転盤22を5rpmで回転させながら、室温から3℃/minの速度でギアオーブン20内を昇温し、フィルム10が切断したときの温度(熱軟化点(℃))を測定した。
【0070】
(耐アルコール性)
製造したポリウレタン樹脂の溶液をそれぞれ離型紙に塗布した後、80℃で2分間及び120℃で3分間乾燥した。乾燥後に離型紙から剥離して、厚さ50μm、幅5cm、長さ5cmのフィルムを得た。得られたフィルムをエタノールに10分間浸漬した後に取り出した。取り出したフィルムの線膨潤率(={(浸漬後のフィルムの幅)/(浸漬前のフィルムの幅)}×100(%))を算出し、以下に示す評価基準にしたがって耐溶剤性を評価した。
○:フィルムの1辺の線膨潤率が200%未満であった。
△:フィルムの1辺の線膨潤率が200%以上であった。
×:フィルムが溶解した。
【0071】
(耐光性)
製造したポリウレタン樹脂の溶液をそれぞれ離型紙上に塗布した後、80℃で2分間及び120℃で3分間乾燥した。乾燥後に離型紙から剥離して、厚さ50μm、幅8cm、長さ15cmのフィルムを得た。キセノンウェザオメーターを使用して、得られたフィルムについて、70±3℃、照射エネルギー:20MJの条件で耐光促進試験を実施した。引張試験装置を使用して、25℃、引張速度:200mm/minの条件で耐光促進試験前後のフィルムの破断強度をそれぞれ測定し、以下に示す評価基準にしたがって耐光性を評価した。
○:破断強度の保持率が50%以上であった。
△:破断強度の保持率が25%以上50%未満であった。
×:破断強度の保持率が25%未満であった、又はフィルムが溶解した。
【0072】
(透湿度)
JIS L 1099:2012の「酢酸カルシウム法(B-1法)」に準拠した方法により、評価用布帛の透湿度(g/m・24h)を測定した。なお、透湿度が40,000g/m・24h以上であった場合を「○」、20,000g/m・24h以上40,000g/m・24h未満であった場合を「△」、20,000g/m・24h未満であった場合を「×」と評価することができる。なお、(ii)鎖伸長剤を用いずに製造した比較例5のポリウレタン樹脂を含有する溶液で形成したフィルムは極めて柔らかく、測定中に破れてしまったため、透湿度を測定することができなかった。
【0073】
(耐洗濯性)
評価用布帛について、JIS L 1930:2014の「C形基準洗濯機(パラセータ式)」に準拠した洗濯、及び「乾燥C法(平干し乾燥)」に準拠した乾燥を交互に合計20回繰り返した。そして、JIS L 1092:2009の「B法(高水圧法)」に準拠した方法により、洗濯・乾燥前後の評価用布帛の耐水圧を測定し、以下に示す評価基準にしたがって耐洗濯性を評価した。
◎:耐水圧の保持率が80%以上であった。
○:耐水圧の保持率が70%以上80%未満であった。
×:耐水圧の保持率が70%未満であった。
【0074】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のポリウレタン樹脂は、透湿防水布帛等を構成する透湿性フィルムを形成するための材料として有用である。
【符号の説明】
【0076】
2:基布
4:表皮層
6:ポーラス層
8:接着層
10:フィルム
12:クリップ
14:重り
16:試料
20:ギアオーブン
22:回転盤
100,200:透湿防水布帛
【要約】
【課題】透湿性に優れているとともに、耐洗濯性、耐アルコール性、重ね塗り適性、耐熱性、耐光性、及び柔軟性にも優れた透湿性フィルムを製造することが可能なポリウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】(i)ポリオール成分、(ii)鎖伸長剤、及び(iii)ポリイソシアネート成分の反応物であるポリウレタン樹脂である。(i)ポリオール成分が、(i-1)ポリエチレングリコールと、(i-2)ポリエーテルポリオールと、を含み、(ii)鎖伸長剤が、(ii-1)炭素数2~4の直鎖状アルカンジオールを2種以上含み、(iii)ポリイソシアネート成分が、(iii-1)芳香族ジイソシアネートと、(iii-2)脂肪族ジイソシアネートと、を含み、下記要件(1)等を満たす。
要件(1):(ii)鎖伸長剤が、(ii-3)トリオールをさらに含む。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4