(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】冷却保湿盆状体、冷却保湿器具、冷却保湿飼育ケース、及び冷却保湿飼育ケースを用いた昆虫の飼育方法。
(51)【国際特許分類】
A01K 67/033 20060101AFI20230731BHJP
A01K 1/00 20060101ALI20230731BHJP
A01K 39/04 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A01K67/033 502
A01K1/00 Z
A01K39/04
(21)【出願番号】P 2023023972
(22)【出願日】2023-02-20
【審査請求日】2023-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】323000778
【氏名又は名称】堀口 幸聖
(72)【発明者】
【氏名】堀口 幸聖
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-083340(JP,A)
【文献】特開2014-069868(JP,A)
【文献】特開平09-104489(JP,A)
【文献】実開平07-011573(JP,U)
【文献】実開平04-003960(JP,U)
【文献】実開平02-044671(JP,U)
【文献】実開昭56-140076(JP,U)
【文献】実公平02-004916(JP,Y2)
【文献】実公昭58-021431(JP,Y1)
【文献】夏場の簡易クーラー,ワンポイント情報,日本,株式会社フォーテック,2021年04月18日,第1-3頁,https://www.fortech.co.jp/com/opt/opt04.htm
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/033
A01K 1/00
A01K 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫等の飼育ケース内の上部に取り付け、内部に載置した冷却剤を用いて前記飼育ケース内を冷却保湿する冷却保湿器具用の冷却保湿盆状体であって、
上面に中央部より周縁部に向かって下り勾配のついた底板と、
前記中央部に設けられた
前記冷却剤を載置する頂点部と、
前記底板の周縁部から上方向に伸長する側壁と、
前記底板と前記側壁とが接続する接続部に有する接続部を貫通
し、前記底板と前記側壁に亘って上下方向の断面がL字状に開口する単数又複数のスリットと、を備え、
前記冷却剤から流下する水が前記スリットを通過して前記飼育ケース内に滴下することを特徴とする冷却保湿盆状体。
【請求項2】
前記接続部の断面の外側面が円弧状であることを特徴とする請求項1に記載の冷却保湿盆状体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の冷却保湿盆状体は、熱伝導率が低い素材からなることを特徴とする冷却保湿盆状体。
【請求項4】
昆虫等の飼育ケース内の上部に取り付け、内部に載置した冷却剤を用いて前記飼育ケース内を冷却保湿する冷却保湿器具であって、
上面に中央部より周縁部に向かって下り勾配のついた底板と、前記中央部に設けられた
前記冷却剤を載置する頂点部と、前記底板の周縁部から上方向に伸長する側壁と、前記底板と前記側壁とが接続する接続部に有する接続部を貫通
し、前記底板と前記側壁に亘って上下方向の断面がL字状に開口する単数又は複数のスリットと、を有する冷却保湿盆状体と、
前記頂点部に載置された
前記冷却剤と、を備え、
前記冷却剤から流下する水が前記スリットを通過して前記飼育ケース内に滴下することを特徴とする冷却保湿器具。
【請求項5】
前記接続部の断面の外側面が円弧状であることを特徴とする請求項4に記載の冷却保湿器具。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の冷却保湿盆状体は、熱伝導率が低い素材からなることを特徴とする冷却保湿器具。
【請求項7】
請求項1に記載の冷却保湿盆状体と、
前記頂点部に載置された前記冷却剤と、
前記飼育ケースと、を備えることを特徴とする冷却保湿飼育ケース。
【請求項8】
請求項2に記載の冷却保湿盆状体と、
前記頂点部に載置された前記冷却剤と、
前記飼育ケースと、を備えることを特徴とする冷却保湿飼育ケース。
【請求項9】
請求項3に記載の冷却保湿盆状体と、
前記頂点部に載置された前記冷却剤と、
前記飼育ケースと、を備えることを特徴とする冷却保湿飼育ケース。
【請求項10】
請求項7に記載の冷却保湿飼育ケースを用いて昆虫を飼育することを特徴とする昆虫の飼育方法。
【請求項11】
請求項8に記載の冷却保湿飼育ケースを用いて昆虫を飼育することを特徴とする昆虫の飼育方法。
【請求項12】
請求項9に記載の冷却保湿飼育ケースを用いて昆虫を飼育することを特徴とする昆虫の飼育方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫を飼育する際にエアコンを使用できない状況下でも飼育ケース内を効率よく冷やし、それとともに保湿も行うことができる冷却保湿盆状体、冷却保湿器具、冷却保湿飼育ケース、及び冷却保湿飼育ケースを用いた昆虫の飼育方法である。
【背景技術】
【0002】
カブトムシやクワガタ等の昆虫を飼育する際の環境としては、直射日光が当たらず、暗めで涼しい場所がよく、飼育温度は21~25°C、湿度については、体表面が湿っている状態がよいことがわかっている。しかしながら、夏季には、室温は35°Cにも達し、また、相対湿度は54~60%程度であり、昆虫を飼育する環境に適しているとは言えない。そのため、昆虫の飼育時には、飼育ケース内の温湿度管理が必要となる。例えば、エアコンを用いると、この飼育環境に調節することが容易にできるが、飼育ケースを設置した室内全体をエアコンで空調することから、電気代が嵩むという問題がある。一方、こまめに霧吹きを行ったり、保冷が可能な容器に飼育ケースを入れるなどすることにより、温湿度管理を行うことも可能であるが、非常に手間がかかるという問題がある。
【0003】
特許文献1には、「飼育器内の空気を冷却する冷却部と、前記冷却部によって冷却された空気を循環させる循環ファンと、前記循環ファンから送風された空気を通気する通気路を備えるとともに、前記冷却部には蓄冷作用のある保冷剤が設けられていることを特徴とする昆虫類等用の飼育器」が開示されている。しかしながら、当該飼育器であれば、飼育器を配置した室内全体を温湿度管理するためにエアコンを運転する必要はないものの、循環ファンの運転費用(電気代)が嵩む問題があった。
【0004】
一方、特許文献2には、「下から上にペット居住場所を形成するペット居住引出、内部に保冷剤が載置さえた保冷剤収納引出を具備し、保冷剤収納引出は、内部に載置されえた保冷剤からの冷気がペット居住場所に下降するような通気性のある構造をしている引出底板を有する、ことを特徴とするペット小屋(飼育ケース)」に係る発明が開示されている。この発明によれば、電気代の負担なくペット小屋内部を冷却することは可能である。しかしながら、当該発明に係る保冷剤については、水滴の発生・滴下を防止できるものが好ましい、とされ、医療用等に市販されている結露防止被覆材で覆われている保冷剤が好適とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実登第3091966号公報
【文献】特開第2013-143914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カブトムシやクワガタムシ等の昆虫を飼育するにあたって、特に重要なのが温度と湿度である。これらは夏に活動する昆虫だが寒さよりも暑さに弱く、また乾燥にも弱いためである。そのため、これらの昆虫を飼育する場合、エアコンのある部屋で飼育することが一般的だが、エアコンがない場合には霧吹きを多めにしたり、保冷剤を入れた容器の中に飼育ケースを入れたりするなどして温度と湿度を管理する必要があり、手間がかかる。また、特許文献2に係る保冷剤は、医療用等であり容易に入手することが難しいという問題があった。
【0007】
本発明は、容易に入手可能な冷却剤を用いることにより、昆虫等を飼育する際に飼育ケース内を効率よく冷やし、それとともに保湿も行うことができ、また、運転費用が低廉な冷却保湿盆状体、冷却保湿器具、冷却保湿飼育ケース、及び冷却保湿飼育ケースを用いた昆虫の飼育方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
冷却保湿器具10は、冷却保湿飼育容器61の上部が開口した略直方体の市販されている冷却保湿飼育ケース60内の上部に取り付け、冷却保湿器具10の内部に冷却剤を載置することができる。また、底板20は、中央部から周辺部に向かって下り勾配を有し、中央部に載置した冷却剤から融解流下する水を底板と底板の周縁部から上方に伸びる側壁との接続部に設けられたスリットを通過して飼育ケース内に滴下することにより、飼育ケース内を冷却・保湿する。
【0009】
また、中央部に頂点部を設けることにより、冷却剤と底板との接触面積を小さくし、冷却剤が急速に融解することを防ぎ、飼育ケース内を冷却・保湿する効果の持続することを図っている。
【0010】
一方、冷却保湿盆状体を熱伝導性の低い樹脂とすることによっても、底板から冷却剤に伝導する熱を低減し、冷却剤が急速に融解することを防ぎ、飼育ケース内を冷却・保湿する効果が持続することを図っている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る冷却保湿器具を用いると、エアコンの無い室内であっても、昆虫を飼育する際に飼育ケース内を効率よく冷やし、それとともに保湿も行うことができる。また、家庭の冷蔵庫で作ることができる氷粒を冷却剤として使用することから、冷却剤の入手が容易であり、運転費用が低廉な冷却保湿盆状体、冷却保湿器具、冷却保湿飼育ケース、及び冷却保湿飼育ケースを用いた昆虫の飼育方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る冷却保湿器具と冷却保湿飼育ケースの使用例を示す正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る冷却保湿盆状体の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る冷却保湿盆状体の平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る冷却保湿盆状体の右側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る冷却保湿盆状体のA1-A1断面図であって、冷却剤を載置した状態を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る冷却保湿盆状体の正面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る冷却保湿盆状体のB1-B1断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態の第1の変形形態に係る冷却保湿盆状体の平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態の第1の変形形態に係る冷却保湿盆状体のA2-A2断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態の第2の変形形態に係る冷却保湿盆状体の平面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態の第2の変形形態に係る冷却保湿盆状体のA3-A3断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る冷却保湿器具内において、氷粒を4つ使用した際の冷却保湿飼育ケース内の温湿度変化のグラフである。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る冷却保湿器具内に載置した氷の重量と冷却保湿飼育ケース内の最大温湿度変化量のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
初めに、本発明に係る冷却保湿飼育ケース60について説明する。
【0014】
図1は、冷却保湿飼育ケース60の正面図である。冷却保湿飼育ケース60は、冷却保湿飼育容器61、冷却保湿飼育容器のフタ62、冷却保湿器具10、及び冷却保湿器具10の内部に載置された冷却剤12を備える。
【0015】
冷却保湿飼育容器61(以下、「飼育容器」とも言う。)は、上面が開口し、側面が下から上方に向かって緩やかに外側に広がった略直方体の市販されている昆虫用の飼育容器61であり、カブトムシやクワガタ等の昆虫を内部で飼育することができる。また、飼育容器61内の温度・湿度管理が必要な小動物用としても使用することができる。
【0016】
なお、市販されている昆虫用の飼育用器には、一般的に大(幅約30cmx奥行約20cmx高さ約20.5cm)中(約23cmx約15cmx約16.3cm)小(約17.7cmx約11.5cmx約11.8cm)の3種類の大きさがあり、飼育する昆虫の種類・大きさ・数によって飼育容器61の大きさを適宜選択することができる。
【0017】
冷却保湿飼育容器のフタ62は、冷却保湿飼育容器61の上面の開口を蓋い、冷却保湿飼育ケース60内で飼育される昆虫が冷却保湿飼育ケース60から逃げ出すことを防いでいる。
【0018】
次に、冷却保湿器具10について、説明する。冷却保湿器具10は、冷却保湿盆状体11と、冷却保湿器具10の内部に載置される冷却剤12と、を備える。
【0019】
図2~
図11に、本発明の冷却保湿盆状体11の好ましい基本構成の例を示す。
【0020】
図2は、本発明に係る冷却保湿盆状体11の実施形態の斜視図であり、
図3は平面図、
図4は右側面図、
図5は冷却剤12を載置した状態を示すA1ーA1断面図、
図6は正面図、
図7はB1-B1断面図である。なお、
図5及び
図7において、エンボス加工により形成された頂点部21の図示は省略している。
【0021】
本発明の実施形態に係る冷却保湿器具10は、
図1に示すように、冷却保湿飼育容器61の上部に配置されている。冷却保湿器具10が冷却保湿飼育容器61の上部に配置されていると、冷却保湿飼育ケース60内を効率よく冷却・保湿ができるだけでなく、飼育している昆虫の邪魔にもなりにくい。
【0022】
図1に示すように、冷却保湿盆状体11は、内部に載置した冷却剤12を用いて飼育容器61内を冷却保湿する。また、
図2~7に示すように、冷却保湿盆状体11は、中央部22より周縁部23に向かって下り勾配のついた底板20と、中央部22に設けられた冷却剤12を載置する頂点部21と、底板20の周縁部23から上方向に伸長する側壁30と、底板20と側壁30とが接続する接続部50を貫通する単数又は複数のスリット40と、を備える。
【0023】
市販されている飼育容器61のほとんどは、飼育容器61の側面が底面から上に広がる逆錘台のような形状を有している。本発明に係る冷却保湿盆状体11は、飼育容器61に設置した際に、その上部で止まるような大きさとすることで飼育容器61の上部に取り付けることができる。また、飼育容器61として水槽を用いる場合、水槽の側面は直立しているが、側壁30を垂直方向から僅かに外側に傾斜させると、飼育容器61の上部に取り付けることが可能となる。
【0024】
底板20の内面は、中央部22から周縁部23に向かって下がる勾配を有する。底板20の中央部22に載置された冷却剤12が融解し流出した水は、中央部22から周縁部23へ流れる。周縁部に23に達した水は、スリット40を通過して冷却保湿盆状体11の外側に流出し、飼育ケース60の内壁面に伝って流下し、飼育ケース60内を冷却保湿する。また、水が、飼育ケース60の内壁面を伝って流下すると、飼育ケース60で飼育している昆虫に直接水がかかる恐れがない。
【0025】
底板20は、中央部22に頂点部21を単数又は複数有する。頂点部21は、底板20の対角線の交点に位置する、底板20からの突起である。頂点部21に冷却剤12を載置すると、冷却剤12と底板20の設置面積を少なくすることができる。冷却剤12と底板20の設置面積を少なくすることにより、底板20から冷却剤12への伝熱を減らすことが可能となり、ゆっくりと冷却剤12が融解し、冷却剤12の効果を長時間持続させることができる。
【0026】
冷却剤12を複数載置する際には、
図8~
図9に示した本発明の実施形態の第1の変形形態のように、底板20は、上方向に凸状の曲面を有し、底板20の上面にエンボス加工を施して底面20の上面から僅かに突起した頂点部21を設けても良い。また、
図10~11に示した本発明の実施形態の第2の変形形態のように、中央部22に平坦な平面を設け、その上面にエンボス加工を施し底面20の上面から僅かに突起した頂点部21を設けてもよい。
【0027】
冷却保湿盆状体11は、冷却保湿盆状体11に冷却剤12を載置しても変形しない強度と低い熱伝導率を有すれば良く、熱伝導率が1W/m・K以下であると好ましい。冷却保湿盆状体11を熱伝導率が低い素材とすると、冷却保湿盆状体11から冷却剤12へ急速に伝熱することなく、冷却剤12を緩慢に融解することができ、冷却剤12が解けることによって飼育ケース60内を冷却・保湿する効果を長時間持続させることができる。
【0028】
冷却保湿盆状体11は、熱伝導率が1W/m・K以下であり、容易に成型することが可能な熱可塑性樹脂、例えば、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、であれば良い。また、植物由来のPLA(ポリ乳酸樹脂)であれば、熱伝導率が0.17~0.21W/m・Kであり、3Dプリンターを用いて容易に成形することができるとともに、環境にも優しいことから、好ましい。一方、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、等の熱硬化性樹脂であっても良い。また、冷却保湿盆状体11が、多孔質、例えば発泡スチロール、であれば、空気(0.03W/m・K(室温))などの気体を含むことにより低い熱伝導率を得ることができ、好ましい。また、冷却保湿盆状体11が内部に気体を含む中空構造であっても良い。
【0029】
一方、冷却保湿盆状体11の素材が金属であると、熱伝導率が高く、冷却剤12の冷熱を急速に奪い、冷却剤12を急速に融解しまう。このため、飼育容器61内を長時間にわたって冷却・保湿することができないので、冷却保湿盆状体11の素材が金属であることは好ましくない。
【0030】
側壁30は、底板20の周縁部23から上方に伸長し、冷却剤12の落下や水の過滴出を防いでいる。側壁30の高さは限定されないが、底板20の周縁部23に溜まった水が側壁30を超えて溢れ出さないように機能するのに必要な最低限の高さ以上の高さを有している。
【0031】
スリット40は、底板20と側壁30の接続部50に設けられた、接続部50を貫通する単数又は複数の開口である。中央部22から流下した水は、スリット40を通過して飼育容器61内に滴下し、飼育容器61内の温度低下と湿度上昇をする。スリット40の幅は、水が水滴となって流れ落ちことができる幅とするのが好ましい。一方、スリット40の数は限定されないが、冷却保湿飼育ケース60内の温度湿度を調整するに適した適量の水が流下する数を選択すればよい。
【0032】
接続部50は、底板20と側壁30との接合部に位置し、接続部50の断面の外側面は円弧状を呈する。接続部50の外側面が円弧状を呈すると、スリット40から流出した水が表面張力によって飼育ケース60の内壁面と接続部50とが接する位置に溜まることなく流下することができる。
【0033】
冷却剤12は、冷却保湿盆状体11に収まる大きさの氷又は保冷剤である。飼育ケース60内の温度湿度の両方を調節したい場合には、氷などの融解とともに水が流出するものであれば良く、氷は、家庭用の冷蔵庫で作ったものであっても良い。冷却剤12は、融解するに伴って水が流出すれば良く、例えば、保冷剤の周囲に氷が被覆された塊であってもあっても良い。また、飼育ケース60内の温度のみを調節したい場合には、保冷剤などの融解とともに水が流出しないものとし、保冷剤から発する冷気を用いて飼育ケール60内を冷却すれば良い。
【0034】
次に、冷却保湿飼育ケース60を用いて昆虫等を飼育することを特徴とする昆虫等の飼育方法について、説明する。
【0035】
先ず、昆虫等が飼育されている飼育容器61に、冷却保湿盆状体11を水平に装着する。このとき、冷却保湿盆状体11を水平に装着しないと、飼育容器61内に滴下する水を飼育容器61内に均等に滴下することができないので、注意を要する。次に、冷却保湿盆状体11の中央部22に、冷却剤12を載置する。なお、冷却保湿飼育ケース60が設置されている室温・相対湿度に応じて、飼育容器61内の下げようとする温度と上げようとする相対湿度によって、載置する冷却剤12の量を決定すれば良い。
【0036】
冷却剤12を冷却保湿盆状体11に載置すると、冷却保湿盆状体11からの伝熱により、冷却剤12は融解し、融解して生じた水は中央部22から底板20の周縁部23に流下する。流下した水が周縁部23に達すると、周縁部23に設けられたスリット40を通過し、冷却保湿盆状体11の外部に流出し、飼育容器61の内壁を伝って滴下される。水の滴下に伴い、水が気化することにより、気化熱によって飼育容器61内の温度は低下し、相対湿度も上昇する。
【0037】
図12は、本発明の実施形態に係る冷却保湿器具10に氷粒を約80g(4つ)載置して、中サイズ(23cmx15cmx16.3cm)の冷却保湿飼育ケース60内の温湿度変化を、室温34~35℃、相対湿度54~60%の環境下で計測した結果のグラフである。冷却剤12を冷却保湿盆状体11に載置すると、冷却剤12は融解し始め、水を飼育ケース60内に滴下を開始する。水が飼育ケース60内に滴下されると、飼育ケース60内の温度の低下、相対湿度の上昇が始まる。飼育ケース60内の温度・相対湿度ともに、30分程で温度低下・相対湿度上昇の効果が最大となり、その後徐々に温度の上昇・相対湿度の低下が認められるものの、その効果は約2時間持続した。具体的には、ケース内の温度は最大で7.3℃下がり、相対湿度は最大で18.8%上がった。一方、相対湿度は、ケース内の温度がほぼ室温に戻った約2時間後でも、相対湿度は2.9%上がった状態を維持していた。
【0038】
図13は、
図12と同様の環境において冷却保湿器具10に載置した氷の重量と、それぞれの最大の温湿度変化と、を対比したグラフである。
図13から、冷却剤12の重量と温湿度の変化には相関関係が認められる。冷却剤12と最大の温湿度変化との関係から、飼育ケース60内の温度や相対湿度の下げ上げする所望の範囲に応じて、冷却保湿器具10に載置する冷却剤12の重量を決めることができる。
【符号の説明】
【0039】
10 冷却保湿器具
11 冷却保湿盆状体
12 冷却剤
20 底板
21 頂点部
22 中央部
23 周縁部
30 側壁
40 スリット
50 接続部
60 冷却保湿飼育ケース
61 冷却保湿飼育容器
62 冷却保湿飼育容器のフタ
63 内壁
【要約】
【課題】
容易に入手可能な冷却剤を用いることにより、昆虫を飼育する際に虫かご内を効率よく冷やし、それとともに保湿も行うことができ、また、運転費用が低廉な冷却保湿器具を提供することを目的とする。
【解決手段】
冷却保湿器具10は、冷却保湿飼育容器61の上部が開口した略直方体の市販されている冷却保湿飼育ケース60内の上部に取り付け、冷却保湿器具10の内部に冷却剤を載置することができる。また、底板20は、中央部から周辺部に向かって下り勾配を有し、中央部に載置した冷却剤から融解流下する水を底板と底板の周縁部から上方に伸びる側壁の接続部に設けられたスリットを通過して飼育ケース内に滴下することにより、飼育ケース内を冷却・保湿する。
【選択図】
図1