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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ポリマー、樹脂組成物、及び、樹脂膜
(51)【国際特許分類】
   C08F 232/06 20060101AFI20230801BHJP
   C08F 222/40 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C08F232/06
C08F222/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018183160
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020050800
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓太
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-338151(JP,A)
【文献】特開平02-146045(JP,A)
【文献】国際公開第2017/117483(WO,A1)
【文献】特表2019-503415(JP,A)
【文献】特開2004-190008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 232/06
C08F 222/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に、下記式(A)で表されるノルボルナジエン系モノマー由来の構造単位、及び、
下記式(B)で表されるマレイミド由来の構造単位を有するポリマーであって、
下記式(A)で表される構造単位のポリマー中の含有率が、30~70モル%であり、
下記式(B)で表される構造単位のポリマー中の含有率が、30~70モル%であり、
無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)を有さないか、又は、
無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)のポリマー中の含有率が、20モル%以下であり、
5%重量減少温度が250℃以上であり、
多分散度PDI(Mw/Mn)が2.0以上である、ポリマー。
【化1】
(式(A)中、R、R、R、及び、Rは、それぞれ独立して水素原子を。)
【化2】
(式(B)中、Rは、アリール基またはシクロアルキル基を示す。)
【請求項2】
分子中に、下記式(A)で表されるノルボルナジエン系モノマー由来の構造単位、及び、
下記式(B)で表されるマレイミド由来の構造単位を有するポリマーであって、
下記式(A)で表される構造単位のポリマー中の含有率が、30~70モル%であり、
下記式(B)で表される構造単位のポリマー中の含有率が、30~70モル%であり、
前記ポリマーの重量平均分子量Mwが50000以上150000以下であり、
5%重量減少温度が250℃以上であり、
多分散度PDI(Mw/Mn)が2.0以上である、ポリマー。
【化3】
(式(A)中、R、R、R、及び、Rは、それぞれ独立して水素原子を。)
【化4】
(式(B)中、Rは、アリール基またはシクロアルキル基を示す。)
【請求項3】
前記ポリマーのガラス転移温度Tgが250℃以上である、請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマーからなる樹脂膜の誘電率εγが3.0以下である、請求項1~3のいずれかに記載のポリマー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のポリマーを含む、樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物からなる樹脂膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー、樹脂組成物、及び、樹脂膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種コーティング、印刷、塗料、接着剤などの分野や、プリント配線基板などの電子材料の分野において、環状オレフィン系重合体組成物が広く使用され、用途によりさまざまな特性が求められている。
例えば、特許文献1には、環式炭化水素基を有するモノマーと、無水マレイン酸等の不飽和多塩基酸無水物と、ビニルトルエン等の共重合可能なモノマーと、水酸基を有するモノマーとの共重合体を含む感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5588503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載のポリマーにおいては、該ポリマーを含む樹脂組成物の樹脂膜が脆くなる場合があり、クラックのない樹脂膜を形成することと耐熱性との両立が困難であることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の構造を含むポリマーとすることで、耐熱性を有し、かつ、該ポリマーを含む樹脂組成物を用いてクラックの少ない樹脂膜を形成することができるポリマーとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明によれば、
分子中に、下記式(A)で表されるノルボルナジエン系モノマー由来の構造単位、及び、
下記式(B)で表されるマレイミド由来の構造単位を有するポリマーであって、
無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)を有さないか、又は、
無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)の含有率が、前記ポリマーを100としたとき、20モル%以下である、ポリマーが提供される
【0007】
【化1】
(式(A)中、R、R、R、及び、Rは、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~30の有機基を示す。)
【0008】
【化2】
(式(B)中、Rは、水素原子、または、炭素数1~30の有機基を示す。)
【0009】
また、本発明によれば、分子中に、下記式(A)で表されるノルボルナジエン系モノマー由来の構造単位、及び、
下記式(B)で表されるマレイミド由来の構造単位を有するポリマーであって、
前記ポリマーの重量平均分子量Mwが50000以上150000以下である、ポリマーが提供される。
【化3】
(式(A)中、R、R、R、及び、Rは、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~30の有機基を示す。)
【化4】
(式(B)中、Rは、水素原子、または、炭素数1~30の有機基を示す。)
【0010】
また、本発明によれば、上記ポリマーを含む、樹脂組成物が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、樹脂組成物からなる樹脂膜が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐熱性に優れ、かつ、そのポリマーを含む樹脂組成物で樹脂膜を形成した際、クラックの少ない樹脂膜を得ることができるポリマー、該ポリマーを含む樹脂組成物、及び、該樹脂組成物からなる樹脂膜が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」の意である。
本明細書における「電子装置」の語は、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池など、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する意味で用いられる。
【0014】
<ポリマー>
まず、はじめに、本実施形態のポリマーの概要について説明する。
本実施形態のポリマーは、分子中に、下記式(A)で表されるノルボルナジエン系モノマー由来の構造単位、及び、下記式(B)で表されるマレイミド由来の構造単位を有するポリマーであって、無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)を有さないか、又は、無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)の含有率が、上記ポリマーを100としたとき、20モル%以下である。
【化5】
(式(A)中、R、R、R、及び、Rは、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~30の有機基を示す。)
【化6】
(式(B)中、Rは、水素原子、または、炭素数1~30の有機基を示す。)
【0015】
本実施形態のポリマーは、耐熱性に優れることに加え、該ポリマーを含む樹脂組成物によって、クラックの少ない薄膜の形成が可能であるという新規な優れた効果を有する。
従来、電子装置等に用いられる塗膜形成用の感光性・接着性・構造材料用等の樹脂組成物においては、樹脂組成物中に、環状オレフィンモノマーと、無水マレイン酸を含む複数種のモノマーを重合したポリマーを含ませることが知られていた。また、本発明者らの検討によれば、ポリマーに置換又は無置換のマレイミドに由来する構造単位を包含させると、耐熱性や耐熱変色性は向上するものの、該ポリマーを含む樹脂組成物によって構成される膜は柔軟性が低下し、クラックの少ない塗膜形成が困難であることが判明した。本発明者らはさらに検討を重ね、環状オレフィン系モノマーに由来する構造としてノルボルナジエン系モノマーに由来する構造を含み、マレイミドに由来する構造単位を有し、かつ、無水マレイン酸及びその誘導体に起因する構造単位を含まないか、その含有量を一定以下とすることで、耐熱性に優れることに加え、該ポリマーを含む樹脂組成物によって、クラックのない薄膜の形成が可能であるポリマーを得ることができることを見出し、本発明を成し得たものである。
本実施形態のポリマーは、上記効果に加え、耐熱変色性に優れる効果を有し、かつ、該ポリマーを含む樹脂組成物によって低誘電率の樹脂膜の形成が可能である効果を有する。
【0016】
また、本実施形態のポリマーは、
分子中に、下記式(A)で表されるノルボルナジエン系モノマー由来の構造単位、及び、
下記式(B)で表されるマレイミド由来の構造単位を有するポリマーであって、重量平均分子量Mwが50000以上150000以下である。本実施形態のポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは、55000以上145000以下であり、より好ましくは、60000以上140000以下である。
【化7】
(式(A)中、R、R、R、及び、Rは、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~30の有機基を示す。)
【化8】
(式(B)中、Rは、水素原子、または、炭素数1~30の有機基を示す。)
【0017】
なお、重量平均分子量(Mw)は、例えばGPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めた、ポリスチレン換算値を用いる。測定条件は、例えば以下の通りである。
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー社製TSK-GEL Supermultipore HZ-M
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:5.0mg/ミリリットル
【0018】
本実施形態のポリマーは、耐熱性に優れることに加え、該ポリマーを含む樹脂組成物によって、クラックのない薄膜の形成が可能であるという新規な優れた効果を有する。
従来、電子装置等に用いられる塗膜形成用の感光性・接着性・構造材料用等の樹脂組成物においては、樹脂組成物中に、環状オレフィンモノマーと、無水マレイン酸を含む複数種のモノマーを重合したポリマーを含ませることが知られていた。また、本発明者らの検討によれば、ポリマーに置換又は無置換のマレイミドに由来する構造単位を包含させると、耐熱性や耐熱変色性は向上するものの、該ポリマーを含む樹脂組成物によって構成される膜は柔軟性が低下し、クラックのない塗膜形成が困難であることが判明した。本発明者らはさらに検討を重ね、ノルボルナジエン系モノマー由来の構造単位、及び、マレイミドに由来する構造単位を有するポリマーにおいて、分子量を特定の範囲とすると、耐熱性に優れることに加え、該ポリマーを含む樹脂組成物によって、クラックのない薄膜の形成が可能であるポリマーを得ることができることを見出し、本発明を成し得たものである。上記の構成のポリマーが本発明の効果を奏する理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、本発明者らの推測によれば、環状オレフィンモノマーとしてノルボルナジエン系モノマーを用いた場合、ポリマーの重合過程において、ラジカルが局在化しにくく安定なため、溶媒などにラジカルが消費されることによる重合の停止が起きにくくなるため高分子量化が容易に進み、ノルボルナジエン系モノマー由来の構造単位、及び、マレイミドに由来する構造単位を有し、分子量が比較的大きいポリマーを得ることができ、結果として、耐熱性に優れ、かつ、該ポリマーを含む樹脂組成物によって、クラックのない薄膜の形成が可能であるポリマーを得ることができるものと考えられる。
本実施形態のポリマーは、上記効果に加え、耐熱変色性に優れる効果を有し、かつ、該ポリマーを含む樹脂組成物によって低誘電率の樹脂膜の形成が可能である効果を有する。
【0019】
以下、本実施形態のポリマーが有する繰り返し構造単位について詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係るポリマーは、繰り返し単位として、下記の式(A)で表される構造単位を有する。
【化9】
【0021】
上記式(A)中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~30の有機基であり、より好ましくは水素原子、又は、炭素数1~10の有機基である。R、R、RおよびRは、その構造中にO、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい。
【0022】
これらの有機基はカルボキシル基、グリシジル基、オキセタニル基等の官能基を有していてもよい。本実施形態において、R、R、RおよびRを構成する有機基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
【0023】
さらに、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基は、1以上の水素原子が、ハロゲン原子により置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。なかでもアルキル基の1以上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されたハロアルキル基が好ましい。R、R、RおよびRの少なくともいずれか1つをハロアルキル基とすることで、ポリマーを使用して硬化膜を構成した際、この硬化膜の誘電率を低下させることができる。また、例えば、本実施形態に係るポリマーを含む樹脂組成物を感光性樹脂組成物として使用する際、ハロアルキルアルコール基とすることで、アルカリ現像液に対する溶解性を適度に調整できるだけでなく、耐熱変色性をさらに向上させることができる可能性がある。
なお、ポリマーを含んで構成される膜の光透過性を高める観点からは、R、R、RおよびRのいずれかが水素であることが好ましく、特には、R、R、RおよびRすべてが水素であることが好ましい。
【0024】
本実施形態に係るポリマーは、繰り返し単位として、下記の式(B)で表される構造単位を有する。
【0025】
【化10】
【0026】
式(B)中、Rは炭素数1~30の有機基を示す。有機基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。
この中でも、Rは炭素数1~30のアルキル基、シクロアルキル基、又は、アラルキル基であることが好ましい。
アルキル基としては、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、例えば炭素数1~30個のアルキル基、好ましくは炭素数1~12個の直鎖及び分岐アルキル基を挙げることができる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基・フェネチル基が挙げられる。
この中でも、Rはアルキル基、シクロアルキル基、ベンジル基であることが好ましく、シクロアルキル基又はベンジル基であることがより好ましく、シクロアルキル基であることが特に好ましい。
は、アルキル基としては、メチル基、又は、エチル基であることが好ましい。また、Rは、シクロアルキル基として、シクロヘキシル基であることが特に好ましく、アラルキル基としては、ベンジル基であることが特に好ましい。
式(B)中、Rを上記態様とすることで、耐熱性、耐熱変色性をさらに向上することができる。
【0027】
本実施形態に係るポリマーは、無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)を有さないか、又は無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)の含有率が、前記ポリマーを100としたとき、20モル%以下であり、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。本実施形態に係るポリマーは、無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)を有さないか、上記数値範囲内とすることで、反応性を制御することができ、耐熱性を向上させることができる。
【0028】
ここで、無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)は、以下の式(MA-1)で表される構造単位、及び、その開環構造を含む。
【0029】
【化11】
【0030】
式(MA-1)中、R、Rは、それぞれ独立して水素または炭素数1~3の有機基を示す。上記式(MA-1)中、R及びRを構成する有機基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。また、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えばアリル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基が挙げられる。ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
【0031】
無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)の開環構造としては、例えば、以下の式(d-1)、(d-2)、(d-3)で表される構造単位)が挙げられる。
式(d-1)中のR、式(d-2)中のR、Rは、炭素数2~18の有機基である。R、R、Rは、炭素数2~18の有機基であり、ここでの有機基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基が挙げられる。
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
【0032】
【化12】
【0033】
【化13】
【0034】
【化14】
【0035】
本実施形態に係るポリマーにおいて、ノルボルナジエンに由来する構造単位(A)は、ポリマーを100としたとき、10~90モル%であることが好ましく、20~80モル%であることがより好ましく、30~70モル%であることが特に好ましい。
【0036】
本実施形態に係るポリマーにおいて、前記の式(B)で表される構造単位は、ポリマーを100としたとき、10~90モル%であることが好ましく、20~80モル%であることがより好ましく、30~70モル%であることが特に好ましい。
【0037】
本実施形態に係るポリマーは、ポリマーを100としたとき、各構造単位の量を上記範囲内とすることで、より、塗膜の機械的特性及び耐熱性等の特性のバランスに優れたポリマーとなる。
【0038】
本実施形態に係るポリマーは、該ポリマーの多分散度PDI(Mw/Mn)が2.0以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましく3.5以上であることが特に好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、例えばGPC測定により上記した重量平均分子量(Mw)の評価方法と同様に求めることができる。
多分散度PDI(Mw/Mn)が上記数値範囲内にあることにより、塗膜の機械的特性及び耐熱性等と、溶剤溶解性のバランスに優れたポリマーとなるものと考えられる。
【0039】
本実施形態のポリマーは、その5%重量減少温度が250℃以上であることが好ましく、280℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることが特に好ましい。
【0040】
ここで、5%重量減少温度とは、TG/DTA(熱重量/示差熱分析)で測定した時の5%の重量が失われる温度を意味する。TG/DTA測定は、例えば、ポリマーを約10mg精秤し、TG/DTA装置(セイコーインスツルメンツ社製)により測定(雰囲気:窒素、昇温速度:10℃/分)することができる。
【0041】
本実施形態のポリマーは、該ポリマーのガラス転移温度Tgが250℃以上であることが好ましく、260℃以上であることがより好ましく、270℃以上であることが特に好ましい。
【0042】
本実施形態のポリマーは、該ポリマーからなる樹脂膜の誘電率εγが3.0以下であることが好ましい。
【0043】
(ポリマーの製造方法)
本実施形態に係るポリマーは、例えば以下のように製造される。
【0044】
(重合工程)
はじめに、ノルボルナジエン系モノマーと、置換又は無置換のマレイミドと、必要に応じ、無水マレイン酸又はその誘導体を準備する。これらは、それぞれ以下の式(a)、(b)、(ma-1)で示されるモノマーを用いることができる。式(a)において、n、R~Rは、上記式(A)のものと同様とすることができ、式(b)において、Rは上記式(B)のものと同様とすることができる。
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
【0047】
【化17】
【0048】
式(a)で示されるノルボルナジエン系モノマーとしては、具体的には、ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエン(慣用名:ノルボルナジエン)があげられ、さらに、アルキル基を有するものとして、2-メチル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエン、2-エチル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエン、2-ブチル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエン、2-ヘキシル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエン、2-デシル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエンなど、アルケニル基を有するものとしては、2-(2-プロペニル)-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエン、2-(1-メチル-4-ペンテニル)-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエンなど、アルキニル基を有するものとしては、2-エチニル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエンなど、アラルキル基を有するものとしては、2-ベンジル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエン、2-フェネチル-ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエンなどがあげられる。これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。なかでも、ポリマーの光透過性の観点から、ビシクロ[2.2.1]-ヘプタ-2,5-ジエン(慣用名:ノルボルナジエン)を使用することが好ましい。
【0049】
次いで、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーと、必要に応じて、式(ma-1)で示されるモノマーを含む複数種のモノマーを付加重合する。この付加重合に際しては、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーのみからなるポリマーを形成することもできるし、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーと、式(ma-1)で示されるモノマーのみからなるポリマーを形成することもできる。また、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーと、式(ma-1)で示されるモノマー以外にも共重合できるモノマーを添加してもよい。ここでは、ラジカル重合により、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーを含むモノマー群からなるポリマー、又は、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーと、式(ma-1)で示されるモノマーを含むモノマー群からなるポリマーを形成する場合について説明する。
ポリマーが、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーとのポリマーを含む場合、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーのモル比は、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーの合計を100としたとき、式(a)で示されるモノマーが10~90モル%、式(b)で示されるモノマーが10~90モル%であることが好ましく、式(a)で示されるモノマーが20~80モル%、式(b)で示されるモノマーが20~80モル%であることがより好ましく、式(a)で示されるモノマーが30~70モル%、式(b)で示されるモノマーが30~70モル%であることが特に好ましい。
ポリマーが、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーと、式(ma-1)で示されるモノマーとのポリマーを含む場合、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーと、式(ma-1)で示されるモノマーのモル比は、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーと、式(ma-1)で示されるモノマーの合計を100としたとき、式(a)で示されるモノマーが10~90モル%、式(b)で示されるモノマーが10~90モル%、式(ma-1)で示されるモノマーが0.1~20モル%であることが好ましく、式(a)で示されるモノマーが20~80モル%、式(b)で示されるモノマーが20~80モル%、式(ma-1)で示されるモノマーが0.5~15モル%であることがより好ましく、式(a)で示されるモノマーが30~70モル%、式(b)で示されるモノマーが30~70モル%、式(ma-1)で示されるモノマーが1~10モル%であることがより好ましい。
なお、上述のように、この付加重合に際しては、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーと、式(ma-1)で示されるモノマー以外にも共重合できるモノマーを添加してもよく、このようなモノマーとして、分子内にエチレン性二重結合を有する基を含む化合物が挙げられる。ここで、エチレン性二重結合を有する基の具体例としては、アリル基、アクリル基、メタクリル基、マレイミド基や、スチリル基やインデニル基のような芳香族ビニル基等が挙げられる。
【0050】
重合方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調整剤を用いて重合する方法が好適である。この場合、懸濁重合、溶液重合、分散重合、乳化重合等の方法を取ることができる。中でも、溶液重合が好ましい。溶液重合の際には、各単量体を全量一括仕込みで行っても良いし、一部を反応容器に仕込み、残りを滴下して行っても良い。
【0051】
例えば、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマー、又は、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマーと、式(ma-1)で示されるモノマーを、重合開始剤とを溶媒に溶解し、その後、所定時間加熱することで、式(a)で示されるモノマーと、マレイミド、又は、式(a)で示されるモノマーと、マレイミドと、無水マレイン酸とを溶液重合する。加熱温度は、例えば、50~80℃であり、加熱時間は5~20時間である。
【0052】
重合に使用される溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等のうち、いずれか1種以上を使用することができる。
【0053】
ラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物および有機過酸化物のうちのいずれか1種以上を使用できる。
アゾ化合物としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)があげられ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。
また、有機過酸化物としては、例えば過酸化水素、ジターシャリブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド,BPO)および、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)を挙げることができ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。
【0054】
ラジカル重合開始剤の量(モル数)は、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマー、又は、式(a)で示されるモノマーと、式(b)で示されるモノマー、式(ma-1)で示されるモノマーとの合計モル数の0.1%~10%とすることが好ましい。重合開始剤の量を前記範囲内で適宜設定し、かつ、反応温度、反応時間を適宜設定することで、得られるポリマーの重量平均分子量(Mw)を適切に調整することができる。
【0055】
この重合工程により、上記の式(A)で示される繰り返し単位と、上記の式(B)で示される繰り返し単位を有するポリマー、又は、上記の式(A)で示される繰り返し単位と、上記の式(B)で示される繰り返し単位、並びに、無水マレイン酸及びその誘導体に由来する繰り返し単位を有するポリマーを重合することができる。
ただし、ポリマーにおいて、式(A)の構造のRは、各繰り返し単位において共通であることが好ましいが、それぞれの繰り返し単位ごとに異なっていてもよい。R~R、Rにおいても同様である。
【0056】
また、本実施形態に係るポリマーは、上記式(a)で示されるモノマーに由来する構造単位として、上記式(A)で示される構造単位以外の構造単位を有することもできる。具体例としては、下記式(A-2)で表される構造単位を挙げることができる。下記式(A-2)において、R、R、R、及び、Rは、式(A)中のR、R、R、及び、Rと同様である。
【0057】
【化18】
【0058】
本実施形態のポリマー中に含まれる各構造単位の含有量(比率)は、ポリマー合成時の原料の仕込み量(モル量)、合成後に残存する原料の量、各種スペクトルのピーク面積(例えば、H-NMRのピーク面積)などから推定/算出することができる。
【0059】
ポリマーは、式(A)で示される繰り返し単位と、式(B)で示される繰り返し単位、又は、式(A)で示される繰り返し単位と、式(B)で示される繰り返し単位と、無水マレイン酸及びその誘導体に由来する繰り返し単位とが、ランダムに配置されたものであってもよく、また、交互に配置されたものであっても、これらをブロック共重合したものであってもよいが、本実施形態に係るポリマーは、式(A)で示される繰り返し単位と、式(B)で示される繰り返し単位との交互共重合体であることが特に好ましい。
【0060】
(低分子量成分除去工程)
上記の原料ポリマーの合成後、未反応モノマー、オリゴマー、残存する重合開始剤などの低分子量成分を除去する工程を行ってもよい。
低分子量成分除去工程は公知の手法で行うことができる。具体的には以下のとおりである。まず、合成された原料ポリマーと低分子量成分とが含まれた重合溶液を、メタノールなどの有機溶媒に滴下して沈殿物を得る。そして、この沈殿物を濾取して白色固体を得、さらにメタノールなどの貧溶媒で洗浄し、その後乾燥させることで、原料ポリマーの純度を上げることができる。
【0061】
本実施形態に係るポリマーは、例えば、溶剤をはじめとする他の成分を含む樹脂組成物とすることができる。
溶剤としては、例えば、使用可能な溶剤は、典型的には有機溶剤である。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ラクトン系溶剤、カーボネート系溶剤、アミド系溶剤などを用いることができる。
【0062】
より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン等の有機溶剤を挙げることができる。
【0063】
溶剤を用いる場合、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
溶剤を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、不揮発成分の濃度が例えば10~70質量%、好ましくは15~60質量%となるような量で使用される。
【0064】
本実施形態に係る樹脂組成物の用途は特に限定されないが、例えば、上記で説明したポリマーと、感光剤とを含むポジ型・ネガ型の感光性樹脂組成物とすることができる。また、これら成分以外に種々の任意成分を含んでもよい。
【0065】
また、本実施形態に係る樹脂組成物を用いて、樹脂膜を形成することができる。例えば、樹脂組成物を感光性樹脂組成物とした場合、その感光性樹脂膜を露光・現像するなどしてパターン形成したり、パターンを備えた基板を製造したりすることができる。
樹脂組成物の塗布方法は特に限定されず、スピナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング、インクジェット法などにより行うことができる。
基板上に塗布した樹脂組成物の乾燥は、典型的にはホットプレート、熱風、オーブン等で加熱処理することで行われる。
【0066】
樹脂膜の膜厚は、特に限定されず、最終的に得ようとする用途・パターンに応じて適宜調整すればよく、膜厚は、樹脂組成物中の溶剤の含有量や塗布方法などにより調整可能である。
【0067】
なお、得られる樹脂膜を備えた基板は、各種の電気・電子装置や、電気・電子装置に限らない種々の製品にも応用可能である。つまり、特定ポリマーを含むことによるメリット(耐熱性、クラックのない薄膜の形成、耐熱変色性、低誘電率、などが期待される)を活かせる種々の技術分野への応用が考えられる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
分子中に、前掲の式(A)で表されるノルボルナジエン系モノマー由来の構造単位、及び、
前掲の式(B)で表されるマレイミド由来の構造単位を有するポリマーであって、
無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)を有さないか、又は、
無水マレイン酸及びその誘導体由来の構造単位(MA)の含有率が、前記ポリマーを100としたとき、20モル%以下である、ポリマー。
(式(A)中、R 、R 、R 、及び、R は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~30の有機基を示す。)
(式(B)中、R は、水素原子、または、炭素数1~30の有機基を示す。)
2.
分子中に、前掲の式(A)で表されるノルボルナジエン系モノマー由来の構造単位、及び、
前掲の式(B)で表されるマレイミド由来の構造単位を有するポリマーであって、
前記ポリマーの重量平均分子量Mwが50000以上150000以下である、ポリマー。
(式(A)中、R 、R 、R 、及び、R は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~30の有機基を示す。)
(式(B)中、R は、水素原子、または、炭素数1~30の有機基を示す。)
3.
前記ポリマーの5%重量減少温度が250℃以上である、1.又は2.に記載のポリマー。
4.
前記ポリマーの多分散度PDI(Mw/Mn)が2.0以上である、1.~3.のいずれかに記載のポリマー。
5.
前記ポリマーのガラス転移温度Tgが250℃以上である、1.~4.のいずれかに記載のポリマー。
6.
前記ポリマーからなる樹脂膜の誘電率ε γ が3.0以下である、1.~5.のいずれかに記載のポリマー。
7.
1.~6.のいずれかに記載のポリマーを含む、樹脂組成物。
8.
7.に記載の樹脂組成物からなる樹脂膜。

【実施例
【0069】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0070】
各実施例、各比較例のポリマーの合成について説明する。
<ポリマー1の合成>
はじめに、撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、ノルボルナジエン(以下、NBDとも示す。)9.30g(0.10mol)と、N-シクロヘキシルマレイミド(以下、CMIとも示す。)18.09g(0.10mol)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)0.46g(2.0mmol)とを計量し、メチルエチルケトン(以下、MEKとも示す。)31.7g、及び、トルエン31.7gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。この溶解液に対して、20分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度65℃で6時間加熱することで、ノルボルナジエンと、N-シクロヘキシルマレイミドとを重合させ、重合溶液を作製した。得られた重合溶液をメタノール361.5gに滴下することで白色固体を再沈殿した。これにより得られた白色固体をメタノールにより洗浄し、温度50℃で真空乾燥することにより、ノルボルナジエンに由来する構造単位と、N-シクロヘキシルマレイミドに由来する構造単位とを備えるポリマー20.38gを得た。ポリマーの収量は20.38g、収率は74%であった。また、ポリマーは、重量平均分子量Mwが132,600であり、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が6.97であった。
【0071】
<ポリマー2の合成>
はじめに、撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、ノルボルナジエン(以下、NBDとも示す。)11.62g(0.13mol)と、フェニルマレイミド(以下、PhMIとも示す。)21.85g(0.13mol)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)0.58g(2.5mmol)とを計量し、メチルエチルケトン(以下、MEKとも示す。)133.3gに溶解させ、溶解液を作製した。この溶解液に対して、20分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度65℃で6時間加熱することで、ノルボルナジエンと、フェニルマレイミドとを重合させ、重合溶液を作製した。得られた重合溶液をメタノール662.7gに滴下することで白色固体を再沈殿した。これにより得られた白色固体を、メタノールにより洗浄し、温度50℃で真空乾燥することにより、ノルボルナジエンに由来する構造単位と、フェニルマレイミドに由来する構造単位とを備えるポリマー15.38gを得た。ポリマーの収量は15.38g、収率は46%であった。また、ポリマーは、重量平均分子量Mwが66,200であり、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が3.54であった。
【0072】
<ポリマー3の合成>
はじめに、撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、2-ノルボルネン(以下、NBとも示す。)9.42g(0.10mol)と、N-シクロヘキシルマレイミド17.92g(0.10mol)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)1.02g(4.4mmol)とを計量し、メチルエチルケトン(以下、MEKとも示す。)59.6g、及び、トルエン3.1gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。この溶解液に対して、20分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度65℃で6時間加熱することで、2-ノルボルネンと、N-シクロヘキシルマレイミドとを重合させ、重合溶液を作製した。得られた重合溶液をメタノール360.8gに滴下することで白色固体を再沈殿した。これにより得られた白色固体を、メタノールにより洗浄し、温度50℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、N-シクロヘキシルマレイミドに由来する構造単位とを備えるポリマー12.95gを得た。ポリマーの収量は12.95g、収率は47%であった。また、ポリマーは、重量平均分子量Mwが11,100であり、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.81であった。
【0073】
<ポリマー4の合成>
はじめに、撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、2-ノルボルネン(以下、NBとも示す。)9.42g(0.10mol)と、N-シクロヘキシルマレイミド17.92g(0.10mol)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)0.46g(2.0mmol)とを計量し、メチルエチルケトン(以下、MEKとも示す。)13.4g、及び、トルエン13.4gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。この溶解液に対して、20分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度65℃で6時間加熱することで、2-ノルボルネンと、N-シクロヘキシルマレイミドとを重合させ、重合溶液を作製した。得られた重合溶液をMEK36.5gで希釈することで希釈用液を作製し、次いで、希釈用液をメタノール360.8gに滴下することで白色固体を再沈殿した。これにより得られた白色固体を、メタノールにより洗浄し、温度50℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、N-シクロヘキシルマレイミドに由来する構造単位とを備えるポリマー15.21gを得た。ポリマーの収量は15.21g、収率は56%であった。また、ポリマーは、重量平均分子量Mwが21,100であり、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.81であった。
【0074】
<ポリマー5の合成>
はじめに、撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、ノルボルナジエン9.42g(0.10mol)と、無水マレイン酸(以下、MAとも示す。)10.02g(0.10mol)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)1.05g(4.5mmol)とを計量し、メチルエチルケトン(以下、MEKとも示す。)44.3gに溶解させ、溶解液を作製した。この溶解液に対して、20分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度65℃で6時間加熱することで、ノルボルナジエンと、無水マレイン酸とを重合させ、重合溶液を作製した。得られた重合溶液をアセトン33.8gとテトラヒドロフラン8.4gで希釈することで希釈用液を作製し、次いで、希釈用液をメタノール256.5gに滴下することで白色固体を再沈殿した。これにより得られた白色固体を、メタノールにより洗浄し、温度50℃で真空乾燥することにより、ノルボルナジエンに由来する構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位とを備えるポリマー14.97gを得た。ポリマーの収量は14.97g、収率は77%であった。また、ポリマーは、重量平均分子量Mwが10,800であり、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.94であった。
【0075】
<ポリマー6の合成>
はじめに、撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、2-ノルボルネン9.42g(0.10mol)と、フェニルマレイミド17.32g(0.10mol)と、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)1.02g(4.4mmol)とを計量し、メチルエチルケトン(以下、MEKとも示す。)30.7g、及び、トルエン30.7gからなる混合溶媒に溶解させ、溶解液を作製した。この溶解液に対して、20分間窒素を通気して酸素を除去し、次いで、撹拌しつつ温度65℃で6時間加熱することで、2-ノルボルネンと、フェニルマレイミドとを重合させ、重合溶液を作製した。得られた重合溶液をメタノール352.9gに滴下することで白色固体を再沈殿した。これにより得られた白色固体を、メタノールにより洗浄し、温度50℃で真空乾燥することにより、2-ノルボルネンに由来する構造単位と、フェニルマレイミドに由来する構造単位とを備えるポリマー17.53gを得た。ポリマーの収量は17.53g、収率は67%であった。また、ポリマーは、重量平均分子量Mwが10,200であり、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.88であった。
【0076】
<評価方法>
得られたポリマーについて、以下に従い評価を行った。
(重量平均分子量・分子量分布)
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、GPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めた、ポリスチレン換算値を用いた。測定条件は、以下の通りである。
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー社製TSK-GEL Supermultipore HZ-M
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:5.0mg/ミリリットル
【0077】
(溶剤溶解性)
得られたポリマーを5.0gはかり取り、MAK(メチルアミルケトン)15.0gと混合し、外観観察により溶解性を確認し、以下の評価基準で評価した。
○ 完全に溶解し、孔径5.0μmのメンブランフィルターでろ過した際の濾過残がないか、2.0g以下であった。
× 一部又は全部がゲル化し、孔径5.0μmのメンブランフィルターでろ過した際にろ過できないか、2.0gより多かった。
なお、ポリマー2は、MAK(メチルアミルケトン)には不溶(上記評価基準において×)であったが、上記評価方法において、MAK(メチルアミルケトン)に代えて、GBL(γ-ブチロラクトン)を用いて溶剤溶解性を評価したところ、溶解すること(上記評価基準において○であることが確認された。また、後述のように、ポリマー5・6はシク路ヘキサノンに溶解した。
【0078】
(ガラス転移温度・5%重量減少温度・着色・融点)
得られたポリマーを、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)にて窒素雰囲気下、30℃から400℃まで10℃/minで昇温し、ガラス転移温度(Tg)[℃]・5%重量減少温度(Td5)[℃]・着色温度[℃]・融点[℃]を測定した。加熱前重量を100とし、重量が5%減少した温度を5%重量減少温度(Td5)[℃]とした。また、ポリマーの加熱過程をカメラで観察し、着色が見られた温度を着色温度[℃]とした。
【0079】
<ワニスの調整及び樹脂膜の作製>
(ポリマー1、3、4)
上記合成例で得られたポリマー各100質量部をMAK(メチルアミルケトン)300質量部にて溶解し、固形分25%のワニスとした。その後孔径5.0μmのメンブランフィルターでろ過し、ワニスを調製した。得られたワニスをシリコンウエハにスピンコーターを用いて塗布した後、大気下で、100℃、120秒間加熱した。
(ポリマー2)
上記合成例で得られたポリマー各100質量部をGBL(γ-ブチロラクトン)300質量部にて溶解し、固形分25%のワニスとした。その後孔径5.0μmのメンブランフィルターでろ過し、ワニスを調製した。得られたワニスをシリコンウエハにスピンコーターを用いて塗布した後、大気下で、150℃、120秒間加熱した。
(ポリマー5)
上記合成例で得られたポリマー各100質量部をシクロヘキサノン400質量部にて溶解し、固形分20%のワニスとした。その後孔径5.0μmのメンブランフィルターでろ過し、ワニスを調製した。得られたワニスをシリコンウエハにスピンコーターを用いて塗布した後、大気下で、100℃、120秒間加熱した。
(ポリマー6)
上記合成例で得られたポリマー各100質量部をシクロヘキサノン300質量部にて溶解し、固形分25%のワニスとした。その後孔径5.0μmのメンブランフィルターでろ過し、ワニスを調製した。得られたワニスをシリコンウエハにスピンコーターを用いて塗布した後、大気下で、100℃、120秒間加熱した。
【0080】
(薄膜塗布時のクラックの発生)
上記の方法で作製した樹脂膜について、外観の観察を行いクラックの有無を調べた。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
(比誘電率・誘電正接)
ポリマー1からなる樹脂ワニスを、Al蒸着したシリコンウエハにスピンコーターを用いて塗布した後、大気下で、100℃、120秒間加熱し樹脂膜を作製した。さらに樹脂膜上にAl蒸着し、得られたサンプルをアジレント・テクノロジー社製precision LCR meter HP4284Aにより、10kHz、室温(25℃)における比誘電率および誘電正接を測定した。比誘電率は2.76、誘電正接は0.0038であった。