(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用ICONプローブ、検査キット及び応用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6876 20180101AFI20230731BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20230731BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20230731BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z ZNA
C12Q1/6851 Z
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2023094502
(22)【出願日】2023-06-08
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202310005882.X
(32)【優先日】2023-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523218359
【氏名又は名称】唐山市人民医院
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】李玉鳳
(72)【発明者】
【氏名】李景武
(72)【発明者】
【氏名】王磊
(72)【発明者】
【氏名】李丹
(72)【発明者】
【氏名】王卓
(72)【発明者】
【氏名】李青科
(72)【発明者】
【氏名】李玉輝
(72)【発明者】
【氏名】劉洪梅
(72)【発明者】
【氏名】鄭▲セン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳晶晶
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/132022(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/086846(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/053836(WO,A1)
【文献】Nucleic Acids Research,2013年,Vol.41,e186,doi:10.1093/nar/gkt766
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用ICONプローブであって、前記ICONプローブの塩基配列がaaTcgggtcacTcccacccgaatattgcGcttttcagaccggcTtaagaaであり、Gはgにビピリジンが修飾されていることを示し、Tはtにアミノ基が修飾されていることを示し、前記アミノ基はビオチンで標識されていることを特徴とするヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用ICONプローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のICONプローブ、ハイブリダイゼーション緩衝液及びオスミウム酸溶液を含むことを特徴とするヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用検出キット。
【請求項3】
前記ハイブリダイゼーション緩衝液が、4×SSC緩衝液、0.5mMのEDTA、質量パーセント10%の硫酸デキストランおよび体積パーセント25%のホルムアミドの成分を含むことを特徴とする請求項2に記載の検出キット。
【請求項4】
前記オスミウム酸溶液の最終濃度が5mMであり;前記オスミウム酸溶液中の溶媒がpH7.7の50mMのTris-HCl、0.5mMのEDTAおよび1MのNaClを含む水溶液であることを特徴とする請求項2に記載の検出キット。
【請求項5】
前記検出キットがチラミドシグナル増幅検出試薬をさらに含むことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の検出キット。
【請求項6】
請求項2~4のいずれか1項に記載の検出キットのヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化の検出における使用。
【請求項7】
請求項1に記載のICONプローブのヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化を検出するための試薬キットの調製における使用。
【請求項8】
請求項1に記載のICONプローブを細胞標的DNAにハイブリダイズさせ、チラミドシグナル増幅検出試薬で蛍光シグナルを増幅し、蛍光シグナルを観察し、記録した後、ハイブリダイゼーション系をオスミウム酸溶液で処理し、変性させ、蛍光シグナルを再度観察して記録し、蛍光シグナルの強度に応じて、細胞内の標的DNAのメチル化状態を判断するステップを含むことを特徴とするヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化を検出する方法。
【請求項9】
前記変性方法は、ハイブリダイゼーション系を体積70%のホルムアミドを含む2×SSC溶液中に入れて、60~65℃で2.5~3.5分間インキュベートして、架橋していないLINE1 ICONプローブを除去し、褪色防止用封入剤で封入することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子検出技術分野に属し、詳しくは、ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用ICONプローブ、検出キット並び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAメチル化は重要な修飾経路であり、メチルトランスフェラーゼの触媒作用の下で、DNAのCGの2つのヌクレオチドのシトシンにメチル基が選択的に付加されて、5-メチルシトシンが形成され(
図1を参照)、これは、遺伝子の5’-CG-3’配列によく見られる。メチル化は主にCpGジヌクレオチドのシトシンの5炭素原子で起こり、生成物は5-メチルシトシン(5-methylcytosine、5mC)である。DNAメチル化は主にDNAメチルトランスフェラーゼDnmt3aとDnmt3b、および補因子Dnmt3Lによって確立され;その維持は主にDnmt1によって達成される。約90%の5mCは、タンデムリピートにあり、縦列反復配列(mouse:major and minor satellites;human:satellite 2、3及alpha satellite)、長い散在性反復配列(long interspersed nuclear elements、LINE)、および短い散在性反復配列(mouse:Short interspersed nuclear elements、SINE;human:Alu)などを含む反復配列上にある。ゲノム内のCpGジヌクレオチドの分布は均一ではなく、一部の領域では、CpG配列の密度が非常に高くなり、CpGアイランドが形成される。哺乳類のCpGアイランドには約300~3000の塩基が含まれ、通常は遺伝子のプロモーター領域または一番目のエキソン領域に位置している。
【0003】
DNAメチル化状態は、以下のゲノムに特定の分布パターンを示し、健康なヒトゲノムでは、CpGアイランド内のCpG部位は通常非メチル化状態を示し、CpGアイランドの外側のCpGサイトは通常メチル化状態を示し;このメチル化の形態は、細胞分裂過程中に安定して保持され、DNA配列を変更することなく、遺伝子発現、クロマチンのリモデリング、ゲノムのインプリンティング、X染色体の不活性化、およびゲノムの安定性において重要な調節的役割を果たしている。
【0004】
DNAメチル化異常の重要な原因として、慢性炎症、肝炎ウイルス、化学物質、栄養失調によるメチル供与体の不足などが知られている。DNAメチル化レベルの異常は、癌を含むさまざまなヒト疾患の発生および発症と密接に関連している。例えば、腫瘍細胞では、DNAメチル化異常は主に次のように現れる。1)腫瘍抑制遺伝子とDNA修復遺伝子のプロモーター領域にあるCpGアイランドは、高度にメチル化状態を示して沈黙されている;2)癌遺伝子のプロモーター領域は、低メチル化状態を示して活性化されている;3)ゲノム全体のメチル化レベルが低下して、トランスポゾン、レトロポゾン、および反復配列が活性化されて、染色体の安定性が低下する。
【0005】
研究によると、遺伝子プロモーター領域の局所的な高度のメチル化は、細胞の悪性増殖よりも早く、全ゲノムの低メチル化も腫瘍発生に伴って起こり、腫瘍の悪性度の増加に伴い顕著であることを示している。DNAメチル化の異常は、腫瘍細胞の死滅回避、新生血管生成の誘導、持続的な増殖シグナル、エネルギー代謝の変化及び免疫系破壊の回避などのプロセスに密接に関連しており、腫瘍の発生、発達及び転移や進行の重要な原因となっている。
【0006】
DNAメチル化解析技術を用いて組織細胞内の特定の遺伝子のメチル化のレベルの変化と、DNAの全体的なメチル化レベル(即ち、メチル化プロファイル)を検出することは、腫瘍の早期診断、疾患経過のモニタリング、および治療効果の評価のための潜在的な手段である。現在、メチル化検出方法には、メチル化特異的PCR(MSP)、メチル化特異的リアルタイム蛍光定量的PCR法及び重亜硫酸塩シーケンス法がある。上記の方法のいずれも、細胞内の特定の配列のDNAメチル化状態をin situで観察することはできない。現在、ヒトLINEトランスポゾンのDNAメチル化の検出にはバイサルファイトシーケンス法が主に使用されているが、サンプルの準備には時間がかかり、高価なシーケンサーが必要であり、通常の研究室では容易に実現できない。また、細胞のin situで特定の配列のDNAメチル化状態を観察することはできない。マウスおよびヒトサテライトシーケンス用のICONプローブが前記に既に設計されており、また、サテライトICONプローブ用のMeFISH検出法が開発されている(
図2)(Yufeng Li、et al.Sequence-specific microscopic visualization of DNA methylation status at satellite repeats in individual cell nuclei and chromosomes.Nucleic Acids Research.2013.41(19):e186)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、細胞内のDNAメチル化をin situで可視的に検出することができるヒトLINEトランスポゾンのDNAメチル化用ICONプローブ(LINE1 ICONプローブ)、および検出キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用ICONプローブを提供し、前記ICONプローブの塩基配列はaaTcgggtcacTcccacccgaatattgcGcttttcagaccggcTtaagaaであり、Gはgにビピリジン(Bipyridine)が修飾されていることを示し、Tはtにアミノ基が修飾されていることを示し、前記アミノ基はビオチンで標識されている。
【0009】
本発明は、前記ICONプローブ、ハイブリダイゼーション緩衝液及びオスミウム酸溶液を含むヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用検出キットを提供する。
【0010】
好ましくは、ハイブリダイゼーション緩衝液が、4×SSC緩衝液、0.5mMのEDTA、質量パーセント10%の硫酸デキストランおよび体積パーセント25%のホルムアミドの成分を含む。
【0011】
好ましくは、前記オスミウム酸(K2OsO4・2H2O)溶液の最終濃度は5mMであり;前記オスミウム酸溶液中の溶媒がpH7.7の50mMのTris-HCl、0.5mMのEDTAおよび1MのNaClを含む水溶液である。
【0012】
好ましくは、前記検出キットはチラミドシグナル増幅検出試薬をさらに含む。
【0013】
本発明は、ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化の検出における前記検出キットの応用を提供する。
【0014】
本発明は、ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化を検出するための試薬キットの調製における、前記ICONプローブの応用を提供する。
【0015】
本発明は、前記ICONプローブを細胞標的DNAにハイブリダイズさせ、チラミドシグナル増幅検出試薬で蛍光シグナルを増幅し、蛍光シグナルを観察し、記録した後、ハイブリダイゼーション系をオスミウム酸溶液で処理し、変性させ、蛍光シグナルを再度観察して記録し、蛍光シグナルの強度に応じて、細胞内の標的DNAのメチル化状態を判断するステップを含むヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化を検出する方法を提供する。
【0016】
好ましくは、前記変性方法は、ハイブリダイゼーション系を体積パーセント70%のホルムアミドを含む2×SSC溶液中に入れて、60~65℃で2.5~3.5分間インキュベートして、架橋していないLINE1 ICONプローブを除去し、洗浄し、水分を除去し、褪色防止用封入剤で封入する。
【発明の効果】
【0017】
本発明はヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用ICON(Interstrand Complex Formed by Osmisum and Nucleic Acid)プローブを提供し、前記ICONプローブの塩基配列はaaTcgggtcacTcccacccgaatattgcGcttttcagaccggcTtaagaaであり、Gはgにビピリジンが修飾されていることを示し、Tはtにアミノ基が修飾されていることを示し、前記アミノ基はビオチンで標識されている。本発明により提供されるLINE1 ICONプローブは、ヒトLINEトランスポゾン遺伝子に特異的に結合することができ、cgモチーフのgはビピリジンで修飾されて、検出中、オスミ酸の媒介下で、ビピリジンはゲノム標的配列のメチル化Cのメチル基と安定した架橋を形成し、熱に対して安定するので、変性処理後、LINE1 ICONプローブは容易に溶出されない。同時に、LINE1 ICONプローブのビオチンはチラミドシグナル増幅検出試薬中のストレプトアビジンに結合し、蛍光シグナルを増幅することにより、細胞のin situレベルでの迅速かつ可視的な検出の目的を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】satellite ICONプローブに対するMeFISH検出方法の概略図;
【
図3】細胞におけるLINE1 ICONプローブのFISHおよびMeFISHの結果;
【
図4】ヒト正常乳腺上皮細胞HBL-100における非TSA増幅LINE1 ICONプローブのMeFISH結果。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用ICONプローブを提供し、前記ICONプローブの塩基配列はaaTcgggtcacTcccacccgaatattgcGcttttcagaccggcTtaagaaであり、Gはgにビピリジンが修飾されていることを示し、Tはtにアミノ基が修飾されていることを示し、前記アミノ基はビオチンで標識されている。
【0020】
本発明において、前記ビピリジンの機能は、オスミ酸の作用下で標的配列中のC上のメチル基と安定した架橋を形成することである。ビピリジンによって修飾されたgは、好ましくは、前記ICONプローブのヌクレオチド配列の中部に位置し、標的配列への安定した結合に一層的に有利である。前記ビオチン修飾の作用は、検出中にチラミドシグナル増幅検出試薬中のストレプトアビジンと結合して、カスケードシグナル増幅効果を生成することである。
【0021】
本発明において、前記ICONプローブの調製方法は、好ましくは、特許公開番号WO/2006/132022に開示されたプローブ合成方法を参照することによって完成される。本発明の実施例において、前記ICONプローブは、日本味の素バイオファーマサービス(http://webpark1516.sakura.ne.jp/icon-probe/)に委託して合成できる。ビオチン-X-X-NHS(https://www.sigmaaldrich.cn/CN/zh/product/sigma/b3295)を使用して、プローブをビオチン(biotin)で標識および精製した。
【0022】
本発明は、ICONプローブ、ハイブリダイゼーション緩衝液及びオスミウム酸溶液を含むヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用検出キットを提供した。
【0023】
本発明では、ハイブリダイゼーション緩衝液は好ましくは、4×SSC緩衝液、0.5mMのEDTA、質量パーセント10%の硫酸デキストランおよび体積パーセント25%のホルムアミドの成分を含む。
【0024】
本発明では、好ましくは、前記オスミウム酸溶液の濃度は5mMであり;前記オスミウム酸溶液中の溶媒がpH7.7の50mMのTris-HCl、0.5mMのEDTAおよび1MのNaClを含む水溶液である。
【0025】
本発明では、前記検出キットはチラミドシグナル増幅検出試薬をさらに含むことが好ましい。本発明において、チラミドシグナル増幅検出試薬の供給源は特に限定されず、当技術分野で周知のチラミドシグナル増幅検出試薬を使用すればよい。本発明の実施例において、前記チラミドシグナル増幅検出試薬は、米国のPE社から購入した(品番:NEL700A00KT、マニュアルへのリンクhttps://resources.perkinelmer.com/lab-solutions/resources/docs/man_TSABiotinSystem.pdf?_ga=2.68819732.467907597.1667996319-1434938830.1667996319)。
【0026】
本発明は、ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化の検出における前記検出キットの応用を提供した。本発明において、前記検出キットは、非疾患診断目的のヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化の検出に使用できる。
【0027】
本発明は、ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化を検出するための試薬キットの調製における、前記ICONプローブの応用を提供した。
【0028】
本発明では、前記ヒトLINEトランスポゾンの細胞源は、好ましくは、癌細胞および/または正常な体細胞を含む。前記癌細胞は、好ましくは乳癌細胞を含む。前記正常な体細胞は、好ましくは正常な乳腺細胞を含む。
【0029】
本発明は、ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化を検出する方法を提供し、検出のメカニズムは、オスミウム酸の存在下で、LINE1のメチル化シトシンとLINE1 ICONプローブの相補塩基上のピリジンとの間に共有結合による架橋が形成され、変性しても分離しないため、オスミウム酸処理および変性後に観察される蛍光シグナルはLINE1のメチル化状態を反映できるので、非疾患診断の目的に使用できる。具体的には以下のステップを含む:
前記LINE1 ICONプローブを細胞標的DNAにハイブリダイズさせ、チラミドシグナル増幅検出試薬で蛍光シグナルを増幅し、蛍光シグナルを観察し、記録した後、ハイブリダイゼーション系をオスミウム酸溶液で処理し、変性させ、蛍光シグナルを再度観察して記録し、蛍光シグナルの強度に応じて、細胞内の標的DNAのメチル化状況を判断する。
【0030】
本発明において、ハイブリダイゼーションの方法は、LINE1 ICONプローブを含むハイブリダイゼーション緩衝溶液を固定化細胞上に滴下し、カバーガラスおよびゴムでシールしてin situハイブリダイゼーションを行うことである。前記固定化細胞の調製方法は、好ましくは、細胞を低張液中に入れて8分間静置し、同量の固定液をゆっくりと滴下して固定処理し、軽く吹きつけて叩き、遠心分離した後、再度固定液を3ml加えて、軽く叩いてから遠心分離し、前のステップを繰り返し、最後に、1mlの固定液で細胞を再懸濁して固定化細胞を得ることである。前記低張液は、好ましくは75mMKCl水溶液である。前記固定液は、好ましくは、体積比が1:3である酢酸とメタノールの混合液である。前記固定回数は、好ましくは2~3回である。前記in situハイブリダイゼーションの条件は、好ましくは80℃で3分間保持することである。前記in situハイブリダイゼーションの後、未結合のプローブを除去するために洗浄をさらに含むことが好ましい。前記洗浄に用いる溶媒は、好ましくは2×SSCおよびPBSである。まず2×SSC溶液に浸してカバースリップを取り除き、2×SSC溶液で5分間洗浄し、PBS溶液で5分間洗浄し、再組み立てを3回繰り返す。LINE1 ICONプローブを含むハイブリダイゼーション緩衝液中のLINE1 ICONプローブの最終濃度は、好ましくは1.25ng/μlである。
【0031】
本発明において、チラミドシグナル増幅検出試薬を用いて蛍光シグナルを増幅する方法は、好ましくは、ハイブリダイゼーション系にTNBバッファーを添加し、室温で30分間インキュベートした後、次にHRP試薬(1:500)を加えて室温で30分間インキュベートして、TNTバッファーで5分間の洗浄を3回実行し;チラミド作業溶液(1:50)を滴下して加え、室温で10分間インキュベートし、TNTバッファーで5分間の洗浄を3回実行し;SA-FITC溶液(1:250)を滴下し、37℃で40分間インキュベートし;TNTバッファーで5分間の洗浄を3回実行し;褪色防止用封入剤(DAPI)で封入する。オスミウム処理前の蛍光シグナルを観察した目的は、異なる細胞間でFISHの蛍光シグナル強度に違いがないことを説明するためであり、これはFISHのシグナルはメチル化の有無とは無関係であり、同時に、またオスミ酸処理後の低シグナルはFISHによるものではないことを示すためでもある。
【0032】
本発明において、前記変性方法は、好ましくは、ハイブリダイゼーション系を70体積%のホルムアミドを含む2×SSC溶液に入れ、60~65℃で2.5~3.5分間インキュベートして、未架橋のLINE1 ICONプローブを除去し、洗浄し、水を除去し、褪色防止用封入剤(DAPI)で封入する。前記変性時のインキュベーション温度は好ましくは63℃である。前記インキュベーション時間は、好ましくは3分間である。
【0033】
本発明の実施例では、正常乳腺細胞(HBL-100)および乳癌細胞(MCF-7およびMDA-MB-231)を検出対象として使用し、本発明によって提供される検出方法を使用して、標的遺伝子のメチル化を検出した結果、正常乳腺細胞株HBL-100では強い蛍光シグナルが依然と検出されたが、2つの乳癌細胞では蛍光シグナルが検出されず、以前に報告されたシーケンス結果と一致する。
【0034】
本発明において、本発明によって提供されるLINE1 ICONプローブは、TSAキットを使用して蛍光シグナルを増幅した後、通常の蛍光顕微鏡(オリンパスIX71)を使用することにより、蛍光シグナルを検出できて、従来のプローブ法では、通常の蛍光顕微鏡では検出できず、共焦点顕微鏡に頼らざるを得ないという問題を回避できる。
【0035】
本発明によって提供されるヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用ICONプローブ、検査キットは、実施例を参照して以下に詳細に説明されるが、これらは本発明の保護範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【0036】
実施例1
ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用ICONプローブの設計及び合成
ヒトLINEトランスポゾンを標的遺伝子とし、National Center for Biotechnology Information(NCBI、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を使用して、ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化のICONプローブを設計して取得し:aaTcgggtcacTcccacccgaatattgcGcttttcagaccggcTtaagaa(SEQ ID NO:1)、Gはgにビピリジンが修飾されていることを示し、Tはtにアミノ基(amino-NH2)が修飾されていることを示し、50nt、日本味の素バイオファーマサービス社に合成を委託した。ビオチン-X-X-NHS(https://www.sigmaaldrich.cn/CN/zh/product/sigma/b3295)を使用してプローブをビオチン(biotin)標識および精製した。具体的な方法は次のとおりである。
【0037】
一、試薬準備
1、3部位のアミノ標識LINE1 ICONプローブ(30μgを20μlH2Oに溶解)
2、15μlのDMSOを0.5mgのビオチン-X-X-NHSバイアルに加え、溶解するまでよく混ぜる。注意:ビオチン-XX-NHSは溶解後すぐに使用すべきである。
3、99.9%DMSO(4℃で保存し、使用前は室温で保存)
4、Microcon YM-30 Centrifuge Filter(Millipore cat.No.42422)
5、25mg/ml NaHCO3 Buffer pH8.5(-20℃で6ヶ月保存可能であり、毎回使用前にpH値を測定する)
【0038】
二、室温で以下の試薬の混合
15μlBiotin-X-X-NHS in DMSO(0.5mg)
5μlNaHCO3Buffer
3μlRNase-FreeWater
7μlAminoallyl-oligo
合計30μl
【0039】
3、よく混合した後、室温で1時間インキュベートし、光を避けて時々均一に混合した。
【0040】
三、精製
1、まず200μlのRNase-Freewaterを使用してMicroconYM-30Centrifuge Filterを予備洗浄し、説明書に従って遠心分離した。
【0041】
2、上記のプローブ混合液に400μlのRNase-Free waterを加え、均一に混ぜてフィルターに加え、フィルターの下に1.5mlのEPチューブを配置して、廃棄物を集めた。
【0042】
3、Microcon YM-30の説明書に従って遠心分離し、EPチューブ内の廃液を捨てた。
【0043】
4、400μlのRNase-Free waterをフィルターに再度添加し、Microcon YM-30の説明書に従って遠心分離し、EPチューブ内の廃液を捨てた。
【0044】
5、ステップ4を繰り返した(2回)。
【0045】
6、Microcon YM-30の説明書に従って、新しいEPチューブを使用して標識されたプローブを収集し、-20度で保管して準備した。
【0046】
実施例2
ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化検出キット
1.実施例1で調整したヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用LINE1 ICONプローブ
2.チラミドシグナル増幅(Tyramide signal amplification、TSA)キット(FITC蛍光、Shanghai Zhenhe Biotechnology Co., Ltd.);
3.ハイブリダイゼーション緩衝液
ハイブリダイゼーション緩衝液は、以下の成分を含む:4×SSC、0.5mM EDTA、質量パーセント10%の硫酸デキストラン(dextran sulfate)および体積パーセント25%のホルムアミド(formamide)。
【0047】
実施例3
ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化の検出法
1.検出材料
乳癌細胞:乳癌MCF-7細胞およびMDA-MB-231細胞
正常乳腺上皮細胞:HBL-100。
【0048】
2.検出方法
1)細胞の準備;
従来の方法により蘇生された正常な乳腺上皮細胞HBL-100、乳癌細胞MCF-7およびMDA-MB-231細胞を、37℃の5%CO2インキュベーターで培養し、培養フラスコ内の細胞被覆率が80%~90%に達したら継代し、3世代で細胞を採取し、細胞をPBSで洗浄し、沈殿物を遠心分離した。細胞を低張液(75mM KCl)で軽く再懸濁し、室温で8分間静置した後、等量のメタノール-酢酸(1:3、v/v)固定液をゆっくりと滴下して固定処理し、軽く吹きつけて叩き、遠心分離した後、酢酸/メタノール1:3混合液3mlを再度加え、軽く吹きつけて叩いてから遠心分離し、前のステップを繰り返し、最後に、1mlの酢酸/メタノール1:3混合液で細胞を再懸濁して、-20℃で保管して準備した。
【0049】
2)ICONプローブと細胞の標的DNAのハイブリダイゼーション、洗浄;
標識プローブを含むハイブリダイゼーション混合物(最終濃度:4xSSC、0.5mM EDTA、10%dextran sulfate、25%FA、1.25ng/μl LINE1 ICON プローブ)4μlを、前処理した細胞および組織のガラススライドの上に滴下し、カバースリップとゴムでシールし;ガラススライドを80℃のインキュベーターに3分間入れてゲノムDNAを変性させ、インキュベートした後、ウェットボックスに室温で2時間入れ;ハイブリダイゼーション後、37℃の温度で2×SSCに浸漬してカバースリップを取り除き、2×SSCで5分間洗浄、2回、PBSで5分間洗浄し、3回繰り返した。
【0050】
3)TSAチラミドシグナル増幅キットで蛍光シグナルを増幅し、洗浄し、蛍光顕微鏡で一回目の蛍光シグナルを観察及び記録し;具体的なステップは以下の通りである:
キット中のTNB バッファーをウェットボックスに滴下して、室温で30分間インキュベートし;HRP試薬(1:500)をウェットボックスに滴下して、4℃で一晩;TNTバッファーで5分間、3回洗浄し;チラミド作業溶液(1:50)を滴下し、室温で10分間インキュベートし;TNTバッファーで5分間、3回洗浄し;SA-FITC溶液(1:250)を滴下し、37℃で40分間インキュベートし;TNTバッファーで5分間、3回洗浄し;DAPIで封入した。蛍光顕微鏡下でFISHシグナルの1回目の観察を実行した。
【0051】
4)オスミ酸溶液処理;
スライドに10μlのオスミ酸溶液を滴下し、37℃のウェットボックスで30分間インキュベートした。ここで、オスミ酸((K2OsO4)溶液は、最終濃度25mMのK2OsO4溶液では、溶媒は50mMTris-HCl、0.5mMEDTA(pH7.7)、および1MNaClを含む水溶液である。
【0052】
5)変性および洗浄;
70%ホルムアミドを含む2×SSC溶液の中で、63℃で3分間インキュベートして、架橋されていないプローブ分子を除去した。続いて、PBSで洗浄し、水分を吸取り、褪色防止用封入剤(DAPIを含む)で封入した。
【0053】
6)蛍光顕微鏡で再度観察し、蛍光シグナルを記録した
結果を
図3に示す。ここで、左側は、正常乳腺細胞HBL-100および乳癌細胞(MCF-7およびMDA-MB-231)におけるLINE1プローブのFISH画像である。3種類の細胞間でFISHシグナルの強度に差異はなかった。右側は、オスミ酸で処理し、熱で変性させた3種類の細胞のLINE1のMeFISH画像である。正常乳房細胞株HBL-100では強い蛍光シグナルが検出されたが、2種類の乳癌細胞ではいずれも蛍光シグナルは検出されなかった。FISH後、処理溶液にオスミ酸を含まないMCF-7細胞の中もMeFISH蛍光シグナルは検出されず、オスミ酸が不足しているため、LINE1 ICONプローブがターゲットシーケンスと安定した架橋を形成しなかったことを示唆している。
【0054】
上記の結果は、HBL-100の蛍光シグナルがメチル化されたLINE1シグナルであることを示唆しており、これは報告された(PLoS One.2014年6月27日;9(6):e100429.doi:10.1371/journal.pone.0100429.eCollection2014.)配列決定結果と一致しており、即ち、LINE1は正常細胞では高メチル化を示しているが、乳癌細胞では低メチル化を示している。
【0055】
比較例1
実施例1で作製したLINE1 ICONプローブを標的細胞(種類は実施例3に記載のものと同じ)にハイブリダイズさせ、ストレプトアビジン-FITCと反応させ(Thermo Fisher SA1001, https://www.thermofisher.cn/order/catalog/product/SA1001?SID=srch-srp-SA1001)、FISH蛍光シグナルを検出し、その後、実施例3の方法に従い、オスミ酸処理、変性、及びMeFISH蛍光シグナル検出を順次に行った。
【0056】
ヒト正常乳腺上皮細胞HBL-100における前記LINE1 ICONプローブのMeFISH結果を
図4に示す。変性後は、正常な乳腺上皮細胞でも、オリンパスIX71蛍光顕微鏡下でMeFISH蛍光シグナルを検出できなかった。これは、前記LINE1 ICONプローブにより検出する場合、TSA チラミドシグナル増幅キットによって蛍光シグナルを増幅するステップが省略すると、検出結果の正確な特性評価に不利であることを示している。
【0057】
以上の記載は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改良および装飾が可能であり、これらの改良および装飾も本発明の保護範囲内とみなされることに留意されたい。
【要約】
【課題】
本発明は、ヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用ICONプローブ、検出キット並びに応用を提供するものである。
【解決手段】
本発明により提供されるヒトLINEトランスポゾンDNAメチル化用ICONプローブの塩基配列は配列番号1であり、Gはgにビピリジンが修飾されていることを示し、Tはtにアミノ基が修飾されていることを示す。Biotin-X-X-NHSを使用して、LINE1 ICONプローブの3つのアミノ基をビオチン標識した。ビピリジンは、オスミウム酸を介して、ゲノムLINE1のメチル化C上のメチル基と安定な架橋を形成し、変性処理後、LINE1 ICONプローブは溶出しないと同時に、LINE1 ICONプローブのビオチンはチラミドシグナル増幅検出試薬中のストレプトアビジンに結合し、蛍光シグナルを増幅することにより、in situレベルでの細胞の迅速かつ可視的な検出の目的を実現できる。
【選択図】
図2
【配列表】