(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】マンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、近赤外線透過材料、及び近赤外線透過膜
(51)【国際特許分類】
C01G 45/12 20060101AFI20230731BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230731BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230731BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20230731BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C01G45/12
C08L101/00
C08K3/22
G02B5/26
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2023517347
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2022033510
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2021148343
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】米田 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 章宣
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-536829(JP,A)
【文献】特開2009-263176(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159403(WO,A1)
【文献】特開2013-173953(JP,A)
【文献】特開2014-199925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 45/00 ー 45/12
C08L 101/00
C08K 3/22
G02B 5/26
G02B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素が、A-Mn-Oと表されるマンガン酸化物であって、
前記構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素であ
り、
前記マンガン酸化物の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%以下であることを特徴とするマンガン酸化物。
【請求項2】
構成元素が、A-Mn-Oと表されるマンガン酸化物であって、
前記構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素であり、
前記マンガン酸化物は近赤外線透過材料用であることを特徴とするマンガン酸化物。
【請求項3】
前記マンガン酸化物の組成式は、AxMnyOzと表され、
x/y=0.001以上2.00以下であることを特徴とする請求項1、又は2に記載のマンガン酸化物。
【請求項4】
前記構成要素AがLiを含むことを特徴とする請求項1、又は2に記載のマンガン酸化物。
【請求項5】
前記構成要素AがLiを含み、
前記マンガン酸化物の組成式は、AxMnyOzと表され、
x/y=0.001以上2.00以下であることを特徴とする請求項1、又は2に記載のマンガン酸化物。
【請求項6】
前記構成要素Aが、Liと、Mg、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Bi、Yのうちから選択される1種以上の元素と、を含むことを特徴とする請求項1、又は2に記載のマンガン酸化物。
【請求項7】
前記構成要素Aが、Liと、MgおよびまたはAlと、を含むことを特徴とする請求項1、又は2に記載のマンガン酸化物。
【請求項8】
前記構成要素AがYを含むことを特徴とする請求項1、又は2に記載のマンガン酸化物。
【請求項9】
前記構成要素AがYを含み、
前記マンガン酸化物の組成式は、AxMnyOzと表され、
x/y=0.001以上2.00以下であることを特徴とする請求項1、又は2に記載のマンガン酸化物。
【請求項10】
前記構成要素AがYを含み、
前記マンガン酸化物のXRDスペクトルにおける2θ=32.5~33.5°に現れる(112)面由来のピーク強度に対する2θ=35.5~36.5°に現れる(211)面由来のピーク強度の強度比(211)/(112)が2.50以下であることを特徴とする請求項1、又は2に記載のマンガン酸化物。
【請求項11】
前記構成要素Aが、Yと、Li、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Biのうちから選択される1種以上の元素と、を含むことを特徴とする請求項1、又は2に記載のマンガン酸化物。
【請求項12】
前記構成要素Aが、Yと、Znと、を含むことを特徴とする請求項1、又は2に記載のマンガン酸化物。
【請求項13】
構成元素が、A-Mn-Oと表されるマンガン酸化物粒子であって、
前記構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素であ
り、
前記マンガン酸化物粒子の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%以下であることを特徴とするマンガン酸化物粒子。
【請求項14】
構成元素が、A-Mn-Oと表されるマンガン酸化物粒子であって、
前記構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素であり、
前記マンガン酸化物粒子は、CIE1976で測定されるL
*
が45以下であることを特徴とするマンガン酸化物粒子。
【請求項15】
構成元素が、A-Mn-Oと表されるマンガン酸化物粒子であって、
前記構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素であり、
前記マンガン酸化物粒子の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%以下であり、且つ前記マンガン酸化物粒子は、CIE1976で測定されるL
*
が45以下であることを特徴とするマンガン酸化物粒子。
【請求項16】
構成元素が、A-Mn-Oと表されるマンガン酸化物粒子であって、
前記構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素であり、
前記マンガン酸化物粒子は近赤外線透過材料用であることを特徴とするマンガン酸化物粒子。
【請求項17】
前記マンガン酸化物粒子のSEM観察による二次粒子径の平均値が10nm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項18】
前記マンガン酸化物粒子は、BET法により測定された比表面積が0.2m
2/g以上であることを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項19】
前記マンガン酸化物粒子の組成式は、AxMnyOzと表され、
x/y=0.001以上2.00以下であることを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項20】
前記構成要素AがLiを含むことを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項21】
前記構成要素AがLiを含み、
前記マンガン酸化物の組成式は、AxMnyOzと表され、
x/y=0.001以上2.00以下であることを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項22】
前記構成要素Aが、Liと、Mg、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Bi、Yのうちから選択される1種以上の元素と、を含むことを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項23】
前記構成要素Aが、Liと、MgおよびまたはAlと、を含むことを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項24】
前記構成要素AがYを含むことを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項25】
前記構成要素AがYを含み、
前記マンガン酸化物の組成式は、AxMnyOzと表され、
x/y=0.001以上2.00以下であることを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項26】
前記構成要素AがYを含み、
前記マンガン酸化物のXRDスペクトルにおける2θ=32.5~33.5°に現れる(112)面由来のピーク強度に対する2θ=35.5~36.5°に現れる(211)面由来のピーク強度の強度比(211)/(112)が2.50以下であることを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項27】
前記構成要素Aが、Yと、Li、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Biのうちから選択される1種以上の元素と、を含むことを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項28】
前記構成要素Aが、Yと、Znと、を含むことを特徴とする請求項1
3~16の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項29】
前記マンガン酸化物粒子は近赤外線透過材料用であることを特徴とする請求項1
3~15の何れか1つに記載のマンガン酸化物粒子。
【請求項30】
マンガン酸化物粒子と、近赤外線を透過する成分を含む分散体とを有する近赤外線透過材料であって、
前記マンガン酸化物の構成元素は、A-Mn-Oと表され、
前記構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素であることを特徴とする近赤外線透過材料。
【請求項31】
前記近赤外線透過材料は、CIE1976で測定されるL
*が45以下であることを特徴とする請求項30に記載の近赤外線透過材料。
【請求項32】
前記近赤外線透過材料の波長700nm(可視光線領域)の透過率が30%以下であり、且つ波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%以上であって、前記波長700nm(可視光線領域)の透過率よりも大きいことを特徴とする請求項30、又は31に記載の近赤外線透過材料。
【請求項33】
前記近赤外線透過材料の波長700nm(可視光線領域)の透過率が30%以下であり、且つ波長1000nm(近赤外線領域)、及び波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%以上であって、前記波長700nm(可視光線領域)の透過率よりも大きいことを特徴とする請求項30、又は31に記載の近赤外線透過材料。
【請求項34】
前記近赤外線透過材料の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%以下であることを特徴とする請求項30、又は31に記載の近赤外線透過材料。
【請求項35】
前記分散体が、樹脂、ガラス、有機溶剤、若しくは水、又はこれら2種以上の混合物であることを特徴とする請求項30、又は31に記載の近赤外線透過材料。
【請求項36】
請求項30、又は31に記載の近赤外線透過材料を含むことを特徴とする近赤外線透過膜。
【請求項37】
請求項36に記載の近赤外線透過膜が形成された光学フィルタを有することを特徴とする近赤外線センサ。
【請求項38】
請求項30、又は31に記載の近赤外線透過材料を、基材上に塗布し、乾燥することにより、近赤外線透過膜を生成する工程を有することを特徴とする近赤外線透過膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、近赤外線透過材料、及び近赤外線透過膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤外線センサや、赤外線カメラは、幅広い技術分野で有効活用されてきている。例えば、スマートフォンなどの情報通信端末の分野において、セキュリティー強化の観点から、顔認証などが導入されており、正確な顔の形状を検出するため、赤外線センサや、赤外線カメラが利用されている。また、自動車分野において、車両周囲の状況を検出するために、車両に赤外線センサや、赤外線カメラが取り付けられている。
【0003】
顔の形状や、車両周囲の状況を正確に検出するためには、高精度な赤外線センサや、近赤外線カメラが求められており、それの実現には、近赤外線のみ透過し、それ以外の波長、例えば可視光線を透過させないフィルタや塗料が必要となっている。
【0004】
このようなフィルタや、塗料の材料として、特許文献1に開示されている赤外線透過製品では、酸化チタンや、酸化亜鉛を透明樹脂に配合した組成物を、塗料としている。また、特許文献2、3は、アゾ系の染顔料を透明樹脂に配合した組成物を、近赤外線を透過させる塗膜とする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-56346号公報
【文献】特許第6899061号公報
【文献】特開2021-56345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された酸化チタンや、酸化亜鉛を透明樹脂に配合した組成物から形成された塗料の近赤外線領域における透過率を上げようとすると可視光線領域における透過率も上がってしまうことや、酸化チタンや酸化亜鉛は光触媒性能を有することから、配合する樹脂を劣化させてしまうという懸念があった。さらに、アゾ系の染顔料といった有機染顔料は、一般的に紫外線に弱いと言われており、耐候性や、耐久性の点で懸念があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率が高いマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、近赤外線透過材料、及び近赤外線透過膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明のマンガン酸化物は、構成元素が、A-Mn-Oと表されるマンガン酸化物であって、前記構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素であることを特徴とする。
本発明のマンガン酸化物は、粉末状に限定されず、分散媒に分散させた液状であってもよい。
【0009】
本発明のマンガン酸化物の構成要素は、A-Mn-Oと表わされる。具体的に、構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素を表す。また、構成要素Mnは、遷移金属であるマンガン元素を表し、結合した構成要素Aに応じて、原子価2~7を取り得ることができ、特に+2、+3、+4、+6、+7の状態で安定する。
【0010】
ここで、構成元素AとMnとのモル比A/Mnは、0.001~2.0であると、可視光線領域における透過率が低く、近赤外線領域においては優れた透過性能を有する材料を得ることができる。さらに、構成元素AとMnとのモル比A/Mnは、0.1~1.0であるとより好ましく、0.3~0.7であるとさらに好ましく、0.4~0.6であると特に好ましく、0.5であると最も好ましい。なお、構成元素Aが複数元素である場合、上述したモル比A/Mn中の「A」は、構成元素Aである複数元素のモル数の総和である。
【0011】
また、構成要素Oは、酸素元素を表し、電気的中性条件を満たす量となればよく、酸素過剰、酸素欠損も包含する。
【0012】
また、本発明のマンガン酸化物は、前記マンガン酸化物が、波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%以下であることを特徴とする。
ここで、可視光線領域である波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が低い値であるということは、可視光線領域において、光の乱反射(ハレーション)防止性能に優れる、すなわち可視光線領域において、可視光線を単に透過しないというだけでなく、可視光線の吸収性能にも優れるという、別の利点があると考える。また、波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が15%以下であるとより好ましく、12%以下であるとさらに好ましく、10%以下であると特に好ましく、5%以下であるとより特に好ましく、0%であると最も好ましい。さらに、本発明のマンガン酸化物の波長550nm、波長600nm、波長650nm、及び波長700nmの光の反射率が上述した上限値以下であるとより好ましい。本発明のマンガン酸化物の波長550nm~700nmの光の反射率が上述した上限値以下であるとさらに好ましい。なお、本発明のマンガン酸化物の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率は、典型的には、1%~10%である。
【0013】
反射率は、60mmφ積分球ユニットを取り付けた分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製:紫外可視近赤外分光光度計UH4150形)を用いて測定され、本発明に係るマンガン酸化物を充填したサンプルを取り付け、波長550nm、及び波長700nmの光に対する反射率が測定される。
【0014】
また、本発明のマンガン酸化物は、前記マンガン酸化物の組成式は、AxMnyOzと表され、x/y=0.001以上2.00以下であることを特徴とする。
本発明のマンガン酸化物の組成式中の構成元素Aの係数xと、構成元素Mnの係数yとが、x/y=0.001以上2.00以下であると、波長1000nm付近から緩やかに透過性が向上し、波長2000nm付近の長波長領域で高い透過率を示す観点で好ましい。また、x/y=0.10以上1.50以下であるとより好ましく、x/y=0.40以上0.60以下であるとさらに好ましい。また、構成元素Aの係数xは、構成元素Aが複数元素の場合、構成元素Aである複数元素の係数の総和である。なお、構成元素Oの係数zは、構成元素A及びMnの電荷の総和を中和する値であればよい。
【0015】
また、本発明のマンガン酸化物は、前記構成要素AがLiを含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率が高くなる観点で好ましい。
【0016】
本発明のマンガン酸化物は、前記構成要素AがLiを含み、前記マンガン酸化物の組成式は、AxMnyOzと表され、x/y=0.001以上2.00以下であると、波長1000nm付近から緩やかに透過性が向上し、波長2000nm付近の長波長領域で高い透過率を示す観点で好ましい。また、x/y=0.10以上1.50以下であるとより好ましく、x/y=0.40以上0.60以下であるとさらに好ましい。
【0017】
また、本発明のマンガン酸化物は、Liと、Mg、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Bi、Yのうちから選択される1種以上の元素と、を含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率が高くなる観点でより好ましい。さらに、本発明のマンガン酸化物は、前記構成要素Aが、Liと、MgおよびまたはAlと、を含むものであると、近赤外線領域における透過率が高くなる観点で特に好ましい。
【0018】
また、本発明のマンガン酸化物は、前記構成要素AがYを含むものであると、可視光線領域での透過を抑制しつつ、近赤外線領域である波長1000nm付近の低波長側から急峻に立ち上がり、以降、高い透過性を示す観点で好ましい。
【0019】
また、本発明のマンガン酸化物は、前記構成要素AがYを含み、前記マンガン酸化物の組成式は、AxMnyOzと表され、x/y=0.001以上2.00以下であると、可視光線領域での透過を抑制しつつ、近赤外線領域では高い透過性を示す観点で好ましい。また、x/y=0.10以上1.00以下であるとより好ましく、x/y=0.40以上0.60以下であるとさらに好ましい。なお、構成元素Oの係数zは、構成元素A及びMnの電荷の総和を中和する値であればよい。
【0020】
また、本発明のマンガン酸化物は、前記構成要素AがYを含み、前記マンガン酸化物のXRDスペクトルにおける2θ=32.5~33.5°に現れる(112)面由来のピーク強度に対する2θ=35.5~36.5°に現れる(211)面由来のピーク強度の強度比(211)/(112)が2.50以下であると好ましく、0.10以上1.00以下であると黒色度が高い観点(CIE1976、すなわちCIE1976(L*a*b*)色空間を用いて測定されるa*(赤色度)、b*(黄色度)がそれぞれ0に近い)で特に好ましい。
【0021】
ここで、本発明の構成要素AにYを含むマンガン酸化物は、CuKα線を使用したXRDスペクトルにおいて、2θ=32.5~33.5°に現れる(112)面由来のピーク強度に対する2θ=35.5~36.5°に現れる(211)面由来のピーク強度の強度比(211)/(112)が2.50以下であると好ましく、0.10以上1.00以下であると黒色度が高い観点(a*、b*が0に近い)でより好ましい。この構成要素AにYを含むマンガン酸化物をメノウ乳鉢で十分に混合及び粉砕した後、目開き75μmの篩で分級し、篩下容器中の混合状態の良好な中心部の粉体をガラス試料板に0.5g分取し、表面が平滑になるようにガラス板で充填したサンプルを、以下の粉末X線回折測定条件に従って、CuKα線を使用した粉末X線回折測定を行い、X線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターン中の2θ=32.5~33.5°にあるピーク強度はYMnO3(112)面に起因し、2θ=35.5~36.5°にあるピーク強度はMn3O4(221)面に起因する。
【0022】
=粉末X線回折測定条件=
・装置:MiniFlexII(株式会社リガク製)
・測定範囲(2θ):5~90°
・サンプリング幅:0.02°
・スキャンスピード:1.0°/min
・X線:CuKα線
・電圧:30kV
・電流:15mA
・発散スリット:1.25°
・散乱スリット:1.25°
・受光スリット:0.3mm
【0023】
また、本発明のマンガン酸化物は、前記構成要素Aが、Yと、Li、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Biのうちから選択される1種以上の元素と、を含むものであると、可視光線領域での透過を抑制しつつ、近赤外線領域である波長1000nm付近の低波長側から急峻に立ち上がり、以降、高い透過性を示す観点でより好ましい。さらに、本発明のマンガン酸化物は、前記構成要素Aが、Yと、Znと、を含むものであると、近赤外線領域における透過性がさらに高くなる観点で特に好ましい。
【0024】
また、本発明のマンガン酸化物は、前記マンガン酸化物は近赤外線透過材料用である。
本発明のマンガン酸化物は、上述した通り、可視光線領域における透過率が低く、近赤外線領域においては優れた透過性能を有するものであるから、近赤外線透過材料用として用いることができる。
【0025】
本発明のマンガン酸化物粒子は、構成元素が、A-Mn-Oと表されるマンガン酸化物粒子であって、前記構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素であることを特徴とする。
【0026】
本発明のマンガン酸化物粒子の構成要素は、A-Mn-Oと表わされる。具体的に、構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素を表す。また、構成要素Mnは、遷移金属であるマンガン元素を表し、結合した構成要素Aに応じて、原子価2~7を取り得ることができ、特に+2、+3、+4、+6、+7の状態で安定する。
【0027】
また、構成要素Oは、酸素元素を表し、電気的中性条件を満たす量となればよく、酸素過剰、酸素欠損も包含する。
【0028】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、前記マンガン酸化物粒子の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%以下であることを特徴とする。
本発明のマンガン酸化物粒子の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%以下であると、可視光線を単に透過しないというだけでなく、可視光線の吸収性能にも優れる点で好ましい。波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が15%以下であるとより好ましく、12%以下であるとさらに好ましく、10%以下であると特に好ましく、5%以下であるとより特に好ましく、0%であると最も好ましい。さらに、本発明のマンガン酸化物粒子の波長550nm、波長600nm、波長650nm、及び波長700nmの光の反射率が上述した上限値以下であるとより好ましい。本発明のマンガン酸化物粒子の波長550nm~700nmの光の反射率が上述した上限値以下であるとさらに好ましい。なお、本発明のマンガン酸化物粒子の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率は、典型的には、1%~10%である。
【0029】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、前記マンガン酸化物粒子のSEM観察による二次粒子径の平均値が10nm以上20μm以下であることを特徴とする。
本発明のマンガン酸化物粒子のSEM観察による二次粒子径の平均値が10nm以上20μm以下であると、近赤外線に対する透過性が向上する点で好ましい。
【0030】
また、当該二次粒子径の平均値が50nm以上であるとより好ましく、100nm以上であるとさらに好ましい。一方、当該二次粒子径の平均値が10μm以下であるとより好ましく、2μm以下であるとさらに好ましい。
【0031】
ここで、SEM観察による、当該マンガン酸化物粒子の二次粒子径の平均値は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用い、加速電圧1kVの条件下で、SEM像を観察することによって、求められる。具体的には、本発明のマンガン酸化物粒子(任意で抽出した30個)を直接観察し、それらの二次粒子径を測定し、それらの算術平均値を算出することにより、SEM観察による二次粒子径の平均値とする。なお、測定倍率は、二次粒子径の大きさにより、500倍~100,000倍の範囲で適切な倍率を選択するとよい。
【0032】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、前記マンガン酸化物粒子は、BET法により測定された比表面積が0.20m2/g以上であることを特徴とする。
本発明のマンガン酸化物粒子は、BET法により測定された比表面積が0.20m2/g以上であると、マンガン酸化物粒子の分散性が向上する点で好ましい。また、比表面積が10.0m2/g以上であると、より好ましく、比表面積が15.0m2/g以上であると、さらに好ましい。
【0033】
本発明のマンガン酸化物粒子の比表面積(SSA)は、株式会社マウンテック製の「Macsorb(HM model-1201)を用いて、JIS R 1626-1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法)の「6.2 流動法の(3.5)一点法」に準拠して測定を行うことにより求めることができる。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスである窒素の混合ガスを使用する。また、キャリブレーションには、窒素ガスを使用する。
【0034】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、レーザ回折・散乱法を用いた粒子径分布測定による積算体積分率50%である粒子径が、0.1μm以上20μm以下であると好ましく、0.2μm以上10μm以下であるとより好ましく、0.3μm以上1μm以下であるとさらに好ましい。
【0035】
粒子の粒度分布の評価は、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製:MT3300EXII)を用いて、JIS Z 8825:2013に準じたレーザ回折・散乱法により行う。また、フィルタリングは行なわず、試料を、超音波出力40Wで、3分間に亘って超音波処理をした後、測定する。
【0036】
具体的には、スラリー状の試料を、測定装置に設けられた試料循環器の試料投入口に、当該測定装置が測定可能範囲内であると判定するまで投入した後、当該測定装置内蔵の超音波分散処理(超音波出力40W、3分間)を行い、表示が安定したことを確認後、測定を行う。
【0037】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、CIE1976で測定されるL*が45以下であることを特徴とする。
本発明のマンガン酸化物粒子は、CIE1976で測定されるL*が45以下であると、見た目がより黒色となり、可視光線領域の透過率を低下させることができる点で好ましく、40以下であるとより好ましく、35以下であるとさらに好ましく、30以下であると特に好ましく、20以下であるとより特に好ましい。なお、本発明のマンガン酸化物粒子では、典型的にはCIE1976で測定されるL*は20~45である。
【0038】
ここで、CIE1976、すなわちCIE1976(L*a*b*)色空間を用いて測定されるL*の値は、明度を示すものである。L*の値が100に近いほど、色が白に近づいて薄くなることを示し、L*の値が0に近いほど、色が黒に近づいて濃くなることを示している。具体的には、当該L*の値は、色彩色差計(コニカミノルタ社製:CR-300)を用い、JIS Z 8722:2009に準拠して実施することにより求められる。
【0039】
さらに、CIE1976(L*a*b*)色空間のa*の値は、-5~20であると好ましく、-5~15であるとより好ましく、-5~10であるとさらに好ましく、-5~5であると特に好ましく、-2~2であるとより特に好ましく、0であると最も好ましい。a*の値が0に近いほど、着色が抑制されていることを示す。また、CIE1976(L*a*b*)色空間のb*の値は、-10~25であると好ましく、-5~20であるとより好ましく、-5~15であるとさらに好ましく、-5~5であると特に好ましく、-2~2であるとより特に好ましく、0であると最も好ましい。b*の値が0に近いほど、着色が抑制されていることを示す。具体的には、当該a*及びb*の値は、当該L*の値と同様に、色彩色差計(コニカミノルタ社製:CR-300)を用い、JIS Z 8722:2009に準拠して実施することにより求められる。
【0040】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、前記マンガン酸化物粒子の組成式は、AxMnyOzと表され、x/y=0.001以上2.00以下であることを特徴とする。
本発明のマンガン酸化物粒子の組成式中の構成元素Aの係数xと、構成元素Mnの係数yとが、x/y=0.001以上2.00以下であると、可視光線領域での透過を抑制しつつ、近赤外線領域である波長1000nm付近の低波長側から急峻に立ち上がり、以降、高い透過性を示す観点で好ましい。また、構成元素Aの係数xは、構成元素Aが複数元素の場合、構成元素Aである複数元素の係数の総和である。なお、構成元素Oの係数zは、構成元素A及びMnの電荷の総和を中和する値である。
【0041】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、前記構成要素AがLiを含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率が高くなる観点で好ましい。
【0042】
構成元素Aにリチウムを含む、本発明のマンガン酸化物粒子は、一般的に、スピネル型(Fd3-m)の結晶構造を有するものやジグザグ層状岩塩構造を有するものであるが、これには限定されない。また、当該マンガン酸化物粒子は、一般的に酸素欠損を含み、酸素の一部がフッ素で置換されていてもよい。
【0043】
本発明のマンガン酸化物粒子は、前記構成要素AがLiを含み、前記マンガン酸化物の組成式は、AxMnyOzと表され、x/y=0.001以上2.00以下であると、波長1000nm付近から緩やかに透過性が向上し、波長2000nm付近の長波長領域で高い透過率を示す観点で好ましい。また、x/y=0.10以上1.50以下であるとより好ましく、x/y=0.40以上0.60以下であるとさらに好ましい。
【0044】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、Liと、Mg、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Bi、Yのうちから選択される1種以上の元素と、を含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率が高くなる観点でより好ましい。さらに、本発明のマンガン酸化物は、前記構成要素Aが、Liと、MgおよびまたはAlと、を含むものであると、近赤外線領域における透過率が高くなる観点で特に好ましい。
【0045】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、前記構成要素AがYを含むものであると、可視光線領域での透過を抑制しつつ、近赤外線領域である波長1000nm付近の低波長側から急峻に立ち上がり、以降、高い透過性を示す観点で好ましい。
【0046】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、前記構成要素AがYを含み、前記マンガン酸化物の組成式は、AxMnyOzと表され、x/y=0.001以上2.00以下であると、可視光線領域での透過を抑制しつつ、近赤外線領域である波長1000nm付近の低波長側から急峻に立ち上がり、以降、高い透過性を示す観点で好ましい。
【0047】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、前記構成要素AがYを含み、前記マンガン酸化物のXRDスペクトルにおける2θ=32.5~33.5°に現れる(112)面由来のピーク強度に対する2θ=35.5~36.5°に現れる(211)面由来のピーク強度の強度比(211)/(112)が2.50以下であると好ましく、0.10以上1.00以下であると黒色度が高い観点(a*、b*が0に近い)で特に好ましい。
【0048】
ここで、本発明の構成要素AにYを含むマンガン酸化物粒子は、CuKα線を使用したXRDスペクトルにおいて、2θ=32.5~33.5°に現れる(112)面由来のピーク強度に対する2θ=35.5~36.5°に現れる(211)面由来のピーク強度の強度比(211)/(112)が2.50以下であると好ましく、0.10以上1.00以下であると黒色度が高い観点(a*、b*が0に近い)でより好ましい。この構成要素AにYを含むマンガン酸化物粒子から得られた上記サンプルを、上述した粉末X線回折測定条件に従って、CuKα線を使用した粉末X線回折測定を行い、X線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターン中の2θ=32.5~33.5°にあるピーク強度はYMnO3(112)面に起因し、2θ=35.5~36.5°にあるピーク強度はMn3O4(221)面に起因する。
【0049】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、前記構成要素Aが、Yと、Li、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Biのうちから選択される1種以上の元素と、を含むものであると、可視光線領域での透過を抑制しつつ、近赤外線領域である波長1000nm付近の低波長側から急峻に立ち上がり、以降、高い透過性を示す観点でより好ましい。さらに、本発明のマンガン酸化物粒子は、前記構成要素Aが、Yと、Znと、を含むものであると、近赤外線領域における透過性がさらに高くなる観点で特に好ましい。
【0050】
また、本発明のマンガン酸化物粒子は、前記マンガン酸化物粒子は近赤外線透過材料用である。
本発明のマンガン酸化物粒子は、上述した通り、可視光線領域における透過率が低く、近赤外線領域においては優れた透過性能を有するものであるから、近赤外線透過材料用として好ましい。
【0051】
なお、本発明のマンガン酸化物粒子は、分散性を高める観点から、表面処理を行ってもよく、また表面処理剤を系内に添加してもよい。表面処理剤は、例えばシランカップリング剤などが挙げられる。また、表面処理剤は、1種類でもよく、また2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明の近赤外線透過材料は、マンガン酸化物粒子と、近赤外線を透過する成分を含む分散体とを有する近赤外線透過材料であって、前記マンガン酸化物の構成元素は、A-Mn-Oと表され、前記構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素であることを特徴とする。
本発明の近赤外線透過材料は、上述した本発明のマンガン酸化物粒子と、近赤外線を透過する成分を有する分散体とを含むものであって、当該マンガン酸化物粒子と分散体とを混合した混合物や、当該マンガン酸化物粒子が分散体の表面上に塗工されたものであってもよい。
【0053】
本発明の近赤外線透過材料に含まれるマンガン酸化物粒子は、同一組成、且つ同一特性のマンガン酸化物粒子に限定されない。例えば、流動性を調製するため、同一組成で異なる粒度分布を有するマンガン酸化物粒子を適宜混同したものであってもよい。また、近赤外線領域の透過率を調製するため、異なる組成のマンガン酸化物粒子を適宜混合したものであってもよい。さらに、用途に応じて、組成も特性も異なるマンガン酸化物粒子を適宜混合したものであてもよい。
【0054】
分散体は、近赤外線を透過する成分を有するものであればよく、分散体に含有される全ての成分が近赤外線を透過する成分であることを示すものではない。
【0055】
なお、本発明の近赤外線透過材料は、マンガン酸化物粒子が分散体中に均一に分散した構造だけでなく、複数のマンガン酸化物粒子が凝集した凝集体を形成し、分散体中に分散した構造や、分散体中に偏析した状態も含まれる。
【0056】
また、本発明の近赤外線透過材料は、CIE1976で測定されるL*が45以下であることを特徴とする。
本発明の近赤外線透過材料は、CIE1976で測定されるL*が45以下であると、見た目がより黒色となり、可視光線領域の透過率を低下させることができる点で好ましく、40以下であるとより好ましく、35以下であるとさらに好ましく、30以下であると特に好ましく、20以下であるとより特に好ましく、0であると最も好ましい。なお、本発明の近赤外線透過材料は、典型的にはCIE1976で測定されるL*は20~45である。
【0057】
さらに、CIE1976(L*a*b*)色空間のa*の値は、-5~20であると好ましく、-5~15であるとより好ましく、-5~10であるとさらに好ましく、-5~5であると特に好ましく、-2~2であるとより特に好ましく、0であると最も好ましい。a*の値が0に近いほど、着色が抑制されていることを示す。また、CIE1976(L*a*b*)色空間のb*の値は、-10~25であると好ましく、-5~20であるとより好ましく、-5~15であるとさらに好ましく、-5~5であると特に好ましく、-2~2であるとより特に好ましく、0であると最も好ましい。b*の値が0に近いほど、着色が抑制されていることを示す。
【0058】
また、本発明の近赤外線透過材料は、波長700nm(可視光線領域)の透過率が30%以下であり、且つ波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%以上であって、前記波長700nm(可視光線領域)の透過率よりも大きいことを特徴とする。
本発明の近赤外線透過材料の透過率は、本発明の近赤外線透過材料をポリエチレンテレフタレート(以下、PETという。)製のフィルム上に塗布し、焼成して得られた近赤外線透過膜(サンプル)に対し、分光光度計を用いて測定する。可視光線領域である波長700nmの透過率が30%以下であり、且つ波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%以上であって、前記波長700nmの透過率よりも大きいものであると、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させる点で好ましい。
【0059】
また、可視光線領域である波長700nmの透過率が27%以下であるとより好ましく、20%以下であるとさらに好ましく、15%以下であると特に好ましく、10%以下であるとより特に好ましく、5%以下であるとまた特に好ましく、0%であると最も好ましい。本発明の近赤外線透過材料の波長700nm(可視光線領域)の透過率は、典型的には、0.1%~10%であり、1%~10%であってもよい。
【0060】
一方、波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が30%以上であるとより好ましく、50%以上であるとさらに好ましく、80%以上であると特に好ましい。
【0061】
なお、可視光線領域である波長550nmの透過率が15%以下であるとより好ましく、10%以下であるとさらに好ましく、5%以下であると特に好ましく、0%であると最も好ましい。本発明の近赤外線透過材料の波長550nm(可視光線領域)の透過率は、典型的には、0.1%~10%であり、1%~10%であってもよい。
【0062】
また、本発明の近赤外線透過材料は、前記近赤外線透過材料の波長700nm(可視光線領域)の透過率が30%以下であり、且つ波長1000nm(近赤外線領域)、及び波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%以上であって、前記波長700nm(可視光線領域)の透過率よりも大きいことを特徴とする。
可視光線領域である波長700nmの透過率が30%以下であり、且つ波長1000(近赤外線領域)、及び波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%以上であって、前記波長700nmの透過率よりも大きいものであると、可視光線を極力透過させず、幅広い波長領域の近赤外線を透過させる点で好ましい。さらに、本発明の近赤外線透過材料の可視光線領域である波長700nmの透過率が30%以下であり、且つ近赤外線領域である波長1000nm、1200nm、1400nm、1600nm、1800nm、2000nm、2200nm、及び2400nmの透過率が10%以上であって、前記波長700nmの透過率よりも大きいものであると、より好ましい。本発明の近赤外線透過材料の可視光線領域である波長700nmの透過率が30%以下であり、且つ近赤外線領域である波長1000nm~2400nmの透過率が10%以上であって、前記波長700nmの透過率よりも大きいものであると、さらに好ましい。
【0063】
また、本発明の近赤外線透過材料は、前記近赤外線透過材料の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%以下であることを特徴とする。
波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%以下であると、可視光線を単に透過しないというだけでなく、可視光線の吸収性能にも優れる点で好ましい。波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が15%以下であるとより好ましく、12%以下であるとさらに好ましく、10%以下であると特に好ましく、5%以下であるとより特に好ましく、0%であると最も好ましい。さらに、本発明の近赤外線透過材料の波長550nm、波長600nm、波長650nm、及び波長700nmの光の反射率が上述した上限値以下であるとより好ましい。本発明の近赤外線透過材料の波長550nm~700nmの光の反射率が上述した上限値以下であるとさらに好ましい。なお、本発明の近赤外線透過材料の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率は、典型的には、0.1%~10%であり、1%~10%であってもよい。
【0064】
反射率の測定に用いられる本発明に係るマンガン酸化物粒子は、本発明の近赤外線透過材料から次のような方法により取り出すことができる。分散体が樹脂であれば、当該樹脂が十分に焼失する温度、及び時間に加熱することにより、当該マンガン酸化物粒子を取り出すことができる。また、分散体が有機溶媒や水などの溶媒であれば、各溶媒を揮発させることにより、当該マンガン酸化物粒子を取り出すことができる。
【0065】
また、本発明の近赤外線透過材料は、前記分散体が、樹脂、ガラス、有機溶剤、若しくは水、又はこれらの2種以上の混合物であることを特徴とする。
分散体は、近赤外線を透過する成分を有するものであると好ましい。
【0066】
分散体に用いられる樹脂として、樹脂の種類に特に制限はなく、所望の形状に成形可能な樹脂を用いることができ、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、及び二液混合硬化性樹脂を用いることができる。
【0067】
これらの樹脂のうち、膜厚が厚いシートへの成形加工が容易である観点からは、マトリクス樹脂として熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂の例として、ポリエチレンや、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートや、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸、又はそのエステルや、ポリメタクリル酸、又はそのエステル等のポリアクリル酸系樹脂、ポリスチレンや、ポリ塩化ビニル等のポリビニル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリウレタン等のウレタン樹脂などの少なくとも1種以上の樹脂が挙げられる。なお、当該熱可塑性樹脂には、多層型に成形したもの、ポリマーブレンド、コポリマーも含まれる。
【0068】
また、膜厚が薄いシートへの成形加工が容易である観点からは、マトリクス樹脂として熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、及び二液混合硬化性樹脂のうち少なくとも一つ以上を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂の例として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。さらに、電離放射線硬化性樹脂の例として、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステルアルキド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、ポリマーだけでなく、オリゴマー、モノマーも使用することができる。また、二液混合硬化性樹脂の例として、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0069】
分散体に用いられるガラスとして、例えば、ガラス板、水ガラス、石英、及び粉末ガラスが挙げられる。
【0070】
分散体に用いられる有機溶媒として、水溶性有機溶媒及び非水溶性有機溶媒の双方を用いることができる。水溶性有機溶媒を用いる場合には、水と混合してなる混合溶媒としても用いることができる。具体的には、水溶性有機溶媒として、例えばモノアルコール、多価アルコール、ケトン、エステル、アミン、チオール、ピロリドン系等といった水と相溶できる有機溶媒を用いることができる。ここで、モノアルコールとして、例えばメタノール、エタノール、工業用エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。また、多価アルコールとして、例えばエチレングリコール、オリゴエチレングリコール、プロピレングリコール、オリゴプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ブチレングリコールなどが挙げられる。さらに、ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどが挙げられる。
【0071】
一方、非水溶性有機溶媒として、例えば飽和又は不飽和の炭化水素系化合物やハロゲン化炭化水素とその環状化合物、長鎖のモノアルコールや多価アルコール、及び芳香族系化合物等に代表される水と相溶しない有機溶媒を用いることができる。これらの有機溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
分散体に用いられる水として、一般的な水道水(イオン成分を含む。)、イオン交換水、純水、及び超純水が挙げられる。
【0073】
上述した分散体として用いられる、樹脂、ガラス、有機溶媒、又は水は、特段に説明がない限り、本発明の近赤外線透過材料の特性に影響を及ぼすものではない。
【0074】
本発明のマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料は、添加物として、Nb、Ta、Ti、Si、Zr、Zn、Al、Y、V、La系(La、Ce、Nd、Eu、Gd、Dy、Yb)などの酸化物粒子を含有してもよい。本発明のマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料における添加物の含有量は、1質量%未満であるのが好ましく、0.1質量%未満であるのがより好ましく、0.01質量%未満であるとさらに好ましい。なお、本発明のマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料の特性を損なわない範囲であれば、当該添加物の含有量は、上述した範囲を超えてもよい。
【0075】
さらに、本発明のマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料は、その作用効果を阻害しない範囲で、マンガン乃至マンガン酸に由来する成分、及び、分散体に由来する成分以外の成分(「他成分」という。)を含有してもよい。他成分としては、例えばNb、Ta、Ti、Si、Zr、Zn、Al、Y、V、La系(La、Ce、Nd、Eu、Gd、Dy、Yb)などが挙げられる。但し、これらに限定するものではない。本発明のマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料における他成分の含有量は、5質量%未満であるのが好ましく、4質量%未満であるのがより好ましく、3質量%未満であるとさらに好ましい。なお、本発明のマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料は、意図したものではなく、不可避不純物を含むことが想定される。不可避不純物の総含有量は10質量%未満であると好ましく、7質量%未満であるとより好ましく、5質量%未満であるとさらに好ましく、3質量%未満であると特に好ましく、1質量%未満であるとまた特に好ましい。
【0076】
上述した本発明の近赤外線透過材料の製造方法について、以下説明する。
【0077】
先ず、本発明の近赤外線透過材料を構成するマンガン酸化物粒子の製造方法の一例として、マンガン酸化物粒子の構成要素Aが「Li」、「Mg」、及び「Al」であるマンガン酸リチウム(以下、本LMO-MgAlという。)の製造方法を、以下説明する。
【0078】
本LMO-MgAlは、マンガン原料、リチウム原料、マグネシウム原料、及びアルミニウム原料を混合し、必要に応じて造粒乾燥させ、焼成し、必要に応じて分級し、さらに必要に応じて熱処理し、さらに必要に応じて分級することにより得られる。
【0079】
また、本LMO-MgAlは、マンガン原料、リチウム原料、マグネシウム原料、及びアルミニウム原料に対して、ホウ素化合物を添加して混合し、湿式粉砕した後、造粒乾燥させ、焼成してもよい。
【0080】
ここで、マンガン原料は、特に限定されないが、例えば酸化マンガン(II)(一酸化マンガン)、酸化マンガン(II,III)、酸化マンガン(III)、酸化マンガン(IV)(二酸化マンガン)、酸化マンガン(VI)、酸化マンガン(VII)などが挙げられる。
【0081】
リチウム原料は、特に限定されないが、例えば水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(Li2CO3)、硝酸リチウム(LiNO3)、水酸化リチウム・水和物(LiOH・H2O)、酸化リチウム(Li2O)、その他脂肪酸リチウムや、リチウムハロゲン化合物などが挙げられる。特にリチウムの水酸化物塩、炭酸塩、硝酸塩が好ましい。
【0082】
マグネシウム原料は、特に限定されないが、例えば酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)などが挙げられる。特に酸化マグネシウムが好ましい。
【0083】
アルミニウム原料は、特に限定されないが、例えば水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、フッ化アルミニウム(AlF3)などが挙げられる。特に水酸化アルミニウムが好ましい。
【0084】
ホウ素化合物は、フラックス成分として、マンガン原料、リチウム原料、マグネシウム原料、及びアルミニウム原料の複合化を促進するために添加される。また、ホウ素化合物は、焼成後、固溶せずに、本発明の近赤外線透過材料を構成するマンガン酸化物粒子の表面に不純物として残存するが、水洗や湿式による粉砕等することにより、除去することが可能である。本発明の近赤外線透過材料中のホウ素化合物の含有量は、5質量%未満であると好ましく、3質量%未満であるとより好ましく、1質量%未満であるとさらに好ましい。なお、当該ホウ素化合物の含有量は、ICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)により、「ホウ素(B)」元素としての含有量を重量比として算出したものである。
【0085】
ここで、ホウ素化合物として、ホウ酸、又はホウ酸リチウムが好ましい。ホウ酸リチウムは、例えばメタホウ酸リチウム(LiBO3)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、五ホウ酸リチウム(LiB5O8)、及び過ホウ酸リチウム(Li2B2O6)などの各種形態のものを挙げられるが、特に四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)が好ましい。
【0086】
上述した各種原料の混合は、均一に混合できれば、その方法を特に限定するものではない。例えばミキサー等の公知の混合機を用いて各原料を同時、又は適当な順序で加えて湿式、又は乾式で撹拌混合すればよい。湿式混合の場合、水や分散剤などの液媒体を加えて湿式混合することによりスラリー化させ、得られたスラリーを湿式粉砕機で粉砕するのが好ましい。特にサブミクロンオーダーまで粉砕するのが好ましい。サブミクロンオーダーまで粉砕した後、造粒及び焼成することにより、焼成反応前の各粒子の均一性を高めることができ、反応性を高めることができる。なお、上述したように、混合した各種原料はそのまま焼成してもよいが、所定の大きさに造粒して焼成してもよい。
【0087】
造粒方法は、粉砕された各種原料が分離せずに造粒粒子内で分散していれば湿式でも乾式でもよく、押し出し造粒法、転動造粒法、流動造粒法、混合造粒法、噴霧乾燥造粒法、加圧成型造粒法、又はロール等を用いたフレーク造粒法でもよい。但し、湿式造粒した場合には、焼成前に充分に乾燥させることが必要である。乾燥方法としては、噴霧熱乾燥法、熱風乾燥法、真空乾燥法、フリーズドライ法などの公知の乾燥方法によって乾燥させればよく、特に噴霧熱乾燥法が好ましい。噴霧熱乾燥法は、熱噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いて行なうのが好ましい。熱噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いて造粒することにより、粒度分布をよりシャープにすることができるばかりか、丸く凝集してなる凝集粒子(二次粒子)を含むように調製することができる。
【0088】
焼成は、焼成炉にて、大気雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、酸素分圧を調整した雰囲気下、又は二酸化炭素ガス雰囲気下、又はその他の雰囲気下において、50~200℃/hrの昇温速度で昇温し、400~1500℃の温度(焼成炉内の焼成物に熱電対を接触させた場合の温度を意味する。)で0.5~30時間保持するように焼成するのが好ましい。但し、ホウ素化合物と共に焼成する場合は、上述した焼成温度よりも低い温度域で焼成することができる。なお、焼成炉の種類は特に限定するものではない。例えばロータリーキルン、静置炉、その他の焼成炉を用いて焼成することができる。
【0089】
焼成し得られた焼成品は、そのまま本LMO-MgAl(マンガン酸化物粒子)として用いてもよい。また、焼成品を粉砕したものを本LMO-MgAl(マンガン酸化物粒子)として用いてもよい。また、粉砕されるか否かに拘らず、焼成品を篩などによって分級した得られた篩下(微粒側)を本LMO-MgAl(マンガン酸化物粒子)として用いてもよい。篩上(粗粒側)は再度粉砕し、分級して用いてもよい。
【0090】
粉砕方法は、乾式または湿式にて実施することができる。乾式の場合、焼成品をアトライタ、ブレード式粉砕機、ジェットミル、又はボールミルなど市販されている乾式粉砕装置を使用し、焼成品を粉砕することができる。他方、湿式の場合、焼成品と水若しくは有機溶媒とを混合して、水若しくは有機溶媒中に焼成品を分散させたスラリーとする。次に、当該スラリーを、ボールミルやビーズミルなどのメディアミル、高速せん断を利用した乳化機・分散機など市販されている湿式粉砕装置を使用し、当該スラリー中に分散した焼成品を粉砕することができる。使用するビーズとしては、例えばジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズなどが挙げられる。また、粉砕メディアを利用せず、高圧条件下で粒子間衝突により粉砕させるメディアレス粉砕機を用いてもよく、粉砕メディアから生じる金属粉等のコンタミネーションのリスクを低減する観点で好ましい。なお、当該スラリーと共に、必要に応じて分散剤を添加してもよい。
【0091】
そして、湿式粉砕の場合、粉砕された焼成品と溶媒とをろ過器や遠心分離機などを用いて分離し、溶媒が揮発する温度で乾燥することにより、粉砕された本LMO-MgAl(マンガン酸化物粒子)が得られる。
【0092】
また、粉砕方法は、上述した粉砕を2回繰り返す2段粉砕を実施することにより、より小径化した本LMO-MgAl(マンガン酸化物粒子)としてもよい。1段階目の粉砕方式として、上述した乾式粉砕装置または湿式粉砕装置を用いた粉砕方式などが挙げられる。次に、2段階目の粉砕として、上述した乾式粉砕装置または湿式粉砕装置を用いた粉砕方式などが挙げられる。
【0093】
本発明のマンガン酸化物粒子は、上述した本LMO-MgAlに限定されるものではなく、マンガン原料、イットリウム原料、及び亜鉛原料を混合し、必要に応じて造粒乾燥させ、焼成し、必要に応じて分級し、さらに必要に応じて熱処理し、さらに必要に応じて分級することによっても得ることができる。
【0094】
イットリウム原料は、例えば酸化イットリウム(Y2O3)、炭酸イットリウム(Y2(CO3)3・3H2O)、酢酸イットリウム(Y(CH3COO)3・4H2O)、フッ化イットリウム(YF3)、硝酸イットリウム(Y(NO3)3・nH2O)などが挙げられる。特に酸化イットリウム(Y2O3)が好ましい。
【0095】
亜鉛原料は、例えば酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、フッ化亜鉛四水和物(ZnF2・4H2O)、ステアリン酸亜鉛([CH3(CH2)16COO]2Zn)などが挙げられる。特に酸化亜鉛(ZnO)が好ましい。
【0096】
さらに、その他原料として、以下の原料が挙げられる。ナトリウム原料は、例えば炭酸ナトリウム(Na2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、塩化ナトリウム(NaCl)などが挙げられる。特に炭酸ナトリウム(Na2CO3)が好ましい。
【0097】
カルシウム原料は、例えば炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(CaOH)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)、硫酸カルシウム(CaSO4)などが挙げられる。特に炭酸カルシウム(CaCO3)が好ましい。
【0098】
ストロンチウム原料は、例えば炭酸ストロンチウム(SrCo3)、硫酸ストロンチウム(SrSO4)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)などが挙げられる。
【0099】
バリウム原料は、例えば炭酸バリウム(BaCO3)、硫酸バリウム(BaSO4)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、フッ化バリウム(BaF2)などが挙げられる。特に炭酸バリウム(BaCO3)が好ましい。
【0100】
ビスマス原料は、例えば酸化ビスマス(Bi2O3)、塩基性炭酸ビスマス((BiO)2CO3)、硫酸ビスマス(Bi2(SO4)3)、硝酸ビスマス五水和物(Bi(NO3)3・5H2O)などが挙げられる。特に塩基性炭酸ビスマス((BiO)2CO3)が好ましい。
【0101】
ランタン原料は、例えば酸化ランタン(La2O3)、炭酸ランタン(La2(CO3)3)、水酸化ランタン(La(OH)3)、硫酸ランタン(La2(SO4)3・9H2O)、硝酸ランタン(La(NO3)3・6H2O)などが挙げられる。特に炭酸ランタン(La2(CO3)3)が好ましい。
【0102】
プラセオジム原料は、例えば酸化プラセオジム(Pr6O11)、酢酸プラセオジム((CH3COO)3Pr・nH2O)、フッ化プラセオジム(PrF3)、炭酸プラセオジム八水和物(Pr2(CO3)3・8H2O)などが挙げられる。特に酸化プラセオジム(Pr6O11)が好ましい。
【0103】
ネオジム原料は、例えば酸化ネオジム(Nd2O3)、炭酸ネオジム(Nd2(CO3)3・8H2O)、フッ化ネオジム(NdF3)などが挙げられる。特に炭酸ネオジム(Nd2(CO3)3・8H2O)が好ましい。
【0104】
鉄原料は、例えば酸化鉄(Fe2O3)、酸化鉄(Fe3O4)、硫酸鉄(FeSO4)、炭酸鉄(FeCO3)、硝酸鉄(Fe(NO3)3)などが挙げられる。特に酸化鉄(Fe2O3)が好ましい。
【0105】
チタン原料は、例えば酸化チタン(TiO2)(ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、ブロンズ)、チタンテトライソプロポキシド([(CH3)2CHO]4Ti)などが挙げられる。特に酸化チタン(TiO2)(アナターゼ)が好ましい。
【0106】
このようにして、得られた本LMO-MgAl(マンガン酸化物粒子)は、以下の通り、分散体と混合されることにより、本発明の近赤外線透過材料が得られる。
【0107】
分散体が樹脂である場合、本LMO-MgAlに対して、分散体である樹脂を所定の割合となるように混合することにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:樹脂)が得られる。具体的には、分散体が熱硬化性樹脂の場合、加熱する前に本LMO-MgAlと熱硬化性樹脂とを混合してもよく、さらに当該熱硬化性樹脂を希釈する有機溶剤を加えて混合してもよい。ここで、本LMO-MgAlと熱硬化性樹脂とを混合する際、自転公転ミキサー、撹拌機、3本ロールなどを用いることができる。その後、熱硬化性樹脂が硬化する温度まで加熱して硬化させることにより、本発明の近赤外透過材料(分散体:樹脂)を得ることができる。
【0108】
また、分散体が熱可塑性樹脂の場合、例えば混錬機などで加熱された当該熱可塑性樹脂中に本LMO-MgAlを混合することにより、本発明の近赤外透過材料(分散体:樹脂)を得ることができる。さらに、分散体が樹脂フィルムの場合、例えば本LMO-MgAlをPETやポリエチレンナフタレート(PEN)製のフィルム上に塗工することにより、本発明の近赤外透過材料(分散体:樹脂)を得ることができる。当該塗工の際、本LMO-MgAl、樹脂、及び有機溶剤を配合した混合物を、バーコーターやブレードを用いて塗工することができる。さらに、本LMO-MgAlと樹脂とを混合した混合物を押出成形することによりフィルム状に形成してもよい。
【0109】
なお、本発明の近赤外線透過材料(分散体:樹脂)は、本LMO-MgAlが分散体である樹脂中に均一となるように分散されていると好ましい。
【0110】
分散体がガラスである場合、本LMO-MgAlに対して、分散体であるガラス、例えば粉末ガラスを所定の割合となるように混合することにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:ガラス)が得られる。なお、本発明の近赤外線透過材料(分散体:ガラス)は、本LMO-MgAlが分散体であるガラス中に均一となるように分散されていると好ましい。
【0111】
分散体が有機溶媒である場合、本LMO-MgAlに対して、分散体である有機溶媒を所定の割合となるように混合することにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:有機溶媒)が得られる。
【0112】
先ず、本LMO-MgAlと有機溶媒とを混合することにより、有機溶媒中に本LMO-MgAl粒子を分散させたスラリーが得られる。この際、分散剤を添加してもよい。次に、得られたスラリーを、ビーズミル等のメディアミル、高水圧式ジェットミル又はホモジナイザー等によって湿式粉砕や分散処理を行うことにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:有機溶媒)を得ることができる。ここで、ビーズミルに使用するビーズとして、例えばジルコニアビーズやアルミナビーズ等が挙げられる。さらに、分散剤は、これを湿式粉砕時にスラリーに添加してもよく、あるいは湿式粉砕して得られた油性分散液に添加してもよい。分散剤の添加量は、適宜調整されるとよい。
【0113】
なお、本発明の近赤外線透過材料(分散体:有機溶媒)は、本LMO-MgAlが分散体である有機溶媒中に均一となるように分散されていると好ましい。
【0114】
分散体が水である場合、本LMO-MgAlに対して、分散体である水を所定の割合となるように混合することにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:水)が得られる。
【0115】
先ず、本LMO-MgAlと水とを混合することにより、水中に本LMO-MgAl粒子を分散させたスラリーが得られる。この際、分散剤を添加してもよい。次に、得られたスラリーを、ビーズミル等のメディアミル、高水圧式ジェットミル又はホモジナイザー等によって湿式粉砕や分散処理を行うことにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:水)を得ることができる。ここで、ビーズミルに使用するビーズとして、例えばジルコニアビーズやアルミナビーズ等が挙げられる。さらに、分散剤は、これを湿式粉砕時にスラリーに添加してもよく、あるいは湿式粉砕して得られた油性分散液に添加してもよい。分散剤の添加量は、適宜調整されるとよい。
【0116】
なお、本発明の近赤外線透過材料(分散体:水)は、本LMO-MgAlが分散体である水中に均一となるように分散されていると好ましい。
【0117】
本発明の近赤外線透過膜は、上述した本発明の近赤外線透過膜を含むことを特徴とする。
本発明の近赤外線透過膜は、上述した本発明の近赤外線透過膜を含んでおり、光学フィルタとして、赤外線センサや赤外線カメラに利用可能である。
【0118】
本発明の近赤外線センサは、上述した本発明の近赤外線透過膜が形成された光学フィルタを有することを特徴とする。
本発明の近赤外線センサは、上述した本発明の近赤外線透過膜が形成された光学フィルタを有することにより、可視光線は極力透過させないが、近赤外線は透過させることができる点で好ましい。
【0119】
上述した本発明の近赤外線透過膜の製造方法について、以下説明する。
【0120】
本発明の近赤外線透過膜の製造方法は、上述した本発明の近赤外線透過材料を、基材上に塗布し、乾燥することにより、近赤外線透過膜を生成する工程を有する。なお、基材は、ガラス、アクリル、樹脂成型体などが挙げられる。
【0121】
上述した本発明の近赤外線透過材料の製造方法により生成された近赤外線透過材料を、バーコーターを用いて基材上に塗布する。そして、本発明の近赤外線透過材料が塗布された基材を、静置炉内に載置し、室温(25℃)で3時間に亘って乾燥することにより、本発明の近赤外線透過膜が得られる。また、本発明の近赤外線透過材料が塗布された基材を静置炉内に載置し、110℃に加熱し、6時間に亘って乾燥し、又は600℃に加熱し、3時間に亘って焼成してもよい。
【発明の効果】
【0122】
本発明のマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、近赤外線透過材料、及び近赤外線透過膜は、可視光線は極力透過させないが、近赤外線は透過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【
図1】本発明の実施例1~3に係る近赤外線透過材料、比較例1に係る酸化チタン混合物、及び比較例2に係るカーボンブラック混合物の物性値及び測定結果の一覧表である。
【
図2】本発明の実施例4~14に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
【
図3】本発明の実施例15~20に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
【
図4】本発明の実施例21~26に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
【
図5】本発明の実施例1~3、10、26に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
【
図6】本発明の実施例27~30に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
【
図7】本発明の実施例31~38に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
【
図8】本発明の実施例39~41に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
【
図9】本発明の実施例1~3に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
【
図10】(a)は本発明の実施例4~9に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフであり、(b)は本発明の実施例10~14に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施例15~20に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施例21~26に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
【
図13】本発明の実施例1~3、10、26に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
【
図14】本発明の実施例27~30に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
【
図15】本発明の実施例31~38に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
【
図16】本発明の実施例39~41に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
【
図17】本発明の実施例10、35、36に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0124】
以下、本発明に係る実施形態のマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、近赤外線透過材料、及び近赤外線透過膜について、以下の実施例によりさらに説明する。但し、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0125】
(実施例1)
実施例1に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLi、Mg、Alであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)である。
【0126】
実施例1に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)は、構成要素A(Li、Mg、Al)のモル数が0.625mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.625mol、A/(A+Mn)のモル比が0.385、Mn/(A+Mn)のモル比が0.615、及びA/Mnのモル比が0.625であった。
【0127】
具体的には、四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化マグネシウム(40.304g/mol)と、水酸化アルミニウム(78.000g/mol)とを、モル比でMn:Li:Mg:Al=1.04:0.60:0.004:0.044となるように秤量し、混合して混合原料を得た。
【0128】
得られた混合原料をアルミナ製るつぼに入れ、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気下、焼成温度(保持温度)770℃で20時間保持し、その後は常温まで自然冷却して、焼成粉を得た。
【0129】
焼成して得られた焼成粉を乳鉢で解砕し、目開き75μmの篩で分級し、篩下の粉体を実施例1に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)として得た。
【0130】
次に、実施例1に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)20.0gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェーカーを用いて2時間分散処理することにより、実施例1に係る近赤外線透過材料を得た。
【0131】
このようにして得られた実施例1に係る近赤外線透過材料を、PET製のフィルム(東レ株式会社製「ルミラー(登録商標)」:#100-T60)上にバーコーター(No.10)を用いて塗布することにより、塗膜を形成し、実施例1に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0132】
(実施例2)
実施例2に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLi、Mg、Alであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)である。
【0133】
実施例2に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)は、構成要素A(Li、Mg、Al)のモル数が0.625mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.625mol、A/(A+Mn)のモル比が0.385、Mn/(A+Mn)のモル比が0.615、及びA/Mnのモル比が0.625であった。
【0134】
実施例2に係る近赤外線透過材料は、(i)混合原料を焼成する焼成温度が570℃であったこと、(ii)後述する粉砕処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、得られた。
【0135】
実施例2における粉砕処理は、焼成して得られた焼成粉30g、及び純水45gと共に、0.8mmφジルコニアビーズ100gを100mlのプラスチック容器へ投入し、株式会社セイワ技研製ロッキングシェイカーにて4時間粉砕処理を行った。次に、メッシュを用いて当該ジルコニアビーズを分離した後、小形遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製:CT6E)を用いて固液分離し、乾燥機を用いて固形分を110℃で乾固して、実施例2に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)を得た。
【0136】
実施例2に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例2に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、バーコーターを用いて2回塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る近赤外線透過膜(膜厚9μm)を得た。
【0137】
(実施例3)
実施例3に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLi、Mg、Alであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)である。
【0138】
実施例3に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)は、構成要素A(Li、Mg、Al)のモル数が0.625mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.625mol、A/(A+Mn)のモル比が0.385、Mn/(A+Mn)のモル比が0.615、及びA/Mnのモル比が0.625であった。
【0139】
実施例3に係る近赤外線透過材料は、(i)混合原料を焼成する焼成温度が570℃であったこと、(ii)後述する二段階粉砕処理を行ったこと、(iii)実施例3に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)と、アクリル樹脂及び酢酸エチルを混合する際、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように混合したこと以外は、実施例1と同様にして、得られた。
【0140】
実施例3における二段階粉砕処理は、先ず一段階目の粉砕処理として、実施例2における粉砕処理を行った。次に、二段階目の粉砕処理として、実施例2における粉砕処理を行って得られた乾燥粉30g、及び純水45gと共に、0.2mmφジルコニアビーズ100gを100mlのプラスチック容器へ投入し、株式会社セイワ技研製ロッキングシェイカーにて4時間粉砕処理を行った。次に、メッシュを用いて当該ジルコニアビーズを分離した後、小形遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製:CT6E)を用いて固液分離し、乾燥機を用いて固形分を110℃で乾固して、実施例3に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)を得た。
【0141】
実施例3に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例3に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例3に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0142】
(実施例4)
実施例4に係るマンガン酸化物は、構成要素AがNaであるマンガン酸ナトリウム粒子(NaMnO)である。
【0143】
実施例4に係るマンガン酸ナトリウム粒子(NaMnO)は、構成要素A(Na)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.5であった。
【0144】
具体的には、四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸ナトリウム(105.99g/mol)とを、モル比でMn:Na=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと以外、実施例1と同様にして、実施例4に係るマンガン酸ナトリウム粒子(NaMnO)が得られた。
【0145】
次に、実施例4に係る近赤外線透過材料は、実施例4に係るマンガン酸ナトリウム粒子(NaMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0146】
そして、実施例4に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例4に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0147】
(実施例5)
実施例5に係るマンガン酸化物は、構成要素AがCaであるマンガン酸カルシウム粒子(CaMnO)である。
【0148】
実施例5に係るマンガン酸カルシウム粒子(CaMnO)は、構成要素A(Ca)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、A/Mnのモル比が0.5であった。
【0149】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸カルシウム(100.09g/mol)とを、モル比でMn:Ca=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと以外、実施例1と同様にして、実施例5に係るマンガン酸カルシウム粒子(CaMnO)が得られた。
【0150】
次に、実施例5に係る近赤外線透過材料は、実施例5に係るマンガン酸カルシウム粒子(CaMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0151】
そして、実施例5に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例5に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0152】
(実施例6)
実施例6に係る近赤外線透過材料は、構成要素AがSrであるマンガン酸ストロンチウム粒子(SrMnO)である。
【0153】
実施例6に係るマンガン酸ストロンチウム粒子(SrMnO)は、構成要素A(Sr)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.5であった。
【0154】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸ストロンチウム(147.63g/mol)とを、モル比でMn:Sr=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと以外、実施例1と同様にして、実施例6に係るマンガン酸ストロンチウム粒子(SrMnO)が得られた。
【0155】
次に、実施例6に係る近赤外線透過材料は、実施例6に係るマンガン酸ストロンチウム粒子(SrMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0156】
そして、実施例6に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例6に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0157】
(実施例7)
実施例7に係るマンガン酸化物は、構成要素AがBaであるマンガン酸バリウム粒子(BaMnO)である。
【0158】
実施例7に係るマンガン酸バリウム粒子(BaMnO)は、構成要素A(Ba)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、A/Mnのモル比が0.5であった。
【0159】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸バリウム(197.34g/mol)とを、モル比でMn:Ba=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと以外、実施例1と同様にして、実施例7に係るマンガン酸バリウム粒子(BaMnO)が得られた。
【0160】
次に、実施例7に係る近赤外線透過材料は、実施例7に係るマンガン酸バリウム粒子(BaMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0161】
そして、実施例7に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例7に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0162】
(実施例8)
実施例8に係るマンガン酸化物は、構成要素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0163】
実施例8に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成要素A(Y)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.5であった。
【0164】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例8に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)が得られた。
【0165】
次に、実施例8に係る近赤外線透過材料は、実施例8に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0166】
そして、実施例8に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例8に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0167】
(実施例9)
実施例9に係るマンガン酸化物は、構成要素AがBiであるマンガン酸ビスマス粒子(BiMnO)である。
【0168】
実施例9に係るマンガン酸ビスマス粒子(BiMnO)は、構成要素A(Bi)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.5であった。
【0169】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、塩基性炭酸ビスマス(509.97g/mol)とを、モル比でMn:Bi=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が800℃であったこと以外、実施例1と同様にして、実施例9に係るマンガン酸ビスマス粒子(BiMnO)が得られた。
【0170】
次に、実施例9に係る近赤外線透過材料は、実施例9に係るマンガン酸ビスマス粒子(BiMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0171】
そして、実施例9に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例9に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0172】
(実施例10)
実施例10に係るマンガン酸化物は、構成要素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMnO)である。
【0173】
実施例10に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成要素A(Y)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.0であった。
【0174】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例10に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMnO)が得られた。
【0175】
次に、実施例10に係る近赤外線透過材料は、実施例10に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0176】
そして、実施例10に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例10に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0177】
(実施例11)
実施例11に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLaであるマンガン酸ランタン粒子(LaMnO)である。
【0178】
実施例11に係るマンガン酸ランタン粒子(LaMnO)は、構成要素A(La)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.0であった。
【0179】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸ランタン(457.84g/mol)とを、モル比でMn:La=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例11に係るマンガン酸ランタン粒子(LaMnO)が得られた。
【0180】
次に、実施例11に係る近赤外線透過材料は、実施例11に係るマンガン酸ランタン粒子(LaMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0181】
そして、実施例11に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例11に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0182】
(実施例12)
実施例12に係るマンガン酸化物は、構成要素AがPrであるマンガン酸プラセオジム粒子(PrMnO)である。
【0183】
実施例12に係るマンガン酸プラセオジム粒子(PrMnO)は、構成要素A(Pr)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.0であった。
【0184】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化プラセオジム(1021.44g/mol)とを、モル比でMn:Pr=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例12に係るマンガン酸プラセオジム粒子(PrMnO)が得られた。
【0185】
次に、実施例12に係る近赤外線透過材料は、実施例12に係るマンガン酸プラセオジム粒子(PrMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0186】
そして、実施例12に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例12に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0187】
(実施例13)
実施例13に係るマンガン酸化物は、構成要素AがNdであるマンガン酸ネオジム粒子(NdMnO)である。
【0188】
実施例13に係るマンガン酸ネオジム粒子(NdMnO)は、構成要素A(Nd)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.0であった。
【0189】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸ネオジム八水和物(612.62g/mol)とを、モル比でMn:Nd=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例13に係るマンガン酸ネオジム粒子(NdMnO)が得られた。
【0190】
次に、実施例13に係る近赤外線透過材料は、実施例13に係るマンガン酸ネオジム粒子(NdMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0191】
そして、実施例13に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例13に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0192】
(実施例14)
実施例14に係るマンガン酸化物は、構成要素AがFeであるマンガン酸鉄粒子(FeMnO)である。
【0193】
実施例14に係るマンガン酸鉄粒子(FeMnO)は、構成要素A(Fe)のモル数が2mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.7、Mn/(A+Mn)のモル比が0.3、及びA/Mnのモル比が2.0であった。
【0194】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化鉄(III)(159.69g/mol)とを、モル比でMn:Fe=0.50:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例14に係るマンガン酸鉄粒子(FeMnO)が得られた。
【0195】
次に、実施例14に係る近赤外線透過材料は、実施例14に係るマンガン酸鉄粒子(FeMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0196】
そして、実施例14に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、塗実施例14に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0197】
(実施例15)
実施例15に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0198】
実施例15に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成要素A(Li)のモル数が0.001mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.001mol、A/(A+Mn)のモル比が0.001、Mn/(A+Mn)のモル比が0.999、及びA/Mnのモル比が0.001であった。
【0199】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:0.001となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実施例1と同様にして、実施例15に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)が得られた。
【0200】
次に、実施例15に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例15に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例15に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0201】
(実施例16)
実施例16に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0202】
実施例16に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成要素A(Li)のモル数が0.012mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.012mol、A/(A+Mn)のモル比が0.012、Mn/(A+Mn)のモル比が0.988、A/Mnのモル比が0.012であった。
【0203】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:0.012となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実施例1と同様にして、実施例16に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)が得られた。
【0204】
次に、実施例16に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例16に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例16に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0205】
(実施例17)
実施例17に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0206】
実施例17に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成要素A(Li)のモル数が0.1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.1mol、A/(A+Mn)のモル比が0.09、Mn/(A+Mn)のモル比が0.91、A/Mnのモル比が0.1であった。
【0207】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実施例1と同様にして、実施例17に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)が得られた。
【0208】
次に、実施例17に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例17に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例17に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0209】
(実施例18)
実施例18に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0210】
実施例18に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成要素A(Li)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.33、Mn/(A+Mn)のモル比が0.67、A/Mnのモル比が0.5であった。
【0211】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実施例1と同様にして、実施例18に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)が得られた。
【0212】
次に、実施例18に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例18に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例18に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0213】
(実施例19)
実施例19に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0214】
実施例19に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成要素A(Li)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.50、Mn/(A+Mn)のモル比が0.50、A/Mnのモル比が1であった。
【0215】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実施例1と同様にして、実施例19に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)が得られた。
【0216】
次に、実施例19に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例19に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例19に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0217】
(実施例20)
実施例20に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0218】
実施例20に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成要素A(Li)のモル数が1.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.60、Mn/(A+Mn)のモル比が0.40、A/Mnのモル比が1.5であった。
【0219】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:1.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実施例1と同様にして、実施例20に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)が得られた。
【0220】
次に、実施例20に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例20に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例20に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0221】
(実施例21)
実施例21に係るマンガン酸化物は、構成要素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0222】
実施例21に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成要素A(Y)のモル数が0.1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.1mol、A/(A+Mn)のモル比が0.1、Mn/(A+Mn)のモル比が0.9、及びA/Mnのモル比が0.1であった。
【0223】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例21に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)が得られた。
【0224】
次に、実施例21に係る近赤外線透過材料は、実施例21に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0225】
そして、実施例21に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例21に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0226】
(実施例22)
実施例22に係るマンガン酸化物は、構成要素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0227】
実施例22に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成要素A(Y)のモル数が0.4mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.4mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.4であった。
【0228】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.40となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例22に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)が得られた。
【0229】
次に、実施例22に係る近赤外線透過材料は、実施例22に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0230】
そして、実施例22に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例22に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0231】
(実施例23)
実施例23に係るマンガン酸化物は、構成要素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0232】
実施例23に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成要素A(Y)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.5であった。
【0233】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例23に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)が得られた。
【0234】
次に、実施例23に係る近赤外線透過材料は、実施例23に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0235】
そして、実施例23に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例23に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0236】
(実施例24)
実施例24に係るマンガン酸化物は、構成要素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0237】
実施例24に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成要素A(Y)のモル数が0.6mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.6mol、A/(A+Mn)のモル比が0.4、Mn/(A+Mn)のモル比が0.6、及びA/Mnのモル比が0.6であった。
【0238】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.60となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例24に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)が得られた。
【0239】
次に、実施例24に係る近赤外線透過材料は、実施例24に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0240】
そして、実施例24に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例24に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0241】
(実施例25)
実施例25に係るマンガン酸化物は、構成要素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0242】
実施例25に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成要素A(Y)のモル数が0.75mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.75mol、A/(A+Mn)のモル比が0.43、Mn/(A+Mn)のモル比が0.57、A/Mnのモル比が0.75であった。
【0243】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.75となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例25に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)が得られた。
【0244】
次に、実施例25に係る近赤外線透過材料は、実施例25に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0245】
そして、実施例25に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例25に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0246】
(実施例26)
実施例26に係るマンガン酸化物は、構成要素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0247】
実施例26に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成要素A(Y)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.0であった。
【0248】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例26に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)が得られた。
【0249】
次に、実施例26に係る近赤外線透過材料は、実施例26に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0250】
そして、実施例26に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例26に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0251】
(実施例27)
実施例27に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLi、Tiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)である。
【0252】
実施例27に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)は、構成要素A(Li、Ti)のモル数が1.1mol、Mnのモル数が1.9mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.4、Mn/(A+Mn)のモル比が0.6、A/Mnのモル比が0.58であった。
【0253】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化チタン(79.87g/mol)とを、モル比でMn:Li:Ti:=1.90:1.00:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例27に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)得られた。
【0254】
次に、実施例27に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例27に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例27に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0255】
(実施例28)
実施例28に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLi、Tiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)である。
【0256】
実施例28に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)は、構成要素A(Li、Ti)のモル数が1.5mol、Mnのモル数が1.5mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.00であった。
【0257】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化チタン(79.87g/mol)とを、モル比でMn:Li:Ti:=1.50:1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例28に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)得られた。
【0258】
次に、実施例28に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例28に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例28に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0259】
(実施例29)
実施例29に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLi、Yであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)である。
【0260】
実施例29に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)は、構成要素A(Li、Y)のモル数が1.1mol、Mnのモル数が1.9mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.4、Mn/(A+Mn)のモル比が0.6、及びA/Mnのモル比が0.58であった。
【0261】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y=1.90:1.00:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例29に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)得られた。
【0262】
次に、実施例29に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例29に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例29に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0263】
(実施例30)
実施例30に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLi、Yであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)である。
【0264】
実施例30に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)は、構成要素A(Li、Y)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1.5mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0265】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y=1.50:1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例30に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)得られた。
【0266】
次に、実施例30に係る近赤外線透過材料は、実施例1と同様にして、得られた。そして、実施例30に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例30に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0267】
(実施例31)
実施例31に係るマンガン酸化物は、構成要素AがY、Tiであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)である。
【0268】
実施例31に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、構成要素A(Y、Ti)のモル数が1.1mol、Mnのモル数が0.9mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.55、Mn/(A+Mn)のモル比が0.45、及びA/Mnのモル比が1.22であった。
【0269】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol):1molと、酸化チタン(79.87g/mol)とを、モル比でMn:Y:Ti=0.90:1.00:0.1となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例31に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)が得られた。
【0270】
次に、実施例31に係る近赤外線透過材料は、実施例31に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0271】
そして、実施例31に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例31に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0272】
(実施例32)
実施例32に係るマンガン酸化物は、構成要素AがY、Tiであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)である。
【0273】
実施例32に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、構成要素A(Y、Ti)のモル数が1.3mol、Mnのモル数が0.7mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.65、Mn/(A+Mn)のモル比が0.35、及びA/Mnのモル比が1.86であった。
【0274】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y=1.70:1.00:0.30となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例33に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)が得られた。
【0275】
次に、実施例32に係る近赤外線透過材料は、実施例32に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0276】
そして、実施例32に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例32に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0277】
(実施例33)
実施例33に係るマンガン酸化物は、構成要素AがY、Tiであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)である。
【0278】
実施例33に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、構成要素A(Y、Ti)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0279】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y=1.00:0.90:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例33に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)が得られた。
【0280】
次に、実施例33に係る近赤外線透過材料は、実施例33に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0281】
そして、実施例33に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例33に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0282】
(実施例34)
実施例34に係るマンガン酸化物は、構成要素AがY、Tiであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)である。
【0283】
実施例34に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、構成要素A(Y、Ti)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.00であった。
【0284】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y=1.00:0.70:0.30となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例34に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)が得られた。
【0285】
次に、実施例34に係る近赤外線透過材料は、実施例34に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0286】
そして、実施例34に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例34に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0287】
(実施例35)
実施例35に係るマンガン酸化物は、構成要素AがY、Znであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)である。
【0288】
実施例35に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、構成要素A(Y、Zn)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0289】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)とを、モル比でMn:Y:Zn=1.00:0.90:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例35に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)が得られた。
【0290】
次に、実施例35に係る近赤外線透過材料は、実施例35に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0291】
そして、実施例35に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例35に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0292】
(実施例36)
実施例36に係る構成要素AがY、Znであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)である。
【0293】
実施例36に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、構成要素A(Y、Zn)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0294】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)とを、モル比でMn:Y:Zn=1.00:0.90:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例36に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)が得られた。
【0295】
次に、実施例36に係る近赤外線透過材料は、実施例36に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0296】
そして、実施例36に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例36に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0297】
(実施例37)
実施例37に係る構成要素AがY、Znであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)である。
【0298】
実施例37に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、構成要素A(Y、Zn)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0299】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)とを、モル比でMn:Y:Zn=1.00:0.95:0.05となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例37に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)が得られた。
【0300】
次に、実施例37に係る近赤外線透過材料は、実施例38に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0301】
そして、実施例37に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例37に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0302】
(実施例38)
実施例38に係る構成要素AがY、Znであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)である。
【0303】
実施例38に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、構成要素A(Y、Zn)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0304】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)とを、モル比でMn:Y:Zn=1.00:0.70:0.30となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例38に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)が得られた。
【0305】
次に、実施例38に係る近赤外線透過材料は、実施例38に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0306】
そして、実施例38に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例38に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0307】
(実施例39)
実施例39に係るマンガン酸化物は、構成要素AがY、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Biであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-CaAlTiFeZnBi)である。
【0308】
実施例39に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-CaAlTiFeZnBi)は、構成要素A(Y、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Bi)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0309】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、炭酸カルシウム(100.09g/mol)と、水酸化アルミニウム(78.00g/mol)と、酸化チタン(79.87g/mol)と、酸化鉄(159.69g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)と、塩基性炭酸ビスマス(509.97g/mol)とを、モル比でMn:Y:Ca:Al:Ti:Fe:Zn:Bi=1.00:0.94:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が800℃で15時間焼成したこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例39に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-CaAlTiFeZnBi)が得られた。
【0310】
次に、実施例39に係る近赤外線透過材料は、実施例39に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-CaAlTiFeZnBi)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0311】
そして、実施例39に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例39に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0312】
(実施例40)
実施例40に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLi、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Biであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-CaAlTiFeZnBi)である。
【0313】
実施例40に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-CaAlTiFeZnBi)は、構成要素A(Li、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Bi)のモル数が1mol、Mnのモル数が2mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.33、Mn/(A+Mn)のモル比が0.67、A/Mnのモル比が0.5であった。
【0314】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、炭酸カルシウム(100.09g/mol)と、水酸化アルミニウム(78.00g/mol)と、酸化チタン(79.87g/mol)と、酸化鉄(159.69g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)と、塩基性炭酸ビスマス(509.97g/mol)とを、モル比でMn:Li:Ca:Al:Ti:Fe:Zn:Bi=1.00:0.94:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が800℃で15時間焼成したこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例40に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-CaAlTiFeZnBi)が得られた。
【0315】
次に、実施例40に係る近赤外線透過材料は、実施例40に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-CaAlTiFeZnBi)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0316】
そして、実施例40に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例40に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0317】
(実施例41)
実施例41に係るマンガン酸化物は、構成要素AがLi、Y、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Biであるマンガン酸リチウムイットリウム粒子(LYMO-CaAlTiFeZnBi)である。
【0318】
実施例41に係るマンガン酸リチウムイットリウム粒子(LYMO-CaAlTiFeZnBi)は、構成要素A(Li、Y、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Bi)のモル数が1.06mol、Mnのモル数が0.94mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.53、Mn/(A+Mn)のモル比が0.47、及びA/Mnのモル比が1.13であった。
【0319】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、炭酸カルシウム(100.09g/mol)と、水酸化アルミニウム(78.00g/mol)と、酸化チタン(79.87g/mol)と、酸化鉄(159.69g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)と、塩基性炭酸ビスマス(509.97g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y:Ca:Al:Ti:Fe:Zn:Bi=0.94:0.50:0.50:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が800℃で15時間焼成したこと、(iii)実施例2の粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、実施例41に係るマンガン酸リチウムイットリウム粒子(LYMO-CaAlTiFeZnBi)が得られた。
【0320】
次に、実施例41に係る近赤外線透過材料は、実施例41に係るマンガン酸リチウムイットリウム粒子(LYMO-CaAlTiFeZnBi)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0321】
そして、実施例41に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、実施例41に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0322】
(比較例1)
比較例1は、一次粒子径が35nmであり、且つ二次粒子径が140nmである酸化チタンの凝集体(7質量部)に対して、透明樹脂(アクリルポリオール;100質量部)、及び硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート;20質量部)を配合し、溶融混合することにより、比較例1に係る酸化チタン混合物を得た。
【0323】
(比較例2)
比較例2は、一次粒子径が15nmでありBET比表面積が120m2/gの単一の黒色顔料であるカーボンブラックを用いた。具体的には、当該カーボンブラックの凝集体(20質量部)に対して、透明樹脂(メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体;100質量部)、及びPGMEA(120質量部)となるように、3本ロールで配合・混練することにより、比較例2に係るカーボンブラック混合物を得た。
【0324】
(比較例3)
比較例3は、四三酸化マンガンのみからなる酸化マンガン混合物である。
【0325】
比較例3に係るマンガン酸粒子のMnのモル数が1molと、A+Mnのモル数が1molと、A/(A+Mn)のモル比が0.0と、Mn/(A+Mn)のモル比が1.0と、A/Mnのモル比が0.0であった。
【0326】
具体的には、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)のみからなること、(ii)原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実施例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、比較例3に係るマンガン酸粒子が得られた。
【0327】
次に、比較例3に係る酸化マンガン混合物は、比較例3に係るマンガン酸粒子7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実施例1と同様にして、得られた。
【0328】
そして、比較例3に係る酸化マンガン混合物の塗膜の形成は、実施例1と同様にして、比較例3に係る酸化マンガン混合物膜(膜厚5μm)を得た。
【0329】
そして、実施例1~41に係る近赤外線透過材料、比較例1に係る酸化チタン混合物、比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物について、次のような物性を測定した。以下、測定した物性値、及びその物性値の測定方法を示すとともに、測定結果を
図1~16に示す。
【0330】
〈元素分析〉
試料の組成(原子比)は、マルチタイプ ICP 発光分光分析装置であるICP-OES(Inductivity Coupled Plasma Optical Emission Spectrometry)を用いて分析した。分析に用いたICP-OES装置として、アジレント・テクノロジー株式会社製ICP-OES(700シリーズ)を用いた。
【0331】
〈レーザ回折・散乱法〉
粒子の粒度分布の評価は、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製:MT3300EXII)を用いて、JIS Z 8825:2013に準じたレーザ回折・散乱法により行った。また、フィルタリングは行なわず、試料を、超音波出力40Wで、3分間に亘って超音波処理をした後、測定した。ここで、実施例1~41に係る近赤外線透過材料は、近赤外線透過材料用粒子であるマンガン酸化物粒子と分散体とが混合されており、そのままでは粒度分布の評価を行うことができないため、分散体と混合される前のマンガン酸化物粒子を用いて、粒度分布の評価を行った。なお、D50は体積分率にして50%に至る粒子径を示す。
【0332】
具体的には、スラリー状の試料を、測定装置に設けられた試料循環器の試料投入口に、当該測定装置が測定可能範囲内であると判定するまで投入した後、当該測定装置内蔵の超音波分散処理(超音波出力40W、3分間)を行い、表示が安定したことを確認後、測定を行った。他方、比較例1に係る酸化チタン混合物、比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物も同様に測定した。
【0333】
〈粒子径測定〉
実施例1~41に係る近赤外線透過材料に含まれるマンガン酸化物粒子の二次粒子径の平均値の測定は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)(株式会社日立ハイテクサイセンス製:S-4800)にて撮影された粒子画像を解析して算出した。
【0334】
具体的には、20個の二次粒子の水平フェレ径を測定し、その個数平均値を二次粒子径の平均値とした。実施例1~41に係る近赤外線透過材料は、近赤外線透過材料用粒子であるマンガン酸化物粒子と分散体とが混合されたものであることから、分散体と混合される前のマンガン酸化物粒子を、加速電圧1kVの条件下で、SEM観察し、FE-SEMを用いて直接測定した。他方、比較例1に係る酸化チタン混合物、及び比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物も同様に測定した。
【0335】
〈比表面積(SSA)〉
比表面積(SSA)は、株式会社マウンテック製の「Macsorb(HM model-1201)を用いて、JIS R 1626-1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法)の「6.2 流動法の(3.5)一点法」に準拠して測定を行った。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスである窒素の混合ガスを使用した。また、キャリブレーションには、窒素ガスを使用した。ここで、実施例1~41に係る近赤外線透過材料は、近赤外線透過材料用粒子であるマンガン酸化物粒子と分散体とが混合されており、そのままでは比表面積(SSA)を測定することができないため、分散体と混合される前のマンガン酸化物粒子を用いて、比表面積(SSA)を測定した。他方、比較例1に係る酸化チタン混合物、及び比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物も同様に測定した。
【0336】
〈反射率測定〉
実施例1~41に係る近赤外線透過材料に含まれるマンガン酸化物粒子、比較例1に係る酸化チタン混合物、及び比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物を充填した各サンプルの反射率の測定は、60mmφ積分球ユニットを取り付けた分光光度計(株式会社日立ハイテクサイセンス製:紫外可視近赤外分光光度計UH4150形)を用いて、波長550nmの反射率を測定した。ここで、実施例1~41に係る近赤外線透過材料は、近赤外線透過材料用粒子であるマンガン酸化物粒子と分散体とが混合されており、そのままでは反射率を測定することができないため、分散体と混合される前のマンガン酸化物粒子を用いて、反射率を測定した。他方、比較例1に係る酸化チタン混合物、及び比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物も同様に測定した。
【0337】
〈L*a*b*測定〉
上述した通り、実施例1~41に係る近赤外線透過材料をPET製のフィルム(東レ株式会社製「ルミラー(登録商標)」:#100-T60)上にバーコーター(No.10)を用いて塗布し、形成した実施例1、3~41では膜厚5μm、実施例2では膜厚9μmの塗膜試料に対し、色彩色差計(コニカミノルタ社製:CR-300)を用い、JIS Z 8722:2009に準拠して、CIE1976(L*a*b*)色空間におけるL*、a*、b*の値を求めた。なお、L*の値は明度を示し、a*の値(正の値は赤寄り、負の値は緑寄り)及びb*の値(正の値は黄寄り、負の値は青寄り)は色度を示す。他方、比較例1に係る酸化チタン混合物、及び比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物も同様に塗膜試料を作成し、測定を行った。
【0338】
〈透過率測定〉
実施例1~41に係る近赤外線透過材料を、PET製のフィルム(東レ株式会社製「ルミラー(登録商標)」:#100-T60)上に塗布し、生成した実施例1~41に係る近赤外線透過膜(サンプル)の透過率を、下記透過率測定条件に従って、分光光度計にて測定した。また、比較例1に係る酸化チタン混合物を、当該PET製のフィルム上に塗布し、生成した比較例1に係る酸化チタン混合物膜(サンプル)、比較例2に係るカーボンブラック混合物を、当該PET製のフィルム上に塗布し、生成した比較例2に係るカーボンブラック膜(サンプル)、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物を、当該PET製のフィルム上に塗布し、生成した比較例3に係る酸化マンガン混合物膜(サンプル)の透過率についても、下記透過率測定条件に従って、分光光度計にて測定した。
【0339】
=透過率測定条件=
・測定装置:紫外可視近赤外分光光度計UH4150形(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
・測定モード:波長スキャン
・データモード:%T(透過)
・測定波長範囲:400~2400nm
・スキャンスピード:600nm/min
・サンプリング間隔:2nm
【0340】
透過率測定条件に基づいて、測定して得られた透過率から、波長500nm、及び波長700nmにおける透過率、及び波長1000nm、及び波長2000nmにおける透過率を算出した。
【0341】
図1~8に示す通り、実施例1~41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料は、その構成元素がA-Mn-Oと表され、その構成元素Aが、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素であるものであると、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させることができるものであった。
【0342】
また、実施例1~41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料は、波長550nmの光の反射率が20%以下であるから、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させることができるものであった。
【0343】
さらに、実施例1~41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子の組成式を、AxMnyOzと表したとき、x/y=0.001以上2.00以下であると、波長1000nm付近から緩やかに透過性が向上し、波長2000nmの長波長領域で高い透過性を示した。
【0344】
図1、3、5、8に示す通り、実施例1~3、15~20、27~30、40、及び41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子は、その構成要素AがLiを含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率は高かった。また、実施例1~3、15~20、27~30、40、及び41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子の組成式を、AxMnyOzと表したとき、x/y=0.001以上2.00以下であると、波長1000nm付近から緩やかに透過性が向上し。波長2000nm付近の長波長領域で高い透過性を示した。
【0345】
図1、5、6、8に示す通り、実施例1~3、27~30、40、及び41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子は、その構成要素Aが、Liと、Mg、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Bi、Yのうちから選択される1種以上の元素と、を含むものであっても、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率は高かった。
【0346】
図1、5に示す通り、実施例1~3に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子は、その構成要素Aが、Liと、MgおよびまたはAlと、を含むものであると、近赤外線領域における透過率が一層向上した。
【0347】
図2、4、5、7、8に示す通り、実施例10、21~26、31~39、41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子は、その構成要素AがYを含むものであると、波長1000nm付近の低波長側から急峻に立ち上がり、以降、高い透過性を示した。また、実施例10、21~26、31~39、41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子の組成式を、AxMnyOzと表したとき、x/y=0.001以上2.00以下であると、可視光線領域での透過を抑制しつつ、近赤外線領域で透過性を示した。さらに、実施例10、22~26、31~39、41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子のXRDスペクトルにおける2θ=32.5~33.5°に現れる(112)面由来のピーク強度に対する2θ=35.5~36.5°に現れる(211)面由来のピーク強度の強度比(211)/(112)が2.50以下であると、黒色度が高かった(a
*、b
*が0に近い)。
【0348】
図7、8に示す通り、実施例31~39、41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子は、その構成要素Aが、Yと、Li、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Biのうちから選択される1種以上の元素と、を含むものであると、波長1000nm付近の低波長側から急峻に立ち上がり、以降、高い透過性を示した。
【0349】
図7に示す通り、実施例35~38に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子は、その構成要素Aが、Yと、Znと、を含むものであると、近赤外線領域における透過性がさらに高くなった。
【0350】
そして、
図2に示す実施例10に係る近赤外線透過材料(YMnO
3)を、
図7に示す実施例35に係る近赤外線透過材料(Y
1-XMnZn
XO
3:X=0.10)と比べると、Znが添加されることにより近赤外線領域の透過率が向上した(
図17を参照)。これは、Y
3+サイトの一部をZn
2+で置換することにより、Mn価数や酸素欠損量が変化し、近赤外線領域の透過性が向上したと推察される。また、実施例35に係る近赤外線透過材料に含まれるマンガン酸化物粒子を二段階粉砕処理した実施例36に係る近赤外線透過材料は、さらに近赤外線領域の透過率が向上した(
図17を参照)。
【0351】
図1~8に示す通り、実施例1~41に係るマンガン酸化物粒子のSEM観察による二次粒子径の平均値が、10nm以上20μm以下であると、近赤外線領域の透過率が向上した。
【0352】
また、実施例1~41に係るマンガン酸化物粒子のBET法により測定された比表面積が0.20m2/g以上であると、マンガン酸化物粒子の分散性が向上した。
【0353】
そして、
図1に示す通り、実施例1~3に係る近赤外線透過材料に含まれるマンガン酸化物粒子のSEM観察による二次粒子径の平均値や、レーザ回折・散乱法を用いた粒子径分布測定による積算体積50%である粒子径が小さく、且つBET法により測定された比表面積が大きいと、近赤外線領域の透過率が向上した。
【0354】
実施例1~41に係るマンガン酸化物粒子、近赤外線透過材料は、CIE1976で測定されたL*が45以下であると、見た目がより黒色となり、可視光線領域の透過率を低下させることができた。
【0355】
ここで、
図7に示すように、実施例26に係る近赤外線透過材料(A/Mnのモル比=1.0)に含まれるマンガン酸化物粒子は、YMnO
3単体であり、濃青色である。そこで、A/Mnのモル比を減らし補色である茶色のMn
3O
4を生成させ、実施例23~25に係る近赤外線透過材料のように、YMnO
3とMn
3O
4との混合物にすることにより、透過率を維持しつつ、可視光線領域の透過率を抑制、及び黒色化させることができる。
【0356】
図9~16に示す通り、実施例1~41に係る近赤外線透過材料は、波長700nm(可視光線領域)の透過率が30%以下であり、且つ波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%以上であって、前記波長700nm(可視光線領域)の透過率よりも大きいものであると、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させるものであった。
【0357】
また、実施例3、5、8~10、13、14、17、21~26、31~41に係る近赤外線透過材料は、波長700nm(可視光線領域)の透過率が30%以下であり、且つ波長1000nm、及び波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%以上であって、前記波長700nm(可視光線領域)の透過率よりも大きいものであると、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させるものであった。
【0358】
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0359】
本発明に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、近赤外線透過材料、及び近赤外線透過膜は、可視光線領域における透過率は低く、一方近赤外線領域における透過率が高いことから、赤外線センサ、赤外線カメラの光学フィルタなどの用途に好適である。
【要約】
本発明のマンガン酸化物は、構成元素が、A-Mn-Oと表されるマンガン酸化物であって、前記構成元素Aは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Fe、Ru、Co、Os、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、Br、Iのうちから選択される1種以上の元素である。