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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20230801BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20230801BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20230801BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B41J29/38 104
B41J29/38 501
G03G21/00 370
G03G21/14
H04N1/00 885
H04N1/00 127B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019131591
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021016941
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】谷畑 友樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 真歩
(72)【発明者】
【氏名】塩安 麻人
(72)【発明者】
【氏名】野田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】野村 建太
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-211351(JP,A)
【文献】特開2011-178069(JP,A)
【文献】特開2013-034072(JP,A)
【文献】特開2018-144331(JP,A)
【文献】特開2006-181735(JP,A)
【文献】特開2014-090397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00-29/70
G06F 3/09-3/12
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置全体の動作を制御する第1の制御部と、
デバイスの動作を制御する第2の制御部と
を有し、
前記第1の制御部には、省電力モード中も、前記第2の制御部からの通知の受信に必要な電力が供給されており、
前記第2の制御部は、省電力モードから復帰する要因を検知すると、前記第1の制御部に対して当該要因の検知を通知するとともに、当該要因に対応する機能の初期化を開始する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記第2の制御部は、検知された前記要因に対応する機能に限定して初期化を開始する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第2の制御部は、前記要因と初期化する機能の関係を記録する記憶領域を参照し、初期化する機能を特定する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第2の制御部は、省電力モードから復帰する要因を検知すると、当該要因の検知と当該要因の内容を示す情報とを前記第1の制御部に通知する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1の制御部は、省電力モードから復帰する場合に初期化するドライバを、当該第1の制御部から通知を受けた前記要因に対応するドライバに制限する、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第1の制御部は、特定の機能の起動中に省電力モードに移行する場合、予め定めたデバイスを省電力モードの対象から除外する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記特定の機能は、Wi-Fiダイレクトであり、予め定めた前記デバイスは、用紙に画像を印刷する機械又は原稿から画像を読み取るスキャナである、請求項6に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の機能を備える画像形成装置には、システムの動作を制御する制御部(以下「システム制御部」という)と、デバイスの動作を制御する制御部(以下「デバイス制御部」という)とが設けられることがある。
消費される電力が通常モードよりも低い動作モード(以下「省電力モード」という)から画像形成装置が復帰する場合、システム制御部が初期化用のプログラムと復帰要因をデバイス制御部に与えることで、デバイス制御部が初期化する機能を制限し、その結果として復帰に要する時間(以下「復帰時間」という)の短縮を図る考え方がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-144331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デバイス制御部に初期化させる機能を規定する情報を、システム制御部がデバイス制御部に与えるには、その前提として、システム制御部とデバイス制御部の間で通信が確立していることが要求される。換言すると、2つの制御部間で通信が確立するまでは、デバイス制御部の初期化を開始することができない。
【0005】
本発明は、装置全体の動作を制御する第1の制御部とデバイスの動作を制御する第2の制御部との間で通信が確立するのを待って第2の制御部の初期化が開始される場合に比して、省電力モードから復帰するまでに要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、装置全体の動作を制御する第1の制御部と、デバイスの動作を制御する第2の制御部とを有し、前記第1の制御部には、省電力モード中も、前記第2の制御部からの通知の受信に必要な電力が供給されており、前記第2の制御部は、省電力モードから復帰する要因を検知すると、前記第1の制御部に対して当該要因の検知を通知するとともに、当該要因に対応する機能の初期化を開始することを特徴とする情報処理装置である。
請求項2に記載の発明は、前記第2の制御部は、検知された前記要因に対応する機能に限定して初期化を開始する、請求項1に記載の情報処理装置である。
請求項3に記載の発明は、前記第2の制御部は、前記要因と初期化する機能の関係を記録する記憶領域を参照し、初期化する機能を特定する、請求項2に記載の情報処理装置である。
請求項4に記載の発明は、前記第2の制御部は、省電力モードから復帰する要因を検知すると、当該要因の検知と当該要因の内容を示す情報とを前記第1の制御部に通知する、請求項1に記載の情報処理装置である。
請求項5に記載の発明は、前記第1の制御部は、省電力モードから復帰する場合に初期化するドライバを、当該第1の制御部から通知を受けた前記要因に対応するドライバに制限する、請求項4に記載の情報処理装置である。
請求項6に記載の発明は、前記第1の制御部は、特定の機能の起動中に省電力モードに移行する場合、予め定めたデバイスを省電力モードの対象から除外する、請求項1に記載の情報処理装置である。
請求項7に記載の発明は、前記特定の機能は、Wi-Fiダイレクトであり、予め定めた前記デバイスは、用紙に画像を印刷する機械又は原稿から画像を読み取るスキャナである、請求項6に記載の情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、装置全体の動作を制御する第1の制御部とデバイスの動作を制御する第2の制御部との間で通信が確立するのを待って第2の制御部の初期化が開始される場合に比して、省電力モードから復帰するまでに要する時間を短縮できる。
請求項2記載の発明によれば、初期化に要する時間が短縮され、省電力モードから復帰するまでに要する時間を一段と短縮できる。
請求項3記載の発明によれば、初期化が開始されるまでの時間を短縮できる。
請求項4記載の発明によれば、要因の内容の問い合わせに伴う通信が不要になり、省電力モードから復帰するまでに要する時間を一段と短縮できる。
請求項5記載の発明によれば、第1の制御部の復帰に要する時間を短縮できる。
請求項6記載の発明によれば、特定の機能の起動中には復帰に時間を要するデバイスが省電力モードの対象から除外されるため、省電力モードから復帰してデバイスの使用が可能になるまでに要する時間を短縮できる。
請求項7記載の発明によれば、第1及び第2の制御部が省電力モードから復帰するタイミングで印刷又はスキャナの使用が可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1で使用する画像形成装置のハードウェア構成の一例を説明する図である。
図2】実施の形態1で使用する画像形成装置を構成する制御部の構成例を説明する図である。
図3】復帰の要因となった通信の種類と初期化の対象となる機能との関係を説明する図である。(A)は復帰の要因がUSB通信の場合を示し、(B)は復帰の要因が有線LAN通信の場合を示し、(C)は復帰の要因がWi-Fi通信の場合を示す。
図4】実施の形態1で実行される省電力モードからの復帰動作の一例を説明する図である。
図5】実施の形態2で使用する画像形成装置を構成する制御部の構成例を説明する図である。
図6】識別信号の生成と復号に使用するテーブルの一例を示す図である。(A)は復帰の要因に応じた識別信号を生成するために使用するテーブルの例を示し、(B)は識別信号から復帰の要因等を復号するために使用するテーブルの例を示す。
図7】実施の形態2で実行される省電力モードからの復帰動作の一例を説明する図である。
図8】実施の形態3で使用する画像形成装置のうちWi-Fiダイレクトによる印刷に関連するデバイスの動作状態の遷移を説明する図である。(A)は省電力モードに移行する前のデバイスの動作状態を示し、(B)は省電力モード中のデバイスの動作状態を示し、(C)は省電力モードから復帰した後のデバイスの動作状態を示す。
図9】実施の形態3で使用するメインCPUが省電力モードへの移行を判断する場合に実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
<実施の形態1>
<装置の構成>
本実施の形態では、情報処理装置の一例として、用紙などの記録媒体に画像を形成する画像形成装置について説明する。本実施の形態における画像形成装置は、用紙に画像を印刷する機能に加え、原稿の画像イメージを読み取る機能も有している。
図1は、実施の形態1で使用する画像形成装置1のハードウェア構成の一例を説明する図である。
【0010】
図1に示す画像形成装置1は、制御部11と、画像データ等を記憶する記憶部12と、画像データが表す画像に色補正や階調補正等の処理を加える画像処理部13と、ユーザの操作に使用する操作パネル14と、外部装置との通信に使用される通信IF(=InterFace)15と、印刷を実行する機械である印刷エンジン16と、原稿の画像イメージを読み取るスキャナ17とを有している。なお、これらは、バス18や基板状の配線を通じて接続される。バス18には、例えばPCI(=Peripheral Component Interconnect)バスを使用する。
【0011】
制御部11は、メインCPU(=Central Processing Unit)とサブCPUとを有している。メインCPUは装置全体の動作の制御に用いられ、サブCPUはデバイスの動作の制御に用いられる。ここでのデバイスは、画像処理部13、操作パネル14、通信IF15、印刷エンジン16、スキャナ17である。
記憶部12は、不揮発性の記憶装置である。記憶部12は、例えばハードディスク装置で構成される。記憶部12には、スキャナ17で読み取られた画像イメージや外部装置から受信した画像データ等が保存される。
画像処理部13は、専用のプロセサや処理回路等で構成される。
【0012】
操作パネル14は、例えばタッチパネルと各種のスイッチやボタンで構成される。タッチパネルは、インタフェース画面を表示するディスプレイパネルと、ユーザの操作を検知するタッチセンサで構成される。
通信IF15は、外部装置との通信に使用されるモジュールであり、例えばUSB(=Universal Serial Bus)モジュール、イーサネット(登録商標)等に準拠する有線LAN(=Local Area Network)モジュール、Wi-Fi(登録商標)モジュールで構成される。
【0013】
印刷エンジン16は、電子写真方式又はインクジェット方式等に対応する装置である。電子写真方式に対応する印刷エンジン16は、感光体、感光体を帯電させるための電極、露光用の光源、ディベロッパー、転写ローラ、定着ローラ等で構成される。一方、インクジェット方式に対応する印刷エンジン16は、インク滴が吐出される小口径の孔が配列されたヘッド等で構成される。なお、インクジェット方式には、ヘッドを主走査方向に移動させる方式と、用紙の主走査方向の幅よりも長いヘッドを固定した状態で用紙を副走査方向に移動させる方式がある。印刷エンジン16は、用紙に画像を印刷する機械の一例である。
【0014】
スキャナ17は、光学系を原稿に対して相対的に移動させながら画像イメージを読み取るモードにも、光学系を固定した状態で原稿を光学系に対して相対的に移動させながら画像イメージを読み取るモードにも対応する。本実施の形態の場合、スキャナ17には、画像の読み取り位置に原稿を自動で搬送するための装置が取り付けられている。この装置は、ADF(=Auto Document Feeder)等と呼ばれる。
【0015】
図2は、実施の形態1で使用する画像形成装置1を構成する制御部11の構成例を説明する図である。
図2に示すように、制御部11は、メインCPU111とサブCPU112とで構成される。
不図示であるが、メインCPU111には、ファームウェアやブートプログラム等が記憶されたROM(=Read Only Memory)と、ワークエリアとして用いられるRAM(=Random Access Memory)が接続されており、全体としてシステム制御部を構成している。システム制御部は、第1の制御部の一例である。
【0016】
一方、サブCPU112には、復帰プログラムが記憶されたROMとワークエリアとして用いられるRAMが接続されており、全体としてデバイス制御部を構成している。デバイス制御部は、第2の制御部の一例である。
以下では、各制御部を代表してメインCPU111及びサブCPU112という。
【0017】
メインCPU111には、省電力モード中もサブCPU112からの通知を受信するために必要な電力が供給されている。同じく、サブCPU112にも、省電力モード中もデバイスからの通知を受信するために必要な電力が供給されている。
メインCPU111とサブCPU112とは、信号線AとPCIケーブルAとで接続されている。
ここでの信号線Aは、省電力モード中の通信に使用される配線であり、例えば1本の金属線で構成される。信号線Aは、「1」又は「0」が対応付けられた2つの状態又はデジタル信号の通信に使用される。後述する他の信号線についても同様である。
【0018】
一方、PCIケーブルAによる通信は、不図示のPCIバスモジュールの初期化後に可能になる。従って、PCIバスモジュールが初期化されるまでの間は、メインCPU111とサブCPU112の間の通信は、信号線Aを用いた通信に限られる。
サブCPU112には、省電力モードからの復帰時間を短縮するための機能として、初期化制御部120が設けられている。
初期化制御部120には、メインCPU111からの指示を待つこと無く、検知した復帰の要因に対応する機能の初期化を開始する機能が設けられている。
【0019】
本実施の形態で使用する初期化制御部120には、検知した復帰の要因に応じて初期化する機能を判断する初期化機能判断部121と、初期化の進捗状況を格納する進捗状況格納部122とが設けられている。
初期化機能判断部121は、省電力モードからの復帰の要因となるイベント(以下、「復帰イベント」という)の発生を監視している。
例えばユーザによるスイッチ等の操作は、操作の対象であるスイッチ等の状態の変化としてサブCPU112に通知される。ここでの通知には、操作の対象であるデバイスとサブCPU112とを一対一に接続する専用の信号線Bが用いられる。従って、デバイスの数だけ信号線Bが存在する。初期化機能判断部121は、この信号線Bに現れる電位の変化等に基づいて復帰イベントが発生したデバイスを検知する。
【0020】
有線LANに接続されている外部装置からのパケットの受信は、有線LANモジュールを通じてサブCPU112に通知される。有線LANモジュールは、省電力モード中も、パケットの受信が可能である。復帰の要因が有線LANからのパケットの受信である場合、初期化機能判断部121は、有線LANモジュールを初期化の対象に特定する。
また、USBケーブルで接続されているハブやコンピュータからのパケットの受信は、USBモジュールを通じてサブCPU112に通知される。USBモジュールも、省電力モード中にパケットの受信が可能である。復帰の要因がUSBケーブルからのパケットの受信である場合、初期化機能判断部121は、USBモジュールを初期化の対象に特定する。
【0021】
また、Wi-Fi(登録商標)モジュール151が自局宛てのパケットを受信した場合、Wi-Fiモジュール151は、専用の信号線Cを通じてパケットの受信をサブCPU112に通知する。Wi-Fiモジュール151も、省電力モード中にパケットの受信が可能である。この場合、サブCPU112は、Wi-Fiモジュール151との接続に用いられるPCIケーブルBを制御するPCIバスモジュールを初期化の対象に特定する。
因みに、進捗状況格納部122には、サブCPU112で実行される初期化の進捗状況が格納される。進捗状況格納部122は、例えば半導体メモリで構成される。進捗状況格納部122に格納されている進捗状況の情報は、メインCPU111からの問い合わせに応じて読み出され、応答としてメインCPU111に送信される。
【0022】
図3は、復帰の要因となった通信の種類と初期化の対象となる機能との関係を説明する図である。(A)は復帰の要因がUSB通信の場合を示し、(B)は復帰の要因が有線LAN通信の場合を示し、(C)は復帰の要因がWi-Fi通信の場合を示す。
本実施の形態の場合、初期化機能判断部121(図2参照)には、復帰の要因別に初期化する機能と初期化しない機能を割り当てたテーブル1210A、1210B、1210Cが用意されている。
【0023】
例えば復帰の要因がUSB通信であった場合、初期化機能判断部121は、テーブル1210Aを参照し、USB通信に関連する機能に限定して初期化を実行する。換言すると、復帰の要因とは関係がない有線LAN通信とWi-Fi通信は初期化の対象から除外される。
初期化する機能を限定することで、全ての機能を初期化する場合に比して、初期化に要する時間が短くなる。また、復帰の必要がない機能は省電力モードに維持されるので、全ての機能を省電力モードから復帰させる場合に比して消費される電力の増加が抑制される。
【0024】
なお、復帰の要因が有線LAN通信であった場合、初期化機能判断部121は、テーブル1210Bを参照し、有線LAN通信に関連する機能に限定して初期化を実行する。また、復帰の要因がWi-Fi通信であった場合、初期化機能判断部121は、テーブル1210Cを参照し、Wi-Fi通信に関連する機能に限定して初期化を実行する。
【0025】
<省電力モードからの復帰動作>
以下では、制御部11(図2参照)において実行される省電力モードからの復帰動作について説明する。
図4は、実施の形態1で実行される省電力モードからの復帰動作の一例を説明する図である。図中のSはステップを意味する。図4では、復帰の要因がWi-Fi通信である場合を想定している。
【0026】
まず、省電力モード中のWi-Fiモジュール151が、自局宛のパケットを受信する(ステップ1)。
自局宛のパケットの受信を検知したWi-Fiモジュール151は、信号線Cを通じて復帰イベントの発生をサブCPU112に通知する(ステップ2)。例えばWi-Fiモジュール151は、信号線Cの電位の状態を0から1に変化させる。
【0027】
通知を受信したサブCPU112は、信号線Aを通じて復帰イベントの発生をメインCPU111に通知する(ステップ3)。例えばサブCPU112は、信号線の電位の状態を0から1に変化させる。
また、サブCPU112は、PCIバスモジュールを初期化する(ステップ4)。本実施の形態の場合、サブCPU112側の初期化は、メインCPU111からの初期化の指示を待つこと無く開始される。
【0028】
一方、メインCPU111は、復帰イベントの発生の通知を信号線A経由で受信すると、PCIバスモジュールを初期化する(ステップ5)。図4に示すように、メインCPU111側の初期化とサブCPU112側の初期化は、並列に進行する。
このため、メインCPU111側の初期化の終了を待ってサブCPU112側の初期化が開始される場合に比して、メインCPU111側の初期化とサブCPU112側の初期化の両方が完了するまでの時間の短縮が可能になる。初期化が完了するまでの時間の短縮は、省電力モードからの復帰に要する時間の短縮を意味する。
【0029】
なお、メインCPU111は、PCIケーブルA等を使用して、サブCPU112に対して復帰の要因を要求する(ステップ6)。一方のサブCPU112は、問い合わせに対する応答として、メインCPU111に対して復帰の要因を回答する(ステップ7)。この例の場合、復帰の要因は、Wi-Fiモジュール151によるパケットの受信である。
次に、メインCPU111は、サブCPU112に対し、PCIケーブルA等を使用して、初期化の進捗状況を問い合わせる(ステップ8)。サブCPU112側の初期化の進捗状況は、進捗状況格納部122(図2参照)に格納されている。一方のサブCPU112は、メインCPU111に対し、進捗状況格納部122から読み出した初期化の進捗状況を回答する(ステップ9)。
この問い合わせと回答は、サブCPU112側の初期化の完了が確認されるまで繰り返される。
【0030】
サブCPU112側の初期化の完了が確認されると、メインCPU111は、Wi-Fiモジュール151に対してパケットを要求する(ステップ10)。この要求は、PCIケーブルAとPCIケーブルBを通じてWi-Fiモジュール151に送信される。
パケットの要求を受信したWi-Fiモジュール151は、メインCPU111に対し、受信したパケットを転送する(ステップ11)。
以上により、画像形成装置1におけるWi-Fi通信が再開されるまでの時間は、メインCPU111側の初期化を待ってサブCPU112側の初期化を開始する場合よりも短縮される。省電力モード中に有線LAN通信やUSB通信が検知された場合も同様である。
【0031】
<実施の形態2>
前述の実施の形態1の場合、サブCPU112(図2参照)から復帰イベントの発生の通知を受信した時点で、メインCPU111(図2参照)は復帰の要因を知らない。このため、メインCPU111は、Wi-Fi通信に使用するドライバを含む全てのドライバを初期化する。この動作は、メインCPU111側の初期化を延ばす要因になる。また、省電力モードから復帰したメインCPU111では、復帰の要因とは関係がないドライバを動作させるために電力が消費される。
【0032】
そこで、本実施の形態では、省電力モードからの復帰に要する時間を実施の形態1に比して短縮すると共に、初期化するドライバを限定してメインCPU111で消費される電力の増加を抑制する画像形成装置について説明する。
図5は、実施の形態2で使用する画像形成装置1Aを構成する制御部11Aの構成例を説明する図である。図5には、図2との対応部分に対応する符号を付して示している。
図5に示す制御部11Aは、メインCPU111AとサブCPU112Aで構成される。
【0033】
本実施の形態の場合、メインCPU111AとサブCPU112Aとの間には、新たに2本の信号線DとEが設けられている。信号線DとEは、2本一組で用いられ、復帰の要因を示す識別信号を、サブCPU112AからメインCPU111Aに送信する。この識別信号の通知は、信号線Aを用いる復帰イベントの発生の通知と同時に実行される。
なお、メインCPU111Aには、受信した識別信号から復帰の要因を復号するために使用するテーブル131が設けられている。
一方、サブCPU112Aには、復帰の要因に応じた識別信号を生成するために使用するテーブル132が設けられている。図5の場合、テーブル132は、初期化制御部120Aを構成する初期化機能判断部121Aに設けられている。
【0034】
図6は、識別信号の生成と復号に使用するテーブル131及び132の一例を示す図である。(A)は復帰の要因に応じた識別信号を生成するために使用するテーブル132の例を示し、(B)は識別信号から復帰の要因等を復号するために使用するテーブル131の例を示す。
図6に示すテーブル132の場合、復帰の要因としてのUSB通信には「00」が割り当てられている。また、復帰の要因としての有線LAN通信には「01」が割り当てられている。また、復帰の要因としてのWi-Fi通信には「10」が割り当てられている。なお、「11」は予備として使用される。なお、識別信号の「10」は、信号線Dで送信される信号が「1」であり、信号線Eで送信される信号が「0」であることを意味する。
【0035】
一方、テーブル131には、各識別信号に応じてメインCPU111Aが実行する処理が書き込まれている。例えば識別信号の「00」には、USBドライバの初期化が対応付けられている。また、識別信号の「01」には、有線LANドライバの初期化が対応付けられている。また、識別信号の「11」には、Wi-Fiドライバの初期化が対応付けられている。
本実施の形態におけるメインCPU111Aは、復帰イベントの発生と識別信号の通知を受信すると、テーブル131を参照して初期化するドライバを限定する。
【0036】
図7は、実施の形態2で実行される省電力モードからの復帰動作の一例を説明する図である。図7には、図4との対応部分に対応する符号を付して示す。
図7の場合も、省電力モード中のWi-Fiモジュール151が、自局宛のパケットを受信する(ステップ1)。自局宛のパケットの受信を検知したWi-Fiモジュール151は、信号線Cを通じて復帰イベントの発生をサブCPU112Aに通知する(ステップ2)。
通知を受信したサブCPU112Aは、メインCPU111Aに対し、信号線Aを通じて復帰イベントの発生を通知し、信号線D、Eを通じて識別信号を通知する(ステップ21)。同時に、サブCPU112Aは、PCIバスモジュールを初期化する(ステップ4)。本実施の形態の場合も、サブCPU112A側の初期化は、メインCPU111Aからの初期化の指示を待つこと無く開始される。
【0037】
一方、メインCPU111Aは、復帰イベントの発生の通知を信号線A経由で受信するとPCIバスモジュールを初期化するとともに、初期化するドライバをWi-Fiドライバに限定する(ステップ22)。
このため、本実施の形態におけるメインCPU111A側の初期化に要する時間は、復帰の要因が同じ場合に実施の形態1で要する時間に比して短縮される。
【0038】
また、本実施の形態の場合、復帰の要因が初期化を開始する前にサブCPU112AからメインCPU111Aに通知されている。
このため、本実施の形態におけるメインCPU111Aは、復帰の要因をサブCPU112Aに問い合わせることなく、サブCPU112A側の初期化の進捗状況を問い合わせる(ステップ8)。以下の動作は、実施の形態1と同じである。
【0039】
<実施の形態3>
本実施の形態では、画像形成装置1(図1参照)がWi-Fiダイレクトの親機として利用される場合について説明する。すなわち、本実施の形態では、画像形成装置1がWi-Fi通信のアクセスポイントとして機能し、外部装置とダイレクトにWi-Fi通信する場合について説明する。
Wi-Fiダイレクトの親機として動作中の画像形成装置1も、操作が無い状態が長く続くと省電力モードに移行する。この場合でも、前述した実施の形態で説明した技術を採用することにより、従前に比して短い時間で、Wi-Fi通信が可能になる。
【0040】
ところで、画像形成装置1にWi-Fiダイレクトで接続するユーザは、画像形成装置1の印刷機能を使用する可能性が高い傾向にある。
前述したように、前述した実施の形態の技術の採用により、Wi-Fi通信は従前に比して短時間で可能になる。しかし、印刷エンジン16(図1参照)による印刷が可能な状態に復帰するまでの時間は、制御部11(図1参照)の初期化が完了する時間よりも長い。このため、ユーザは、Wi-Fi接続を通じて印刷を指示した後も、印刷エンジン16による印刷の開始を待つ必要が生じる。
【0041】
図8は、実施の形態3で使用する画像形成装置1BのうちWi-Fiダイレクトによる印刷に関連するデバイスの動作状態の遷移を説明する図である。(A)は省電力モードに移行する前のデバイスの動作状態を示し、(B)は省電力モード中のデバイスの動作状態を示し、(C)は省電力モードから復帰した後のデバイスの動作状態を示す。なお、図8には、図2との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0042】
図8には、Wi-Fiダイレクトによる印刷に関連するデバイスとして、印刷エンジン16、エンジン制御CPU113、メインCPU111B、サブCPU112、Wi-Fiモジュール151を示している。ここでのエンジン制御CPU113は、印刷エンジン16の動作を制御するためのCPUであり、PCIケーブル等によりメインCPU111Bや印刷エンジン16と接続されている。
【0043】
また、図8の場合、画像形成装置1BにWi-Fiダイレクトで接続する外部装置としてスマートフォン170を想定する。
言うまでもなく、省電力モードに移行する前の段階では、全てのデバイスが通常モードで動作している。この段階は、図8の(A)に対応する。
操作が無い状態が長く続く場合、メインCPU111Bは、画像形成装置1Bを校正するデバイスを省電力モードに移行させる。
【0044】
図9は、実施の形態3で使用するメインCPU111Bが省電力モードへの移行を判断する場合に実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
まず、メインCPU111Bは、省電力モードへの移行か否かを判定する(ステップ31)。メインCPU111Bは、ステップ31で否定結果が得られている間、ステップ31の判定を繰り返す。
ステップ31で肯定結果が得られた場合、メインCPU111Bは、Wi-Fiダイレクトが起動中か否かを判定する(ステップ32)。
【0045】
ステップ32で肯定結果が得られた場合、メインCPU111Bは、印刷エンジン16を省電力モードの対象から除外し(ステップ33)、その後、省電力モードに移行する(ステップ34)。
一方、ステップ32で否定結果が得られた場合、メインCPU111Bは、ステップ34に直接移行する。この場合は、印刷エンジン16も省電力モードに移行される。
図8の説明に戻る。
本実施の形態の場合、省電力モードに移行する前の画像形成装置1Bは、Wi-Fiダイレクトが起動中である。このため、ステップ32(図9参照)では肯定結果が得られ、印刷エンジン16以外は省電力モードに制御される。この状態を表現したのが、図8の(B)である。
【0046】
この状態で、スマートフォン170からWi-Fiダイレクトによる接続が試みられたとする。この場合、前述した実施の形態で説明した手順により、省電力モードにあったデバイスの復帰動作が進行する。
ところで、本実施の形態の場合、印刷エンジン16は、他のデバイスとは異なり、動作可能な状態に維持されている。このため、本実施の形態における画像形成装置1Bの場合には、メインCPU111B等が省電力モードから復帰すると、印刷エンジン16による印刷が開始される。
結果的に、省電力モードから復帰して印刷が開始されるまでのユーザの待ち時間の短縮が実現される。
【0047】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は前述した実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0048】
例えば前述の実施の形態では、情報処理装置の一例として画像形成装置1(図1参照)等を例示したが、システム全体の動作を制御するCPUとデバイスの動作を制御するCPUとを有する装置構成を採用し、かつ、省電力モードにも対応する装置であれば任意の装置への適用が可能である。
また、前述の実施の形態においては、画像形成装置1等が複数の機能を有する場合について説明したが、特定の機能に特化した装置でもよい。例えば情報処理装置は、単機能装置としての印刷装置やスキャナでもよい。
前述の実施の形態3においては、印刷エンジン16(図8参照)を省電力モードの対象から除外しているが、スキャナ17(図1参照)を省電力モードの対象から除外してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1、1A、1B…画像形成装置、11、11A…制御部、12…記憶部、13…画像処理部、14…操作パネル、15…通信IF、16…印刷エンジン、17…スキャナ、18…バス、111、111A、111B…メインCPU、112、112A…サブCPU、120、120A…初期化制御部、121、121A…初期化機能判断部、122…進捗状況格納部、151…Wi-Fiモジュール、170…スマートフォン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9