(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物及びそれから調製された光学樹脂
(51)【国際特許分類】
C07C 265/14 20060101AFI20230731BHJP
C07C 263/20 20060101ALI20230731BHJP
C07C 209/68 20060101ALI20230731BHJP
C07C 211/18 20060101ALI20230731BHJP
C07C 263/10 20060101ALI20230731BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20230731BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20230731BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20230731BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20230731BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230731BHJP
【FI】
C07C265/14
C07C263/20
C07C209/68
C07C211/18
C07C263/10
C08G18/38 076
C08G18/75 010
G02B1/04
G02C7/00
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022524141
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(86)【国際出願番号】 CN2020100732
(87)【国際公開番号】W WO2021103550
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】201911199670.X
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521147204
【氏名又は名称】万華化学集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WANHUA CHEMICAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 17, Tianshan Rd, YEDA, Yantai 264000 Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】朱付林
(72)【発明者】
【氏名】季健峰
(72)【発明者】
【氏名】王鵬
(72)【発明者】
【氏名】李文濱
(72)【発明者】
【氏名】陳杰
(72)【発明者】
【氏名】王▲ジャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】呉謙
(72)【発明者】
【氏名】陳浩
(72)【発明者】
【氏名】尚永華
(72)【発明者】
【氏名】黎源
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-048806(JP,A)
【文献】国際公開第2019/132491(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046370(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/016148(WO,A1)
【文献】特表2006-504849(JP,A)
【文献】特開平10-259167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 263/00
C07C 209/00
C07C 211/00
C07C 265/00
C08G 18/00
G02B 1/00
G02C 7/00
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物であって、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンの重量に基づいて、
a)65%~95%重量のトランス-1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンと、
b)0を超え、且つ≦0.5%重
量の1,4-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンとを含み、
前記1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンは、シス-1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンと、トランス-1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンとを含
み、
前記1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物は、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンの重量に基づいて、0を超え、且つ≦600ppmの1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンを含む、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物。
【請求項2】
前記1,4-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンの含有量は、0.02%重量~0.5%重量であることを特徴する請求項1に記載の1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物。
【請求項3】
前記1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物は、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンの重量に基づいて
、0.1ppm~600ppmの1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンを含む、ことを特徴する請求項1に記載の1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物。
【請求項4】
前記組成物の調製方法は、(1)1,3-シクロヘキシルジメチルアミン原料を塩化水素と混合して1,3-シクロヘキシルジメチルアミン塩酸塩を調製する塩形成工程と、(2)1,3-シクロヘキシルジメチルアミン塩酸塩をホスゲンとイソシアネート化反応させ、生成物は、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンと1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンとを含むイソシアネート化工程と、(3)工程(2)に記載の生成物を精製し、前記1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物を調製する精製工程とを含む、ことを特徴する請求項1又は2に記載の1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物。
【請求項5】
前記1,3-シクロヘキ
シルジメチルアミン原料において、1,3-シクロヘキシルジメチルアミン原料の重量に基づいて、トランス-1,3-シクロヘキ
シルジメチルアミンの含有量は50%~95%重量
であり、シス-1,3-シクロヘキ
シルジメチルアミンの含有量は5%~50%重量であ
る、ことを特徴する請求項
4に記載の1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物。
【請求項6】
前記1,3-シクロヘキシルジメチルアミン原料において、1,3-シクロヘキシルジメチルアミン原料の重量に基づいて、トランス-1,3-シクロヘキシルジメチルアミンの含有量は65%~95%重量であり、シス-1,3-シクロヘキシルジメチルアミンの含有量は5%~35%重量である、ことを特徴する請求項5に記載の1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物。
【請求項7】
前記1,3-シクロヘキ
シルジメチルアミン原料の調製方法は、1,3-シクロヘキシルジメチルアミン(トランス-1,3-シクロヘキシルジメチルアミン:シス-1,3-シクロヘキシルジメチルアミン=50:50)を、ルテニウム/アルミナ触媒の触媒作用下で、水素絶対圧力が4~6MPa、温度が200~220℃で1~4時間異性化反応させるステップを含む、ことを特徴する請求項
5又は6に記載の1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物とポリチオール化合物とを含む原料から重合して調製される、光学樹脂。
【請求項9】
前記ポリチオール化合物は脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオール、複素環含有ポリチオール、メルカプト基に加えて硫黄原子を含む脂肪族ポリチオール、メルカプト基に加えて硫黄原子を含む芳香族ポリチオール、メルカプト基に加えて硫黄原子を含む複素環含有ポリチオールの1種又は複数種を含む、ことを特徴する請求項
8に記載の光学樹脂。
【請求項10】
前記ポリチオール化合物は、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン及び2-メルカプトエタノールの1種又は複数種を含む、ことを特徴する請求項
9に記載の光学樹脂。
【請求項11】
請求項
8~
10のいずれか一項に記載の光学樹脂により製造された、レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイソシアネートの分野に関し、具体的には、光学樹脂に用いられる1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学樹脂は、ガラス、飛行機、自動車用ガラス及びレンズ、プリズムなどの光学素子の作製に広く使用されている。
【0003】
光学樹脂の中でポリウレタン系樹脂は最も重要な1種であり、このような樹脂はポリチオール化合物とイソシアネート化合物を用いて重合反応させて得られる。このような光学樹脂は屈折率が高く、耐衝撃性、染色性、加工性などの特性に優れている。且つ、ポリウレタンレンズシートは屈折率が高いため、レンズシートを非常に薄くし、より美しくすることができ、これは、将来のレンズシートの発展トレンドである。
【0004】
しかしながら、ポリウレタンレンズシートは、重合過程で原料における不純物又は異性体の影響で樹脂が白濁して不透明になり、光学的に変形し、レンズシートの品質が不合格となることが多い。
【0005】
したがって、レンズシート重合の原料及び過程を制御し、主にイソシアネート原料を制御することにより、白濁及び光学変形の発生を低減する必要がある。
【0006】
米国特許US5576412は、イソシアネート加水分解塩素を300ppm未満に制御することにより、変色しにくく光透過率の高いレンズシート樹脂を得ることができることを開示しており、中国特許CN102516487は、イソシアネートとポリチオールにおける水分含有量を10~300ppmに制御することにより、脈理及び白濁が生じない光学材料を得ることができることを開示している。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物及びそれから調製された光学樹脂を提供することにある。原料の1,3-HXDIにおける1,4-HXDI及びシス-トランス異性体の含有量を制御し、好ましくは、1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンの含有量をさらに制御することにより、白濁及び光学変形が生じない高性能の光学樹脂を得ることができる。
【0008】
上記の目的を実現するために、本発明で採用される技術案は次の通りである。
本発明は1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物であって、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン(1,3-HXDI)の重量に基づいて、
a)65%~95%重量のトランス-1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンと、
b)0を超え、且つ≦0.5%重量、好ましくは0.02%重量~0.5%重量の1,4-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン(1,4-HXDI)とを含み、
前記1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンは、シス-1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンと、トランス-1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンとを含む1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物を提供する。
【0009】
好ましい技術案として、本発明に係る1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物は、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンの重量に基づいて、0を超え、且つ≦600ppm、好ましくは0.1ppm~600ppmの1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサン
【化1】
を含む。
【0010】
本発明に係る1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物の調製方法は、(1)1,3-シクロヘキシルジメチルアミン原料を塩化水素と混合して1,3-シクロヘキシルジメチルアミン塩酸塩を調製する塩形成工程と、(2)1,3-シクロヘキシルジメチルアミン塩酸塩をホスゲンとイソシアネート化反応させ、生成物は、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンと1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンとを含むイソシアネート化工程と、(3)上記生成物を精製し、本発明に係る1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物を調製する精製工程とを含む。
【0011】
好ましい技術案として、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物における1,4-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンの含有量、シス-1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン及びトランス-1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサンの含有量は、1,3-シクロヘキサンジメチルアミン原料の組成を制御することにより実現可能であり、1,3-シクロヘキサンジメチルアミンは水素雰囲気下で触媒を介してシス-トランス異性体の割合を調整可能であり、1,3-シクロヘキサンジメチルアミン原料の重量に基づいて、トランス-1,3-シクロヘキサンジメチルアミンの含有量は50%~95%重量、シス-1,3-シクロヘキサンジメチルアミンの含有量は5%~50%重量であり、好ましくは、トランス-1,3-シクロヘキサンジメチルアミンの含有量は65%~95%重量、シス-1,3-シクロヘキサンジメチルアミンの含有量は5%~35%重量である。また、1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物を精製工程で精留して分離することによりシス-トランス異性体の割合も調整可能である。
【0012】
好ましい技術案として、前記1,3-シクロヘキサンジメチルアミン原料の調製方法は、1,3-シクロヘキシルジメチルアミン(トランス-1,3-シクロヘキシルジメチルアミン:シス-1,3-シクロヘキシルジメチルアミン=50:50)を、ルテニウム/アルミナ触媒の触媒作用下で、水素絶対圧力が4~6MPa、温度が200~220℃で1~4時間異性化反応させるステップを含む。
【0013】
好ましい技術案として、1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサン含有量は、精製工程における精留条件を制御することにより実現される。
【0014】
本発明は、本発明に係る1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物を用いてポリチオール化合物と重合した光学樹脂をさらに提供する。
【0015】
光学樹脂の調製方法では、イソシアネート組成物をポリチオール化合物と混合してから重合して光学樹脂を得る。
【0016】
本発明に係るポリチオール化合物は脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオール、複素環含有ポリチオール、メルカプト基に加えて硫黄原子を含む脂肪族ポリチオール、メルカプト基に加えて硫黄原子を含む芳香族ポリチオール、メルカプト基に加えて硫黄原子を含む複素環含有ポリチオールの1種又は複数種を含む。
【0017】
特に好ましくは、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチア-1,11-ウンデカンジチオール、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン及び2-メルカプトエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリチオール化合物を使用する。
【0018】
好ましくは、光学樹脂の調製方法は重合触媒の存在下で行われ、前記重合触媒は、好ましくは有機スズ系化合物であり、ジブチルスズジクロリド、ジメチルスズジクロリドなどのジアルキルスズハライド(dialkyltin halide)系、ジメチル二酢酸スズ、ジブチルジオクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレートなどのジアルキルジカルボン酸スズ系が挙げられる。
【0019】
また、目的に応じて、前記光学樹脂の製造方法では、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤、離型剤などの各種の助剤を選択的に添加する。
【0020】
ポリウレタン系樹脂から形成された光学材料は、一般に射出成形重合を用いて製造される。具体的には、ポリチオール化合物とイソシアネート化合物を混合し、適切な助剤を選択的に添加する。必要に応じて、この混合液(重合性組成物)を適切な方法で脱泡した後、光学材料用射出成形型に注入し、通常は低温から高温にかけて徐々に加熱して重合させる。次に、離型して光学材料を得る。
【0021】
本発明は、本発明に係る光学樹脂により製造されたレンズを提供する。
【0022】
イソシアネートとポリチオールの重合速度はレンズシート樹脂に大きな影響を与え、重合速度が速すぎると、樹脂は光学歪み及び気泡を発生し、重合速度が遅すぎると、樹脂の不透明及び白濁を引き起こしやすい。
【0023】
本発明者らは、驚くべきことに、1,3-HXDIの1,4-HXDIの含有量及びシス-1,3-HXDI、トランス-1,3-HXDIの含有量は重合速度に大きな影響を与え、1,3-HXDIにおける1,4-HXDI及びシス-1,3-HXDI、トランス-1,3-HXDIの含有量を特定の範囲に制御することにより、透明度が良好で光学歪みのないレンズシート樹脂を得ることができることを見出した。
【0024】
また、微量の1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンの存在は、重合反応をより安定させることができるが、1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンの含有量が高すぎると、組成物の総官能基の平均数が減少するため、重合の不均一をもたらし、ポリマーの構造に影響を及ぼし、光学歪みの発生を容易にもたらす。
【0025】
本発明の技術案は以下の有益な効果を有する。
本発明の1,3-ジイソシアネートメチルシクロヘキサン組成物は、1,4-HXDIの含有量、トランス-1,3-HXDIの含有量及び1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンの含有量が前記特定の範囲内にあるため、調製された光学樹脂によるレンズシートの光学歪み及び白濁の発生率はいずれも2%未満である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンの水素核磁気スペクトルである。
【
図2】1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンの炭素核磁気スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施例は、本発明に係る方法をさらに説明しているが、本発明は、列挙される実施例に限定されず、本発明の特許請求の範囲内の他のいずれの公知の変更も含むべきである。
【0028】
本発明の異性体の含有量及び微量の不純物はガスクロマトグラフAgilent 7890で測定した。ガスクロマトグラフの分析パラメータは次の通りである。(1)カラム:DB-5(30m×0.25mm×0.25μm)、(2)サンプル注入量:0.5μL、(3)スプリット比:1/30、(4)サンプル注入口温度:260℃、(5)カラム流速:1.5mL/min、(6)プログラム昇温:100℃で1分間保持し、10℃/minで280℃まで昇温し、20分間保持し、(7)FID検出器温度:280℃、(8)水素流速:40mL/min、空気流速:400mL/min。
【0029】
本発明の粘度テストはBrookfiledローター粘度計でテストした。
【0030】
本発明の核磁気分析はBruker 400MHzでテストした。
【0031】
光学歪みの発生率:光学歪みとは、樹脂の組成が異なるため、局所的な屈折率と周囲の通常の屈折率が異なる現象を指した。高圧水銀灯下で100枚のレンズを目視観察し、縞模様のレンズを確認して光学歪みのあるレンズと判定し、光学歪みの発生率を計算した。
【0032】
白濁の発生率:高圧水銀灯下で100枚のレンズを目視観察し、混濁したレンズを確認して白濁のあるレンズと判定し、白濁の発生率を計算した。
【0033】
重合速度:重合性組成物を作製する時を0時間として、5時間後の粘度を指標として評価した。
【0034】
1,3-シクロヘキシルジメチルアミンの異性化
攪拌器、温度計、ガス供給管を備えたステンレス鋼反応釡に、1000gの1,3-シクロヘキシルジメチルアミン(東京ケミカル、トランス-1,3-シクロヘキシルジメチルアミン:シス-1,3-シクロヘキシルジメチルアミン=50:50)、16gのルテニウム/アルミナ触媒(Sigma Aldrich)、1000gのヘプタンを加え、反応釜内を水素で3回置き換え、500rpmの撹拌下で、210℃、水素絶対圧力5MPaで1~4時間反応させ、反応が終了して室温まで冷却し、触媒を濾過して除去した。溶媒を除去し、精留して分離し、1,3-シクロヘキシルジメチルアミン原料を得た。反応時間に応じて、以下の1,3-シクロヘキシルジメチルアミン原料をそれぞれ得た。
【0035】
【0036】
1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンの構造の決定
ステンレス反応釡において、1420gの1,3-シクロヘキシルジメチルアミン原料(B)を12240gのo-ジクロロベンゼンに溶解し、800L/hの速度で塩化水素ガスを導入し、塩形成反応を行い、温度<30℃に制御し、塩形成完了した後に、乳白色の粘稠物を得て、150℃まで昇温し、500L/hの速度でホスゲンを導入し、光化学反応を行い、未反応のホスゲンを凝縮して回収した後に、アルカリ洗浄システムに入れて破壊した。反応液を清澄化し、光化学反応が完了した後に、窒素を導入して未反応のホスゲンを追い出し、続いて溶媒を除去した後、1,3-HXDI粗体を得た。
【0037】
500gの1,3-HXDI粗体を190℃で2時間熱処理し、得られたサンプルを精留して分離してから、精留塔の中部から材料を供給し、塔頂操作圧力が100paであり、塔底のリボイラー温度が140℃であり、この時、塔頂温度が110℃であり、還流比を20:1に制御し、安定状態に達した後に、塔頂から25gの軽質成分を抽出した。気相分析によると、該軽質成分に不純物が含まれ、1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサン99.0%で、核磁気データは次の通りである。1H NMR(400MHz,DMSO)δ 3.40-3.36(m,1H)、3.19-3.15(m,1H)、1.61-1.40(m,7H)、1.27-1.24(m,3H)、0.95-0.97(d,3H);13CNMR(100MHz,DMSO):δ 122.7、53.6、39.1、34.4、31.8、31.5、31.2、21.0、20.6。
【0038】
実施例1
ステンレス反応釡において、1420gの1,3-シクロヘキシルジメチルアミン原料(B)を12240gのo-ジクロロベンゼンに溶解し、800L/hの速度で塩化水素ガスを導入し、塩形成反応を行い、温度<30℃に制御し、塩形成完了した後に、乳白色の粘稠物を得て、150℃まで昇温し、500L/hの速度でホスゲンを導入し、光化学反応を行い、未反応のホスゲンを凝縮して回収した後に、アルカリ洗浄システムに入れて破壊した。反応液を清澄化し、光化学反応が完了した後に、窒素を導入して未反応のホスゲンを追い出し、続いて溶媒を除去した後、1,3-HXDI粗体を得た。
【0039】
次に、内径20mm、長さ1500mmの内部に規則充填物を充填したガラス精留塔を用いて、得られた1,3-HXDI粗体を精留し、予熱器で1,3-HXDI粗体を120℃まで予熱し、次に精留塔の中部から材料を供給し、塔頂操作圧力が100paであり、塔底のリボイラー温度が145℃であり、この時、塔頂温度が115℃であり、還流比を30:1に制御し、安定状態に達した後に、塔頂から1,3-HXDI組成物を抽出した。気相分析によると、組成物における1,3-HXDIの重量に基づいて計算し、組成物における1,4-HXDIの含有量が0.1wt%、1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンの含有量が10ppmであり、且つ1,3-HXDIにおけるトランス異性体は75%を占めた。
【0040】
25℃で53.7gの上記調製された1,3-HXDI組成物、触媒としての0.075gのジブチルスズジクロリド、0.10gの酸性リン酸エステル(Stepan公司、製品名Zelec UN)、0.05gの紫外線吸収剤(共同薬品社製、製品名BioSorb 583)を混合して溶解した。さらに、48gの1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン(京博化工)を加えて混合し、均一な混合液(重合性組成物)を形成した。均一な混合溶液を作製する時を0時間として、5時間後の粘度を測定した。
【0041】
25℃で53.7gの1,3-HXDI組成物、0.075質量部(即ち、0.075g)の触媒としてのジブチルスズジクロリド、0.10質量部(即ち、0.10g)の酸性リン酸エステル(Stepan公司、製品名Zelec UN)、0.05質量部(即ち、0.05g)の紫外線吸収剤(共同薬品社製、製品名BioSorb 583)を混合して溶解した。さらに、48質量部(即ち、48g)の1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン(京博化工)を加えて混合し、均一な混合液(重合性組成物)を形成した。この均一な混合液を600Paで1時間脱泡した後、1μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターで濾過した。次に、直径75mm、4Dガラス型及び粘着テープからなるレンズ用射出成形型に注入した。この射出成形型をオーブンに入れ、40℃で2時間保持し、4時間かけて50℃まで昇温させて2時間保持し、3時間かけて60℃まで昇温させて2時間保持した。さらに3時間かけて70℃まで昇温させて2時間保持し、3時間かけて100℃まで昇温させて、さらに1時間かけて130℃まで昇温させて2時間保持した。重合終了後に、射出成形型をオーブンから取り出し、離型してレンズを得た。次に、得られたレンズを120℃で3時間アニーリングした。同様の方法で100枚のレンズを作製し、脈理の発生率(即ち、光学歪みの発生率)、白濁の発生率を計算した。結果は表2のとおりである。
【0042】
実施例2~6、比較例1~5
1,3-シクロヘキシルジメチルアミン原料を変更し、異なる還流比を調整することにより、下記表2のとおり、異なる指標のサンプルを得た。
【0043】
【0044】
表2における「トランス-1,3-HXDIの含有量/%」とは、1,3-HXDIの重量に基づくトランス-1,3-HXDIの含有量を指している。
「1,4-HXDIの含有量/%」とは、1,3-HXDIの重量に基づく1,4-HXDIの含有量を指している。
「1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンの含有量/ppm」とは、1,3-HXDIの重量に基づく1-イソシアネートメチル-3-メチルシクロヘキサンの含有量を指している。