IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図1
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図2
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図3
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図4
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図5
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図6
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図7
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図8
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図9
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図10
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図11
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図12
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図13
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図14
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図15
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図16
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図17
  • 特許-脱臭装置および脱臭システム 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】脱臭装置および脱臭システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/38 20060101AFI20230731BHJP
   B01D 53/40 20060101ALI20230731BHJP
   B01D 53/42 20060101ALI20230731BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20230731BHJP
   B04C 5/06 20060101ALI20230731BHJP
   B04C 5/12 20060101ALI20230731BHJP
   B04C 5/185 20060101ALI20230731BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
B01D53/38 120
B01D53/40 210
B01D53/42
B01D53/78
B04C5/06
B04C5/12 Z
B04C5/185
C02F11/02 ZAB
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023036184
(22)【出願日】2023-03-09
【審査請求日】2023-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 仁
(72)【発明者】
【氏名】長 克美
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-152272(JP,U)
【文献】特開2013-022092(JP,A)
【文献】特開2010-234335(JP,A)
【文献】特開2001-070744(JP,A)
【文献】実開昭53-044652(JP,U)
【文献】特開2015-008994(JP,A)
【文献】特開2001-070745(JP,A)
【文献】特開昭58-186418(JP,A)
【文献】特開2008-132459(JP,A)
【文献】中国実用新案第208574474(CN,U)
【文献】実開昭57-035741(JP,U)
【文献】実開昭58-141718(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/73
B01D 53/14-53/18
B01D 53/74-53/85
B01F 21/00-25/90
B01F 27/00-27/96
B04C 5/00- 5/30
B05B 3/02- 3/12
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気ガスと液状脱臭剤とが導入される気液導入部と、
前記気液導入部の下端に接続され、回転する羽根付き円盤が設けられるとともに、前記気液導入部から流入する前記臭気ガスに対して前記気液導入部から落下する前記液状脱臭剤を前記羽根付き円盤の回転により噴霧して前記臭気ガスと混合することで気液ガスを生成する気液接触部と、
前記気液接触部の下端に接続され、前記気液ガスから臭気成分を吸着した前記液状脱臭剤と前記臭気成分が取り除かれた処理済ガスとに分離するサイクロンが設けられた気液分離部とを有し、
前記気液導入部は、
鉛直方向に中心軸が配置された円筒形の外筒と、
前記外筒の側面上方に配置され、且つ、前記臭気ガスを前記外筒の外部から導入して前記外筒の内面を旋回させつつ下方に向かって供給する臭気ガス入口と、
前記外筒の側面下方に配置され、且つ、前記液状脱臭剤を前記外筒の外部から導入して前記内面を旋回させつつ上方に向かって供給する液状脱臭剤入口と、
前記外筒の内部に配置され、且つ、上端から下方に向かって円錐状に口径が狭くなる漏斗状の形状をなし、前記外筒の底面から前記気液接触部の上面を貫通する下端部を備えるベンチュリー管と、を有し、
前記液状脱臭剤入口から前記上方に向かって供給される前記液状脱臭剤は前記ベンチュリー管の外側から越流して前記ベンチュリー管の内壁面を下方に流れ、前記臭気ガス入口から前記下方に向かって供給される臭気ガスは前記ベンチュリー管を下方に流れ、
前記気液接触部は、
前記中心軸を中心として回転する前記羽根付き円盤と、
前記羽根付き円盤の水平方向の位置から上方に向かって口径が広がる円錐状の内壁面を有するケーシングと、を備え、
前記噴霧された前記液状脱臭剤と前記気液接触部に流入した前記臭気ガスは、前記ケーシングの前記内壁面で上方に跳ね返り且つ前記ケーシングの上面で下方に跳ね返ることで循環流となって前記気液ガスを生成する脱臭装置
【請求項2】
前記気液分離部は、
前記ケーシングの下端に接続した円筒状の直胴部と、前記直胴部の下端に接続し且つ前記下端から下方に向かって円錐状に口径が狭くなる漏斗部とを有する前記サイクロンと、
前記サイクロン内において、前記直胴部の中央付近且つ下方に向かって配置された一端と、前記一端から前記直胴部の上方の壁面を外部へ貫通して配置された他端とを備えた曲管と、を有し、
前記他端が前記処理済ガスの出口となり、前記サイクロンの下方から前記臭気成分を吸着した液状脱臭剤が排出される請求項に記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記羽根付き円盤は、
前記羽根付き円盤の上面または下面の中央部から端部へ延びる長方形状の単数または複数の羽根、
または、
前記羽根付き円盤の上面または下面の中央部から端部へ延びる長方形状の単数または複数の羽根であって且つ前記羽根付き円盤の前記回転の方向とは逆方向に湾曲した羽根
を備える請求項に記載の脱臭装置。
【請求項4】
前記羽根付き円盤は、前記羽根付き円盤の上面に、複数の突起を備える請求項に記載の脱臭装置。
【請求項5】
発酵槽と、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の脱臭装置と、
廃水処理装置と
を有し、
前記液状脱臭剤は、活性汚泥であり、
前記臭気ガスは前記発酵槽から前記気液導入部へ導入され、前記サイクロンの下方から排出された前記臭気成分を吸着した活性汚泥は前記廃水処理装置で生物処理され、前記廃水処理装置で前記生物処理されて前記臭気成分が取り除かれた活性汚泥は前記気液導入部へ導入される脱臭システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気成分を含む臭気ガスに液状脱臭剤を噴霧して浄化するための脱臭装置および脱臭システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚泥の堆肥化施設や産業廃棄物処理施設等の粉塵と悪臭が同時に発生しやすい施設の環境雰囲気から、集塵および脱臭をして清浄化する脱臭装置が開発されている。
例えば、粉塵と臭気成分を含む臭気ガスを導入ダクトから導入し、回転筒の遠心力で粉塵を分離して下方を落下させるとともに、粉塵が分離された臭気ガスを上方へ誘導し、接触充填材とシャワーとで脱臭する装置がある(特許文献1)。
臭気成分を含む臭気ガスの脱臭装置としては、噴霧ノズルから酸性水やアルカリ水などの液状脱臭剤を噴霧して気液接触させ、脱臭されたガスを旋回流によって気液分離する装置もある(特許文献2)。
また、臭気成分を含む臭気ガスに噴霧ノズルから液状脱臭剤(界面活性剤)を噴霧して気液接触させ、サイクロンで脱臭されたガスを気液分離する装置もある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-313904号公報
【文献】特開2006-25914号公報
【文献】特開2010-234335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸性水やアルカリ水などの薬品のほか、廃水処理で生成される活性汚泥が、臭気成分を取り込む脱臭剤となることが知られている。
一般的に活性汚泥は廃棄されるため、活性汚泥を脱臭剤とすることができれば、運転費用が安価な脱臭装置が得られる。
しかし、活性汚泥は、液状であっても粘性があり、有機成分などの固体を含むため、活性汚泥を上記特許文献1乃至3の装置に使用した場合、接触充填材や噴霧ノズルが閉塞する恐れが高い。
【0005】
そこで、本発明では、液状脱臭剤が活性汚泥であった場合にも、閉塞などの不具合を生じさせることなく、臭気成分を含むガスと液状脱臭剤との気液接触によって、当該ガスから臭気成分を除去する脱臭装置および当該装置を用いた脱臭システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の脱臭装置は、臭気ガスと液状脱臭剤とが導入される気液導入部と、前記気液導入部の下端に接続され、回転する羽根付き円盤が設けられるとともに、前記気液導入部から流入する前記臭気ガスに対して前記気液導入部から落下する前記液状脱臭剤を前記羽根付き円盤の回転により噴霧して前記臭気ガスと混合することで気液ガスを生成する気液接触部と、前記気液接触部の下端に接続され、前記気液ガスから臭気成分を吸着した前記液状脱臭剤と前記臭気成分が取り除かれた処理済ガスとに分離するサイクロンが設けられた気液分離部とを有し、前記気液導入部は、鉛直方向に中心軸が配置された円筒形の外筒と、前記外筒の側面上方に配置され、且つ、前記臭気ガスを前記外筒の外部から導入して前記外筒の内面を旋回させつつ下方に向かって供給する臭気ガス入口と、前記外筒の側面下方に配置され、且つ、前記液状脱臭剤を前記外筒の外部から導入して前記内面を旋回させつつ上方に向かって供給する液状脱臭剤入口と、前記外筒の内部に配置され、且つ、上端から下方に向かって円錐状に口径が狭くなる漏斗状の形状をなし、前記外筒の底面から前記気液接触部の上面を貫通する下端部を備えるベンチュリー管と、を有し、前記液状脱臭剤入口から前記上方に向かって供給される前記液状脱臭剤は前記ベンチュリー管の外側から越流して前記ベンチュリー管の内壁面を下方に流れ、前記臭気ガス入口から前記下方に向かって供給される臭気ガスは前記ベンチュリー管を下方に流れ、前記気液接触部は、前記中心軸を中心として回転する前記羽根付き円盤と、前記羽根付き円盤の水平方向の位置から上方に向かって口径が広がる円錐状の内壁面を有するケーシングと、を備え、前記噴霧された前記液状脱臭剤と前記気液接触部に流入した前記臭気ガスは、前記ケーシングの前記内壁面で上方に跳ね返り且つ前記ケーシングの上面で下方に跳ね返ることで循環流となって前記気液ガスを生成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の脱臭装置によれば、回転する羽根付き円盤が設けられた気液接触部を備えたことで、羽根付き円盤の回転により液状脱臭剤を霧状に噴霧することができる。活性汚泥で閉塞する恐れのある接触充填材や噴霧ノズルを使用しないので、液状脱臭剤が活性汚泥であっても、脱臭装置に不具合を生じさせることなく運転を継続することができる。その結果、運転費用が安価な脱臭装置が得られる。
また、気液接触部において液状脱臭剤の種類によっては閉塞する恐れのある接触充填材や噴霧ノズルを使用しないので、メンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る脱臭装置を示す概略構成図である。
図2】実施形態に係る気液導入部を示す概略構成図である。
図3図2の気液導入部を上から見た概略構成図である。
図4図2の気液導入部の斜視半割図である。
図5】実施形態に係る気液接触部を示す概略構成図である。
図6】アトマイザの概略構成図である。
図7図5の気液接触部の斜視半割図である。
図8図5の気液接触部における気液ガスの流れの説明図である。
図9】気液ガスの上昇を補足説明するための説明図である。
図10】実施形態に係る気液分離部を示す概略構成図である。
図11図10の気液分離部の斜視半割図である。
図12】(A)~(D)はアトマイザの変形例を示す概略構成図である。
図13】実施形態に係る気液接触部の変形例を示す概略構成図である。
図14】実施形態に係る脱臭装置の第一変形例を示す概略構成図である。
図15】実施形態に係る脱臭装置の第二変形例を示す概略構成図である。
図16】実施形態に係る脱臭装置の第三変形例を示す概略構成図である。
図17】実施形態に係る脱臭システムを示す概略構成図である。
図18】実施形態に係る脱臭システムの変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態またはその変形例につき、図1乃至図16を参照して脱臭装置について説明し、次いで、図17及び図18を参照してこの脱臭装置を有する脱臭システムについて説明する。以下に示す構成等はあくまでも例示に過ぎず、明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。実施形態および変形例で示す各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、当該各構成は、本発明の必須の構成要件を除き、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
図ではX軸、Y軸およびZ軸からなる直交座標系を図示して説明する。X軸は水平方向であり、Z軸は鉛直方向(高さ方向)であって、Y軸はX軸およびZ軸の双方に直交する方向である。なお、Z軸の矢印方向は、鉛直方向且つ上方に向かう方向である。
【0010】
図1は、本発明の脱臭装置20の概略構成図である。
脱臭装置20は、臭気成分や粉塵を含む臭気ガス中に液状脱臭剤を噴霧して、清浄化した処理済みガスを排出する装置であり、例えば、汚泥の堆肥化施設や産業廃棄物処理施設等の粉塵と悪臭が同時に発生しやすい施設などで、その環境雰囲気から集塵および脱臭をするために用いられる。
図1に示すように脱臭装置20は、鉛直な軸Zに沿って上から順に、気液導入部21と、気液導入部21の下端に接続された気液接触部22と、気液接触部22の下端に接続された気液分離部23とを有している。
【0011】
気液導入部21は、臭気ガスと液状脱臭剤とを脱臭装置20に導入して、下方の気液接触部22へ供給する。気液接触部22は、気液導入部21の下方に配置されており、気液導入部21から供給された臭気ガスと液状脱臭剤との気液混合状態のガス(以下「気液ガス」という)を生成して、気液分離部23へ供給する。気液分離部23は、気液接触部22の下方に配置されており、気液接触部22から供給された気液ガスを、臭気成分や粉塵が取り除かれた処理済ガスと、臭気成分や粉塵を吸着した使用済みの液状脱臭剤とに分離して、排出する。
【0012】
臭気ガスは、臭気成分を含むガスであり、臭気成分に加え粉塵を含んでいてもよい。臭気ガスの一例は、汚泥の堆肥化施設や産業廃棄物処理施設等の粉塵と悪臭が同時に発生しやすい施設の環境雰囲気である。
また、液状脱臭剤は、臭気ガスと気液接触させる液体である。図1の脱臭装置20に用いる液状脱臭剤は、除去したい臭気成分の種類によって適宜選択しうるものであり、具体例として、水、酸性水、アルカリ水、あるいは、活性汚泥を挙げることができる。
【0013】
まず、図1図4を参照して気液導入部21について説明する。
図1および図2に示すように、気液導入部21には、鉛直方向の軸Zに中心軸が配置され、上面および下面を閉ざした円筒形の外筒1と、外筒1内において同一の軸Zを中心軸として配置されたベンチュリー管2とが設けられている。
外筒1は、気液導入部21の周囲を形成する壁面をなし、外筒1で囲まれた空間内に後述する臭気ガスと液状脱臭剤とが導入される。なお、外筒1の上面よりも上方には、後述するアトマイザ12を駆動するための駆動装置10が装備され、外筒1の上面中心にはアトマイザ12と駆動装置10を接続する駆動軸11の貫通穴10Aが貫設されている。この貫通穴10Aは、必要に応じて空気漏れを防止するシール構造とされる。
【0014】
ベンチュリー管2は、上部の径D2(図2参照)が下部の径D3(図2参照)よりも大きなロート状(漏斗状)をなす管体であり、上部において外筒1の内部に水平なる上部開口2Aを持つ。また、図1に示すように、ベンチュリー管2の下部(下端部)は、外筒1の下面(底面)を貫通して気液接触部22(図1参照)内へ突出しており、下部開口2Bが気液接触部22内に配置されている。
図2に示すように、外筒1の上部径D1と、ベンチュリー管2の上部径D2と、ベンチュリー管2の下部径D3との各中心点は、同一の軸Z上に配置されている。また、外筒1の上部径D1の寸法は、ベンチュリー管2の上部径D2および下部径D3よりも大きい。
径D1、D2およびD3の大小関係は、下記不等式で表される。
D1>D2>D3
【0015】
外筒1において、側面上方には臭気ガスを外部から外筒1内に導入するための臭気ガス入口6が設けられており、側面下方には液状脱臭剤を外部から外筒1内に導入するための液状脱臭剤入口7が設けられている。
詳しくは、臭気ガス入口6は、ベンチュリー管2の上部開口2Aよりも高い位置に配置されている。また、液状脱臭剤入口7は、外筒1の下面よりも上方であって、且つ、ベンチュリー管2の上部開口2Aよりも低い位置に配置されている。
なお、臭気ガス入口6の径D4および液状脱臭剤入口7の径D5は、外筒1の上部径D1の二分の一よりも小さい寸法に設定されている。
径D1と、D4およびD5の大小関係は、下記不等式で表される。
D1>2×D4、D1>2×D5
【0016】
臭気ガス入口6は、臭気ガスを外筒1内へ導入し、且つ外筒1の内面を所定の回転方向へ旋回させつつ下方に向かって連続的に供給するように構成されている。
具体的には、臭気ガス入口6は、外筒1の側面に貫設された開口6Aと、この開口6Aに連通する管路6Bとを含む。図3に示すように、管路6Bは、外筒1を上面視した円周における接線方向(図3中破線で示す)に沿って延在している。そのため、管路6Bの導入口6Cから導入された臭気ガスは、外筒1内において外筒1の内周面に沿って軸Z周りの回転方向へ旋回する旋回流になる。この実施形態では、図3中左から右へ向かう接線方向(X軸方向)に沿って臭気ガスが導入され、時計回りの旋回流が生じる場合を例に挙げる。
【0017】
液状脱臭剤入口7は、液状脱臭材を外筒1の内面を臭気ガスの旋回の方向と同じくする回転方向へ旋回させつつ上方に向かって供給するように構成されている。
具体的には、液状脱臭剤入口7は、外筒1において軸Zに対して臭気ガス入口6の開口6Aとは反対側に貫設された開口7Aと、この開口7Aに連通する管路7Bとを含む。
管路7Bは、臭気ガスの旋回流の回転方向と同じくする接線方向、すなわち、図3中右から左へ向かう接線方向(X軸方向)に沿って配設されている。そのため、管路7Bの導入口7Cから導入された液状脱臭剤は、図3中右から左へ向かって外筒1内に流入し、外筒1内において外筒1の内周面に沿って臭気ガスと同様な時計回りの旋回流になる。
【0018】
図4に示すように、外筒1内に流入した臭気ガスは、臭気ガス入口6から流入する臭気ガスの流入速度を利用して外筒1内面の接線方向(軸Z回りの回転方向)に沿う旋回流(図4中一点鎖線)となり、外筒1内を旋回しつつ下降して、ベンチュリー管2の上部開口2Aからベンチュリー管2内へ導かれる。
外筒1内に流入した液状脱臭剤は、液状脱臭剤入口7から流入する液状脱臭剤の流入速度を利用して、臭気ガスと同一回転方向に旋回する旋回流(図4中二点鎖線)となり、外筒1の下面付近からベンチュリー管2の外周を旋回しながら上昇して、ベンチュリー管2の上部開口2A(水平な最上面)においてベンチュリー管2の外側から内側へ越流する。そして、液状脱臭剤は、ベンチュリー管2の内面を覆う旋回流となって下方へ流れる。すなわち、液状脱臭剤の旋回流は、ベンチュリー管2の内面を覆う水膜をなす。なお、水膜は臭気ガスを液状脱臭剤が覆った状態や臭気ガスと液状脱臭剤とが混合している状態もいう。
【0019】
上記のようにベンチュリー管2の径は上部よりも下部で狭くなっているため、ベンチュリー管2内に流入した臭気ガスと液状脱臭剤は、同一方向に旋回しながらベンチュリー効果によりベンチュリー管2内で加速して、下部開口2Bから気液接触部22(図1参照)へ落下供給される。
ベンチュリー管2内において臭気ガスは、上記のように加速されて遠心力を増し、ベンチュリー管2の内面に衝突しながら旋回下降する。そのため、臭気ガスは、液状脱臭剤の水膜で覆われたベンチュリー管2の内面を液状脱臭剤とともに高速の旋回流となって表面接触しながら下降し、その過程で粉塵と臭気成分の一部が液状脱臭剤に取り込まれて除去される。
【0020】
すなわち、本実施形態の気液導入部21は、液状脱臭剤を旋回上昇流の状態でベンチュリー管2の外側から内側へ越流する(溢れる)ように上部開口2Aへ供給することで、液状脱臭剤がベンチュリー管2の上部開口2A内面上で均一な水膜をなす。
このように、粉塵を含む臭気ガスの流路となるベンチュリー管2の内面に液状脱臭剤の水膜で覆ったベンチュリー構造を形成して、ベンチュリー管2の内面を常時洗い流すことによって、ベンチュリー管2内からの粉塵の除去とベンチュリー管2の閉塞防止とを両立させている。
【0021】
次に、図5図9を参照して気液接触部22について説明する。
図5に示すように、気液接触部22は、気液接触部22の内部空間を囲む壁面をなすアトマイザケーシング3と、アトマイザケーシング3内においてベンチュリー管2(図5中破線で示す)の下方に回転可能に設置された羽根付き円盤状のアトマイザ12とを有する。
気液接触部22では、臭気ガスと液状脱臭剤とがベンチュリー管2からアトマイザケーシング3で囲まれた空間内に供給され、アトマイザ12の回転により液状脱臭剤を臭気ガスに対して噴霧して気液ガスが生成される。
【0022】
図5に示すように、アトマイザケーシング3は、ベンチュリー管2と同一の軸Zを中心軸として配置された筒状部材で形成されており、詳しくは、円筒状の上部3Aと、上部3Aに連設されており下面の径が上面側よりも小さい円錐台状の下部3Bと、が組み合わせられている。
アトマイザケーシング3の上面中心に通孔3Eが貫設されており、この通孔3Eを通じてベンチュリー管2の下端部がアトマイザケーシング3内に挿入されている。また、アトマイザケーシング3の下面には、サイクロン4(図5中破線で示す気液分離部23の一部)上端が接続されている。アトマイザケーシング3の下面は開口をなし、サイクロン4の上部開口と連通している。
【0023】
アトマイザケーシング3内において、ベンチュリー管2の下方にアトマイザ12が配設されている。アトマイザ12は、軸Zを中心とする円盤12Aと、円盤12Aの上面に立設された羽根12Bとを有する。
円盤12A(アトマイザ12)の中心には軸Zに沿って延びた駆動軸11の下端が接続されている。駆動軸11は、ベンチュリー管2の下端から気液導入部21内を貫通し、外筒1上面の貫通穴10A(図1、2)から上方へ突出して、その上端部で駆動装置10(図1)に接続されている。
駆動装置10の回転力が駆動軸11を介してアトマイザ12に伝達され、アトマイザ12が軸Zを中心に所定の回転方向に回転する。アトマイザ12の回転方向は、気液導入部21で発生させた臭気ガスおよび液状脱臭剤の旋回流の回転方向と同じ方向に設定されている。
【0024】
図6は、アトマイザ12の基本的な構成を例示する斜視図である。図6に示すように、円盤12Aは軸Zに対して垂直(X軸方向とY軸方向にそれぞれ沿った面)に配置された円形板部材であり、この円盤12Aの上面に少なくとも二枚以上の羽根12Bが、円盤12Aの中心から円周(端部)へ向かって放射状に取り付けられている。図6では、二枚の羽根12Bが軸Zに対して対称に配置されている。各羽根12Bは、円盤12Aの上面に対して垂直な面に延在する長方形状の平板片である。
【0025】
アトマイザ12の形状(すなわち羽根12Bの形状、枚数、取り付け位置および取り付け角度等)と回転数とは、臭気ガスの流量や、液状脱臭剤の液量、回転によって得ようとする液状脱臭剤の液滴の粒子径、アトマイザ12の周速度、回転により得ようとする風量と風圧力に応じて任意に設定される。すなわち、アトマイザ12の形状と回転数とは、必要に応じて任意に変更され得る。
また、円盤12A上に液状脱臭剤の分散性を高めるためのせん断材を更に取り付けてもよい。
【0026】
図5に示すように、アトマイザ12は、ベンチュリー管2の下端に対して所定の間隔Sだけ下方に離隔して配置されている。間隔Sは、ベンチュリー管2の下端とアトマイザ12の羽根の上縁との間隔であり、ベンチュリー管2の下端とアトマイザ12の羽根の上縁とが干渉しない適宜の寸法に設定されている。
また、アトマイザ12において円盤12Aの下端は、アトマイザケーシング3の下部3Bの下端よりも上方、且つ、上部3Aの下端よりも下方に配置されている。すなわち、アトマイザ12の円盤12Aの鉛直方向の位置は、アトマイザケーシング3の下部3B上端と下端との間に設定されている。
アトマイザケーシング3の下部3Bは、円盤12Aの鉛直方向の位置から上方に向かって口径が広がる円錐台として形成されたものであり、アトマイザケーシング3は円盤12Aの鉛直方向の位置から下方に向かって口径が狭まる円錐状の内壁面を有する。
【0027】
なお、図5に示すように、アトマイザケーシング3の下部3Bの大径側は上部3Aの径D6と同一寸法に設定されている。下部3Bの小径側は、径D6より小さく且つサイクロン4の上端側の径D7と同一寸法に設定されている。また、アトマイザ12の径D8は、径D7よりも小さく、且つ、ベンチュリー管2下部の外径(図2の径D3)よりも大きい寸法に設定されている。
上記の径D6、D7、D8およびD3(図2参照)の大小関係は、下記不等式で表される。
D6>D7>D8>D3
また、アトマイザケーシング3の上面に設けられた通孔3Eの径は径D3(図2参照)と略同一に設定され、アトマイザケーシング3の上面はこの通孔3Eの設けられた領域を除き閉塞されている。
【0028】
図7に示すように、気液接触部22において、ベンチュリー管2の下部開口2Bから流入する臭気ガス(図7中一点鎖線)と、同下部開口2Bから落下する液状脱臭剤(図7中二点鎖線)は、下部開口2Bの下方で回転するアトマイザ12の円盤12Aに衝突し、アトマイザ12の回転に伴う羽根12Bの遠心力で加速されつつ軸Zの遠心方向へ飛び散って霧状に分散噴霧される。これにより、臭気ガスと液状脱臭剤との気液混合状態の気液ガスが生成される。ここで、ベンチュリー管2から供給される液状脱臭剤は、アトマイザ12との衝突と回転により微細な粒子径にせん断されて霧状になるため、液状である場合に比べて表面積が大きくなり、臭気ガス中の粉塵と臭気成分との接触面積が大きくなる。そのため、臭気ガス中の粉塵と臭気成分とは、霧状になった液状脱臭剤に吸着されやすくなる。
【0029】
図8に示すように、霧状になった気液ガス(図8中黒丸で示す)は、遠心方向(X軸とY軸との面上方向)へ飛び散ると、アトマイザ12の円周方向外側に配置されたアトマイザケーシング3の下部3Bの内壁面3Cに衝突して、跳ね返される。
図7および図8に示すように、下部3Bの内壁面3Cが傾斜角度αで傾斜する傾斜面をなすため、気液ガスは傾斜角度αによって生じる遠心力の分力によって下部3Bの内壁面3Cに沿って巻き上がる上昇流となる。
【0030】
上記のように上昇流となる気液ガスの運動エネルギについて補足説明する。
アトマイザ12の遠心力で放射状に飛び出した気液ガスの運動エネルギは、内壁面3Cに衝突して反射しケーシング3内の旋回流に転換される。図9は、気液ガスの運動エネルギの説明図である。図9の直角三角形は、傾斜角度αをなす内壁面3Cを模式的に表している。アトマイザ12から放射状に飛び出す気液ガスの運動エネルギをFとし、アトマイザケーシング3の傾斜面に衝突する際の入力角をαとしたとき、内壁面3Cに衝突して跳ね返った気液ガスの運動エネルギF′の方向は内壁面3Cに対して入力角αと同一角度αをなすもの(すなわち、分力Faと分力Fbの合成力の方向)となるが、実際には傾斜面に沿って働く分力Faが作用したり、粒子径の違いによる重さ、粘性、表面張力などによって反射角度はF′とFaの間で分散し、いずれも上向きの運動エネルギに転換される。
【0031】
図7および図8に戻ると、内壁面3Cに沿って上昇した気液ガスは、アトマイザケーシング3の上面3Dに衝突して下方へ跳ね返り、更にベンチュリー管2の下部外面に沿った下降流となる。そして、下降流となった気液ガスは、再びアトマイザ12の円盤12Bに衝突し、アトマイザ12によって加速される動きを繰り返すドーナツ状の旋回流(循環流)となり、気液接触を繰り返す。
【0032】
このように気液接触部22では、アトマイザ12によって噴霧された液状脱臭剤とベンチュリー管2からアトマイザケーシング3に流入した臭気ガスは、アトマイザケーシング3の下部3Bの内壁面3Cで上方に跳ね返り、且つ、上面3Dで下方に跳ね返ることで循環流となって気液ガスを生成する。旋回流のドーナツ状の旋回流自身も、アトマイザ12の回転方向と同一の方向に大きく回転を続ける。
気液接触部22には、ベンチュリー管2から臭気ガスと液状脱臭剤とが連続して供給されており気液ガスが連続して生成されるため、アトマイザケーシング3の中で抱えきれない気液ガスの一部は、アトマイザ12とアトマイザケーシング3との隙間から旋回流のままアトマイザケーシング3の下方へ流出して、気液分離部23に流入する。
【0033】
上記のように構成された気液接触部22において、アトマイザ12の回転により生成された気液ガスは、アトマイザケーシング3内で遠心力が上向きの力に変換されて上昇流となりドーナツ状の旋回流となって循環移動するため、気液ガス中の液状脱臭剤と臭気ガス中の粉塵や臭気成分との接触機会が大きくなり除去率が大きくなる。
また、アトマイザ12がベンチュリー管2の下方で同軸上に配置されているので、ベンチュリー管2から流入した臭気ガスは必ずアトマイザ12の円盤12A上面(旋回面)を通過する。そのため、ベンチュリー管2から流入した臭気ガスを、確実に気液接触部22内を循環移動させることができ、臭気ガスが気液接触部22内を循環移動せずに次工程の気液分離部23へ移動してしまう「ショートパス」が生じにくい。
【0034】
また、ベンチュリー管2から連続的に(常時)液状脱臭剤が落下供給されるため、アトマイザケーシング3の内面は常時新しく供給される液状脱臭剤の噴霧液の旋回流で洗浄される。そのため、アトマイザケーシング3の内面において粉塵などの固着による閉塞が生じにくい。
更に、本実施形態の気液接触部22は、アトマイザ12を羽根車とし、アトマイザケーシング3をファンケーシング(羽根車のケーシング)とし、さらにベンチュリー管2を吸い込み口とする送風機能を発揮するので、本脱臭装置20における圧力損失を軽減することができる。
【0035】
図10および図11を参照して、気液分離部23を説明する。
図10に示すように、気液分離部23は、アトマイザケーシング3(気液接触部22)の下端に接続されており、アトマイザケーシング3から流入した気液ガスを液状脱臭剤と処理ガスに気液分離して排出するためのサイクロン4を有する。
サイクロン4は、アトマイザケーシング3と同一の軸Zを中心軸として配置され、上下両端が開いた筒状部材で形成されており、詳しくは、上部に配置され円筒状をなす直胴部(円筒部)4Aと、直胴部4Aの下端に連設されており下端から下方に向かって口径が狭くなる円錐台状の漏斗部(円錐部)4Bと、が組み合わせられている。
【0036】
サイクロン4(漏斗部4B)下端の開口には、軸Zに沿って下方に延びた水封管13が連結されている。水封管13は、サイクロン4の下方に配置された水封槽5に内包されている。水封管13は、サイクロン4で気液分離された液状脱臭剤を水封槽5へ流すための流路をなす。
水封槽5は、軸Zを中心軸に配置し、上下端の閉じた円筒部材で形成されており、水封管13から流入した液状脱臭剤を貯留して、水封管13の下端を液状脱臭剤で塞ぐものである。水封槽5の側面において上部側には、水封管13の内部を外部に連通する排水口9が設けられている。排水口9の位置は、水封管13の下端よりも上方であって、水封槽5内に水封する液状脱臭剤の液面高さ(水封高さ)に基づき設定される。具体的には、所定の水封高さが、排水口9の下端位置に設定される。これにより、水封高さ以上に流入した液状脱臭剤が排水口9から外部へ排水される。
【0037】
サイクロン4には、処理ガスを外部へ排出するための処理ガス出口8が設けられている。処理ガス出口8は、サイクロン4の内部と外部とを連通する管路で形成されており、管路のうちサイクロン4の内部に設けられた一端が処理ガスの取込口8Aをなし、他端が処理ガスの排出口8Bをなす。
詳しくは、処理ガス出口8は、軸Z上(直胴部4A中央付近)に配置されており軸Zに沿って下方から上方へ延びた立管部8Cと、立管部8Cの上端に連設されており径方向外側へ延び直胴部4Aの壁面を貫通して外部へ突出した横管部8Dとを含む曲管で形成されている。立管部8Cの下端には、下向きに開いた取込口8Aが設けられている。横管部8Dにおいて直胴部4Aの側壁から突出した先端には、排出口8Bが設けられている。
【0038】
サイクロン4の上部径D7は、上側のアトマイザケーシング3の下端の径と同一に設定されており、サイクロン4の下部径D10よりも大きく設定されている。水封管13の径は、サイクロン4の下部径D10と同一に設定されている。
水封槽5の径D13は、水封管13の径(サイクロン4の下部径)D10よりも大きい。また、水封槽5の鉛直方向の寸法(長さ)L4は、必要な水封高さHsと排水口9の径D12との合計よりも大きくなる。すなわち、L4>Hs+D12である。
【0039】
サイクロン4の形状は、得ようとする気液分離の効率によって設定される。
具体的には、サイクロン4の直胴部4Aの鉛直方向の寸法(長さ)をL1、漏斗部4Bの鉛直方向の寸法(長さ)をL2、漏斗部4Bの上端から処理ガス出口8の取込口8Aまでの寸法(処理ガス出口8の高さ)をL3とすると、L1とL2との比率及びL3の高さが、サイクロン4で得ようとする気液分離の効率によって決定される。
【0040】
上記のように構成された気液分離部23に対し、上方に配置され気液接触部22(図11中破線で示す)の下部から気液ガスが流入する。
図11に示すように、アトマイザケーシング3(気液接触部22)から供給された気液ガス(図11中一点鎖線及び二点鎖線で示す)は、旋回流及び旋回速度を保ったままサイクロン4の内表面に沿って流入し、サイクロン4内表面に沿って軸Z周りに旋回しながら下方へ流れる。
気液ガスは、サイクロン4内を流れる過程で下方に向かって径が絞られた漏斗部4Bにおいて加速され大きな遠心力を与えられて、処理ガスと液状脱臭剤の液滴に気液分離される。液状脱臭剤の液滴は、気液ガスから臭気成分を吸着した液状脱臭剤の液滴である。処理ガス(処理済ガスともいう)は、気液ガスから臭気成分が取り除かれたものである。
【0041】
気液分離された処理ガスは、サイクロン4下部で流れる方向を反転して、反重力方向に向かって上昇する。サイクロン4内において中心軸Zはサイクロン4の中で遠心力による動圧が生じず最も圧力が小さくなる位置であるため、サイクロン4下部で上昇に転じた処理ガスは、サイクロン4の中心軸Z上で下向きに開いた処理ガス出口8の取込口8Aから取り込まれて、処理ガス出口8の排出口8Bからサイクロン4の外部に排出される。
【0042】
サイクロン4で気液分離された液状脱臭剤の液滴は、サイクロン4の内表面で遠心力と表面張力によって集合して液状となる。サイクロン4の内表面で液状に戻った液状脱臭剤は、重力によりサイクロン4の内表面に沿って下方へ流れ、サイクロン4の下部に連結された水封管13を通って水封槽5へ排出される。
水封槽5内には水封管13を通じて流入した液状脱臭剤が水封高さまで貯留されており、水封管13から常時流入する液状脱臭剤に押し出され、水封管13の外側で上昇流をなし水封槽5の上部側壁に設けられた排水口9から溢流して排水(排出)される。
【0043】
上記のように構成された気液分離部23では、上方に配置された気液接触部22においてアトマイザ12の回転によって生じる旋回流速を、そのままサイクロン4内で気液分離効果を生じさせるための周速として活用することができる。
また、サイクロン4の内表面に常時、液状に戻った液状脱臭剤の流れが生じることから、液状脱臭剤として活性汚泥を用いた場合でも、サイクロン4の内表面に活性汚泥が付着することを抑制し、閉塞を生じさせないようにすることができる。
【0044】
図12(A)~(D)は、アトマイザ12の変形例である。
図12(A)に示す変形例1に係るアトマイザ120Aは、上述したアトマイザ12に対し羽根12Bの枚数を三枚(二枚以上の複数)設けた点が異なり、その他の点は同様である。三枚の羽根12Bは円盤12Aの上面において放射状に等間隔で配置されている。
羽根12Bの枚数は、円盤12Aの径と回転数が同一の場合、枚数の変化に伴って送風効率が変化する。概ね羽根12Bの枚数が多いほど送風効率が高くなる傾向がある。羽根枚数増加による効率向上には上限が存在するが、変形例1に係るアトマイザ120Aは、羽根12Bを二枚設けた構成に比べて送風効率を高めることができる。
また、液状脱臭剤として活性汚泥を用いる場合、羽根12Bの枚数が多いほど、せん断による活性汚泥の分散性能を高めることができる。
【0045】
図12(B)に示す変形例2に係るアトマイザ120Bは、各羽根12Bの形状が曲線状である点が変形例1のアトマイザ120Aとは異なる。この羽根12Bは、軸Zを通る放射線(図中破線で示す)に対してアトマイザ120Bの回転方向とは反対側へ向かって湾曲した曲線形状をなす。アトマイザ12の羽根形状は、流線形になるほど送風効率が高まる。そのため、変形例2に係るアトマイザ120Bは、羽根12Bが放射線に沿って直線状をなす構成に比べて送風効率を高めることができる。
【0046】
図12(C)に示す変形例3に係るアトマイザ120Cは、円盤12Aの上面において複数の突起12Cを凸設した点が変形例2のアトマイザ120Bとは異なる。複数の突起12Cは、円盤12A上面外周部において円周方向に沿って等間隔で配置されている。突起12Cの形状は自由に設定されてよい。
アトマイザ120Cのように円盤12A上に複数の突起12Cを設けた場合、液状脱臭剤として活性汚泥を用いる場合、活性汚泥が突起12Cに衝突してせん断されるため、活性汚泥の分散効率が高まる。突起12Cの数が多いほど分散効率を高めることができる。
【0047】
図12(D)に示す変形例4に係るアトマイザ120Dは、円盤12Aの下面に羽根12B′を設けた点が変形例2のアトマイザ120Bとは異なる。図12(D)のアトマイザ120Dでは、アトマイザ120Bの回転方向とは反対側へ向かって湾曲した曲線形状をなす三枚の羽根12B′が、円盤12A上面の各羽根12Bに対し裏面側に羽根12Bと同一形状で設けられている。
円盤12Aの下面に羽根12B′を設けることで、アトマイザ120Dの下方に配置されたサイクロン4の入口における気液ガスの周速を大きくすることができる。そのため、サイクロン4における気液分離性能が向上する。
【0048】
図13は、脱臭装置20の第一変形例の説明図である。脱臭装置20Aは、脱臭装置20の気液接触部22を変形し、鉛直方向に連続して配置された複数の気液接触部22U、22Dを有するものである。
具体的には、上流側の気液接触部22Uのアトマイザケーシング3Uの下部に連結管3Xが連結されており、この連結管3Xを介して下流側の気液接触部22Dのアトマイザケーシング3Dが連結されている。各アトマイザケーシング3U,3Dにはアトマイザ12U、12Dが設けられており、各アトマイザケーシング3U、3Dのアトマイザ12U、12Dは、同一の駆動装置10と駆動軸11とを用いて駆動される。
このように、多段に構成された気液接触部22U、22Dを有する場合、段数が多いほど気液接触機会が増えるため、気液ガスに対する除塵、脱臭効率が高まる。また、多段構造の場合、処理風量は変わらないが、段数が多くなるほどアトマイザ12U、12Dによって生じる送風圧力は大きくなる。
【0049】
図14は、脱臭装置20の第二変形例の説明図である。脱臭装置20と同一構成の装置を二台以上の複数、直列接続した構成である。ここでは、説明の簡便のため二台の脱臭装置20B、20B′が直列に接続され、各脱臭装置20B、20B′による処理工程を二段繰り返すように構成された例を示す。具体的には、図14に示すように、上流側の脱臭装置20Bの処理ガス出口8が下流側の脱臭装置20B′の臭気ガス入口6′に接続されており、下流側の脱臭装置20B′は上流側の脱臭装置20Bの処理済みガスに対して脱臭処理を施す。
脱臭装置による処理工程を二段以上直列的に繰り返すことで、より確実に臭気ガスから臭気成分や粉塵を取り除くことができる。また、段数が多いほど、気液接触機会が大きくなり除塵、脱臭効率が大きくなる。
【0050】
図15は、脱臭装置20の第三変形例の説明図である。脱臭装置20と同一構成の装置を二台、すなわち脱臭装置20Cと20C′とを直列接続した構成である。脱臭装置20Cは、水封槽5の下部と液状脱臭剤入口7とをつなぐ循環経路15と、循環経路15上に設けた送水ポンプ14とをさらに備え、脱臭装置20C′は、水封槽5′の下部と液状脱臭剤入口7′とをつなぐ循環経路15′と、循環経路15′上に設けた送水ポンプ14′とをさらに備える点が、第二の変形例とは異なる。
水封槽5に流入した液状脱臭剤の一部は、送水ポンプ14により循環経路15を通じて液状脱臭剤入口7に戻り、再び気液導入部21に供給される。また、水封槽5′に流入した液状脱臭剤の一部は、送水ポンプ14′により循環経路15′を通じて液状脱臭剤入口7′に戻り、再び気液導入部21′に供給される。
図15では、上流側の脱臭装置20Cが液状脱臭剤として酸性水を用いて、下流側の脱臭装置20C′が液状脱臭剤としてアルカリ水を用いている。酸性水には、硫酸や塩酸が使用可能である。アルカリ水には、水酸化ナトリウムや次亜塩素酸ナトリウムなどが使用可能である。
循環経路15、15′を循環中の液状脱臭剤のPH(水素イオン濃度)やORP(酸化還元電位)、CL(塩素イオン)等の濃度計を設置して循環液の濃度を自動計測し、酸性水やアルカリ水の注入を自動制御することができる。
上流側の脱臭装置20C及び下流側の脱臭装置20C′の何れか1段で単独運転することもできる。また、ここでは脱臭装置20Cと20C′の2段構成で説明したが、さらなる脱臭装置を同様の接続関係で追加し、3段以上の構成としてもよい。
また、水封槽5、5′には外部から補給水を補給して酸性水やアルカリ水と混合することができる。また、補給水の代わりに活性汚泥を水封槽5、5′に補給して、活性汚泥を酸性水やアルカリ水と混合してもよい。
【0051】
図16は、脱臭装置20の第四変形例の説明図である。脱臭装置20の気液分離部23を複数個に分割してマルチサイクロン構造にしたものである。
図16に示す脱臭装置20Dでは、一つの気液接触部22に対して二つの気液分離部23A、23Bが並列的に接続されている。二つの気液分離部23A、23Bは同様に構成されており、気液接触部22から供給された気液ガスが二つの気液分離部23A、23Bに分岐して流入するようになっている。各気液分離部23A、23Bの処理ガス出口8は、一つの排出管8´に接続されている。
サイクロン4の分離性能はサイクロン4の径が小さいほど効率が大きくなるため、気液分離部23の分割数が大きいほど、気液分離効率が大きくなる。なお、脱臭装置20の処理風量及び圧力損失は、気液分離部23の分割数が大きくなっても変わらない。
【0052】
図17は、実施形態の脱臭装置20またはその変形例(第一乃至第四変形例)(以下、これらをまとめて単に「脱臭装置」という)を用いた本発明の実施形態としての脱臭システムの構成例を説明するブロック図である。
図17に示すように、脱臭システム50は、被処理ガスである臭気ガスを発生する発酵槽30と、上述した脱臭装置と、液状脱臭剤として用いる活性汚泥を脱臭装置に供給するための廃水処理装置40とからなる。
発酵槽30は、被処理ガスである臭気ガスを発生する臭気ガス発生源の一例であり、内部に収容した材料を発酵させるための容器である。発酵に伴い生じた臭気ガスが脱臭装置へ供給される。臭気ガス発生源は発酵槽30に限らず、臭気ガスを発生するものであればどのようなものであってもよい。
【0053】
廃水処理装置40は、様々な処理工程により廃水を処理して処理水を放出する装置であり、廃水処理において活性汚泥を生じるものである。具体的に言えば、廃水処理装置40には、処理設備として活性汚泥を生じる生物処理設備を備えている。
廃水処理装置40で生じた活性汚泥は、液状脱臭剤として脱臭装置へ供給される。また、脱臭装置の排水口9から排出された液状脱臭剤(脱臭排水)は、廃水処理装置40へ循環されている。
【0054】
実施形態の脱臭システム50では、脱臭装置が、発酵槽30から供給された臭気ガスを、廃水処理装置40から供給され霧状にした活性汚泥と十分に気液接触させ、臭気ガス中に含まれる粉塵と臭気成分を活性汚泥中に取り込んで除去し、処理ガスと活性汚泥に分離して排出している。
脱臭システム50は、廃水処理装置40の生物処理設備の活性汚泥が臭気成分を取り込みやすい性質を活用するいわゆる生物脱臭システムであって、脱臭装置で分離・排出された脱臭排水(活性汚泥)を再び廃水処理装置40に返して循環することによって、除去した粉塵や臭気成分を廃水処理装置40の生物処理設備における微生物の働きによって活性汚泥中に回収することができる。
なお、本発明の脱臭システムは、粉塵と臭気の同時除去、粉塵のみの除去、或いは、臭気のみの除去のいずれの処理にも適用できる。
【0055】
図18は、図17に示す脱臭システム50の変形例を説明するブロック図である。図18の脱臭システム50´は、図17の脱臭システム50の後段に、充填塔式生物脱臭装置60を追加したものである。充填塔式生物脱臭装置60は、塔状の装置に微生物を付着させた担体を充填した脱臭装置であり、脱臭装置から排出された処理ガスが被処理ガスとして供給される。
この充填塔式生物脱臭装置60には、生物処理に用いる微生物に必要な水分を補給し、また、微生物が吸着した臭気成分を取り込んで除去するために、補給水が供給される。図18の脱臭システム50′では、脱臭装置で液状脱臭材として用いるものと同一の廃水処理装置40の活性汚泥が、補給水として充填塔式生物脱臭装置60に供給されている。
【0056】
図18の脱臭システム50′では、脱臭装置で粉塵の除去と脱臭処理した処理ガスを、充填塔式生物脱臭装置60へ供給して二段階で脱臭処理することができる。
一般的に、充填塔式生物脱臭装置は、微生物による臭気成分の吸着速度が小さいため大きな担体表面積と滞留時間を必要とすることから、装置が非常に大型化しやく、且つ、被処理ガス中の臭気成分の濃度変動に弱い傾向があるという弱点がある。また、被処理ガスに粉塵が含まれている場合、担体(充填物)に粉塵が付着して閉塞することで、被処理ガスが流れなくなるという欠点がある。
図18の脱臭システム50′は、脱臭装置で粉塵の除去と脱臭処理した処理ガスを充填塔式生物脱臭装置60へ供給しているので、充填塔式生物脱臭装置60の被処理ガスは、粉塵を含まず、臭気成分の濃度が小さくかつ安定したものとなり、上記の弱点や欠点を解消し、かつ、充填塔式生物脱臭装置60のサイズを小さくできて経済性の高いシステムとなる。
なお、脱臭装置及び充填塔式生物脱臭装置60に対して供給する活性汚泥に替えて、いずれも単独で清水、酸性またはアルカリ性の洗浄水、廃水処理装置の処理水の再利用水、雑用水などを適宜選択して使用することもできる。
また、図18の脱臭システム50′において、充填塔式生物脱臭装置60に替えて、薬品洗浄脱臭装置を設けることもできる。この場合も、上記と同様な効果を奏する。
【0057】
以上の構成により、本発明の脱臭装置並びに脱臭システムは下記の効果を奏する。
脱臭装置の上部から供給する液状脱臭剤による液膜や液滴が常に装置内部を洗い流す構造であるため、脱臭装置内のどの箇所にも粉塵などが堆積するおそれがない。
液状脱臭剤と被処理ガス(臭気ガス)中の臭気成分との接触面積を大きくするための機構として、回転する円盤上に液状脱臭剤を供給して、回転により遠心力とせん断力で液状脱臭剤を分散させて霧状にする羽根車構造を持つアトマイザを用いる。そのため、液状脱臭剤として活性汚泥を用いる場合、活性汚泥で閉塞するおそれのあるスプレー装置(噴霧ノズル)や接触充填剤を使用することなく、活性汚泥を霧状にできる。すなわち、液状脱臭剤として活性汚泥を用いる場合であっても、例えばスプレー装置のような閉塞箇所が存在しない。
【0058】
以上より、液状脱臭剤が活性汚泥であっても、本発明の脱臭装置や脱臭システムは、不具合を生じさせることなく運転を継続することができる。このように、本発明の脱臭装置および脱臭システムは、液状脱臭剤として活性汚泥を用いるのに適した構造であるため、安価で経済性に優れる。
【0059】
また、本発明の脱臭装置において、アトマイザで気液混合した臭気ガスはアトマイザケーシング内をドーナツ状に旋回して攪拌されながら循環するため、除塵・脱臭のための接触効率が大きい。
アトマイザの羽根車構造(円盤及び羽根)が、液状脱臭剤の噴霧と送風の役割を果たすため、ベンチュリー管やサイクロンなどの装置自身の圧力損失を軽減あるいは滅失できる。
さらに、本発明の脱臭装置は、上流側のベンチュリー管からアトマイザ、アトマイザケーシングおよびサイクロンに至るまで、液滴を含む臭気ガスを常に同一の回転方向(装置の円周方向に沿う回転方向)に旋回させるので、気液分離効果が大きくかつ装置内面への衝突速度により装置内面の洗浄効果がある。
【符号の説明】
【0060】
1 外筒
2 ベンチュリー管
2A 上部開口
2B 下部開口
3 アトマイザケーシング
3A 上部
3B 下部
3C 内壁面
3D 上面
3E 通孔
4 サイクロン
4A 直胴部
4B 漏斗部
5 水封槽
6 臭気ガス入口
6A 開口
6B 管路
6C 導入口
7 液状脱臭剤入口
7A 開口
7B 管路
7C 導入口
8 処理ガス出口
8A 取込口
8B 排出口
8C 立管部
8D 横管部
9 排水口
10 駆動装置
10A 貫通穴
11 駆動軸
12 アトマイザ
12A 円盤
12B 羽根
12B 円盤
13 水封管
14 送水ポンプ
15 循環流路
20 脱臭装置
21 気液導入部
22 気液接触部
23 気液分離部
30 発酵槽
40 廃水処理装置
50 脱臭システム
60 充填塔式生物脱臭装置
【要約】
【課題】液状脱臭剤が活性汚泥であった場合にも、閉塞などの不具合を生じさせない。
【解決手段】脱臭装置20は、臭気ガスと液状脱臭剤とが導入される気液導入部21と、前記気液導入部21の下端に接続され、回転する羽根付き円盤12が設けられるとともに、前記気液導入部21から流入する前記臭気ガスに対して前記気液導入部から落下する前記液状脱臭剤を前記羽根付き円盤12の回転により噴霧して前記臭気ガスと混合することで気液ガスを生成する気液接触部22と、前記気液接触部の22下端に接続されており、前記気液ガスから臭気成分を吸着した前記液状脱臭剤と前記臭気成分が取り除かれた処理済ガスとに分離するサイクロン4が設けられた気液分離部23とを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18