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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-28
(45)【発行日】2023-08-07
(54)【発明の名称】ロチゴチン含有貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/381 20060101AFI20230731BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230731BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230731BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230731BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230731BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230731BHJP
【FI】
A61K31/381
A61K47/20
A61K47/14
A61K47/32
A61K47/34
A61K9/70 401
A61P25/00
A61P25/16
A61P43/00 111
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023531661
(86)(22)【出願日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2023005160
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2022024433
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川井 季実子
(72)【発明者】
【氏名】篠田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】黒川 隆夫
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-079220(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073516(WO,A1)
【文献】特表2017-515871(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124261(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/158879(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/250840(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/166298(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層及び粘着剤層を備え、前記粘着剤層がロチゴチン及びロチゴチンの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有するロチゴチン含有貼付剤であり、
前記粘着剤層が、チオグリコール酸及びチオグリコール酸の薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種と、粘着基剤と、をさらに含有する
ロチゴチン含有貼付剤。
【請求項2】
前記粘着剤層におけるチオグリコール酸及びチオグリコール酸の薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の含有量が、チオグリコール酸ナトリウム換算で、前記粘着剤層の全質量に対して0.03~3質量%である、請求項1に記載のロチゴチン含有貼付剤。
【請求項3】
前記粘着剤層が没食子酸プロピルをさらに含有する、請求項1又は2に記載のロチゴチン含有貼付剤。
【請求項4】
前記粘着剤層における没食子酸プロピルの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して0.05~1質量%である、請求項3に記載のロチゴチン含有貼付剤。
【請求項5】
前記粘着基剤が、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤、及びシリコーン系粘着基剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のロチゴチン含有貼付剤。
【請求項6】
前記粘着剤層におけるロチゴチン及びロチゴチンの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の含有量が、ロチゴチン遊離体換算で、前記粘着剤層の全質量に対して5~15質量%である、請求項1又は2に記載のロチゴチン含有貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロチゴチン含有貼付剤に関するものであり、より詳しくは、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有する貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ロチゴチンは化合物(-)-5,6,7,8-テトラヒドロ-6-[プロピル-[2-(2-チエニル)エチル]-アミノ]1-ナフタレノールの国際一般的名称であり、I型及びII型の結晶多形が存在することが特表2011-504902号公報(特許文献1)に記載されている。ロチゴチンはD1/D2/D3ドーパミンレセプターアゴニストであり、主にパーキンソン病やレストレスレッグス症候群の症状の治療に用いられている。
【0003】
ロチゴチン投与のための製剤としては、例えば、「ニュープロ(登録商標)パッチ」が国内外において市販されている。また、特表2002-509878号公報(特許文献2)には、マトリックスの成分に対して不活性の裏当て層とロチゴチンを含有する自己接着性マトリックス層とを含み、前記マトリックスがロチゴチンの溶解度が5%(w/w)以上であり非水溶性のアクリレート系又はシリコーン系のポリマー接着剤を基材とする、経皮治療システムが記載されている。
【0004】
さらに、特表2015-503541号公報(特許文献3)には、活性物質に不透過性である裏打ち層と、感圧接着剤、薬物、及び架橋ポリビニルピロリドンの粒子を含むマトリックス層と、を含む経皮治療システムが記載されており、前記薬物としてロチゴチンが、前記感圧接着剤としてシリコーンポリマーが、それぞれ記載されている。また、例えば、特開2014-177428号公報(特許文献4)には、支持体と、ロジン系樹脂及びゴム系粘着成分を含有するゴム系粘着基剤、並びに、ロチゴチン又はその製薬上許容できる塩を含有する薬物含有層と、を含む経皮吸収型貼付製剤が記載されており、特開2013-079220号公報(特許文献5)には、支持体と、ゴム系粘着基剤、ロチゴチン又はその塩、並びに、ロチゴチンの分解生成物の生成抑制剤を含有する薬物含有層と、を含む経皮吸収型貼付剤が記載されている。
【0005】
さらに、例えば、特表2017-515871号公報(特許文献6)には、ロチゴチン結晶析出の防止を目的として、ロチゴチン及びブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤を特定の重量比で混合する経皮吸収製剤の製造方法が記載されている。また、前記抗酸化剤を含有させた貼付剤としては、例えば、再表2017-073516号公報(特許文献7)や再表2018-198925号公報(特許文献8)において、薬物としてフェンタニルやブトルファノールを含有する貼付剤の粘着剤層が、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を含有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2011-504902号公報
【文献】特表2002-509878号公報
【文献】特表2015-503541号公報
【文献】特開2014-177428号公報
【文献】特開2013-079220号公報
【文献】特表2017-515871号公報
【文献】再表2017-073516号公報
【文献】再表2018-198925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩を含有するロチゴチン含有貼付剤について、本発明者らがさらなる検討を行ったところ、保存条件、例えば、高温下等の過酷な保存条件によっては、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の安定性が十分とはいえず、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩が分解されてその分解物(ロチゴチン分解物)が発生してしまう場合があることを見出した。ロチゴチン分解物が多く発生するとロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩による所望の薬効が期待できなくなる恐れがあるため、本発明者らは、さらに高水準の経時安定性が要求されることを見出した。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定性に特に優れたロチゴチン含有貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体層及び粘着剤層を備える貼付剤であり、前記粘着剤層にロチゴチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種(本明細書中、場合により「ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩」という)と、粘着基剤と、を含有するロチゴチン含有貼付剤において、前記粘着剤層に、チオグリコール酸及びチオグリコール酸の薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種(本明細書中、場合により「チオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩」という)をさらに含有させることにより、過酷条件下での保存においてもロチゴチン分解物の発生を高水準で抑制することができ、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定性に特に優れたロチゴチン含有貼付剤とすることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
【0010】
[1]支持体層及び粘着剤層を備え、前記粘着剤層がロチゴチン及びロチゴチンの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有するロチゴチン含有貼付剤であり、
前記粘着剤層が、チオグリコール酸及びチオグリコール酸の薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種と、粘着基剤と、をさらに含有する
ロチゴチン含有貼付剤。
【0011】
[2]前記粘着剤層におけるチオグリコール酸及びチオグリコール酸の薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の含有量が、チオグリコール酸ナトリウム換算で、前記粘着剤層の全質量に対して0.03~3質量%である[1]に記載のロチゴチン含有貼付剤。
【0012】
[3]前記粘着剤層が没食子酸プロピルをさらに含有する、[1]又は[2]に記載のロチゴチン含有貼付剤。
【0013】
[4]前記粘着剤層における没食子酸プロピルの含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して0.05~1質量%である、[3]に記載のロチゴチン含有貼付剤。
【0014】
[5]前記粘着基剤が、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤、及びシリコーン系粘着基剤からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載のロチゴチン含有貼付剤。
【0015】
[6]前記粘着剤層におけるロチゴチン及びロチゴチンの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の含有量が、ロチゴチン遊離体換算で、前記粘着剤層の全質量に対して5~15質量%である、[1]~[5]のうちのいずれか一項に記載のロチゴチン含有貼付剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定性に特に優れたロチゴチン含有貼付剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。本発明のロチゴチン含有貼付剤は、
支持体層及び粘着剤層を備え、前記粘着剤層がロチゴチン及びロチゴチンの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有するロチゴチン含有貼付剤であり、
前記粘着剤層が、チオグリコール酸及びチオグリコール酸の薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種と、粘着基剤と、をさらに含有する。
【0018】
本発明のロチゴチン含有貼付剤は、支持体層及び粘着剤層を備える。前記支持体層としては、後述の粘着剤層を支持し得るものであれば特に制限されず、貼付剤の支持体層として公知のものを適宜採用することができる。本発明に係る支持体層の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタンなどの合成樹脂や、アルミニウムなどの金属が挙げられる。これらの中でも、薬物非吸着性や薬物非透過性の観点からは、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。前記支持体層の形態としては、例えば、フィルム;シート、シート状多孔質体、シート状発泡体等のシート類;織布、編布、不織布等の布帛;箔;及びこれらの積層体が挙げられる。また、前記支持体層の厚みとしては、特に制限されないが、貼付剤を貼付する際の作業容易性及び製造容易性の観点からは、5~1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0019】
本発明のロチゴチン含有貼付剤は、前記粘着剤層の前記支持体層とは反対の面上に剥離ライナーをさらに備えるものであってもよい。かかる剥離ライナーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタンなどの合成樹脂や、アルミニウム、紙などの材質からなるフィルムやシート及びこれらの積層体が挙げられる。これらの剥離ライナーとしては、前記粘着剤層から容易に剥離できるように該粘着剤層と接触する側の面に含シリコーン化合物コートや含フッ素化合物コート等の離型処理が施されたものであることが好ましい。
【0020】
<ロチゴチン及びその薬学的に許容される塩>
本発明に係る粘着剤層は、薬物としてロチゴチン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種(ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩)を含有する。本発明において前記粘着剤層中に含有されるロチゴチンの形態としては、遊離体(フリー体)であってもその薬学的に許容される塩であってもよく、製造中及び/又は製造された製剤中においてロチゴチンの薬学的に許容される塩が脱塩されてフリー体となったものであってもよく、これらのうちの1種であっても2種以上の混合物であってもよい。ロチゴチンの薬学的に許容される塩としては、酸付加塩が挙げられ、前記酸付加塩の酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、亜リン酸、臭化水素酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリル硫酸、リノレン酸、フマル酸が挙げられる。前記酸付加塩としては、これらの酸の付加塩の1種であっても2種以上であってもよい。本発明に係る粘着剤層としては、これらの中でも、ロチゴチンを遊離体の形態で含有していることが好ましい。
【0021】
本発明において、前記粘着剤層中に含有されるロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量(ロチゴチンの含有量若しくはロチゴチンの薬学的に許容される塩の含有量、又は、両者がいずれも含有されている場合にはその合計含有量、以下同じ)としては、ロチゴチン遊離体換算で、前記粘着剤層の全質量に対して5~15質量%であることが好ましく、6~12質量%であることがより好ましく、7~10質量%であることがさらに好ましく、8~9質量%であることがさらにより好ましい。ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量が前記下限未満であると、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ロチゴチンの結晶が析出したり、粘着剤層の粘着力が低下しやすくなったりする傾向にある。
【0022】
本発明によれば、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の分解物(ロチゴチン分解物)の発生を十分に抑制することが可能である。このような分解物としては、例えば、7,8-ジヒドロナフトール(7,8-Dihydro Naphthol)、脱プロピルロチゴチン(Despropyl RTN)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
<チオグリコール酸及びその薬学的に許容される塩>
本発明に係る粘着剤層は、チオグリコール酸及びチオグリコール酸の薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種(チオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩)を含有する。本発明において前記粘着剤層中に含有されるチオグリコール酸の形態としては、遊離体(フリー体)であってもその薬学的に許容される塩であってもよく、製造中及び/又は製造された製剤中においてチオグリコール酸の薬学的に許容される塩が脱塩されてフリー体となったものであってもよく、これらのうちの1種であっても2種以上の混合物であってもよい。チオグリコール酸の薬学的に許容される塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニアとの塩、アルキルアミン、アルカノールアミンが挙げられ、より具体的には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩が挙げられる。チオグリコール酸の薬学的に許容される塩としては、これらの塩の1種であっても2種以上であってもよい。本発明に係る粘着剤層としては、これらの中でも、チオグリコール酸及びチオグリコール酸のアルカリ金属塩(より好ましくはナトリウム塩)からなる群から選択される少なくとも1種を含有していることが好ましい。
【0024】
本発明において、前記粘着剤層中に含有されるチオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量(チオグリコール酸の含有量若しくはチオグリコール酸の薬学的に許容される塩の含有量、又は、両者がいずれも含有されている場合にはその合計含有量、以下同じ)としては、チオグリコール酸ナトリウム換算で、前記粘着剤層の全質量に対して0.03~3質量%であることが好ましく、0.05~3質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることがさらに好ましく、0.15~3質量%であることがさらにより好ましく、0.25~3質量%、0.5~3質量%であることも特に好ましい。チオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量が前記下限未満であると、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定性が十分に発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘着剤層の粘着力が低下する傾向にある。
【0025】
また、本発明において、前記粘着剤層中に含有されるチオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩のチオグリコール酸ナトリウム換算での含有量としては、前記ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩のロチゴチン遊離体換算での含有量1質量部に対して、0.002~0.6質量部であることが好ましく、0.01~0.6質量部であることがより好ましく、0.015~0.6質量部であることがさらに好ましく、0.03~0.35質量部であることがさらにより好ましく、0.05~0.35質量部であることが特に好ましい。チオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量の、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量に対する割合が前記範囲内にあると、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定性が特に発揮される傾向にある。
【0026】
<粘着基剤>
本発明に係る粘着剤層は、また、粘着基剤を含有する。前記粘着基剤としては、特に限定されず、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤、及びシリコーン系粘着基剤が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、ゴム系粘着基剤、カルボキシ基を有しないアクリル系粘着基剤、及びシリコーン系粘着基剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ゴム系粘着基剤を少なくとも含有することがより好ましい。
【0027】
本発明に係る粘着剤層において、前記粘着基剤の含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して、1~90質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~90質量%であることがさらに好ましく、10~80質量%であることがさらにより好ましく、20~80質量%であることが特に好ましい。
【0028】
(ゴム系粘着基剤)
前記ゴム系粘着基剤としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリイソブチレン、天然ゴム、アルキルビニルエーテル(共)重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中でも、スチレン系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。前記スチレン系熱可塑性エラストマーとは、熱を加えると軟化して流動性を示し、冷却すればゴム状弾性体に戻る熱可塑性を示すスチレン系エラストマーである。このうち、十分な粘着性付与及びロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定性により優れる観点からは、スチレン系ブロック共重合体が好ましい。
【0029】
前記スチレン系ブロック共重合体としては、具体的には、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン/ブチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合体、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種を用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、前記において、「エチレン/ブチレン」はエチレン及びブチレンの共重合体ブロックを示し、「エチレン/プロピレン」はエチレン及びプロピレンの共重合体ブロックを示す。これらの中でも、本発明に係るスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体であることがより好ましい。
【0030】
前記スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体としては、粘度平均分子量が30,000~2,500,000であることが好ましく、100,000~1,700,000であることがより好ましい。前記粘度平均分子量が前記下限値未満であると、貼付剤の製剤物性(特に粘着剤層の凝集力)が低下する傾向にあり、他方、前記上限値を超えると、粘着剤層中に含有される他の成分との相溶性が低下して貼付剤の製造が困難となる傾向にある。
【0031】
本発明において、前記粘着剤層中に前記粘着基剤として前記スチレン系熱可塑性エラストマーが含有される場合、その含有量(前記スチレン系熱可塑性エラストマーが2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。前記スチレン系熱可塑性エラストマーの含有量が前記下限未満であると、粘着剤層の凝集力や保形性等が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘着剤層の凝集力が過度に増加して、粘着剤層の粘着力が低下したり相溶性が低下したりする傾向にある。
【0032】
また、前記ゴム系粘着基剤としては、粘着剤層の粘着性及び凝集力がより向上する傾向にある観点から、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(より好ましくはスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体)と前記ポリイソブチレンとの組み合わせであることがより好ましく、前記スチレン系熱可塑性エラストマーと前記ポリイソブチレンとの質量比(スチレン系熱可塑性エラストマーの質量:ポリイソブチレンの質量)が、1:2~30:1(さらに好ましくは1:1~10:1の範囲)であることがさらに好ましい。
【0033】
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の具体例としては、Quintac(登録商標)3570C(商品名、日本ゼオン株式会社製)、SIS5002、SIS5229、SIS5505、SIS5505P(商品名、JSR株式会社製)、SIBSTAR(登録商標)T102(商品名、株式会社カネカ製)等が挙げられる。また、ポリイソブチレンには、いわゆるブチルゴム(イソブチレン-イソプレンゴム)も含まれ、具体例としては、Oppanol(登録商標)N50、N80、N100、N150、B11、B12、B50、B80、B100、B120、B150、B220(商品名、BASF社製)、JSR(登録商標)Butyl065、268、365(商品名、JSR株式会社製)、X_Butyl(登録商標)RB 100、101-3、301、402(商品名、ARLANXEO社製)、Exxon(登録商標)Butyl065、065S、068、068S、268、268S、365、365S(商品名、Exxon Mobile社製)、Butyl065、268、365(商品名、日本ブチル株式会社製)等が挙げられる。
【0034】
本発明において、前記粘着剤層中に前記粘着基剤としてゴム系粘着基剤が含有される場合、その含有量(2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して1~60質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましく、10~40質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
(アクリル系粘着基剤)
本発明に係るアクリル系粘着基剤としては、例えば、「医薬品添加物事典2016(日本医薬品添加剤協会編集)」に粘着剤として収載されているものが挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、カルボキシ基を有しないアクリル系粘着基剤であることが好ましく、官能基を有しないアクリル系粘着基剤であることがより好ましい。本発明において、「カルボキシ基を有しないアクリル系粘着基剤」及び「官能基を有しないアクリル系粘着基剤」とは、それぞれ、カルボキシ基及び官能基を実質的に有さない、好ましくは、高分子中のカルボキシ基及び官能基の含有量が、それぞれ、3質量%未満であるアクリル系高分子を示す。
【0036】
前記カルボキシ基を有しないアクリル系粘着基剤としては、例えば、アクリル酸-2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・メタクリル酸-2-エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・メタクリル酸メチル・アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体等の官能基を実質的に有しないアクリル系粘着基剤;(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル共重合体、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル共重合体、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル共重合体、アクリル酸-2-エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸ヒドロキシエチル・メタクリル酸グリシジル共重合体等のヒドロキシ基を有するアクリル系粘着基剤が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0037】
前記カルボキシ基を有しないアクリル系粘着基剤としては、市販のものを適宜用いてもよく、例えば、MAS 811、MAS 683(コスメディ製薬株式会社製);Duro-Tak(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)の87-900A、87-901A、87-9301、87-4098、87-9088、87-9085;GELVA(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)のGMS 3083、GMS 3253、GMS3235等に含有されるアクリル系高分子や、Duro-Tak(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)の87-202A、87-2287、87-2516、87-2510、87-4287、87-2525、87-201A、87-202A、87-208A、87-502A、87-503A、87-504A;GELVA(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケル社製)のGMS 788、GMS 737等に含有されるアクリル系高分子等を適宜用いることができる。
【0038】
本発明に係る粘着剤層が前記アクリル系粘着基剤を含有する場合、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。前記アクリル系粘着基剤の含有量が前記下限未満である場合には、粘着剤層の凝集力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性が低下する傾向にある。
【0039】
(シリコーン系粘着基剤)
本発明に係るシリコーン系粘着基剤としては、ASTM規格(ASTM D 1418)において、MQ(ポリジメチルシロキサン)、VMQ(ポリメチルビニルシロキサン)、PMQ(ポリメチルフェニルシロキサン)、PVMQ(ポリフェニルビニルメチルシロキサン)と表されるシリコーンゴムや、これらのうちの少なくとも1種とポリジトリメチルシリルシロキサン等のシリコーンゴム以外のシリコーン樹脂との混合物等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。なお、前記シリコーンゴム以外のシリコーン樹脂が混合される場合には、シリコーン系粘着基剤の全質量に対して0.1~20質量%であることが好ましい。
【0040】
また、これらのシリコーン系粘着基剤としては、市販されているものを適宜用いてもよく、例えば、デュポン・東レ・スペシャリティ・マテリアル株式会社より次の型番:BIO-PSA7-410X、BIO-PSA7-420X、BIO-PSA7-430X、BIO-PSA7-440X、BIO-PSA7-450X、BIO-PSA7-460X(前記各Xは、それぞれ独立に1又は2である)、BIO-PSA AC7-4201、BIO-PSA AC7-4301、BIO-PSA AC7-4302、MD7-4502、MD7-4602、7-9700、MG7-9800、MG7-9850;BIO-PSA 7-4560(ホットメルトシリコーン粘着剤)等で提供されるシリコーン系粘着基剤等を適宜用いることができる。
【0041】
さらに、本発明に係るシリコーン系粘着基剤としては、例えば、メチル基を有する場合には過酸化物を配合することによって当該メチル基の水素原子を脱水素させて同メチル基間を架橋させたもの;ビニル基を有する場合にはSiH基含有シロキサン化合物からなる架橋剤を結合させて同ビニル基間を架橋させたもの;水酸基を有する場合(すなわちシラノール基を有する場合)には脱水縮合によって同シラノール基間を架橋させたもの等であってもよい。
【0042】
本発明に係る粘着剤層が前記シリコーン系粘着基剤を含有する場合、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)としては、前記粘着剤層の全質量に対して、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。前記シリコーン系粘着基剤の含有量が前記下限未満である場合には、粘着剤層の凝集力が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性が低下する傾向にある。
【0043】
<没食子酸プロピル>
本発明に係る粘着剤層としては、没食子酸プロピルをさらに含有することが好ましい。これにより、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定性がさらに向上する傾向にある。
【0044】
本発明に係る粘着剤層が没食子酸プロピルをさらに含有する場合、その含有量としては、前記粘着剤層の全質量に対して0.05~1質量%であることが好ましく、0.075~0.8質量%であることがより好ましく、0.1~0.6質量%であることがさらに好ましく、0.1~0.3質量%であることがさらにより好ましい。前記没食子酸プロピルの含有量が前記下限未満であると、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定性の向上効果が十分に発揮されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘着剤層の凝集力が低下したり粘着力が低下したりする傾向にある。
【0045】
また、前記没食子酸プロピルの含有量としては、前記粘着剤層中に含有されるチオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩のチオグリコール酸ナトリウム換算での含有量1質量部に対して、0.01~35質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることがさらに好ましく、0.1~1質量部であることがさらにより好ましく、0.15~0.5質量部であることが特に好ましい。没食子酸プロピルの含有量の、チオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量に対する割合が前記範囲内にあると、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定性の向上効果が特に発揮される傾向にある。
【0046】
<その他成分>
本発明に係る粘着剤層としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、ロチゴチン及びその薬学的に許容される塩以外の他の薬物;チオグリコール酸及びその薬学的に許容される塩並びに没食子酸プロピル以外の他の安定化剤;粘着付与剤;吸収促進剤;皮膚刺激低減剤;吸着剤、脱塩剤、可塑剤、溶解剤、充填剤、保存剤等の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0047】
(他の薬物)
前記ロチゴチン及びその薬学的に許容される塩以外の他の薬物としては、例えば、非ステロイド性消炎鎮痛剤(ジクロフェナク、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、チアプロフェン、アセメタシン、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ナプロキセン、アザプロパゾン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アンフェナク等)、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、メキタジン、ホモクロルシクリジン等)、降圧剤(ジルチアゼム、ニカルジピン、ニルバジピン、メトプロロール、ビソプロロール、トランドラプリル等)、抗パーキンソン剤(ぺルゴリド、ロピニロール、ブロモクリプチン、セレギリン等)、気管支拡張剤(ツロブテロール、イソプロテレノロール、サルブタモール等)、抗アレルギー剤(ケトチフェン、ロラタジン、アゼラスチン、テルフェナジン、セチリジン、アシタザノラスト等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン等)、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン等)、非麻薬性鎮痛薬(ブプレノルフィン、トラマドール、ペンタゾシン)、麻酔系鎮痛剤(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル等)、泌尿器官用剤(オキシブチニン、タムスロシン等)、精神神経用剤(プロマジン、クロルプロマジン等)、ステロイドホルモン剤(エストラジオール、プロゲステロン、ノルエチステロン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン等)、抗うつ剤(セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム等)、抗痴呆薬(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン等)、抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン等)、中枢神経興奮剤(メチルフェニデート等)、骨粗しょう症治療薬(ラロキシフェン、アレンドロネート等)、乳がん予防薬(タモキシフェン等)、抗肥満薬(マジンドール、シブトラミン等)、不眠症改善薬(メラトニン等)、抗リウマチ薬(アクタリット等)が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0048】
本発明に係る粘着剤層が前記他の薬物をさらに含有する場合、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、前記粘着剤層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0049】
(他の安定化剤)
チオグリコール酸及びその薬学的に許容される塩並びに没食子酸プロピル以外の他の安定化剤としては、例えば、アスコルビン酸又はその金属塩若しくはエステル(例えば、パルミチン酸エステル)、イソアスコルビン酸又はその金属塩、エチレンジアミン四酢酸又はその金属塩、システイン、アセチルシステイン、2-メルカプトベンズイミダゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、トコフェロール、酢酸トコフェロール、チモール、大豆レシチン、ルチン、ジヒドロキシ安息香酸、ジクロイソシアヌール酸カリウム、クエルセチン、ヒドロキノン、ヒドロキシメタンスルフィン酸金属塩、メタ重亜硫酸金属塩(例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム)、亜硫酸金属塩、チオグリコール酸金属塩以外のチオ硫酸金属塩が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。上記において、金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム二ナトリウム塩が挙げられる。また、エステルとしては、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、ミリスチン酸エステルなどが挙げられる。
【0050】
ただし、本発明に係る粘着剤層においては、チオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩によるロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定化効果が阻害される場合や、粘着剤層の粘着力の観点からは、上記他の安定化剤を前記粘着剤層中に含有しないことが好ましく、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、前記粘着剤層の全質量に対して3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、0.25質量%以下(例えば、0~0.25質量%、0.005~0.25質量%)であることがさらに好ましい。
【0051】
(粘着付与剤)
前記粘着付与剤は、主に前記粘着基剤(好ましくはゴム系粘着基剤)の粘着性を高めることを目的として配合される。このような粘着付与剤としては、例えば、石油系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、及びキシレン系樹脂が挙げられる。前記粘着付与剤としては、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、本発明に係る粘着剤層が前記粘着基剤として前記ゴム系粘着基剤を含有する場合には、石油系樹脂がさらに含有されることが好ましい。
【0052】
前記粘着付与剤が前記粘着剤層中にさらに含有される場合、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、前記粘着剤層の粘着力の向上及び/又は剥離時の局所刺激性の緩和という観点から、前記粘着剤層の全質量に対して、5~80質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
前記石油系樹脂としては、例えば、C5系合成石油樹脂(イソプレン、シクロペンタジエン、1,3-ペンタジエン、及び1-ペンテンのうちの少なくとも2種の共重合体;2-ペンテン及びジシクロペンタジエンのうちの少なくとも2種の共重合体;1,3-ペンタジエン主体の樹脂等)、C9系合成石油樹脂(インデン、スチレン、メチルインデン、及びα-メチルスチレンのうちの少なくとも2種の共重合体等)、ジシクロペンタジエン系合成石油樹脂(ジシクロペンタジエンを主体とするイソプレン及び/又は1,3-ペンタジエンとの共重合体)が挙げられる。また、別の分類の観点から、例えば、脂環族系石油樹脂(脂環族飽和炭化水素樹脂等)、脂環族系水添石油樹脂、脂肪族系石油樹脂(脂肪族炭化水素樹脂等)、脂肪族系水添石油樹脂、芳香族系石油樹脂が挙げられ、より具体的には、アルコンP-70、アルコンP-85、アルコンP-90、アルコンP-100、アルコンP-115、アルコンP-125、アルコンM-90、アルコンM-100、アルコンM-115、アルコンM-135(以上、商品名、荒川化学工業株式会社製)、エスコレッツ8000(商品名、エッソ石油化学株式会社製)が挙げられる。本発明に係る石油系樹脂としては、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。これらの中でも、皮膚に対する好適な付着性が得られやすい、臭い等が少ないため使用感が良好である、またロチゴチン分解物の発生がより抑制される、といった観点から、脂環族飽和炭化水素樹脂であることがより好ましい。
【0054】
本発明において、前記脂環族飽和炭化水素樹脂とは、脂環族飽和炭化水素モノマーの単独重合体又は共重合体である樹脂のことをいう。前記脂環族飽和炭化水素樹脂としては、重量平均分子量が1,000~1,500であることが好ましく、1,200~1,400であることがより好ましい。
【0055】
本発明に係る粘着剤層が前記石油系樹脂(好ましくは脂環族飽和炭化水素樹脂)をさらに含有する場合、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、前記粘着剤層の全質量に対して5~80質量%であることが好ましく、10~70質量%であることがより好ましく、10~60質量%であることがさらに好ましく、20~60質量%であることが特に好ましい。前記脂環族飽和炭化水素樹脂の含有量が前記下限未満であると、粘着剤層の粘着力や皮膚への付着性が低下したりする傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性や粘着剤層の保形性が低下する傾向にある。
【0056】
(吸収促進剤)
前記吸収促進剤としては、薬物の経皮吸収促進作用(皮膚透過促進作用)を有するものが挙げられ、例えば、脂肪族アルコール、炭素数6~20の脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、又は脂肪族アルコールエーテル;芳香族有機酸;芳香族アルコール;芳香族有機酸エステル又はエーテル;POE硬化ヒマシ油類;レシチン類;リン脂質;大豆油誘導体;トリアセチンが挙げられる。前記吸収促進剤としては、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩のより優れた皮膚透過性の観点からは、脂肪族アルコールが前記粘着剤層中にさらに含有されることが好ましい。
【0057】
前記吸収促進剤が前記粘着剤層中にさらに含有される場合、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩のより優れた皮膚透過性の観点から、前記粘着剤層の全質量に対して、1~15質量%であることが好ましく、3~7質量%であることがより好ましい。
【0058】
前記脂肪族アルコールとは、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状の、1価又は2価以上の脂肪族アルコールのことをいい、本発明に係る脂肪族アルコールとしては、1価であることが好ましい。また、前記脂肪族アルコールの炭素数としては、3~23であることが好ましく、12~23であることがより好ましく、12~20であることがさらに好ましい。前記脂肪族アルコールの炭素数が前記下限未満であると、沸点が低くなるために製剤中における含有量を一定に保つことが困難となって同脂肪族アルコールの経時安定性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性が低下する傾向にある。
【0059】
前記脂肪族アルコールとしては、例えば、イソプロパノール、ヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、リノレニルアルコール、ヘキシルデカノールが挙げられる。前記脂肪族アルコールとしては、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、上記の脂肪族アルコールの経時安定性及び相溶性の観点に加えて、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性を特に向上させる傾向にあるという観点からは、オクチルドデカノール及びラウリルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0060】
本発明に係る粘着剤層が前記脂肪族アルコールをさらに含有する場合、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、前記粘着剤層の全質量に対して1~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、2~7質量%であることがさらに好ましく、3~7質量%であることが特に好ましい。前記脂肪族アルコールの含有量が前記下限未満であると、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記粘着基剤や他の成分との相溶性が低下する傾向にある。
【0061】
(皮膚刺激低減剤)
前記皮膚刺激低減剤としては、薬物や安定化剤が皮膚に与える刺激の低減作用を有するものが挙げられ、例えば、コレステロールが挙げられる。前記皮膚刺激低減剤としては、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0062】
前記皮膚刺激低減剤が前記粘着剤層中にさらに含有される場合、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、十分な皮膚刺激低減効果が奏され、かつ、粘着基剤との相溶性が十分に維持される観点から、前記粘着剤層の全質量に対して、0.1~7質量%であることが好ましく、1~7質量%であることがより好ましく、3~5質量%であることがさらに好ましい。
【0063】
(添加剤)
〔吸着剤〕
前記吸着剤としては、吸湿性を有する無機及び/又は有機の物質が挙げられ、より具体的には、タルク、カオリン、ベントナイト等の鉱物;フュームドシリカ(アエロジル(登録商標)等)、含水シリカ等のケイ素化合物;酸化亜鉛、乾燥水酸化アルミニウムゲル等の金属化合物;乳酸、酢酸等の弱酸;デキストリン等の糖;ポリビニルピロリドン(非架橋PVP)、架橋ポリビニルピロリドン(「クロスポビドン」、「架橋PVP」ともいう)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルポリマー及びブチルメタクリレートメチルメタクリレートコポリマー等の高分子ポリマーが挙げられる。前記吸着剤としては、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩のより優れた経時安定性の観点からは、架橋ポリビニルピロリドンが前記粘着剤層中にさらに含有されることが好ましい。
【0064】
前記吸着剤が前記粘着剤層中にさらに含有される場合、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、粘着剤層の粘着性の観点から、前記粘着剤層の全質量に対して、3~25質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましい。
【0065】
前記架橋ポリビニルピロリドンとしては、架橋されたN-ビニルピロリドン重合体が挙げられる。前記N-ビニルピロリドン重合体としては単独重合体であっても共重合体であってもよく、例えば、N-ビニルピロリドンの単独重合体、N-ビニルピロリドンと多官能モノマーとの共重合体が挙げられる。これらの中でも、本発明に係る架橋ポリビニルピロリドンとしては、1-ビニル-2-ピロリドンの架橋ホモポリマー(「クロスポビドン」ともいう)であることが好ましい。クロスポビドンとしては、コリドンCL、コリドンCL-M(BASFジャパン株式会社製);ポリプラスドンXL、ポリプラスドンXL-10、ポリプラスドンINF-10(ISPジャパン株式会社製)等の市販のものを用いてもよい。
【0066】
本発明に係る粘着剤層が前記架橋ポリビニルピロリドンをさらに含有する場合、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、前記粘着剤層の全質量に対して3~25質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましく、3~15質量%であることがさらに好ましい。前記架橋ポリビニルピロリドンの含有量が前記下限未満であると、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の結晶が析出しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性が低下したり、製造時に粘着剤層組成物における相溶性が低下して製造が困難となったりする傾向にある。
【0067】
また、前記架橋ポリビニルピロリドンの含有量としては、前記粘着剤層中に含有されるロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩のロチゴチン遊離体に換算での含有量との質量比(ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩のロチゴチン遊離体換算含有量:架橋ポリビニルピロリドン含有量)で、15:3~5:25であることが好ましく、15:3~5:20であることがより好ましく、15:3~5:15であることがさらに好ましい。架橋ポリビニルピロリドンの含有量の、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の含有量に対する割合が前記下限未満であると、ロチゴチンの結晶が析出する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性が低下する傾向にある。
【0068】
〔脱塩剤〕
前記脱塩剤は、主に塩基性薬物の全部又は一部を遊離体に変換することを目的として配合される。このような脱塩剤としては、特に限定はされないが、例えば、前記薬物として薬物の酸付加塩を配合して遊離体の薬物を含有する製剤を得る場合には、塩基性物質であることが好ましく、金属イオン含有脱塩剤、塩基性窒素原子含有脱塩剤であることがより好ましい。前記金属イオン含有脱塩剤としては、酢酸ナトリウム(無水酢酸ナトリウムを含む)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。なお、本発明に係る粘着剤層としては、前記塩基性薬物及び前記脱塩剤に由来する化合物(例えば、塩酸ロチゴチンと酢酸ナトリウムとを組み合わせた場合には、塩化ナトリウム)をさらに含有していてもよい。本発明において、これらの脱塩剤、並びに、塩基性薬物及び脱塩剤に由来する化合物が前記粘着剤層中にさらに含有される場合、その含有量としては、2種以上である場合には合計で、前記粘着剤層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0069】
〔可塑剤〕
前記可塑剤は、主に前記粘着剤層の粘着物性、前記粘着剤層の製造における流動特性、前記薬物の経皮吸収特性等を調整することを目的として配合される。このような可塑剤としては、例えば、シリコーンオイル;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル;スクワラン、スクワレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油及びラッカセイ油等の植物系オイル;ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の二塩基酸エステル;液状ポリブテン及び液状イソプレンゴム等の液状ゴム;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。前記可塑剤としては、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、シリコーンオイル、流動パラフィン、及び液状ポリブテンからなる群から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0070】
本発明に係る粘着剤層が前記可塑剤をさらに含有する場合、その含有量(2種以上である場合にはそれらの合計含有量)としては、粘着剤層の粘着力の向上及び/又は剥離時の局所刺激性の緩和という観点から、前記粘着剤層の全質量に対して、1~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0071】
〔溶解剤・充填剤〕
前記溶解剤としては、例えば、酢酸等の有機酸、界面活性剤が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。また、前記充填剤は主に前記粘着剤層の粘着力を調整することを目的として配合され、該充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム;ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンが挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0072】
〔保存剤〕
前記保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸誘導体、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール等が挙げられ、これらのうちの1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0073】
本発明に係る粘着剤層としては、特に制限されないが、単位面積(貼付面の面積)あたりの質量が20~200g/mであることが好ましく、30~100g/mであることがより好ましく、30~70g/mであることがさらに好ましい。また、本発明に係る粘着剤層の貼付面の面積としては、治療の目的や適用対象に応じて適宜調整することができ、特に制限されないが、通常、0.5~200cmの範囲である。
【0074】
本発明のロチゴチン含有貼付剤は、特に制限されず、公知の貼付剤の製造方法を適宜採用することによって製造することができる。例えば、先ず、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩、チオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩、前記粘着基剤、並びに、必要に応じて没食子酸プロピル、溶媒、及び上記のその他成分を常法にしたがって練合し、均一な粘着剤層組成物を得る。前記ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩としてロチゴチン遊離体を用いる場合には、そのI型結晶であってもII型結晶であっても非晶質型であってもよく、I型結晶、II型結晶、及び非晶質型のうちの少なくとも2種以上の混合物であってもよい。また、前記ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩としては、水和物であってもよく、前記溶媒に溶解させたものを用いてもよい。前記溶媒としては、無水エタノール、トルエン、ヘプタン、メタノール、酢酸エチル、ヘキサン、イソプロパノール、及びこれらのうちの少なくとも2種以上の混合液等が挙げられる。
【0075】
次いで、この粘着剤層組成物を前記支持体層の面上(通常は一方の面上)に所望の単位面積あたり質量となるように展延した後、必要に応じて加温して前記溶媒を乾燥除去して粘着剤層を形成し、さらに必要に応じて所望の形状に裁断することにより、本発明の貼付剤を得ることができる。
【0076】
また、本発明のロチゴチン含有貼付剤の製造方法としては、前記粘着剤層の前記支持体層と反対の面上に前記剥離ライナーを貼り合わせる工程をさらに含んでいてもよく、前記粘着剤層組成物を先ず前記剥離ライナーの一方の面上に所望の単位面積あたり質量となるように展延して粘着剤層を形成した後に、前記粘着剤層の前記剥離ライナーと反対の面上に前記支持体層を貼り合わせ、必要に応じて所望の形状に裁断することによって本発明の貼付剤を得てもよい。さらに、得られた貼付剤は、必要に応じて、保存用包装容器(例えば、アルミラミネート製袋)に封入して包装体としてもよい。
【0077】
本発明によれば、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定性に特に優れたロチゴチン含有貼付剤を得ることができるため、本発明はまた、
支持体層及び粘着剤層を備え、かつ、前記粘着剤層がロチゴチン及びロチゴチンの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種と、粘着基剤と、を含有するロチゴチン含有貼付剤において、前記ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩を安定化する方法であり、
前記粘着剤層に、チオグリコール酸及びチオグリコール酸の薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有させる工程を含む、
ロチゴチン安定化方法も提供する。
【0078】
本発明のロチゴチン安定化方法としては、前記粘着剤層に、没食子酸プロピルをさらに含有させる工程を含むことが好ましい。
【0079】
本発明のロチゴチン安定化方法において、前記粘着剤層にチオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩、並びに、没食子酸プロピルを含有させる方法としては、特に制限されず、例えば、前記ロチゴチン含有貼付剤の製造方法において、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩、前記粘着基剤、及び必要に応じて溶媒や前記その他成分に、チオグリコール酸及び/又はその薬学的に許容される塩を添加して、さらに必要に応じて没食子酸プロピルを添加して、常法にしたがって練合し、均一な粘着剤層組成物を得て、これを前記粘着剤層組成物として用いる方法が挙げられる。
【実施例
【0080】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、皮膚透過試験及び安定性評価は、それぞれ、以下に示す方法により行った。
【0081】
<皮膚透過試験(インビトロ(in vitro)ヘアレスマウス皮膚透過試験)>
先ず、ヘアレスマウス胴体部の皮膚を剥離して脂肪を除去した脂肪除去皮膚片の角質層側に1.0cmの正方形に切断して剥離ライナーを除去した貼付剤を貼付して試験サンプルとした。これを真皮側がレセプター液に接するようにフロースルー型拡散セルにセットし、前記セルにレセプター溶液(リン酸緩衝生理食塩水)を満たした。次いで、レセプター溶液が32℃に保温されるように、暖めた循環水を外周部に循環させながら約5mL/hrの流速でレセプター溶液を送液し、2時間毎に24時間までレセプター溶液を採取した。採取したレセプター溶液中のロチゴチン濃度を高速液体クロマトグラフ法により測定し、それぞれ、次式:
ロチゴチン皮膚透過量(μg/cm)={レセプター溶液中のロチゴチン濃度(μg/mL)×流量(mL)}/貼付剤面積(cm
により、粘着剤層の単位面積あたりにおけるロチゴチン皮膚透過量を算出し、1時間あたりの皮膚透過量(皮膚透過速度(μg/cm/hr))を求めた。測定はそれぞれ2つの試験サンプルについて行い、各皮膚透過速度の24時間内における最大値の平均値を最大皮膚透過速度(Jmax)とした。
【0082】
<安定性評価>
各実施例及び比較例で得られた貼付剤をアルミラミネート製袋に封入して試験サンプルとし、これを60℃において2週間保存した。保存後の貼付剤について、下記の(1)又は(2)の方法でロチゴチン分解物の発生率[%]を算出し、安定性評価の値とした。なお、下記の(1)の方法と(2)の方法とによれば、互いに同等の結果が得られる。
【0083】
(1)
先ず、保存後の貼付剤から剥離ライナーを除き、粘着剤層をテトラヒドロフラン5mLに浸漬して溶解させた溶液に、希釈溶液(0.2%リン酸緩衝液とアセトニトリルとの混液(50:50(v:v)))を全量が25mLとなるように加えて振とうし、フィルターで濾過したものを試料溶液とした。また、予め既知濃度のロチゴチンを前記希釈溶液に溶解させ、標準溶液とした。
【0084】
前記試料溶液を用いて、高速液体クロマトグラフィー装置(株式会社島津製作所製)により、次の条件:
カラム:TSKgel ODS-80TsQA(4.6mm I.D.×150mm)、5μm
移動相液:10mMドデシル硫酸ナトリウムを含む0.2%リン酸緩衝液とアセトニトリルとの混液(50:50(v:v))
検出波長:225nm
カラム温度:40℃
流速:0.7mL/分
で、試料溶液中の、ロチゴチン分解物である7,8-ジヒドロナフトール(7,8-Dihydro Naphthol)及び脱プロピルロチゴチン(Despropyl RTN)のクロマトグラムを得た。
【0085】
また、前記標準溶液を用いて、上記と同じ条件で、前記高速液体クロマトグラフィー装置により、標準溶液中のロチゴチンのクロマトグラムを得た。得られたクロマトグラムのロチゴチンの曲線下面積と、上記で得られた7,8-ジヒドロナフトール及び脱プロピルロチゴチンのクロマトグラムの各曲線下面積とから、7,8-ジヒドロナフトールの発生量及び脱プロピルロチゴチンの発生量をそれぞれ算出した。また、粘着剤層中に配合したロチゴチン量からロチゴチンの理論含有量を算出し、前記各発生量を前記理論含有量で除することにより、各貼付剤の60℃、2週間保存による粘着剤層中の各ロチゴチン分解物の発生率(7,8-Dihydro Naphthol 発生率[%]、Despropyl RTN 発生率[%])を算出した。なお、7.8分付近の位置に現れるピークエリアを7,8-ジヒドロナフトールのピークエリアとし、9.7分付近の位置に現れるピークエリアを脱プロピルロチゴチンのピークエリアとした。
【0086】
(2)
先ず、保存後の貼付剤から剥離ライナーを除き、粘着剤層をテトラヒドロフラン5mLに浸漬して溶解させた溶液に、希釈溶液(10mMリン酸水素二カリウム及び0.067%トリメチルアミンを含むリン酸緩衝液(pH5.5)と、アセトニトリルとの混液(60:40(v:v)))を全量が25mLとなるように加えて振とうし、フィルターで濾過したものを試料溶液とした。また、予め既知濃度のロチゴチンを前記希釈溶液に溶解させ、標準溶液とした。
【0087】
前記試料溶液を用いて、高速液体クロマトグラフィー装置(株式会社島津製作所製)により、次の条件:
カラム:ZORBAX SB-C18(4.6mm I.D.×250mm)、5μm
移動相液:10mMリン酸水素二カリウム及び0.067%トリメチルアミンを含むリン酸緩衝液(pH5.5)(A液)、アセトニトリル(B液)を;A液:B液=90:10(0~20分)→20:80(90~100分)→90:10(105~125分)
検出波長:225nm
カラム温度:40℃
流速:1mL/分
で、試料溶液中の、ロチゴチン分解物である7,8-ジヒドロナフトール(7,8-Dihydro Naphthol)及び脱プロピルロチゴチン(Despropyl RTN)のクロマトグラムを得た。
【0088】
また、前記標準溶液を用いて、上記と同じ条件で、前記高速液体クロマトグラフィー装置により、標準溶液中のロチゴチンのクロマトグラムを得た。得られたクロマトグラムのロチゴチンの曲線下面積と、上記で得られた7,8-ジヒドロナフトール及び脱プロピルロチゴチンのクロマトグラムの各曲線下面積とから、7,8-ジヒドロナフトールの発生量及び脱プロピルロチゴチンの発生量をそれぞれ算出した。また、粘着剤層中に配合したロチゴチン量からロチゴチンの理論含有量を算出し、前記各発生量を前記理論含有量で除することにより、各貼付剤の60℃、2週間保存による粘着剤層中の各ロチゴチン分解物の発生率(7,8-Dihydro Naphthol 発生率[%]、Despropyl RTN 発生率[%])を算出した。なお、56.8分付近の位置に現れるピークエリアを7,8-ジヒドロナフトールのピークエリアとし、44.1分付近の位置に現れるピークエリアを脱プロピルロチゴチンのピークエリアとした。
【0089】
(実施例1)
先ず、ロチゴチン(遊離体(フリー体))9質量部、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体12.21質量部、ポリイソブチレン5.23質量部、脂環族飽和炭化水素樹脂44.46質量部、流動パラフィン13.95質量部、オクチルドデカノール5質量部、及び架橋ポリビニルピロリドン10質量部に、チオグリコール酸ナトリウム0.15質量部を添加し、適量の溶媒(無水エタノール及びトルエン)に加えて混合し、粘着剤層組成物を得た。次いで、得られた粘着剤層組成物を剥離ライナー(離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート製フィルム)上に展延し、溶媒を乾燥除去して、単位面積あたり質量が50g/mとなるように粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層の前記剥離ライナーと反対の面上に支持体層(ポリエチレンテレフタレート製フィルム)を積層し、支持体層/粘着剤層/剥離ライナーの順に積層された貼付剤を得た。
【0090】
(実施例2~6、比較例1~2)
粘着剤層組成物の組成(溶媒を除く組成)を下記の表1に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、各貼付剤を得た。
【0091】
実施例1~6及び比較例1~2で得られた貼付剤について安定性評価(製造2週間後、60℃、(1)の方法)を実施した。安定性評価の結果を各実施例及び比較例の粘着剤層組成物の組成(溶媒を除く組成)とあわせてそれぞれ表1に示す。なお、各実施例においては、皮膚透過試験により、十分に優れた最大皮膚透過速度(Jmax)[μg/cm/hr]が達成されることを確認した。
【0092】
【表1】
【0093】
(実施例7、比較例3~5)
粘着剤層組成物の組成(溶媒を除く組成)を下記の表2に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、各貼付剤を得た。
【0094】
実施例7及び比較例3~5で得られた貼付剤について安定性評価(製造2週間後、60℃、(2)の方法)を実施した。安定性評価の結果を各実施例及び比較例の粘着剤層組成物の組成(溶媒を除く組成)とあわせてそれぞれ表2に示す。表2には、参考として比較例1の結果も合わせて示す。なお、表2中、チオグリコール酸の欄の括弧内の数値は、チオグリコール酸ナトリウム換算での質量部を示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表1~表2に示した結果から明らかなように、チオグリコール酸又はチオグリコール酸ナトリウムを粘着剤層中に含有させた貼付剤(例えば、実施例1~7)においては、温度60℃という過酷条件下、製造2週間後においても、ロチゴチン分解物の発生率が十分に抑制され、ロチゴチンが高水準で安定化されることが確認された。他方、比較例2~5で得られた貼付剤においては、従来から薬物の安定化剤として用いられている成分を含有させても、チオグリコール酸又はチオグリコール酸ナトリウムを粘着剤層中に含有させた貼付剤に比べて、少なくともいずれかのロチゴチン分解物の発生率が高く、また、安定化剤を含有させていない比較例1と比べても、ロチゴチン分解物の発生率がさらに高くなったものもあった(例えば、比較例2、3)。
【0097】
(実施例8~9、比較例6~7)
粘着剤層組成物の組成(溶媒を除く組成)を下記の表3に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、各貼付剤を得た。表3において、シリコーン系粘着基剤としては、BIO-PSA-4202(デュポン・東レ・スペシャリティ・マテリアル株式会社)を用い、アクリル系粘着基剤としては、Duro-Tak 87-900A(ヘンケル社製)を用いた。
【0098】
実施例8~9及び比較例6~7で得られた貼付剤について安定性評価(製造2週間後、60℃、(1)の方法)を実施した。安定性評価の結果を各実施例及び比較例の粘着剤層組成物の組成(溶媒を除く組成)とあわせてそれぞれ表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
表3に示した結果から明らかなように、チオグリコール酸ナトリウムを粘着剤層中に含有させた貼付剤においては、粘着基剤として、ゴム系粘着基剤以外のアクリル系粘着基剤やシリコーン系粘着基剤を用いても(例えば、実施例8~9)、ロチゴチン分解物の発生率が抑制され、ロチゴチンが高水準で安定化されることが確認された。
【0101】
(実施例10~12)
粘着剤層組成物の組成(溶媒を除く組成)を下記の表4に示す組成となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、各貼付剤を得た。
【0102】
実施例10~12で得られた貼付剤について安定性評価(製造2週間後、60℃、(2)の方法)を実施した。安定性評価の結果を各実施例の粘着剤層組成物の組成(溶媒を除く組成)とあわせてそれぞれ表4に示す。表4には、参考として実施例4の結果も合わせて示す。
【0103】
【表4】
【0104】
表4に示した結果から明らかなように、チオグリコール酸ナトリウムを粘着剤層中に含有させた貼付剤においては、没食子酸プロピルを粘着剤層中にさらに含有させることにより(例えば、実施例10~12)、さらに優れた安定性が発揮されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上説明したように、本発明によれば、ロチゴチン及び/又はその薬学的に許容される塩の経時安定性に特に優れたロチゴチン含有貼付剤を提供することが可能となる。
【要約】
支持体層及び粘着剤層を備え、前記粘着剤層がロチゴチン及びロチゴチンの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有するロチゴチン含有貼付剤であり、
前記粘着剤層が、チオグリコール酸及びチオグリコール酸の薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種と、粘着基剤と、をさらに含有する
ことを特徴とする、ロチゴチン含有貼付剤。