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特許7322334スタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】スタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20230801BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230801BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230801BHJP
   C08K 5/057 20060101ALI20230801BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20230801BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08K3/04
C08K5/057
C08L7/00
B60C1/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019239135
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107503
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】岩國 佳祐
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222757(JP,A)
【文献】特開2019-112474(JP,A)
【文献】特開2019-131693(JP,A)
【文献】米国特許第10087306(US,B2)
【文献】特開2017-214508(JP,A)
【文献】特開2017-133026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム30~60質量部とポリブタジエンゴム40~70質量部を含むゴム成分100質量部に対して、カーボンブラック20~50質量部と、シリカ5~60質量部と、下記一般式(1)で表される環状アルコキシド0.1~20質量部と、を含む、スタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物。
【化1】
式中、Mは二価金属原子を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基置換アルキル基、アミノ基置換アルキル基またはチオール基置換アルキル基を表す。
【請求項2】
請求項1に記載のスタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物からなるトレッドを備えるスタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッドレスタイヤのトレッドに用いられるゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
凍結路を走行するための空気入りタイヤとしてスタッドレスタイヤがある。スタッドレスタイヤにおいては、氷盤路面での優れた走行性能(氷上性能)が求められる。また、氷上性能とともに、常温での湿潤路面における走行性能であるウェット性能も同時に改善することが望ましい。しかしながら、氷上性能とウェット性能を十分に満足するには至っていない。
【0003】
ところで、特許文献1には、加硫ゴムのヒステリシスを増大させることなく低歪みでの動バネ定数を向上するために、シリカ配合のゴム組成物に亜鉛グリセロレート等の特定の環状アルコキシドを配合することが開示されている。しかしながら、天然ゴムとポリブタジエンゴムを含む系に該環状アルコキシドを添加することにより、氷上性能とウェット性能のバランスを向上できることは記載されておらず、スタッドレスタイヤへの適用も示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第10087306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、氷上性能とウェット性能を向上することができるスタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物、およびそれを用いたスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るスタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物は、天然ゴム30~60質量部とポリブタジエンゴム40~70質量部を含むゴム成分100質量部に対して、カーボンブラック20~50質量部と、シリカ5~60質量部と、下記一般式(1)で表される環状アルコキシド0.1~20質量部と、を含むものである。
【0007】
【化1】
【0008】
式中、Mは二価金属原子を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基置換アルキル基、アミノ基置換アルキル基またはチオール基置換アルキル基を表す。
【0009】
本発明の実施形態に係るスタッドレスタイヤは、該スタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物からなるトレッドを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、氷上性能とウェット性能を向上することができ、また加工性も向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係るスタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物(以下、単にゴム組成物ともいう。)は、天然ゴムとポリブタジエンゴムを含むゴム成分に、カーボンブラックとシリカと特定の環状アルコキシドとを配合してなるものである。
【0012】
ゴム成分において、天然ゴム(NR)及びポリブタジエンゴム(BR)としては、特に限定されず、一般にスタッドレスタイヤトレッド用ゴム組成物に用いられる各種の天然ゴム及びポリブタジエンゴムを用いることができ、未変性ゴムでも変性ゴムでもよい。
【0013】
BRとしては、例えばシス含量(即ち、シス-1,4結合含有量)が90質量%以上のポリブタジエンゴムを用いてもよい。ここで、シス含量は、HNMRスペクトルの積分比により算出される値である。
【0014】
本実施形態において、ゴム成分100質量部は、天然ゴム30~60質量部と、ポリブタジエンゴム40~70質量部を含む。天然ゴムの含有量が30質量部以上でポリブタジエンゴムの含有量が70質量部以下であることにより、加工性及びウェット性能を向上することができる。また、天然ゴムの含有量が60質量部以下でポリブタジエンゴムの含有量が40質量部以上であることにより、氷上性能及びウェット性能を向上することができる。ゴム成分100質量部は、より好ましくは、天然ゴム40~60質量部と、ポリブタジエンゴム40~60質量部を含むことである。
【0015】
ゴム成分は、天然ゴムとポリブタジエンゴムのみで構成されてもよいが、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等の他のゴムを、本来の効果を損なわない範囲で、更に配合してもよい。
【0016】
本実施形態では、補強性充填剤として、カーボンブラック及びシリカが用いられる。カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。例えば、氷上性能やゴムの補強性などの観点から、カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(NSA)(JIS K6217-2)が70~150m/gであるものが好ましく用いられる。具体的にはSAF級(N100番台),ISAF級(N200番台),HAF級(N300番台)(ともにASTMグレード)のカーボンブラックが例示される。これら各グレードのカーボンブラックは、いずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0017】
シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。シリカのBET比表面積(JIS K6430に記載のBET法に準じて測定)は、特に限定されず、例えば100~300m/gでもよく、150~250m/gでもよい。
【0018】
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して20~50質量部である。カーボンブラックの配合量が20質量部以上であることにより、補強性を確保しつつ加工性を向上することができる。カーボンブラックの配合量が50質量部以下であることにより、ウェット性能を向上することができる。カーボンブラックの配合量は、より好ましくは、ゴム成分100質量部に対して25~45質量部である。
【0019】
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して5~60質量部である。シリカの配合量が5質量部以上であることにより、ウェット性能と氷上性能を向上することができる。また60質量部以下であることにより、加工性を向上することができる。シリカの配合量は、より好ましくは、ゴム成分100質量部に対して10~50質量部であり、10~40質量部でもよい。
【0020】
カーボンブラックとシリカの含有量の合計は、特に限定しないが、40~120質量部であることが好ましく、より好ましくは50~100質量部である。
【0021】
本実施形態に係るゴム組成物には、下記一般式(1)で表される環状アルコキシドが配合される。
【0022】
【化2】
【0023】
式(1)中、Mは二価金属原子を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基置換アルキル基、アミノ基置換アルキル基またはチオール基置換アルキル基を表す。
【0024】
天然ゴムとポリブタジエンゴムを含むゴム成分に、カーボンブラック及びシリカとともに、かかる特定の環状アルコキシドを配合することにより、氷上性能とウェット性能を向上することができ、また加工性も改善することができる。その理由は、これにより限定されることを意図するものではないが、次のように推測される。すなわち、環状アルコキシドがシリカ表面に結合し、表面を部分的にブロックすることで、シリカの凝集が緩和され、加工性が向上するとともに、ウェット性能および氷上性能が最大限に発揮されると考えられる。
【0025】
上記式(1)において、Mは、亜鉛原子(Zn)、カルシウム原子(Ca)またはマグネシウム原子(Mg)であることが好ましく、より好ましくは亜鉛原子である。
【0026】
上記R及びRにおいて、アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。またアルキル基の炭素数は1~30であることが好ましく、1~20でもよく、1~10でもよく、1~5でもよい。
【0027】
ヒドロキシ基置換アルキル基は、置換基としてヒドロキシ基を有するアルキル基であり、直鎖状でも分岐状でもよい。ヒドロキシ基置換アルキル基の炭素数は1~30であることが好ましく、1~20でもよく、1~10でもよく、1~5でもよい。
【0028】
アミノ基置換アルキル基は、置換基としてアミノ基を有するアルキル基であり、直鎖状でも分岐状でもよい。アミノ基置換アルキル基におけるアルキル基の炭素数は1~30であることが好ましく、1~20でもよく、1~10でもよく、1~5でもよい。ここで、アミノ基としては、1級アミノ基(-NH)だけでなく、炭化水素基(好ましくはアルキル基)を1つ又は2つ有する2級又は3級アミノ基でもよい。なお、2級又は3級アミノ基の場合、該炭化水素基の炭素数は合計で15以下であることが好ましい。
【0029】
チオール基置換アルキル基は、置換基としてチオール基を有するアルキル基であり、直鎖状でも分岐状でもよい。チオール基置換アルキル基の炭素数は1~30であることが好ましく、1~20でもよく、1~10でもよく、1~5でもよい。
【0030】
一実施形態において、Rが水素原子かつRがヒドロキシ基置換アルキル基であることが好ましく、より好ましくは、Rが水素原子かつRが炭素数1~5のヒドロキシ基置換アルキル基であり、更に好ましくは、Rが水素原子かつRがヒドロキシメチル基である。そのため、好ましい一実施形態に係る環状アルコキシドとしては、亜鉛グリセロレート、カルシウムグリセロレート又はマグネシウムグリセロレートが挙げられる。
【0031】
式(1)で表される環状アルコキシドの配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.1~20質量部であり、好ましくは0.5~15質量部であり、より好ましくは3~10質量部である。配合量が0.1質量部以上であることにより、氷上性能とウェット性能を向上しつつ加工性を向上することができる。また、配合量が20質量部以下であることにより、ウェット性能と加工性を良好なバランスに維持できる。
【0032】
本実施形態に係るゴム組成物には、更に石油樹脂が含まれてもよい。石油樹脂は、石油留分を重合して得られる樹脂であり、例えば、脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)、芳香族系石油樹脂(C9系石油樹脂)、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂(C5/C9系石油樹脂。)が挙げられる。
【0033】
脂肪族系石油樹脂は、炭素数4~5個相当の石油留分(C5留分)を重合して得られる樹脂であり、水添したものであってもよい。芳香族系石油樹脂は、炭素数8~10個相当の石油留分(C9留分)を重合して得られる樹脂であり、水添したものであってもよい。脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂は、C5留分とC9留分とを共重合して得られる樹脂であり、水添したものであってもよい。
【0034】
石油樹脂を配合する場合、その含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して1~20質量部でもよく、2~15質量部でもよい。
【0035】
本実施形態に係るゴム組成物には、更に防滑材が含まれてもよい。防滑材としては、特に限定されず、例えば、植物性粒状体、及び、植物の多孔質性炭化物の粉砕物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。防滑材を配合することにより、氷上性能を更に向上することができる。
【0036】
植物性粒状体としては、種子の殻、果実の核、穀物及びその芯材からなる群から選択された少なくとも1種を粉砕してなる粉砕物が挙げられ、例えば、胡桃(クルミ)の粉砕物などが挙げられる。多孔質性炭化物の粉砕物は、木、竹などの植物を材料として炭化して得られる炭素を主成分とする固体生成物からなる多孔質性物質を粉砕してなるものであり、例えば、竹炭の粉砕物(竹炭粉砕物)などが挙げられる。
【0037】
防滑材の平均粒径は、特に限定されず、例えば90%体積粒径(D90)が10~600μmでもよい。ここで、D90は、レーザ回折・散乱法により測定される粒度分布(体積基準)における積算値90%での粒径を意味する。
【0038】
防滑材を配合する場合、その含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して1~10質量部でもよく、1~5質量部でもよい。
【0039】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、シランカップリング剤、プロセスオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0040】
シランカップリング剤としては、スルフィドシランやメルカプトシランなどが挙げられる。シランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、シリカ配合量に対して2~20質量%であることが好ましい。
【0041】
プロセスオイルとしては、一般にゴム組成物に配合される各種オイルを用いることができる。例えば、鉱物油、即ちパラフィンオイル、ナフテンオイル、及びアロマオイルからなる群から選択される少なくとも1種の鉱物油を用いてもよい。プロセスオイルの含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して60質量部以下でもよく、5~50質量部でもよい。
【0042】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。また、加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、及びグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0043】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。例えば、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、カーボンブラック、シリカ及び式(1)の環状アルコキシドとともに、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を添加混合する。次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合して未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0044】
本実施形態に係るゴム組成物は、スタッドレスタイヤの接地面を構成するトレッドゴムに用いられる。スタッドレスタイヤとしては、乗用車用タイヤでもよく、トラックやバスの重荷重用タイヤでもよい。
【0045】
一実施形態に係るスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いてゴム用押し出し機などによりタイヤのトレッドゴムを作製し、他のタイヤ部材と組み合わせて未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を作製した後、例えば140~180℃で加硫成型することにより製造することができる。
【0046】
一実施形態において、スタッドレスタイヤとしての空気入りタイヤのトレッドゴムには、キャップゴムとベースゴムとの2層構造からなるものと、両者が一体の単層構造のものがあるが、接地面を構成するゴムに好ましく用いられる。すなわち、単層構造のものであれば、当該トレッドゴムが上記ゴム組成物からなり、2層構造のものであれば、キャップゴムが上記ゴム組成物からなることが好ましい。
【実施例
【0047】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
[ゴム組成物及びタイヤの作製及び評価]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く配合剤を添加し混練した(排出温度=160℃)。次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練した(排出温度=90℃)。これによりゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0049】
・NR:RSS#3
・BR:宇部興産(株)製「BR150B」(シス含量:97質量%)
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シーストKH」(N339)(NSA:93m/g)
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」(BET:205m/g)
・プロセスオイル:パラフィンオイル、JXTGエネルギー(株)製「プロセスP200」
・シランカップリング剤:エボニックインダストリーズ社製「Si69」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・石油樹脂:東ソー(株)製「ペトロタック90」(C5/C9系石油樹脂)
・アミノアルコキシシラン:N-2-(アミノメチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM-602」
・環状アルコキシド:亜鉛グリセロレート(式(1)中、M=Zn、R=H、R=CHOH
・植物性粒状体:クルミ殻粉砕物((株)日本ウォルナット製「ソフトグリット#46」)にRFL処理液(レゾルシン・ホルマリン樹脂初期縮合物とラテックスの混合物を主成分とするもの)で表面処理を施したもの(D90:300μm)
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」。
【0050】
得られた各ゴム組成物について加工性を評価した。また、各ゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従い加硫成型することによりスタッドレスタイヤとしての空気入りラジアルタイヤ(タイヤサイズ:215/45ZR17)を作製した。得られた試験タイヤについて、氷上性能とウェット性能を評価した。各測定・評価方法は以下の通りである。
【0051】
・加工性:JIS K6300に準拠して東洋精機(株)製ロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴムを100℃で1分間予熱後、4分後のトルク値をムーニー単位で測定した。測定値の逆数について、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れることを意味する。
【0052】
・氷上性能:試験タイヤ4本を2000ccの4WD車に装着し、氷盤路(気温-3±3℃)上で40km/h走行からABS作動させて制動距離を測定し(n=10の平均値)、制動距離の逆数について比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど制動距離が短く、氷上路面での制動性能に優れることを示す。
【0053】
・ウェット性能:試験タイヤ4本を乗用車に装着し、気温23℃で2~3mmの水深で水をまいた路面上を走行し、100km/hにて摩擦係数を測定することによりウェットグリップ性能を評価した。比較例1の摩擦係数の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど摩擦係数が高く、ウェットグリップ性に優れることを示す。
【0054】
【表1】
【0055】
結果は表1に示す通りである。比較例1に対し、アミノアルコキシシランを配合した比較例2では、加工性が悪化するとともに、ウェット性能が悪化した。ゴム成分におけるNRとBRの比率を変更した比較例3及び比較例4でも同様に、比較例1に対して加工性及びウェット性能が悪化した。
【0056】
これに対し、式(1)の環状アルコキシドを配合した実施例1~11であると、比較例1に対して氷上性能とウェット性能がともに改善されており、加工性についても向上効果が見られた。詳細には、実施例1~3より、式(1)の環状アルコキシドの配合量を増やすことで、加工性と氷上性能とウェット性能に顕著な性能向上が見られた。実施例2と実施例4との対比より、シリカ量を増やすことでウェット性能と氷上性能が向上した。実施例2と実施例5との対比より、石油樹脂を配合することで、氷上性能とウェット性能が更に改善された。実施例2と実施例6との対比より、植物性粒状体を配合することで、氷上性能が更に向上した。実施例2と実施例7との対比より、ゴム成分中のBRの比率を高めることで氷上性能が向上した。実施例2と実施例8との対比より、ゴム成分中のNRの比率を高めることで加工性が向上した。実施例4と実施例9との対比より、シリカ量を増やすことでウェット性能の更なる改善が見られた。実施例2と実施例10との対比より、充填剤中のカーボンブラック比率を高めることで加工性が更に改善した。実施例2と実施例11との対比より、充填剤中のシリカ比率を高めることでウェット性能と氷上性能が向上した。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。