(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】把持機構及び組立装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20230801BHJP
B23P 19/04 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B25J15/08 Z
B25J15/08 P
B23P19/04 E
(21)【出願番号】P 2019114673
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 聡
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-019279(JP,U)
【文献】特開2010-162206(JP,A)
【文献】特開昭59-024983(JP,A)
【文献】米国特許第05592721(US,A)
【文献】特開2018-001306(JP,A)
【文献】特開2020-082286(JP,A)
【文献】実開昭59-176772(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00 - 15/12
B23P 19/00 - 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持する把持機構であって、
本体部と、
互いに離間するように各々前記本体部に接続された第1把持部及び第2把持部と
を備え、
前記第1把持部は、
第1転動体と、
前記第1転動体を収容する第1枠体
と、
前記第1枠体に固定された第1摺動部と
を有し、
前記第1転動体に働く重力の作用により前記第1転動体の外面と前記第1枠体の内面との間に前記対象物の第1部分を把持し、
前記第2把持部は、
第2転動体と、
前記第2転動体を収容する第2枠体と
、
前記第2枠体に固定された第2摺動部と
を有し、
前記第2転動体に働く重力の作用により前記第2転動体の外面と前記第2枠体の内面との間に前記対象物の前記第1部分とは異なる第2部分を把持
し、
前記第1摺動部は、前記対象物の前記第1部分の把持が解除される方向に前記本体部に対して摺動し、
前記第2摺動部は、前記対象物の前記第2部分の把持が解除される方向に前記本体部に対して摺動する、把持機構。
【請求項2】
前記第1摺動部と前記本体部との間に接続された第1弾性部材と、
前記第2摺動部と前記本体部との間に接続された第2弾性部材と
を更に備えた、請求項
1に記載の把持機構。
【請求項3】
前記第1転動体及び前記第2転動体の各々は、
円柱状の芯部と、
前記芯部の周面を弾性体で覆う被覆部と
を有する、請求項1
又は請求項
2に記載の把持機構。
【請求項4】
前記被覆部の周面の摩擦係数は、前記芯部の周面の摩擦係数よりも大きい、請求項
3に記載の把持機構。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の把持機構と、
前記対象物に対して前記把持機構を相対移動させる駆動機構と
を備えた組立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持機構及び組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の組立装置は、搬送を目的として部品を把持するチャック機構を備える。チャック機構は、電動の把持機構である。このほか、エアー吸引又は電動吸引を用いた把持機構も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の把持機構は、空気圧又は電気エネルギーのような動力を利用していたので、コスト高であり、また故障しやすいものであった。
【0005】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、低コストで故障しにくい把持機構と、把持機構を備えた組立装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の把持機構は、対象物を把持するように、本体部と、第1把持部と、第2把持部とを備える。前記第1把持部及び前記第2把持部は、互いに離間するように各々前記本体部に接続されている。前記第1把持部は、第1転動体と、第1枠体とを有する。前記第1枠体は、前記第1転動体を収容する。前記第1把持部は、前記第1転動体に働く重力の作用により前記第1転動体の外面と前記第1枠体の内面との間に前記対象物の第1部分を把持する。前記第2把持部は、第2転動体と、第2枠体とを有する。前記第2枠体は、前記第2転動体を収容する。前記第2把持部は、前記第2転動体に働く重力の作用により前記第2転動体の外面と前記第2枠体の内面との間に前記対象物の前記第1部分とは異なる第2部分を把持する。
【0007】
本発明の組立装置は、前記把持機構と、前記対象物に対して前記把持機構を相対移動させる駆動機構とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コストで故障しにくい把持機構と、把持機構を備えた組立装置とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る組立装置の一例を示す図である。
【
図5】第1部品及び第2部品の一例を示す斜視図である。
【
図6】第1把持部の動作を説明するための断面図である。
【
図7】組立装置の動作を説明するための正面図である。
【
図8】組立装置の動作を説明するための他の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図8を参照しながら説明する。
図1~
図3において、便宜上、左から右への向きをX軸の正の向き、奥から手前への向きをY軸の正の向き、上から下への向きをZ軸の正の向きとする。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0011】
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る組立装置100について説明する。
図1は、組立装置100の一例を示す図である。
【0012】
図1に示されるように、組立装置100は、第1部品4を第2部品5に嵌合させて組み付ける装置である。第1部品4は、矩形の板状に形成されている。組立装置100は、ロボット1と、位置ずれ修正装置2と、把持機構3とを備える。ロボット1は、「駆動機構」の一例に相当する。
【0013】
把持機構3は、第1部品4を把持する。把持機構3は、本体部3aと、第1把持部3bと、第2把持部3cとを備える。第1把持部3b及び第2把持部3cは、互いに離間するように本体部3aに接続されている。第1把持部3bは、第1部品4の上端部のうちの一方の角部を把持する。第2把持部3cは、第1部品4の上端部のうちの他方の角部を把持する。第2部品5は、位置決め機構10の上で位置決めされている。
【0014】
位置ずれ修正装置2は、第2部品5に対して、把持機構3が把持した第1部品4の位置ずれを修正する。具体的に説明すると、位置ずれ修正装置2は、第2部品5への第1部品4の嵌合の際に第1部品4に働く力の向きを検出し、その力の向きに応じて第1部品4の位置ずれを修正する。
【0015】
ロボット1は、第1部品4に対して把持機構3を相対移動させ、また第2部品5に対して把持機構3を相対移動させる。具体的に説明すると、ロボット1は、第1部品4の収納場所まで把持機構3を移動させ、把持機構3に第1部品4を把持させた後、把持機構3とともに第1部品4を第2部品5の直上まで移動させる。この後、ロボット1は、把持機構3とともに第1部品4をZ軸の正の向きに移動させることにより、第1部品4を第2部品5に嵌合させる。嵌合が達成された後、ロボット1は、第1部品4に対する把持機構3の把持を解除させ、把持機構3をZ軸の負の向きに移動させる。
【0016】
次に、
図2を参照して、把持機構3の全体構成について説明する。
図2は、把持機構3の一例を示す正面図である。
【0017】
図2に示されるように、第1把持部3bは、第1ホルダー31と、第1把持コロ32と、第1摺動部33とを有する。第1ホルダー31は、第1把持コロ32を収容する。第1ホルダー31は、「第1枠体」の一例に相当する。第1把持コロ32は、「第1転動体」の一例に相当する。
【0018】
第1摺動部33は、第1ホルダー31のZ軸の負の向きの端面に固定された板体として構成されている。第1摺動部33の2つの主面は、ZX平面に平行である。第1摺動部33は、第1傾斜端部34と、第1孔部35とを有する。第1傾斜端部34は、Z軸に対してX軸の正の向きに略45度傾斜している。
【0019】
第2把持部3cは、第2ホルダー131と、第2把持コロ132と、第2摺動部133とを有する。第2ホルダー131は、第2把持コロ132を収容する。第2ホルダー131は、「第2枠体」の一例に相当する。第2把持コロ132は、「第2転動体」の一例に相当する。
【0020】
第2摺動部133は、第2ホルダー131のZ軸の負の向きの端面に固定された板体として構成されている。第2摺動部133の2つの主面は、ZX面に平行である。第2摺動部133は、第2傾斜端部134と、第2孔部135とを有する。第2傾斜端部134は、Z軸に対してX軸の負の向きに略45度傾斜している。
【0021】
本体部3aは、位置ずれ修正装置2に接続されたハウジング61を有する。ハウジング61は、第3傾斜端部62と、第4傾斜端部63と、第3孔部64と、第4孔部65とを有する。
【0022】
第3傾斜端部62は、第1把持部3bの側に位置し、Z軸に対してX軸の正の向きに略45度傾斜している。第1把持部3bの第1傾斜端部34は、本体部3aの第3傾斜端部62に対して摺動可能に接続されている。第4傾斜端部63は、第2把持部3cの側に位置し、Z軸に対してX軸の負の向きに略45度傾斜している。第2把持部3cの第2傾斜端部134は、本体部3aの第4傾斜端部63に対して摺動可能に接続されている。
【0023】
把持機構3は、第1ばね7と、第2ばね8とを更に備える。第1ばね7は第1摺動部33と本体部3aとの間に、第2ばね8は第2摺動部133と本体部3aとの間にそれぞれ接続されている。具体的には、第1ばね7の一端が第1孔部35に、第1ばね7の他端が第3孔部64にそれぞれ固定されている。また、第2ばね8の一端が第2孔部135に、第2ばね8の他端が第4孔部65にそれぞれ固定されている。第1ばね7は、「第1弾性部材」の一例に相当する。第2ばね8は、「第2弾性部材」の一例に相当する。
【0024】
次に、
図3及び
図4を参照して、第1把持部3bの詳細構成について説明する。
図3は、第1把持部3bの拡大正面図である。
図4は、
図3のIV-IV断面図である。なお、第2把持部3cは第1把持部3bと同様であるので、第2把持部3cの詳細構成の説明は省略する。
【0025】
図3及び
図4に示されるように、第1把持コロ32は、円柱状の芯部321と、芯部321の周面を覆う被覆部322とを有する。例えば、芯部321は鉄のような金属で、被覆部322はポリアセタール樹脂のような弾性体でそれぞれ構成される。芯部321の密度は、被覆部322の密度よりも大きい。被覆部322は、圧縮変形が可能である。被覆部322の周面の摩擦係数は、芯部321の周面の摩擦係数よりも大きい。
【0026】
第1ホルダー31は、背板311と、天板312と、上前板313と、下前板314と、左右の側板316とを有する。例えば、第1ホルダー31は、アルミニウムのような軽金属で構成される。
【0027】
背板311は、ZX平面に沿って延びる矩形の板である。天板312は、背板311の上縁を始端としてXY平面に沿って延びる矩形の板である。上前板313は、天板312の前縁を始端として、背板311から離れる方向へ斜め下方に向かって延びる矩形の板である。下前板314は、上前板313の下縁を始端として、背板311に近づく方向へ斜め下方に向かって延びる矩形の板である。
【0028】
背板311と下前板314との間には、開口315が形成されている。開口315のY方向の幅は、第1把持コロ32の直径よりも小さい。したがって、開口315を通して第1把持コロ32が落下することはない。背板311及び下前板314は、第1把持コロ32の重量を支える。開口315は、把持対象物の挿入を受けることができる。
【0029】
背板311、天板312、上前板313及び下前板314は、第1ホルダー31の左右側面にそれぞれ略五角形の開口を形成する。左右の側板316は、これらの開口を塞ぐように設置されている。ただし、少なくとも一方の側板316は、把持解除の際に第1把持コロ32を通さずに把持対象物を通すための切欠部317を、背板311に近い位置に有する。
【0030】
例えば側板316を開閉自在に構成することにより、第1把持コロ32の出し入れが可能になる。
【0031】
次に、
図5を参照して、第1部品4及び第2部品5について説明する。
図5は、第1部品4及び第2部品5の一例を示す斜視図である。
【0032】
図5に示されるように、第1部品4は、ZX平面に沿って延びる矩形の板である。第2部品5は、略直方体の形状を有する部品本体51に、第1部品4の下端部を受け入れる凹部52が形成されたものである。
【0033】
次に、
図6を参照して、第1把持部3bの動作について説明する。
図6は、第1把持部3bの動作を説明するための断面図である。
【0034】
図6に示すように、第1把持部3bは、第1把持コロ32に働く重力の作用により、第1把持コロ32の外面と第1ホルダー31の内面との間に第1部品4の上端部のうちの一方の角部を把持する。具体的には、被覆部322の外面と背板311の内面との間に、適度の摩擦力で第1部品4が把持される。被覆部322が圧縮変形することにより、被覆部322が非弾性体で構成された場合に比べて第1部品4との接触面積が大きくなり、大きい把持力を実現している。
【0035】
第2把持部3cは、図示を省略するが、第2把持コロ132に働く重力の作用により、第2把持コロ132の外面と第2ホルダー131の内面との間に第1部品4の上端部のうちの他方の角部を把持する。
【0036】
次に、
図1~
図8を参照して、組立装置100の動作を説明する。
図7及び
図8は、組立装置100の動作を説明するための正面図である。
【0037】
第1工程において、ロボット1は、第1部品4の収納場所まで把持機構3を移動させる。そして、ロボット1は、把持機構3の姿勢を調整したうえ、第1部品4に対して、把持機構3をZ軸の正の向きに相対移動させる。第1部品4の上端は、第1ホルダー31の中へ入り、第1把持コロ32を押し退けながら第1ホルダー31の中を上昇する。同様に、第1部品4の上端は、第2ホルダー131の中へ入り、第2把持コロ132を押し退けながら第2ホルダー131の中を上昇する。第1部品4の上端が第1把持コロ32の中心よりも高い位置まで達し、また第1部品4の上端が第2把持コロ132の中心よりも高い位置まで達した時点で、把持機構3の移動が停止する。その結果、
図6に示された把持状態が実現する。
【0038】
第2工程において、ロボット1は、把持機構3をZ軸の負の向きに移動させたうえ、把持機構3を更に移動させることにより、
図7に示されるように、第2部品5の直上まで第1部品4を搬送する。第1部品4は、第1把持部3b及び第2把持部3cにより把持されたままである。
【0039】
第3工程において、ロボット1は、把持機構3をZ軸の正の向きに移動させる。その結果、第1部品4が第2部品5に嵌合される。少なくとも嵌合の直前までは、
図6に示された把持状態が維持される。
【0040】
第4工程において、ロボット1は、把持機構3をZ軸の正の向きに更に移動させる。その結果、第1把持部3b及び第2把持部3cの双方に対してZ軸の負の向きの力が作用する。
【0041】
図8に示されるように、第1摺動部33は、第1ばね7を引き伸ばしながら、本体部3aに対してZ軸の負の向きかつX軸の負の向きに摺動する。第1部品4は、被覆部322の外面と背板311の内面との間を擦り抜け、更に切欠部317を通過する。その結果、第1部品4の上端部のうちの一方の角部の把持が解除される。
【0042】
一方、第2摺動部133は、第2ばね8を引き伸ばしながら、本体部3aに対してZ軸の負の向きかつX軸の正の向きに摺動する。その結果、第1部品4の上端部のうちの他方の角部の把持が解除される。第1部品4は、第2部品5に嵌合されたままである。
【0043】
第5工程において、ロボット1は、把持機構3をZ軸の負の向きに移動させつつ、次の作業に備えて把持機構3を元の位置に戻す。第1摺動部33は、第1ばね7の復元力により本体部3aに対して、
図2に示された元の位置に戻る。第2摺動部133は、第2ばね8の復元力により本体部3aに対して、
図2に示された元の位置に戻る。
【0044】
実施形態によれば、第1ホルダー31、第1把持コロ32、第2ホルダー131、及び第2把持コロ132のみで動力不要の把持機構3が構成される。その結果、低コストで故障しにくい把持機構3が実現する。また、第1部品4の横幅が大きい場合であっても、第1部品4の両方の角部が把持機構3によって安定的に把持される。しかも、ロボット1が把持機構3を第1部品4に向けて押し込むことで第1把持部3b及び第2把持部3cが左右にスライドするので、第1部品4の把持の解除が容易である。
【0045】
なお、第1ばね7及び第2ばね8の強さは、第4工程においてロボット1が把持機構3を押し込む際に第1ばね7及び第2ばね8が容易に引き伸ばされるように、適切に設定される。
【0046】
上記した各実施形態の説明は、本発明における好適な実施形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。上記実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、把持機構及び組立装置の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 ロボット(駆動機構)
3 把持機構
3a 本体部
3b 第1把持部
3c 第2把持部
4 第1部品
5 第2部品
7 第1ばね(第1弾性部材)
8 第2ばね(第2弾性部材)
31 第1ホルダー(第1枠体)
32 第1把持コロ(第1転動体)
33 第1摺動部
100 組立装置
131 第2ホルダー(第2枠体)
132 第2把持コロ(第2転動体)
133 第2摺動部
321 芯部
322 被覆部