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特許7322450服薬支援情報提供装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】服薬支援情報提供装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20230801BHJP
【FI】
G16H20/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019056546
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020160557
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】平澤 麻
(72)【発明者】
【氏名】上田 民生
(72)【発明者】
【氏名】井端 健介
(72)【発明者】
【氏名】石田 智也
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀行
(72)【発明者】
【氏名】山田 真幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 隆伸
(72)【発明者】
【氏名】古田 みずき
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-523426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0203290(US,A1)
【文献】国際公開第2014/155769(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/119401(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが服薬予定の薬剤に関する処方箋情報を取得する第1取得部と、
前記処方箋情報で規定された服薬量に対する前記ユーザの服薬実績を表す服薬率を含む服薬率情報を取得する第2取得部と、
前記処方箋情報と前記服薬率情報とに基づいて、前記服薬率に対する前記ユーザの生体値の変化予測情報を取得する第3取得部と、
前記生体値の変化予測情報を提供する第1提供部と、を備える、
服薬支援情報提供装置。
【請求項2】
前記生体値の変化予測情報に基づいて、前記服薬率を続けた場合に予想される前記ユーザの不利益情報を生成する生成部をさらに備え、
前記不利益情報を提供する第2提供部をさらに備える、
請求項1に記載の服薬支援情報提供装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記ユーザに対する注意または警告を表すアラーム情報を、前記不利益情報として生成する、
請求項2に記載の服薬支援情報提供装置。
【請求項4】
前記生成部は、薬剤の増量及び種類の変更の少なくとも一方を含む、前記処方箋情報の薬剤変更予測情報を、前記不利益情報として生成する、
請求項2または3に記載の服薬支援情報提供装置。
【請求項5】
前記生成部は、薬剤の購入費用の増加を予測する情報を、前記不利益情報として生成する、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の服薬支援情報提供装置。
【請求項6】
前記生成部は、重篤な症状及び病態の変化の少なくとも一方が発生する発生確率の上昇または発生するまでの期間が短期化することを予測する情報を、前記不利益情報として生成する、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の服薬支援情報提供装置。
【請求項7】
前記第3取得部は、薬剤ごとの服薬量をパラメータとした場合の時間経過に対する生体値の変化の予測特性を記憶する記憶媒体から、前記変化予測情報を取得する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の服薬支援情報提供装置。
【請求項8】
前記ユーザの過去における服薬量に対する生体値の時間変化を記録したログデータに基づいて、前記変化予測情報を補正する補正部をさらに備える、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の服薬支援情報提供装置。
【請求項9】
服薬支援情報提供装置の第1取得部が、ユーザが服薬予定の薬剤に関する処方箋情報を取得し、
前記服薬支援情報提供装置の第2取得部が、前記処方箋情報で規定された服薬量に対する前記ユーザの服薬実績を表す服薬率を含む服薬率情報を取得し、
前記服薬支援情報提供装置の第3取得部が、前記処方箋情報と前記服薬率情報とに基づいて、前記服薬率に対する前記ユーザの生体値の変化予測情報を取得し、
前記服薬支援情報提供装置の第1提供部が、前記生体値の変化予測情報を提供すること、を備える、
服薬支援情報提供方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の服薬支援情報提供装置が備える各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、服薬支援情報提供装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
服薬を忘れることはよく経験することであるが、ユーザに服薬を勧めるように報知してくれる機器がある。例えば、時計のアラームを使用する機器があるが、この機器は、服薬する時刻に合わせてユーザに服薬すべきタイミングを知らせてくれる。
【0003】
この機器によれば、服薬すべきタイミングをユーザ等が予め設定して、このタイミングになった時点で服薬すべき旨の指示を通知してユーザが忘れることなく服薬することができるようになっている。しかし、ユーザは通知に慣れてしまって服薬するタイミングを逃し、ついには服薬率が下がってしまい、服薬の持続効果が低下する、という問題がある。
【0004】
そこで、通知にも関わらず服薬することを忘れてしまうユーザへの対策の1つとして、医師や看護師等を含む医療従事者がユーザ(例えば、患者)の服薬状況をモニタすることが考えられる。しかし、医療関係者は、通常多数のユーザを担当しているため、全てのユーザの服薬状況をモニタすることは、完遂できないことが現実的には多い。また、ユーザの服薬状況から、予め定められたスケジュール通りに服薬がなされているかどうかを全てのユーザに対して誤りなく医療関係者が識別するのは困難である。
【0005】
そこで、特許文献1では、患者投薬情報記憶部に記憶された患者端末から送信された服薬情報(服薬内容と服薬時刻)を、投薬情報記憶部に記憶された患者毎の投薬スケジュールと比較し、これにより、アラート判定部で患者の服薬わすれなどを検出でき、服薬わすれを検出した場合は、サーバーは医師端末に通信を行い、患者が服薬を怠っていることを通知する。医師は、患者の服薬状況を十分に把握できるので、患者に服薬を忘れずに勧めることができることがこの特許文献には開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-366652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来の装置(例えば、特許文献1)では、医療関係者が患者を見守り、服薬を忘れたことを検知して服薬をユーザに勧めることを行っている。この装置では、患者に服薬する意思がなければ、服薬率が上がらないという問題は解消されない。
【0008】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、一側面では、服薬による生体値への影響の予測情報を提供する服薬支援情報提供装置、方法及びプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0010】
すなわち、本開示の第1の側面に係る服薬支援情報提供装置は、ユーザが服薬予定の薬剤に関する処方箋情報を取得する第1取得部と、前記処方箋情報で規定された服薬量に対する前記ユーザの服薬実績を表す服薬率を含む服薬率情報を取得する第2取得部と、前記処方箋情報と前記服薬率情報とに基づいて、前記服薬率に対する前記ユーザの生体値の変化予測情報を取得する第3取得部と、前記生体値の変化予測情報を提供する第1提供部と、を備える。
【0011】
上記の構成では、第1取得部は、ユーザが服薬する予定の薬剤に関する処方箋情報を取得する。第1取得部は、例えば、薬局の薬剤師が入力装置を介してオフラインで処方箋情報を入力することによって取得したり、紙等の処方箋に記載されている2次元コード(例えば、QRコード(登録商標))を読み取り処方箋情報を取得する。なお、処方箋情報とは、医師から処方される薬剤を記載した通常は紙に記載されている処方箋と、その薬剤に関する詳細なデータとを含んでいて、このデータは例えば、作用と効果、副作用、服用方法(服薬量、服用する時間帯等)、保管方法、生活上の注意、規格区分、及び承認番号である。
【0012】
第2取得部は、前記処方箋情報で規定された服薬量に対する、ユーザが前記薬剤を服薬したことを示す服薬実績(いつ服薬したかも含めてあってもよい)を示す服薬率を含む服薬率情報を取得する。服薬実績とは、ユーザが前記薬剤を服薬したことが記録されているものであり、服薬日時も含まれていてもよい。また、服薬支援情報提供装置がユーザの生体データを測定することによって、特定の生体データの変動によってユーザが薬剤を服薬したかどうかを判定して、この判定結果を服薬実績としてもよい。生体データは、ユーザの生体に関係するデータであり、例えば、心電データ、血圧データ、心拍データ、血糖値データがある。
【0013】
第3取得部は、前記処方箋情報と前記服薬率情報とに基づいて、服薬率に対するユーザの生体値がどの様に変動するかを示す変化予測情報を取得する。この変化予測情報は、サーバ等に予め計算されたテーブル、プログラム等によって得られ、入力情報である処方箋情報と服薬率情報とに基づいて決定される。また、これらのテーブル及び/またはプログラムは、服薬支援情報提供装置に格納されていて、そこからテーブル及び/またはプログラムを読み出して変化予測情報を取得してもよい。
【0014】
このように、本開示の第1の側面に係る服薬支援情報提供装置によれば、ユーザが処方された薬剤を服薬した服薬実績に基づいて、服薬率に対する薬剤の効き目の変化予測をユーザに提示することができるので、ユーザは現在の服薬率によってユーザ自身の生体値がどのように変化するかを知ることができる。この結果、ユーザの服薬率が低い場合には、変化予測情報が示す生体値が悪化する様子がわかり、服薬率を上げる動機付けになる。一方、ユーザの服薬率が高くほぼ100%の場合には、生体値がどのように変化するか、生体値が良好な状態になる様子がわかり、高い服薬率を維持する動機付けになる。このように、この側面に係る服薬支援情報提供装置は、ユーザの服薬率を低い値から高くするまたは高い値を維持することが可能になる。したがって、この服薬支援情報提供装置によれば、服薬率に対する薬剤の効果または効き目の変化予測を提供(提示、表示、及び/または出力等)することによってユーザの服薬の持続を促進することができる。
【0015】
さらに、本開示の第1の側面に係る服薬支援情報提供装置は、第1取得部、第2取得部、及び第3取得部によってユーザの生体値の変化予測情報を取得して提供することができる装置であればよく、これらの部が行う動作または機能コンピュータに実現するためのプログラムとして実行する装置、例えば、ウェアラブル機器(例えば、スマートフォン、腕時計型ウェアラブル端末)、活動量計、据置型の装置(例えば、パーソナルコンピュータ)でもよい。また、服薬支援情報提供装置は、例えば、ユーザが装着していてもしていなくてもよく、これらの取得部が処方箋情報、ユーザの服薬実績、生体値の変化予測情報を取得することができればよい。例えば、心電を検出することができる検出装置をユーザが装着し、服薬支援情報提供装置はこの検出装置から心電データ(生体データの1つ)を取得して上記のプログラムを実行してもよい。
【0016】
本開示の第2の側面に係る服薬支援情報提供装置では、前記生体値の変化予測情報に基づいて、前記服薬率を続けた場合に予想される前記ユーザの不利益情報を生成する生成部をさらに備え、前記不利益情報を提供する第2提供部をさらに備える。
【0017】
上記の構成では、第2の側面の服薬支援情報提供装置は、前記生体値の変化予測情報に基づいて、現在の服薬率を続けた場合に予測されるユーザにとっての不利益情報を生成するので、ユーザは現在の服薬率から自分にとって将来に不利益となる内容を知ることができる。この結果、ユーザは、不利益となる内容をなくすために、現在の服薬率を上昇させようとすることになる。
【0018】
本開示の第3の側面に係る服薬支援情報提供装置では、前記生成部は、前記ユーザに対する注意または警告を表すアラーム情報を、前記不利益情報として生成する。
【0019】
上記の構成では、前記生成部は、不利益情報としてユーザへの注意または警告を表すアラーム情報を生成するので、ユーザは現状の服薬率、すなわち、現状の服薬実績ではユーザの生体値は改善しないことを認識することができる。また、ユーザはアラーム情報による注意または警告を受け取り、生体値の変化予測情報を閲覧等することによって、ユーザは現状の服薬実績を見直すきっかけになる。
【0020】
本開示の第4の側面に係る服薬支援情報提供装置では、前記生成部は、薬剤の増量及び種類の変更の少なくとも一方を含む、前記処方箋情報の薬剤変更予測情報を、前記不利益情報として生成する。
【0021】
上記の構成では、前記生成部は、不利益情報として、薬剤の増量及び薬剤の種類の変更のいずれかを未来に行う予測を含む薬剤変更予測情報を生成するので、ユーザは現在の服薬実績では生体値が改善されないため、薬剤変更予測情報によって未来の処方箋情報を閲覧等することが可能になる。薬剤変更予測情報は、生体値の変化予測情報と合わせてユーザは詳細な予測情報を検討することができるので、現在の薬剤の服薬率を上げるための動機付けになる。
【0022】
本開示の第5の側面に係る服薬支援情報提供装置では、前記生成部は、薬剤の購入費用の増加を予測する情報を、前記不利益情報として生成する。
【0023】
上記の構成では、前記生成部は、現状の服薬率を続けた場合に、薬剤の購入費用の増加を予測する情報をユーザが閲覧等して検討することによって、ユーザは現状の服薬率を上昇させるように動機付けされる可能性が高くなる。
【0024】
本開示の第6の側面に係る服薬支援情報提供装置では、前記生成部は、重篤な症状及び病態の変化の少なくとも一方が発生する発生確率の上昇または発生するまでの期間が短期化することを予測する情報を、前記不利益情報として生成する。
【0025】
上記の構成では、前記生成部は、現状の服薬率を続けた場合に、重篤な症状が発生する、及び病態の変化の少なくとも一方が発生する発生確率が上昇することを予測する情報をユーザが閲覧することによって、ユーザは現状の服薬率を上昇させないと症状が変化して重篤になる、病態が悪化する可能性があることを知ることができる。したがって、この側面の服薬支援情報提供装置が生成する不利益情報によって、ユーザは服薬率を上昇させるように動機付けされる可能性が高くなる。
【0026】
本開示の第7の側面に係る服薬支援情報提供装置では、前記第3取得部は、薬剤ごとの服薬量をパラメータとした場合の時間経過に対する生体値の変化の予測特性を記憶する記憶媒体から、前記変化予測情報を取得する。
【0027】
上記の構成では、第3取得部は、薬剤ごとに服薬量をパラメータとして、服薬後の時間経過に対する生体値の変化を予測する特性(例えば、特性曲線)を記憶している記憶媒体から、変化予測情報を取得する。この記憶媒体は、どの装置が有しているか等の限定はなく、例えば、サーバに含まれる記憶媒体、服薬支援情報提供装置に含まれる記憶装置等である。また、この記憶媒体に記憶されている特性は、例えば、薬ごとに製薬会社が所有する薬剤ごとの特性であって、服薬後の時間経過に対する生体値の変化を予測する特性である。または、製薬会社が所有するような厳密な特性データでなくてもユーザの服薬率上昇に有用な特性データであればよく、同種の薬剤を服用した他のユーザの服薬率と生体値の変化を統計処理して得られた特性データでもよい。さらに、この特性は、薬剤ごとに決定されている一般的な特性であって、服薬後の時間経過に対する生体値の変化を予測する特性であってもよい場合がある。
【0028】
本開示の第8の側面に係る服薬支援情報提供装置では、前記ユーザの過去における服薬量に対する生体値の時間変化を記録したログデータに基づいて、前記変化予測情報を補正する補正部をさらに備える。
【0029】
上記の構成では、補正部は、前記処方箋情報と前記服薬率情報とに基づいて算出される変化予測情報に関して、さらに、ユーザの服薬量に対するユーザの生体値の時間変化を記録したログデータに基づいて変化予測情報を補正することにより、補正する前よりも精度の高い変化予測情報を得ることが可能になる。さらに、同様な疾病や症状に対して同じ量の薬を服用した場合でも、体格、体質その他の生体的な原因により生体値の変化が異なることが既知である場合には、この生体値の変化にも基づいて変化予測情報を補正してさらに精度の高い変化予測情報を得ることができる。
【0030】
さらに別の側面に係る服薬支援情報提供装置では、前記服薬実績の入力を前記ユーザが実行させるためのインタフェースを表示する表示部をさらに備える。
【0031】
上記の構成では、服薬支援情報提供装置の表示部をさらに備え、表示部は医師支援データを送信する処理を開始させるためのインタフェースを表示し、ユーザはこのインタフェースを使用して服薬支援情報提供装置によって服薬実績を入力することができる。インタフェースは、ユーザが服薬実績のデータを入力することができれば何でもよいが、例えば、GUI(Graphical User Interface)のボタンであり、ユーザがGUIのボタン等を使用して服薬したことを服薬支援情報提供装置に入力する。
【0032】
さらに別の側面に係る服薬支援情報提供装置では、前記第1取得部は、前記処方箋情報または前記処方箋情報にアクセスするための情報を2次元コードによって記述されたデータとして取得する。
【0033】
上記の構成では、処方箋情報は2次元コードによって記述されているので、文字によって薬剤情報を記述した場合には文字が占める専有面積は様々になるが、2次元コードでは、異なる薬剤の処方箋情報でも2次元コードはほぼ同じ面積になる。2次元コードは、文字情報をそのままコード化してもよいし、アクセスするURL等が記述されていてもよい。また、2次元コードは、スマートフォン、及びコンピュータとはデータの取り扱い上の相性がよく、最近では薬局、病院において処方箋として使用されることもある。2次元コードは、縦横方向(2次元)に情報を有することができ、バーコードよりも格納できるデータ量が多くなる。
【0034】
さらに別の側面に係る服薬支援情報提供装置では、生体値を含む生体データを近距離無線通信方式によって受信する受信部をさらに備え、送信相手が予め設定された装置あることを認証した場合に、前記生体データを受信する。
【0035】
上記の構成では、服薬支援情報提供装置は、生体データを近距離無線通信方式によって受信することができ、送信相手が予め設定されていた装置であることを認証して、確実に所望の生体データを受信することができる。なお、この近距離無線通信方式は、特別の方式に限定されず任意の通信方式でよい。
【0036】
さらに別の側面に係る服薬支援情報提供装置では、前記2次元コードは画像取得部によって取得される。
【0037】
上記の構成では、服薬支援情報提供装置で提示される2次元コードは、画像取得部で取得されるので、ユーザ直ちに2次元コードを解読して処方箋情報を得ることが可能になる。画像取得部は、服薬支援情報提供装置に接続されたものでもよいし、服薬支援情報提供装置に内蔵されているものでもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、一側面では、服薬による生体値への影響の予測情報を提供する、服薬支援情報提供装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施の形態に係る服薬支援情報提供装置、腕時計型ウェアラブル端末、及びネットワーク経由で接続するサーバを含むシステムの概要を示す図。
図2】実施の形態に係る服薬支援情報提供装置のハードウェア構成の一例を模式的に例示する図。
図3】実施の形態に係る服薬支援情報提供装置のソフトウェア構成の一部の一例を例示する図。
図4】実施の形態に係る服薬支援情報提供装置に関する処理手順の一例を模式的に例示するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
【0041】
[概要]
まず、図1を用いて、本発明の服薬支援情報提供装置の概要について説明する。
図1は、概要の一例に係る服薬支援情報提供装置100、腕時計型ウェアラブル端末120、サーバ130、及びネットワーク140を模式的に例示している。なお、服薬支援情報提供装置100と腕時計型ウェアラブル端末120は同じ機能を有していてもよく、ここでは、腕時計型ウェアラブル端末120がユーザの生体データを測定することができるとする。
【0042】
服薬支援情報提供装置100は、ユーザから処方箋を受け付け、外部のサーバ130からネットワーク140を介してユーザが服用する薬剤の処方箋情報を取得する。処方箋情報に記載してある薬剤に関する情報を製薬会社のサーバ等に問合せ、薬剤に関する詳細なデータを得て、このデータを処方箋情報に含めてもよい。また、服薬支援情報提供装置100は、ユーザが薬剤を服薬したことを示す服薬実績を取得して、既に取得している処方箋情報に対応づけられて、ある薬剤の服薬率を含む服薬率情報を取得する。さらに、服薬支援情報提供装置100は、処方箋情報と前記服薬率情報とに基づいて、服薬率に対するユーザの生体値の変化予測情報を取得する。変化予測情報は、処方箋に記載されている薬剤ごとの服薬量をパラメータとした場合の時間経過に対する生体値の変化の予測特性(例えば、2次元グラフで表現される)を示す。
【0043】
また、服薬支援情報提供装置100は、ユーザの過去における薬剤ごとの服薬量に対する生体値の時間変化を記録した生体値ログデータを取得する。この生体値は、例えば、腕時計型ウェアラブル端末120によって測定されて、近距離無線通信等で送信されて服薬支援情報提供装置100が受信する。そして、服薬支援情報提供装置100は、取得した生体値ログデータに基づいて、ユーザの生体値の変化予測情報を補正してもよい。
【0044】
さらに、服薬支援情報提供装置100は、ユーザの生体値の(補正された)変化予測情報において、ユーザが服薬している薬剤の現在の服薬率を取得し、この服薬率での変化予測情報を使用して、ユーザが被ると予想される不利益情報を生成する。そして、服薬支援情報提供装置100は、ユーザにはユーザごとにカスタマイズされた提供形式(表示、音声再生、振動、光等で表現する)で不利益情報を提供する。
【0045】
腕時計型ウェアラブル端末120は、服薬支援情報提供装置100の代わりに、服薬支援情報提供装置100と同様の装置を備え、同様の動作を行ってもよい。ここでは、腕時計型ウェアラブル端末120はユーザに装着されてユーザの生体値を測定して生体データを生成し、この生体データを服薬支援情報提供装置100に送信することができるように設定されている。
【0046】
腕時計型ウェアラブル端末120は、ユーザが身に付ける(または所持する)ことによってユーザの生体データを計測し、服薬支援情報提供装置100へ生体データを送信する。生体データは生体に関するデータであればどんなものでもよく、例えば、心電データ、血圧データ、心拍データがある。また、腕時計型ウェアラブル端末120から、所望のユーザの生体データを取得する。例えば、一定の期間ごとに通信インタフェース201を経由して外部の腕時計型ウェアラブル端末120が計測した生体データを取得する。また、通信インタフェース201を経由して外部の腕時計型ウェアラブル端末120と常時接続して生体データが連続して測定されて、この生体データを時間的に連続して取得してもよい。この測定の形態は生体データの種類によって決定されてもよく、例えば、心拍データは時間的に連続して測定され、心電データ、血圧データ、血糖値データは一定期間ごとに測定される。そして、腕時計型ウェアラブル端末120は測定されたデータをデータの種類に応じて時間的に連続または一定期間ごとに取得する。
【0047】
例えば、生体データが心電データである場合には、腕時計型ウェアラブル端末120での信号処理回路から時系列で出力される、2つの電極間の電位差を示す電位差信号を心電データとして取得する。ここで心電データは、心臓の電気的活動を表す波形信号である。生体データが血圧データである場合には、腕時計型ウェアラブル端末120が計測した血圧データ(収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)とを含む時系列データ)を取得する。
【0048】
サーバ130は、ネットワーク140を介して服薬支援情報提供装置100と接続してデータをやり取りする。このサーバ130は例えば、病院のサーバであり、処方箋情報を生成し記憶している。
【0049】
なお、腕時計型ウェアラブル端末120が検出する生体データを、服薬支援情報提供装置100が単独で検出することができる場合には、服薬支援情報提供装置100が検出する生体データを使用してもよい。この場合には服薬支援情報提供装置100は、腕時計型ウェアラブル端末120の生体データを算出する装置部分を備えることになる。
【0050】
以上の通り、本実施形態の服薬支援情報提供装置によれば、ユーザが処方された薬剤を服用した実績から服薬率を算出し、服薬率に対する薬剤の効き目を示す生体値の変化予測情報を取得する。そして、ユーザが現状の服薬率を続けた場合に、生体値のどのような変化が将来起こるかを変化予測情報に適用して、ユーザに提供することができる。したがって、ユーザは現状の服薬率を続けた場合に、将来の生体値の変化の予測情報を事前に知ることができるので、服薬率が低い場合には服薬率を上昇させようとユーザの意思が変化する可能性が高くなり、服薬率が既に高い場合には服薬率を維持する動機付けになる。
この結果、この服薬支援情報提供装置によれば、ユーザの服薬率が上昇する可能性が高くなり、ユーザの意識が改善されることによって服薬忘れが減少することが期待される。この服薬支援情報提供装置によれば、外部の装置または医療関係者から強制的に服薬を強いられるのではなく、ユーザ自身の意思の変化によって服薬率が改善するので、ユーザの医療に対する信頼が増え、一時的な服薬率の改善ではなく永続的な改善になる可能性が高くなる。
【0051】
[構成例]
(ハードウェア構成)
<服薬支援情報提供装置>
次に、図2を用いて、本実施形態に係る服薬支援情報提供装置100(または腕時計型ウェアラブル端末120)のハードウェア構成の一例について説明する。
図2に示される通り、本実施形態に係る服薬支援情報提供装置100(または腕時計型ウェアラブル端末120)は、通信インタフェース201、記憶部202、入力装置203、出力装置204、計時装置205、電源部206、及び外部インタフェース207、及び制御部210が電気的に接続されている。本実施形態に係る服薬支援情報提供装置100は、本発明の「服薬支援情報提供装置」に相当する。なお、図2では、通信インタフェース及び外部インタフェースをそれぞれ、「通信I/F」及び「外部I/F」と記載している。
【0052】
通信インタフェース201は、ネットワークを介した有線または無線通信を行うためのインタフェースであり、例えば、近距離無線通信(例えば、Bluetooth(登録商標))モジュール、有線LAN(Local Area Network)モジュール、無線LANモジュール等である。通信インタフェース201は、服薬支援情報提供装置100を外部装置(例えば、コンピュータ、ネットワーク上の通信機器;図1の例では腕時計型ウェアラブル端末120、サーバ130)に接続するためのインタフェースである。通信インタフェース201は、制御部210によって制御され、例えば、ネットワーク140を介してサーバ130から、服薬率に対する生体値の変化予測情報を受信して取得するためのものである。他に、通信インタフェース201は、腕時計型ウェアラブル端末120がユーザの生体値を測定し、この測定された生体値を含む生体データを腕時計型ウェアラブル端末120から取得するためのものである。また、服薬支援情報提供装置100は、奨励データ及び/または医師支援データをダウンロードせず、単に閲覧する場合にも通信インタフェース201を使用する。また、服薬支援情報提供装置100が、ユーザの服薬実績を示す服薬データ、及び/または処方箋情報をネットワーク140を介してサーバ130に送信し、サーバ130で服薬率を計算し、処方箋情報と服薬率情報とに基づいて、ユーザの生体値の変化予測情報を算出し、この変化予測情報を服薬支援情報提供装置100が取得してもよい。
【0053】
このネットワークを介した通信は、通常は無線であるが有線であってもよい。なお、ネットワークは、インターネットを含むインターネットワークでもよいし、病院内LANのような他の種類のネットワークであってもよいし、USB(Universal Serial Bus)ケーブルなどを用いた1対1の通信であってもよい。通信インタフェース201は、マイクロUSBコネクタを含んでいてもよい。
【0054】
記憶部202は、コンピュータその他の装置、及び機械等が、記録されたプログラム等の情報を読み取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的または化学的作用によって蓄積する媒体である。記憶部202は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であってもよい。記憶部202は、通信インタフェース201、入力装置203等で取得した情報を記憶する。これらの情報は例えば、薬剤の処方箋情報、ユーザの服薬実績データ、及び服薬率に対する生体値の変化予測情報がある。
【0055】
また、記憶部202は、制御部210で実行される、薬剤に関する処方箋情報、ユーザの服薬量情報、ユーザの服薬率情報、ユーザの生体値の変化予測情報、薬剤ごとの服薬量をパラメータとした場合の時間経過に対する生体値の変化の予測特性(予測特性を示すデータ)を取得するための実行プログラムを記憶している。
【0056】
さらに、腕時計型ウェアラブル端末120等が取得した生体値の時間履歴を含む生体データは、所定の期間の全ての生体データを記憶部202に記憶していてもよい。
【0057】
入力装置203は、入力を受け付ける装置であり、例えば、タッチパネル、物理ボタン、マウス、キーボード等である。出力装置204は、出力を行う装置であり、表示、音声、紙媒体、光等で情報を出力し、例えば、ディスプレイ、スピーカ、プリンタ等である。タッチパネルは、表示パネルに指及びペン等でタッチすることによって情報を入力でき、また、タッチするボタンやその他の情報が表示されるので、入力装置203と出力装置204との両方に対応する。
【0058】
計時装置205は、時間を計測する装置であり、日時を計測できる。例えば、計時装置205はカレンダーを含む時計であってもよく、現在の年月及び/または日時の情報を制御部210へ渡す。
【0059】
電源部206は、電力を供給可能なものであれば何でもよく、例えば、充電可能な2次電池または通常のコンセントから取得可能な交流電源である。電源部206は、服薬支援情報提供装置100本体に搭載されている各要素へ電力を供給する。電源部206は、例えば、通信インタフェース201、記憶部202、入力装置203、出力装置204、計時装置205、外部インタフェース207、及び制御部210へ電力を供給する。
【0060】
外部インタフェース207は、服薬支援情報提供装置100の本体と外部との媒介をするためのものであり、例えば、USBポートであり、外部装置(例えば、メモリ、通信機器、生体データ測定装置、サーバ)と接続するためのインタフェースである。外部インタフェース207は、例えば、サーバ、心電計、血圧計、歩数計、活動量計、及び/または加速度センサ等の外部装置と接続するためのインタフェースである。
【0061】
制御部210は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。薬剤に関する処方箋情報、ユーザの服薬量情報、ユーザの服薬率情報、ユーザの生体値の変化予測情報、薬剤ごとの服薬量をパラメータとした場合の時間経過に対する生体値の変化の予測特性(予測特性を示すデータ)を取得するための実行プログラムは記憶部202に記憶されていて、制御部210は記憶部202から実行プログラムを呼び出して処理を実行する。制御部210の詳細は、図3を参照して説明する。
【0062】
(ソフトウェア構成)
<服薬支援情報提供装置100>
次に、図3を用いて、本実施形態に係る服薬支援情報提供装置100のソフトウェア構成の一例を説明する。図3は、服薬支援情報提供装置100の制御部210で実行される、薬剤に関する処方箋情報、ユーザの服薬量情報、ユーザの服薬率情報、ユーザの生体値の変化予測情報、及び薬剤ごとの服薬量をパラメータとした場合の時間経過に対する生体値の変化の予測特性(予測特性を示すデータ)を取得するためのプログラムを実行するためのソフトウェア構成を示す。
【0063】
服薬支援情報提供装置100の制御部210は、必要なプログラムを実行する際に、記憶部202に記憶された、薬剤に関する処方箋情報、ユーザの服薬量情報、ユーザの服薬率情報、ユーザの生体値の変化予測情報、薬剤ごとの服薬量をパラメータとした場合の時間経過に対する生体値の変化の予測特性(予測特性を示すデータ)を取得するための実行プログラムをRAMに展開する。そして、制御部210は、RAMに展開された、この実行プログラムをCPUにより解釈及び実行して、各構成要素を制御する。このように、図3に示される通り、本実施形態に係る服薬支援情報提供装置100は、処方箋情報取得部301、服薬率情報取得部302、変化予測情報取得部303、服薬量生体値情報取得部304、補正部305、変化予測情報提供部306、不利益情報生成部307、及び不利益情報提供部308を備える。
【0064】
処方箋情報取得部301は、通信インタフェース201を経由して外部のサーバ130から、ユーザが服用する薬剤の処方箋情報を取得する。このサーバ130は例えば、病院のサーバであり、処方箋情報を生成し記憶している。また、処方箋情報取得部301は、入力装置203を介して処方箋情報を取得してもよい。ユーザは病院から渡された処方箋を入力装置203を介してオフラインで入力したり、処方箋に記載されている2次元コードを画像取得装置である入力装置203によって取得して、コードを復号して処方箋情報を取得してもよい。また、通信インタフェース201を介して病院のサーバ等から薬剤に関するデータを取得し、処方箋情報として取得してもよい。
【0065】
また、処方箋情報取得部301は、処方箋情報に記載してある薬剤に関する情報を通信インタフェース201を介して製薬会社のサーバ等に問合せ、薬剤に関する詳細なデータを得て、このデータを処方箋情報に含めてもよい。この薬剤に関する詳細なデータは、薬剤に関する情報であれば何でもよいが、例えば、作用と効果、副作用、服用方法(服薬量、服用する時間帯等)、保管方法、生活上の注意、規格区分、及び承認番号を含む。処方箋情報取得部301が取得した処方箋情報は、記憶部202に記憶される。
【0066】
服薬率情報取得部302は、入力装置203を介してユーザが薬剤を服薬したことを示す服薬実績を取得して、処方箋情報取得部301において取得された処方箋情報に対応づけられて、ある薬剤の服薬率を含む服薬率情報を取得する。服薬実績は、入力装置203からユーザによってある薬剤を服用したことが入力されて、記録されるデータである。服薬率情報取得部302は、処方箋情報からユーザが服用すべき薬剤の用法及び用量を取得できるので、入力装置203による薬剤の服薬の履歴によって、規定された服薬量に対する服薬実績を示す服薬率を算出することができる。服薬率情報取得部302は、取得した服薬率情報を記憶部202に記憶する。
【0067】
服薬率情報取得部302が取得した服薬率情報は、記憶部202において、処方箋情報取得部301で取得された処方箋情報に対応づけて記憶される。また、記憶部202は、処方箋情報と前記服薬率情報とに基づいて、服薬率に対するユーザの生体値の変化予測情報を記憶している。この変化予測情報は、処方箋情報取得部301が通信インタフェース201経由で製薬会社または病院等のサーバ130へアクセスし、処方箋情報を提供しこの処方箋に記載の薬剤について、服薬率に対する生体値の変化予測情報を取得して記憶部202に記憶しておく。サーバ130は、薬剤ごとの服薬量をパラメータとした場合の時間経過に対する生体値の変化の予測特性を記憶していて、薬剤に関するデータがアップデートされるたびに更新される。他に、記憶部202に薬剤ごとの変化予測情報を記憶せず、処方箋に記載の薬剤についての情報と服薬率情報とをサーバ130に提供し、サーバ130上で変化予測情報のうちの特定の服薬率に対する生体値の変化予測情報だけを取得してもよい。
【0068】
変化予測情報取得部303は、記憶部202から、処方箋情報取得部301が取得した処方箋情報と、服薬率情報取得部302が取得した服薬率情報とに基づいて、服薬率に対するユーザの生体値の変化予測情報を取得する。
【0069】
服薬量生体値情報取得部304は、ユーザの過去における薬剤ごとの服薬量に対する生体値の時間変化を記録した生体値ログデータを取得して、記憶部202に順次記憶させる。服薬量生体値情報取得部304は、通信インタフェース201を介して腕時計型ウェアラブル端末120等の生体データ測定装置から生体データを取得し、服薬率情報取得部302からユーザが薬剤を服薬した服薬情報を取得して、これらの情報から生体値ログデータを取得する。
【0070】
補正部305は、服薬量生体値情報取得部304が取得して記憶部202に記憶されている生体値ログデータに基づいて、変化予測情報取得部303が取得した変化予測情報を補正する。生体値ログデータは実際のユーザの服薬情報に基づいて作成されているので、よりユーザにカスタマイズされているデータである。この結果、補正部305は、ユーザの実際の服薬による生体値に基づいて補正するので、よりユーザの本来の変化予測情報に近いデータを得ることができる。
【0071】
変化予測情報提供部306は、補正部305において補正された変化予測情報を、出力装置204を介してユーザに提供する。変化予測情報提供部306は、変化予測情報をどのような形式でユーザに提供してもよく、例えば、服薬率をパラメータとし、横軸を時間として、縦軸を薬剤によって改善させるべきユーザの生体値としたグラフを生成し出力装置204において表示可能なデータ形式を使用する変化予測情報のデータを生成する。このグラフによって任意の服薬率においての生体値がたどる数値が予測される。また、変化予測情報提供部306は、プリンタによって印刷することができるように変化予測情報のデータ形式を生成し、出力装置204がプリンタとして使用され、出力装置204が紙媒体等によって出力してもよい。他の形式として、変化予測情報提供部306は例えば音声を採用し、変化予測情報を音声で再生することによってユーザに提供することも可能である。
【0072】
不利益情報生成部307は、補正部305によって補正された変化予測情報において、記憶部202に記憶されている現在のユーザが服薬している薬剤の服薬率を取得し、この服薬率での変化予測情報を使用して、ユーザが被ると予想される不利益情報を生成する。不利益情報は、ユーザにとって不利益と想定される情報であれば何でもよいが、例えば、ユーザに対する注意または警告を表すアラーム情報、処方箋情報の薬剤変更予測情報、服薬する薬剤の購入費用の増加を予測する費用増加予測情報、重篤な症状及び/または病態の変化が発生する発生確率の上昇及び/またはこれらの発生するまでの期間が短期化することを予測する悪化予測情報がある。不利益情報生成部307は、これらの生成された不利益情報を不利益情報提供部308に渡す。
【0073】
不利益情報提供部308は、不利益情報生成部307において生成された不利益情報を、出力装置204を介してユーザに提供する。不利益情報提供部308は、不利益情報をどのような形式でユーザに提供してもよく、例えば、出力装置204において表示可能なデータ形式を使用する不利益情報のデータを生成する。不利益情報提供部308は、不利益情報がアラーム情報である場合には音情報を生成し出力装置204に出力する。アラーム情報は、音の代わりに光を発光してもよいし、音及び光の両方でもよく、この場合には不利益情報提供部308は音及び/または光を出力するためのデータを生成する。不利益情報提供部308は、不利益情報が薬剤変更予測情報である場合には、現在の服薬率に基づいて、変更される薬剤の服薬量または薬剤の種類の変更を判定し、これらの変更される薬剤についての情報を表示または音声で再生するためのデータを生成する。変更され得る薬剤についての情報は、例えば、処方箋情報であり、不利益情報提供部308はこの処方箋情報を表示または音声で再生するためのデータを生成する。
【0074】
不利益情報提供部308は、不利益情報が費用増加予測情報である場合には、現在服薬している薬剤と将来に服薬することになる可能性が高い薬剤との購入費用の増加額を時間に対してグラフ化した図を表示するためのデータ、または購入費用が時間の経過と共に増大する額を音声でユーザに提示するためのデータを生成する。また、不利益情報が悪化予測情報である場合には、不利益情報提供部308は、現在の服薬率であるとユーザの症状がどのように段階的に悪化していくかを予想するグラフであって、時間に対して症状を段階的に示すグラフ、時間に対して重篤な症状及び/または病態の変化が発生する発生確率を示すグラフを表示するためのデータ、またはこれらを音声で表現するための音声データを生成する。さらに、不利益情報が悪化予測情報である場合には、不利益情報提供部308は、重篤な症状及び/または病態の変化が発生するまでの期間が短期化することを、現在から重篤な症状及び/または病態の変化が発生すると予測されるまでの最も起こりうる確率が高い期間を時間に対するグラフとして表示するためのデータ、またはこの期間を時間の経過と共に示す音声データを生成する。
【0075】
このグラフによって現在の服薬率において不利益情報が時間と共にどのように変化していくかが予測される。また、変化予測情報提供部306は、出力装置204の一形態であるプリンタによって印刷することができるように不利益情報のデータ形式を生成し、出力装置204が紙媒体等によって出力してもよい。
【0076】
<その他>
服薬支援情報提供装置100の動作に関しては後述する動作例で詳細に説明する。なお、本実施形態では、服薬支援情報提供装置100の制御部210は汎用のCPUによって実現されてもよい。しかしながら、以上の動作(または機能)の一部または全部が、1または複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。また、服薬支援情報提供装置100の構成に関して、実施形態に応じて、適宜、省略、置換及び追加が行われてもよい。
【0077】
[動作例:全体]
次に、図4を用いて、服薬支援情報提供装置100の動作の概略を説明する。
【0078】
図4は、服薬支援情報提供装置100の処理手順の一例を例示するフローチャートである。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0079】
(起動)
まず、ユーザは服薬支援情報提供装置100を、入力装置203を介して起動し、さらに設定等の入力を受け付ける。服薬支援情報提供装置100の制御部210は、以下の処理手順にしたがって、処理を進める。
【0080】
(ステップS401)
ステップS401では、制御部210は、処方箋情報取得部301として動作し、通信インタフェース201を経由して外部の製薬会社のサーバ等から処方箋情報を取得する。処方箋情報取得部301は、入力装置203によって入力されたユーザが服用する薬剤の名称及び用法等が記載してある処方箋を取得し、その処方箋に記載されている薬剤の名称にしたがってサーバ等から、処方箋に記載されている薬剤についての情報を含む処方箋情報を取得する。
【0081】
(ステップS402)
ステップS402では、制御部210は、服薬率情報取得部302として動作し、入力装置203を介してユーザが薬剤を服薬したことを示す服薬実績を取得して、処方箋情報取得部301において取得された処方箋情報に対応づけられて、ある薬剤の服薬率を含む服薬率情報を取得する。
【0082】
(ステップS403)
ステップS403では、制御部210は、変化予測情報取得部303及び変化予測情報提供部306として動作し、記憶部202に記憶されている処方箋情報と服薬率情報とに基づいて、ユーザの生体値の変化予測情報を取得して、変化予測情報提供部306はこの変化予測情報を出力装置204によってユーザに提供する。
【0083】
なお、補正部305が、変化予測情報取得部303から変化予測情報を取得し、ユーザの生体値ログデータに基づいて変化予測情報を補正し、補正された変化予測情報を変化予測情報提供部306へ渡し、変化予測情報提供部306が補正された変化予測情報を出力装置204を介して提供してもよい。
【0084】
(ステップS404)
ステップS404では、制御部210は、不利益情報生成部307として動作し、記憶部202に記憶されている現在のユーザが服薬している薬剤の服薬率を取得し、この服薬率での変化予測情報を使用して、ユーザが被ると予想される不利益情報を生成する。
【0085】
(ステップS405)
ステップS405では、制御部210は、不利益情報提供部308として動作し、不利益情報生成部307において生成された不利益情報を、出力装置204を介してユーザに提供する。不利益情報提供部308は、不利益情報をどのような形式でユーザに提供してもよい。
【0086】
なお、補正部305が、変化予測情報取得部303から変化予測情報を取得し、ユーザの生体値ログデータに基づいて変化予測情報を補正した変化予測情報を不利益情報生成部307へ渡し、不利益情報提供部308が不利益情報を出力装置204を介してユーザに提供してもよい。
【0087】
[作用と効果]
以上のように、本実施形態の服薬支援情報提供装置100は、ステップS401において処方箋情報取得部301がユーザ等から処方箋を受け付け、通信インタフェース201を介して製薬会社等のサーバ130から薬剤の詳細な情報を含む処方箋情報を取得することができる。さらに、ステップS402において服薬率情報取得部302が服薬率情報を取得して、ステップS403においてこの服薬率情報と処方箋情報とに基づいて、ユーザの生体値の変化予測情報を取得して、ユーザに提供することができる。ユーザはこの変化予測情報を知ることによって、服薬率が低い場合には生体値がどの程度悪化するかを予想することができ、服薬率を上昇させる強力な動機付けになる。一方、服薬率が高く、生体値が改善することが予測される場合には現状の服薬に満足し服薬率を維持させる動機付けになる。
また、ステップS404において生体値の変化予測情報が悪化すると予想され、どのような不利益をユーザが被るかが予測される不利益情報が生成され、ステップS405において不利益情報をユーザは知ることができる。したがって、ユーザは現状の服薬率で服薬を続けると、どのような不利益なことが起こるかを事前に知ることができるので、服薬率を上昇させる可能性が高くなる。
【0088】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。また、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合せ可能である。
【0089】
<1>
ユーザの生体データを検出するセンサは、例えば、腕時計型ウェアラブル端末120に搭載されるが、服薬支援情報提供装置100がこれらの装置を備えていて、これらから服薬量生体値情報取得部304が生体データを取得してもよい。
【0090】
例えば、生体データが心電データ、血圧データの場合があり、心電データは心臓の電気的興奮とその興奮がさめる時間的な変化を示すデータであり、心臓の電気的興奮によって体表面に発生する変動する電場により電位が変化する。血圧データは、収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)とを含む時系列データである。
【0091】
生体データが歩数データの場合には、1時間ごとにその時間帯にユーザが歩いた歩数の和を計算する。歩数データの場合には、測定時刻も参照する。しかしながら、例えば、昼間であるにも関わらず、ほとんど歩数がない(例えば、1時間ごとの歩数の和がしきい値以下が連続して所定回数続く)場合には、異常であると服薬率情報取得部302が判定する。
【0092】
<2>
データの送信は、ユーザの指示に基づいて行われてもよく、例えば、入力装置203にインタフェースが表示され、その表示をユーザが例えば、タッチすることによって処方箋が、処方箋情報取得部301が送信設定を行い通信インタフェース201を介してサーバ130へ送信され、サーバ130から処方箋情報を通信インタフェース201を介して受信する。
【0093】
服薬量生体値情報取得部304は、ユーザの生体データを近距離無線通信方式によって受信するように設定し、送信相手が腕時計型ウェアラブル端末120であることを認証してから生体データを受信し、確実に所望のユーザの生体データを受信することができる。この近距離無線通信方式は、特別の方式に限定されず任意の通信方式でよく、例えば、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)がある。
<3>
服薬量生体値情報取得部304は、通信インタフェース201を介して生体データを服薬支援情報提供装置100へ送信する腕時計型ウェアラブル端末120との間で認証し、服薬支援情報提供装置100にとって生体データを取得すべき腕時計型ウェアラブル端末120であることを認証した場合に、腕時計型ウェアラブル端末120から生体データを服薬支援情報提供装置100が受信することを可能にするようにしてもよい。
<4>
本発明の装置は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体(または記憶媒体)に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
また、以上の各装置及びそれらの装置部分は、それぞれハードウェア構成、またはハードウェア資源とソフトウェアとの組み合せ構成のいずれでも実施可能となっている。組み合せ構成のソフトウェアとしては、予めネットワークまたはコンピュータ読み取り可能な記録媒体(または記憶媒体)からコンピュータにインストールされ、当該コンピュータのプロセッサに実行されることにより、各装置の動作(または機能)を当該コンピュータに実現させるためのプログラムが用いられる。
【0094】
<5>
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0095】
<6>
また、「及び/または」とは、「及び/または」でつながれて列記される事項のうちの任意の1つ以上の事項という意味である。具体例を挙げると、「x及び/またはy」とは、3要素からなる集合{(x),(y),(x,y)}のうちのいずれかの要素という意味である。もう1つの具体例を挙げると、「x,y,及び/またはz」とは、7要素からなる集合{(x),(y),(z),(x,y),(x,z),(y,z),(x,y,z)}のうちのいずれかの要素という意味である。
【0096】
(付記1)
ユーザが服薬予定の薬剤に関する処方箋情報を取得する第1取得部(301)と、
前記処方箋情報で規定された服薬量に対する前記ユーザの服薬実績を表す服薬率を含む服薬率情報を取得する第2取得部(302)と、
前記処方箋情報と前記服薬率情報とに基づいて、前記服薬率に対する前記ユーザの生体値の変化予測情報を取得する第3取得部(303、305)と、
前記生体値の変化予測情報を提供する第1提供部(306)と、を備える、
服薬支援情報提供装置。
【符号の説明】
【0097】
100…服薬支援情報提供装置
120…腕時計型ウェアラブル端末
130…サーバ
140…ネットワーク
201…通信インタフェース
202…記憶部
203…入力装置
204…出力装置
205…計時装置
206…電源部
207…外部インタフェース
210…制御部
301…処方箋情報取得部
302…服薬率情報取得部
303…変化予測情報取得部
304…服薬量生体値情報取得部
305…補正部
306…変化予測情報提供部
307…不利益情報生成部
308…不利益情報提供部
図1
図2
図3
図4