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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】印刷用カセットの組及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/00 20060101AFI20230801BHJP
   B41J 17/32 20060101ALI20230801BHJP
   B41J 15/04 20060101ALI20230801BHJP
   B65H 75/38 20060101ALI20230801BHJP
   B65H 19/12 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B41J11/00 A
B41J17/32 A
B41J15/04
B65H75/38 X
B65H19/12 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019178160
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053872
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田上 裕也
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030333(JP,A)
【文献】特開2000-006504(JP,A)
【文献】特開2012-158175(JP,A)
【文献】特開2012-236307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00-11/70
B41J 15/00-15/14
B41J 17/02-17/12
B41J 17/32
B41J 33/16-33/28
B65H 19/00-19/30
B65H 21/00-21/02
B65H 75/34-75/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンローラと駆動源と駆動回転部とを備える印刷装置本体に、選択的に装着される第1印刷用カセット及び第2印刷用カセットを備える印刷用カセットの組であって、
前記第1印刷用カセットは、
第1被印刷テープと、
前記印刷装置本体に装着された際に、前記駆動回転部から伝達される前記駆動源の駆動力を前記プラテンローラに伝達すると共に、前記プラテンローラを第1回転速度で回転させる第1伝達機構と、
を有し、
前記第2印刷用カセットは、
第2被印刷テープと、
前記印刷装置本体に装着された際に、前記駆動回転部から伝達される前記駆動源の前記駆動力を前記プラテンローラに伝達すると共に、前記プラテンローラを第2回転速度で回転させる第2伝達機構と、
を有し、
前記駆動回転部の回転速度を前記第1回転速度で除した第1伝達係数と、前記駆動回転部の回転速度を前記第2回転速度で除した第2伝達係数とは、異なる、印刷用カセットの組。
【請求項2】
第1印刷用カセット及び第2印刷用カセットを備える印刷用カセットの組であって、
前記第1印刷用カセットは、
第1被印刷テープと、
第1入力部と第1出力部とを含む第1伝達機構と、
を有し、
前記第1入力部は、回転軸心周りに回転すると共に、前記第1印刷用カセットの外部から駆動力が入力され、
前記第1出力部は、回転軸心周りに回転すると共に、前記駆動力を前記第1印刷用カセットの外部に出力し、
前記第2印刷用カセットは、
第2被印刷テープと、
第2入力部と第2出力部とを含む第2伝達機構と、
を有し、
前記第2入力部は、回転軸心周りに回転すると共に、前記第2印刷用カセットの外部から駆動力が入力され、
前記第2出力部は、回転軸心周りに回転すると共に、前記駆動力を前記第2印刷用カセットの外部に出力し、
前記第1入力部の回転速度を、前記第1出力部の回転速度と前記第1出力部において前記駆動力の伝達が行われる基準円の周長とを乗じた第1周速で除した第1伝達係数と、前記第2入力部の回転速度を、前記第2出力部の回転速度と前記第2出力部において前記駆動力の伝達が行われる基準円の周長とを乗じた第2周速で除した第2伝達係数とは、異なる、印刷用カセットの組。
【請求項3】
前記第1被印刷テープの幅は、前記第2被印刷テープの幅よりも大きく、
前記第1伝達係数は、前記第2伝達係数よりも大きい、請求項1又は請求項2に記載の印刷用カセットの組。
【請求項4】
前記第1被印刷テープの厚みは、前記第2被印刷テープの厚みよりも大きく、
前記第1伝達係数は、前記第2伝達係数よりも大きい、請求項1又は請求項2に記載の印刷用カセットの組。
【請求項5】
前記第1被印刷テープの剛性は、前記第2被印刷テープの剛性よりも大きく、
前記第1伝達係数は、前記第2伝達係数よりも大きい、請求項1又は請求項2に記載の印刷用カセットの組。
【請求項6】
前記第1伝達機構は、回転軸心周りに回転すると共に、前記第1入力部から前記駆動力が伝達される第1回転伝達部を有し、
前記第2伝達機構は、回転軸心周りに回転すると共に、前記第2入力部から前記駆動力が伝達される第2回転伝達部を有し、
前記第1入力部の回転速度を前記第1回転伝達部の回転速度で除した第1伝達回転速度比と、前記第2入力部の回転速度を前記第2回転伝達部の回転速度で除した第2伝達回転速度比とは、異なる、請求項2に記載の印刷用カセットの組。
【請求項7】
前記第1伝達機構は、
前記第1入力部としての第1入力ギアと、
前記第1回転伝達部としての第1アイドルギアと、
前記第1出力部としての第1出力ギアと、
を有し、
前記第1アイドルギアは、前記第1入力ギアに係合すると共に、前記第1出力ギアに直接又は間接的に係合し、
前記第2伝達機構は、
前記第2入力部としての第2入力ギアと、
前記第2回転伝達部としての第2アイドルギアと、
前記第2出力部としての第2出力ギアと、
を有し、
前記第2アイドルギアは、前記第2入力ギアに係合すると共に、前記第2出力ギアに直接又は間接的に係合する、請求項6に記載の印刷用カセットの組。
【請求項8】
前記第1伝達機構は、
前記第1入力部としての第1入力ギアと、
前記第1出力部としての第1出力ギアと、
を有し、
前記第1出力ギアは、前記第1回転伝達部であり、
前記第2伝達機構は、
前記第2入力部としての第2入力ギアと、
前記第2出力部としての第2出力ギアと、
を有し、
前記第2出力ギアは、前記第2回転伝達部である、請求項6に記載の印刷用カセットの組。
【請求項9】
前記第1伝達機構は、
前記第1入力部としての第1入力ギアと、
前記第1出力部としての第1出力ギアと、
前記第1入力ギアと前記第1出力ギアとに係合した第1アイドルギアと、
を有し、
前記第2伝達機構は、
前記第2入力部としての第2入力ギアと、
前記第2出力部としての第2出力ギアと、
前記第2入力ギアと前記第2出力ギアとに係合した第2アイドルギアと、
を有し、
前記第1アイドルギアは、前記第1入力ギアに係合する第1上流ギアと、前記第1出力ギアに係合する第1下流ギアとが同軸上に並んで配置された段ギアであり、
前記第2アイドルギアは、前記第2入力ギアに係合する第2上流ギアと、前記第2出力ギアに係合する第2下流ギアとが同軸上に並んで配置された段ギアであり、
前記第1上流ギアの歯数を前記第1入力ギアの歯数で除した第1ギア比と、前記第2上流ギアの歯数を前記第2入力ギアの歯数で除した第2ギア比とは、異なる、請求項2に記載の印刷用カセットの組。
【請求項10】
前記第1伝達機構は、第1連結ベルトを有し、
前記第1入力部は、前記第1連結ベルトが巻き掛けられる第1入力軸部を有し、
前記第1出力部は、前記第1連結ベルトが巻き掛けられる第1出力軸部を有し、
前記第2伝達機構は、第2連結ベルトを有し、
前記第2入力部は、前記第2連結ベルトが巻き掛けられる第2入力軸部を有し、
前記第2出力部は、前記第2連結ベルトが巻き掛けられる第2出力軸部を有し、
前記第1出力軸部における前記第1連結ベルトの掛かり径を、前記第1入力軸部における前記第1連結ベルトの掛かり径で除した第1掛かり径比と、前記第2出力軸部における前記第2連結ベルトの掛かり径を前記第2入力軸部における前記第2連結ベルトの掛かり径で除した第2掛かり径比とは、異なる、請求項2に記載の印刷用カセットの組。
【請求項11】
前記第1伝達機構は、連結ベルトを有し、
前記第1入力部は、前記連結ベルトが巻き掛けられる入力軸部を有し、
前記第1出力部は、前記連結ベルトが巻き掛けられる出力軸部を有し、
前記第2伝達機構は、
前記第2入力部としての入力ギアと、
前記第2出力部としての出力ギアと、
前記入力ギアと前記出力ギアとに係合したアイドルギアと、
を有する、請求項2に記載の印刷用カセットの組。
【請求項12】
前記第1印刷用カセットは、前記第1印刷用カセットが装着されたことを前記印刷装置本体に検出させるための第1被検出部をさらに有し、
前記第2印刷用カセットは、前記第2印刷用カセットが装着されたことを前記印刷装置本体に検出させるための第2被検出部をさらに有する、請求項1に記載の印刷用カセットの組。
【請求項13】
前記第1印刷用カセットは、
前記第1被印刷テープの第1被印刷テープロールと、
インリボンの第1インクリボンロールと、
をさらに有し、
前記第1被印刷テープロール、前記第1伝達機構、及び前記第1インクリボンロールは、前記第1被印刷テープロールの中心軸と平行な第1方向において、前記第1被印刷テープロール、前記第1伝達機構、及び前記第1インクリボンロールの順に並んで配置され、
前記第2印刷用カセットは、
前記第2被印刷テープの第2被印刷テープロールと、
インクリボンの第2インクリボンロールと、
をさらに有し、
前記第2被印刷テープロール、前記第2伝達機構、及び前記第2インクリボンロールは、前記第2被印刷テープロールの中心軸と平行な第2方向において、前記第2被印刷テープロール、前記第2伝達機構、及び前記第2インクリボンロールの順に並んで配置される、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の印刷用カセットの組。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の印刷用カセットの組と、
前記第1印刷用カセット及び前記第2印刷用カセットが選択的に装着される印刷装置本体と、
を備え、
前記印刷装置本体は、
前記第1被印刷テープ又は前記第2被印刷テープを搬送するプラテンローラと、
前記第1伝達機構又は前記第2伝達機構に駆動力を伝達する駆動源と、
を有する、印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷用カセットの組及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テープ状の被印刷媒体(つまり被印刷テープ)に印刷を行う印刷装置では、被印刷テープを収納したカセットを本体に着脱することで、被印刷テープの交換及び供給が行われる(特許文献1参照)。
【0003】
このような印刷装置では、本体に設けられたプラテンローラによって被印刷テープがカセットから引き出されることで、被印刷テープが印刷に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-234772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のカセットにおいて、カセット内の被印刷テープの搬送経路によっては、被印刷テープを搬送するためのトルクが、被印刷テープのサイズ、剛性等の特性に依存して変化する。例えば、被印刷テープの幅が大きくなると、搬送トルクが大きくなりやすい。
【0006】
1つの印刷装置に対し、被印刷テープの幅が異なる複数のカセットが用いられる場合、最大の幅を有する被印刷テープに合わせてプラテンローラのトルクが設定されると、幅が小さい被印刷テープに対する搬送トルクが過剰となり得る。その結果、エネルギー効率が低下する。
【0007】
本開示の一局面は、被印刷テープの特性に合わせて、搬送トルクを調整できる印刷用カセットの組及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、プラテンローラと駆動源と駆動回転部とを備える印刷装置本体に、選択的に装着される第1印刷用カセット及び第2印刷用カセットを備える印刷用カセットの組である。
【0009】
第1印刷用カセットは、第1被印刷テープと、印刷装置本体に装着された際に、駆動回転部から伝達される駆動源の駆動力をプラテンローラに伝達すると共に、プラテンローラを第1回転速度で回転させる第1伝達機構と、を有する。
【0010】
第2印刷用カセットは、第2被印刷テープと、印刷装置本体に装着された際に、駆動回転部から伝達される駆動源の駆動力をプラテンローラに伝達すると共に、プラテンローラを第2回転速度で回転させる第2伝達機構と、を有する。
【0011】
駆動回転部の回転速度を第1回転速度で除した第1伝達係数と、駆動回転部の回転速度を第2回転速度で除した第2伝達係数とは、異なる。
【0012】
本開示の別の態様は、第1印刷用カセット及び第2印刷用カセットを備える印刷用カセットの組である。第1印刷用カセットは、第1被印刷テープと、第1入力部と第1出力部
とを含む第1伝達機構と、を有する。第1入力部は、回転軸心周りに回転すると共に、第1印刷用カセットの外部から駆動力が入力される。第1出力部は、回転軸心周りに回転すると共に、駆動力を第1印刷用カセットの外部に出力する。
【0013】
第2印刷用カセットは、第2被印刷テープと、第2入力部と第2出力部とを含む第2伝達機構と、を有する。第2入力部は、回転軸心周りに回転すると共に、第2印刷用カセットの外部から駆動力が入力される。第2出力部は、回転軸心周りに回転すると共に、駆動力を第2印刷用カセットの外部に出力する。
【0014】
第1入力部の回転速度を、第1出力部の回転速度と第1出力部において駆動力の伝達が行われる基準円の周長とを乗じた第1周速で除した第1伝達係数と、第2入力部の回転速度を、第2出力部の回転速度と第2出力部において駆動力の伝達が行われる基準円の周長とを乗じた第2周速で除した第2伝達係数とは、異なる。
【0015】
本開示のさらに別の態様は、印刷用カセットの組と、第1印刷用カセット及び第2印刷用カセットが選択的に装着される印刷装置本体と、を備える印刷装置である。印刷装置本体は、第1被印刷テープ又は第2被印刷テープを搬送するプラテンローラと、第1伝達機構又は第2伝達機構に駆動力を伝達する駆動源と、を有する。
【0016】
これらのような構成によれば、印刷用カセット内において、被印刷テープの特性に合わせて伝達機構における伝達係数を設定することができる。つまり、印刷用カセットの種類に合わせて、収納した被印刷テープに必要な搬送トルクを確保できる回転速度でプラテンローラを回転させることができる。その結果、被印刷テープに求められるトルクに合わせて、被印刷テープを効率よく搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態における印刷装置を示す模式的な斜視図である。
図2図2A図2B及び図2Cは、図1の印刷装置における印刷用カセットの模式的な斜視図である。
図3図3は、図2Aの印刷用カセットの模式的な分解斜視図である。
図4図4は、図2CのIV-IV線での模式的な断面図である。
図5図5は、図2Aの印刷用カセットの第1蓋部を取り外した状態を示す模式的な斜視図である。
図6図6は、図2Aの印刷用カセットにおける被印刷テープ及びインクリボンの経路を説明する模式図である。
図7図7Aは、図2CのVIIA-VIIA線での模式的な断面図であり、図7Bは、図2CのVIIB-VIIB線での模式的な断面図であり、図7Cは、図2CのVIIC-VIIC線での模式的な断面図であり、図7Dは、図2CのVIID-VIID線での模式的な断面図である。
図8図8A及び図8Bは、図1の印刷装置の印刷装置本体及び第1印刷用カセットの模式的な斜視図である。
図9図9は、図1の印刷装置における印刷装置本体の模式的な平面図である。
図10図10は、図1の印刷装置における出力ギアとプラテンギアとの係合状態を示す模式図である。
図11図11Aは、図1の印刷装置における第1印刷用カセットの伝達機構の模式的な平面図であり、図11Bは、図11Aの伝達機構の模式的な斜視図である。
図12図12Aは、図1の印刷装置における第2印刷用カセットの伝達機構の模式的な平面図であり、図12Bは、図12Aの伝達機構の模式的な斜視図である。
図13図13Aは、図1の印刷装置における第2印刷用カセットの伝達機構の模式的な平面図であり、図13Bは、図13Aの伝達機構の模式的な斜視図である。
図14図14Aは、図1とは異なる実施形態における印刷装置を示す模式的な斜視図であり、図14Bは、図14Aの印刷装置の印刷装置本体及び第1印刷用カセットの模式的な斜視図である。
図15図15は、図14Aの印刷装置における印刷用カセットの模式的な分解斜視図である。
図16図16は、図14Aの印刷装置における印刷装置本体の模式的な平面図である。
図17図17は、図14Aの印刷装置における出力ギアとプラテンギアとの係合状態を示す模式図である。
図18図18Aは、図1及び図14Aとは異なる実施形態の印刷装置における第1印刷用カセットの伝達機構の模式的な平面図であり、図18Bは、図18Aの伝達機構の模式的な斜視図である。
図19図19Aは、図1図14A及び図18Aとは異なる実施形態の印刷装置における第1印刷用カセットの伝達機構の模式的な平面図であり、図19Bは、図19Aの伝達機構の模式的な斜視図である。
図20図20Aは、図1図14A図18A及び図19Aとは異なる実施形態の印刷装置における第1印刷用カセットの伝達機構の模式的な平面図であり、図20Bは、図20Aの伝達機構の模式的な斜視図である。
図21図21は、図1及び図14Aとは異なる実施形態における印刷装置の印刷用カセットの模式的な分解斜視図である。
図22図22は、図1図14A及び図21とは異なる実施形態における印刷装置の印刷用カセットの模式的な分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す印刷装置1は、印刷装置本体100と、印刷用カセットの組200とを備える。印刷装置1は、テープ状の印刷媒体に印刷を行う装置である。
【0019】
本実施形態では、出力ギア18の軸方向を上下方向とし、上下方向と垂直な方向のうち出力ギア18と入力スプール16とが並ぶ方向を前後方向とし、上下方向と前後方向との双方に垂直な方向を左右方向とする。
【0020】
<印刷用カセットの組>
印刷用カセットの組200は、第1印刷用カセット201と、第2印刷用カセット202とを備える。
【0021】
第1印刷用カセット201及び第2印刷用カセット202は、それぞれ、印刷媒体を格納している。第1印刷用カセット201及び第2印刷用カセット202は、それぞれ、印刷装置本体100に着脱可能である。
【0022】
第1印刷用カセット201及び第2印刷用カセット202は、互いに異なる特性(例えば、幅、厚み、材質等)の印刷媒体を有する。第1印刷用カセット201及び第2印刷用カセット202が選択的に印刷装置本体100に装着されることで、印刷装置1が使用する印刷媒体の種類を変更できる。
【0023】
第1印刷用カセット201及び第2印刷用カセット202は、以下で詳述する被印刷テープ及び伝達機構を除き、同一の構成を有する。そのため、以下では、第1印刷用カセット201の構成について主に説明し、被印刷テープ及び伝達機構を除いて、第2印刷用カセット202の詳細な構成については省略する。
【0024】
第1印刷用カセット201は、図2A,2B,2Cに示すように、後述する被印刷テープ、インクリボン等を格納するケース35を備える。第1印刷用カセット201の外形(つまり、ケース35の形状)は、上下方向に平行な辺と、前後方向に平行な辺と、左右方向に平行な辺とを有する直方体状である。ケース35は、第1蓋部31と、第1枠部32と、第2枠部33と、第2蓋部34とを有する。
【0025】
第1印刷用カセット201は、図3に示すように、伝達機構10と、被印刷テープロール11と、第1供給スプール12と、スペーサフィルム13A,13Bと、インクリボンロール14と、第2供給スプール15と、入力スプール16と、クラッチバネホルダ17とを備える。
【0026】
(被印刷テープロール)
被印刷テープロール11は、印刷が行われる被印刷テープを第1供給スプール12に巻回したものである。被印刷テープの表面には、後述する印刷装置本体100の印刷ヘッド102及びインクリボンによって印刷が行われる。被印刷テープロール11の中心軸は上下方向と平行である。
【0027】
被印刷テープロール11の上下方向の外側には、被印刷テープロール11を挟むように2つのスペーサフィルム13A,13Bが配置されている。スペーサフィルム13A,13Bは、被印刷テープロール11と第1蓋部31との間と、被印刷テープロール11と第1枠部32との間とに配置されている。
【0028】
(第1供給スプール)
第1供給スプール12は、回転軸心周りに回転可能である。第1供給スプール12は、後述する印刷装置本体100のプラテンローラ103による被印刷テープの搬送に伴って回転することで、被印刷テープを印刷ヘッド102に供給する。
【0029】
(インクリボンロール)
インクリボンロール14は、被印刷テープの印刷に用いられるインクリボンを第2供給スプール15に巻回したものである。
【0030】
インクリボンは、後述するヘッド開口33Bにおいて、被印刷テープと重ね合わされ、印刷ヘッド102による印刷に供される。印刷に使用されたインクリボンは、後述する入力スプール16に巻き取られる。また、インクリボンロール14には、クラッチバネホルダ17に保持されたクラッチバネによって回転抵抗が付される。
【0031】
(第2供給スプール)
第2供給スプール15は、回転軸心周りに回転可能である。第2供給スプール15の回転軸心は、第1供給スプール12の回転軸心、つまり上下方向と平行である。
【0032】
第2供給スプール15は、インクリボンの入力スプール16による巻き取りに伴って回転することで、インクリボンを印刷ヘッド102に供給する。また、第2供給スプール15の少なくとも一部は、上下方向において、被印刷テープロール11と重なる位置に配置されている。
【0033】
(入力スプール)
入力スプール16は、回転軸心周りに回転可能である。入力スプール16の回転軸心は、第2供給スプール15の回転軸心と平行である。
【0034】
入力スプール16は、円筒状であり、内周面16Aで規定される中空部を有する。入力スプール16の内周面16Aにはスプライン歯16Bが設けられている。スプライン歯16Bには、後述する印刷装置本体100の駆動シャフト105が連結される。入力スプール16は、駆動シャフト105によって回転され、インクリボンを巻き取る。
【0035】
(伝達機構)
伝達機構10は、印刷装置本体100に装着された際に、駆動シャフト105から伝達される駆動源(例えばモータ)の駆動力をプラテンローラ103に伝達すると共に、プラテンローラ103を印刷用カセットごとに設定された回転速度で回転させる。伝達機構10は、出力ギア18と、入力ギア19と、アイドルギア20とを有する。
【0036】
図4に示すように、被印刷テープロール11、伝達機構10、及びインクリボンロール14(つまり第2供給スプール15)は、上下方向において、被印刷テープロール11、伝達機構10、及びインクリボンロール14の順に並んで配置されている。つまり、伝達機構10は、上下方向において、被印刷テープロール11とインクリボンロール14との間に位置する。
【0037】
(出力ギア)
図3に示すように、出力ギア18は、回転軸心周りに回転すると共に、被印刷テープを搬送するための駆動力を第1印刷用カセット201の外部に出力する出力部である。出力ギア18は、後述する印刷装置本体100のプラテンギア104を介してプラテンローラ103に駆動力を伝達する。
【0038】
出力ギア18は、回転軸心周りに回転する円盤と、円盤の上下方向と平行な面に設けられた歯とを有する。円盤の上下方向と垂直な一方の面(つまり上面)は、上下方向においてケース35の後述するカバー部32Bと対向している。円盤の上下方向と垂直な他方の面(つまり下面)の一部は、上下方向においてケース35と対向していない。
【0039】
出力ギア18は、ヘッド開口33Bに一部が露出しており、一部がケース35の外に位置している。出力ギア18は、第1印刷用カセット201が印刷装置本体100に装着された状態で、ヘッド開口33Bにおいてプラテンギア104に係合する。
【0040】
(入力ギア)
入力ギア19は、後述するアイドルギア20を介して出力ギア18と間接的に係合し、駆動源の駆動力を出力ギア18に伝達する。入力ギア19は、回転軸心周りに回転すると共に、第1印刷用カセット201の外部から駆動力が入力される入力部である。
【0041】
入力ギア19は、ギア19Aと、ギア19Aの下面に固定されると共に、内周面にスプライン歯を有する円筒状のスプール19Bとを有する。ギア19Aは、スプール19Bに入力された駆動力によってスプール19Bと一体回転する。
【0042】
入力ギア19の回転軸心(つまり、ギア19Aの回転軸心及びスプール19Bの回転軸心)は、入力スプール16の回転軸心と同一線上に配置されている。また、入力ギア19の少なくとも一部は、上下方向において、被印刷テープロール11と重なる位置に配置されている。
【0043】
入力ギア19の回転軸心は、入力スプール16の中空部を通る。つまり、駆動シャフト105が入力スプール16と入力ギア19とに同時に挿通される。その結果、入力ギア19は、入力スプール16と直接連結はされていないが、入力スプール16と共通の駆動源(つまり駆動シャフト105)によって回転される。
【0044】
(アイドルギア)
アイドルギア20は、入力ギア19と出力ギア18とに駆動連結され(つまり係合し)、入力ギア19に入力された駆動力を出力ギア18に伝達する。アイドルギア20は、回転軸心周りに回転すると共に、入力ギア19から駆動力が伝達される回転伝達部である。
【0045】
アイドルギア20は、入力ギア19に係合した上流ギア20Aと、出力ギア18に係合した下流ギア20Bとが同軸上に並んで配置された段ギアである。下流ギア20Bは、上流ギア20Aよりも径が小さい。また、下流ギア20Bは、上下方向において、上流ギア20Aよりも被印刷テープロール11に近い位置(つまり上方)に配置されている。
【0046】
(ケース)
図3に示すように、第1蓋部31は、第1印刷用カセット201の上端部を構成している。第1枠部32は、第1蓋部31の下側に配置され、第1蓋部31と上下方向に連結されている。第2枠部33は、第1枠部32の下側に配置され、第1枠部32と上下方向に連結されている。第2蓋部34は、第1印刷用カセット201の下端部を構成している。第2蓋部34は、第2枠部33と上下方向に連結されている。
【0047】
第1蓋部31と第1枠部32とは、被印刷テープロール11を収納する第1ケース部41(図4参照)を構成している。つまり、被印刷テープロール11は、第1蓋部31と第1枠部32とで囲まれた空間に配置されている。
【0048】
第2蓋部34と第2枠部33とは、インクリボンロール14、第2供給スプール15、及び入力スプール16を収納する第2ケース部42(図4参照)を構成している。つまり、インクリボンロール14、第2供給スプール15、及び入力スプール16は、第2蓋部34と第2枠部33とで囲まれた空間に配置されている。
【0049】
第1枠部32と第2枠部33とは、出力ギア18の一部、入力ギア19、及びアイドルギア20が内部に配置された第3ケース部43(図4参照)を構成している。つまり、出力ギア18の一部、入力ギア19、及びアイドルギア20は、第1枠部32と第2枠部33とで囲まれた空間に配置されている。第3ケース部43は、上下方向において、第1ケース部41と第2ケース部42との間に配置されている。
【0050】
第1枠部32は、第1側壁32Aと、カバー部32Bと、第1ガイド32Cと、第1ギア支持部32Dと、第2ギア支持部32Eと、第3ギア支持部32Fとを有する。第1側壁32Aは、第1印刷用カセット201の上下方向と平行な側面を構成する。カバー部32Bは、上下方向と垂直な表面を有する部位である。
【0051】
カバー部32Bは、上下方向において出力ギア18と重なる位置に配置されている。本実施形態では、カバー部32Bは、第1側壁32Aの下端部と連続して設けられ、第1枠部32の右前方の角部に配置されている。
【0052】
出力ギア18、カバー部32B、及び被印刷テープロール11は、上下方向において、出力ギア18、カバー部32B、及び被印刷テープロール11の順に並んで配置されている。また、上述のように、出力ギア18の上面の全領域は、カバー部32Bによって覆われている。
【0053】
第1ガイド32Cは、図5に示すように、被印刷テープロール11から引き出された被印刷テープ11Aが巻き掛けられる部位である。第1ガイド32Cは、被印刷テープロール11の周方向に沿って離間して配置された複数の板状のリブを有する。複数のリブは、
被印刷テープロール11の径方向に突出しており、下方に向かうほど突出量(つまり板幅)が大きくなっている。
【0054】
図3に示される第1ギア支持部32Dは、出力ギア18を回転可能に支持する。第2ギア支持部32Eは、入力ギア19を回転可能に支持する。第3ギア支持部32Fは、アイドルギア20を回転可能に支持する。
【0055】
第2枠部33は、第2側壁33Aと、ヘッド開口33Bと、排出口33Cと、第2ガイド33Dと、突出部33Eと、搬送路33Gとを有する。第2側壁33Aは、第1印刷用カセット201の上下方向と平行な側面を構成する。
【0056】
ヘッド開口33Bは、第2側壁33Aの一部を切り欠いた部位である。ヘッド開口33Bは、第1印刷用カセット201が印刷装置本体100に装着された状態で、印刷ヘッド102が下方から挿入されることで、内部に印刷ヘッド102が配置される空間である。ヘッド開口33Bは、第1印刷用カセット201の下方に開口している。
【0057】
第2ガイド33Dは、第1ガイド32Cを通過した被印刷テープ11Aが巻き掛けられる部位である。第2ガイド33Dは、第1ガイド32Cと同様に、インクリボンロール14の周方向に沿って離間して配置された複数の板状のリブを有する。複数のリブは、インクリボンロール14の径方向に突出しており、下方に向かうほど突出量(つまり板幅)が小さくなる。
【0058】
突出部33Eは、上下方向において出力ギア18と重なる位置に配置されると共に、上下方向と平行な端面33Fを有する。突出部33Eは、出力ギア18の下側(つまり、出力ギア18を挟んでカバー部32Bとは反対側)に配置されている。
【0059】
搬送路33Gは、ヘッド開口33Bよりも被印刷テープの搬送方向の上流において被印刷テープとインクリボンとが平行に搬送される部位である。本実施形態では、搬送路33Gにおける被印刷テープの搬送方向は、左から右に向かう方向である。
【0060】
また、ケース35は、第1印刷用カセット201が装着されたことを印刷装置本体100に検出させるための被検出部を有する。被検出部は、例えば、ケース35の外面又は内面に平面的又は立体的に形成されたマークとして設けられる。このマークは、印刷装置本体100の読み取り部によって読み取られる。
【0061】
図6に示すように、ヘッド開口33Bにおいて、被印刷テープ11A及びインクリボン14Aが左右方向に架け渡される。印刷後の被印刷テープ11Aは、排出口33Cから印刷装置1の外部に排出される。
【0062】
図7A,7B,7C,7Dに示すように、第1ガイド32C及び第2ガイド33Dは、被印刷テープロール11を構成する被印刷テープ11Aを第1ケース部41から第2ケース部42に送る通路を構成している。
【0063】
具体的には、図7Aに示すように、被印刷テープロール11から引き出された被印刷テープ11Aは、螺旋を描くように第1ガイド32Cに被印刷テープロール11の径方向外側から当接しながら第1ケース部41内で下後方に向かって搬送される。被印刷テープ11Aは、さらに図7Bに示すように、第3ケース部43を上下方向に跨ぎつつ、左下方に向かって搬送される。
【0064】
第2ケース部42に到達した被印刷テープ11Aは、図7Cに示すように、第2ガイド
33Dに径方向外側から当接しながら下前方に向かって搬送される。第1印刷用カセット201の下端部に到達した被印刷テープ11Aは、図7Dに示すように、ヘッド開口33Bを通過して排出口33Cから排出される。
【0065】
<印刷装置本体>
印刷装置本体100は、図8A,8Bに示すように、カセット挿入部101と、印刷ヘッド102と、プラテンローラ103と、プラテンギア104と、駆動シャフト105とを備える。
【0066】
(カセット挿入部)
カセット挿入部101は、第1印刷用カセット201が装着される凹部である。カセット挿入部101は、第1印刷用カセット201の位置決め機能を有する。
【0067】
(印刷ヘッド)
印刷ヘッド102は、第1印刷用カセット201が保持する被印刷テープに印刷するための装置である。
【0068】
印刷ヘッド102は、カセット挿入部101の内部に配置されている。印刷ヘッド102は、第1印刷用カセット201が印刷装置本体100に装着された状態で、ヘッド開口33Bにおいて、被印刷テープ及びインクリボンと前後方向に重なる位置に配置される。
【0069】
印刷ヘッド102は、個別に発熱が制御される複数の発熱素子を有する。後述するプラテンローラ103によってヘッド開口33Bに搬送された被印刷テープは、インクリボンを介して発熱素子が発熱した印刷ヘッド102に押し付けられる。これにより、インクリボンの表面に配置されたインクの一部が被印刷テープに転写され、被印刷テープに文字、記号等が印刷される。
【0070】
(プラテンローラ)
プラテンローラ103は、被印刷テープを第1印刷用カセット201内から外部に向けて搬送するためのローラである。プラテンローラ103の回転軸心は、上下方向と平行である。
【0071】
プラテンローラ103は、カセット挿入部101の内部において、印刷ヘッド102の近傍に配置されている。プラテンローラ103は、ヘッド開口33Bにおいて被印刷テープに当接し、被印刷テープを印刷ヘッド102に押し当てる。
【0072】
(プラテンギア)
プラテンギア104は、プラテンローラ103に連結され、出力ギア18と係合するギアである。本実施形態では、プラテンギア104の回転軸心は、プラテンローラ103の回転軸心と同一線上に配置されている。
【0073】
プラテンローラ103及びプラテンギア104は、図9に示す第1印刷用カセット201と離間した位置と、図10に示すプラテンギア104が出力ギア18に係合した位置との間で揺動可能である。
【0074】
(駆動シャフト)
駆動シャフト105は、入力スプール16に挿入されると共に入力ギア19に係合し、入力スプール16と入力ギア19とを回転させるためのシャフトである。
【0075】
駆動シャフト105は、カセット挿入部101の内部に配置されている。駆動シャフト
105の回転軸心は、上下方向と平行である。駆動シャフト105は、図示しない駆動源(例えばモータ)によって回転軸心を中心に回転する駆動回転部である。駆動シャフト105の回転速度は、印刷装置本体100に装着された印刷用カセットの種類に関わらず、一定である。
【0076】
図10に示すように、第1印刷用カセット201が印刷装置本体100に装着された状態で、駆動シャフト105が入力ギア19に係合すると共にプラテンギア104が出力ギア18に係合する。具体的には、駆動シャフト105を第1印刷用カセット201の入力スプール16及び入力ギア19に挿入し、プラテンローラ103及びプラテンギア104を第1印刷用カセット201のヘッド開口33Bに向けて揺動させることで、第1印刷用カセット201が印刷装置本体100に装着される。
【0077】
第1印刷用カセット201が装着された状態で駆動シャフト105により入力ギア19が回転されることで出力ギア18が回転され、出力ギア18の回転によりプラテンギア104が回転し、プラテンギア104の回転によりプラテンローラ103が回転する。
【0078】
<被印刷用テープの特性と伝達係数>
第1印刷用カセット201が有する第1被印刷テープと、第2印刷用カセット202が有する第2印刷テープとは、幅、厚み、材質等の特性が異なる。
【0079】
被印刷テープの特性によって、被印刷テープの搬送に必要なトルクは変化する。そのため、第1印刷用カセット201が印刷装置本体100に装着された際のプラテンローラ103の第1回転速度と、第2印刷用カセット202が印刷装置本体100に装着された際のプラテンローラ103の第2回転速度とは、互いに異なっている。
【0080】
つまり、第1印刷用カセット201における伝達機構10の第1伝達係数と、第2印刷用カセット202における伝達機構10の第2伝達係数とは、互いに異なっている。
【0081】
第1伝達係数は、駆動シャフト105の回転速度を第1回転速度で除したもの(つまり、第1回転速度に対する駆動シャフト105の回転速度の比)である。第2伝達係数は、駆動シャフト105の回転速度を第2回転速度で除したもの(つまり、第2回転速度に対する駆動シャフト105の回転速度の比)である。
【0082】
また、第1伝達係数は、第1印刷用カセット201の入力ギア19の回転速度を、第1印刷用カセット201の出力ギア18の回転速度と出力ギア18において駆動力の伝達が行われる基準円の周長とを乗じた第1周速で除したものとしてもよい。
【0083】
同じく、第2伝達係数は、第2印刷用カセット202の入力ギア19の回転速度を、第2印刷用カセット202の出力ギア18の回転速度と出力ギア18において駆動力の伝達が行われる基準円の周長とを乗じた第2周速で除したものとしてもよい。
【0084】
上述の2つの定義のいずれによっても、第1伝達係数及び第2伝達係数は、プラテンローラ103の必要トルクが大きくなるほど(つまり、プラテンローラ103の回転速度が小さくなるほど)、大きくなる。
【0085】
したがって、第1被印刷テープの幅が第2被印刷テープの幅よりも大きい場合、第1被印刷テープの厚みが第2被印刷テープの厚みよりも大きい場合、又は第1被印刷テープの剛性が第2被印刷テープの剛性よりも大きい場合、第1伝達係数は、第2伝達係数よりも大きくされる。
【0086】
例えば、図11A,11Bに示す第1印刷用カセット201の入力ギア19の回転速度をアイドルギア20の回転速度で除した第1伝達回転速度比と、図12A,12Bに示す第2印刷用カセット202の入力ギア19の回転速度をアイドルギア220の回転速度で除した第2伝達回転速度比とを変えることで、第1伝達係数と第2伝達係数とを異ならせることができる。
【0087】
具体的には、第1印刷用カセット201の伝達機構10においてアイドルギア20の径及び位置を変えたアイドルギア220を有する伝達機構210を第2印刷用カセット202に設けることで、第1伝達回転速度比と第2伝達回転速度比とを異ならせることができる。
【0088】
また、例えば、図11A,11Bに示す第1印刷用カセット201のアイドルギア20の上流ギア20Aの歯数を入力ギア19の歯数で除した第1ギア比と、図13A,13Bに示す第2印刷用カセット202のアイドルギア220の上流ギア220Aの歯数を入力ギア219の歯数で除した第2ギア比とを変えることで、第1伝達係数と第2伝達係数とを異ならせることができる。
【0089】
具体的には、第1印刷用カセット201の伝達機構10において入力ギア19の径及び歯数を変えた入力ギア219と、上流ギア20Aの径及び歯数を変えた上流ギア220Aとを有する伝達機構210を第2印刷用カセット202に設けることで、第1伝達回転速度比と第2伝達回転速度比とを異ならせることができる。
【0090】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1印刷用カセット201及び第2印刷用カセット202内において、被印刷テープの特性に合わせて伝達機構10における伝達係数を設定することができる。つまり、印刷用カセットの種類に合わせて、収納した被印刷テープに必要な搬送トルクを確保できる回転速度でプラテンローラ103を回転させることができる。その結果、被印刷テープに求められるトルクに合わせて、被印刷テープを効率よく搬送することができる。
【0091】
また、必要な搬送トルクが小さい被印刷テープ(例えば幅の小さい被印刷テープ)に対し、搬送速度が大きくなるようにプラテンローラ103の回転速度を調整することができる。その結果、搬送トルクが小さい被印刷テープの印刷速度が向上し、印刷装置1の生産性が向上する。
【0092】
(1b)各印刷用カセットが被検出部を有することで、印刷装置本体100によって、印刷用カセットの種類(つまり、被印刷テープの種類)を検出できる。その結果、被印刷テープの搬送速度に合わせて印刷速度を制御することができる。
【0093】
(1c)被印刷テープロール11、伝達機構10、及びインクリボンロール14が上下方向において被印刷テープロール11、伝達機構10、及びインクリボンロール14の順に並んで配置されることで、第1印刷用カセット201又は第2印刷用カセット202が落下し、上下方向と垂直な面が床面等に衝突した際の出力ギア18等のギアの損傷が抑制される。
【0094】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図14A,14Bに示す印刷装置1Aは、印刷装置本体100Aと、印刷用カセットの組200Aとを備える。
【0095】
<印刷用カセットの組>
印刷用カセットの組200Aは、第1印刷用カセット201Aと、第2印刷用カセット202Aとを備える。
【0096】
第1印刷用カセット201A及び第2印刷用カセット202Aは、第1実施形態の第1印刷用カセット201又は第2印刷用カセット202に、図15に示すラミネートテープロール21と、追加スプール22と、追加ギア23と、ピンチローラ24とを追加すると共に、第1実施形態の入力スプール16、第1蓋部31、第1枠部32、第2枠部33及び第2蓋部34を、入力スプール25、第1蓋部36、第1枠部37、第2枠部38及び第2蓋部39に置き換えたものである。
【0097】
入力スプール25は、スプライン歯16Bを有しない点を除いて、入力スプール16と同じものである。第1蓋部36、第1枠部37、第2枠部38及び第2蓋部39は、それぞれ、第1蓋部31、第1枠部32、第2枠部33及び第2蓋部34を左右方向に延伸させたものである。第1印刷用カセット201Aのその他の構成は、以下に説明する点を除き、第1実施形態の第1印刷用カセット201と同じであるため、説明を省略する。
【0098】
ラミネートテープロール21は、被印刷テープの保護に用いられるラミネートテープを入力スプール16に巻回したものである。ラミネートテープは、印刷ヘッド102によって印刷が行われた被印刷テープに貼り合わされる接着面を有する。
【0099】
追加スプール22は、回転軸心周りに回転可能である。追加スプール22の回転軸心は、第2供給スプール15の回転軸心(つまり上下方向)と平行である。追加スプール22は、後述する追加ギア23の回転によりインクリボンを巻き取る巻取りスプールである。
【0100】
追加ギア23は、追加スプール22に連結されると共に、アイドルギア20に係合している。追加ギア23は、入力ギア19に入力された駆動力によって回転し、追加スプール22を回転させる。
【0101】
ピンチローラ24は、後述する押圧ローラ106と共に、ラミネートテープを印刷後の被印刷テープに押し付ける。ピンチローラ24は、ヘッド開口33Bよりも被印刷テープの搬送方向の下流に配置されている。
【0102】
<印刷装置本体>
印刷装置本体100Aは、第1実施形態の印刷装置本体100に、図16に示される押圧ローラ106を追加したものである。印刷装置本体100Aのその他の構成は、以下に説明する点を除き、第1実施形態の印刷装置本体100と同じであるため、説明を省略する。
【0103】
押圧ローラ106は、プラテンローラ103及びプラテンギア104と共に揺動可能に構成されている。つまり、押圧ローラ106は、図16に示す第1印刷用カセット201Aと離間した位置と、図17に示すピンチローラ24と共に被印刷テープ及びラミネートテープを押圧する位置との間で揺動可能である。
【0104】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)第1実施形態と同様の利点を有したまま、ラミネートテープによって被印刷テープの印刷内容を保護することができる。
【0105】
[3.第3実施形態]
第3実施形態の印刷装置は、第1実施形態又は第2実施形態の印刷装置において、第1印刷用カセット及び第2印刷用カセットそれぞれのアイドルギアをシングルギアに置き換えたものである。
【0106】
図18A,18Bに、本実施形態の第1印刷用カセット201Bを示す。第1印刷用カセット201Bは、第1実施形態の第1印刷用カセット201の段ギアタイプのアイドルギア20をシングルギアタイプのアイドルギア27に置き換えた伝達機構10Bを有する。本実施形態の第2印刷用カセットの伝達機構10Bも同様に、シングルギアタイプのアイドルギア27を有する。
【0107】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、第1印刷用カセット201Bの入力ギア19の回転速度をアイドルギア27の回転速度で除した第1伝達回転速度比と、第2印刷用カセットの入力ギア19の回転速度をアイドルギア27の回転速度で除した第2伝達回転速度比とを変えることで、第1印刷用カセットの第1伝達係数と第2印刷用カセットの第2伝達係数とを異ならせることができる。
【0108】
[4.第4実施形態]
第4実施形態の印刷装置は、第1実施形態又は第2実施形態の印刷装置において、第1印刷用カセット及び第2印刷用カセットそれぞれのアイドルギアを省略し、入力ギアと出力ギアとを直接係合させたものである。
【0109】
図19A,19Bに、本実施形態の第1印刷用カセット201Cを示す。第1印刷用カセット201Cは、第1実施形態の第1印刷用カセット201の出力ギア18と入力ギア19とが直接係合した伝達機構10Cを有する。本実施形態の第2印刷用カセットの伝達機構10Cにおいても同様に、出力ギア18と入力ギア19とが直接係合する。
【0110】
本実施形態では、第1印刷用カセット201Cの入力ギア19の回転速度を出力ギア18の回転速度で除した第1伝達回転速度比と、第2印刷用カセットの入力ギア19の回転速度を出力ギア18の回転速度で除した第2伝達回転速度比とを変えることで、第1印刷用カセットの第1伝達係数と第2印刷用カセットの第2伝達係数とを異ならせることができる。
【0111】
[5.第5実施形態]
第5実施形態の印刷装置は、第1実施形態又は第2実施形態の印刷装置において、第1印刷用カセット及び第2印刷用カセットそれぞれの伝達機構を、アイドルギアの代わりに連結ベルトを用いた伝達機構に置き換えたものである。
【0112】
図20A,20Bに、本実施形態の第1印刷用カセット201Dを示す。第1印刷用カセット201Dは、伝達機構10Dを有する。伝達機構10Dは、出力ギア18Dと、入力部19Dと、連結ベルト28とを有する。
【0113】
出力ギア18Dは、ギア本体180と、出力軸部181とを有する。ギア本体180は、第1実施形態の第1印刷用カセット201の出力ギア18と同じものである。出力軸部181は、ギア本体180から上方に突出した円筒状の部材である。
【0114】
入力部19Dは、スプール190と、入力軸部191とを有する。スプール190は、第1実施形態の第1印刷用カセット201の入力ギア19のスプール19Bと同じものである。入力軸部191は、スプール190から下方に突出した円筒状の部材である。
【0115】
出力軸部181及び入力軸部191は、それぞれ、連結ベルト28のすべりを防止する
凹凸(例えば、各軸部の軸と平行に延伸する複数の溝)が外周面に形成されている。
【0116】
連結ベルト28は、出力軸部181と入力軸部191との外周面に巻き掛けられた環状のベルトである。入力軸部191の回転は、連結ベルト28によって、出力軸部181に伝達される。
【0117】
本実施形態の第2印刷用カセットは、第1印刷用カセット201Dと同様の伝達機構10Dを有する。ただし、第2印刷用カセットは、出力軸部181及び入力軸部191における連結ベルト28の掛かり径が、第1印刷用カセット201Dと異なっている。
【0118】
すなわち、本実施形態では、第1印刷用カセットの出力軸部181における連結ベルト28の掛かり径を、入力軸部191における連結ベルト28の掛かり径で除した第1掛かり径比と、第2印刷用カセットの出力軸部181における連結ベルト28の掛かり径を、入力軸部191における連結ベルト28の掛かり径で除した第2掛かり径比とを変えることで、第1印刷用カセットの第1伝達係数と第2印刷用カセットの第2伝達係数とを異ならせることができる。
【0119】
[6.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0120】
(6a)上記実施形態の印刷装置は、インクリボンを用いて印刷するものに限定されない。印刷装置は、被印刷テープとして帯状の感熱紙を用いて印刷を行ってもよい。例えば、印刷装置は、インクリボンに代えてラミネートテープ(つまり保護テープ)を用いてもよい。また、印刷用カセットは、必ずしもインクリボンロールと第2供給スプールとを有しなくてもよい。
【0121】
例えば、図21に示す印刷用カセット201Eは、第1実施形態の第1印刷用カセット201において、被印刷テープロール11を感熱紙の感熱紙ロール51に置き換えると共に、インクリボンロール14をラミネートテープのラミネートテープロール52に置き換えたものである。印刷用カセット201Eでは、ラミネートテープロール52は、第2実施形態の入力スプール25に巻回されている。また、印刷用カセット201Eは、第2実施形態のピンチローラ24を備える一方で、第2供給スプール15は備えない。
【0122】
(6b)上記実施形態の印刷用カセットにおいて、プラテンローラに駆動力を伝達する出力部は、ギアに限定されない。例えば、出力部として、ローラ又はスプールが用いられてもよい。また、駆動源からの駆動力が入力される入力部も、ギアに限定されない。例えば、入力部として、ローラ又はスプールが用いられてもよい。
【0123】
(6c)第2実施形態の印刷用カセットは、ラミネートテープが巻回された第3供給スプールとして追加スプールが使用されると共に、入力スプールがインクリボンの巻取スプールとして使用されてもよい。
【0124】
例えば、図22に示す印刷用カセット201Fは、第2実施形態の第1印刷用カセット201Aにおいて、追加スプール22にラミネートテープロール21を巻回したものである。印刷用カセット201Fは、第2実施形態の入力スプール25に代えて、第1実施形態の入力スプール16を備える。入力スプール16は、インクリボンの巻取りスプールとして使用される。
【0125】
(6d)上記実施形態の印刷用カセットにおいて、第1カセットの伝達機構と第2カセ
ットの伝達機構とは、上述した実施形態の中から自由に選択して組み合わせることができる。
【0126】
例えば、第1カセットの伝達機構として図3に示す段ギアのアイドルギア20を含む伝達機構10(つまり第1実施形態の伝達機構)を用い、第2カセットの伝達機構として図18A,18Bに示すシングルギアのアイドルギア27を含む伝達機構10B(つまり第3実施形態の伝達機構)を用いてもよい。
【0127】
また、例えば、第1カセットの伝達機構として図20A,20Bに示す連結ベルト28を含む伝達機構10D(つまり第5実施形態の伝達機構)を用い、第2カセットの伝達機構として図18A,18Bに示すシングルギアのアイドルギア27を含む伝達機構10B(つまり第3実施形態の伝達機構)を用いてもよい。
【0128】
(6e)上記実施形態の印刷用カセットにおいて、被印刷テープロール、伝達機構、及びインクリボンロールは、上下方向において、必ずしも被印刷テープロール、伝達機構、及びインクリボンロールの順に並んで配置されなくてもよい。例えば、被印刷テープロールとインクリボンロールとが左右方向又は前後方向に並んで配置されてもよい。
【0129】
(6f)上記実施形態の印刷用カセットにおいて、入力ギアと出力ギアとの間に2つ以上のアイドルギアが配置されてもよい。つまり、入力ギアに係合するアイドルギアは、出力ギアに間接的に係合してもよい。
【0130】
(6g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0131】
1…印刷装置、10,210…伝達機構、11…被印刷テープロール、
12…第1供給スプール、14…インクリボンロール、15…第2供給スプール、
16…入力スプール、18…出力ギア、19…入力ギア、
20,220…アイドルギア、20A…上流ギア、20B…下流ギア、
21…ラミネートテープロール、22…追加スプール、23…追加ギア、
24…ピンチローラ、25…入力スプール、27…アイドルギア、28…連結ベルト、
35…ケース、100…印刷装置本体、101…カセット挿入部、
102…印刷ヘッド、103…プラテンローラ、104…プラテンギア、
105…駆動シャフト、106…押圧ローラ、200…印刷用カセットの組、
201…第1印刷用カセット、202…第2印刷用カセット。
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