IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-窒化ホウ素焼結体及び複合体 図1
  • 特許-窒化ホウ素焼結体及び複合体 図2
  • 特許-窒化ホウ素焼結体及び複合体 図3
  • 特許-窒化ホウ素焼結体及び複合体 図4
  • 特許-窒化ホウ素焼結体及び複合体 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】窒化ホウ素焼結体及び複合体
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/583 20060101AFI20230731BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20230731BHJP
   C04B 41/83 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
C04B35/583
C04B38/00
C04B41/83 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023530059
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2022034233
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021148464
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦也
(72)【発明者】
【氏名】出川 亮
(72)【発明者】
【氏名】古賀 竜士
(72)【発明者】
【氏名】四方堂 真寿美
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-164775(JP,A)
【文献】特開2014-051409(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196496(WO,A1)
【文献】特開平02-212365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/583
C04B 38/00
C04B 41/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と、前記第1の主面の反対側の第2の主面を有し、
前記第1の主面及び前記第2の主面の少なくとも一方の主面が、網目模様を描く溝部を有し、
反り量が0.60mm以下であり、
熱伝導率が30W/mK以上である、窒化ホウ素焼結体。
【請求項2】
前記溝部が、平面視で第1の方向に延びる第1の溝部と前記第1の方向に対して略垂直な第2の方向に延びる第2の溝部とからなる請求項1に記載の窒化ホウ素焼結体。
【請求項3】
平面視で、隣接する前記第1の溝部間の距離及び隣接する前記第2の溝部間の距離が200~1000μmである請求項2に記載の窒化ホウ素焼結体。
【請求項4】
平面視で、前記第1の溝部の幅及び前記第2の溝部の幅が400~1500μmである請求項2に記載の窒化ホウ素焼結体。
【請求項5】
多孔体である請求項1~のいずれか1項に記載の窒化ホウ素焼結体。
【請求項6】
請求項に記載の窒化ホウ素焼結体と、前記窒化ホウ素焼結体の気孔を充填する樹脂とを含む複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は窒化ホウ素焼結体及びその窒化ホウ素焼結体を含む複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、LED照明装置、車載用パワーモジュール等に代表される電子機器の高性能化及び小型化に伴い、半導体デバイス実装、プリント配線板実装、及び装置実装の各階層において実装技術が急激に進歩している。そのため、電子機器内部の発熱密度は年々増加しており、使用時に発生する熱を如何に効率的に放熱するかが重要な課題である。そして、電子部材を固定するための熱伝導性絶縁接着シートには、絶縁性や接着性に加えて、従来にない高い熱伝導率が要求されている。
【0003】
上記の熱伝導性絶縁接着シートには、従来から、未硬化の状態(Aステージ)の熱硬化性樹脂に酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の熱伝導率の高いセラミックス粉末を分散させた後、各種コーターによる塗工等でシート状に成型し、加熱により熱硬化性樹脂を半硬化状態(Bステージ)とした熱硬化性樹脂組成物が用いられてきた。
【0004】
上記の熱伝導性絶縁接着シートは、金属回路や金属板等の電子部材に密着させた後、加熱することにより半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性樹脂を溶融させ、電子部材表面の凹凸に侵入させることで熱伝導性絶縁接着シートの電子部材に対する接着性を発現させ、さらに加熱することにより熱硬化性樹脂を完全に硬化した状態(Cステージ)とし、電子部材との間の接着を強固にしている。
【0005】
上記の熱伝導性絶縁接着シートは、金属回路や金属板等の電子部材との間に接着層(未硬化の状態(Aステージ)の熱硬化性樹脂又は未硬化の状態(Aステージ)の熱硬化性樹脂中にセラミックス粉末を分散させたもの)を形成する必要がないことから、塗工作業や精密な塗布装置の導入が不要であり、ユーザーによる作業が非常に簡便になることから、広く利用されている。
【0006】
特許文献1では、金属ベース回路基板において、半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性樹脂中にセラミックス粉末を分散させた熱伝導性絶縁接着シート上に金属箔を配置した状態で、熱伝導性絶縁接着シートに含有される熱硬化性樹脂を硬化してCステージにすることによって、放熱性に優れた金属ベース回路基板を簡便な方法で得ることを可能にしている。
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1の発明においては、セラミックス粉末の各粒子間に熱伝導率の低い熱硬化性樹脂層が存在することから、回路基板において高い熱伝導率を得ることには限界があった。そのため、近年ますます困難になる電子機器の熱設計要求において、放熱性の面で課題があった。
【0008】
特許文献1に記載のメタルベース基板の熱伝導性を改善する方法として、例えば、非酸化物セラミックス一次粒子が3次元的に連続する一体構造をなしている焼結体に、熱硬化性樹脂組成物を含浸しているセラミックス樹脂複合体を用いた熱伝導性絶縁接着シート(例えば、特許文献2参照)を使用して、メタルベース板の片面に金属箔を貼り合わせることが考えられる。この熱伝導性絶縁接着シートは、非酸化物セラミックスが連続したネットワークを構成するので、熱伝導率をさらに高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-49062号公報
【文献】国際公開2017/155110号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2に記載のセラミックス樹脂複合体に用いられる焼結体は、非酸化物セラミックス粉末と焼結助剤を混合して得られた混合粉末を、金型を用いてブロック状にプレス成形してブロック成形体を作製し、得られたブロック成形体をCIP(冷間等方圧加圧法)装置により処理を行った後、焼結させることで作製される。このため、シート状のセラミックス樹脂複合体を得るためには、焼結体に樹脂を含浸させた後、焼結体を、ワイヤーソーなどを使用してシート状に加工する必要があった。その結果、シート状のセラミックス樹脂複合体の製造コストが高くなっていた。
【0011】
焼結体をシート状に加工しなくてもシート状の焼結体を得る方法としては、例えば、セラミックス焼結体の原料をシート状に成形して得られたシート状成形体を焼成する方法がある。しかし、この方法で得られたシート状焼結体の熱伝導率が低くかったり、シート状焼結体に大きな反りが発生したりする場合があった。
【0012】
そこで、本発明は、熱伝導率が高く、反りが小さい窒化ホウ素焼結体及びその窒化ホウ素焼結体を含む複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究を進めたところ、窒化ホウ素焼結体が表面に所定の模様の溝を備えることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下を要旨とする。
[1]第1の主面と、前記第1の主面の反対側の第2の主面を有し、前記第1の主面及び前記第2の主面の少なくとも一方の主面が、網目模様を描く溝部を有する窒化ホウ素焼結体。
[2]前記溝部が、平面視で第1の方向に延びる第1の溝部と前記第1の方向に対して略垂直な第2の方向に延びる第2の溝部とからなる上記[1]に記載の窒化ホウ素焼結体。
[3]平面視で、隣接する前記第1の溝部間の距離及び隣接する前記第2の溝部間の距離が200~1000μmである上記[2]に記載の窒化ホウ素焼結体。
[4]平面視で、前記第1の溝部の幅及び前記第2の溝部の幅が400~1500μmである上記[2]又は[3]に記載の窒化ホウ素焼結体。
[5]反り量が0.60mm以下であり、熱伝導率が30W/mK以上である上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の窒化ホウ素焼結体。
[6]多孔体である上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の窒化ホウ素焼結体。
[7]上記[6]に記載の窒化ホウ素焼結体と、前記窒化ホウ素焼結体の気孔を充填する樹脂とを含む複合体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱伝導率が高く、反りが小さい窒化ホウ素焼結体及びその窒化ホウ素焼結体を含む複合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の一部を拡大した斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の製造方法におけるセッターの上に配置したシート状成形体を焼成する工程を説明するための図である。
図3図3(a)~(b)は、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の製造方法で使用するメッシュ状窒化ホウ素シートの一例を示す図である。
図4図4(a)~(c)は、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の製造方法で使用するメッシュ状窒化ホウ素シートの一例の製造方法を説明するための図である。
図5図5は、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の変形例の製造方法におけるセッターの上に配置したシート状成形体を焼成する工程を説明するための図である
【発明を実施するための形態】
【0016】
[窒化ホウ素焼結体]
図を参照して、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体を説明する。図1は、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の一部を拡大した斜視図である。図1に示すように、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1は第1の主面2と、第1の主面2の反対側の第2の主面3を有し、第1の主面2が、網目模様を描く溝部1a,1bを有する。これにより、窒化ホウ素焼結体1の表面に生じる、窒化ホウ素焼結体1を反らせようとする応力が、網目模様を描く溝部1a,1bにより緩和されるので、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の反り量は小さくなり、熱伝導率は高くなる。
【0017】
例えば、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の第1の主面2が、網目模様を描く溝部1a,1bを有する場合、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の反り量は、好ましくは0.60mm以下であり、より好ましくは0.56mm以下であり、さらに好ましくは0.52mm以下であり、よりさらに好ましくは0.40mm以下であり、よりさらに好ましくは30mm以下である。本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の反り量の範囲の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.06mmであり、より好ましくは0.07mmであり、さらに好ましくは0.08mmである。また、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の第1の主面2が、網目模様を描く溝部1a,1bを有する場合、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の熱伝導率は、例えば、30W/mK以上であり、好ましくは45W/mK以上であり、より好ましくは60W/mK以上であり、よりさらに好ましくは65W/mK以上である。本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の熱伝導率の範囲の上限値は、特に限定されないが、通常76W/mKである。本発明の窒化ホウ素焼結体の反り量及び熱伝導率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0018】
本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1において、溝部1a,1bは、平面視で第1の方向(X方向)に延びる第1の溝部1aと第1の方向(X方向)に対して略垂直な第2の方向(Y方向)に延びる第2の溝部1bとからなることが好ましい。これにより、窒化ホウ素焼結体1の表面に生じる、窒化ホウ素焼結体1を反らせようとする応力が、溝部1a,1bによってさらに緩和されるので、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の反り量はさらに小さくなり、熱伝導率はさらに高くなる。なお、略垂直は垂直であってよく、90°±5°であってよい。
【0019】
本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1において、平面視で、隣接する第1の溝部1a間の距離(D10)及び隣接する第2の溝部1b間の距離(D20)は、好ましくは200~1000μmである。隣接する第1の溝部1a間の距離(D10)及び隣接する第2の溝部1b間の距離(D20)が200~1000μmであると、窒化ホウ素焼結体1の表面に生じる、窒化ホウ素焼結体1を反らせようとする応力が、溝部1a,1bによってさらに緩和されるので、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の反り量はさらに小さくなり、熱伝導率はさらに高くなる。このような観点から、隣接する第1の溝部1a間の距離(D10)及び隣接する第2の溝部1b間の距離(D20)は、より好ましくは220~800μmであり、さらに好ましくは250~500μmである。なお、隣接する第1の溝部1a間の距離(D10)及び隣接する第2の溝部1b間の距離(D20)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。隣接する第1の溝部1a間の距離(D10)及び隣接する第2の溝部1b間の距離(D20)は、いずれも全て同じ値に調整される必要はなく、上記範囲内にあればよい。
【0020】
本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1において、平面視で、第1の溝部1aの幅(W10)及び第2の溝部1bの幅(W20)は、好ましくは400~1500μmである。第1の溝部1aの幅(W10)及び第2の溝部1bの幅(W20)が400~1500μmであると、窒化ホウ素焼結体1の表面に生じる、窒化ホウ素焼結体1を反らせようとする応力が、溝部1a,1bによってさらに緩和されるので、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の反り量はさらに小さくなり、熱伝導率はさらに高くなる。このような観点から、第1の溝部1aの幅(W10)及び第2の溝部1bの幅(W20)は、より好ましくは500~1300μmであり、さらに好ましくは600~1200μmである。なお、第1の溝部1aの幅(W10)及び第2の溝部1bの幅(W20)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1の溝部1aの幅(W10)及び第2の溝部1bの幅(W20)は、いずれも全て同じ値に調整される必要はなく、上記範囲内にあればよい。
【0021】
本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1において、第1の溝部1aの深さ(H10)及び第2の溝部1bの深さ(H20)は、好ましくは5~30μmである。第1の溝部1aの深さ(H10)及び第2の溝部1bの深さ(H20)が5~30μmであると、窒化ホウ素焼結体1の表面に生じる、窒化ホウ素焼結体1を反らせようとする応力が、溝部1a,1bによってさらに緩和されるので、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の反り量はさらに小さくなり、熱伝導率はさらに高くなる。このような観点から、第1の溝部1aの深さ(H10)及び第2の溝部1bの深さ(H20)は、より好ましくは7~25μmであり、さらに好ましくは10~20μmである。なお、第1の溝部1aの深さ(H10)及び第2の溝部1bの深さ(H20)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1の溝部1aの深さ(H10)及び第2の溝部1bの深さ(H20)は、いずれも全て同じ値に調整される必要はなく、上記範囲内にあればよい。
【0022】
本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1は、シート状(薄板形状)であることが好ましい。本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の厚み(T)は、2mm未満であることが好ましい。これにより、電子部品等の部材として用いられたときに電子部品等の小型化を図ることができる。このような観点から、窒化ホウ素焼結体1の厚み(T)は、1mm未満であってよく、0.5mm未満であってもよい。成形体作製の容易性の観点から、窒化ホウ素焼結体1の厚み(T)は、0.1mm以上であってよく、0.2mm以上であってもよい。本発明によれば、薄いシート状であっても、反り量を抑えつつ熱伝導性を高めることができる。
【0023】
本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1は、緻密な焼結体であってもよい。しかし、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1に樹脂組成物を含浸させて、窒化ホウ素焼結体1同士を直接貼り合わせたり、窒化ホウ素焼結体1と金属箔とを直接貼り合わせたりするようにできるようにするため、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体は多孔体であることが好ましい。本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1が多孔体である場合、例えば、樹脂組成物を本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1に塗布することにより、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1に樹脂組成物を含浸させることができる。
【0024】
本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1に含まれる気孔の平均細孔径は4.0μm未満であってよい。気孔のサイズを小さくすることによって、窒化ホウ素粒子の一次粒子同士の接触面積を十分に大きくすることができる。したがって、熱伝導率を一層高くすることができる。熱伝導率を一層高くする観点から、気孔の平均細孔径は、3.8μm未満であってよく、3μm未満であってよい。本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1への樹脂組成物の含浸を円滑にする観点から、気孔の平均細孔径は、0.1μm以上であってよく、0.2μm以上であってもよく、2.75μm以上であってもよい。
【0025】
気孔の平均細孔径は、水銀ポロシメーターを用い、0.0042MPaから206.8MPaまで圧力を増やしながら加圧したときの細孔径分布に基づいて求められる。横軸を細孔径、縦軸を累積細孔容積としたときに、累積細孔容積が全細孔容積の50%に達するときの細孔径が平均細孔径である。水銀ポロシメーターとしては、島津製作所製のものを用いることができる。
【0026】
本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の気孔率、すなわち、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1における気孔の体積比率は、30~65体積%であってよく、30~60体積%であってよく、35~55体積%であってよい。気孔率が大きくなり過ぎると窒化ホウ素焼結体の強度が低下する傾向にある。一方、気孔率が小さくなり過ぎると質量が重くなる傾向にある。
【0027】
気孔率は、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の体積及び質量から、かさ密度[B(kg/m)]を算出し、このかさ密度と窒化ホウ素の理論密度[2280(kg/m)]とから、下記式によって求めることができる。
気孔率(体積%)=[1-(B/2280)]×100
【0028】
かさ密度Bは、800~1500kg/mであってよく、850~1400kg/mであってよく、900~1300kg/mであってもよい。かさ密度Bが大きくなり過ぎると本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の質量が増加する傾向にある。一方、かさ密度Bが小さくなり過ぎると本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体1の強度が低下する傾向にある。
【0029】
[窒化ホウ素焼結体の製造方法]
本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体は、例えば、以下の本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の製造方法によって、製造することができる。なお、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の製造方法は、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体を製造することができれば、以下の本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の製造方法に限定されない。本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の製造方法は、窒化ホウ素焼結体の原料のシート状成形体を作製する工程(A)及びセッターの上に配置したシート状成形体を焼成する工程(B)を含む。以下、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の製造方法の各工程を詳細に説明する。
【0030】
(工程(A))
工程(A)では、窒化ホウ素焼結体の原料のシート状成形体を作製する。窒化ホウ素焼結体の原料は、焼成して窒化ホウ素焼結体を作製できる原料であれば特に限定されない。窒化ホウ素焼結体の原料には、例えば、炭窒化ホウ素(BCN)が挙げられる。炭化ホウ素粉末は、例えば、以下の手順で調製することができる。なお、以下の手順で調製した炭窒化ホウ素の代わりに、市販の炭窒化ホウ素粉末を用いてもよい。
【0031】
ホウ酸とアセチレンブラックとを混合したのち、不活性ガス雰囲気中、1800~2400℃にて、1~10時間加熱し、炭化ホウ素塊を得る。この炭化ホウ素塊を、粉砕し、洗浄、不純物除去、及び乾燥を行って炭化ホウ素粉末を調製する。炭化ホウ素粉末を、窒素雰囲気下で加熱して炭窒化ホウ素(BCN)粉末を得る。この窒化処理における加熱温度は、1800℃以上であってよく、1900℃以上であってもよい。また、この窒化処理における加熱温度は、2400℃以下であってよく、2200℃以下であってもよい。この窒化処理における加熱温度は、例えば、1800~2400℃であってよい。
【0032】
窒化処理における圧力は、0.6MPa以上であってよく、0.7MPa以上であってもよい。また、この窒化処理における圧力は、1.0MPa以下であってよく、0.9MPa以下であってもよい。この窒化処理における圧力は、例えば、0.6~1.0MPaであってよい。この窒化処理における圧力が低すぎると、炭化ホウ素の窒化が進行し難くなる傾向がある。一方、この窒化処理における圧力が高すぎると、製造コストが上昇する傾向にある。なお、本開示における圧力は絶対圧である。
【0033】
窒化処理における窒素雰囲気の窒素ガス濃度は95体積%以上であってよく、99.9体積%以上であってもよい。窒素の分圧は、上述の圧力範囲であってよい。窒化処理における加熱時間は、窒化が十分進む範囲であれば特に限定されず、例えば6~30時間であってよく、8~20時間であってもよい。
【0034】
窒化処理で得られた炭窒化ホウ素粉末に焼結助剤を配合してもよい。焼結助剤は、ホウ素化合物及びカルシウム化合物を含んでよい。配合量は、炭窒化ホウ素粉末100質量部に対してホウ素化合物及びカルシウム化合物を合計で1~30質量部であってもよい。このような配合量とすることによって、一次粒子の過剰な粒成長を抑制しつつ、適度に粒成長させて焼結を促進し、窒化ホウ素の一次粒子同士が強固にかつ広域にわたって密接に結合する。
【0035】
焼結助剤が、ホウ素化合物及びカルシウム化合物を含む場合、窒化ホウ素の一次粒子を十分に結合させる観点から、焼成物中の焼結助剤のホウ素化合物及びカルシウム化合物の含有量は、焼成物100質量部に対してホウ素化合物及びカルシウム化合物を合計で、例えば1~30質量部含んでよく、5~25質量部含んでよく、8~20質量部含んでもよい。
【0036】
炭窒化ホウ素粉末に焼結助剤を配合して得られた配合物は、ホウ素化合物を構成するホウ素100原子%に対して、カルシウム化合物を構成するカルシウムを0.5~40原子%含んでよく、0.7~30原子%含んでもよい。このような比率でホウ素及びカルシウムを含有することによって、一次粒子の均質な粒成長を促進して窒化ホウ素焼結体の熱伝導率を一層高くすることができる。
【0037】
ホウ素化合物としては、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ砂等が挙げられる。カルシウム化合物としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム等が挙げられる。焼結助剤は、ホウ酸及び炭酸カルシウム以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩が挙げられる。また、成形性向上のため、配合物にバインダーを配合してもよい。バインダーとしては、アクリル化合物等が挙げられる。
【0038】
炭窒化ホウ素粉末及び焼結助剤の配合に際し、一般的な粉砕機又は解砕機を用いて粉砕を行ってもよい。例えば、ボールミル、ヘンシェルミキサー、振動ミル、ジェットミル等を用いることができる。なお、本開示においては、「粉砕」には「解砕」も含まれる。炭窒化ホウ素粉末を粉砕した後に焼結助剤を配合してもよいし、炭窒化ホウ素粉末と焼結助剤とを配合した後に、粉砕及び混合と同時に焼結助剤を配合してもよい。
【0039】
配合物は粉末プレス又は金型成形を行ってシート状成形体としてもよいし、ドクターブレード法又は押出法によって、シート状成形体としてもよい。押出法によって配合物をシート状成形体へ成形する場合、成形圧力は、例えば5~350MPaであってよい。シート状成形体は、例えば、厚みが2mm未満のシート状であってよい。シート状成形体を用いて窒化ホウ素焼結体を製造すれば、切断面のない窒化ホウ素焼結体を製造することができる。また、ブロック状の窒化ホウ素焼結体及び複合体を切断してシート状とする場合に比べて、成形体の段階からシート状にすることによって、加工による材料ロスを低減することができる。したがって、高い歩留まりでシート状の窒化ホウ素焼結体、及び窒化ホウ素焼結体と樹脂との複合体を製造することができる。
【0040】
(工程(B))
工程(B)では、セッターの上に配置したシート状成形体を焼成する。例えば、シート状成形体を電気炉中で加熱して焼成する。セッターは、被焼成物を載せる容器的な機能を有する道具材である。セッターの材質には、例えば、アルミナ、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの材質の中で、シート成形体への不純物混入を抑制する観点から窒化ホウ素が好ましい。セッターの形状は、通常、薄肉角型状の形状である。しかし、被焼成物の形状により、セッターの形状は、薄肉角型状の形状から適宜、変更することができる。
【0041】
焼成温度は、例えば1800℃以上であってよく、1900℃以上であってもよい。当該焼成温度は、例えば2200℃以下であってよく、2100℃以下であってもよい。焼成温度が低すぎると、粒成長が十分に進行しない傾向にある。焼成時間は、0.5時間以上であってよく、1時間以上、3時間以上、5時間以上、又は10時間以上であってもよい。当該焼成時間は、40時間以下であってよく、30時間以下、又は20時間以下であってもよい。当該焼成時間は、例えば、0.5~40時間であってよく、1~30時間であってもよい。焼成時間が短すぎると粒成長が十分に進行しない傾向にある。一方、焼成時間が長すぎると工業的に不利になる傾向にある。焼成雰囲気は、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であってよい。配合物にバインダーを配合する場合、上述の加熱の前に、バインダーが分解する温度と雰囲気で仮焼して脱脂してもよい。
【0042】
工程(B)では、図2に示すように、シート状成形体10及びセッター30の間に第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20を配置する。これにより、シート状成形体10の表面に、網目模様を描く溝部を形成することができる。その結果、シート状成形体10を焼成することによって得られた窒化ホウ素焼結体の表面に網目模様を描く溝部が形成される。また、シート状成形体10の焼成時にシート状成形体10から生じるガスを効率的に飛散させることができるとともに、シート状成形体10の焼きムラの発生を抑制できる。メッシュ状窒化ホウ素シート20は、材質が窒化ホウ素であり、形状がメッシュ状の形状(網目形状)であるシートであれば、特に限定されない。例えば、図3に示すメッシュ状窒化ホウ素シート20を第1のメッシュ状窒化ホウ素シートとして使用できる。図3(a)は、メッシュ状窒化ホウ素シートの一例を示す正面図であり、図3(b)は図3(a)に示すメッシュ状窒化ホウ素シート20のAA断面図である。
【0043】
メッシュ状窒化ホウ素シート20は、X方向に延びる第1の線条部20a及びX方向と略垂直をなすY方向に延びる第2の線条部20bを含む。これにより、平面視で第1の方向(X方向)に延びる第1の溝部と第1の方向(X方向)に対して略垂直な第2の方向(Y方向)に延びる第2の溝部とからなる溝部をシート状成形体10の表面に形成することができる。その結果、シート状成形体10を焼成することによって得られた窒化ホウ素焼結体の表面に、平面視で第1の方向(X方向)に延びる第1の溝部と第1の方向(X方向)に対して垂直な第2の方向(Y方向)に延びる第2の溝部とからなる溝部が形成される。また、シート状成形体10の焼成時にシート状成形体から生じるガスをさらに効率的に飛散させることができるとともに、シート状成形体の焼きムラの発生をさらに抑制できる。なお、略垂直は垂直であってよく、90°±5°であってよい。
【0044】
第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の目開きは、好ましくは200~1000μmである。これにより、平面視で、隣接する第1の溝部間の距離及び隣接する第2の溝部間の距離が200~1000μmである溝部をシート状成形体の表面に形成することができる。その結果、シート状成形体10を焼成することによって得られた窒化ホウ素焼結体の表面に、隣接する第1の溝部間の距離及び隣接する第2の溝部間の距離が200~1000μmである溝部が形成される。また、第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の目開きが200μm以上であると、シート状成形体10の焼成時にシート状成形体10から生じるガスをさらに効率的に飛散させることができる。第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の目開きが1000μm以下であると、第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の強度を高くすることができるとともに、シート状成形体の焼きムラの発生をさらに抑制できる。このような観点から、第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の目開きは、より好ましくは220~800μmであり、さらに好ましくは250~500μmである。なお、目開きは、隣接する第1の線条部20aの間の距離及び隣接する第2の線条部1bの間の距離の平均値である。
【0045】
第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の線径(第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の平面視の第1の線条部20a及び第2の線条部1bの幅)は、好ましくは400~1500μmである。これにより、第1の溝部の幅及び第2の溝部の幅が400~1500μmである溝部をシート状成形体10の表面に形成することができる。その結果、シート状成形体10を焼成することによって得られた窒化ホウ素焼結体の表面に、第1の溝部の幅及び第2の溝部の幅が400~1500μmである溝部が形成される。また、第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の線径が400μm以上であると、第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の強度を高くすることができるとともに、シート状成形体の焼きムラの発生をさらに抑制できる。第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の線径が1500μm以下であると、シート状成形体の焼成時にシート状成形体から生じるガスをさらに効率的に飛散させることができる。このような観点から、第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の線径は、より好ましくは500~1300μmであり、さらに好ましくは600~1200μmである。なお、線径は、第1の線条部20aの線径及び第2の線条部1bの線径の平均値である。
【0046】
第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の第1の線条部20a及び第2の線条部20bの断面の形状は、窒化ホウ素焼結体の表面に形成する溝の断面の形状に基づいて、適宜選択される。第1の線条部20a及び第2の線条部20bの断面の形状は、例えば、円形でもよいし、楕円形状でもよいし、三角形でもよいし、四角形でもよいし、五角形以上の多角形の形状でもよいし、星形の形状でもよい。しかし、細い線条部を容易に成形できるという観点から、第1の線条部20a及び第2の線条部20bの断面の形状は、好ましくは円形及び楕円形状であり、より好ましくは円形である。
【0047】
<第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20の製造方法>
第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0048】
まず窒化ホウ素の原料粉を用意し、該原料粉を、水等の媒体及び結合剤と混合して線条部製造用のペーストを調製する。窒化ホウ素の原料粉には、例えば、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ砂などの含ホウ素化合物及び尿素、メラミンなどの含窒素化合物の混合物、六方晶炭窒化ホウ素(h-BCN)粉末などが挙げられる。また、原料粉に焼結助剤を添加してもよい。焼結助剤は、例えば、酸化イットリア、酸化アルミナ及び酸化マグネシウム等の希土類元素の酸化物、炭酸リチウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、並びにホウ酸等であってよい。焼結助剤を配合する場合は、焼結助剤の添加量は、例えば、窒化ホウ素の原料粉及び焼結助剤の合計100質量部に対して、0.01質量部以上、又は0.1質量部以上であってよい。焼結助剤の添加量は、窒化ホウ素の原料粉及び焼結助剤の合計100質量部に対して、20質量部以下、15質量部以下、又は10質量部以下であってよい。
【0049】
結合剤としては、この種のペーストに従来用いられたものと同様のものを用いることができる。その例としてはポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、デキストリン、リグニンスルホン酸ソーダ及びアンモニウム、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム及びアンモニウム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アラビアゴム、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸及びポリアクリルアミドなどのアクリル系ポリマー、キサンタンガム及びグアガムなどの増粘多糖体類、ゼラチン、寒天及びペクチンなどのゲル化剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、並びにアルミナゾル及びシリカゾルなどの無機バインダーなどが挙げられる。これらのうちの2種類以上を混合して用いてもよい。
【0050】
ペーストの粘度は、塗布時の温度において高粘度であることが好ましい。詳細には、ペーストの粘度は、塗布時の温度において、1.5~5.0MPa・sであることが好ましく、1.7~3.0MPa・sであることがより好ましい。ペーストの粘度は、例えば、コーンプレート型回転式粘度計又はレオメーターを用いて、回転数0.3rpmにて測定開始後4分時の測定値を用いて測定することができる。
【0051】
ペーストにおける窒化ホウ素の原料粉の割合は、20~85質量%であることが好ましく、35~75質量%であることがより好ましい。ペーストにおける媒体の割合は、15~60質量%であることが好ましく、20~55質量%であることがより好ましい。ペーストにおける結合剤の割合は、1~40質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましい。
【0052】
ペーストには、粘性調整剤として、増粘剤、凝集剤、チクソトロピック剤などを含有させることができる。増粘剤の例としては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルアリルスルホン酸、アルキルアンモニウム塩、エチルビニルエーテル・無水マレイン酸コポリマー、フュームドシリカ、アルブミンなどのタンパク質などが挙げられる。多くの場合、結合剤は、増粘効果があるため、増粘剤に分類されることがあるが、さらに厳密な粘性調整が必要とされる場合には、別途、結合剤に分類されない増粘剤を用いることができる。凝集剤の例として、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。チクソトロピック剤の例として、脂肪酸アミド、酸化ポリオレフィン、ポリエーテルエステル型界面活性剤などが挙げられる。ペースト調製用の溶媒としては、水以外にも、アルコール、アセトン及び酢酸エチルなどが用いられ、これらを2種類以上混合してもよい。また吐出量を安定させるために、可塑剤、潤滑剤、分散剤、沈降抑制剤、pH調整剤などを添加してもよい。可塑剤には、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどのグリコール系、グリセリン、ブタンジオール、フタル酸系、アジピン酸系、リン酸系などが挙げられる。潤滑剤には、流動パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィンなどの炭化水素系、高級脂肪酸、脂肪酸アミドなどが挙げられる。分散剤には、ポリカルボン酸ナトリウム若しくはアンモニウム塩、アクリル酸系、ポリイチレンイミン、リン酸系などが挙げられる。沈降抑制剤には、ポリアマイドアミン塩、ベントナイト、ステアリン酸アルミニウムなどが挙げられる。PH調整剤には、水酸化ナトリウム、アンモニア水、シュウ酸、酢酸、塩酸などが挙げられる。
【0053】
得られたペーストを用い、平坦な基板上に、図4(a)に示すように、X方向に延びる複数条の線条第1塗工体21aを、互いに平行にかつ直線状に形成する。線条第1塗工体は、目的とする第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20における第1の線条部20aに対応するものである。線条第1塗工体21aの形成には、小型押し出し機や印刷機などの種々の塗布装置を用いることができる。
【0054】
線条第1塗工体を乾燥してから、次いで、図4(b)に示すように、上記ペーストを用い、X方向と垂直をなすY方向に延びる複数条の線条第2塗工体21bを互いに平行にかつ直線状に形成する。線条第2塗工体21bは、目的とする第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20における第2の線条部20bに対応するものである。線条第2塗工体21bの形成には、線条第1塗工体21aと同様の塗布装置を用いることができる。
【0055】
線条第2塗工体21bを乾燥した後、線条第2塗工体21bの上に、X方向に延びる線状第1塗工体を形成し、さらに線状第1塗工体の上に、Y方向に延びる線状第2塗工体を形成して、メッシュ状塗工体を作製する。
【0056】
このようにして得られたメッシュ状塗工体は、これを基板から剥離して焼成炉内に載置して焼成を行う。この焼成によって未加工メッシュ状窒化ホウ素シートが得られる。
【0057】
メッシュ状塗工体の焼成温度は、例えば、1600℃以上又は1700℃以上であってよい。メッシュ状塗工体の焼成温度は、例えば、2200℃以下、又は2100℃以下であってよい。メッシュ状塗工体の焼成時間は、例えば、1時間以上であってよく、30時間以下であってよい。焼成時の雰囲気は、例えば、窒素、ヘリウム、及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下であってよい。
【0058】
焼成には、例えば、バッチ式炉及び連続式炉等を用いることができる。バッチ式炉としては、例えば、マッフル炉、管状炉、及び雰囲気炉等を挙げることができる。連続式炉としては、例えば、ロータリーキルン、スクリューコンベア炉、トンネル炉、ベルト炉、プッシャー炉、及び琴形連続炉等を挙げることができる。
【0059】
未加工メッシュ状窒化ホウ素シートをそのまま第1のメッシュ状窒化ホウ素シートとして使用してもよい。しかし、図4(c)に示すように、矩形形状の未加工メッシュ状窒化ホウ素シートの四隅を切り欠いて、矩形形状に形作られた第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20を作製してもよい。これにより、メッシュ状塗工体を基板から剥離して焼成炉内に載置する際に生じたクラック及び欠けた部分を第1のメッシュ状窒化ホウ素シートから除去することができる。
【0060】
本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体は、第1の主面2が、網目模様を描く溝部1a,1bを有していた。しかし、第1の主面2及び第2の主面3の両方の主面が、網目模様を描く溝部を有していてもよい。この場合、上述の本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体の製造方法における工程(B)では、図5に示すように、セッター30の上に配置したシート状成形体10の上に、シート状成形体10の上面を覆うセラミックス板40を配置し、シート状成形体10及びセラミックス板40の間に第2のメッシュ状窒化ホウ素シート50をさらに配置する。これにより、第1の主面2及び第2の主面3の両方の主面に、網目模様を描く溝部を形成することができる。
【0061】
シート状成形体10の上面を覆うセラミックス板40は、シート状成形体10の焼成時にシート状成形体10から生じるガスの飛散を阻害する。しかし、第2のメッシュ状窒化ホウ素シート50により、セラミックス板40がシート状成形体10の上面を覆っても、シート状成形体10の焼成時にシート状成形体10から生じるガスを効率的に飛散させることができる。
【0062】
セラミック板40には、セッター30として使用できる材料のものを使用できる。また、第2のメッシュ状窒化ホウ素シート50には、第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20として使用できるメッシュ状窒化ホウ素シートを使用することができる。なお、セラミックス板40はセッター30と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第2のメッシュ状窒化ホウ素シート50は第1のメッシュ状窒化ホウ素シート20と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0063】
本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体は、本発明の窒化ホウ素焼結体の一例に過ぎないので、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体は、本発明の窒化ホウ素焼結体を限定しない。
【0064】
[複合体]
本発明の一実施形態の複合体は、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体と、その窒化ホウ素焼結体の気孔を充填する樹脂とを含む。
【0065】
窒化ホウ素焼結体の気孔を充填する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シアネート樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド樹脂、マレイミド変性樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリフタルアミド、ポリアセタール等を用いることができる。これらのうちの1種を単独で含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでもよい。
【0066】
本発明の一実施形態の複合体は薄いため、窒化ホウ素焼結体の気孔中に樹脂を十分に充填させることができる。このため、本発明の一実施形態の複合体は絶縁性に十分に優れる。本発明の一実施形態の複合体の厚みは、窒化ホウ素焼結体の厚みと同一ではなくてよい。例えば、本発明の一実施形態の複合体は、窒化ホウ素焼結体の表面に形成された樹脂層を有していてもよい。
【0067】
本発明の一実施形態の複合体における窒化ホウ素粒子の含有量は、複合体の全体積を基準として、40~70体積%であってよく、45~65体積%であってもよい。本発明の一実施形態の複合体における樹脂の含有量は、複合体の全体積を基準として、30~60体積%であってよく、35~55体積%であってもよい。本発明の一実施形態の複合体は、このような割合で窒化ホウ素粒子及び樹脂を含むので、高い絶縁性と熱伝導率とを高水準で両立することができる。
【0068】
本発明の一実施形態の複合体は、窒化ホウ素焼結体及びその気孔中に充填された樹脂に加えて、その他の成分をさらに含有してもよい。その他の成分としては、硬化剤、無機フィラー、シランカップリング剤、消泡剤、表面調整剤、湿潤分散剤等が挙げられる。無機フィラーには、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの無機フィラーは,1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これにより、複合体の熱伝導性を一層向上することができる。
【0069】
本発明の一実施形態の複合体は、上述の窒化ホウ素焼結体と、その気孔中に充填された樹脂とを含むことから、優れた熱伝導率と優れた絶縁性を兼ね備える。また、薄型かつ軽量であるため、電子部品等の部材として用いられたときに電子部品等の小型化及び軽量化を図ることができる。本発明の一実施形態の複合体は、このような特性を有することから、放熱部材として好適に用いることができる。放熱部材は、上述の複合体で構成されていてよく、他の部材(例えば、アルミニウム等の金属板)と複合体を組み合わせて構成されてもよい。
【0070】
本発明の一実施形態の複合体の製造方法の一例を以下に説明する。本発明の一実施形態の複合体の製造方法の一例は、本発明の一実施形態の窒化ホウ素焼結体に樹脂組成物を含浸させる含浸工程を有する。樹脂組成物は、流動性及び取り扱い性向上の観点から、樹脂成分、硬化剤及び溶剤を含有してもよい。また、これらの他に、無機フィラー、シランカップリング剤、消泡剤、表面調整剤、湿潤分散剤等を含有してもよい。
【0071】
樹脂成分としては、例えば硬化又は半硬化反応によって上述の複合体の説明で挙げた樹脂となるものを用いることができる。溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の脂肪族アルコール、2-メトキシエタノール、1-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン、トルエン、キシレン等の炭化水素が挙げられる。これらのうちの1種を単独で含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでもよい。
【0072】
含浸は、窒化ホウ素焼結体に樹脂組成物を付着させて行う。例えば、上述したように、樹脂組成物を窒化ホウ素焼結体に塗布することによって、樹脂組成物を窒化ホウ素焼結体に含浸させてもよい。また、窒化ホウ素焼結体を樹脂組成物に浸漬して行ってよい。さらに、浸漬した状態で加圧又は減圧条件として行ってもよい。このようにして、窒化ホウ素焼結体の気孔に樹脂を充填することができる。窒化ホウ素焼結体は、シート状であることから、気孔への樹脂の充填を円滑にすることができる。このため、樹脂による充填率を十分に高くすることができる。したがって、優れた絶縁性を有する複合体を円滑に製造することができる。
【0073】
含浸工程は、密閉容器を備える含浸装置内を用いて行ってもよい。一例として、含浸装置内で減圧条件にて含浸を行った後、含浸装置内の圧力を上げて大気圧よりも高くして加圧条件で含浸を行ってもよい。このように減圧条件と加圧条件の両方を行うことによって、窒化ホウ素焼結体の気孔に樹脂を十分に充填することができる。減圧条件と加圧条件とを複数回繰り返し行ってもよい。含浸工程は、加温しながら行ってもよい。窒化ホウ素焼結体の気孔に含浸した樹脂組成物は、硬化又は半硬化が進行したり、溶剤が揮発したりした後、樹脂(硬化物又は半硬化物)となる。このようにして、窒化ホウ素焼結体とその気孔に充填された樹脂とを有する複合体が得られる。窒化ホウ素焼結体の気孔の全てに樹脂が充填されている必要はなく、一部の気孔には樹脂が充填されていなくてもよい。窒化ホウ素焼結体及び複合体は、閉気孔と開気孔の両方を含んでいてよい。
【0074】
含浸工程の後に、気孔内に充填された樹脂を硬化させる硬化工程を有していてもよい。硬化工程では、例えば、含浸装置から樹脂(樹脂組成物)が充填された複合体を取り出し、樹脂(又は必要に応じて添加される硬化剤)の種類に応じて、加熱、及び/又は光照射により、樹脂を硬化又は半硬化させる。
【0075】
このようにして得られた複合体は、シート状である。このため、薄型かつ軽量であり、電子部品等の部材として用いられたときに電子部品等の小型化及び軽量化を図ることができる。また、窒化ホウ素焼結体の気孔に樹脂が十分に充填されていることから、絶縁性にも優れる。また、上述の製造方法では、窒化ホウ素焼結体及び複合体を切断する工程を有することなく複合体を製造することができる。したがって、信頼性に優れる複合体を高い歩留まりで製造することができる。なお、複合体は、そのまま放熱部材として用いてもよいし、研磨等の加工を施して放熱部材としてもよい。
【0076】
本発明の一実施形態の複合体は、本発明の複合体の一例に過ぎないので、本発明の複合体は、本発明の一実施形態の複合体に限定されない。
【実施例
【0077】
以下、本発明について、実施例により、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
[メッシュ状窒化ホウ素シートの作製]
(メッシュ状窒化ホウ素シートA)
窒化ホウ素の原料粉を、水等の媒体及び結合剤及び焼結助剤と混合してペーストとした。小型押し出し成型機を用いて線条塗工体を形成し、これを焼成炉内で脱脂及び焼成を行うことでメッシュ状窒化ホウ素シートを得た。焼成温度は2000℃とし、焼成時間は5時間とした。また、線条塗工体の形成様式を変えることで目開き及び線径を変化させることが可能である。メッシュ状窒化ホウ素シートAに関しては、焼成後に目開きが0.5mm、線径が0.6mmになる様にした。以上のようにして、50mm×50mmのサイズの目開き0.5mmで線径が0.6mmであるメッシュ状窒化ホウ素シートAを作製した。
【0079】
(メッシュ状窒化ホウ素シートB)
窒化ホウ素の原料粉を、水等の媒体及び結合剤及び焼結助剤と混合してペーストとした。小型押し出し成型機を用いて線条塗工体を形成し、これを焼成炉内で脱脂及び焼成を行うことでメッシュ状窒化ホウ素シートを得た。焼成温度は2000℃とし、焼成時間は5時間とした。また、線条塗工体の形成様式を変えることで目開き及び線径を変化させることが可能である。メッシュ状窒化ホウ素シートBに関しては、焼成後に目開きが0.5mm、線径が1.2mmになる様にした。以上のようにして、50mm×50mmのサイズの目開き0.5mmで線径が1.2mmであるメッシュ状窒化ホウ素シートBを作製した。
【0080】
(メッシュ状窒化ホウ素シートC)
窒化ホウ素の原料粉を、水等の媒体及び結合剤及び焼結助剤と混合してペーストとした。小型押し出し成型機を用いて線条塗工体を形成し、これを焼成炉内で脱脂及び焼成を行うことでメッシュ状窒化ホウ素シートを得た。焼成温度は2000℃とし、焼成時間は5時間とした。また、線条塗工体の形成様式を変えることで目開き及び線径を変化させることが可能である。メッシュ状窒化ホウ素シートCに関しては、焼成後に目開きが0.25mm、線径が0.6mmになる様にした。以上のようにして、50mm×50mmのサイズの目開き0.25mmで線径が0.6mmであるメッシュ状窒化ホウ素シートCを作製した。
【0081】
(メッシュ状窒化ホウ素シートD)
窒化ホウ素の原料粉を、水等の媒体及び結合剤及び焼結助剤と混合してペーストとした。小型押し出し成型機を用いて線条塗工体を形成し、これを焼成炉内で脱脂及び焼成を行うことでメッシュ状窒化ホウ素シートを得た。焼成温度は2000℃とし、焼成時間は5時間とした。また、線条塗工体の形成様式を変えることで目開き及び線径を変化させることが可能である。メッシュ状窒化ホウ素シートDに関しては、焼成後に目開きが0.25mm、線径が1.2mmになる様にした。以上のようにして、50mm×50mmのサイズの目開き0.25mmで線径が1.2mmであるメッシュ状窒化ホウ素シートDを作製した。
【0082】
[シート状成形体の作製]
新日本電工株式会社製のオルトホウ酸100質量部と、デンカ株式会社製のアセチレンブラック(商品名:HS100)35質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合した。得られた混合物を、黒鉛製のルツボ中に充填し、アーク炉にて、アルゴン雰囲気で、2200℃にて5時間加熱し、塊状の炭化ホウ素(BC)を得た。得られた塊状物を、ジョークラッシャーで粗粉砕して粗粉を得た。この粗粉を、炭化珪素製のボール(φ10mm)を有するボールミルによってさらに粉砕して粉砕粉を得た。得られた炭化ホウ素粉末の炭素量は19.9質量%であった。炭素量は、炭素/硫黄同時分析計にて測定した。
【0083】
調製した炭化ホウ素粉末を、窒化ホウ素製のルツボに充填した。その後、抵抗加熱炉を用い、窒素ガス雰囲気下で、2000℃、0.85MPaの条件で10時間加熱した。このようにして炭窒化ホウ素(BCN)を含む焼成物を得た。
【0084】
粉末状のホウ酸と炭酸カルシウムを配合して焼結助剤を調製した。調製にあたっては、100質量部のホウ酸に対して、炭酸カルシウムを1.9質量部配合した。このときのホウ素とカルシウムの原子比率は、ホウ素100原子%に対してカルシウムが1.2原子%であった。焼成物100質量部に対して焼結助剤を16質量部配合し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して粉末状の配合物を得た。
【0085】
その後、得られた混合物に更にアクリルバインダーを配合し、シート状に成形し、シート状成形体(49mm×25mm×0.38mm)を得た。
【0086】
[シート状成形体の焼成]
165mm×165mm×2.0mmの窒化ホウ素製のセッター及び165mm×165mm×2.0mmの窒化ホウ素製のセラミックス板を用意した。そして、図5に示すように、セッターの上にシート状成形体を配置するとともに、シート状成形体及びセッターの間にメッシュ状窒化ホウ素シートを配置し、シート状成形体の上にセラミックス板を配置するとともに、シート状成形体及びセラミックス板の間にメッシュ状窒化ホウ素シートを配置した。そして、バッチ式高周波炉において、常圧、窒素流量5L/分、焼成温度2020℃の条件で5時間焼成した。その後、窒化ホウ素焼結体を取り出した。このようにして、シート状(平板形状)の窒化ホウ素焼結体1~5を得た。なお、窒化ホウ素焼結体1~4の作製において、表1に示すメッシュ状窒化ホウ素シートを使用した。また、窒化ホウ素焼結体5の作製では、メッシュ状窒化ホウ素シートを使用しなかった。
【0087】
[評価方法]
作製した窒化ホウ素焼結体1~5について、以下の評価を行った。
<隣接する溝部間の距離及び溝部の幅>
3D表面形状測定機(商品名「VR-3000」、KEYENCE社製)を使用して、窒化ホウ素焼結体の表面形状を測定した。そして、窒化ホウ素焼結体の表面形状を測定することにより得られた隣接する溝部間の距離及び溝部の幅の平均値を、その窒化ホウ素焼結体の隣接する溝部間の距離及び溝部の幅とした。
【0088】
<反り量>
3D表面形状測定機(商品名「VR-3000」、KEYENCE社製)を使用して、窒化ホウ素焼結体の表面形状を測定した。そして、窒化ホウ素焼結体の端点Aと中心Bを通る直線に沿って高さ座標を測定し、その中で最も高い座標から最も低い座標を引いた値を反り量とした。この測定を窒化ホウ素焼結体の端点4か所において実施し、その最大値を窒化ホウ素焼結体の反り量とした。
【0089】
<熱伝導率及びかさ密度の測定>
窒化ホウ素焼結体の厚み方向の熱伝導率(H)を、以下の計算式で求めた。
H=A×B×C
【0090】
式中、Hは熱伝導率(W/(m・K))、Aは熱拡散率(m/sec)、Bはかさ密度(kg/m)、及び、Cは比熱容量(J/(kg・K))を示す。熱拡散率Aは、窒化ホウ素焼結体を、縦×横×厚み=10mm×10mm×0.40mmのサイズに加工した試料を用い、レーザーフラッシュ法によって測定した。測定装置はキセノンフラッシュアナライザ(NETZSCH社製、商品名:LFA447NanoFlash)を用いた。かさ密度Bは窒化ホウ素焼結体の体積及び質量から算出した。
【0091】
<平均細孔径の測定>
得られた窒化ホウ素焼結体について、株式会社島津製作所製の水銀ポロシメーター(装置名:オートポアIV9500)を用い、0.0042MPaから206.8MPaまで圧力を増加しながら細孔容積分布を測定した。積算細孔容積分布において、積算細孔容積が全細孔容積の50%に達する細孔径を、「平均細孔径」とした。
【0092】
<気孔率の測定>
上述のとおり算出したかさ密度Bと窒化ホウ素の理論密度(2280kg/m)とから、以下の計算式によって気孔率を求めた。
気孔率(体積%)=[1-(B/2280)]×100
【0093】
評価結果を表1に示す。
【表1】
【0094】
以上の実施例の結果から、窒化ホウ素焼結体が、網目模様を描く溝部を表面に有することによって、窒化ホウ素焼結体の反り量を低減し、熱伝導率を増加させることができることがわかった。
【0095】
[複合体]
<複合体の作製>
エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:エピコート807)と硬化剤(日本合成化学工業株式会社製、商品名:アクメックスH-84B)を含む樹脂組成物、大気圧下でバーコーターを用いて窒化ホウ素焼結体1~5にそれぞれ塗布し、窒化ホウ素焼結体1~5に樹脂組成物を含浸させた。含浸後、大気圧下、温度120℃で120分間加熱して樹脂を硬化させて複合体を得た。この複合体は、それぞれ、窒化ホウ素焼結体1~5と同等の厚み、反り量及び熱伝導率を有していた。したがって、電子部品の放熱部材として有用である。
【符号の説明】
【0096】
1 窒化ホウ素焼結体
10 シート状成形体
20 第1のメッシュ状窒化ホウ素シート
20a 第1の線条部
20b 第2の線条部
30 セッター
40 セラミックス板
50 第2のメッシュ状窒化ホウ素シート
21a 線条第1塗工体
21b 線条第2塗工体
【要約】
本発明の窒化ホウ素焼結体は、第1の主面2と、第1の主面2の反対側の第2の主面3を有し、第1の主面2及び第2の主面3の少なくとも一方の主面が、網目模様を描く溝部1a,1bを有する。本発明の複合体は、本発明の窒化ホウ素焼結体と、窒化ホウ素焼結体の気孔を充填する樹脂とを含む。本発明によれば、熱伝導率が高く、反りが小さい窒化ホウ素焼結体及びその窒化ホウ素焼結体を含む複合体を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5