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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】MEMS表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/08 20060101AFI20230801BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G02B26/08 E
B81B3/00
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021517341
(86)(22)【出願日】2019-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2019053713
(87)【国際公開番号】W WO2020069482
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】62/739,175
(32)【優先日】2018-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521005487
【氏名又は名称】IGNITE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】イシイ フサオ
(72)【発明者】
【氏名】ビクター ストーン
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 俊敬
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-247815(JP,A)
【文献】特開2008-058965(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101160257(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0284057(US,A1)
【文献】米国特許第08331010(US,B2)
【文献】米国特許第07183618(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に実装された電子回路と、
前記電子回路に電気的に接続された電極と、
前記基板に実装されたエッチング停止層と、
前記基板に実装されるヒンジベースと
前記ヒンジベースに取り付けられたヒンジと、を備え、前記ヒンジは、
前記ヒンジベースから垂直に延在する垂直支持部と、前記垂直支持部と接触する水平に延在するヒンジタブとを備え、前記ヒンジはドープされた半導体からなり、
可動ミラーであって、前記電極および該可動ミラーの間に電圧を印加することによって、前記電極に静電吸着される可動ミラーと、
前記可動ミラーと前記ヒンジタブを連結するミラービアとを備え、前記可動ミラーは、前記電極と前記可動ミラーとの間に電圧を印加することによって、前記電極に静電吸着され、前記可動ミラーの移動が前記ヒンジタブと前記垂直支持部との相対位置を変化させ、
前記基板に実装され、前記可動ミラーが前記電極または前記エッチング停止層に接触する前に、前記可動ミラーの動きを機械的に停止させるストッパを備え、
前記ヒンジは、前記ヒンジベースに接触するヒンジ脚部をさらに備えており、
前記ヒンジベースは、前記基板に取り付けられたヒンジ支持部または前記ヒンジ支持部に取り付けられた前記ストッパを備えており、
前記ヒンジ脚部は水平に、前記ヒンジタブとは反対の方向に延在し、
前記ヒンジは、
前記ヒンジ脚部の縁部とは反対側に、前記垂直支持部に対して平行に延在する第2の垂直支持部と、
前記第2の垂直支持部と接触し、前記ヒンジタブとは反対の方向に延在する第2の水平に延在するヒンジタブと、
前記可動ミラーを前記第2の水平に延在するヒンジタブに結合する第2のミラービアと、
をさらに備える、
ことを特徴とする、微小電気機械システム(MEMS)装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ドープされた半導体は、インサイチュ非晶質シリコンである、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記ヒンジ脚部の底面は、前記ヒンジベースの上面の下方にあること、
前記ヒンジ脚部のヒンジヒールは、前記ヒンジ脚部と前記垂直支持部とが交わる部分が側面視で湾曲していること、または
前記ヒンジ脚部は、前記ストッパ内に埋没していること、
の少なくとも1つを特徴とする、MEMS装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記ヒンジ脚部の前記ヒンジベースに対する表面接着性は、前記ヒンジの垂直方向の剪断力を上回る、ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項5】
請求項1または2において、
記垂直支持部および前記第2の垂直支持部は、前記ヒンジベースの中心から、前記可動ミラーの傾斜方向に沿って、等距離離間されており、
前記ヒンジタブは、前記垂直支持部の上面と前記第2の垂直支持部との間に延在し、
前記ミラービアは、前記ヒンジが水平ねじれヒンジとなるように、前記ヒンジタブの中心に配置される、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項6】
請求項1または2において、
前記ヒンジタブは、前記垂直支持部の中心から等距離延在し、前記MEMS装置はさらに、
記ミラービアおよび前記第2のミラービアは、前記ヒンジが片持ち状となるように、前記ヒンジタブの中心から、前記可動ミラーの傾斜方向に、等距離離間されている、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項7】
請求項1または2において、
前記ヒンジタブに隣接する前記垂直支持部の表面張力と、前記ヒンジベースに隣接する前記垂直支持部の表面張力との差は1%を超える、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項8】
請求項1または2において、
前記可動ミラーに対する前記ストッパの接点は水平であり、前記ストッパの最長寸法の25%未満の回転半径で丸みを帯びている、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項9】
請求項8において、
側面視における、前記可動ミラーに対する前記ストッパの傾斜角度は、100度未満である、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項10】
請求項1または2において、
前記ヒンジタブに対する前記ミラービアの表面接着性、および前記可動ミラーの表面に対する前記ミラービアの表面接着性の少なくとも一方が、前記ヒンジの垂直方向の剪断力を超える、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項11】
請求項1または2において、
前記ミラービアは、チタン、窒化チタン、またはこれらの組み合わせを含むバリア金属によって、カプセル化されており、前記ミラービアおよび前記可動ミラーが、導電性材料によって電気的に接続されることにより、前記可動ミラーと前記ヒンジとの間の電気抵抗が10Gオーム未満となることを可能にする、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項12】
請求項1または2において、
前記ミラービアは、回転半径が、前記ミラービアの幅の50%未満の丸みを帯びた角を有する、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項13】
請求項1または2において、
シランの流量、前記基板の温度、またはCVDチャンバ内の圧力の少なくとも1つを調整することにより、犠牲層を除去した後のミラーの傾斜角度が、プラスマイナス0.5度の範囲となる、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項14】
請求項1または2において、
前記垂直支持部の幅および/または高さの少なくとも一方が、100A以上、1000A以下である、または、前記垂直支持部の抵抗が5Mオーム以上、1Gオーム以下である、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項15】
請求項14において、
前記垂直支持部の抵抗の熱係数は、前記ヒンジの温度が高いほど前記ヒンジの抵抗が低くなるように負である、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項16】
請求項1または2において、
前記垂直支持部に対する前記ヒンジタブの安息角度は、前記基板の表面に対して80度以上、90度以下である、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項17】
請求項1または2において、
前記ストッパと前記ヒンジタブとの間の距離は、前記垂直支持部と前記可動ミラーの縁部との間の距離の半分未満である、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項18】
請求項1または2において、
前記ヒンジタブの高さは、前記垂直支持部の幅を上回る、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項19】
請求項1または2において、
前記垂直支持部は、前記ヒンジベースに隣接する溝を有する、ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項20】
請求項1または2において、
前記垂直支持部は、前記ヒンジタブに隣接するトップから前記ヒンジベースに隣接する底部にテーパー状となっている、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項21】
請求項1または2において、
前記ヒンジタブは、バリア金属を有し、酸化層または窒化層を有さない、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項22】
請求項1または2において、
前記ミラービアの垂直高さは、0.5ミクロン未満である、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項23】
請求項1または2において、
前記可動ミラーと前記エッチング停止層との間の距離は、3ミクロン未満である、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項24】
請求項1または2において、
前記ミラービアは、丸みのある水平形状、または直角の水平形状を有する、ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項25】
基板と、
前記基板に実装された電子回路と、
前記電子回路に電気的に接続された電極と、
前記基板に実装されたエッチング停止層と、
前記基板に実装されるヒンジベースと
前記ヒンジベースに取り付けられたヒンジと、を備え、前記ヒンジは、
前記ヒンジベースから垂直に延在する垂直支持部と、前記垂直支持部と接触する水平に延在するヒンジタブとを備え、前記ヒンジはドープされた半導体からなり、
可動ミラーであって、前記電極および該可動ミラーの間に電圧を印加することによって、前記電極に静電吸着される可動ミラーと、
前記可動ミラーと前記ヒンジタブを連結するミラービアとを備え、前記可動ミラーは、前記電極と前記可動ミラーとの間に電圧を印加することによって、前記電極に静電吸着され、前記可動ミラーの移動が前記ヒンジタブと前記垂直支持部との相対位置を変化させ、
前記基板に実装され、前記可動ミラーが前記電極または前記エッチング停止層に接触する前に、前記可動ミラーの動きを機械的に停止させるストッパを備えるMEMS装置であって
前記ヒンジタブは、前記垂直支持部の中心から等距離延在し、前記MEMS装置はさらに、
前記可動ミラーを前記ヒンジタブに連結する第2のミラービアを備えており、前記ミラービアおよび前記第2のミラービアは、前記ヒンジが片持ち状となるように、前記ヒンジタブの中心から、前記可動ミラーの傾斜方向に、等距離離間されている、
ことを特徴とする、微小電気機械システム(MEMS)装置。
【請求項26】
基板と、
前記基板に実装された電子回路と、
前記電子回路に電気的に接続された電極と、
前記基板に実装されたエッチング停止層と、
前記基板に実装されるヒンジベースと
前記ヒンジベースに取り付けられたヒンジと、を備え、前記ヒンジは、
前記ヒンジベースから垂直に延在する垂直支持部と、前記垂直支持部と接触する水平に延在するヒンジタブとを備え、前記ヒンジはドープされた半導体からなり、
可動ミラーであって、前記電極および該可動ミラーの間に電圧を印加することによって、前記電極に静電吸着される可動ミラーと、
前記可動ミラーと前記ヒンジタブを連結するミラービアとを備え、前記可動ミラーは、前記電極と前記可動ミラーとの間に電圧を印加することによって、前記電極に静電吸着され、前記可動ミラーの移動が前記ヒンジタブと前記垂直支持部との相対位置を変化させ、
前記基板に実装され、前記可動ミラーが前記電極または前記エッチング停止層に接触する前に、前記可動ミラーの動きを機械的に停止させるストッパを備え、
前記垂直支持部は、前記ヒンジベースに隣接する溝を有する、
ことを特徴とする、微小電気機械システム(MEMS)装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年9月29日に出願された米国仮特許出願第62/739175号に基づく優先権を主張するものであり、その開示内容をここに援用する。また、本出願は米国特許第7183618号、および第8331010号に関するものであり、その開示内容全体をここに援用する。
【0002】
本開示は、可動ミラーを担持する垂直ヒンジを有した微小電気機械システム(MEMS)表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイに使用されるMEMS装置は、オン位置とオフ位置とに切り替わるミラーを担持する垂直ヒンジを有することがある。正確に位置決めされた垂直ヒンジが望まれる。
【発明の概要】
【0004】
MEMS装置は、基板と、前記基板に実装される電子回路と、前記電子回路に電気的に接続された電極とを備える。前記MEMS装置は、前記基板に実装されたエッチング停止層と、前記基板に実装されたヒンジベースと、前記ヒンジベースに取り付けられたヒンジとを備える。前記ヒンジは、前記ヒンジベースから垂直に延在する垂直支持部と、前記垂直支持部と接触する水平に延在するヒンジタブとを備え、前記ヒンジはドープされた半導体からなる。前記MEMS装置は、可動ミラーと、前記可動ミラーを前記ヒンジタブに連結するミラービアとを有する。前記可動ミラーは、前記電極と前記可動ミラーとの間に電圧を印加することによって、前記電極に静電吸着され、前記可動ミラーの移動が前記ヒンジタブと前記垂直支持部との相対位置を変化させる。前記MEMS装置は、前記基板に実装され、前記可動ミラーが前記電極または前記エッチング停止層に接触する前に、前記可動ミラーの動きを機械的に停止させるストッパを備える、前記ドープされた半導体は、インサイチュ非晶質シリコンであってもよい。
【0005】
本明細書に教示される実装形態とこれらの実装形態および他の実装形態の変形例を、図を参照して以下に詳細に説明する。
【0006】
本開示は、添付の図面と併せて読まれるとき、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的プラクティスによれば、図面の種々の特徴が実寸大ではないことを強調しておく。それどころか、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大または縮小されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本明細書に教示される第1の実装形態による、MEMS装置の斜視図である。
図2】オフ位置における、図1のMEMS装置を示す側面図である。
図3】オン位置における、図1のMEMS装置を示す側面図である。
図4】本明細書に教示される第2の実装形態による、MEMS装置の斜視図である。
図5】オフ位置における、図4のMEMS装置を示す側面図である。
図6】本明細書に教示される第3の実装形態による、MEMS装置の斜視図である。
図7】オフ位置における、図6のMEMS装置を示す側面図である。
図8】本明細書に教示される第4の実装形態による、MEMS装置の斜視図である。
図9】オフ位置における、図8のMEMS装置を示す側面図である。
図10】本明細書に教示される第5の実装形態による、MEMS装置の斜視図である。
図11】オフ位置における、図10のMEMS装置を示す側面図である。
図12】本明細書に教示されるヒンジを示す、異なる2つの図である。
図13】第1の変形例によるヒンジを示す写真である。
図14】第2の変形例によるヒンジを示す写真である。
図15】第3の変形例によるヒンジを示す写真である。
図16】本明細書に教示されるMEMS装置の構成例を詳細に説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に教示されるMEMS装置は、ミラーを担持する垂直ヒンジ(または単にヒンジ)を備えており、前記MEMS装置が動作する際に前記ミラーの正確な位置決めを行う。前記ミラーは、オフ位置にあるとき、基板の表面にほぼ平行であり、ストッパと接触するまで傾けられてオン位置となる。前記ヒンジは、垂直支持部に加えて、脚部と、ドープされた非晶質シリコンからなる1または複数のヒンジタブなどの構成部品からなる垂直ヒンジである。これら構成要素は、リン酸またはヒ酸でインサイチュ・ドープされた非晶質シリコンなど、ドープされた半導体の単一の堆積として同時に堆積されてもよい。前記ヒンジタブは、バリア金属を有し、酸化層または窒化層を有さない。前記垂直支持部は、穴の側壁として作られる。前記ヒンジタブの高さは、前記垂直支持部の幅を上回る。前記ストッパと前記ヒンジタブとの間のギャップは、堆積によって正確に制御される犠牲層の厚さによって決定される。厚さの正確な制御を困難にするエッチングや化学機械研磨(CMP)は必要とされない。結果として得られるギャップによって、オン位置におけるミラーの傾斜角度を正確に制御することが可能となる。さらに、前記ヒンジの残留応力は、基板表面に対する電圧のないミラーの角度である中立角度を決定する。前記残留応力は、シリコン堆積の処方によって、圧縮状態から引張状態に制御することができる。したがって、本明細書における前記ヒンジの残留応力は、中立位置が、基板の表面にほぼ平行なオフ位置に対応するようなものである。
【0009】
本明細書に記載する前記ヒンジの強度によって、当該ヒンジが組み込まれMEMS表示装置は、動作中の高い温度に耐えることができる。前記ヒンジは、他の水平ヒンジの構成に比べて比較的小さい形状因子を有する。
【0010】
本明細書に教示される第1の実装形態によるMEMS装置1000について、図1ないし図3を参照しながら説明する。ヒンジの詳細が不明瞭にならないため、またMEMS装置1000の配置について種々の変形例があるため、これら図面においては、MEMS装置1000の特定の構成部品のみが示されている。図16を参照して、MEMS装置1000を構成し得る構成要素についてより詳細に記載する。
【0011】
図16に示されるように、MEMS装置301は、基板311を含む。基板の少なくとも表面には、窒化アルミニウム(AIN)、アルミナ(AISO)、シリコンまたは酸化ハフニウム(HfO)が含まれていてもよい。基板311には、1または複数の電子回路が形成されており、この例では1または複数のトランジスタ316、317が形成されている。また基板311には層間誘電体312,313,314が形成されている。具体的には、層間誘電体312は、基板311および電子回路の一部(ここではトランジスタ316,317)に形成されている。層間誘電体313は、層間誘電体312上に形成され、層間誘電体314は層間誘電体313上に形成されている。層間誘電体の数はこれよりも多くても少なくてもよい。本明細書において、層間誘電体を絶縁層と称することもある。
【0012】
エッチング停止層315はトップ層として形成されている。電極321、322、323は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)等からなる。電極321、322、323は、ダマシンプロセスによって層間誘電体314に埋め込まれるように(例えば、埋設されるように)形成されてもよい。電極321、322、323と層間誘電体314は、同時に化学機械研磨され、同一面上に位置合わせされる。エッチング停止層315は、電極321、322、323および層間誘電体314上に形成され、同一表面上で平坦化される。
【0013】
MEMS装置301は、層間誘電体312,313,314間の電気配線用に、金属層336、337、338、339、340、341と、電極321、322、323とを有している。また、MEMS装置301は、電気配線と電極とを接続するビア327、328、329、330、331、331、332、333、334、335を有している。概して、MEMS装置301は、層間誘電体314に埋め込まれ、層間誘電体によって絶縁される金属層とビアを介して、MEMS装置301の1または複数の電子回路と電気的に接続する1または複数の電極を有している。本明細書に教示されるMEMS装置における電極、金属層、ビアの数はMEMS装置301内の電子回路およびこれらの配置に基づいて変更可能である。
【0014】
図16に示されるように、ビア327は電極321から、層間誘電体314を通って、層間誘電体313上に形成される金属層336への導電経路を提供する。ビア328は、層間誘電体313上に形成される金属層336から、層間誘電体313を通って、層間誘電体312上に形成される金属層337への導電経路を提供する。ビア329は、層間誘電体312上に形成される金属層337から、層間誘電体312を通って、基板311への導電経路を提供する。ビア327、328、329、金属層336、337、および電極321は、基板311、層間誘電体312、および層間誘電体313の接点または導電性配線部分を介して電子回路へ電気的に配線または接続されていてもよい。
【0015】
同様に、ビア330は、層間誘電体314上に形成される電極322から、層間誘電体314を通って、層間誘電体313上に形成される金属層338への導電経路を提供する。ビア331は、層間誘電体313上に形成される金属層338から、層間誘電体313を通って、層間誘電体312上に形成される金属層339への導電経路を提供する。ビア332は、層間誘電体312上に形成される金属層339から、層間誘電体312を通って、基板311への導電経路を提供する。ビア330、331、332、金属層338、339、および電極322は、基板311、層間誘電体312、および層間誘電体313の接点または導電性配線部分を介して電子回路へ電気的に配線または接続されていてもよい。
【0016】
ここで、図16には、電極と電子回路との接続として、電極323と、1または複数のトランジスタ316,317の接点と接続が示されている。ビア333は、層間誘電体314上に形成される電極323から、層間誘電体314を通って、層間誘電体313上に形成される金属層340への導電経路を提供する。ビア334は、層間誘電体313上に形成される金属層340から、層間誘電体313を通って、層間誘電体312上に形成される金属層341への導電経路を提供する。ビア335は、層間誘電体312上に形成される金属層341から、層間誘電体312を通って、基板311に搭載される1または複数のトランジスタ316,317それぞれへの導電経路を提供する。ビア333、334、335、金属層340、341、および電極323は、層間誘電体312、および層間誘電体313の接点または導電性配線部分を介して電子回路へ電気的に配線または接続されていてもよい。
【0017】
さらに、MEMS装置301は、電極322に直接または電極322に取り付けられた別の導電性支持構造に形成されたヒンジ352を有している。前記導電性支持構造は、本実施例を示す各図に示されるように、電極322と同じ材料から形成されていてもよい。MEMS装置301は、ヒンジ352の上側に形成されたミラー素子351を有している。本実施例において、ミラー素子351(ここでは、ミラーとも称する)は、MEMS装置に組み込まれ得る可動素子である。一方、ヒンジ352の下部には機械的ストッパ308が形成されている。図示される機械的ストッパ308は、ヒンジ352と同一の材料から一体的に形成されており、既定の、または非励起位置にあるミラー素子351に平行であり、基板311の実装面および各層に対して平行に延在する。
【0018】
基板311は、単結晶シリコンまたは別の基板材料で形成されていてもよい。本実施例において、トランジスタ316、317は相補形金属酸化膜半導体(CMOS)トランジスタであるが、他の電子回路であってもよい。層間誘電体312、313、314は、二酸化シリコン(SiO)等の絶縁材料を含む層間絶縁膜である。
【0019】
金属層336、337、338、339、340、341は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはアルミニウム銅合金(Al-Cu)からなる。
【0020】
電極321、322、323は、タングステン(W)またはビアと同じ材料からなる。各ビア327、328、329、330、331、332、333、334、335は、MEMS装置301の少なくとも一層を貫通して延在する貫通孔として形成されており、導電性材料(本実施例ではタングステン(W))が充填されている。
【0021】
ヒンジ352は、ミラー素子351を支持する変形可能な部材である。ヒンジ352の異なる実装形態について、以下でより詳細に述べる。
【0022】
ミラー素子351は、光源からの光を反射可能な部材である。ミラー素子351は、チタン(Ti)、タングステン(W)等からなる支持層と、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)等の反射率の良い材料、またはこれらの組み合わせからなるミラー層とを有する。
【0023】
ミラー素子351は電極323に静電吸着され、ヒンジ352は、変形することによりミラー素子351のオン位置に傾斜する。これは、基板311に形成された電子回路(例えば、トランジスタ316、317)および一般的にその他の場所に実装され、MEMS装置301(例、配線部分および/またはコネクタ)に電気的に結合される電圧源によって、可動素子(例えば、ミラー素子351)と電極323との間に電圧を印加することから生じ得る。電圧によって吸着力が発生する。ミラー素子351は、ストッパ308との接触により、エッチング停止層315と接触することが防止される。すなわち、機械的ストッパ308は、ヒンジ352の変形によってミラー素子351が電極323の表面と接触することのないように、電極321、323上方(高さ)に実装され、充分なサイズ(例えば長さ)を有する。例えば、機械的ストッパ308の長さは、ミラー素子351が傾いた際に、ミラー素子351に接触し、MEMS装置のその他の部位にミラー素子351が接触することを防止する長さとなっている。これにより、電気的短絡を防止することができる。電圧が印加されなくなると、ヒンジ352は、図16に示されるミラー素子351のオフ位置に戻る。
【0024】
再び図1ないし図3を参照すると、MEMS装置1000のトップ層のみとともに、ヒンジと当該ヒンジのミラーへの接続に関する詳細が示されている。図1の斜視図には、詳細を見やすくするために、これらトップ層の輪郭のみが示されており、図2の側面図(オフ位置)および図3の側面図(オン位置)についてもこれら上層部分のみが示されている。具体的には、これら図には、ヒンジ(垂直支持部1001、ヒンジ脚部1002、ヒンジタブ1003、1004)、ミラービア1005、1006、ミラー1007、ストッパ1008、ヒンジ支持部1009、エッチング停止層1010、電極1011、1013、ビア1012、1014が示されている。
【0025】
ミラー1007の構造は、ミラー素子351と同様であってもよい。ストッパの構造は、ストッパ308と同様であってもよい。エッチング停止層1010の構造は、エッチング停止層315と同様であってもよい。電極1011の構造は、電極321と同様であってもよく、電極1013の構造は、電極323と同様であってもよい。ビア1012、1014は、ビア327、333と同様の構造を有していてもよい。ビア1012、1014の構造は、ビア327、333と同様であってもよい。ビア1012の構造は、ビア327と同様であってもよく、ビア1014の構造はビア333と同様であってもよい。ヒンジ支持部1009の構造は、電極322に追加で実装される導電性支持構造に関して記載したものと同様であってもよい。
【0026】
ミラービア1005、1006およびヒンジ支持部1009は、ヒンジを支持する。より具体的には、ヒンジは、ヒンジ支持部1009に形成されたヒンジ脚部1002と、ヒンジ脚部1002からほぼ垂直に延在する垂直支持部1001とを有する。ヒンジタブ1003は、垂直支持部1001のトップから、ヒンジ脚部1002とは反対の径方向に延在する。ヒンジタブ1003は、ミラービア1005によってミラー1007に固定される。ヒンジタブ1004は、ミラービア1006によってミラー1007に固定される。ヒンジ脚部1002、ヒンジタブ1003、およびヒンジタブ1004は、全体的に同一の半径方向線に沿って(例えば、当該半径方向を中心に)揃えられる。次に、ヒンジの一般的な構成について説明する。
【0027】
まず、電極1011、1013をタングステン(W)で形成する場合、エッチングよりも、例えばダマシンまたはデュアルダマシンプロセスが適している。酸化物層をパターニングし、エッチングすることにより、電極と同様の形状をした穴を形成し、化学蒸着(CVD)によりタングステンを堆積させる。得られた表面を化学機械研磨により研磨する。デュアルダマシンの場合、タングステン(W)からも形成できるビア1012、1014、および電極1011、1013が同時に堆積される。ヒンジ支持部1009およびストッパ1008は、両方とも別のデュアルダマシンプロセスによって作成することができる。続いて、ストッパ1008にヒンジを形成する。ストッパ1008が無い場合、すなわち、1または複数のストッパが、MEMS基板311等、MEMS基板の他の場所に位置する場合、ヒンジはヒンジ支持部1009に形成してもよい。これは、図12ないし図15を参照して説明することができる。
【0028】
まず、図12を参照されたい。ベース12005に酸化物層12001を(例えばCVDによって)堆積させ、底部がヒンジベース12005に到達する穴をエッチングする。ヒンジベース12005は、ストッパ1008としてもよく、ストッパをヒンジ支持部1009以外の場所に設ける場合はヒンジ支持部1009としてもよい。穴は、角穴であることが望ましい。化学機械研磨により表面が平坦化される。その後、非晶質シリコンが(例えばCVDによって)堆積され、穴の側壁を覆う。ヒンジの残留応力は、シリコン堆積の処方(例えば、ドーピング量)を調整することによって、最終的なヒンジを圧縮状態から引張状態に制御することができる。次に、フォトレジスト層が塗布され、穴の側壁のうち、垂直支持部1001およびヒンジタブ1003、1004を形成する1つの側壁のみを残して3つの側壁をエッチングによって除去するように、リソグラフィによってパターニングされる。このようにして、ヒンジの構成部品(本実施例では、垂直支持部1001、ヒンジ脚部1002、およびヒンジタブ1003、1004)が同時に1つのリン酸またはヒ酸でインサイチュ・ドープされた非晶質シリコンとして堆積される。垂直支持部1001の厚さは、100A以上、1000A以下であってもよい。垂直支持部1001の抵抗は、5MΩ以上、1GΩ以下であってもよい。垂直支持部1001の抵抗の熱係数は、ヒンジの温度が高いほどヒンジの抵抗が低くなるように負であってもよい。
【0029】
垂直支持部1001の高さは穴の深さによって決定され、穴の深さは犠牲酸化物層12001のCVD堆積によって決定される。これにより、深さの制御を困難にする化学機械研磨やエッチングが含まれないため、正確な制御が可能となる。垂直支持部1001の高さを正確に制御することにより、ミラー1007の傾斜角度を決定するストッパとヒンジタブ1004との間のギャップが制御される。ミラー1007の傾斜角度の制御は、それがMEMS装置のオン位置を表し、MEMS装置が組み込まれた表示装置の外観に影響し得るので重要である。
【0030】
非晶質シリコンの堆積およびエッチングの後、シリコンヒンジに対して良好な接着力を有するタングステン(W)等の材料でミラービア1005、1006を形成してもよい。材料は、少なくとも500Mpanessを超えるビッカース硬さを有する材料であってもよく、またはそのような材料を含んでもよい。ダマシンプロセスを使用してもよい。シリコン、および/またはアルミニウム(Al)に対するタングステン(W)の接着性を向上させるために、タングステン(W)を堆積する前に、バリア金属として任意の1または複数のタイタニウム(Ti)および/または窒化チタン(TiN)層を使用してもよい。ミラービア1005、1006はまた、ミラー1007の材料であるアルミニウム(Al)等が、非晶質シリコンへのマイグレーションまたは拡散を回避するのに有用である。アルミニウム(Al)のマイグレーションは、非晶質シリコンの強度を低下させる。ミラービア1005、1006の垂直高さは、0.5ミクロン未満であってもよい。ミラービア1005、1006の断面は、丸みのある形状または四角形であってもよい。
【0031】
次に、ミラービア1005、1006上にアルミニウムを堆積してもよく、ミラーパターンをエッチングしてミラー1007を形成する。エッチングで使用するシランの流量、基体の温度、またはアルミニウムの堆積に使用されるCVDチャンバ内の圧力の少なくとも1つを調整することにより、エッチングで使用する犠牲層を除去した後のミラーの傾斜角度は、(例えば、ストッパとの接触に基づく)所望の傾斜角度のプラスマイナス0.5度の範囲内となる。ミラー1007とエッチング停止層1010との間の距離は、3ミクロン未満であり、エッチング停止層1010は電極1011、1013の上方に位置する。
【0032】
これらのステップの結果、ミラービア1005、1006およびミラー1007は、導電性材料によって電気的に接続され、ミラー1007とヒンジとの間の電気抵抗が10GΩ未満となる。ミラービア1005、1006のいずれか一方または両方は、回転半径がミラービアの幅の50%未満である丸みのある角を有していてもよい。ストッパ1008等のヒンジベースと、ヒンジタブ1003等のヒンジタブとの距離は、垂直支持部1001とミラー1007の縁部との距離の半分未満であってもよい。
【0033】
上記のとおり形成されたヒンジにおいて、ヒンジ脚部のヒンジベースに対する表面接着性は、ヒンジの垂直方向の剪断力を超えることがある。ミラービアのヒンジタブ表面に対する表面接着性は、ヒンジの垂直方向の剪断力を超えることがある。ミラービアのミラー表面に対する表面接着性は、ヒンジの垂直方向の剪断力を超えることがある。ヒンジタブに隣接する垂直支持部の表面張力とヒンジベースに隣接する垂直支持部の表面張力との差は1%を超える場合もある。
【0034】
図12に示すヒンジにおいて、垂直支持部1001はトップまたは上部(すなわち、ヒンジタブ1004の領域)の厚みが、ヒンジのヒール12003の領域における垂直支持部1001の底部よりも厚い。これにより、ヒンジがオン位置とオフ位置との間で変化する際に、ヒンジの回転中心の移動を回避することに寄与し得る。また、ヒンジの幅は、トップまたは上部がヒール12003周辺の領域よりも狭くなっている。これにより、ヒンジの強度およびベース12005(例えば、ストッパ1008、またはヒンジ支持部1009)に対するヒンジ(例えば、ヒンジ脚部1002)の接着性が増加する。図12のヒンジは、厚みのある上部領域と、幅のある底部領域との両方を有するが、本明細書に教示されるヒンジはこれら特徴のいずれか一方のみを有していてもよい。本開示のヒンジは、ヒンジタブに隣接するトップから、ヒンジベースに隣接する底部にテーパー状となっていてもよい。
【0035】
図13の写真には、(例えば、ヒール12003における)ヒンジ底部の幅がトップの幅よりも大きい、フルーティング効果を有するヒンジが示されている。上述の積層とともに、図13の変形例ではリソグラフィステップから得られるフェンス13002が示されている。フェンス13002は、ヒンジの垂直方向の高さに寄与する。フェンス13002の高さ、またはヒンジ材料の、少なくとも残留壁を形成する部分の高さは、ベース12005から垂直支持部1001(したがって、ヒンジタブ1003)の上面の垂直高さの20%以下である。
【0036】
ヒンジの構造の別の変形例を図14に示す。図14の写真では、ヒンジ脚部1002のヒール12003は丸みを帯びている。略直角の輪郭をしたヒール(例えば、図15に示される鋭利な角を有するヒール15001)と比較して、丸みのあるヒールはヒンジの強度を増加させる。強度を増加させることによって、本開示によればヒンジが故障することなく行えるオン・オフのサイクル数が増加することになる。例えば、電圧源を停止した後にヒンジがオフ位置に戻らなくなると故障が発生する可能性がある。
【0037】
ヒールの形状に関わらず、ヒール15003は、図15に示されるようにベース12005に埋設されてもよい。すなわち、非晶質シリコンが塗布される場合、シリコン層が基体12005の表面上方になるように、ベース12005の表面に穴(例えば、角穴)がエッチングされてもよい。これにより、ベース12005表面に実装されるヒール15001等のヒール上のヒンジの強度が増加する。ヒール15003がさらに丸みを帯びた形状に形成される実施例では、ヒンジの強度がさらに増加する。
【0038】
上述の変形例のいずれかによりヒンジを用いて形成されるMEMS装置において、ストッパとミラーの接点は水平であり、ストッパの最長寸法の25%未満の回転半径で丸みを帯びている。ミラーに対するストッパの接点の傾斜角度は、図3のMEMS装置の側面図に示されるように100度未満であってもよい。垂直支持部1001に対するヒンジタブ1003の安息角度は、図2に示される基板311等の基板の表面に対して80度以上、90度以下である。したがって、オフ位置は、基板表面に対してミラー1007が水平または略水平の状態である。
【0039】
図4は、本明細書に教示されるMEMS装置4000の第2の実装形態を示す斜視図であり、図5はオフ位置にあるMEMS装置の側面図である。MEMS装置4000の構造は、MEMS装置1000のものと実質的に同様である。唯一、電極とエッチング停止層に関する構造が異なる。MEMS装置1000では、エッチング停止層1010が電極1011、1013に接触しておりこれら上方に設けられている。MEMS装置4000では、エッチング停止層1010が電極1011、1013の下方に設けられている。図5においてより明らかなように、電極1011、1013は、層間誘電体312、313、314と同様の1または複数の層間誘電体によってエッチング停止層1010とは分離されている。この構造は、MEMS装置1000の構造に関して説明した製造工程と比較してより多くのステップを必要とする。しかしながら、MEMS装置4000においてミラー1007の動作を制御する駆動電圧は、MEMS装置1000のものと比較して低くすることができる。
【0040】
図6は、本明細書に教示されるMEMS装置6000の第3の実装形態を示す斜視図であり、図7はオフ位置にあるMEMS装置6000の側面図である。MEMS装置6000の構造は、MEMS装置1000のものと実質的に同様である。唯一、ヒンジに関する構造が異なる。MEMS装置6000のヒンジは、共通脚部1002とは反対の垂直方向上側に延在する二つの垂直支持部6001A、6001Bを有する。垂直支持体6001A、6001Bは、本明細書において二重垂直支持部と称することもある。ヒンジタブ6003Aは、垂直支持部6001Aのトップから径方向に離間するように延在し、ヒンジタブ6003Bは、垂直支持部6001Bの上部から径方向に離間するように延在する。ヒンジタブ6003A、6003Bは、同一の径方向に沿って延在し、本明細書では二重水平タブと称することもある。ミラー1007は、ミラービア1006を介してヒンジタブ6003Aに固定され、ミラー1007は、ミラービア1005を介してヒンジタブ6003Bに固定される。
【0041】
垂直ヒンジは、脚部1002と、垂直支持部6001A、6001Bとを備え、ヒンジタブ6003A、6003Bは、それぞれ同様に垂直支持部1001の脚部1002とヒンジタブ1003が形成されている。すなわち、酸化物層12001の堆積、ベース12005に対する穴のエッチングの後、当該穴、側壁、および酸化物層12001の上面に、(例えばCVDによって)インサイチュ・ドープされた非晶質シリコンを堆積させる。その後、フォトレジスト層を塗布し、リソグラフィによってパターニングする。MEMS装置1000のヒンジは、側壁の3つをエッチング除去することによって形成されるが、MEMS装置6000のヒンジは穴の対向する側壁をエッチング除去するのみで形成される。続いて、ミラービア1005、1006およびミラー1007が上述のように形成されてもよい。
【0042】
MEMS装置6000の垂直ヒンジには、図12図15で説明したいずれかの変形例が盛り込まれていてもよい。ヒンジの構造、およびその変形例は、図4および図5のMEMS装置4000のように異なる積層構造のMEMS装置に組み込まれていてもよい。
【0043】
図8は、本明細書に教示されるMEMS装置8000の第4の実装形態を示す斜視図であり、図9はオフ位置にあるMEMS装置8000の側面図である。MEMS装置8000の構造は、MEMS装置1000のものと実質的に同様である。唯一、ヒンジに関する構造が異なる。MEMS装置8000のヒンジは、垂直支持部8001を備えており、垂直支持部8001から、2つのヒンジタブ8003A、8003Bが径方向に延在する。垂直支持部8001は、基体(ヒンジ支持部1009またはストッパ1008等)の対抗する縁部から、ミラー1007の傾斜方向に約等距離の位置において垂直に延在する片持ち状の部材である。垂直支持部8001は、基体の中心に位置していてもよい。ヒンジタブ8003A、8003Bは、垂直支持部8001から同一の径方向に沿って離間する方向に延在する。このように、ヒンジタブ8003A、8003Bは片持ち状の水平ヒンジと称することができる。ヒンジタブ6003A、6003B同様、ヒンジタブ8003A、8003Bは、同一の径方向に沿って延在しており、本明細書では二重水平タブと称することもある。ミラー1007は、ミラービア1006を介してヒンジタブ8003Aに固定され、ミラー1007は、ミラービア1005を介してヒンジタブ8003Bに固定される。
【0044】
垂直支持部8001とヒンジタブ8003A、8003Bとを備えるヒンジは、脚部1002、垂直支持部1001、およびヒンジタブ1003と同様に形成される。すなわち、酸化物層12001の堆積、ベース12005に対する穴のエッチングの後、(例えばCVDによって)インサイチュ・ドープされた非晶質シリコンを堆積させる。但し、この場合、穴の直径は上述したヒンジの穴の直径より小さくてもよく、穴の側壁だけでなく、穴全体が非晶質シリコンで満たされていてもよい。また、酸化物層12001の上面も覆われる。その後、フォトレジスト層を塗布し、リソグラフィによってパターニングする。MEMS装置1000のヒンジは、側壁の3つをエッチング除去することによって形成されるが、MEMS装置8000のヒンジは穴の対向する2つの側壁をエッチング除去するのみで形成されてもよい。続いて、ミラービア1005、1006およびミラー1007が上述のように形成されてもよい。
【0045】
MEMS装置8000の垂直ヒンジには、図12図15で説明したいずれかの変形例が盛り込まれていてもよい。すなわち、例えば、垂直支持部8001が脚部1002(すなわち、基体にヒンジを固定するもの)として機能するため、垂直支持部8001の底部は、溝が形成されていてもよく、トップと比較して厚みがあってもよく、丸みのある形状に形成されたり、基体に埋設されたり、またはこれら特徴の組み合わせを有していてもよい。ヒンジの構造、およびその変形例は、図4および図5のMEMS装置4000のように異なる積層構造のMEMS装置に組み込まれていてもよい。
【0046】
図10は、本明細書に教示されるMEMS装置10000の第5の実装形態を示す斜視図であり、図11はオフ位置にあるMEMS装置10000の側面図である。MEMS装置10000の構造は、MEMS装置1000の構造と実質的に同様である。唯一、ヒンジに関する構造が異なる。MEMS装置10000のヒンジは、水平に延在するヒンジタブ10003によって互いに離間する垂直支持部10001A、10001Bを備える。垂直支持部10001A、10001Bは、基体(ヒンジ支持部1009またはストッパ1008等)の対抗する縁部から、ミラー1007の傾斜方向に約等距離の位置において垂直に延在する。
【0047】
ミラー1007は、垂直支持部10001A、10001Bの間の中心に位置する単一のミラービア10005を介してヒンジタブ10003に固定される。垂直支持部10001A、10001Bの高さおよび間隔は、ミラー1007を電極1013に静電吸着させる際に、ミラー1007が基板の表面の層(ここでは、エッチング停止層1010)に接触しないように、ヒンジタブ10003の変形を制限するものとなっている。この変形によって、ヒンジタブ10003の水平長さに沿ってねじれが生じる。したがって、このヒンジは、水平ねじれヒンジと称することができる。
【0048】
垂直支持部8001とヒンジタブ8003A、8003Bとを備えるヒンジは、脚部1002、垂直支持部1001、およびヒンジタブ1003と同様に形成される。すなわち、酸化物層12001の堆積、ベース12005に対する穴のエッチングの後、(例えばCVDによって)インサイチュ・ドープされた非晶質シリコンを堆積させる。但しこの場合、複数の穴がエッチングされる。穴の直径は、図8および図9に関して記載された穴のように、図1図3に関する製造における穴の直径と比較して小さくてもよく、側壁だけでなく穴全体が非晶質シリコンで満たされる。また、酸化物層12001の上面も覆われる。その後、フォトレジスト層を塗布し、リソグラフィによってパターニングする。MEMS装置1000のヒンジは、側壁の3つをエッチング除去することによって形成されるが、MEMS装置8000のヒンジは、傾斜方向に延在する各穴の対向する2つの側壁をエッチング除去するのみで形成されてもよい。続いて、ミラービア10005およびミラー1007が上述のように形成されてもよい。
【0049】
MEMS装置10000のヒンジには、図12ないし図15で説明したいずれかの変形例が盛り込まれていてもよい。すなわち、例えば、垂直支持部10001A、10001Bが脚部1002(すなわち、基体にヒンジを固定するもの)として機能するため、垂直支持部8001の底部は、溝が形成されていてもよく、トップと比較して厚みがあってもよく、丸みのある形状に形成されたり、基体に埋設されたり、またはこれら特徴の組み合わせを有していてもよい。ヒンジの構造、およびその変形例は、図4および図5のMEMS装置4000のように異なる積層構造のMEMS装置に組み込まれていてもよい。
【0050】
特定の実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、この開示を限定として解釈されるべきでないことを理解されたい。本開示を読んだ後、当業者であれば様々な変更や修正が明らかとなるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内にあるすべての変更および修正を包含するものと解釈されることが意図される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16