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特許7322625導電性ロール、導電性ロールの製造方法、転写装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
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  • 特許-導電性ロール、導電性ロールの製造方法、転写装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】導電性ロール、導電性ロールの製造方法、転写装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20230801BHJP
   G03G 21/18 20060101ALI20230801BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20230801BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G03G15/00 551
G03G21/18
G03G15/16 103
F16C13/00 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019169713
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021047294
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】六反 実
(72)【発明者】
【氏名】新宮 剣太
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-071996(JP,A)
【文献】特開平08-054774(JP,A)
【文献】特開平08-160710(JP,A)
【文献】特開2017-058642(JP,A)
【文献】特開2018-132659(JP,A)
【文献】特開2011-240587(JP,A)
【文献】特開平08-286501(JP,A)
【文献】特開2016-099516(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0231907(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/18
G03G 15/16
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、前記支持部材上に配置された導電性発泡弾性層と、を備え、
前記導電性発泡弾性層が最外層であり、
前記導電性発泡弾性層の外周面の軸方向の凹凸波形を高速フーリエ変換して得た周期(μm)と振幅(μm)のスペクトルにおいて周期100μm以上300μm以下の範囲の振幅の積算値Stが455μm以下である、
転写ロール。
【請求項2】
前記積算値Stが410μm以下である、請求項1に記載の転写ロール。
【請求項3】
支持部材と、前記支持部材上に配置された導電性発泡弾性層と、を備え、
前記導電性発泡弾性層が最外層であり、
前記導電性発泡弾性層の外周面の軸方向の凹凸波形を高速フーリエ変換して得た周期(μm)と振幅(μm)のスペクトルにおいて周期300μmの振幅A300が3.6μm以下である、
転写ロール。
【請求項4】
前記振幅A300が3.0μm以下である、請求項3に記載の転写ロール。
【請求項5】
前記導電性発泡弾性層の外周面の軸方向の凹凸波形を高速フーリエ変換して得た周期(μm)と振幅(μm)のスペクトルにおいて周期300μmの振幅A300と周期100μmの振幅A100との比A300/A100が1以上3以下である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の転写ロール。
【請求項6】
前記比A300/A100が1以上2.5以下である、請求項5に記載の転写ロール。
【請求項7】
前記導電性発泡弾性層の発泡セル径が30μm以上300μm以下である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の転写ロール。
【請求項8】
請求項1に記載の転写ロールの製造方法であって、
支持部材上に配置された導電性発泡弾性層の外周面を研磨する研磨工程、及び
前記研磨工程による研磨後の前記導電性発泡弾性層の外周面を加熱ロールと回転接触させる表面熱処理工程、を含
前記研磨工程及び前記表面熱処理工程によって、前記導電性発泡弾性層の外周面における周期100μm以上300μm以下の範囲の凹凸成分の振幅を抑え、前記積算値Stを455μm以下とする、
転写ロールの製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載の転写ロールの製造方法であって、
支持部材上に配置された導電性発泡弾性層の外周面を研磨する研磨工程、及び
前記研磨工程による研磨後の前記導電性発泡弾性層の外周面を加熱ロールと回転接触させる表面熱処理工程、を含
前記研磨工程及び前記表面熱処理工程によって、前記導電性発泡弾性層の外周面における周期100μm以上300μm以下の範囲の凹凸成分の振幅を抑え、前記振幅A300を3.6μm以下とする、
転写ロールの製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の転写ロールを備える転写装置。
【請求項11】
像保持体と請求項10に記載の転写装置とを備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項12】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の転写ロールを備え、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ロール、導電性ロールの製造方法、転写装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一周方向に傾いた小さなケバ立ち状の凹凸を有し、凹凸の高さが0.1~30μmで、周方向に沿った凸部間の平均間隔が1~200μmであり、凹凸によりローラ表面に軸方向に沿った波すじが形成され、ローラ表面の周方向に沿ったJIS10点平均粗さRzが5~20μmで、軸方向に沿ったJIS10点平均粗さRzが3~15μmで、かつ周方向に沿った平均粗さRzが軸方向に沿った平均粗さRzよりも大きい現像ローラが開示されている。
特許文献2には、表面がエーテル系ウレタンフォームを含む高分子発泡材料である現像剤供給ローラであって、表面の面粗度が40μm以上140μm以下である現像剤供給ローラが開示されている。ここに面粗度は、測定長さ40mm、測定間隔1mm、測定点数40点とし、全測定点の基準線からの変位の標準偏差である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2959445号公報
【文献】特許第6364333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、最外層が導電性発泡弾性層であり、導電性発泡弾性層の外周面の軸方向の凹凸波形を高速フーリエ変換して得た周期(μm)と振幅(μm)のスペクトルにおいて周期100μm以上300μm以下の範囲の振幅の積算値Stが455μm超である又は周期300μmの振幅A300が3.6μm超である導電性ロールに比べて、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくい導電性ロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0006】
<1> 支持部材と、前記支持部材上に配置された導電性発泡弾性層と、を備え、前記導電性発泡弾性層の外周面の軸方向の凹凸波形を高速フーリエ変換して得た周期(μm)と振幅(μm)のスペクトルにおいて周期100μm以上300μm以下の範囲の振幅の積算値Stが455μm以下である、導電性ロール。
<2> 前記積算値Stが410μm以下である、<1>に記載の導電性ロール。
<3> 支持部材と、前記支持部材上に配置された導電性発泡弾性層と、を備え、前記導電性発泡弾性層の外周面の軸方向の凹凸波形を高速フーリエ変換して得た周期(μm)と振幅(μm)のスペクトルにおいて周期300μmの振幅A300が3.6μm以下である、導電性ロール。
<4> 前記振幅A300が3.0μm以下である、<3>に記載の導電性ロール。
<5> 前記導電性発泡弾性層の外周面の軸方向の凹凸波形を高速フーリエ変換して得た周期(μm)と振幅(μm)のスペクトルにおいて周期300μmの振幅A300と周期100μmの振幅A100との比A300/A100が1以上3以下である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の導電性ロール。
<6> 前記比A300/A100が1以上2.5以下である、<5>に記載の導電性ロール。
<7> 支持部材上に配置された導電性発泡弾性層の外周面を研磨すること、及び研磨後の前記導電性発泡弾性層の外周面を加熱ロールと回転接触させること、を含む、<1>~<6>のいずれか1項に記載の導電性ロールの製造方法。
<8> <1>~<6>のいずれか1項に記載の導電性ロールを備える転写装置。
<9> 像保持体と<8>に記載の転写装置とを備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<10> 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
<1>~<6>のいずれか1項に記載の導電性ロールを備え、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
<1>に係る発明によれば、最外層が導電性発泡弾性層であり積算値Stが455μm超である導電性ロールに比べて、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくい導電性ロールが提供される。
<2>に係る発明によれば、最外層が導電性発泡弾性層であり積算値Stが410μm超である導電性ロールに比べて、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくい導電性ロールが提供される。
<3>に係る発明によれば、最外層が導電性発泡弾性層であり振幅A300が3.6μm超である導電性ロールに比べて、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくい導電性ロールが提供される。
<4>に係る発明によれば、最外層が導電性発泡弾性層であり振幅A300が3.0μm超である導電性ロールに比べて、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくい導電性ロールが提供される。
<5>に係る発明によれば、最外層が導電性発泡弾性層であり前記比A300/A100が3超である導電性ロールに比べて、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくい導電性ロールが提供される。
<6>に係る発明によれば、最外層が導電性発泡弾性層であり前記比A300/A100が2.5超である導電性ロールに比べて、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくい導電性ロールが提供される。
<7>に係る発明によれば、研磨後の導電性発泡弾性層の外周面を加熱ロールと回転接触させることを含まない場合に比べて、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくい導電性ロールを製造する製造方法が提供される。
<8>に係る発明によれば、導電性ロールの最外層が導電性発泡弾性層であり積算値Stが455μm超である場合又は振幅A300が3.6μm超である場合に比べて、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくい転写装置が提供される。
<9>に係る発明によれば、導電性ロールの最外層が導電性発泡弾性層であり積算値Stが455μm超である場合又は振幅A300が3.6μm超である場合に比べて、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくいプロセスカートリッジが提供される。
<10>に係る発明によれば、導電性ロールの最外層が導電性発泡弾性層であり積算値Stが455μm超である場合又は振幅A300が3.6μm超である場合に比べて、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくい画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る導電性ロールの一例を示す概略斜視図である。
図2】本実施形態に係る導電性ロールの一例を示す概略断面図であり、図1のA-A断面図である。
図3】本実施形態に係る導電性ロールが有する導電性発泡弾性層の外周面の凹凸波形の一例である。
図4】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図5】本実施形態に係る画像形成装置の別の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0010】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0011】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0014】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0016】
<導電性ロール>
本実施形態に係る導電性ロールは、電子写真方式の画像形成装置の、転写ロール、現像ロール、帯電ロール、像保持体クリーニングロール等に好適に使用される。ただし、本実施形態に係る導電性ロールの用途は、上記に限られるものではない。
【0017】
本実施形態に係る導電性ロールを、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る導電性ロールの一例を示す概略斜視図である。図2は、図1のA-A断面図であり、図1に図示する導電性ロールを径方向に切断した断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、導電性ロール111は、中空又は非中空の円柱状の支持部材112と、支持部材112の外周面に配置された導電性発泡弾性層113とを有するロール部材である。導電性発泡弾性層113は、導電性ロール111の最外層である。
本実施形態に係る導電性ロールは、図1及び図2に示す構成に限られず、例えば、支持部材112と導電性発泡弾性層113との間に中間層を有していてもよい。
【0019】
図3は、導電性発泡弾性層113の外周面の凹凸波形の一例である。
図3(a)は、導電性発泡弾性層113の外周面の輪郭を撮影した写真である。図3(a)の写真は、光学式のマイクロスコープ(例えば、キーエンス社、VHX-5000)を用いて1ピクセルあたりの解像度が2μm以下となる撮影条件にて、導電性ロール111の軸方向に直交する側方から、且つ、外周面の輪郭の高さから撮影する。
図3(b)は、図3(a)の写真をもとに描いた凹凸波形である。図3(b)の凹凸波形から軸方向に長さ1mmの区間を取り、2次元離散フーリエ変換(two-dimensional discrete Fourier transform,2D-DFT)を高速フーリエ変換(fast Fourier transform,FFT)で行い、周期(μm)と振幅(μm)のスペクトルを得る。
図3(c)は、図3(b)の凹凸波形をFFTして得たスペクトルである。図3(c)のスペクトルは、横軸に周期をとり、縦軸に振幅をとり、横軸の目盛を常用対数で示している。
FFTの計算結果から周期100μm以上300μm以下の範囲の振幅(μm)の積算値(μm)を求める。積算値は、離散化した1μmごとの振幅(μm)の足し算である。この積算値を少なくとも20か所(例えば、軸方向に5か所且つ周方向に4か所(90°刻み))において求め、少なくとも20か所の平均値を算出し、この平均値を積算値Stとする。
【0020】
図3(c)のスペクトルから、周期300μmの振幅及び周期100μmの振幅が求められる。先述と同様に、少なくとも20か所について周期300μmの振幅及び周期100μmの振幅を求め、少なくとも20か所の平均値を算出し、この平均値を周期300μmの振幅A300及び周期100μmの振幅A100とする。
【0021】
電子写真方式の画像形成装置に搭載された導電性ロール111には、画像形成が行われる際に電圧が印加されるところ、導電性ロール111に電圧が印加されたときに、導電性ロール111と当該ロールの対向部材との間に異常な放電が発生することがあった。例えば導電性ロール111が転写ロールである場合は、異常放電により対向部材上のトナーの逆帯電が起こり、その結果、トナーの転写不良又はトナーの飛散が起こり、画像に濃度ムラが発生することがあった。これに対して、導電性ロール111の導電性発泡弾性層113に係る積算値Stが455μm以下であると、電圧が印加された際に対向部材との間に異常放電を起こしにくい。その機序として、次のことが推測される。
【0022】
導電性ロール111の最外層である導電性発泡弾性層113の外周面には一般的に研磨加工が施されており、導電性発泡弾性層113の外周面の輪郭は複雑な凹凸波形を成している。当該凹凸波形には、研磨加工に由来する凹凸成分、導電性発泡弾性層113の発泡セルに由来する凹凸成分、導電性発泡弾性層113に分散して含まれる粒子に由来する凹凸成分など様々な周期の凹凸成分が混在していると推測される。
本発明者らが上記凹凸波形を高速フーリエ変換して検討したところ、周期100μm以上300μm以下の範囲の凹凸成分の振幅を低く抑えることで、導電性ロール111と当該ロールの対向部材との間の異常放電発生を抑制できることが分かった。周期100μm以上300μm以下の凸部に電界が集中しやすく、当該凸部が放電の起点になり、対向部材との間に異常放電が発生するものと推測される。
本発明者らがさらに検討したところ、導電性発泡弾性層113に係る積算値Stが455μm以下であると、導電性ロール111と当該ロールの対向部材との間に異常な放電が発生しにくいことが分かった。例えば導電性ロール111が転写ロールである場合は、積算値Stが455μm以下であると、画像の濃度ムラの発生が抑制された。
【0023】
導電性ロール111と当該ロールの対向部材との間の異常放電を抑制する観点から、積算値Stは小さいほど好ましく、410μm以下がより好ましく、380μm以下が更に好ましく、350μm以下が更に好ましく、320μm以下が更に好ましい。
ただし、発泡セルが存在する導電性発泡弾性層113の外周面において数百マイクロメートル級の凹凸成分を完全に無くすことは困難であるので、積算値Stの下限は、例えば、100μm以上、150μm以上、又は200μm以上である。
【0024】
積算値Stは、周期300μmの振幅A300との相関が強い。振幅A300が大きいほど積算値Stが大きい傾向がある。周期300μmの振幅A300は、3.6μm以下が好ましく、3.0μm以下がより好ましく、2.5μm以下が更に好ましく、2.0μm以下が更に好ましい。周期300μmの振幅A300の下限は、特に制限されないが、例えば、1.5μm以上である。
【0025】
周期300μmの振幅A300及び周期100μmの振幅A100は、導電性ロール111と当該ロールの対向部材との間の異常放電を抑制する観点から、下記の特性を有することが好ましい。
【0026】
周期300μmの振幅A300と周期100μmの振幅A100とは、1≦A300/A100≦3の関係を満足することが好ましく、1≦A300/A100≦2.5の関係を満足することがより好ましく、1≦A300/A100≦2の関係を満足することが更に好ましい。
【0027】
周期100μmの振幅A100は、2μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましく、1.2μm以下が更に好ましい。周期100μmの振幅A100の下限は、特に制限されないが、例えば、0.8μm以上である。
【0028】
以下、本実施形態に係る導電性ロールを構成する各層の材料などを説明する。
【0029】
[支持部材]
支持部材は、導電性ロール画像形成装置に搭載する際の支持部材として機能し、画像形成を行う際の電極として機能する。支持部材は、中空部材であってもよいし、中実部材であってもよい。
【0030】
支持部材は、導電性部材であり、例えば、鉄(快削鋼等)、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属部材;外側の面にメッキ処理を施した、樹脂部材又はセラミックス部材;導電剤を含有する、樹脂部材又はセラミックス部材;が挙げられる。
【0031】
[導電性発泡弾性層]
導電性発泡弾性層は、ゴム材料(弾性材料)を含有する発泡体であり、導電剤又はその他の添加剤を含有してもよい。
【0032】
ゴム材料(弾性材料)としては、例えば、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル三元共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム等、及びこれらを混合したゴムが挙げられる。
【0033】
弾性層を発泡性にするための発泡剤としては、水;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド等のベンゼンスルホニルヒドラジド類;熱分解により炭酸ガスを発生する炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩;窒素ガスを発生するNaNOとNHClの混合物;酸素を発生する過酸化物;などが挙げられる。必要に応じて発泡助剤、整泡剤、触媒などを使用してもよい。
【0034】
導電剤は、ゴム材料の導電性が低い場合やゴム材料が導電性を有しない場合に用いる。導電剤としては、電子導電剤とイオン導電剤とが挙げられる。
【0035】
電子導電剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の金属又は合金;酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫-酸化アンチモン固溶体、酸化錫-酸化インジウム固溶体等の導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理した物質;などの粉末が挙げられる。電子導電剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
中でも電子導電剤はカーボンブラックが好ましく、電子導電剤の平均一次粒径は、10nm以上150nm以下が好ましく、20nm以上100nm以下がより好ましく、30nm以上80nm以下が更に好ましい。
【0037】
カーボンブラックの含有量は、ゴム材料100質量部に対して、1質量部以上60質量部以下が好ましく、10質量部以上40質量部以下がより好ましい。
【0038】
イオン導電剤としては、例えば、四級アンモニウム塩(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム又は変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、臭化ベンジル塩又は塩化ベンジル塩)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。イオン導電剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
イオン導電剤の含有量は、ゴム材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下がより好ましい。
【0040】
その他の添加剤としては、例えば、発泡剤、発泡助剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤、充填剤(シリカ、炭酸カルシウム等)などの、弾性層に添加され得る公知の材料が挙げられる。
【0041】
導電性発泡弾性層の厚さは、例えば1mm以上20mm以下であり、好ましくは2mm以上15mm以下である。
【0042】
導電性発泡弾性層のAsker-C硬度計で測定した硬さは、荷重1kgfで20°以上70°以下が好ましく、30°以上60°以下がより好ましい。
【0043】
<導電性ロールの製造方法>
本実施形態に係る導電性ロールは、支持部材上に導電性発泡弾性層を配置することで得られる。支持部材上に導電性発泡弾性層を配置する方法は、特に限定されないが、例えば、円筒形状の導電性発泡弾性体を用意し、円筒形状の導電性発泡弾性体に支持部材を挿入する方法が挙げられる。導電性ロールの外径寸法は、例えば、支持部材上に配置された導電性発泡弾性層の外周面を研磨することによって調整する。
【0044】
本実施形態に係る導電性ロールの製造方法は、支持部材上に配置された導電性発泡弾性層の外周面を研磨すること(「研磨工程」という。)と、研磨後の導電性発泡弾性層の外周面を加熱ロールと回転接触させること(「表面熱処理工程」という。)と、を含むことが望ましい。研磨工程の際に導電性発泡弾性層の外周面に形成された凸部が表面熱処理工程によって均され、導電性発泡弾性層の外周面における周期100μm以上300μm以下の範囲の凹凸成分の振幅が抑えられる。
表面熱処理工程は、例えば、熱した金属ロールを研磨後の導電性発泡弾性層の外周面に押し付け、支持部材及び導電性発泡弾性層と金属ロールとを回転させることによって実施される。
【0045】
導電性発泡弾性層の外周面における周期100μm以上300μm以下の範囲の凹凸成分の振幅及び積算値Stは、導電性発泡弾性層の発泡セルの大きさ、導電性発泡弾性層の外周面の研磨工程又は表面熱処理工程により制御することができる。
【0046】
積算値Stは、導電性発泡弾性層の発泡セル径が小さいほど小さくなる傾向がある。ただし、導電性ロールを転写ロールに適用した場合、転写ロール外周面の発泡セル径が小さいと記録媒体の裏面(転写ロールが当たる側の面)に汚れが発生することがあるので、転写ロール外周面の発泡セル径はある程度大きい方がよい。この現象は、像保持体又は中間転写体に残存したトナーが転写ロールに移行することがあるところ、転写ロール外周面の発泡セル径がある程度大きいと開口している発泡セルにトナーが収容されるので、次に画像形成される記録媒体裏面へのトナー付着が抑制されることによるものと推測される。
上記の観点から、導電性発泡弾性層の発泡セル径は、30μm以上300μm以下が好ましく、40μm以上280μm以下がより好ましく、50μm以上250μm以下が更に好ましい。
導電性発泡弾性層の発泡セル径は、導電性発泡弾性層のベースコンパウンドに含まれる発泡剤の含有量、及び/又は、導電性発泡弾性層を加硫成形する温度及び時間により制御することができる。
【0047】
導電性発泡弾性層の発泡セル径の測定方法は下記のとおりである。
導電性発泡弾性層の厚さ方向の断面を、剃刀を用いて作製する。断面は、軸方向に平行に且つ周方向に90°刻みで、合計4つ作製する。断面の軸方向中央部をレーザ顕微鏡(キーエンス社、VK-X200)で撮影し画像を取得する。画像を画像解析ソフト(メディアサイバネティクス社、Image-Pro Plus)で解析し、深さ50μmから2050μmまでの2000μm間に在る100個の発泡セルを無作為に選んで長径を測定し、100個の平均を算出し、さらに4断面の平均を算出し、この平均値を発泡セル径とする。
【0048】
積算値Stは、研磨工程に用いる砥石の表面粗さが細かいほど小さくなり、砥石の回転数が速いほど小さくなり、工作物の回転数が速いほど小さくなり、トラバース速度が遅いほど小さくなる傾向がある。
砥石としては、例えば、表面に剣山状の突起を有する円筒状の金属砥石が挙げられ、突起は、円錐、又は、三角錐、四角錐等の多角錐の形状であることが好ましく、突起の高さが同じであることが好ましい。
上記の砥石を使用する場合、砥石の回転数は5000rpm以上が好ましく、工作物の回転数は1000rpm以上が好ましく、トラバース速度は500mm/min以上2500以下mm/minが好ましい。rpmは、revolutions per minuteの略である。
【0049】
積算値Stは、表面熱処理工程の温度が高いほど小さくなる傾向がある。ただし、表面熱処理工程の温度が高過ぎると記録媒体の導電性発泡弾性層の外周面が溶融し硬化したときに表面硬度が上昇してしまうので、高過ぎないことが好ましい。
上記の観点から、表面熱処理工程に用いる加熱ロールの温度は、80℃以上180℃以下が好ましく、100℃以上180℃未満がより好ましく、120℃以上180℃未満が更に好ましい。
加熱ロールの回転数は2rpm以上60rpm以下が好ましく、工作物の回転数は2rpm以上60rpm以下が好ましい。
【0050】
<画像形成装置、転写装置、プロセスカートリッジ>
図4は、本実施形態に係る画像形成装置の一例である、直接転写方式の画像形成装置を示す概略構成図である。
【0051】
図4に示す画像形成装置200は、感光体207(像保持体の一例)と、感光体207の表面を帯電させる帯電ロール208(帯電手段の一例)と、帯電した感光体207の表面に静電荷像を形成する露光装置206(静電荷像形成手段の一例)と、トナーを含む現像剤により、感光体207の表面に形成された静電荷像をトナー像として現像する現像装置211(現像手段の一例)と、感光体207の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写ロール212(転写手段の一例、本実施形態に係る転写装置の一例)と、を備える。転写ロール212として、本実施形態に係る導電性ロールが適用される。
【0052】
図4に示す画像形成装置200は、さらに、感光体207の表面に残留したトナーを除去するクリーニング装置213と、感光体207の表面を除電する除電装置214と、トナー像を記録媒体に定着させる定着装置215(定着手段の一例)と、を備える。
【0053】
帯電ロール208は、接触帯電方式でもよく非接触帯電方式でもよい。帯電ロール208には電源209から電圧が印加される。
【0054】
露光装置206としては、半導体レーザ、LED(light emitting diode)等の光源を備える光学装置が挙げられる。
【0055】
現像装置211は、トナーを感光体207に供給する装置である。現像装置211は、例えば、ロール状の現像剤保持体を感光体207に接触又は近接させて、感光体207上の静電荷像にトナーを付着させてトナー像を形成する。
【0056】
転写ロール212は、記録媒体の表面に直に接する転写ロールであり、感光体207に対向した位置に配置されている。記録紙500(記録媒体の一例)が供給機構を介して転写ロール212と感光体207とが接触した隙間に供給される。転写バイアスが転写ロール212に印加されると、感光体207から記録紙500に向う静電気力がトナー像に作用し、感光体207上のトナー像が記録紙500上に転写される。
【0057】
定着装置215としては、例えば、加熱ロールと、該加熱ロールに押圧する加圧ロールとを備える加熱定着装置が挙げられる。
【0058】
クリーニング装置213としては、クリーニング部材としてブレード、ブラシ、ロール等を備える装置が挙げられる。
【0059】
除電装置214は、例えば、転写後の感光体207の表面に光を照射して、感光体207の残留電位を除電する装置である。
【0060】
感光体207と転写ロール212とは、例えば一つの筐体により一体化され、画像形成装置に着脱するカートリッジ構造(本実施形態に係るプロセスカートリッジ)であってもよい。当該カートリッジ構造(本実施形態に係るプロセスカートリッジ)には、帯電ロール208、露光装置206、現像装置211及びクリーニング装置213からなる群から選択される少なくとも1つがさらに含まれていてもよい。
【0061】
画像形成装置は、感光体207、帯電ロール208、露光装置206、現像装置211、転写ロール212及びクリーニング装置213を1つの画像形成ユニットとし、この画像形成ユニットが複数個並んで搭載されたタンデム方式の画像形成装置であってもよい。
【0062】
図5は、本実施形態に係る画像形成装置の一例である、中間転写方式の画像形成装置を示す概略構成図である。図5に示す画像形成装置は、4つの画像形成ユニットを並列配置したタンデム方式の画像形成装置である。
【0063】
図5に示す画像形成装置において、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段は、中間転写体と一次転写手段と二次転写手段とを備える転写ユニット(本実施形態に係る転写装置の一例)として構成される。転写ユニットは、画像形成装置に着脱するカートリッジ構造であってもよい。
【0064】
図5に示す画像形成装置は、感光体1(像保持体の一例)と、感光体1の表面を帯電させる帯電ロール2(帯電手段の一例)と、帯電した感光体1の表面に静電荷像を形成する露光装置3(静電荷像形成手段の一例)と、トナーを含む現像剤により、感光体1の表面に形成された静電荷像をトナー像として現像する現像装置4(現像手段の一例)と、中間転写ベルト20(中間転写体の一例)と、感光体1の表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト20の表面に転写する一次転写ロール5(一次転写手段の一例)と、中間転写ベルト20の表面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に転写する二次転写ロール26(二次転写手段の一例)と、を備える。一次転写ロール5及び二次転写ロール26の少なくとも一方に、本実施形態に係る導電性ロールが適用される。
【0065】
図5に示す画像形成装置は、さらに、トナー像を記録媒体に定着させる定着装置28(定着手段の一例)と、感光体1の表面に残留したトナーを除去する感光体クリーニング装置6と、中間転写ベルト20の表面に残留したトナーを除去する中間転写ベルトクリーニング装置30と、を備える。
【0066】
図5に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備えている。これらの画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に離間して並設されている。画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kはそれぞれ、画像形成装置に対して着脱されるプロセスカートリッジであってもよい。
【0067】
各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各画像形成ユニットを通して中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20の内面に接する、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1の画像形成ユニット10Yから第4の画像形成ユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持面側には、駆動ロール22と対向して中間転写ベルトクリーニング装置30が備えられている。
【0068】
各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。
【0069】
第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているので、以下において、画像形成ユニットについて説明する場合は、第1の画像形成ユニット10Yについて代表して説明する。
【0070】
第1の画像形成ユニット10Yは、感光体1Yと、感光体1Yの表面を帯電させる帯電ロール2Yと、トナーを含む現像剤により、感光体1Yの表面に形成された静電荷像をトナー像として現像する現像装置4Yと、感光体1Yの表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト20の表面に転写する一次転写ロール5Yと、一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置6Yと、を備える。
【0071】
帯電ロール2Yは、感光体1Yの表面を帯電させる。帯電ロール2Yは、接触帯電方式でもよく非接触帯電方式でもよい。
【0072】
帯電した感光体1Yの表面には、露光装置3からレーザ光線3Yが照射される。これにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0073】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電している。感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y上に形成された静電荷像がトナー像として現像される。
【0074】
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に配置されている。一次転写ロール5Yには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)が接続されている。一次転写ロール5Yは、静電気力により、感光体1Y上のトナー像を中間転写ベルト20上に転写する。
【0075】
中間転写ベルト20上には、第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kから順に各色のトナー像が多重転写される。第1乃至第4の画像形成ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、支持ロール24と二次転写ロール26とから構成された二次転写手段へと至る。
【0076】
二次転写ロール26は、記録媒体の表面に直に接する転写ロールであり、中間転写ベルト20の外側において支持ロール24に対向した位置に配置されている。記録紙P(記録媒体の一例)が供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に供給される。二次転写バイアスが二次転写ロール26に印加されると、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。
【0077】
トナー像が転写された記録紙Pは、一対のロールからなる定着装置28の圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー像が記録紙P上へ定着される。
【0078】
本実施形態に係る画像形成装置において使用するトナー及び現像剤は特に限定されず、公知の電子写真用トナー及び現像剤をいずれも使用することができる。本実施形態に係る画像形成装置において使用する記録媒体は特に限定されず、例えば、電子写真方式の複写機やプリンターに使用される紙;OHPシート;等が挙げられる。
【実施例
【0079】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
【0080】
<測定方法、評価方法>
実施例及び比較例に適用した測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0081】
[積算値Stの算出]
光学式マイクロスコープ(キーエンス社、VHX-5000)を用いて1ピクセルあたりの解像度が2μm以下となる撮影条件にて、導電性ロールの軸方向に直交する側方から、且つ、導電性発泡弾性層の外周面の上側の輪郭の高さから、プロファイルを撮影した。撮影する箇所は、軸方向に5か所(中央、中央から距離50mmの位置、中央から距離100mmの位置)及び周方向に4か所(90°刻み)の合計20か所とした。
プロファイルを、解析ソフト(ImageJ)を用いて画像解析し、凹凸波形を抽出した。
軸方向の長さ1mmの区間について凹凸波形を高速フーリエ変換しスペクトルを得て、周期100μmから300μmの範囲の振幅(μm)の積算値(μm)、周期300μmの振幅(μm)及び周期100μmの振幅(μm)を求め、20か所の平均値を算出した。高速フーリエ変換とスペクトル解析には、解析ソフト(ImageJ)を用いた。
【0082】
[発泡セル径の測定]
導電性発泡弾性層の厚さ方向の断面を、剃刀を用いて作製した。断面は、軸方向に平行に且つ周方向に90°刻みで、合計4つ作製した。断面の軸方向中央部をレーザ顕微鏡(キーエンス社、VK-X200)で撮影し画像を取得した。画像を画像解析ソフト(メディアサイバネティクス社、Image-Pro Plus)で解析し、深さ50μmから2050μmまでの2000μm間に在る100個の発泡セルを無作為に選んで長径を測定し、100個の平均を算出し、さらに4断面の平均を算出し、この平均値を発泡セル径とした。
【0083】
[濃度ムラの評価]
導電性ロールを転写ロールとして、直接転写方式の画像形成装置であるDocuPrint CP400d(富士ゼロックス社製)に装着し、温度10℃且つ相対湿度15%の環境で、画像濃度100%のベタ画像をA4サイズの紙に10枚出力した。全紙を観察し、最も悪い濃度ムラを下記のとおり分類した。
(◎):濃度ムラが見られない高画質。
A(○):濃度ムラがほとんど見られない良好な画質。
B(△):濃度ムラが見られるが許容範囲内の画質。
C(×):許容できない濃度ムラが見られる画質。
【0084】
[裏面の汚れの評価]
前記画像形成装置を用いて、温度28℃且つ相対湿度85%の環境で、画像濃度50%のハーフトーン画像をA4サイズの紙に180枚出力し、次いで画像濃度100%のベタ画像をA4サイズの紙に20枚出力し、これを25回繰り返した(合計5000枚出力した。)。4991枚目から5000枚目(合計10枚)の裏面(画像形成していない面)を観察し、最も悪い汚れを下記のとおり分類した。
A(○):わずかに汚れが見られるが、実用に問題ない。
B(△):汚れが見られるが許容範囲内。
C(×):許容できない汚れが見られる。
【0085】
<実施例1>
[導電性発泡弾性層の形成]
・ゴム材(エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合ゴム:大阪ソーダ社製CG102:60%、ニトリルアクリロブタジエンゴム:JSR社製N230SV:40%) ・・・100質量部
・カーボンブラック(#55、旭カーボン社製) ・・・15質量部
・加硫剤(硫黄)(200メッシュ、鶴見化学工業社製) ・・・1質量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM、大内新興化学工業社製) ・・・1.5質量部
・加硫促進剤(ノクセラーTET、大内新興化学工業社製) ・・・1.0質量部
・酸化亜鉛(亜鉛華1号、正同化学工業社製) ・・・5質量部
・炭酸カルシウム(ホワイトンSSB、白石カルシウム社製) ・・・10質量部
・ステアリン酸(ステアリン酸S、花王社製) ・・・1質量部
・発泡剤(ネオセルボンN#5000、永和化成工業社製) ・・・適量(発泡セル径が所望の値になる量)
上記の材料をオープンロールで混練りし、ゴム練り材Aを得た。ゴム練り材Aを押し出して、外径19mm且つ内径5.6mmの円筒形状に成形し、160℃で30分間加熱して加硫発泡させ、円筒形状の導電性発泡弾性体を得た。円筒形状の導電性発泡弾性体にシャフト(SUS製、直径6mm)を差し込み、導電性発泡弾性体の外周面を、剣山状の突起を有する円筒状の金属性砥石(番手F60)を装着したゴム用研磨機にて、砥石回転数7000rpm、ワーク回転数1500rpm、トラバース速度1500mm/minの条件で研磨した。こうして、外径16mm且つ長さ224mmの導電性発泡弾性層を備えた導電性ロール1を得た。
【0086】
<実施例2>
実施例1と同様にして、ただし、加熱を145℃で40分間に変更し、砥石回転数を6000rpmに変更し、トラバース速度を2000mm/minに変更して、導電性ロール2を得た。
【0087】
<実施例3>
実施例1と同様にして、ただし、加熱を135℃で50分間に変更し、砥石回転数を5000rpmに変更し、トラバース速度を2500mm/minに変更して、導電性ロール3を得た。
【0088】
<実施例4>
実施例1と同様にして、ただし、加熱を185℃で20分間に変更して、導電性ロール4を得た。
【0089】
<実施例5>
実施例1と同様にして、ただし、加熱を175℃で20分間に変更して、導電性ロール5を得た。
【0090】
<比較例1>
実施例1と同様にして、ただし、加熱を130℃で60分間に変更し、砥石を番手F40に変更し、砥石回転数を4000rpmに変更し、トラバース速度を3000mm/minに変更して、導電性ロール6を得た。
【0091】
<比較例2>
比較例1と同様にして、ただし、加熱を190℃で15分間に変更して、導電性ロール7を得た。
【0092】
【表1】
【0093】
<実施例11>
[導電性発泡弾性層の形成]
・ゴム材(エピクロルヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル共重合ゴム:大阪ソーダ社製CG102:60%、ニトリルアクリロブタジエンゴム:JSR社製N230SV:40%) ・・・100質量部
・カーボンブラック(#55、旭カーボン社製) ・・・15質量部
・加硫剤(硫黄)(200メッシュ、鶴見化学工業社製) ・・・1質量部
・加硫促進剤(ノクセラーDM、大内新興化学工業社製) ・・・1.5質量部
・加硫促進剤(ノクセラーTET、大内新興化学工業社製) ・・・1.0質量部
・酸化亜鉛(亜鉛華1号、正同化学工業社製) ・・・5質量部
・炭酸カルシウム(ホワイトンSSB、白石カルシウム社製) ・・・10質量部
・ステアリン酸(ステアリン酸S、花王社製) ・・・1質量部
・発泡剤(ネオセルボンN#5000、永和化成工業社製) ・・・5質量部
上記の材料をオープンロールで混練りし、ゴム練り材Bを得た。ゴム練り材Bを押し出して、外径19mm且つ内径5.6mmの円筒形状に成形し、160℃で30分間加熱して加硫発泡させ、円筒形状の導電性発泡弾性体を得た。円筒形状の導電性発泡弾性体にシャフト(SUS製、直径6mm)を差し込み、導電性発泡弾性体の外周面を、剣山状の突起を有する円筒状の金属性砥石(番手F60)を装着したゴム用研磨機にて、砥石回転数7000rpm、ワーク回転数1500rpm、トラバース速度1500mm/minの条件で研磨し、導電性発泡弾性層の外径を16mmにした。
次いで、温度120℃に調整した金属ロール(SUS製、直径32mm)を、研磨後の導電性発泡弾性体の外周面に0.8mm食い込ませ、金属ロール回転数10rpm、ワーク回転数10rpmの条件で90秒間接触回転させた。
こうして、外径16mm且つ長さ224mmの導電性発泡弾性層を備えた導電性ロール11を得た。
【0094】
<実施例12>
実施例11と同様にして、ただし、砥石回転数を6000rpmに変更し、トラバース速度を2000mm/minに変更して、導電性ロール12を得た。
【0095】
<実施例13>
実施例11と同様にして、ただし、砥石回転数を5000rpmに変更し、トラバース速度を2500mm/minに変更して、導電性ロール13を得た。
【0096】
<実施例14>
実施例11と同様にして、ただし、金属ロールの温度を80℃に変更して、導電性ロール14を得た。
【0097】
<実施例15>
実施例11と同様にして、ただし、金属ロールの温度を160℃に変更して、導電性ロール15を得た。
【0098】
<実施例16>
実施例11と同様にして、ただし、金属ロールの温度を180℃に変更して、導電性ロール16を得た。
【0099】
<実施例17>
実施例11と同様にして、ただし、砥石を番手F40に変更し、砥石回転数を4000rpmに変更し、トラバース速度を3000mm/minに変更し、金属ロールの温度を80℃に変更して、導電性ロール17を得た。
【0100】
<比較例11>
実施例17と同様にして、ただし、金属ロールの温度を60℃に変更して、導電性ロール18を得た。
【0101】
<比較例12>
実施例17と同様にして、ただし、金属ロールによる表面熱処理を施さず、導電性ロール19を得た。
【0102】
【表2】
【符号の説明】
【0103】
111 導電性ロール、112 支持部材、113 導電性発泡弾性層
【0104】
200 画像形成装置、206 露光装置、207 感光体、208 帯電ロール、209 電源、211 現像装置、212 転写ロール、213 クリーニング装置、214 除電装置、215 定着装置、500 記録紙
【0105】
1Y、1M、1C、1K 感光体
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール
3 露光装置
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール
28 定着装置
30 中間転写ベルトクリーニング装置
P 記録紙
図1
図2
図3
図4
図5