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特許7322548吊りロープ振れ判定方法、データ処理装置、クレーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】吊りロープ振れ判定方法、データ処理装置、クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B66C13/22 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019118853
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021004119
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】竹中 裕憲
(72)【発明者】
【氏名】兵埜 拓也
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-244893(JP,A)
【文献】特開2006-337253(JP,A)
【文献】特開2015-187380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのブームの先端部から垂下される吊りロープの振れ状態を判定する吊りロープ振れ判定方法であって、
前記クレーンが、前記ブームに固定され視野範囲に存在する物体の3次元の位置を検出する物体検出センサーと、前記ブームの傾斜角度を検出するブーム角度センサーと、を備え、
データ処理装置により実行される工程として、
前記ブームにおける前記物体検出センサーが固定された部分から前記先端部までの長さであるブーム部分長のデータおよび前記ブームの長手方向を基準にした前記物体検出センサーの視野方向のデータを含む条件データを取得する条件データ取得工程と、
前記物体検出センサーにより検出される物体の3次元の検出位置のデータおよび前記ブーム角度センサーにより検出される検出ブーム角度のデータを含む検出データを取得する検出データ取得工程と、
前記ブーム部分長、前記視野方向、前記検出ブーム角度および前記検出位置のデータに基づいて前記吊りロープの振れ方向および振れ角度を導出する導出工程と、を含む、吊りロープ振れ判定方法。
【請求項2】
前記導出工程は、
前記検出位置のデータから縦方向に延びる線状物の3次元の位置であるロープ位置のデータを抽出する第1導出工程と、
前記ブーム部分長、前記視野方向、前記検出ブーム角度および前記ロープ位置のデータから前記振れ方向および前記振れ角度を導出する第2導出工程と、を含む、請求項1に記載の吊りロープ振れ判定方法。
【請求項3】
予め較正モードが選択されている場合に、前記視野方向を導出する較正工程をさらに含み、
前記較正工程は、
前記ブーム部分長のデータを取得する第1較正工程と、
前記検出ブーム角度のデータおよび前記物体検出センサーにより検出される前記検出位置のデータを取得する第2較正工程と、
前記検出位置が前記ブームの前記先端部の鉛直下方の位置であるという前提条件と前記ブーム部分長および前記検出位置のデータとに基づいて前記視野方向を導出する第3較正工程と、
導出された前記視野方向のデータを記憶装置に記憶させる第4較正工程と、を含み、
前記条件データ取得工程において、前記視野方向のデータが前記記憶装置から取得される、請求項1または請求項2に記載の吊りロープ振れ判定方法。
【請求項4】
前記条件データは、前記ブームの長さのデータを含み、
前記検出データは、前記吊りロープの繰り出し長さを検出する装置により検出される検出繰り出し長さのデータを含み、
前記導出工程は、前記振れ角度、前記検出ブーム角度、前記ブームの長さ、および前記検出繰り出し長さのデータから前記吊りロープの末端部の振れ幅を導出する工程を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吊りロープ振れ判定方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の吊りロープ振れ判定方法を実行するデータ処理装置。
【請求項6】
起伏可能に支持されたブームと、
前記ブームの先端部から垂下される吊りロープと、
前記ブームの傾斜角度を検出するブーム角度センサーと、
前記ブームに固定され視野範囲に存在する物体の3次元の位置を検出する物体検出センサーと、
請求項5に記載のデータ処理装置と、を備えるクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームの先端部から垂下される吊りロープの振れ状態を判定する吊りロープ振れ判定方法、データ処理装置およびクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンは、吊りロープによって吊り荷を吊り上げ、前記吊りロープを垂下するブームを旋回させることにより前記吊り荷を移動させる。前記クレーンの操縦者にとって、前記吊りロープの振れ状態を把握することは重要である。
【0003】
例えば、前記ブームの先端部に取り付けられたカメラが下方を撮影し、前記吊りロープの末端に取り付けられた目標の位置が画像処理によって検出されることにより、前記吊りロープの振れ角度を検出することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、重錘および慣性センサーを備える振れ角度検出センサーが前記吊りロープに装着されることもが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-72693号公報
【文献】特開2013-18616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記吊りロープの振れ角度を検出する振れ角度検出装置が、前記吊りロープなどの可動部に装着されると、前記振れ角度検出装置または前記吊りロープの破損などのトラブルが生じやすい。
【0007】
また、前記ブームの上端部から下方を撮影するカメラにより得られる画像に対する画像処理によって前記吊りロープの末端部の位置が検出される場合がある。この場合、前記吊りロープの垂下長さが長くなったときに、前記画像処理によって前記吊りロープの末端部の位置を正しく検出することが難しくなるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、検出装置が吊りロープに装着されることなく、前記吊りロープの垂下長さが長い場合でも前記吊りロープの振れ状態を正しく判定できる吊りロープ振れ判定方法、データ処理装置およびクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面に係る吊りロープ振れ判定方法は、クレーンのブームの先端部から垂下される吊りロープの振れ状態を判定する方法である。本方法は、データ処理装置により実行される工程として、条件データ取得工程と、検出データ取得工程と、導出工程と、を含む前記条件データ取得工程は、前記ブームにおける物体検出センサーが固定された部分から前記先端部までの長さであるブーム部分長のデータおよび前記ブームの長手方向を基準にした前記物体検出センサーの視野方向のデータを含む条件データを取得する工程である。前記検出データ取得工程は、前記ブームの傾斜角度を検出するブーム角度センサーにより検出される検出ブーム角度のデータおよび前記物体検出センサーにより検出される物体の3次元の検出位置のデータを含む検出データを取得する工程である。前記導出工程は、前記ブーム部分長、前記視野方向、前記検出ブーム角度および前記検出位置のデータから、前記ブームの前記先端部を通る鉛直線に対する前記吊りロープの振れ方向および振れ角度を導出する工程である。
【0010】
本発明の他の局面に係るデータ処理装置は、前記吊りロープ振れ判定方法を実行する装置である。
【0011】
本発明の他の局面に係るクレーンは、起伏可能に支持されたブームと、前記ブームの先端部から垂下される吊りロープと、前記ブームの傾斜角度を検出するブーム角度センサーと、前記ブームに固定され視野範囲に存在する物体の3次元の位置を検出する物体検出センサーと、前記データ処理装置と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検出装置が吊りロープに装着されることなく、前記吊りロープの垂下長さが長い場合でも前記吊りロープの振れ状態を正しく判定できる吊りロープ振れ判定方法、データ処理装置およびクレーンを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係るクレーンの構成図である。
図2図2は、第1実施形態に係るクレーンにおける制御関連機器の構成を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係るクレーンにおけるメインコントローラー、ECUおよび位置データ処理装置の構成を示すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係るクレーンにおける吊りロープ振れ判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態に係るクレーンにおける視野方向較正処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、第1実施形態に係るクレーンにおける物体検出センサーの検出結果を画像で表す物体検出画像の一例を表す図である。
図7図7は、吊りロープの振れ状態を示す図であり、図7(A)は吊りロープの振れ方向を示す図であり、図7(B)は吊りロープの振れ角度を示す図である。
図8図8は、物体検出センサーの位置とブームの先端部の位置と吊りロープの位置とに関連する4つの基準点の関係を模式的に示す図である。
図9図9は、第2実施形態に係るクレーンにおける物体検出センサーの検出結果を画像で表す物体検出画像の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0015】
[クレーン10の構成]
本発明の第1実施形態に係るクレーン10は、不図示の吊り荷を吊り上げ、さらに前記吊り荷を移動させる作業機械である。以下、クレーン10が移動式クレーンである場合の例について説明する。
【0016】
図1に示されるように、クレーン10は、下部走行体11、上部旋回体12、キャブ13、ガントリ15、ウインチ装置16、カウンターウェイト17、ブーム21、フック30、起伏ロープ31および吊りロープ32などを備える。ウインチ装置16は、第1ウインチ装置161および第2ウインチ装置162を含む。
【0017】
ガントリ15は、上部旋回体12から起立する状態で上部旋回体12に固定されている。カウンターウェイト17は、上部旋回体12に連結され、上部旋回体12の後方に張り出している。
【0018】
下部走行体11は、上部旋回体12を支持する台座部分である。上部旋回体12は、下部走行体11の上部に、下部走行体11に対し旋回可能に設けられている。上部旋回体12は、下部走行体11に設けられた不図示の旋回モーターによって旋回駆動される。下部走行体11は、ブーム21を起伏可能に支持する基体の一例である。
【0019】
キャブ13は、操縦室である。キャブ13は、上部旋回体12に連結されている。上部旋回体12は、キャブ13、ガントリ15、ウインチ装置16およびカウンターウェイト17とともに一体に旋回する旋回部を構成している。
【0020】
図1に示されるクレーン10は移動式クレーンである。そのため、走行装置14が下部走行体11に連結されている。図1は、走行装置14がクローラー式の装置である例を示す。
【0021】
ブーム21は、上部旋回体12から延びて形成されている。ブーム21は、上部旋回体12によって起伏可能に支持されている。ブーム21は、その先端部に設けられたブームポイントアイドラーシーブ22から吊りロープ32を垂下する。
【0022】
吊りロープ32の末端にはフック30が連結されている。吊りロープ32は、ブーム21の先端部に設けられたブームポイントアイドラーシーブ22に掛けられている。これにより、吊りロープ32はブーム21の先端部から垂下される。
【0023】
起伏ロープ31は、ガントリ15の先端部に設けられたガントリシーブ23に掛けられ、起伏ロープ31の先端は、ブーム21の先端部に連結されている。
【0024】
第1ウインチ装置161は、起伏ロープ31を介してブーム21を支える。また、第2ウインチ装置162は、吊りロープ32を介してフック30を支える。
【0025】
第1ウインチ装置161は、起伏ロープ31の巻き取り、または、繰り出しを行うことにより、ブーム21の傾斜角度を変更する。即ち、ブーム21は、第1ウインチ装置161および起伏ロープ31によって傾斜角度を変更可能に駆動される。
【0026】
第2ウインチ装置162は、吊りロープ32の巻き取り、または、繰り出しを行うことにより、フック30を昇降させる。前記吊り荷は、フック30に吊される。カウンターウェイト17は、ブーム21、フック30および前記吊り荷の荷重とのバランスをとる。
【0027】
図2に示されるように、クレーン10は、エンジン41、油圧ポンプ42、油圧制御弁43などの駆動系の機器と、操作装置51と、表示装置52と、メインコントローラー61と、補助記憶装置62と、ECU(Engine Control Unit)63とを備える。
【0028】
操作装置51および表示装置52などのヒューマンインターフェース装置は、キャブ13内に設けられている。さらに、クレーン10は、クレーン10が備える各種の機器の状態を検出する状態検出装置44も備える。
【0029】
操作装置51は、操縦者の操作を受け付ける装置であり、例えば、操作レバー511、操作ボタン512および操作入力装置513などを含む。操作レバー511は、乗降遮断レバーおよび旋回レバーなどを含む。操作入力装置513は、タッチパネルまたはキーボードなどである。
【0030】
表示装置52は情報を表示する装置であり、例えば液晶表示ユニットなどのパネル表示装置である。
【0031】
状態検出装置44は、ブーム角度センサー441および繰り出し長さ検出装置442などを含む。ブーム角度センサー441は、ブーム21の傾斜角度を検出する。繰り出し長さ検出装置442は、吊りロープ32の繰り出し長さを検出する。
【0032】
ブーム角度センサー441は、例えばブーム21に取り付けられた傾斜計である。ブーム角度センサー441は、検出ブーム角度θ1のデータを出力する(図1参照)。図1に示される例では、検出ブーム角度θ1は、ブーム長手方向D1と鉛直方向とが成す角度である。
【0033】
また、繰り出し長さ検出装置442は、例えば吊りロープ32に接触して従動回転する回転体の回転数をカウントすることによって吊りロープ32の繰り出し長さを検出する。繰り出し長さ検出装置442は、検出繰り出し長さLx1のデータをメインコントローラー61へ出力する。
【0034】
メインコントローラー61は、操作装置51に対する操作に応じた各種の制御またはデータ処理、表示装置52の制御、およびECU63の制御などを実行する。
【0035】
補助記憶装置62は、メインコントローラー61によって参照されるデータ、または、メインコントローラー61によって記録されるデータを記憶する不揮発性の記憶装置である。例えば、補助記憶装置62が、SSD(Solid State Drive)またはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などであることが考えられる。
【0036】
ECU63は、各種の状態検出装置44の検出結果に応じて、または、メインコントローラー61からの前記制御指令に従って、エンジン41および油圧制御弁43などを制御する。
【0037】
メインコントローラー61は、操作装置51、ECU63および状態検出装置44などとの間でCAN(Controller Area Network)などの車載ネットワーク9を通じて通信可能である。各種の状態検出装置44の検出結果は、車載ネットワーク9を通じてメインコントローラー61またはECU63へ伝送される。
【0038】
なお、状態検出装置44は、不図示の荷重計および旋回角度検出装置なども含む。前記荷重系は、前記吊り荷の重さを検出する。前記旋回角度検出装置は、上部旋回体12が下部走行体11に対して旋回した角度を検出する。
【0039】
図3に示されるように、メインコントローラー61およびECPU63は、それぞれMPU(Miro Processing Unit)601、RAM(Random Access Memory)602、不揮発性メモリー603、信号インターフェイス604および通信インターフェイス605などを備える。なお、RAM602および不揮発性メモリー603は、コンピューター読み取り可能な記憶装置である。
【0040】
MPU601は、予め不揮発性メモリー603に記憶されたプログラムを実行することにより、各種のデータ処理および制御を実行するプロセッサーの一例である。
【0041】
RAM602は、MPU601によって実行される前記プログラムおよびMPU601が導出もしくは参照するデータを一時記憶する揮発性のメモリーである。
【0042】
不揮発性メモリー603は、MPU601によって実行される前記プログラムおよびMPU601が参照するデータを予め記憶する。例えば、不揮発性メモリー603がROM(Read Only Memory)またはフラッシュメモリーなどであることが考えられる。
【0043】
信号インターフェイス604は、外部から入力されるアナログ信号をデジタルデータへ変換し、前記デジタルデータをMPU601へ伝送する。さらに、信号インターフェイス604は、MPU601から外部へ出力される指令データをアナログの指令信号へ変換して外部へ出力する。
【0044】
通信インターフェイス605は、車載ネットワーク9を通じて状態検出装置44などの他の機器と通信する装置である。MPU601は、通信インターフェイス605を通じて状態検出装置44の検出結果を取得する。さらに、MPU601は、通信インターフェイス605を通じて他の機器へ制御指令を出力する。
【0045】
クレーン10は、フック30に掛けられた前記吊り荷を吊りロープ32によって吊り上げ、吊りロープ32を垂下するブーム21を旋回させることにより前記吊り荷を移動させる。クレーン10の操縦者にとって、吊りロープ32の振れ状態を把握することは重要である。
【0046】
ところで、吊りロープ32の振れ角度を検出する振れ角度検出装置が、吊りロープ32などの可動部に装着されると、前記振れ角度検出装置または吊りロープ32の破損などのトラブルが生じやすい。
【0047】
また、ブーム21の上端部から下方を撮影するカメラにより得られる画像に対する画像処理によって吊りロープ32の末端部の位置が検出される場合がある。この場合、吊りロープ32の垂下長さが長くなったときに、前記画像処理によって吊りロープ32の末端部の位置を正しく検出することが難しくなるおそれがある。
【0048】
一方、クレーン10は、後述する吊りロープ振れ判定処理を実行する(図4参照)。これにより、クレーン10は、検出装置が吊りロープ32に装着されることなく、吊りロープ32の垂下長さが長い場合でも吊りロープ32の振れ状態を正しく判定できる。
【0049】
図2に示されるように、クレーン10は、前記吊りロープ振れ判定処理を実行するために、物体検出センサー45および位置データ処理装置64をさらに備える。
【0050】
物体検出センサー45は、視野範囲に存在する物体の3次元の位置を検出する。物体検出センサー45により検出される前記物体の3次元の位置は、物体検出センサー45の位置を基準とする位置である。
【0051】
例えば、TOF(Time Of Flight)センサーが、物体検出センサー45として採用されることが考えられる。前記TOFセンサーは、固有の視野範囲内に存在する物体の三次元の位置を検出する。前記TOFセンサーは、赤外光を出射し、物体で反射した前記赤外光を二次元に配列された複数の受光素子で受光する。
【0052】
さらに、前記TOFセンサーは、前記受光素子それぞれについて前記赤外光の出射時点から受光時点までの時間を計測することにより、二次元に配列された複数の画素について前記物体までの距離を検出する。
【0053】
物体検出センサー45から出力される前記物体の検出位置PX1のデータは、画像データと同様に、二次元に配列された複数の画素についての画素値のデータである。前記画素値は前記TOFセンサーから前記物体までの距離を表す。
【0054】
図1に示されるように、物体検出センサー45は、ブーム21における先端部と根元部の間の部分に固定される。通常、物体検出センサー45は、ブーム21における長手方向の中央部分よりも先端部寄りの部分に固定される。物体検出センサー45は、その視野範囲に吊りロープ32の垂下部分が入るように固定される。
【0055】
即ち、図1に示されるように、物体検出センサー45の視野方向D2が、ブーム21が起伏する方向、即ち、上部旋回体12の前方に設定される。
【0056】
位置データ処理装置64は、物体検出センサー45から出力される検出位置PX1のデータを処理する。検出位置PX1のデータは、画像データと同様に構成されているため、位置データ処理装置64は、画像データを処理する画像処理装置である。
【0057】
例えば、図3に示されるように、位置データ処理装置64は、メインコントローラー61と同様にMPU601、RAM602、不揮発性メモリー603、信号インターフェイス604および通信インターフェイス605などを備える。
【0058】
位置データ処理装置64は、信号インターフェイス604を通じて物体検出センサー45から検出位置PX1のデータを取得する。さらに、位置データ処理装置64は、検出位置PX1のデータについて処理した結果を表すデータを、通信インターフェイス605を通じてメインコントローラー61へ出力する。
【0059】
メインコントローラー61は、メインコントローラー61のMPU601がコンピュータープログラムを実行することにより実現される複数の処理モジュールを含む。前記複数の処理モジュールは、主処理部6a、条件データ取得部6b、検出データ取得部6c、振れ判定部6d、判定結果出力部6eおよび視野方向較正部6fなどを含む。
【0060】
メインコントローラー61および位置データ処理装置64は、前記吊りロープ振れ判定処理を実行するデータ処理装置の一例である。前記吊りロープ振れ判定処理は、吊りロープ32の振れ状態を判定する処理である。
【0061】
[吊りロープ振れ判定処理]
以下、図4に示されるフローチャートを参照しつつ、前記吊りロープ振れ判定処理の手順の一例について説明する。前記吊りロープ振れ判定処理の手順は、吊りロープ振れ判定方法の一例である。
【0062】
メインコントローラー61の主処理部6aは、予め定められた判定開始条件が成立するときに前記吊りロープ振れ判定処理を開始させる。例えば、前記判定開始条件が、操作レバー511の一部である前記乗降遮断レバーに対して遮断解除操作が行われたという条件、または操作入力装置513に対して予め定められた開始操作が行われたという条件などである。
【0063】
以下の説明において、S101,S102,…は、前記吊りロープ振れ判定処理における複数の工程の識別符号を表す。
【0064】
<工程S101>
前記吊りロープ振れ判定処理において、まず、条件データ取得部6bが、補助記憶装置62から条件データDT1を取得する。工程S101は、条件データ取得工程の一例である。
【0065】
条件データDT1は、ブーム長L1のデータおよび視野方向D2のデータを含む(図1および図2参照)。本実施形態では、条件データDT1は、ブーム部分長L2のデータも含む。条件データDT1は、予め設定されるデータである。
【0066】
ブーム長L1は、ブーム21の長さである。ブーム部分長L2は、ブーム21における物体検出センサー45が固定された部分からブーム21の先端部までの長さである。視野方向D2は、物体検出センサー45からその視野範囲の中心P00へ向かう方向である(図8参照)。視野方向D2のデータは、ブーム長手方向D1を基準にした方向のデータである。
【0067】
図8において、仮想線(二点鎖線)で表される視野中心横断面F1は、物体検出センサー45の視野範囲の中心P00を通り前記視野範囲を真横に横断する平面である。視野方向D2は、視野中心横断面F1に沿う方向である。
【0068】
また、図8において、第1基準点P1は、物体検出センサー45の位置である。第2基準点P2は、ブーム21の先端部の位置である。
【0069】
例えば、視野方向D2のデータが、第1視野角度φ1のデータと第2視野角度φ2のデータとを含む。第1視野角度φ1は、ブーム長手方向D1と視野中心横断面F1とが成す角度である。第2視野角度φ2は、ブーム21の先端部の位置および物体検出センサー45の位置を通る鉛直平面と視野方向D2とが成す角度である。
【0070】
なお、第2視野角度φ2が0°であるとみなされる場合、視野方向D2のデータは、第1視野角度φ1のデータのみである。
【0071】
<工程S102>
次に、検出データ取得部6cおよび位置データ処理装置64が、検出データを取得する。工程S102は、検出データ取得工程の一例である。
【0072】
前記検出データは、検出ブーム角度θ1のデータおよび検出位置PX1のデータを含む。本実施形態では、前記検出データは、検出繰り出し長さLx1のデータも含む。
【0073】
具体的には、検出データ取得部6cが、ブーム角度センサー441および繰り出し長さ検出装置442から前記検出ブーム角度のデータおよび検出繰り出し長さLx1のデータを取得する。さらに、位置データ処理装置64が、物体検出センサー45から検出位置PX1のデータを取得する。
【0074】
<工程S103>
次に、位置データ処理装置64が、検出位置PX1のデータから縦方向に延びる線状物g2の3次元の位置であるロープ位置R1のデータを抽出する(図6参照)。工程S103は、第1導出工程の一例である。
【0075】
位置データ処理装置64は、抽出したロープ位置R1のデータをメインコントローラー61へ出力する。
【0076】
図6は、物体検出センサー45から出力される検出位置PX1のデータを画像で表す物体検出画像g1の一例である。
【0077】
図6に示されるように、検出位置PX1のデータは、物体検出センサー45の視野範囲を縦断する線状物g2のデータの他に、ノイズ物g3のデータを含む場合がある。縦方向に延びる線状物g2は吊りロープ32に相当する。
【0078】
位置データ処理装置64は、検出位置PX1のデータから、視野範囲を縦断する線状物g2のデータをロープ位置R1のデータとして抽出する。このロープ位置R1のデータが、吊りロープ32の振れ状態の判定に用いられる。これにより、ノイズ物g3の検出結果が、誤って吊りロープ32の振れ状態の判定に用いられることを回避することができる。
【0079】
また、吊りロープ32の垂下部が、並列に並ぶ複数本のロープで構成される場合、検出位置PX1のデータは、複数の線状物g2のデータを含む。この場合、位置データ処理装置64は、複数の線状物g2のデータの代表データを、ロープ位置R1のデータとして抽出する。
【0080】
例えば、前記代表データが、複数の線状物g2のデータにおける縦方向の位置ごとの平均値のデータであることが考えられる。この場合、前記代表データは、並列に並ぶ前記複数本のロープの中央に存在する仮想の1本の吊りロープ32の位置を表すデータである。なお、前記代表データが、最も右側または最も左側に存在する線状物g2のデータであることも考えられる。
【0081】
<工程S104>
次に、振れ判定部6dが、ブーム部分長L2、視野方向D2およびロープ位置R1のデータから、吊りロープ32の振れ方向D3および振れ角度θ2を導出する(図7参照)。工程S104は、第2導出工程の一例である。
【0082】
なお、工程S103および工程S104は、ブーム部分長L2、視野方向D2、検出ブーム角度θ1および検出位置PX1のデータから、基準鉛直線Ln1に対する吊りロープ32の振れ方向D3および振れ角度θ2を導出する工程であり、導出工程の一例である。さらに、前記フック振れ幅が導出される工程S105も、前記導出工程の一例である。
【0083】
図7(A)に示されるように、振れ方向D3は、ブーム21の先端部を通る鉛直線である基準鉛直線Ln1に対して吊りロープ32が振れている方向である。図7(A)は、ブーム21の先端部から鉛直下方に向かって見た吊りロープ32を示す。
【0084】
図7(B)に示されるように、振れ角度θ2は、基準鉛直線Ln1に対して吊りロープ32が振れている角度である。図7(B)は、振れ方向D3に直交する方向に沿って見た吊りロープ32を示す。
【0085】
以下、振れ方向D3および振れ角度θ2を導出する方法の一例について説明する。なお、振れ方向D3および振れ角度θ2を導出する方法は各種考えられ、以下に示される方法はあくまで参考例である。
【0086】
図8は、物体検出センサー45の位置、ブーム21の先端部の位置、および吊りロープ32の位置と関連する4つの基準点の関係を模式的に示す。
【0087】
前述したように、視野中心横断面F1は、物体検出センサー45の視野範囲の中心P00を通り前記視野範囲を真横に横断する平面である。
【0088】
また、第1基準点P1は、物体検出センサー45の位置であり、第2基準点P2は、ブーム21の先端部の位置である。
【0089】
また、第3基準点P3は、吊りロープ32と視野中心横断面F1との交点である。図8において、第1基準点P1を基点とする第3基準点P3の方向が、第3基準点方向Ds3として示されている。
【0090】
また、第4基準点P4は、基準鉛直線Ln1と視野中心横断面F1との交点である。図8において、第1基準点P1を基点とする第4基準点P4の方向が、第4基準点方向Ds4として示されている。
【0091】
図8に示されるように、第1基準点P1、第2基準点P2および第4基準点P4を頂点とする三角形において、第1基準点P1の内角の角度が第1視野角度φ1であり、第2基準点P2の内角の角度が検出ブーム角度θ1である。また、第1基準点P1と第2基準点P2との距離がブーム部分長L2である。
【0092】
従って、振れ判定部6dは、ブーム部分長L2および検出ブーム角度θ1から、第2基準点P2を基準にした第1基準点P1の位置を導出することができる。
【0093】
さらに、振れ判定部6dは、正弦定理または余弦定理に基づいて、ブーム部分長L2、第1視野角度φ1および検出ブーム角度θ1から、第4基準点P4の位置および第4基準点方向Ds4を導出することができる。
【0094】
また、図6に示されるように、振れ判定部6dは、物体検出センサー45の視野範囲の中心P00を通る中心横断線Ln2とロープ位置R1との交点であるロープ交点P01の座標を導出する。
【0095】
さらに、図6に示されるように、振れ判定部6dは、前記視野範囲の中心P00とロープ交点P01とのずれ幅dx1と、物体検出センサー45からロープ交点P01までの距離であるロープ基準距離Lx1を導出する。
【0096】
例えば、振れ判定部6dは、ロープ位置R1のデータにおけるロープ交点P01から予め定められた近傍範囲内のデータの平均値をロープ基準距離Lx1として導出する。また、振れ判定部6dが、ロープ位置R1のデータにおけるロープ交点P01のデータの値をロープ基準距離Lx1として導出することも考えられる。
【0097】
振れ判定部6dは、ずれ幅dx1およびロープ基準距離Lx1から、視野方向D2に対する振れ方向D3の角度であるロープずれ角度ψ1を導出することができる(図8参照)。
【0098】
例えば、振れ判定部6dは、ずれ幅dx1を、物体検出センサー45からロープ基準距離Lx1だけ離れた位置での実際の横ずれ距離に換算し、前記横ずれ距離およびロープ基準距離Lx1を逆三角関数に適用する。これにより、振れ判定部6dは、ロープずれ角度ψ1を導出することができる。
【0099】
また、図8に示されるように、第4基準点方向Ds4と視野方向D2とが成す角度が第2視野角度φ2である。
【0100】
そして、振れ判定部6dは、第1基準点P1の位置、第4基準点P4の位置、第4基準点方向Ds4、第2視野角度φ2、ロープずれ角度ψ1およびロープ基準距離Lx1から、第2基準点P2を基準にした第3基準点P3の位置を導出することができる。
【0101】
従って、振れ判定部6dは、第4基準点P4の位置および第3基準点P3の位置から、振れ方向D3および振れ角度θ2を導出することができる。
【0102】
<工程S105>
さらに、振れ判定部6dは、振れ角度θ2、検出ブーム角度θ1、ブーム長L1、および検出繰り出し長さLx1のデータからフック振れ幅を導出する。前記フック振れ幅は、吊りロープ32の末端部の振れ幅である。
【0103】
吊りロープ32における第2ウインチ装置162からブーム21の先端部に亘る部分の長さである中継長さは、ブーム21の長さと検出ブーム角度θ1との組み合わせに対応して一意に定まる。
【0104】
従って、振れ判定部6dは、ブーム21の長さ、検出ブーム角度θ1および検出繰り出し長さLx1を予め定められた計算式に適用することにより、吊りロープ32の垂下長さL3を導出する(図1参照)。
【0105】
さらに、振れ判定部6dは、垂下長さL3および振れ角度θ2を三角関数に適用することにより、前記フック振れ幅を導出する。
【0106】
<工程S106>
次に、判定結果出力部6eが、前記フック振れ幅が予め設定された設定範囲を超えているか否かを判定する。そして、判定結果出力部6eは、前記フック振れ幅が前記設定範囲を超えていると判定する場合に工程S107の処理を実行し、そうでない場合に工程S108の処理を実行する。
【0107】
<工程S107>
工程S107において、判定結果出力部6eは、前記フック振れ幅、振れ角度θ2および振れ方向D3の情報を表示装置52に出力するとともに、操縦者に注意を促す警報を出力する。その後、判定結果出力部6eは、処理を工程S109へ移行させる。
【0108】
<工程S108>
工程S108において、判定結果出力部6eは、特に警報を出力することなく、前記フック振れ幅、振れ角度θ2および振れ方向D3の情報を表示装置52に出力する。その後、判定結果出力部6eは、処理を工程S109へ移行させる。
【0109】
<工程S109>
工程S109において、主処理部6aが、予め定められた終了条件が成立するか否かを判定する。
【0110】
主処理部6aは、前記終了条件が成立すると判定する場合に、前記吊りロープ振れ判定処理を終了させ、そうでない場合に、処理を工程S102へ移行させる。
【0111】
以上に示されるように、クレーン10において、吊りロープ32の振れを検出するための装置は吊りロープ32に装着されない。
【0112】
また、クレーン10において、物体検出センサー45から吊りロープ32までの距離の変動は、吊りロープ32の垂下長さL3の変動ほど大きくない。
【0113】
従って、クレーン10は、前記吊りロープ振れ判定処理を実行することにより、吊りロープ32の垂下長さL3に関わらず、吊りロープ32の振れ状態を安定的に正しく判定できる。
【0114】
条件データDT1において、ブーム長L1およびブーム部分長L2は、比較的確認が容易である。また、ブーム長L1およびブーム部分長L2の多少の誤差は、吊りロープ32の振れ状態の判定への影響が小さい。
【0115】
一方、視野方向D2は、比較的確認が難しい。さらに、視野方向D2の誤差は、吊りロープ32の振れ状態の判定への影響が大きい。
【0116】
そこで、メインコントローラー61および位置データ処理装置64は、以下に示される視野方向較正処理を実行することにより、視野方向D2を導出することができる。
【0117】
[視野方向較正処理]
以下、図5に示されるフローチャートを参照しつつ、前記視野方向較正処理の手順の一例について説明する。
【0118】
前記視野方向較正処理は、吊りロープ32が基準鉛直線Ln1に沿う鉛直垂下状態に保持されているときに実行される。メインコントローラー61の主処理部6aは、操作入力装置513に対して予め定められた較正開始操作が行われたときに、前記視野方向較正処理を開始させる。
【0119】
本実施形態において、操作入力装置513に対する前記較正開始操作は、メインコントローラー61の動作モードとして較正モードを選択する操作である。主処理部6aは、前記較正開始操作に応じて前記較正モードへ移行し、前記視野方向較正処理を開始させる。
【0120】
以下の説明において、S201,S202,…は、前記視野方向較正処理における複数の工程の識別符号を表す。
【0121】
<工程S201>
まず、条件データ取得部6bが、図4の工程S101と同様に、補助記憶装置62から条件データDT1を取得する。
【0122】
但し、工程S201において、ブーム長L1のデータおよびブーム部分長L2のデータが取得さればよい。即ち、視野方向D2のデータは取得されなくてもよい。工程S201は、第1較正工程の一例である。
【0123】
<工程S202>
さらに、検出データ取得部6cおよび位置データ処理装置64が、図4の工程S102と同様に、前記検出データを取得する。工程S202は、第2較正工程の一例である。
【0124】
但し、工程S202において、検出ブーム角度θ1のデータおよび検出位置PX1のデータが取得さればよい。即ち、検出繰り出し長さLx1のデータは取得されなくてもよい。
【0125】
<工程S203>
次に、位置データ処理装置64が、図4の工程S103と同様に、検出位置PX1のデータから縦方向に延びる線状物g2の3次元の位置であるロープ位置R1のデータを抽出し、メインコントローラー61へ出力する(図6参照)。
【0126】
<工程S204>
次に、視野方向較正部6fが、ロープ位置R1のデータが表す横方向および奥行き方向の位置のばらつきが、予め定められた許容範囲内であるか否かを判定する。
【0127】
前記横方向の位置のばらつきは、ロープ位置R1のデータが表す横方向の座標値のばらつきである。前記奥行き方向の位置のばらつきは、ロープ位置R1のデータが表す距離のばらつき、即ち、ロープ位置R1のデータにおける画素値のばらつきである。
【0128】
工程S204の処理は、ロープ位置R1のデータが、基準鉛直線Ln1に沿う吊りロープ32を検出したデータであることを確認する処理である。
【0129】
そして、視野方向較正部6fは、ロープ位置R1のデータが前記表す横方向および前記奥行き方向の位置のばらつきが前記許容範囲内であると判定する場合に、工程S205および工程S206の処理を実行し、そうでない場合に処理を工程S207へ移行させる。
【0130】
<工程S205>
工程S205において、視野方向較正部6fは、ロープ位置R1がブーム21の先端部の鉛直下方の位置であるという前提条件と、ブーム部分長L2およびロープ位置R1のデータと、に基づいて視野方向D2を導出する。工程S205は第3較正工程の一例である。
【0131】
振れ判定部6dが図4の工程S104で行った処理では、未知の値である吊りロープ32の振れ方向D3および振れ角度θ2が、既知の値であるブーム部分長L2、視野方向D2およびロープ位置R1から導出された。
【0132】
工程S205において、視野方向較正部6fは、工程S104と同様の論理により、振れ角度θ2が0°であるという前提条件の下で、既知の値であるブーム部分長L2およびロープ位置R1から、未知の値である第1視野角度φ1および第2視野角度φ2を導出する。
【0133】
<工程S206>
工程S206において、視野方向較正部6fは、工程S205で導出した第1視野角度φ1および第2視野角度φ2のデータを、視野方向D2のデータとして補助記憶装置62に記録する。その後、視野方向較正部6fは、前記視野方向較正処理を終了させる。
【0134】
なお、工程S206は、導出された視野方向D2のデータを記憶装置に記憶させる第4較正工程の一例である。また、工程S201~S206は、予め前記較正モードが選択されている場合に、視野方向D2を導出する較正工程の一例である。
【0135】
<工程S207>
一方、工程S207において、主処理部6aが、表示装置52に予め定められたエラー通知メッセージを出力した後、前記視野方向較正処理を終了させる。
【0136】
図4の工程S101において、条件データ取得部6bは、工程S206で記録された視野方向D2のデータを、補助記憶装置62から取得する。前記視野方向較正処理が実行されることにより、視野方向D2を容易に設定することができる。
【0137】
[第2実施形態]
以下、図9を参照しつつ、クレーン10の応用例である第2実施形態に係るクレーンについて説明する。
【0138】
本実施形態における振れ判定部6dは、図4の工程S104の処理の代わりに、以下に示される代替工程の処理を実行する。
【0139】
前記代替工程において、振れ判定部6dは、ロープ位置R1のデータにおける縦方向の複数の箇所のデータから、吊りロープ32の振れ方向D3および振れ角度θ2を導出する。前記代替工程は、第2導出工程の一例である。
【0140】
例えば、前記代替工程において、振れ判定部6dは、ロープ位置R1のデータにおける上端位置P001のデータと、下端位置P002のデータから吊りロープ32の振れ方向D3および振れ角度θ2を導出する。
【0141】
具体的には、振れ判定部6dは、上端位置P001のデータが表す第1座標位置と下端位置P002のデータが表す第2座標位置とを結ぶ直線と鉛直方向とが成す角度を振れ角度θ2として導出する。
【0142】
さらに、振れ判定部6dは、鉛直方向に沿って見たときの前記第1座標位置を通る鉛直線に対する前記第2座標位置の方向を振れ方向D3として導出する。
【0143】
また、前記第1座標位置が、上端位置P001のデータにおける右端、左端または左右方向の中央の画素に対応する座標であることが考えられる。同様に、前記第2座標位置が、下端位置P002のデータにおける右端、左端または左右方向の中央の画素に対応する座標であることが考えられる。
【0144】
本実施形態が採用される場合も、第1実施形態が採用される場合と同様の効果が得られる。また、本実施形態が採用される場合、図4における工程S101および工程S102を省略することができる。
【0145】
[応用例]
以下、第1実施形態または第2実施形態の応用例について説明する。
【0146】
本応用例において、物体検出装置45が、物体の3次元の位置を計測するステレオカメラ装置である。
【0147】
前記ステレオカメラ装置は、監視領域を異なる方向から撮影する一対のカメラと、前記一対のカメラにより得られる一対の撮影画像に対する画像処理により、物体の3次元の位置を導出する画像処理装置とを備える。
【0148】
前記画像処理装置は、前記一対の撮影画像各々から線状物g2の画像を抽出する。さらに、前記画像処理装置は、抽出した線状物g2の2次元平面内の位置、および、前記一対のカメラから線状物g2までの距離を表すデータを、検出位置Px1のデータとしてメインコントローラー61へ出力する。本応用例が採用される場合も、第1実施形態または第2実施形態が採用される場合と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0149】
6a :主処理部
6b :条件データ取得部
6c :検出データ取得部
6d :判定部
6e :判定結果出力部
6f :視野方向較正部
9 :車載ネットワーク
10 :クレーン
11 :下部走行体
12 :上部旋回体
13 :キャブ
14 :走行装置
15 :ガントリ
16 :ウインチ装置
17 :カウンターウェイト
21 :ブーム
22 :ブームポイントアイドラーシーブ
23 :ガントリシーブ
30 :フック
31 :起伏ロープ
32 :吊りロープ
41 :エンジン
42 :油圧ポンプ
43 :油圧制御弁
44 :状態検出装置
45 :物体検出センサー
51 :操作装置
52 :表示装置
61 :メインコントローラー
62 :補助記憶装置
63 :ECU
64 :位置データ処理装置
161 :第1ウインチ装置
162 :第2ウインチ装置
441 :ブーム角度センサー
442 :検出装置
511 :操作レバー
512 :操作ボタン
513 :操作入力装置
601 :MPU
602 :RAM
603 :不揮発性メモリー
604 :信号インターフェイス
605 :通信インターフェイス
D1 :ブーム長手方向
D2 :視野方向
D3 :方向
DT1 :条件データ
Ds3 :第3基準点方向
Ds4 :第4基準点方向
F1 :視野中心横断面
L1 :ブーム長
L2 :ブーム部分長
Ln1 :基準鉛直線
Ln2 :中心横断線
Lx1 :ロープ基準距離
P00 :視野範囲の中心
P001 :上端位置
P002 :下端位置
P01 :ロープ交点
P1 :第1基準点
P2 :第2基準点
P3 :第3基準点
P4 :第4基準点
PX1 :検出位置
R1 :ロープ位置
dx1 :ずれ幅
g1 :物体検出画像
g2 :線状物
g3 :ノイズ物
θ1 :検出ブーム角度
θ2 :振れ角度
φ1 :第1視野角度
φ2 :第2視野角度
ψ1 :ロープずれ角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9