(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】貼付剤支持体用フィルム、積層体及び貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20060101AFI20230801BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230801BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230801BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230801BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230801BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230801BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20230801BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20230801BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230801BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20230801BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
A61F13/02 310M
A61K9/70 401
A61K47/34
A61F13/02 310D
B32B3/30
B32B27/00 L
B32B27/00 M
B32B27/18 F
B32B7/06
C09J7/20
C09J7/38
C09J7/40
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2019090155
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 愛沙子
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 徹三
(72)【発明者】
【氏名】高柳 浩介
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-127531(JP,A)
【文献】特表2008-516700(JP,A)
【文献】国際公開第03/041786(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/02
A61K 9/70
A61K 47/34
B32B 3/30
B32B 27/00
B32B 27/18
B32B 7/06
C09J 7/20
C09J 7/38
C09J 7/40
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面側が薬剤バリア性を有する樹脂からなる貼付剤支持体用フィルムであって、
前記貼付剤支持体用フィルムは、層全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで、面に沿って凹部と凸部を繰り返す凹凸構造を有し、
前記凹凸構造は、前記凹部と前記凸部との高低差が前記貼付剤支持体用フィルムの膜厚よりも大きく、
前記貼付剤支持体用フィルムの総厚が、20μm以上450μm以下の範囲であり、
前記一方の面とは反対側の面である他方の面における当該他方の面側に張り出した部分の頂部の面からなる、前記貼付剤支持体用フィルムの総厚を規定する面が、平坦な平坦部を有し、
前記他方の面側からみた平面視において、貼付剤支持体用フィルムの外形面積に対する、
当該他方の面における平坦部を構成する部分の面積率が、20%以上85%以下であ
り、
前記凹凸構造における、前記凹部と前記凸部との並び方向に沿った断面において、前記平坦部の構造幅が、30μm以上74μm以下であることを特徴とする貼付剤支持体用フィルム。
【請求項2】
前記貼付剤支持体用フィルムの総厚が、90μm以上450μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤支持体用フィルム。
【請求項3】
前記他方の面側からみて、貼付剤支持体用フィルムの外形面積に対する、
凸部と凹部の平坦部の総面積率が、30%以上95%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貼付剤支持体用フィルム。
【請求項4】
前記薬剤バリア性を有する樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体、のいずれかから選ばれる樹脂からなることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項5】
前記薬剤バリア性を有する樹脂が
、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー
、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体、のいずれかから選ばれる樹脂からなることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項6】
前記薬剤バリア性を有する樹脂が
、エチレン-ビニルアルコール共重合
体からなることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項7】
前記凹凸構造の高低差が5μmより大きく300μm以下であることを特徴とする請求項1~
請求項6のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項8】
前記凹凸構造の高低差が
200μm
以上300μm以下であることを特徴とする請求項1~
請求項6のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項9】
複数の領域を有し、各領域に個別の凹凸パターンで前記凹凸構造が形成されていることを特徴とする請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項10】
請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の貼付剤支持体用フィルムの両面又は片面に機能層が積層された積層体。
【請求項11】
請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の貼付剤支持体用フィルム又は請求項
10の積層体における薬剤バリア性樹脂層側に、薬剤入り粘着剤層と剥離ライナーとがこの順に形成された貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤支持体用フィルム、積層体及び貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能などの性質を有する。このため、プラスチックフィルムは、様々なものに利用されている。プラスチックフィルムの用途は、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材、点滴パック、買物袋、ポスター、テープ、液晶テレビ等に利用される光学フィルム、保護フィルム、窓に貼合するウィンドウフィルム、ビニールハウス、建装材等々、多岐にわたる。このような用途に対し、用途に応じて適正なプラスチック材料が選択される。更に、プラスチックフィルムを複数種類重ねて積層体とすることもなされている。また、複数のプラスチック材料を1つの層中に混ぜることで、単一材料の欠点を補う用い方もある。多くの場合、耐熱性や機械強度、透明性などの観点から、適正なフィルム材料を選択している。
【0003】
一般に、プラスチックフィルムの機械特性やバリア性は、プラスチックフィルムの材料や層構成によって決まる。例えば、強度重視の材料では伸び性が小さくなる傾向がある。このため、高い強度を有しつつ十分な伸び性を確保できるフィルム材料が切望されている。また、バリア性が必要な場合には、バリア性の良い材料に限定して使用するか、別の工程でバリア層を積層する必要が出てくるなど、製造時の手間やコストが問題となってくる場合がある。
【0004】
ところで、肌に貼るシップで代表される貼付剤は、肌に貼る面を構成する粘着剤中に薬剤を入れ、その薬剤を皮膚から体内へと吸収させるものである。貼付剤の外側表面を構成する支持体は、通常、フィルム又は不織布の積層体で構成されている。この貼付剤の支持体に求められる機能としては、薬剤に対しバリア性(薬剤バリア性)があること、伸び性があることなどが挙げられる。ここで、薬剤バリア性は、薬剤が効率良く皮膚から吸収されるように、支持体が薬剤を吸収しない若しくは薬剤を吸収し難い性能のことを指す。また、伸び性は、貼付剤を肌に貼った後のごわつき感を抑えたり、貼った貼付剤が動作時に剥がれにくくしたりするといった重要な要素となる。
【0005】
しかしながら、薬剤バリア性と伸び性とは両立が難しいのが現状である。特に、薬剤バリア性を有するプラスチックフィルムの材料としては、二軸延伸PETやエチレン-ビニルアルコール共重合体やシクロオレフィンコポリマーなどのような、一部の材料に限定されてしまう。そして、これら材料は、強度が大きいために伸び性が低いという欠点がある。
例えば特許文献1では、PETやエチレン-ビニルアルコール共重合体などの材料を使用したプラスチックフィルムを貼付剤の支持体として用いているが、これら材料では伸び性が低く、貼付剤として使用したときのごわつき感や、激しい動作時に剥がれやすいといった欠点がある。このように、従来から、貼付剤支持体用フィルムには、薬剤バリア性と伸び性の両立が求められている。
【0006】
また、特許文献2にあるように、バリアフィルムと軟質フィルムとを接着し、バリアフィルム面を蛇腹構造にすることで薬剤バリア性と伸び性を両立する試みがなされているが、工程数が多く、作製方法が煩雑である欠点がある。
別の先行技術では、特許文献3にあるように、弾性体シートとひだ状の不織布を部分的に結合させることで、柔軟性と肌触りを両立させる試みがなされているが、貼付剤表面の印字を視認することが困難であり、使用者が貼付剤種を確認しにくいといった欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6176846号公報
【文献】特開平8-127531号公報
【文献】特許第3295455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような点に鑑みてなされたもので、製造時の手間やコストを抑えつつ、薬剤バリア性と伸び性が良好で、印刷適性が高い支持体としての貼付剤支持体用フィルム、これを用いた積層体、貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、本発明の第一態様は、少なくとも一方の面側が薬剤バリア性を有する樹脂からなる貼付剤支持体用フィルムであって、前記貼付剤支持体用フィルムは、層全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで、面に沿って凹部と凸部を繰り返す凹凸構造を有し、前記凹凸構造は、前記凹部と前記凸部との高低差が前記貼付剤支持体用フィルムの膜厚よりも大きく、前記貼付剤支持体用フィルムの総厚が、20μm以上450μm以下の範囲であり、前記一方の面とは反対側の面である他方の面における当該他方の面側に張り出した部分の頂部の面からなる、前記貼付剤支持体用フィルムの総厚を規定する面が、平坦な平坦部を有し、前記他方の面側からみた平面視において、貼付剤支持体用フィルムの外形面積に対する、前記平坦部を構成する部分の面積率が、20%以上85%以下であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、製造時の手間やコストを抑えつつ、簡易な構造で、支持体としての強度を確保しつつ、薬剤バリア性と伸び性が共に良好なで、印刷適性が高い貼付剤支持体用フィルム、及びこれを用いた積層体や貼付剤を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一例を示す断面模式図である。
【
図2】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、総厚・凹凸構造の高低差・凹凸構造の間隔を説明する断面模式図である。
【
図3】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、凹部及び凸部の各平坦部の膜厚を説明する断面模式図である。
【
図4】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、構造の平坦部幅を説明する断面模式図である。
【
図5】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける別の一例を示す断面模式図である。
【
図6】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【
図7】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【
図8】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【
図9】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【
図10】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【
図11】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、複数の区画を組み合わせた際の凹凸構造の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【
図12】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、複数の区画を組み合わせた際の凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【
図13】本実施形態の積層体の例を示す断面模式図である。
【
図14】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムを用いた貼付剤の一例を示す断面模式図である。
【
図15】本実施形態の積層体を用いた貼付剤の一例を示す断面模式図である。
【
図16】従来の貼付剤支持体用フィルムを用いた貼付剤の一例を示す断面模式図である。
【
図17】本発明に関わる実施例と従来の支持体フィルムの伸び挙動例を示すグラフである。
【
図18】貼付剤支持体用フィルムの表面形状を変えた場合において、フィルム全体伸びと局所的な歪みの最大値との関係を示したグラフである。
【
図19】貼付剤支持体用フィルムの断面形状を変えて示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。
【0013】
(貼付剤支持体用フィルム1の構成)
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、
図1に示すように、層全体が厚さ方向にうねった形状(側方から見て蛇行した形状)に構成されることで、面に沿って凹部2Aと凸部2Bを繰り返す凹凸構造4を有する。凹凸構造4は、凹部2Aと凸部2Bとの高低差(
図2の符号T参照)が貼付剤支持体用フィルム1の膜厚(厚さとも記載する。
図3の符号t1、t2参照)よりも大きくなるように形成されている。凹凸構造4は、例えば、層全体を面方向に沿って蛇行した形状に加工することで設けることができる。
【0014】
貼付剤支持体用フィルム1は、一方の面2(
図1における上面側)側若しくは他方の面3(
図1における下面側)側に、薬剤入りの粘着剤層6を配置可能である(
図14参照)。貼付剤支持体用フィルム1は、粘着剤層6に含有される薬剤に対し薬剤バリア性を有する材料から構成される。貼付剤支持体用フィルム1の材料は、貼付剤への使用が想定される薬剤に対し薬剤バリア性を有する公知のプラスチック材料から適宜、選択すればよい。
【0015】
貼付剤支持体用フィルム1の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体を挙げることが出来る。貼付剤は体に貼ることで、その粘着剤層6に含まれている薬効成分を皮膚に浸透させ、血液を通じて全身に作用させるものである。係る貼付剤に使用される貼付剤支持体用フィルム1は、その薬効成分をバリアし、吸着しない又は吸着しがたいことが重要である。前記材料においては、薬効成分へのバリア性(非吸着性)が良好で、貼付剤の薬効成分を減らすことなく支持体としての機能を果たす。このような材料で貼付剤支持体用フィルム1を形成した場合には、例えばツロブテロールやリバスチグミンのような薬剤に対して、薬剤バリア性を有する。
【0016】
また、
図13に示したように、薬剤入り粘着剤層6を設けない側の他方の面には、凹凸構造4に沿った形で、薬剤バリア性の有無を問わない機能層30を設けることが可能である。薬剤入り粘着剤層6を設ける側の面に機能層を設けようとする場合には、該機能層の材料にも薬剤バリア性が求められる。
【0017】
(凹凸構造4について)
本実施形態では、前記凹凸構造4は、凹部2Aの底部と凸部2Bの頂部の貼付剤支持体用フィルムの総厚を規定する面を構成する部分、即ち、一方の面側及び他方の面側に張り出した部分の頂部の面3a及び2a、の少なくとも一方が平坦部を有することを特徴とする。本実施形態の例では、
図1における上面側を一方の面、下面側を他方の面とする。前述のように、薬剤バリア性の有無を問わない層30を設けた場合は、貼付剤支持体用フィルムの総厚を規定する面を構成する部分の該層30側が平坦部を有することを特徴とする。
【0018】
このとき、下面側に張り出した部分の面における平坦となった前記平坦部の面積率が、貼付剤支持体用フィルムの外形面積の20%以上85%以下であることを特徴とする。
これは、この範囲の面積率で平坦部が存在すると、貼付剤として用いる際に必要となる印字の視認性が良好で、且つ伸び性も確保されるためである。該平坦部が20%未満であると、印字が滲んで視認性が悪化するおそれがあり、85%より大きいと、伸び性が悪化する点で不利となるおそれがある。
また、凹部2Aと凸部2Bとの並び方向(
図1の左右方向)において、前記平坦部の面2aもしくは面3aの幅は、全体にわたって30μm以上500μm以下であることが好ましい。これは、平坦部幅が30μm未満であると印字に用いる塗料を保持し辛くなる危険性があり、500μmを超えると伸び性が低下することが懸念されるためである。より望ましくは、70μm以上250μm以下の幅であることが好ましい。
【0019】
更に、前記平坦部を有する面の凹んだ部分、即ち前記平坦部を有するのが
図1における面2側であれば2b、前記平坦部を有するのが面3側であれば面3b、にも平坦部を有することが好ましい。平面視における、凸部と凹部の平坦部の総面積率が、貼付剤支持体用フィルムの外形面積の30%以上、95%以下であると、更に良好な印刷視認性を確保することが可能となる。
前記凹凸構造において、貼付剤支持体用フィルム1の一方の面2(
図1における上面側)と他方の面3(
図1における下面側)とが共に、凹凸の位置は一致している。また、図示はないが、断面形状における角部が丸みを帯びていてもよい。
【0020】
ここで、凹凸構造4について、隣り合う凸部2B同士の間隔D1及び隣り合う凹部2A同士の間隔D2(
図2参照)は、各々、等間隔など周期性を持って配置してもよいし、異なっていても良い。間隔D1、D2は、貼付剤に要望される所望の延伸状態に応じて適宜設定することが可能である。また、
図5に示したように、凹部2Aと凸部2Bとの並び方向において、凹凸構造の底部または頂部の平坦部の長さを複数パターン組み合わせることで、所望の延伸状態が発現するように調整することも可能である。
また凹凸構造4は、凹部2A及び凸部2Bが、粘着剤層6を形成する側の面側(
図1における上面2側)からみて、
図6及び
図7に示すように、それぞれ直線状に延在するような凹凸パターンで構成しても良い。凹部2A及び凸部2Bは同幅で構成しても良いし、幅が異なるように構成しても良い。
【0021】
図6は、凹凸構造4を形成する領域10を辺10a、10bを境界とした長方形形状とし、短辺10bに平行となるように、凹部2A及び凸部2Bの延在方向を設定した例である。すなわち、面方向に沿って、領域10の長辺10a方向に向けて凹部2A及び凸部2Bが並ぶように凹凸構造4を形成した例である。
図7は、凹凸構造4を形成する領域10を長方形形状とし、凹部2A及び凸部2Bの延在方向を、短辺10b及び長辺10aの両方から傾くように設定した例である。
また凹凸構造4は、凹部2A及び凸部2Bが、粘着剤層6を形成する面2側(
図1における上面側)からみて、
図8~
図10に示すように、凹部2A及び凸部2Bの延在方向の少なくとも一部が曲線で構成されるような凹凸パターンで構成しても良い。凹部2A及び凸部2Bは同幅で構成しても良いし、幅が異なるように構成しても良い。
【0022】
図8は、凹凸構造4を形成する領域10を長方形形状とし、凹部2A及び凸部2Bの延在方向を、同心円状に設定した例である。
図9は、凹凸構造4を形成する領域10を長方形形状とし、凹部2A及び凸部2Bの延在方向を、同心且つ楕円状(相似形楕円形状)に設定した例である。
図10は、凹凸構造4を形成する領域10を長方形形状とし、凹部2A及び凸部2Bの延在方向を、短辺に平行となるように設定する共に、延在方向に沿って蛇行する蛇行状態に設定した例である。
なお、以上の凹凸パターンは一例であり、これらの形状に限定されるものではない。
【0023】
例えば、一つの領域10内に、凹部2A及び凸部2Bの基本の延在方向を直線形状とし、一部に曲線に沿って延在する部分を設けたり、
図6のパターンと
図10のパターンを混合したパターン形状に設定したりしても良い。
また、凹凸構造4を形成する領域10についても、長方形形状を例示したが、領域10の形状は、長方形形状に限定されるものではない。領域10の輪郭が、円形形状等であっても良い。
また、貼付剤支持体用フィルム1の全面を、凹凸構造4を設ける領域10とする必要もない。例えば、
図6における左右両側の縁部や凹凸の延在方向の中央部などに、凹凸構造4を形成しない箇所があっても良い。
図6の場合、左右方向に伸び性が大きくなっているので、その伸びを拘束しない位置であれば、貼付剤支持体用フィルム1に、部分的に凹凸構造4がない部分が存在していても問題はない。
【0024】
(貼付剤支持体用フィルム1の厚さ及び凹凸部の高さ等)
また、貼付剤支持体用フィルム1の総厚T(
図2参照)は、20μm以上450μm以下であると好ましく、より好ましくは30μm以上300μm以下である。なお、貼付剤支持体用フィルム1の膜厚は、必ずしも均一である必要はない。凹凸形状加工後のフィルムにあっては、稜線付近(向きの異なる二つの部の連結部付近)の貼付剤支持体用フィルム1の膜厚は、他の部分の貼付剤支持体用フィルム1の膜厚と異なっていても良い。
貼付剤支持体用フィルム1の膜厚は、5μm以上150μm以下が好ましい。貼付剤支持体用フィルム1の膜厚は、例えば、前記凹部底部の平坦部厚さt2と前記凸部頂部の平坦部厚さt1(
図3参照)の平均値で規定する。これは、貼付剤支持体用フィルムの膜厚が5μm未満では、必要な強度が維持できず破断し易くなり、膜厚が150μmより厚くなると凹凸構造が変形する際に要される応力が大きくなりすぎ、伸び性が悪化するためである。より好ましくは、膜厚は10μm以上100μm以下であるとよい。
【0025】
凹凸構造4の凹部2Aと凸部2Bの高低差H(
図2参照)は、10μmより大きく300μm以下の範囲であると良い。凹部2Aと凸部2Bの高低差Hが10μm以下の場合には、歪の調整効果を得ることは難しく、また、高低差Hが300μmを超える場合には、製造上、凹凸構造4をつけることが難しくなるおそれがある。より好ましくは、高低差Hが20μm以上200μm以下の範囲内であるとより良い。
なお、
図2、
図3に示す、凸部頂部の平坦部厚さt1、凹部底部の平坦部厚さt2、総厚T、高低差Hは、CCD付光学顕微鏡で観察した断面において、各5箇所の測長を実施し、平均値を取ることとした。
凹凸構造4は凹部2Aと凸部2Bが規則的に並んでいる周期的構造であると良い。ランダムな構造としないことで、意図した伸び性を得やすいと同時に、凹凸構造4の設計や製作を簡便にすることができる。但し、ランダムな凹凸構造4や部分的に凹凸構造4の幅を変更することは任意である。
【0026】
(作用その他について)
一般に、薬剤バリア性を有するプラスチックフィルムは、比較的に強度が高い代わりに伸び性が低い。このため、本実施形態のように、凹凸構造4を設けない平板形状の貼付剤支持体用フィルム1からフィルムが構成される場合、フィルムの伸び挙動は、
図17で符号20に示したように、フィルムが伸び始めてから短い距離でのみ弾性変形が生じ、すぐに降伏点(以降、ネッキングが始まる起点を降伏点と呼ぶ)を迎える。そして、降伏点以降は、ネッキングを伴う塑性変形が生じ、破断点に到達したときに、フィルムが破断する。
【0027】
一方、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、
図17の符号21に示すように、例えば
図1の左右方向、即ち周期的や非周期的に形成された凹凸構造4の並び方向に引っ張った場合に、貼付剤支持体用フィルム1は、まず弾性変形による形状変形が生じ、その後、形状変形の一部に塑性変形を生じる。更に引っ張り続けると、引張り応力により凹凸構造4の高低差が小さくなり、フラットに近づくことで形状変形できなくなる。即ち、主に凹凸構造が潰れて広がる段階(あまり力を掛けずに伸びる領域)と、潰れた凹凸構造が更に引き伸ばされて、ほぼフラットになる段階(力が掛かって伸びる領域)を経て降伏点に達し、最終的にはネッキングが発生して破断する。
【0028】
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、このような多段階からなる形状変形を行うことで、
図17に示したように、従来の貼付剤支持体用フィルムよりも降伏点を迎えるまでの伸び量が大きくなり、且つ伸びに要する応力が小さくなる。このため、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、ネッキング発生までの伸びが大きくなり、しかも、容易に伸びる性質を有する。
【0029】
以上のように、一般的に伸び性が低いとされる材料で貼付剤支持体用フィルム1を形成しても、形状に工夫を与えることより、貼付剤支持体用フィルム1に対し、高い伸び性を付与することができる。つまり、薬剤バリア性を有する貼付剤支持体用フィルム1の強度と伸び性を両立することができる。
このとき、貼付剤支持体用フィルム1断面の形状を適切に制御することにより、任意の伸び性を得ることができる。例えば、フィルムを破断させずに大きく伸ばすようにしたい場合には、凹凸構造4の高低差Hを大きくし、向きの異なる二つの部の連結部である稜線(角部)に丸みを帯びさせるようにするなどの調整を行うとよい。
【0030】
本実施形態に係る貼付剤支持体用フィルム1は、引張時の初期においては、貼付剤支持体用フィルム1の形状が変化することにより伸び性を向上させることができる。つまり、通常のフラットな面を持つ貼付剤支持体用フィルム1のように、引っ張り当初の段階から材料自身が伸びることでフィルムが伸びているわけではない。本実施形態に係る貼付剤支持体用フィルム1においては、凹凸構造4の並び方向に引っ張った場合は、引っ張り当初において、貼付剤支持体用フィルム1の凹凸構造4に局所的な歪み(伸びや縮み)が生じ、それにより形状が変化することで、大きな伸び性を得ることができる。そのため、凹凸構造4の形状を適切に設定することで、フィルム全体の伸びを自在に調整することが出来る。
【0031】
(貼付剤支持体用フィルム1の伸びと局所的な歪みの最大値との関係)
図18は、貼付剤支持体用フィルム1の凹凸構造4の形状を変えた場合における、全体の伸びと局所的な歪みの最大値との関係を示したものである。縦軸が局所的な歪みの最大値であり、横軸がフィルム全体の伸びである。点線で示す凹凸構造4を持たない(形状無し)貼付剤支持体用フィルムを比較例としている。
また、
図18で示す評価に用いた高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1の断面形状を、
図19に示す。
図19(a)に示す形状Aは、凹凸構造4の凹部2Aと凸部2Bの高低差Hが比較的大きく、
図19(b)に示す形状Bは、凹凸構造4の凹部2Aと凸部2Bの高低差Hが比較的小さくなっている。そして。本実施形態の高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1は、その凹凸構造4の違いにより、全体の伸びと局所的な歪みの最大値の関係が大きく変化することが分かる。
【0032】
例えば
図19(a)の形状Aのように凹凸構造4の凹部2Aと凸部2Bの高低差Hを比較的大きくすることで、
図18に示すように、貼付剤支持体用フィルム1全体の伸びを局所的な歪みよりも小さくすることが出来る。形状Aを採用した貼付剤支持体用フィルム1では、フィルム自体が破断などのクラックが生じづらい。その他、例えば表面に硬い機能層を積層(例えば、蒸着やハードコートなど)した状態で引っ張っても、硬い機能層にクラックが入りにくくすることができる。硬い機能層は、上述の局所的な歪みの分だけ負荷が掛かるためである。つまり、形状Aを採用した貼付剤支持体用フィルム1は、例えば機能層を積層した積層体へ応用することで、硬い機能層の破壊を抑えつつ伸び性を持たせることも可能である。
【0033】
図19(b)の形状Bでは、凹凸構造4の凹部2Aと凸部2Bの高低差Hが比較的小さい形状であるが、この場合は
図18に示すように、貼付剤支持体用フィルム1全体の伸びよりも局所的な歪みの方が大きくなる場合もあり得る。しかしながら、フィルム全体の伸びは形状無しのフィルムと比較して大きく高い伸び性を示すものである。これらの凹凸構造4は、所望とする貼付剤支持体用フィルム1の伸び性と強度、又は積層する機能化層の材料や形態等を勘案し最適化すればよい。例えば、汎用非線形有限要素解析ソリューションMarc(商標登録名)を用いて最適化することで、目的とする実用的な貼付剤支持体用フィルム1を得ることが可能となる。
更に、伸び性を高めるためには、凹凸構造4の高低差Hは、貼付剤支持体用フィルム1の厚さよりも大きいと良い。こうすることにより、貼付剤支持体用フィルム1の断面がフラットになりにくく、歪の調整効果を効果的に得ることが出来る。
【0034】
(貼付剤支持体用フィルム1の特性)
また、本実施形態の高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1は、応力を掛けた際に伸びる効果があるため、衝撃耐性も高く、凹凸構造4が潰れることによる衝撃吸収性も高いという特性も有している。
更に、凹凸構造4が
図1のような1次元的構造の場合、凹凸の延在方向(
図1では紙面方向)には曲げ剛性が強いという性質もある。曲げ剛性は、断面二次モーメントとヤング率の掛け算の積分によって決まる。本実施形態の高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1は、同樹脂量の通常の貼付剤支持体用フィルム1に比べ、この断面二次モーメントが大きくなるため、曲げ剛性は高まる。
【0035】
(貼付剤支持体用フィルム1の製造方法)
本実施形態の高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1の製造方法については、例えば熱プレスによる製造方法や、押出成形による製造方法を用いることができる。
熱プレスによる方法では、製膜したフィルムを、表面に凹凸形状を設けた一対の加熱ロール間、もしくは一対の加熱した平板状のプレス機に通すことで製造できる。この際、一対の加熱ロール間、もしくは一対の平板の、上下の凹形状と凸形状とを精密に位置合わせし、熱プレス後のフィルムの表面が連続的な凹凸構造になっていることが重要となる。
また、押出成形による方法では、樹脂を加熱溶融してTダイから押出し、フィルム化するための冷却工程において、凹凸形状が設けられた冷却ロール及びニップロールを用いてニップ圧力を付加しながら冷却することで、フィルムの表裏面に連続的な凹凸構造を設けることができる。この方法においても、冷却ロールとニップロールの凹凸形状の精密な位置合わせが必要になる。
【0036】
あるいは押出成形の別の方法では、複数の押出機を使用し、複数種類の樹脂をフィードブロック法又はマルチマニホールド法により共押出することで、二層以上の多層フィルムを得ることができる。フィルム化するための冷却工程において、凹凸形状が設けられた冷却ロールを用いてニップ圧力を付加しながら冷却することで、フィルムの表裏面に連続的な凹凸構造を設けることができる。更にこの時、冷却ロールと接する第一樹脂層の膜厚tに対して、凹凸構造の高低差Hが大きい場合には、第一樹脂層と第二樹脂層の界面にも同様の凹凸構造が形成されるため、冷却後の多層フィルムから第二樹脂層を剥離すれば、表裏面に凹凸構造が設けられた第一樹脂層が得られ、これを貼付剤支持体用フィルム1として用いることができる。
その他、キャスキィング成形、インフレーション成形、カレンダー成形、などのような種々の方法を適宜選択して貼付剤支持体用フィルム1を製造することが可能であり、特に製造方法が限定されるものではない。
【0037】
(積層体)
高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1は、
図13のように、後工程で薬剤入り粘着層を設けない側の他方の面3の表面に、印刷層や蒸着層、ハードコート層、反射防止層などの機能層30を積層した積層体とすることもできる。
図16は、一般的な貼付剤の概略断面図を示したものである。この一般例では、貼付剤支持体用フィルム8の片面に薬剤を含有した粘着剤層6があり、粘着剤層6の表面に剥離ライナー7を設けた構成である。肌に貼る場合は剥離ライナーを剥がし、粘着剤層6を肌に貼って使用する。そして、粘着剤層6中に含有された薬剤が皮膚から吸収され、作用するものである。
【0038】
このような一般的な貼付剤支持体用フィルム8では、伸び性が不足しており、貼付剤を肌に貼った後のごわつき感や、伸び性不足のために、動作時に貼付剤の端部などが剥がれてくる場合があるという問題を抱えている。
一方、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1又は積層体を使用することで、伸縮性を持たすことができるようになり、上述のごわつき感や剥がれが解消される。
一例として、
図14及び
図15に、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1を使用した場合の貼付剤9の断面図を示す。本実施形態では、薬剤バリア性の高い材料を用いることで、薬剤が効率良く皮膚に吸収される効果があり、また貼付剤支持体用フィルム1の材料自体は硬く伸びにくい材料であっても、高い伸び性を示す。
【0039】
(貼付剤支持体用フィルム1の別な実施形態)
貼付剤支持体用フィルム1は、
図11、
図12のように、複数の領域10を有し、各領域10に個別の凹凸パターンで凹凸構造4が形成されるようにしても良い。
図11、
図12は、一連の貼付剤支持体用フィルム1において、複数の区画で区分することで、複数の領域10(
図11、
図12は4つの領域10に区分した例)を設定した場合であり、凹凸構造4の延在方向を実線で示している。符号10cは、隣り合う領域10の境界を示す。
【0040】
図11は、凹凸構造4の延在方向が、各区画の縁と平行であり、隣接する区画内の凹凸構造4の延在方向とは直交する配置となっている。伸び性の良いフィルムには、加工時にフィルムが伸びて安定製膜が難しいと言う問題があるが、
図11のような配置とすることで、成形加工時に安定した製膜が可能となり、最終製品では区画毎にカットしたり、打ち抜き加工を行ったりすることで、所望の一方向へ伸びる貼付剤支持体用フィルム1を提供できる。隣接する区画同士の間には、明瞭な境界がなくてもよく、また、一連の貼付剤支持体用フィルム1上に存在する区画の数や区画サイズは任意に設定することが可能である。また、各領域10間に凹凸構造4を有しない領域10が存在していても良い。
【0041】
カットする位置も任意に設定することが可能であり、例えば
図11に示した配置において、各領域10を縦若しくは横方向に半裁することで、縦方向と横方向等の2方向に伸びやすい2区画分の貼付剤支持体用フィルム1を得ることができる。この場合、フィルムの半分を固定し、残りの半分のみ伸縮させたい場合などに効果がある。すなわち、複数領域10で一つの最終製品を構成するように設計しても構わない。この場合、貼付剤を肌に張る場合に、最初はフィルムの伸びない半分を肌に貼って固定し、残りの半分を伸ばして貼ることも可能である。
【0042】
図12に示す貼付剤支持体用フィルム1は、各領域10の一辺から、これと交差する他辺へと角度付けされた凹凸構造4がストレートに延在している。それ以外の構成は、
図11に示す貼付剤支持体用フィルム1と同様である。凹凸構造4の、領域10を区画する境界線10cに対する角度は任意であり、領域10毎に角度が異なっていても良い。
【0043】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、一方の面2側に薬剤入り粘着剤層6を配置可能であり、貼付剤支持体用フィルム1全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで、面に沿って凹部と凸部を繰り返す凹凸構造4を有し、凹凸構造4は、凹部と凸部との高低差が薬剤バリア性を有する層の厚さよりも大きく、薬剤入り粘着剤層6を配置する一方の面2に対向する他方の面3の、貼付剤支持体用フィルムの総厚を規定する部分、即ち面3aが平坦部を有し、該平坦部の面積率が、貼付剤支持体用フィルムの外形面積の20%以上85%以下であり、貼付剤支持体用フィルム1の総厚が、20μm以上450μm以下の範囲である。
【0044】
この構成によれば、製造時の手間やコストを抑えつつ、簡易な構造で、支持体としての強度を確保しつつ、薬剤バリア性と伸び性が共に良好で印字視認性の高い貼付剤支持体用フィルム1を提供できる。
例えば、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、薬剤バリア性を有するフィルムから貼付剤支持体用フィルム1を形成しても、凹凸構造4を設けることで伸び性を向上させることができる。このとき、薬剤入り粘着剤層6を配置する面と対向する面の最外部に平坦部を有することで、貼付剤として用いる際に必要となる印刷適性が向上するため、薬剤バリア性、伸び性、強度といった性能面だけでなく、外観の仕上がりも良くなり、総合的に使い勝手の良い貼付剤支持体用フィルムを提供することが可能になる。
【0045】
(2)
図1などにおいて、下面側からみて、面3a及び面3bで構成される平坦部の面積率は、フィルムの外形面積に対し、30%以上95%以下が好ましい。
この構成によれば、更に良好な印刷視認性を確保することが可能となる。
【0046】
(3)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、材料がポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体、のいずれかから選ばれる樹脂からなる。
この構成によれば、貼付剤支持体用フィルム1に薬剤バリア性を付与することが出来る。
【0047】
(4)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、平面視で、凹部及び凸部がそれぞれ直線状に延在している。
この構成によれば、凹凸の並び方向への伸び性を確実に大きく出来るともに、凹凸の延在方向(凹部と凸部の各延在方向)への曲げ構成を高く設定可能となる。
【0048】
(5)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、平面視で、凹部2A及び凸部2Bの延在方向の少なくとも一部が曲線で構成されている。
この構成によれば、凹凸の並び方向への伸び性を確実に大きく出来るともに、凹凸の延在方向への曲げ構成を高く設定可能となる。
また、少なくとも一部で延在方向に曲線が設けられていることで、例えば、体が曲がる方向を想定して曲線を形成することで、貼り付けた位置の体の変化に対し、より追従性が増すといった利点がある。
【0049】
(6)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、凹凸の高低差は、5μmより大きく300μm以下である。この構成によれば、確実に伸び性を向上させることができる。
【0050】
(7)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、凹凸が、等間隔など周期的に並んでいる。この構成によれば、伸び性の設定がしやすくなる。
【0051】
(8)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、凹凸の間隔が非周期である。
この構成によれば、より曲がる部分のピッチを狭くし、曲がりが少ない部分のピッチを広くすることで、体の動きに合わせて貼付剤の伸びを制御することが可能になり、例えば関節部や肩甲骨付近といった体の凹凸感が大きく変わる部分での追従性が良くなる利点がある。
【0052】
(9)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、複数の領域10を有し、各領域10に個別の凹凸パターンで凹凸構造4が形成されている。
この構成では、最終製品の原反として使用する場合、各領域10の伸びがある程度相殺しあうこことで、過剰な伸びが抑制されて、ロール形状などにしてフィルムを管理する際に、貼付剤支持体用フィルム1の扱いが容易となる。
また、最終製品の貼付剤支持体用フィルム1として使用する場合、伸び易い方向を2方向以上に設定しやすくなる。
【0053】
(10)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の両面又は片面に機能層が積層された積層体としてもよい。この構成によれば、伸び性が良い積層体を提供可能となる。
【0054】
(11)本実施形態の貼付剤は、貼付剤支持体用フィルム1又は積層体における、一方の面側に、粘着剤層6が積層すると共に、その粘着剤層6の上に剥離ライナー7が形成されている。この構成によれば、製造時の手間やコストを抑えつつ、簡易な構造で、支持体としての強度を確保しつつ、薬剤バリア性と伸び性が共に良好で、印刷視認性も高い貼付剤を提供可能となる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではないことはいうまでもない。また、以上の実施の形態を組み合わせて用いることは、任意である。
【実施例】
【0056】
以下、本発明に基づく実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
貼付剤支持体用フィルム1の材料は、日本合成化学工業(株)製のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)ソアノールD2908(商品名)を使用した。
実施例1の貼付剤支持体用フィルム1は、押出成形により製膜したEVOH膜を、加熱した平板版で挟み込むことで、
図1のような断面が台形蛇腹形状となる凹凸構造4を設けた。この時、該構造4の各所サイズが、総厚T=90μm、面3aの平坦部幅(
図4のd2)=205μm、面3aの平坦部の面積率=80.4%、面3bの平坦部幅(
図4のd1)=30μm、面3a+面3bの平坦部の面積率=92.2%、ピッチ=255μm、フィルム厚さ(t1、t2の平均値)=30μm、高低差H=60μmとなるように調整した。
【0058】
(実施例2)
凹凸構造4において、d2=74μm、面3aの平坦部の面積率=42.5%、面3a+面3bの平坦部の面積率=60.3%、ピッチ=174μmに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の貼付剤支持体用フィルム1を作製した。
【0059】
(実施例3)
凹凸構造4において、d2=53μm、面3aの平坦部の面積率=20.8%、面3a+面3bの平坦部の面積率=29.0%、に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の貼付剤支持体用フィルム1を作製した。
【0060】
(実施例4)
凹凸構造4の各所サイズを、総厚T=300μm、d2=225.7μm、d1=74.3μm、面3a+面3bの平坦部の面積率=56.5%、ピッチ=531μm、フィルム厚さ(t1、t2の平均値)=100μm、高低差H=200μmに変更した以外は、実施例2と同様の方法で実施例4の貼付剤支持体用フィルム1を作製した。
【0061】
(実施例5)
凹凸構造4の各所サイズを、総厚T=30μm、d2=24.7μm、d1=10.4μm、面3a+面3bの平坦部の面積率=60.9%、ピッチ=58.1μm、フィルム厚さ(t1、t2の平均値)=10μm、高低差H=20μmに変更した以外は、実施例2と同様の方法で、実施例5の貼付剤支持体用フィルム1を作製した。
【0062】
(実施例6)
貼付剤支持体用フィルムの材料として、ユニチカ(株)製のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂NEH-2050を用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施例6の貼付剤支持体用フィルム1を作製した。
【0063】
(比較例1)
押出成形時に凹凸部のない鏡面のロールを用いて、表裏に凹凸形状のない比較例1を作製した。フィルム総厚は30μmであった。
【0064】
(比較例2)
凹凸構造4において、d2=38.3μm、面3aの平坦部面積率=15.0%、面3a+面3bの平坦部の面積率=32.5%とした以外は、実施例1と同様の方法で比較例2を作製した。
【0065】
(比較例3)
凹凸構造4において、d2=220μm、面3aの平坦部面積率=86.3%、面3a+面3bの平坦部の面積率=92.5%とした以外は、実施例1と同様の方法で比較例3を作製した。
【0066】
(比較例4)
総厚T=15μm、d1=88.5μm、面3a+面3bの平坦部の面積率=50.9%、フィルム厚さ(t1、t2の平均値)=5μm、高低差H=15μmとした以外は、実施例2と同様の方法で比較例4を作製した。
【0067】
(比較例5)
総厚T=455μm、d2=262.5μm、面3aの平坦部の面積率=50.0%、d1=150μm、面3a+面3bの平坦部の面積率=78.6%、フィルム厚さ(t1、t2の平均値)=160μm、高低差H=295μmとした以外は、実施例1と同様の方法で比較例5を作製した。
【0068】
(比較例6)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、NatureWorks社製のポリ乳酸(PLA)Ingeo 3052D(商品名)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例6を作製した。
【0069】
(測長方法)
得られたサンプルの総厚T、d1及びd2幅、面3a及び面3bの平坦部厚さ、高低差Hは、光学顕微鏡観察による測長により確認を行った。具体的には、得られた貼付剤支持体用フィルムを凹凸構造4の延在方向と平行及び垂直な方向に切断することで、10mm角の小片を切り出し、CRYONスプレーフリーザーで冷却した後、凹凸構造4の延在方向と垂直方向にカッターの刃を押し当てて切断した断面を観察することで、各部位のサイズを測長し、5箇所の平均値を求めた。断面観察及び測長には、デュアルライト高倍率ズームレンズVH-Z250Rを取り付けたKEYENCE製デジタルマイクロスコープVHX-1000を用いた。
【0070】
(伸び性評価方法)
各実施例及び比較例の貼付剤支持体用フィルム1の伸び性能を評価するため、引張試験評価を実施した。
伸び性評価は、JISK7127:1999に基づき、株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機(RTC‐1250A)を用いて、ゼロの状態からフィルムが破断するまで引っ張り力を付与しつつ、ゼロ状態から降伏点を迎えるまでの伸び量(以降、降伏点伸び性と呼ぶ)、破断した際の破断強度を求めることで実施した。測定条件については、サンプル幅は15mm、チャック間距離は50mm、引張速度は100mm/minとした。
評価は、破断強度は3N以上を「○」とし、それ未満を「×」とした。
また、降伏点伸び性は20%以上を「○」とし、それ未満を「×」とした。
【0071】
(薬剤吸着評価方法)
各実施例及び比較例における高い伸び性を有する貼付剤支持体用フィルム1の薬剤吸着性能を評価するため、吸着性試験評価を実施した。
各実施例及び比較例からなるサンプルを100mm角にカットした後、サンプル中央に貼付剤(リバスタッチパッチ18mg、小野薬品工業(株)製)を貼付した。薬剤が揮発・拡散しないようにアルミ箔で密閉し、40℃75%の環境で6ヶ月保管した。その後、フィルムから貼付剤を剥がし、フィルムに吸着した薬剤をメタノールで55℃・3時間以上抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により薬剤の吸着量を測定した。
評価は、薬剤吸着量は、元々の貼付剤の薬剤量の10%未満であれば「○」、それ以上であれば「×」とした。
【0072】
(印刷視認性評価方法)
インクジェット方式(解像度=600dpi、ピッチ=42μm)にて、5mm、3.5mm、2mmの3種類のサイズの文字を貼付剤支持体用フィルム表面に黒で印刷し、フラットフィルム上の印字と比較し、同等の視認性を有していた場合は「◎」、フラットフィルム上への印字の視認性には劣るが、明確に視認可能な場合は「◎」、滲み等が発生し、視認性に劣れば「×」とした。
各実施例及び比較例における条件、及び評価結果の一覧表を表1、表2に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
(評価結果)
表1、表2から分かるように、本発明に基づく実施例1~6では、良好な破断強度を示し、降伏点伸び性も、比較例1の平板状フィルムと比較して大きな値を示すことが分かった。また、実施例1~6では、良好な印字視認性が確認された。
【0076】
一方、比較例2では、面3aの平坦部面積率が少ないために、印字の視認性が悪い結果となった。
また比較例3では、平坦部面積率が大きすぎるために、印字視認性は良好であるものの、構造変形による伸びが発現しにくく、伸び性に劣る結果となった。
比較例4は、構造の高低差が小さく、フィルム厚さが薄すぎるため、破断強度が小さく、降伏点伸び性と共に要件を満たしていない。
比較例5は、高構造化に伴う肉厚化により降伏点伸び性が劣る結果となった。
比較例6は、貼付剤支持体用フィルム1の材料が薬剤非吸着性を示さないため、貼付剤支持体としての要件を満たさない結果となった。
【符号の説明】
【0077】
1 貼付剤支持体用フィルム
2 貼付剤支持体用フィルムの一方の面
2A 凹部
2a 貼付剤支持体用フィルムの一方の面の、総厚規定に関わる面
2b 貼付剤支持体用フィルムの一方の面の、面2aに平行な総厚規定に関わらない面
2B 凸部
3 貼付剤支持体用フィルムの他方の面
3a 貼付剤支持体用フィルムの他方の面側の、総厚規定に関わる面
3b 貼付剤支持体用フィルムの他方の面側の、面3aに平行な総厚規定に関わらない面
4 凹凸構造
6 粘着剤層
7 剥離ライナー
10 領域
30 機能層
D1 凸部間隔
D2 凹部間隔
H 高低差
t1 凸部頂部の平坦部厚さ
t2 凹部底部の平坦部厚さ
T 貼付剤支持体用フィルムの総厚