(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】組付装置及び組付方法
(51)【国際特許分類】
B23P 21/00 20060101AFI20230801BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20230801BHJP
B23P 19/04 20060101ALI20230801BHJP
F16C 11/06 20060101ALI20230801BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B23P21/00 301A
F16J3/04 C
B23P19/04 E
F16C11/06 Q
F16J15/52 B
(21)【出願番号】P 2019097899
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】林 圭介
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昇太郎
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】実公平04-035063(JP,Y2)
【文献】国際公開第2018/142513(WO,A1)
【文献】特開2001-121357(JP,A)
【文献】特開2001-062647(JP,A)
【文献】特開2001-099320(JP,A)
【文献】実開平05-066396(JP,U)
【文献】米国特許第05911301(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 21/00
F16J 3/04
B23P 19/04
F16C 11/06
F16J 15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組付対象における筒状部の開口端部に弾性材料からなるベローズを組み付ける組付装置において、
前記ベローズは、前記開口端部の外周に嵌合する環状の第1連結端部、及び前記第1連結端部に連続するとともに前記筒状部の軸方向及び該軸方向と交差する方向に変形可能な筒状の可撓部を有するものであって、
フレームを直線的に移動させるスライド機構と、
前記フレームに支持されるスイング機構及び保持機構とを備え、
前記スイング機構は、前記フレームのスライド方向と直交する方向に延びるように設けられる回動軸と、該回動軸に連結され該回動軸周りに回動するアームとを有し、
前記保持機構は、前記アームの回動に応じて前記第1連結端部の中心線が前記スライド方向に対して傾動するように前記可撓部を保持する保持部材を有
し、
前記第1連結端部は、該第1連結端部の外周に環状の第1締付部材が嵌合された状態で、前記開口端部に嵌合されるものであって、
前記フレームに支持され、前記第1締付部材の前記組付対象に対する周方向の相対位置を予め設定された第1範囲内に保持する第1位置決め機構を備え、
前記第1締付部材は、該第1締付部材の外周側に突出した突出部を有するものであり、
前記第1位置決め機構は、前記保持機構に対して前記スライド方向及び前記回動軸の軸方向と交差する方向に弾性的に変位可能な第1位置決め部材を備え、
前記第1位置決め部材には、前記突出部が挿入される凹部が形成された組付装置。
【請求項2】
組付対象における筒状部の開口端部に弾性材料からなるベローズを組み付ける組付装置において、
前記ベローズは、前記開口端部の外周に嵌合する環状の第1連結端部、及び前記第1連結端部に連続するとともに前記筒状部の軸方向及び該軸方向と交差する方向に変形可能な筒状の可撓部を有するものであって、
フレームを直線的に移動させるスライド機構と、
前記フレームに支持されるスイング機構及び保持機構とを備え、
前記スイング機構は、前記フレームのスライド方向と直交する方向に延びるように設けられる回動軸と、該回動軸に連結され該回動軸周りに回動するアームとを有し、
前記保持機構は、前記アームの回動に応じて前記第1連結端部の中心線が前記スライド方向に対して傾動するように前記可撓部を保持する保持部材を有し、
前記ベローズは、前記可撓部における前記第1連結端部と反対側に連続して設けられ、前記筒状部から軸方向に突出した前記組付対象の軸状部の外周に嵌合する環状の第2連結端部を有し、
前記第2連結端部は、該第2連結端部の外周に環状の第2締付部材が嵌合された状態で、前記軸状部の外周に嵌合されるものであって、
前記フレームに支持され、前記第2締付部材の前記組付対象に対する周方向の相対位置を予め設定された第2範囲内に保持する第2位置決め機構を備え、
前記第2締付部材は、環状部、及び該環状部から径方向外側に突出した一対の爪部を有し、前記一対の爪部を周方向に互いに近接させることで、前記環状部が拡径するように形成されたものであって、
前記第2位置決め機構は、前記一対の爪部を互いに接離可能に構成された組付装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の組付装置において、
前記フレームを前記組付対象に向けて押圧する押圧機構を備えた組付装置。
【請求項4】
組付対象における筒状部の開口端部に組付装置を用いて弾性材料からなるベローズを組み付ける組付方法において、
前記ベローズは、前記開口端部の外周に嵌合する環状の第1連結端部、及び前記第1連結端部に連続するとともに前記筒状部の軸方向及び該軸方向と交差する方向に変形可能な筒状の可撓部を有するものであり、
前記組付装置は、
フレームを直線的に移動させるスライド機構と、
前記フレームに支持されるスイング機構及び保持機構とを備え、
前記スイング機構は、前記フレームのスライド方向と直交する方向に延びるように設けられる回動軸と、該回動軸に連結され該回動軸周りに回動するアームとを有し、
前記保持機構は、前記アームの回動に応じて前記第1連結端部の中心線が前記スライド方向に対して傾動するように前記可撓部を保持する保持部材を有
し、
前記第1連結端部は、該第1連結端部の外周に環状の第1締付部材が嵌合された状態で、前記開口端部に嵌合されるものであって、
前記フレームに支持され、前記第1締付部材の前記組付対象に対する周方向の相対位置を予め設定された第1範囲内に保持する第1位置決め機構を備え、
前記第1締付部材は、該第1締付部材の外周側に突出した突出部を有するものであり、
前記第1位置決め機構は、前記保持機構に対して前記スライド方向及び前記回動軸の軸方向と交差する方向に弾性的に変位可能な第1位置決め部材を備え、
前記第1位置決め部材には、前記突出部が挿入される凹部が形成されるものであって、
前記スイング機構により前記第1連結端部の中心線が前記筒状部の軸線に対して傾斜するように前記アームを回動させた状態で、前記スライド機構により前記フレームを前記筒状部の軸方向に沿って移動させることにより、前記第1連結端部の一部を前記開口端部に嵌合させ、
前記第1連結端部の一部を前記開口端部に嵌合させた後に、前記フレームが前記スライド方向に移動可能な状態で該フレームを前記組付対象に向けて押圧しつつ、前記スイング機構により前記第1連結端部の中心線が前記筒状部の軸線と一致するように前記アームを回動させることにより、前記第1連結端部の全周を前記開口端部に嵌合させる組付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベローズを組付対象に組み付けるための組付装置及び組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばステアリング装置のラックハウジングとラック軸の両端部に設けられるボールジョイントとの間には、ラックハウジングの内部への異物の侵入を防ぐために、弾性材料からなる円筒状のベローズ(ブーツと言うこともある。)がそれぞれ組み付けられる。こうしたベローズを組付対象に組み付けるための組付装置として、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1の組付装置は、ベローズをその内部から均等に拡径する拡径手段と、ベローズを拡径した状態のまま拘束する拘束手段とを備えている。そして、同装置によるベローズの組み付けに際しては、まず拡径手段によってベローズを拡径し、拘束手段によって拡径した状態を維持したまま、ベローズを組付対象が載置された所定の組付位置まで移動させ、そこで拘束手段による拘束を解放する。これにより、弾性的に拡径されていたベローズの形状が復元し、ベローズが組付対象に組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば樹脂等のように比較的弾性係数の高い弾性材料からなるベローズを組み付ける場合を想定する。この場合、上記従来の組付装置を用いてベローズを組み付けようとすると、拡径手段によってベローズを拡径する際に、ベローズが弾性限界を超えて塑性変形するおそれがある。その結果、拘束手段による拘束を解放してもベローズの形状が十分に復元せず、該ベローズを組付対象に対して適切に組み付けることができなくなる。
【0006】
本発明の目的は、組み付け時にベローズが弾性限界を超えて変形することを抑制できる組付装置及び組付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する組付装置は、組付対象における筒状部の開口端部に弾性材料からなるベローズを組み付けるものにおいて、前記ベローズは、前記開口端部の外周に嵌合する環状の第1連結端部、及び前記第1連結端部に連続するとともに前記筒状部の軸方向及び該軸方向と交差する方向に変形可能な筒状の可撓部を有するものであって、フレームを直線的に移動させるスライド機構と、前記フレームに支持されるスイング機構及び保持機構とを備え、前記スイング機構は、前記フレームのスライド方向と直交する方向に延びるように設けられる回動軸と、該回動軸に連結され該回動軸周りに回動するアームとを有し、前記保持機構は、前記アームの回動に応じて前記第1連結端部の中心線が前記スライド方向に対して傾動するように前記可撓部を保持する保持部材を有する。
【0008】
上記課題を解決する組付方法は、組付対象における筒状部の開口端部に組付装置を用いて弾性材料からなるベローズを組み付けるものにおいて、前記ベローズは、前記開口端部の外周に嵌合する環状の第1連結端部、及び前記第1連結端部に連続するとともに前記筒状部の軸方向及び該軸方向と交差する方向に変形可能な筒状の可撓部を有するものであり、前記組付装置は、フレームを直線的に移動させるスライド機構と、前記フレームに支持されるスイング機構及び保持機構とを備え、前記スイング機構は、前記フレームのスライド方向と直交する方向に延びるように設けられる回動軸と、該回動軸に連結され該回動軸周りに回動するアームとを有し、前記保持機構は、前記アームの回動に応じて前記第1連結端部の中心線が前記スライド方向に対して傾動するように前記可撓部を保持する保持部材を有するものであって、前記スイング機構により前記第1連結端部の中心線が前記筒状部の軸線に対して傾斜するように前記アームを回動させた状態で、前記スライド機構により前記フレームを前記筒状部の軸方向に沿って移動させることにより、前記第1連結端部の一部を前記開口端部に嵌合させ、前記第1連結端部の一部を前記開口端部に嵌合させた後に、前記フレームが前記スライド方向に移動可能な状態で該フレームを前記組付対象に向けて押圧しつつ、前記スイング機構により前記第1連結端部の中心線が前記筒状部の軸線と一致するように前記アームを回動させることにより、前記第1連結端部の全周を前記開口端部に嵌合させる。
【0009】
上記各構成によれば、第1連結端部の中心線を筒状部の軸線に対して傾斜させた状態で第1連結端部の一部を組付対象の開口端部に嵌合させ、この状態からベローズを開口端部に押し付けながら第1連結端部の中心線が筒状部の軸線に一致するように揺動させることで、第1連結端部の全周が開口端部に嵌合される。このように第1連結端部が揺動する際においては、第1連結端部における開口端部のエッジに当たる部分が伸張されており、この伸張される部分が周方向に沿って順次移動する。そのため、ベローズの第1連結端部全周が同時には伸張せず、第1連結端部全体での変形量が小さくても、第1連結端部の全周を開口端部に嵌合させることができる。したがって、比較的弾性係数の高い弾性材料からなるベローズであっても、組み付け時にベローズが弾性限界を超えて変形することを抑制できる。
【0010】
上記組付装置において、前記フレームを前記組付対象に向けて押圧する押圧機構を備えることが好ましい。
上記構成によれば、揺動させながら第1連結端部の全周を開口端部に嵌合させる際に、フレーム及び保持機構を介して容易にベローズを組付対象に向けて押圧できる。
【0011】
上記組付装置において、前記第1連結端部は、該第1連結端部の外周に環状の第1締付部材が嵌合された状態で、前記開口端部に嵌合されるものであって、前記フレームに支持され、前記第1締付部材の前記組付対象に対する周方向の相対位置を予め設定された第1範囲内に保持する第1位置決め機構を備えることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、第1締付部材の位相を合わせた状態で第1連結端部を開口端部に嵌合させることができる。
上記組付装置において、前記第1締付部材は、該第1締付部材の外周側に突出した突出部を有するものであり、前記第1位置決め機構は、前記保持機構に対して前記スライド方向及び前記回動軸の軸方向と交差する方向に弾性的に変位可能な第1位置決め部材を備え、前記第1位置決め部材には、前記突出部が挿入される凹部が形成されることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、突出部が凹部内に挿入されることで、第1締付部材の位相が第1範囲内に保持される。そして、第1位置決め部材は、スライド方向及び回転軸の軸方向と交差する方向に弾性的に変位可能であるため、揺動させながら第1連結端部の全周を開口端部に嵌合させる際に、第1締付部材に対して第1位置決め部材から大きな負荷が加わることを抑制できる。
【0014】
上記組付装置において、前記ベローズは、前記可撓部における前記第1連結端部と反対側に連続して設けられ、前記筒状部から軸方向に突出した前記組付対象の軸状部の外周に嵌合する環状の第2連結端部を有し、前記第2連結端部は、該第2連結端部の外周に環状の第2締付部材が嵌合された状態で、前記軸状部の外周に嵌合されるものであって、前記フレームに支持され、前記第2締付部材の前記組付対象に対する周方向の相対位置を予め設定された第2範囲内に保持する第2位置決め機構を備えることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、第2締付部材の位相を合わせた状態で第2連結端部を軸状部に嵌合させることができる。
上記組付装置において、前記第2締付部材は、環状部、及び環状部から径方向外側に突出した一対の爪部を有し、前記一対の爪部を周方向に互いに近接させることで、前記環状部が拡径するように形成されたものであって、前記第2位置決め機構は、前記一対の爪部を互いに接離可能に構成されることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、第2締付部材を第2連結端部の外周に装着したままの状態で、第2連結端部を軸状部に嵌合させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、組付対象に組み付ける際にベローズが弾性限界を超えて変形することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】操舵装置におけるベローズ近傍の軸方向に沿った断面図。
【
図11】ベローズを保持した状態の組付装置における保持機構周辺の断面図。
【
図12】ベローズを保持した状態の組付装置における第1位置決め機構の断面図。
【
図13】ベローズを保持した状態の組付装置における保持機構周辺の平面図。
【
図14】ベローズを保持した状態の組付装置における第2位置決め機構の断面図。
【
図15】(a)~(c)はベローズを組み付ける際の作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、組付装置及び組付方法の一実施形態を図面に従って説明する。
まず、組付装置により組み付けられるベローズを備えた操舵装置について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、操舵装置1は、運転者によるステアリングホイール2の操作に基づいて転舵輪3を転舵させる操舵機構4と、操舵機構4にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するアシスト機構5とを備えている。
【0021】
操舵機構4は、ステアリングホイール2が固定されるステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11に連結されたラック軸12と、ラック軸12が往復動可能に挿通されるラックハウジング13と、ステアリングシャフト11の回転をラック軸12の往復動に変換するラックアンドピニオン機構14とを備えている。なお、ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール2が位置する側から順にコラム軸15、中間軸16、及びピニオン軸17を連結することにより構成されている。
【0022】
ラック軸12は、ラックハウジング13における軸方向に延びた筒状部21内に軸方向移動可能に収容されている。ピニオン軸17は、ラックハウジング13内において、ラック軸12に対して所定の交差角をもって配置されている。そして、ラックアンドピニオン機構14は、ラック軸12に形成されたラック歯12aとピニオン軸17に形成されたピニオン歯17aとを噛合させることで構成されている。ラック軸12の両端には、ボールジョイント22がそれぞれ設けられている。各ボールジョイント22は、ラック軸12の両端に固定されたソケット23と、ソケット23に対して回動可能に連結されるボールシャフト24とを備えている。そして、ボールシャフト24は図示しないタイロッドに連結され、タイロッドの先端は転舵輪3が組付けられた図示しないナックルに連結されている。したがって、操舵装置1では、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト11の回転がラックアンドピニオン機構14によりラック軸12の軸方向移動に変換され、この軸方向移動がタイロッドを介してナックルに伝達されることにより、転舵輪3の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0023】
筒状部21の両開口端部31の近傍には、操舵装置1を図示しない車両メンバに取り付けるためのマウント部32がそれぞれ形成されている。各マウント部32は、筒状部21の径方向外側に向かうにつれてラックハウジング13の開口端部31に近づくように、ラックハウジング13の軸方向に対して傾斜した方向に延びている。各マウント部32の先端部には、貫通孔33が形成されている。そして、操舵装置1は、ラックハウジング13が各貫通孔33に挿通される図示しないボルトを介して車両メンバに締結されることで車両に搭載される。
【0024】
両開口端部31とボールシャフト24との間には、ラックハウジング13内への塵や雨水等の異物が侵入することを防ぐためのベローズ34がそれぞれ設けられている。ベローズ34は、ラックハウジング13とボールシャフト24とに跨って組み付けられている。つまり、本実施形態では、ラックハウジング13及びボールシャフト24が組付対象に相当する。
【0025】
アシスト機構5は、駆動源であるモータ41と、伝達機構42と、変換機構43とを備えている。そして、アシスト機構5は、モータ41の回転を伝達機構42を介して変換機構43に伝達し、変換機構43にてラック軸12の往復動に変換することで操舵機構4にアシスト力を付与する。本実施形態のモータ41には、例えば三相のブラシレスモータが採用され、伝達機構42には、例えばベルト機構が採用され、変換機構43には、例えばボール螺子機構が採用されている。
【0026】
次に、ベローズ34及びその周辺構成について詳細に説明する。なお、ラックハウジング13の左右両端に取り付けられるベローズ34及びその周辺構成は左右対称に構成されているため、右側部分についてのみ説明し、左側部分の説明を省略する。
【0027】
図2に示すように、ラックハウジング13は、アルミ合金等の金属材料により構成されている。筒状部21の開口端部31は、円筒状に形成されている。開口端部31の外周面には、その全周に亘って延びる円環状の第1組付溝31aが形成されている。第1組付溝31aの断面形状は、軸方向に長い矩形状に形成されている。ボールシャフト24の軸状部25の外周面には、その全周に亘って延びる円環状の第2組付溝25aが形成されている。第2組付溝25aの断面形状は、軸方向に長い矩形状に形成されている。
【0028】
ベローズ34は、樹脂等の比較的弾性係数の高い弾性材料により構成されている。ベローズ34は、筒状の可撓部52と、可撓部52の軸方向一端側に設けられた円環状の第1連結端部53と、可撓部52の軸方向他端側に設けられた円環状の第2連結端部54とを有している。
【0029】
可撓部52は、蛇腹状に形成されており、筒状部21の軸方向及び該軸方向と交差する方向に変形可能となっている。可撓部52は、ラック軸12の端部及びボールジョイント22を包囲している。第1連結端部53は、第1組付溝31aの底面の外径と略等しい内径を有する円環状に形成されている。第1連結端部53は、開口端部31の第1組付溝31aに嵌合しており、該第1連結端部53の外周から第1締付部材55によって締め付けられることで、開口端部31に固定されている。第2連結端部54は、第2組付溝25aの底面の外径と略等しい内径を有する円環状に形成されている。第2連結端部54は、第2組付溝25aの外周に嵌合しており、該第2連結端部54の外周から第2締付部材57によって締め付けられることで、ボールシャフト24の軸状部25に固定されている。
【0030】
図3及び
図4に示すように、第1締付部材55は、帯状の金属板を湾曲させることにより構成されており、円環状に形成されている。
詳しくは、第1締付部材55は、第1環状部61と、重畳部62と、かしめ部63と、接続部64とを有している。第1環状部61は、その基端と先端とが周方向において対向するような円環状に湾曲されている。重畳部62は、第1環状部61の先端から連続し、第1環状部61の外周に沿って延びる円弧状に湾曲されている。かしめ部63は、重畳部62の先端から連続し、第1環状部61から径方向外側に突出するように形成されている。つまり、かしめ部63が第1締付部材55の外周側に突出する突出部に相当する。本実施形態のかしめ部63は、上底が第1環状部61側に位置する台形状に折り曲げられている。接続部64は、かしめ部63の先端から連続し、第1環状部61の外周に沿って延びる円弧状に湾曲されている。接続部64は、第1環状部61の外周面に溶接等により接続されている。
【0031】
このように構成された第1締付部材55は、かしめ部63における周方向において対向する二辺を互いに近接するように塑性変形させることにより、第1環状部61が縮径し、第1連結端部53をラックハウジング13の開口端部31に締め付けるようになっている。なお、かしめ部63をかしめる前の状態において、第1環状部61の内径は、第1連結端部53の外径よりも僅かに大きく設定されている。また、第1締付部材55は、突出部であるかしめ部63のラックハウジング13に対する周方向の相対位置(以下、位相という)が予め設定された第1範囲内となるように装着されている。第1範囲は、操舵装置1を車両に搭載した状態で、かしめ部63が車両の他の部品と干渉しないような範囲に設定されており、例えばマウント部32から80°~100°だけ周方向に離れた範囲に設定されている。
【0032】
図5及び
図6に示すように、第2締付部材57は、バネ鋼等の金属板を湾曲させることにより構成されており、円環状に形成されている。
詳しくは、第2締付部材57は、第2環状部71と、一対の爪部72,73とを有している。第2環状部71は、その基端と先端とが一部重なるような円環状に湾曲されている。第2環状部71の内径は、第2連結端部54の外径よりも僅かに小さく設定されている。第2環状部71の基端には、その長手方向に延びる挿入孔74が形成されている。一方、第2環状部71の先端は、他の部分よりも短手方向の幅が小さくなるように形成されており、挿入孔74内に挿入されている。爪部72は、第2環状部71の基端から連続し、径方向外側に延びている。爪部73は、第2環状部71の先端から連続し、径方向外側に延びている。
【0033】
このように構成された第2締付部材57は、自然状態で第2連結端部54をボールシャフト24の軸状部25に締め付けるようになっている。また、一対の爪部72,73を近接させるように弾性変形させることで、第2環状部71が拡径し、第2連結端部54に対する締め付けを解除するようになっている。また、第2締付部材57は、一対の爪部72,73の位相が予め設定された第2範囲内となるように装着されている。第2範囲は、操舵装置1を車両に搭載した状態で、一対の爪部72,73が車両の他の部品と干渉しないような範囲に設定されており、例えばマウント部32から70°~110°だけ周方向に離れた範囲に設定されている。
【0034】
次に、ベローズ34の組み付けについて、
図7~
図15を参照して説明する。
本実施形態では、筒状部21の軸方向が水平方向に沿うとともにマウント部32が鉛直方向下側を向くような所定の載置姿勢で載置されたラックハウジング13に対して、組付装置81を用いてベローズ34を組み付ける。
【0035】
図7に示すように、組付装置81は、スライド機構82と、スライド機構82に連結されるフレーム83と、フレーム83を押圧する押圧機構84とを備えている。また、組付装置81は、ベローズ34を保持する保持機構85と、ベローズ34を傾動させるスイング機構86と、第1締付部材55の位相を保持するための第1位置決め機構87と、第2締付部材57の位相を保持するための第2位置決め機構88とを備えている。これら保持機構85、スイング機構86、第1位置決め機構87及び第2位置決め機構88は、フレーム83に支持されている。そして、組付装置81は、スライド機構82の作動によりフレーム83が移動するスライド方向と筒状部21の軸方向とが一致するように水平な床面に設置される。
【0036】
なお、以下の説明では、便宜上、スライド方向におけるラックハウジング13が載置される側を左側、その反対側を右側とする。また、スライド方向及び鉛直方向と直交する方向を直交方向とし、直交方向におけるベローズ34が保持される側を前側、その反対側を後側とする。
【0037】
詳しくは、
図7~
図10に示すように、スライド機構82は、ベース91と、複数の支柱92と、梁部材93とを備えている。なお、本実施形態のスライド機構82は、二本の支柱92を備えている。ベース91は、平板状に形成されており、水平な床面に固定されている。各支柱92及び梁部材93は、それぞれ四角柱状に形成されている。二本の支柱92は、スライド方向、すなわち筒状部21の軸方向に間隔を空けてベース91に固定されている。梁部材93は、スライド方向と平行になるように支柱92に固定されている。
【0038】
また、スライド機構82は、レールプレート94と、リニアモータ95と、テーブル96とを備えている。レールプレート94は、スライド方向に沿って長い長方形板状に形成されている。駆動源となるリニアモータ95は、レールプレート94に固定されるとともにスライド方向に延びる固定子97と、固定子97に沿って移動可能な可動子98とを備えている。テーブル96は、スライド方向及び鉛直方向に平行な平板状に形成されている。
【0039】
押圧機構84は、支柱101と、押圧部材102と、心棒103と、当接部材104とを備えている。支柱101は、四角柱状に形成されている。支柱101は、スライド機構82の各支柱101よりもスライド方向右側かつ直交方向前側に位置するようにベース91に固定されている。押圧部材102には、一例としてコイルバネが採用されている。心棒103は、丸棒状に形成されている。心棒103は、支柱101の鉛直方向上側端部からスライド方向左側に突出するように固定されている。当接部材104は、直方体状に形成されている。当接部材104は、心棒103のスライド方向左側端部に固定されており、テーブル96に当接している。押圧部材102は、支柱101と当接部材104との間で心棒103の外周に巻き付けられるように設けられている。押圧部材102は、可動子98が最もスライド方向左側に移動した状態でも、圧縮状態が維持されるように構成されている。これにより、押圧機構84は、押圧部材102の付勢力に基づいてテーブル96をスライド方向左側に押圧する。
【0040】
フレーム83は、第1プレート111と、第2プレート112と、連結プレート113と、補助プレート114とを備えている。第1プレート111、第2プレート112、連結プレート113及び補助プレート114は、スライド方向及び鉛直方向に平行な平板状にそれぞれ形成されている。第1プレート111と第2プレート112とは、第1プレート111がスライド方向左側に位置し、第2プレート112がスライド方向右側に位置するように連結プレート113を介して連結されている。補助プレート114は、第2プレート112の前面におけるスライド方向左側、すなわち第1プレート111寄りの位置に固定されている。第2プレート112の後面には、上記スライド機構82のテーブル96が固定されている。これにより、フレーム83は、可動子98の移動に伴って該可動子98と一体でスライド方向に沿って移動する。また、フレーム83は、テーブル96を介して押圧部材102によりスライド方向左側、すなわち組付対象となるラックハウジング13が配置される側に押圧される。
【0041】
スイング機構86は、駆動源となる直動ユニット121と、リンク部材122と、回動軸123と、アーム124とを備えている。そして、スイング機構86は、アーム124を回動軸123周りに回動させるように構成されている。
【0042】
具体的には、本実施形態の直動ユニット121は、円筒状のシリンダ131と、シリンダ131内に挿入される柱状のプランジャ132とを備え、空気圧や油圧によりプランジャ132を進退可能に構成されている。なお、直動ユニット121は、図示しない制御装置によりその作動が制御される。
【0043】
シリンダ131は、ジョイント部材133によって直交方向周りに回動可能に支持されるとともに、ジョイント部材133はブラケット134を介して第1プレート111の後面に固定されている。リンク部材122は、四角柱状に形成されている。リンク部材122の基端は、プランジャ132の先端に対して直交方向周りに回動可能に連結されている。リンク部材122の先端は、回動軸123の後端と一体回転可能に連結されている。回動軸123は、直交方向に延びる円柱状に形成されている。回動軸123は、軸受等の支持部材135を介して第1プレート111に対して回転可能に支持されている。回動軸123の前端には、アーム124が一体回転可能に固定されている。
【0044】
図11~
図13に示すように、アーム124は、回動軸123からスライド方向右側に延びる本体部136と、本体部136のスライド方向右側端部から直交方向前側に延びる先端部137とを有している。本体部136はスライド方向及び鉛直方向に平行な平板状に形成され、先端部137はスライド方向及び直交方向に平行な平板状に形成されている。
【0045】
このように構成されたスイング機構86は、直動ユニット121の駆動によりプランジャ132がシリンダ131から出没することで、アーム124が回動軸123周りに回動するように構成されている。
【0046】
図7~
図11に示すように、保持機構85は、可撓部52におけるスライド方向左側、すなわち第1連結端部53寄りの位置を保持する保持部材141と、可撓部52におけるスライド方向右側、すなわち第2連結端部54寄りの位置を鉛直方向上側から受ける受け部材142とを備えている。そして、保持機構85は、アーム124の回動に応じて第1連結端部53の中心線がスライド方向に対して傾動するようにベローズ34の可撓部52を保持する。
【0047】
具体的には、保持部材141は、アーム124の先端部137にブラケット143を介して連結される連結部144と、ベローズ34を保持する保持部145とを有している。連結部144はスライド方向及び直交方向に平行な平板状に形成され、保持部145は鉛直方向及び直交方向に平行な平板状に形成されている。保持部145には、スライド方向に貫通するとともに、鉛直方向下側に開口した保持孔146が形成されている。保持孔146の内径は、可撓部52における蛇腹の谷部分の外径よりも僅かに小さく設定されている。受け部材142は、肉厚の平板状に形成されている。受け部材142には、スライド方向に貫通するとともに、鉛直方向下側に開口した略半円形状の受け孔147が形成されている。受け孔147の内周面は、スライド方向左側から右側に向かってその内径が連続的に小さくなり、可撓部52における蛇腹の山部分の外周に倣うように形成されている。受け部材142は、補助プレート114に対してブラケット148を介して固定されている。
【0048】
このように構成された保持機構85は、保持孔146に可撓部52を嵌合させることによりベローズ34を保持する。そして、アーム124の回動にともなって保持部材141が回動軸123周りに回動することで、該保持部材141に保持された第1連結端部53の中心線をスライド方向に対して傾動させる。このとき、第2連結端部54は、受け部材142によってその変位が規制されるため、第2連結端部54の中心線は傾動しない。
【0049】
図11及び
図12に示すように、第1位置決め機構87は、固定部材151と、第1位置決め部材152と、固定部材151と第1位置決め部材152とを連結する連結棒153と、複数の案内棒154と、第1位置決め部材152を付勢する第1付勢部材155とを備えている。そして、第1位置決め機構87は、第1位置決め部材152によって第1締付部材55の位相が第1範囲内になるように保持する。また、第1位置決め機構87は、第1位置決め部材152が固定部材151に対してスライド方向及び直交方向と交差する方向に弾性的に変位可能となるように構成されている。なお、本実施形態の第1位置決め機構87は、二本の案内棒154を備えている。
【0050】
具体的には、固定部材151は、直方体状に形成されている、固定部材151には、鉛直方向に貫通した連結孔161、及び鉛直方向に貫通した案内棒154と同数の案内孔162が形成されている。2つの案内孔162は、連結孔161の直交方向両側に形成されている。固定部材151は、ブラケット163を介して保持部材141の保持部145に固定されている。
【0051】
第1位置決め部材152は、直方体状に形成されている。第1位置決め部材152には、スライド方向に貫通するとともに鉛直方向下側に開口した凹部164が形成されている。凹部164の直交方向に沿った幅は、第1締付部材55におけるかしめ部63の直交方向に沿った幅よりもやや大きく設定されている。第1位置決め部材152は、保持機構85により保持されるベローズ34の軸方向と所定の載置姿勢で載置されたラックハウジング13の軸方向とが一致する状態で、凹部164のラックハウジング13に対する位相が第1範囲内に位置するように、連結棒153によって固定部材151に取り付けられている。
【0052】
連結棒153及び各案内棒154は、それぞれ丸棒状に形成されている。連結棒153は、第1位置決め部材152の直交方向中央に固定されるとともに、固定部材151の鉛直方向上側に突出するように連結孔161に摺動可能に挿通されている。連結棒153の鉛直方向上側端部には、連結孔161よりも大きな外径を有する止め輪165が固定されている。第1付勢部材155には、一例としてコイルバネが採用されている。第1付勢部材155は、連結棒153の外周に巻き付けられるとともに、固定部材151と第1位置決め部材152との間で圧縮状態となるように配置されている。二本の案内棒154は、連結棒153の直交方向両側に配置されている。各案内棒154は、第1位置決め部材152に固定されるとともに、案内孔162に摺動可能に挿通されている。
【0053】
これにより、第1締付部材55は、かしめ部63が凹部164内に挿入されることで、その位相が第1範囲となるように保持される。また、第1位置決め部材152は、第1付勢部材155によって鉛直方向下側に付勢されており、止め輪165が固定部材151の上面に当接する位置を下端位置として、スライド方向及び直交方向と交差する方向に弾性的に変位可能となっている。
【0054】
図11、
図13及び
図14に示すように、第2位置決め機構88は、一対の挟み板171と、一対の挟み板171を接離可能に支持する複数の支持棒172と、一対の挟み板171を離間させる第2付勢部材173と、一対の挟み板171を近接させる駆動源となるチャックユニット174とを備えている。そして、第2位置決め機構88は、第2締付部材57の一対の爪部72,73を接離可能に構成されている。なお、本実施形態の第2位置決め機構88は、二本の支持棒172を備えている。
【0055】
具体的には、各挟み板171は、スライド方向に長い長方形板状に形成されており、そのスライド方向左側端部には、鉛直方向下側に延出された当接部181が形成されている。一対の挟み板171は、直交方向に間隔を空けて配置され、当接部181が一対の爪部72,73を直交方向両側から挟み込むように配置されている。各挟み板171には、直交方向に貫通した支持棒172と同数の貫通孔182が鉛直方向に並んで形成されている。一対の挟み板171は、保持機構85により保持されるベローズ34の軸方向と所定の載置姿勢で載置されたラックハウジング13の軸方向とが一致する状態で、これら挟み板171間の隙間のラックハウジング13に対する位相が第2範囲内に位置するように、支持棒172によって補助プレート114に取り付けられている。
【0056】
各支持棒172は、大径部183と、小径部184とを有する段付きの丸棒状に形成されている。大径部183の外径は貫通孔182の内径よりも大きく設定されるとともに、小径部184の外径は貫通孔182の内径よりも小さく設定されている。二本の支持棒172は、大径部183が補助プレート114側に位置するとともに、それぞれ貫通孔182と対向するように鉛直方向に間隔を空けて補助プレート114に固定されている。そして、各支持棒172の小径部184は、一対の挟み板171の貫通孔182にブッシュ185を介してそれぞれ挿通されている。各支持棒172の先端には、貫通孔182の内径よりも大きな外径の頭部を有するネジ186が固定されている。第2付勢部材173には、一例としてコイルバネが採用されている。第2付勢部材173は、鉛直方向上側に配置された支持棒172の小径部184の外周に巻き付けられるとともに、一対の挟み板171の間で圧縮状態となるように配置されている。
【0057】
これにより、一対の挟み板171は、支持棒172における小径部184が形成された範囲に亘って互いに近接及び離間可能になっており、外部から力が作用しない状態では、第2付勢部材173の付勢力により最も離間した状態となる。そして、第2締付部材57は、一対の爪部72,73が一対の挟み板171間に配置されることで、その位相が第2範囲内に保持される。
【0058】
チャックユニット174は、箱状のケース191と、ケース191の側面から突出した一対のチャック192とを備え、空気圧や油圧により一対のチャック192を互いに接離可能に構成されている。なお、チャックユニット174は、図示しない制御装置によりその作動が制御される。チャックユニット174は、一対のチャック192が直交方向に並ぶように、ブラケット193を介して第2プレート112に固定されている。一対のチャック192には、それぞれ鉛直方向下側に突出し、挟み板171のスライド方向右側端部を直交方向両側から挟み込む延出部材194が固定されている。
【0059】
このように構成された第2位置決め機構88は、一対のチャック192が互いに近接すると、延出部材194によって一対の挟み板171が直交方向両側から押圧されることにより、該一対の挟み板171が第2付勢部材173の付勢力に抗して近接し、その当接部181が一対の爪部72,73を互いに近接させる。これにより、第2締付部材57が拡径し、該第2締付部材57が嵌合された状態の第2連結端部54にボールシャフト24の軸状部25が挿入可能となる。一方、一対のチャック192が離間すると、第2付勢部材173の付勢力によって一対の挟み板171が離間し、これに伴って一対の爪部72,73が離間する。これにより、第2締付部材57により第2連結端部54をボールシャフト24の軸状部25に締め付けることが可能になる。
【0060】
次に、本実施形態の組付装置81を用いたベローズ34の組み付け方法について、
図15を参照して説明する。ベローズ34の組み付けに先立って、ボールジョイント22が連結されたラック軸12をラックハウジング13に挿入し、この状態のラックハウジング13を載置台Tの上に載置姿勢で載置する。なお、
図15では、説明の便宜上、押圧部材102を簡略化して図示している。
【0061】
図15(a)に示すように、ベローズ34を保持機構85により保持し、ベローズ34の内部にボールシャフト24の一部を挿入する。このとき、スイング機構86は、第1連結端部53の中心線L1が筒状部21の軸線L2と一致するようにアーム124を回動させる。
【0062】
続いて、
図15(b)に示すように、スイング機構86により第1連結端部53の中心線L1が筒状部21の軸線L2に対して傾斜するようにアーム124を回動させる。併せて、第2位置決め機構88により第2締付部材57を拡径させる。この状態で、スライド機構82によりフレーム83をスライド方向、すなわち筒状部21の軸方向に沿って移動させることにより、第1連結端部53の一部を筒状部21の開口端部31に嵌合させるとともに、第2連結端部54をボールシャフト24の軸状部25に嵌合させる。
【0063】
このとき、回動軸123は、開口端部31の軸方向位置よりもスライド方向右側まで移動する。また、同図に示すように、第1連結端部53の一部を筒状部21の開口端部31に嵌合させた状態で、スライド機構82からフレーム83に力は付与されず、フレーム83は、スライド方向に移動可能な状態となり、回動軸123を含むスイング機構86は、押圧機構84の押圧力に対抗することでスライド方向右側に移動可能な状態となる。
【0064】
そして、
図15(c)に示すように、スイング機構86により第1連結端部53の中心線L1が筒状部21の軸線L2と一致するようにアーム124を回動させる。この際、スイング機構86は押圧機構84の押圧力に抗して瞬間的にスライド方向右側に移動してから、アーム124の回動に応じてスライド方向左側に移動する。これにより、ベローズ34は、第1連結端部53が開口端部31に対して抉り込まれるように揺動し、第1連結端部53の全周が開口端部31に嵌合する。
【0065】
なお、第2位置決め機構88による第2締付部材57の拡径を解除することで、第2連結端部54がボールシャフト24に固定される。また、保持機構85からベローズ34を取り外した後、図示しないかしめ装置によりかしめ部63をかしめることで、第1連結端部53が開口端部31に固定される。
【0066】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)組付装置81は、第1連結端部53の中心線L1を筒状部21の軸線L2に対して傾斜させた状態で第1連結端部53の一部を開口端部31に嵌合させる。そして、この状態からベローズ34を開口端部31に押し付けながら第1連結端部53の中心線L1が筒状部21の軸線L2に一致するように揺動させることで、第1連結端部53の全周を開口端部31に嵌合させるようにした。このように第1連結端部53が揺動する際においては、第1連結端部53における開口端部31のエッジに当たる部分が伸張されており、この伸張される部分が周方向に沿って順次移動する。そのため、ベローズ34の第1連結端部53全周が同時には伸張せず、第1連結端部53全体での変形量が小さくても、第1連結端部53の全周を開口端部31に嵌合させることができる。したがって、比較的弾性係数の高い弾性材料からなるベローズ34であっても、組み付け時にベローズ34が弾性限界を超えて変形することを抑制できる。また、第1連結端部53の中心線L1が筒状部21の軸線L2と一致する状態のまま、ベローズ34を筒状部21の軸方向に沿って移動させて第1連結端部53を開口端部31に嵌合させる場合と異なり、例えば第1連結端部53の一部がその内周側に巻き込まれるような組み付け不良の発生を抑制できる。
【0067】
(2)組付装置81は、フレーム83をラックハウジング13に向けて押圧する押圧機構84を備えるため、揺動させながら第1連結端部53の全周を開口端部31に嵌合させる際に、フレーム83及び保持機構85を介して容易にベローズ34をラックハウジング13に向けて押圧できる。
【0068】
(3)組付装置81は、第1締付部材55の位相を第1範囲内に保持する第1位置決め機構87を備えるため、第1締付部材55の位相を合わせた状態で第1連結端部53を開口端部31に嵌合させることができる。
【0069】
(4)第1位置決め機構87は、保持機構85に対して、スライド方向及び直交方向と交差する方向に弾性的に変位可能な第1位置決め部材152を備え、第1位置決め部材152の凹部164に第1締付部材55のかしめ部63を挿入することで、第1締付部材55の位相を保持するようにした。このように第1位置決め部材152は、スライド方向及び直交方向と交差する方向に弾性的に変位可能であるため、揺動させながら第1連結端部53の全周を開口端部31に嵌合させる際に、第1締付部材55に対して第1位置決め部材152から大きな負荷が加わることを抑制できる。
【0070】
(5)組付装置81は、第2締付部材57の位相を第2範囲内に保持する第2位置決め機構88を備えるため、第2締付部材57の位相を合わせた状態で第2連結端部54をボールシャフト24に嵌合させることができる。
【0071】
(6)第2締付部材57として、第2環状部71、及び第2環状部71から径方向外側に突出した一対の爪部72,73を有し、一対の爪部72,73を周方向に互いに近接させることで、第2環状部71が拡径するものを採用し、第2位置決め機構88を一対の爪部72,73を互いに接離可能に構成した。そのため、第2締付部材57を第2連結端部54の外周に装着したままの状態で、第2連結端部54をボールシャフト24に嵌合させることができる。
【0072】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において、第1締付部材55として、第2締付部材57のように、一対の爪部を周方向に互いに近接させることで、環状部が拡径するものを採用してもよい。この場合、一対の爪部を互いに接離可能に第1位置決め機構87を構成する、又は第1締付部材55をベローズ34の組み付け後に別途組み付ける方法を採用することができる。
【0073】
・上記実施形態において、第2締付部材57として、第1締付部材55のように、かしめ部をかしめることにより第2連結端部54を締め付ける構成のものを採用してもよい。この場合、第2位置決め機構88が一対の爪部を接離する機能を有しない構成としてもよい。
【0074】
・上記実施形態において、保持機構85の構成は適宜変更可能である。例えば保持機構85が、受け部材142に代えて、可撓部52におけるスライド方向右側の位置を保持する第2保持部材を備える構成としてもよい。また、保持機構85が、保持部材141のみを備え、受け部材142を備えない構成としてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、スライド機構82はリニアモータ95を駆動源としてフレーム83をスライド方向に移動させたが、これに限らず、例えば空気圧や油圧を利用した駆動源を用いてフレーム83をスライド方向に移動させてもよく、その構成は適宜変更可能である。同様に、直動ユニット121及びチャックユニット174の駆動源としてモータを用いてもよく、その構成は適宜変更可能である。
【0076】
・上記実施形態において、第1位置決め部材152を保持機構85に対して剛的に固定してもよい。また、組付装置81が第1位置決め機構87を備えない構成としてもよい。
・上記実施形態において、組付装置81が第2位置決め機構88を備えない構成としてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、押圧機構84によりフレーム83をラックハウジング13に向けて押圧したが、これに限らず、揺動させながら第1連結端部53を開口端部31に嵌合させる際に、例えばスライド機構82によってフレーム83をラックハウジング13に向けて押圧してもよい。
【0078】
・上記実施形態において、例えばラック軸12が挿入されていない状態のラックハウジング13に対して組付装置81によりベローズ34の第1連結端部53を組み付けた後、ラック軸12をラックハウジング13に挿入して第2連結端部54をボールシャフト24に組み付けてもよい。つまり、第1連結端部53を組み付けるタイミングと、第2連結端部54を組み付けるタイミングとが異なっていてもよい。
【0079】
・上記実施形態では、ベローズ34をラックハウジング13に組み付けたが、これに限らず、例えば等速ジョイントのアウタレース等、他の組付対象にベローズ34を組み付けてもよい。
【符号の説明】
【0080】
L1…中心線、L2…軸線、1…操舵装置、12…ラック軸、13…ラックハウジング、21…筒状部、22…ボールジョイント、23…ソケット、24…ボールシャフト、25…軸状部、31…開口端部、34…ベローズ、52…可撓部、53…第1連結端部、54…第2連結端部、55…第1締付部材、57…第2締付部材、63…かしめ部、71…第2環状部、72,73…爪部、81…組付装置、82…スライド機構、83…フレーム、84…押圧機構、85…保持機構、86…スイング機構、87…第1位置決め機構、88…第2位置決め機構、123…回動軸、124…アーム、141…保持部材、152…第1位置決め部材、164…凹部。