(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】吸収性物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20230801BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230801BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
A61F13/494 113
A61F13/15 311Z
A61F13/475 110
(21)【出願番号】P 2019142414
(22)【出願日】2019-08-01
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-268753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0193128(US,A1)
【文献】国際公開第2019/026971(WO,A1)
【文献】実開平5-9525(JP,U)
【文献】特開2005-287792(JP,A)
【文献】特開2002-159531(JP,A)
【文献】特開2015-188542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の股下に装着される吸収性物品であって、
吸収体と、
前記吸収体よりも前記着用者側に配置されており、前記着用者の肌が当接する液透過性の肌面側シートと、
前記肌面側シートから前記着用者側に向けて立体的に形成される立体ギャザーと、
前記立体ギャザーに設けられており、高吸収性重合体であるSAPの粒子を分散状態で保持する担体と、を備え
、
前記担体は、前記立体ギャザーにおいて該立体ギャザーを立ち上げるための収縮力が付与されている部位と前記担体内におけるその他の部位との間で、該担体が保持する単位面積あたりのSAPの粒子の量が異なる、
吸収性物品
【請求項2】
前記担体は、捲縮不織布の嵩厚部分によって形成される、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記担体は、毛羽立ち部分によって形成される、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記担体は、前記立体ギャザーの内部に配置されるテープ状の部材によって形成される、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
着用者の股下に装着される吸収性物品であって、
吸収体と、
前記吸収体よりも前記着用者側に配置されており、前記着用者の肌が当接する液透過性の肌面側シートと、
前記肌面側シートから前記着用者側に向けて立体的に形成される立体ギャザーと、
前記立体ギャザーに設けられており、高吸収性重合体であるSAPの粒子を分散状態で保持する担体と、を備え、
前記担体は、前記立体ギャザーの内部に配置される糸ゴムによって形成される、
吸収性物品。
【請求項6】
前記担体は、SAPの粒子が前記吸収性物品の外部へ流出しない閉鎖空間に配置されている、
請求項1から5の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記担体は、吸水後のSAPの粒子を収容可能な容積を有する空間に配置されている、
請求項1から6の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記立体ギャザーは、前記吸収性物品が前記着用者に着用された状態において、前記担体よりも該吸収性物品の外側に位置する部分が撥水性を有する、
請求項1から7の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記立体ギャザーは、前記吸収性物品が前記着用者に着用された状態において、前記担体よりも該吸収性物品の内側に位置する部分が、少なくとも一部分に親水性または透水性を有する、
請求項1から8の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記立体ギャザーは、前記吸収体が収容されている空間から前記担体を収容している空間へ液体が流通可能な連通部を有する、
請求項1から9の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
着用者の股下に装着される吸収性物品の製造方法であって、
立体ギャザーにおいて該立体ギャザーを立ち上げるための収縮力が付与されている部位と担体内におけるその他の部位との間で、該担体が保持する単位面積あたりの高吸収性重合体であるSAPの粒子の量が異なるように、該SAPの粒子を分散状態で保持させた細長い前記担体をシートに重ねる第1工程と、
細長い前記担体を前記シートで包んで前記立体ギャザーを形成する第2工程と、を有する、
吸収性物品の製造方法。
【請求項12】
着用者の股下に装着される吸収性物品の製造方法であって、
高吸収性重合体であるSAPの粒子を分散状態で保持させた細長い担体
であって、立体ギャザーの内部に配置される糸ゴムによって形成される前記細長い担体をシートに重ねる第1工程と、
前記細長い担体を前記シートで包んで
前記立体ギャザーを形成する第2工程と、を有する、
吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品は、尿や体液等の液体を吸収する吸収体を備えている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸収性物品には、着用者の下肢回りからの漏れを防止するため、立体ギャザーが設けられる。立体ギャザーは、糸ゴムの収縮力で不織布を立ち上げて液体を堰き止める。よって、着用者の下肢と立体ギャザーとの間に隙間が生じると、当該隙間から液体が漏れる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、液体の漏れを可及的に抑制可能な吸収性物品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、SAPの粒子を分散状態で保持する担体を立体ギャザーに設けることにした。
【0007】
詳細には、本発明は、着用者の股下に装着される吸収性物品であって、吸収体と、吸収体よりも着用者側に配置されており、着用者の肌が当接する液透過性の肌面側シートと、肌面側シートから着用者側に向けて立体的に形成される立体ギャザーと、立体ギャザーに設けられており、高吸収性重合体であるSAPの粒子を分散状態で保持する担体と、を備える。
【0008】
なお、担体は、捲縮不織布の嵩厚部分によって形成されるものであってもよい。
【0009】
また、担体は、毛羽立ち部分によって形成されるものであってもよい。
【0010】
また、担体は、立体ギャザーの内部に配置されるテープ状の部材によって形成されるものであってもよい。
【0011】
また、担体は、立体ギャザーの内部に配置される糸ゴムによって形成されるものであってもよい。
【0012】
また、担体は、SAPの粒子が吸収性物品の外部へ流出しない閉鎖空間に配置されていてもよい。
【0013】
また、担体は、吸水後のSAPの粒子を収容可能な容積を有する空間に配置されていてもよい。
【0014】
また、立体ギャザーは、吸収性物品が着用者に着用された状態において、担体よりも該吸収性物品の外側に位置する部分が撥水性を有していてもよい。
【0015】
また、立体ギャザーは、吸収性物品が着用者に着用された状態において、担体よりも該吸収性物品の内側に位置する部分が、少なくとも一部分に親水性または透水性を有していてもよい。
【0016】
また、立体ギャザーは、吸収体が収容されている空間から担体を収容している空間へ液体が流通可能な連通部を有していてもよい。
【0017】
また、担体は、立体ギャザーにおいて該立体ギャザーを立ち上げるための収縮力が付与されている部位とその他の部位との間で、該担体が保持する単位面積あたりのSAPの粒子の量が異なっていてもよい。
【0018】
また、本発明は、製造方法の側面から捉えることもできる。本発明は、例えば、着用者の股下に装着される吸収性物品の製造方法であって、高吸収性重合体であるSAPの粒子を分散状態で保持させた細長い担体をシートに重ねる第1工程と、細長い担体をシートで包んで立体ギャザーを形成する第2工程と、を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、液体の漏れを可及的に抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。
【
図3】
図3は、非装着状態におけるおむつを、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
【
図4】
図4は、股下領域をその幅方向に切断した場合の断面図である。
【
図5】
図5は、立体ギャザーの断面構造を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0022】
<実施形態>
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。本実施形態では、テープ型使い捨ておむつを例示するが、本願で開示する形態は限定されるものでなく、例えば、パンツ型使い捨ておむつであってもよい。
【0023】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。おむつ1は、装着状態において着用者の陰部を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位
置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非着用者側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。よって、おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0024】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の大腿部を取り巻く部位に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される液体は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0025】
図2は、おむつ1の分解斜視図である。また、
図3は、非装着状態におけるおむつ1を、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。おむつ1は、装着状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材であり、おむつ1の外装面を形成する。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する箇所に設けられる。カバーシート4は、後述するバックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4は、単層構造に限らず、インナカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0026】
そして、おむつ1は、カバーシート4の着用者側の面において順に積層されるバックシート5、吸収体6C、トップシート7を有する。バックシート5、吸収体6C、トップシート7は、何れも略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。また、トップシート7は、吸収体6Cの吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6Cに進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。トップシート7は親水性を有していてもよい。
【0027】
バックシート5、吸収体6C、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6Cとトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6Cとトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6Cに覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6Cに接触することになる。
【0028】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる液不透過性のシートである。サイドシート8L,8Rには、おむつ1の立体ギャザー3BL,3BRと同様、着用者の大腿部が位置する箇所に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、サイドシート8L,8Rには糸ゴム8EL,8ERが長手方向に沿って編み込まれている。よって、サイドシート8L,8Rは、おむつ1が装着状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状の形態になると、糸ゴム8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRとなる。
【0029】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための糸ゴム9ERは、吸収体6Cの端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。糸ゴム9ERは、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、糸ゴム9ERの左右両側に設けられるテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、糸ゴム9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。なお、カバーシート4にも、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ糸ゴム4SL,4SRが糸ゴム4Cの長手方向に沿って設けられている。糸ゴム4SL,4SRは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて決定された適宜の本数で適宜の位置に設けられる。
【0030】
吸収体6Cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体6Cでは、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収体6C全体を俯瞰してみると、液体を吸収した吸収体6Cの厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0031】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0032】
図4は、股下領域1Bをその幅方向に切断した場合の断面図である。おむつ1が着用状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状の形態になると、糸ゴム8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられて立体ギャザー3BL,3BRがトップシート7から立ち上がり、液体の流出を防ぐ形態となる。
【0033】
ここで、立体ギャザー3BL,3BRについて詳述する。
図5は、立体ギャザー3BLの断面構造を例示した図である。
図5では、立体ギャザー3BLの断面構造を例示しているが、立体ギャザー3BRも同様である。本実施形態のおむつ1には、立体ギャザー3BL,3BRにSAP粒子9を分散状態で保持する担体Tが設けられている。ここで、分散状態とは、SAP粒子9が離散的に配置されている状態を意図する概念であるが、均等に離散配置されている状態に限定する概念ではない。分散状態とは、SAP粒子9の分布に
多少の偏りがある状態を含む概念である。
【0034】
担体Tとしては、例えば、
図5(A)に示されるように、立体ギャザー3BLを構成するサイドシート8Lの一部について、捲縮不織布の嵩を厚くしておき、この嵩厚部分にSAP粒子9を分散状態で保持させたものが挙げられる。担体Tを構成する当該嵩厚部分は、不織布を形成する際、例えば、繊維に加える圧縮力を弱めることにより形成できる。そして、立体ギャザー3BLを形成する際、この嵩厚部分にSAP粒子9を散布しながらサイドシート8Lで包むことにより、捲縮不織布の嵩厚部分にSAP粒子9を分散状態で保持させた担体Tを形成することができる。
【0035】
また、担体Tとしては、例えば、
図5(B)に示されるように、立体ギャザー3BLを構成するサイドシート8Lの一部を毛羽立たせておき、この毛羽立ち部分にSAP粒子9を分散状態で保持させたものが挙げられる。担体Tを構成する毛羽立ち部分は、例えば、金属板の表面に目立てによって多数の刃を付けた器具で不織布の表面を擦ることにより形成できる。そして、立体ギャザー3BLを形成する際、この毛羽立ち部分にSAP粒子9を散布しながらサイドシート8Lで包むことにより、不織布の毛羽立ち部分にSAP粒子9を分散状態で保持させた担体Tを形成することができる。
【0036】
また、担体Tとしては、例えば、
図5(C)に示されるように、立体ギャザー3BLを構成するサイドシート8Lの内部に設けた細長いシート状のものが挙げられる。このようなシート状の担体Tであれば、表面にSAP粒子9を分散状態で保持させることができる。SAP粒子9を表面に保持した担体Tは、例えば、接着剤を塗布したシートにSAP粒子9を散布することにより形成できる。そして、立体ギャザー3BLを形成する際、SAP粒子9を表面に保持した担体Tをサイドシート8Lに重ねてからサイドシート8Lで包むことにより、SAP粒子9を保持した担体Tを内部に設けた立体ギャザー3BLを形成することができる。立体ギャザー3BLは、
図5(D)に示すように、SAP粒子9が糸ゴム8ELに接触する状態で担体Tを内部に設けたものであってもよいし、
図5(E)に示すように、SAP粒子9を両面に設けた担体Tを内部に設けたものであってもよい。
【0037】
また、担体Tとしては、例えば、
図5(F)に示されるように、立体ギャザー3BLを構成するサイドシート8Lのほぼ全域を毛羽立たせておき、担体Tを構成する当該毛羽立ち部分にSAP粒子9を分散状態で保持させたものが挙げられる。このような立体ギャザー3BLであれば、立体ギャザー3BLの内部全域が不織布の毛羽立ち部分となるので、分散状態で保持されたSAP粒子9が立体ギャザー3BL内を移動して特定の箇所に片寄る可能性を可及的に抑制することができる。
【0038】
また、担体Tとしては、例えば、
図5(G)に示されるように、糸ゴム8ELを代用したものが挙げられる。糸ゴム8ELは、糸状の細長いゴムであるため、表面にSAP粒子9を分散状態で保持させることができる。SAP粒子9を表面に保持した糸ゴム8EL(担体T)は、例えば、接着剤を塗布した糸ゴムにSAP粒子9を塗布してからサイドシート8Lに接着することにより形成できる。そして、立体ギャザー3BLを形成する際、SAP粒子9を表面に保持した糸ゴム8EL(担体T)をサイドシート8Lに重ねてからサイドシート8Lで包むことにより、SAP粒子9を保持した糸ゴム8EL(担体T)を内部に設けた立体ギャザー3BLを形成することができる。SAP粒子9を糸ゴムに塗布する際は、当該糸ゴムを伸長させた状態であってもよいし、或いは、当該糸ゴムを収縮させた状態であってもよい。糸ゴムを伸長させた状態でSAP粒子9を塗布すれば、糸ゴムを収縮させた状態でSAP粒子9を塗布する場合に比べてSAP粒子9を高密度で糸ゴムに保持させることができる。
【0039】
なお、SAP粒子9を保持した糸ゴム8EL(担体T)の本数は、例えば、
図5(H)
に示されるように、立体ギャザー3BLに要求されるSAP粒子9の吸水能力に応じて適宜変更してもよい。また、SAP粒子9を保持した糸ゴム8EL(担体T)は、例えば、
図5(I)に示されるように、サイドシート8Lに両側から接着されていてもよい。
【0040】
このような担体Tを立体ギャザー3BL,3BRに有するおむつ1であれば、着用者の下肢回りからの漏れを防止する立体ギャザー3BL,3BRに吸水能力が付与されるので、着用者の下肢回りからの漏れを可及的に抑制することができる。
【0041】
また、立体ギャザー3BL,3BRの担体Tに保持されているSAP粒子9が吸水によって膨潤状態になると、着用者の下肢回りに接触する立体ギャザー3BL,3BR自体の嵩が大きくなるため、立体ギャザー3BL,3BRと着用者の下肢との密着性が高まる。立体ギャザー3BL,3BRと着用者の下肢との密着性が高まると、立体ギャザー3BL,3BRと着用者の下肢との間に隙間が生じにくくなるため、当該隙間から液体が漏れる可能性が可及的に抑制される。
【0042】
また、SAP粒子9を保持する担体Tは、立体ギャザー3BL,3BRを形成するサイドシート8L,8Rに包まれているため、粒子状のSAP粒子9が着用者の肌に対して接触感を殆ど与えない。特に、
図5(A)に示されるような捲縮不織布の嵩厚部分にSAP粒子9を保持させる形態や、
図5(B)(F)に示されるような毛羽立ち部分にSAP粒子9を保持させる形態の場合、SAP粒子9が嵩厚部分や毛羽立ち部分の中にあるため、粒子状のSAP粒子9が着用者の肌に対して与える接触感を可及的に抑制することができる。また、嵩厚部分や毛羽立ち部分は、繊維同士の間に多くの隙間があるために保液性を有する。よって、嵩厚部分や毛羽立ち部分は、SAP粒子9が水分の吸収を行っている間、当該水分を一時的に保持する機能を果たすこともできる。
【0043】
また、例えば、
図5(C)~(E)及び
図5(G)~(I)に示されるような、SAP粒子9を細長いシート状の担体Tまたは
糸ゴム8ELに保持させる形態の場合、SAP粒子9を散布する工程とサイドシート8L,8Rで包む工程とを別々にすることができるため、SAP粒子9を立体ギャザー3BL,3BRの内部に容易に配置することができる。
【0044】
なお、担体Tは、SAP粒子9をおむつ1の長手方向に沿って一様に分散状態で保持させたものに限定されない。担体Tは、例えば、SAP粒子9を股下領域1Bの部分に重点的に配置したものであってもよいし、或いは、その他の部分に重点的に配置したものであってもよい。
【0045】
例えば、立体ギャザー3BL,3BRを立ち上げるための糸ゴム8EL,8ERは、立体ギャザー3BL,3BRの長手方向において該立体ギャザー3BL,3BRの中央部付近に設けられている。このため、担体Tに保持させる単位面積あたりのSAP粒子9の量を、例えば、糸ゴム8EL,8ER付近について他の部分より多くすれば、糸ゴム8EL,8ERが設けられている部分における立体ギャザー3BL,3BRの肌への密着性がSAP粒子9の水分吸収による膨潤で向上する。また、当該他の部分の単位面積あたりのSAP粒子9の量が少ない又はゼロであれば、当該他の部分において膨潤したSAP粒子9の重みによる立体ギャザー3BL,3BRの立ち上がり力の低下を抑制できる。
【0046】
また、担体Tに保持させる単位面積あたりのSAP粒子9の量を、例えば、糸ゴム8EL,8ER付近について他の部分より少なくする又はゼロにすれば、糸ゴム8EL,8ERが設けられている部分において、膨潤したSAP粒子9の重みによる立体ギャザー3BL,3BRの立ち上がり力の低下が抑制されるので、糸ゴム8EL,8ERによる立体ギャザー3BL,3BRの立ち上がり力が十分に発揮され、当該部分における肌への密着性が維持される。また、立体ギャザー3BL,3BRのうち糸ゴム8EL,8ERが設けら
れていない部位においては、担体Tに保持されているSAP粒子9の膨潤により、立体ギャザー3BL,3BRの肌への密着性がSAP粒子9の水分吸収による膨潤で向上する。
【0047】
ところで、SAP粒子9を保持する担体Tは、SAP粒子9がおむつ1の外部へ流出しない閉鎖空間であることが好ましい。立体ギャザー3BL,3BRには糸ゴム8EL,8ERが設けられているが、当該糸ゴム8EL,8ERは立体ギャザー3BL,3BRの長手方向の中央部分のみに設けられている。このため、当該糸ゴム8EL,8ERが設けられていない部分では、立体ギャザー3BL,3BRを構成するサイドシート8L,8Rに、糸ゴム8EL,8ERを溶着するための接着剤が塗布されていない。このため、このような接着剤の非塗布部分を通じて担体TのSAP粒子9がおむつ1の外部へ流出するのを防ぐ必要がある。そこで、サイドシート8L,8Rによって形成される担体Tの収納空間に開口部分が生じないよう、例えば、サイドシート8L,8R同士またはサイドシート8L,8Rと他のシートとを互いに接合する。これにより、このような閉鎖空間を実現することができる。
【0048】
なお、担体Tが収容されている空間は、吸収体6Cが配置されている空間と連通していてもよい。この場合、担体Tに保持されているSAP粒子9は、吸収体6Cから流れる液体で膨潤することが可能となる。
【0049】
また、SAP粒子9を保持する担体Tが収容されている空間は、吸水後のSAP粒子9を収容可能な容積を有することが好ましい。この容積は、担体Tに保持されている吸水前のSAP粒子9全量の体積に、当該SAP粒子9が吸水した場合の体積の増加率を乗算することにより算出できる。
【0050】
また、担体Tに保持されているSAP粒子9の吸水力を効果的に発揮させるべく、立体ギャザー3BL,3BRは、おむつ1が着用者に着用された状態において、担体Tよりもおむつ1の外側に位置する部分が撥水性を有していてもよい。このような部分に撥水性があれば、立体ギャザー3BL,3BRの部分に触れた水分が担体TのSAP粒子9に吸収されるまでの間、ギャザー3BL,3BRからおむつ1の外側への流出が抑制される。また、担体Tに保持されているSAP粒子9の吸水力を効果的に発揮させるべく、立体ギャザー3BL,3BRは、おむつ1が着用者に着用された状態において、担体Tよりもおむつ1の内側に位置する部分の少なくとも一部が親水性または透水性を有していてもよい。このような部分に親水性または透水性があれば、立体ギャザー3BL,3BRの部分に触れた水分が当該親水性または透水性の部分を通って担体TのSAP粒子9へ速やかに吸収される。
【符号の説明】
【0051】
1・・おむつ
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2F・・フロントパッチ
2FT・・通気孔
2L,2R・・テープ
3BL,3BR・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
4・・カバーシート
4KL,4KR・・括れ
5・・バックシート
6C・・吸収体
7・・トップシート
8L,8R・・サイドシート
8KL,8KR・・括れ
4C,4SL,4SR,8EL,8ER,9ER・・糸ゴム
9・・SAP粒子
T・・担体