(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷用カセット
(51)【国際特許分類】
B41J 17/32 20060101AFI20230801BHJP
B41J 17/02 20060101ALI20230801BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20230801BHJP
B65H 19/12 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B41J17/32 A
B41J17/02
B41J15/04
B65H19/12 B
(21)【出願番号】P 2019178163
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 信次
(72)【発明者】
【氏名】田上 裕也
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 篤男
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-182318(JP,A)
【文献】特開2012-236307(JP,A)
【文献】特開2012-158175(JP,A)
【文献】特開2011-046142(JP,A)
【文献】特開2000-006504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/00-19/30
B65H 21/00-21/02
B41J 11/00-11/70
B41J 15/00-15/24
B41J 17/00-17/42
B41J 27/00-27/22
B41J 31/00-35/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに対向するプラテンローラと、
駆動源と、
前記駆動源に駆動連結され、回転軸心周りに回転可能な駆動シャフトと、
前記プラテンローラに駆動連結されたプラテンギアと、
前記印刷ヘッド及び前記駆動シャフトが配置されたカセット装着部と、
を備え、
前記カセット装着部は、被印刷テープ、入力部、及び前記入力部と駆動連結された出力部を有する印刷用カセットが前記駆動シャフトの前記回転軸心の軸方向に装着可能であり、
前記印刷用カセットが前記カセット装着部に装着された状態で、前記駆動シャフトは前記入力部と係合し、前記プラテンギアは前記出力部と係合する、印刷装置。
【請求項2】
前記駆動シャフト、前記プラテンギア、及び前記出力部は、それぞれ、外歯を有し、
前記入力部は、内歯を有する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記プラテンギアは、前記プラテンローラよりも前記印刷用カセットの前記カセット装着部への装着方向における上流側に配置される、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記プラテンギアの回転軸心と前記プラテンローラの回転軸心とは、同一直線上に位置する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷用カセットが前記カセット装着部に装着された状態で、前記駆動シャフトの少なくとも一部は、前記印刷用カセットが有する回転スプールの内部に配置される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷用カセットが前記カセット装着部に装着された状態で、前記プラテンローラが前記被印刷テープを搬送することによって前記印刷用カセットに発生する前記駆動シャフト周りのモーメントの方向は、前記駆動シャフトの回転方向と同じであり、
前記印刷用カセットが前記カセット装着部に装着された状態で、前記出力部が前記プラテンギアから受ける反力によって前記印刷用カセットに発生する前記駆動シャフト周りのモーメントの方向は、前記駆動シャフトの回転方向と逆である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記プラテンギアは、前記印刷用カセットが前記カセット装着部に装着された状態で、前記出力部と離間した位置と、前記出力部に係合した位置との間で揺動可能である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドに対向するプラテンローラと、駆動源と、前記駆動源に駆動連結され、回転軸心周りに回転可能な駆動シャフトと、前記プラテンローラに駆動連結されたプラテンギアと、前記印刷ヘッド及び前記駆動シャフトが配置されたカセット装着部とを備える印刷装置に、前記駆動シャフトの前記回転軸心の軸方向に装着可能な印刷用カセットであって、
被印刷テープと、
入力部と、
前記入力部と駆動連結された出力部と、
を備え、
前記カセット装着部に装着された状態で、前記入力部は前記駆動シャフトと係合し、前記出力部は前記プラテンギアと係合する、印刷用カセット。
【請求項9】
前記出力部は、外歯ギアを有し、
前記入力部は、第1内歯ギアを有する、請求項8に記載の印刷用カセット。
【請求項10】
回転スプールをさらに備え、
前記回転スプールの回転軸心と前記第1内歯ギアの回転軸心とは同一線上に位置する、請求項9に記載の印刷用カセット。
【請求項11】
前記回転スプールは、第2内歯ギアを有する、請求項10に記載の印刷用カセット。
【請求項12】
前記被印刷テープの少なくとも一部、前記入力部の全体、及び前記出力部の少なくとも一部が収納されるケースをさらに備え、
前記出力部の一部は、前記ケースの外に位置する、請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項13】
インクリボンと、
前記インクリボンを巻き取る巻取スプールと、
をさらに備え、
前記入力部は、前記巻取スプールに駆動連結される、請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項14】
前記入力部を前記巻取スプールに駆動連結するクラッチをさらに備える、請求項13に記載の印刷用カセット。
【請求項15】
前記カセット装着部に装着された状態で、前記出力部は、前記印刷ヘッドよりも前記カセット装着部への装着方向における上流側に配置される、請求項8から請求項14のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項16】
ケースと、
前記ケースに少なくとも一部が収納される被印刷テープと、
第1内歯ギアと第1外歯ギアとを有する第1ギアと、
前記第1外歯ギアと係合する伝達ギア又は伝達ギア列と、
前記伝達ギア又は前記伝達ギア列と係合する第2外歯ギアを有する第2ギアと、
を備え、
前記第1内歯ギアの全体は、前記ケースに収納され、
前記第2外歯ギアの一部は、前記ケースの外に位置する、印刷用カセット。
【請求項17】
前記第1外歯ギアの全体は、前記ケースに収納される、請求項16に記載の印刷用カセット。
【請求項18】
回転スプールをさらに備え、
前記回転スプールの回転軸心と前記第1内歯ギアの回転軸心とは同一線上に位置する、請求項16又は請求項17に記載の印刷用カセット。
【請求項19】
前記回転スプールは、第2内歯ギアを有する、請求項18に記載の印刷用カセット。
【請求項20】
インクリボンと、
前記インクリボンを巻き取る巻取スプールと、
をさらに備え、
前記第1ギアは、前記巻取スプールに駆動連結される、請求項16から請求項19のいずれか1項に記載の印刷用カセット。
【請求項21】
前記第1ギアを前記巻取スプールに駆動連結するクラッチをさらに備える、請求項20に記載の印刷用カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷装置及び印刷用カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用テープに印刷を行う印刷装置では、印刷用テープを収納したカセットを印刷装置に着脱することで、印刷用テープの交換及び供給が行われる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の印刷装置では、プラテンローラによってカセット内の印刷用テープをカセット外に向けて搬送する。プラテンローラは、例えばモーター等の駆動源によって回転駆動される。
【0005】
しかし、カセットが印刷装置に装着されていない場合にプラテンローラが回転すると、予期せぬ不具合が発生するおそれがある。例えば、カセットの装着途中でプラテンローラが回転すると、印刷用テープのジャムが発生するおそれがある。
【0006】
本開示の一局面は、プラテンローラの不測の回転を抑制できる印刷装置及び印刷用カセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、印刷ヘッドと、印刷ヘッドに対向するプラテンローラと、駆動源と、駆動源に駆動連結され、回転軸心周りに回転可能な駆動シャフトと、プラテンローラに駆動連結されたプラテンギアと、印刷ヘッド及び駆動シャフトが配置されたカセット装着部と、を備える印刷装置である。
【0008】
カセット装着部は、被印刷テープ、入力部、及び入力部と駆動連結された出力部を有する印刷用カセットが駆動シャフトの回転軸心の軸方向に装着可能である。印刷用カセットがカセット装着部に装着された状態で、駆動シャフトは入力部と係合し、プラテンギアは出力部と係合する。
【0009】
本開示の別の態様は、印刷ヘッドと、印刷ヘッドに対向するプラテンローラと、駆動源と、駆動源に駆動連結され、回転軸心周りに回転可能な駆動シャフトと、プラテンローラに駆動連結されたプラテンギアと、印刷ヘッド及び駆動シャフトが配置されたカセット装着部とを備える印刷装置に、駆動シャフトの回転軸心の軸方向に装着可能な印刷用カセットである。
【0010】
印刷用カセットは、被印刷テープと、入力部と、入力部と駆動連結された出力部と、を備える。印刷用カセットがカセット装着部に装着された状態で、入力部は駆動シャフトと係合し、出力部はプラテンギアと係合する。
【0011】
これらのような構成によれば、印刷装置の駆動源からの駆動力が印刷用カセット内の入力部及び出力部を介してプラテンローラに伝達される。つまり、印刷装置に印刷用カセッ
トが装着された状態で初めてプラテンローラに駆動力が伝達される。そのため、印刷用カセットが装着されていない状態におけるプラテンローラの不測の回転を抑制できる。
【0012】
本開示のさらに別の態様は、ケースと、ケースに少なくとも一部が収納される被印刷テープと、第1内歯ギアと第1外歯ギアとを有する第1ギアと、第1外歯ギアと係合する伝達ギア又は伝達ギア列と、伝達ギア又は伝達ギア列と係合する第2外歯ギアを有する第2ギアと、を備える印刷用カセットである。第1内歯ギアの全体は、ケースに収納される。第2外歯ギアの一部は、ケースの外に位置する。
【0013】
このような構成によれば、印刷装置の駆動源からの駆動力が印刷用カセット内の第1ギアと、伝達ギア又は伝達ギア列と、第2ギアとを介してプラテンローラに伝達される。つまり、印刷装置に印刷用カセットが装着された状態で初めてプラテンローラに駆動力が伝達される。そのため、印刷用カセットが装着されていない状態におけるプラテンローラの不測の回転を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1A、
図1B及び
図1Cは、実施形態における印刷システムにおいて印刷用カセットを印刷装置から取り外した状態を示す模式的な斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3Aの印刷用カセットにおけるクラッチの模式的な斜視図である。
【
図6】
図6は、
図2Aの印刷用カセットの第1蓋部を取り外した状態を示す模式的な斜視図である。
【
図7】
図7は、
図2Aの印刷用カセットにおける被印刷テープ及びインクリボンの経路を説明する模式図である。
【
図8】
図8Aは、
図2CのVIIIA-VIIIA線での模式的な断面図であり、
図8Bは、
図2CのVIIIB-VIIIB線での模式的な断面図であり、
図8Cは、
図2CのVIIIC-VIIIC線での模式的な断面図であり、
図8Dは、
図2CのVIIID-VIIID線での模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、
図1Aの印刷システムにおける印刷装置の模式的な平面図である。
【
図10】
図10Aは、
図1Aの印刷システムにおける出力ギアとプラテンギアとの離間状態を示す模式図であり、
図10Bは、
図1Aの印刷システムにおける出力ギアとプラテンギアとの係合状態を示す模式図である。
【
図11】
図11A及び
図11Bは、
図1Aとは異なる実施形態における印刷システムにおいて印刷用カセットを印刷装置から取り外した状態を示す模式的な斜視図である。
【
図15】
図15Aは、
図11Aの印刷システムにおける出力ギアとプラテンギアとの離間状態を示す模式図であり、
図15Bは、
図11Aの印刷システムにおける出力ギアとプラテンギアとの係合状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A,1B,1Cに示す印刷システム1は、印刷用カセット10と、印刷装置100とを備える。印刷システム1は、テープ状の印刷媒体に印刷を行う装置である。
【0016】
本実施形態では、出力ギア18の軸方向を上下方向とし、上下方向と垂直な方向のうち出力ギア18と入力スプール16とが並ぶ方向を前後方向とし、上下方向と前後方向との双方に垂直な方向を左右方向とする。
【0017】
<印刷用カセット>
印刷用カセット10は、印刷媒体を格納している。印刷用カセット10は、印刷装置100に着脱可能である。印刷用カセット10の交換により、印刷媒体の補給、及び印刷媒体の種類(例えば、色、材質等)の変更ができる。
【0018】
印刷用カセット10は、
図2A,2B,2Cに示すように、後述する被印刷テープ、インクリボン等を格納するケース35を備える。印刷用カセット10の外形(つまり、ケース35の形状)は、上下方向に平行な辺と、前後方向に平行な辺と、左右方向に平行な辺とを有する直方体状である。
【0019】
ケース35は、印刷装置100に対し下向きに装着されるように構成されている。ケース35は、第1蓋部31と、第1ケース部32と、第2ケース部33と、第2蓋部34とを有する。
【0020】
印刷用カセット10は、
図3に示すように、被印刷テープロール11と、第1供給スプール12と、スペーサフィルム13A,13Bと、インクリボンロール14と、第2供給スプール15と、入力スプール16(回転スプールの一例)と、クラッチ17と、出力ギア18と、入力ギア19と、アイドルギア20と、を備える。
【0021】
(被印刷テープロール)
被印刷テープロール11は、印刷が行われる被印刷テープを第1供給スプール12に巻回したものである。被印刷テープの表面には、後述する印刷装置100の印刷ヘッド102及びインクリボンによって印刷が行われる。
【0022】
被印刷テープロール11の上下方向の外側には、被印刷テープロール11を挟むように2つのスペーサフィルム13A,13Bが配置されている。スペーサフィルム13A,13Bは、被印刷テープロール11と第1蓋部31との間と、被印刷テープロール11と第1ケース部32との間とに配置されている。
【0023】
(第1供給スプール)
第1供給スプール12は、回転軸心周りに回転可能である。第1供給スプール12は、後述する印刷装置100のプラテンローラ103による被印刷テープの搬送に伴って回転することで、被印刷テープを印刷ヘッド102に供給する。
【0024】
(インクリボンロール)
インクリボンロール14は、被印刷テープの印刷に用いられるインクリボンを第2供給
スプール15に巻回したものである。
【0025】
インクリボンは、後述するヘッド開口33Bにおいて、被印刷テープと重ね合わされ、印刷ヘッド102による印刷に供される。印刷に使用されたインクリボンは、後述する入力スプール16に巻き取られる。
【0026】
(第2供給スプール)
第2供給スプール15は、回転軸心周りに回転可能である。第2供給スプール15の回転軸心は、第1供給スプール12の回転軸心、つまり上下方向と平行である。第2供給スプール15は、第1回転方向に回転することで、インクリボンロール14からインクリボンを送り出す。
【0027】
第2供給スプール15は、インクリボンの入力スプール16による巻き取りに伴って回転することで、インクリボンを印刷ヘッド102に供給する。また、第2供給スプール15の少なくとも一部は、上下方向において、被印刷テープロール11と重なる位置に配置されている。
【0028】
(入力スプール)
入力スプール16は、回転軸心周りに回転可能である。入力スプール16の回転軸心は、第2供給スプール15の回転軸心と平行である。
【0029】
入力スプール16は、円筒状であり、内周面16Aで規定される中空部を有する。入力スプール16の内周面16Aにはスプライン歯16Bが設けられている。つまり、入力スプール16は内歯ギアである。スプライン歯16Bには、後述する印刷装置100の駆動シャフト105が連結される。入力スプール16は、駆動シャフト105によって回転され、インクリボンを巻き取る。
【0030】
(クラッチ)
クラッチ17は、
図4に示すように、バネホルダ71と、クラッチバネ72とを有する。バネホルダ71は、回転軸心周りに回転可能である。
【0031】
バネホルダ71は、第1円筒部71Aと、第2円筒部71Bと、突起71Cとを有する。第2円筒部71Bは、第1円筒部71Aよりも外径が小さい。また、第2円筒部71Bの中心軸は、第1円筒部71Aの中心軸と同一直線上に配置されている。突起71Cは、第1円筒部71Aの外周面から第1円筒部71Aの径方向外側に突出している。
【0032】
クラッチバネ72は、コイル部72Aと、第1係合部72Bと、第2係合部72Cとを有する。コイル部72Aは、第2円筒部71Bの外周面に螺旋状に巻回された線状体で構成されている。第1係合部72B及び第2係合部72Cは、それぞれ、コイル部72Aを形成している線状体の端部が第2円筒部71Bの径方向外側に突出することで構成されている。
【0033】
図5A,5Bに示すように、クラッチ17は、第2供給スプール15の中空部に配置されている。クラッチ17の回転軸心は、第2供給スプール15の回転軸心と同一直線上に配置されている。
【0034】
バネホルダ71の第2円筒部71B及びクラッチバネ72のコイル部72Aは、後述する第2ケース部33の複数の凸部33Fの内側に配置されている。クラッチバネ72の第1係合部72B及び第2係合部72Cは、凸部33Fに係合している。
【0035】
バネホルダ71の突起71C(
図4参照)は、第2供給スプール15の内周面に形成された溝に係合している。そのため、バネホルダ71は、第2供給スプール15と共に第2供給スプール15の回転軸心周りに回転する。
【0036】
第2供給スプール15の回転には、バネホルダ71の第2円筒部71Bとクラッチバネ72のコイル部72Aとの間の摺動摩擦によって抵抗が付される。つまり、クラッチ17は、インクリボンロール14に回転抵抗を付している。インクリボンを送り出す(つまり巻き取る)ためのトルクは、クラッチ17の回転抵抗によって設定することができる。
【0037】
クラッチバネ72のコイル部72Aは、第1回転方向にバネホルダ71が回転した際に拡径し、第1回転方向とは反対の第2回転方向にバネホルダ71が回転した際に縮径するようにバネホルダ71に巻回されている。
【0038】
したがって、インクリボンが引き出されることによって第2供給スプール15が第1回転方向に回転すると、コイル部72Aが拡径するため、コイル部72Aと第2円筒部71Bとの間の摺動摩擦が小さくなる。その結果、第2供給スプール15の回転抵抗が小さくなる。
【0039】
一方、第2供給スプール15の回転が小さくなると、コイル部72Aが縮径するため、第2供給スプール15の回転抵抗が大きくなる。第2供給スプール15の回転が停止すると、コイル部72Aと第2円筒部71Bとの間の摺動摩擦が初期状態に戻る。
【0040】
(出力ギア)
図3に示す出力ギア18は、被印刷テープを搬送するための駆動力を外部に出力するための出力部である。出力ギア18は、後述する入力ギア19と駆動連結されている。出力ギア18は、印刷装置100のプラテンギア104を介して、プラテンローラ103に駆動力を伝達する。
【0041】
出力ギア18は、回転軸心周りに回転する円盤と、円盤の上下方向と平行な面に設けられた歯とを有する外歯ギアである。出力ギア18の円盤の上下方向と垂直な一方の面(つまり上面)は、上下方向においてケース35の後述するカバー部32Bと対向している。円盤の上下方向と垂直な他方の面(つまり下面)の一部は、上下方向においてケース35と対向していない。
【0042】
出力ギア18は、ヘッド開口33Bに一部が露出しており、一部がケース35の外に位置している。出力ギア18は、印刷用カセット10が印刷装置100のカセット装着部101に装着された状態で、ヘッド開口33Bにおいてプラテンギア104に係合する。
【0043】
被印刷テープロール11、出力ギア18、及びインクリボンロール14(つまり第2供給スプール15)は、上下方向において、被印刷テープロール11、出力ギア18、及びインクリボンロール14の順に並んで配置されている。つまり、出力ギア18は、上下方向において、被印刷テープロール11とインクリボンロール14との間に位置する。
【0044】
(入力ギア)
図3に示すように、入力ギア19は、後述するアイドルギア20を介して出力ギア18と間接的に係合し、駆動力を出力ギア18に伝達するための入力部である。
【0045】
印刷用カセット10が後述する印刷装置100のカセット装着部101に装着された状態で、入力ギア19は駆動シャフト105と係合する。入力ギア19には、駆動シャフト105を介して、印刷装置100の駆動源からの駆動力が入力される。
【0046】
入力ギア19は、外歯ギア19Aと、円筒状の内歯ギア19Bとを有する。外歯ギア19Aの全体及び内歯ギア19Bの全体は、それぞれ、ケース35に収納されている。つまり、入力ギア19の全体は、ケース35に収納されている。
【0047】
外歯ギア19Aは、内歯ギア19Bに入力された駆動力によって内歯ギア19Bと一体回転する。内歯ギア19Bは、外歯ギア19Aの下面に固定されると共に、内周面にスプライン歯を有する。
【0048】
入力ギア19の回転軸心(つまり、外歯ギア19Aの回転軸心及び内歯ギア19Bの回転軸心)は、入力スプール16の回転軸心と同一線上に配置されている。入力スプール16、入力ギア19、及び被印刷テープロール11は、上下方向において、入力スプール16、入力ギア19、及び被印刷テープロール11の順に並んで配置されている。
【0049】
つまり、入力ギア19は、上下方向において、入力スプール16と被印刷テープロール11との間に位置する。また、入力ギア19の少なくとも一部は、上下方向において、被印刷テープロール11と重なる位置に配置されている。
【0050】
入力ギア19の回転軸心は、入力スプール16の中空部を通る。つまり、駆動シャフト105が入力スプール16と入力ギア19とに同時に挿通される。その結果、入力ギア19は、入力スプール16と直接連結はされていないが、入力スプール16と共通の駆動源(つまり駆動シャフト105)によって回転される。
【0051】
(アイドルギア)
アイドルギア20は、入力ギア19と出力ギア18とに駆動連結され(つまり係合し)、入力ギア19に入力された駆動力を出力ギア18に伝達する伝達ギアである。
【0052】
アイドルギア20は、入力ギア19に係合した第1ギア20Aと、出力ギア18に係合した第2ギア20Bとが同軸上に並んで配置された段ギアである。第2ギア20Bは、第1ギア20Aよりも径が小さい。
【0053】
第2ギア20Bは、上下方向において、第1ギア20Aよりも被印刷テープロール11に近い位置(つまり上方)に配置されている。アイドルギア20は、入力ギア19に入力された駆動力を減速させる減速機構を構成している。
【0054】
(ケース)
第1蓋部31は、印刷用カセット10の上端部を構成している。第1ケース部32は、第1蓋部31の下側に配置され、第1蓋部31と上下方向に連結されている。第2ケース部33は、第1ケース部32の下側に配置され、第1ケース部32と上下方向に連結されている。第2蓋部34は、印刷用カセット10の下端部を構成している。第2蓋部34は、第2ケース部33と上下方向に連結されている。
【0055】
第1蓋部31と第1ケース部32とは、被印刷テープロール11を収納している。つまり、被印刷テープロール11は、第1蓋部31と第1ケース部32とで囲まれた空間に配置されている。
【0056】
第2蓋部34と第2ケース部33とは、インクリボンロール14、第2供給スプール15、及び入力スプール16を収納している。つまり、インクリボンロール14、第2供給スプール15、及び入力スプール16は、第2蓋部34と第2ケース部33とで囲まれた空間に配置されている。
【0057】
第1ケース部32と第2ケース部33とは、互いに連結されている。出力ギア18の一部、入力ギア19、及びアイドルギア20は、第1ケース部32と第2ケース部33とで囲まれた空間に配置されている。
【0058】
第1ケース部32は、第1側壁32Aと、カバー部32Bと、第1ガイド32Cと、第1軸部32Dと、第2軸部32Eと、第3軸部32Fと、内壁32Gとを有する。第1側壁32Aは、印刷用カセット10の上下方向と平行な側面を構成する。
【0059】
カバー部32Bは、上下方向と垂直な表面を有する部位である。カバー部32Bは、上下方向において出力ギア18と重なる位置に配置されている。本実施形態では、カバー部32Bは、第1側壁32Aの下端部と連続して設けられ、第1ケース部32の右前方の角部に配置されている。
【0060】
出力ギア18、カバー部32B、及び被印刷テープロール11は、上下方向において、出力ギア18、カバー部32B、及び被印刷テープロール11の順に並んで配置されている。また、上述のように、出力ギア18の上面の全領域は、カバー部32Bによって覆われている。
【0061】
第1ガイド32Cは、
図6に示すように、被印刷テープロール11から引き出された被印刷テープ11Aが巻き掛けられる部位である。第1ガイド32Cは、被印刷テープロール11の周方向に沿って離間して配置された複数の板状のリブを有する。複数のリブは、被印刷テープロール11の径方向に突出しており、下方に向かうほど突出量(つまり板幅)が大きくなっている。
【0062】
図3に示す第1軸部32Dは、出力ギア18を上下方向と平行な回転軸心周りに回転可能に支持する。第2軸部32Eは、入力ギア19を上下方向と平行な回転軸心周りに回転するように軸支する。第3軸部32Fは、アイドルギア20を上下方向と平行な回転軸心周りに回転するように軸支する。第1軸部32D、第2軸部32E及び第3軸部32Fは、内壁32Gから突出している。
【0063】
第2ケース部33は、第2側壁33Aと、ヘッド開口33Bと、排出口33Cと、第2ガイド33Dと、突出部33Eと、複数の凸部33Fとを有する。第2側壁33Aは、印刷用カセット10の上下方向と平行な側面を構成する。
【0064】
ヘッド開口33Bは、第2側壁33Aの一部を切り欠いた部位である。ヘッド開口33Bは、印刷用カセット10が印刷装置100に装着された状態で、印刷ヘッド102が下方から挿入されることで、内部に印刷ヘッド102が配置される空間である。ヘッド開口33Bは、印刷用カセット10の下方に開口している。
【0065】
第2ガイド33Dは、第1ガイド32Cを通過した被印刷テープ11Aが巻き掛けられる部位である。第2ガイド33Dは、第1ガイド32Cと同様に、インクリボンロール14の周方向に沿って離間して配置された複数の板状のリブを有する。複数のリブは、インクリボンロール14の径方向に突出しており、下方に向かうほど突出量(つまり板幅)が小さくなる。
【0066】
突出部33Eは、上下方向において出力ギア18と重なる位置に配置されている。突出部33Eは、出力ギア18の下側(つまり、出力ギア18を挟んでカバー部32Bとは反対側)に配置されている。
【0067】
印刷装置100の印刷ヘッド102は、突出部33Eよりも下方の領域に挿入される。そのため、印刷用カセット10が印刷装置100のカセット装着部101に装着された状態で、出力ギア18は、印刷ヘッド102よりもカセット装着部101への印刷用カセット10の装着方向における上流側(つまり上方)に配置される。
【0068】
複数の凸部33Fは、
図5Aに示すように、クラッチ17の第2円筒部71B及びコイル部72Aを囲うように、クラッチ17の第2円筒部71Bの周方向に沿って配置されている。クラッチバネ72の第1係合部72B及び第2係合部72Cは、それぞれ、複数の凸部33Fの間に挿入されている。
【0069】
クラッチ17の第1円筒部71Aの内部には、第2蓋部34に設けられた第4軸部34Aが挿入されている。第2供給スプール15は、第1円筒部71Aを介して、第4軸部34Aによって軸回転可能に軸支されている。
【0070】
図7に示すように、ヘッド開口33Bにおいて、被印刷テープ11A及びインクリボン14Aが左右方向に架け渡される。印刷後の被印刷テープ11Aは、排出口33Cから印刷システム1の外部に排出される。
【0071】
図8A,8B,8C,8Dに示すように、第1ガイド32C及び第2ガイド33Dは、被印刷テープロール11を構成する被印刷テープ11Aを第1ケース部32から第2ケース部33に送る通路を構成している。
【0072】
具体的には、
図8Aに示すように、被印刷テープロール11から引き出された被印刷テープ11Aは、螺旋を描くように第1ガイド32Cに被印刷テープロール11の径方向外側から当接しながら第1ケース部32内で下後方に向かって搬送される。被印刷テープ11Aは、さらに
図8Bに示すように、第1ケース部32と第2ケース部33との連結部分を上下方向に跨ぎつつ、左下方に向かって搬送される。
【0073】
第2ケース部33に到達した被印刷テープ11Aは、
図8Cに示すように、第2ガイド33Dに径方向外側から当接しながら下前方に向かって搬送される。印刷用カセット10の下端部に到達した被印刷テープ11Aは、
図8Dに示すように、ヘッド開口33Bを通過して排出口33Cから排出される。
【0074】
<印刷装置>
印刷装置100は、
図1Bに示すように、カセット装着部101と、印刷ヘッド102と、プラテンローラ103と、プラテンギア104と、駆動源(図示省略)と、駆動シャフト105と、可動部107とを備える。
【0075】
(カセット装着部)
カセット装着部101は、印刷用カセット10が駆動シャフト105の回転軸心の軸方向(つまり上下方向)に装着可能な凹部である。カセット装着部101は、印刷用カセット10の位置決め機能を有する。
【0076】
(印刷ヘッド)
印刷ヘッド102は、印刷用カセット10が保持する被印刷テープに印刷するための装置である。
【0077】
印刷ヘッド102は、カセット装着部101の内部に配置されている。印刷ヘッド102は、印刷用カセット10が印刷装置100に装着された状態で、ヘッド開口33Bにおいて、被印刷テープ及びインクリボンと前後方向に重なる位置に配置される。
【0078】
印刷ヘッド102は、個別に発熱が制御される複数の発熱素子を有する。後述するプラテンローラ103によってヘッド開口33Bに搬送された被印刷テープは、インクリボンを介して発熱素子が発熱した印刷ヘッド102に押し付けられる。これにより、インクリボンの表面に配置されたインクの一部が被印刷テープに転写され、被印刷テープに文字、記号等が印刷される。
【0079】
(プラテンローラ)
プラテンローラ103は、出力ギア18から伝達される駆動力によって被印刷テープを印刷用カセット10内から外部に向けて搬送するためのローラである。プラテンローラ103の回転軸心は、上下方向と平行である。
【0080】
プラテンローラ103は、カセット装着部101の内部において、印刷ヘッド102と対向するように配置されている。プラテンローラ103は、ヘッド開口33Bにおいて被印刷テープに当接し、被印刷テープを印刷ヘッド102に押し当てる。
【0081】
(プラテンギア)
プラテンギア104は、プラテンローラ103に駆動連結され、出力ギア18と係合する外歯ギアである。
【0082】
本実施形態では、プラテンギア104の回転軸心は、プラテンローラ103の回転軸心と同一線上に配置されている。また、プラテンギア104は、プラテンローラ103よりも印刷用カセット10のカセット装着部101への装着方向における上流側(つまり上方)に配置されている。
【0083】
(可動部)
可動部107は、上下方向と垂直な面内で揺動可能なように筐体110に取り付けられている。プラテンローラ103及びプラテンギア104は、可動部107に支持されることにより、筐体110に対して揺動可能に構成されている。
【0084】
プラテンローラ103及びプラテンギア104は、可動部107の揺動により、
図10Aに示す印刷用カセット10と離間した位置と、
図10Bに示すプラテンギア104が出力ギア18に係合した位置との間で揺動可能である。
【0085】
(駆動シャフト)
図1Bに示す駆動シャフト105は、入力スプール16に挿入されると共に入力ギア19に係合し、入力スプール16と入力ギア19とを回転させるためのシャフトである。駆動シャフト105は、入力スプール16のスプライン歯16B及び入力ギア19の内歯ギア19Bと係合する外歯を有する。
【0086】
駆動シャフト105は、カセット装着部101の内部に配置されている。駆動シャフト105の回転軸心は、上下方向と平行である。駆動シャフト105は、駆動源(例えばモータ)によって回転軸心を中心に回転可能である。駆動源は、印刷用カセット10に入力される駆動力を発生させる。
【0087】
印刷用カセット10がカセット装着部101に装着された状態で、駆動シャフト105の少なくとも一部は、入力スプール16の内部に配置される。この状態では、駆動シャフト105が入力ギア19に係合すると共に、プラテンギア104が出力ギア18に係合する。
【0088】
具体的には、駆動シャフト105を印刷用カセット10の入力スプール16及び入力ギア19に挿入し、プラテンローラ103及びプラテンギア104を印刷用カセット10のヘッド開口33Bに向けて揺動させることで、印刷用カセット10が印刷装置100に装着される。
【0089】
印刷用カセット10が装着された状態で駆動シャフト105により入力ギア19が回転されることで出力ギア18が回転され、出力ギア18の回転によりプラテンギア104が回転し、プラテンギア104の回転によりプラテンローラ103が回転する。
【0090】
図10Bに示すように、印刷用カセット10がカセット装着部101に装着された状態で、プラテンローラ103が被印刷テープを搬送することによって印刷用カセット10に発生する駆動シャフト105周りのモーメントの方向M1は、駆動シャフト105の駆動回転方向Sと同じ向きである。
【0091】
一方、印刷用カセット10がカセット装着部101に装着された状態で、出力ギア18がプラテンギア104から受ける反力によって印刷用カセット10に発生する駆動シャフト105周りのモーメントの方向M2は、駆動シャフト105の駆動回転方向Sと逆向きである。
【0092】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)印刷装置100の駆動源からの駆動力が印刷用カセット10内の入力ギア19及び出力ギア18を介してプラテンローラ103に伝達される。
【0093】
つまり、印刷装置100に印刷用カセット10が装着された状態で初めてプラテンローラ103に駆動力が伝達される。そのため、印刷用カセット10が装着されていない状態におけるプラテンローラ103の不測の回転を抑制できる。
【0094】
(1b)入力ギア19が駆動シャフト105の外歯と係合する内歯ギア19Bを有し、出力ギア18及びプラテンギア104とが互いに係合する外歯ギアであることで、印刷用カセット10及び印刷装置100におけるギア列の配置の自由度を高められる。
【0095】
(1c)1つの駆動シャフト105から、入力スプール16の回転軸心の軸方向(つまり駆動シャフト105の挿入方向)の異なる位置において入力スプール16と入力ギア19とに駆動力を伝達することができる。そのため、駆動シャフト105の挿入方向と垂直な方向(つまり前後方向及び左右方向)における印刷用カセット10のサイズの大型化を抑制しながら、入力スプール16と入力ギア19との双方に駆動力を入力できる。
【0096】
(1d)プラテンギア104がプラテンローラ103よりも印刷用カセット10のカセット装着部101への装着方向における上流側に配置されることで、出力ギア18と印刷ヘッド102との干渉を避けることができる。その結果、ヘッド開口33Bの拡大に伴うカセットの大型化を抑制できる。
【0097】
(1e)プラテンローラ103が被印刷テープを搬送することによる駆動シャフト105周りのモーメントの方向M1が、出力ギア18がプラテンギア104から受ける反力による駆動シャフト105周りのモーメントの方向M2と逆向きであることで、印刷装置100内で印刷用カセット10が回転することを抑制できる。
【0098】
(1f)クラッチ17によって、インクリボンの巻取トルクを調整することができる。そのため、同じ形状の印刷用カセット10において、幅、厚み、材質等の異なるインクリ
ボンを配置することができる。
【0099】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図11A,11Bに示す印刷システム1Aは、印刷用カセット10Aと、印刷装置100Aとを備える。
【0100】
<印刷用カセット>
印刷用カセット10Aは、第1実施形態の印刷用カセット10に、
図12に示すラミネートテープロール21と、追加スプール22と、追加ギア23と、ピンチローラ24と、第2クラッチ17Aを追加したものである。
【0101】
また、印刷用カセット10Aは、第1実施形態の印刷用カセット10における入力スプール16、第1蓋部31、第1ケース部32、第2ケース部33及び第2蓋部34を、それぞれ、第3供給スプール25、第1蓋部36、第1ケース部37、第2ケース部38及び第2蓋部39に置き換えたものである。
【0102】
第3供給スプール25は、スプライン歯16Bを有しない点を除いて、入力スプール16と同じものである。第1蓋部36、第1ケース部37、第2ケース部38及び第2蓋部39は、それぞれ、第1蓋部31、第1ケース部32、第2ケース部33及び第2蓋部34を左右方向に延伸させたものである。印刷用カセット10Aのその他の構成は、以下に説明する点を除き、第1実施形態の印刷用カセット10と同じであるため、説明を省略する。
【0103】
ラミネートテープロール21は、被印刷テープの保護に用いられるラミネートテープを第3供給スプール25に巻回したものである。ラミネートテープは、印刷ヘッド102によって印刷が行われた被印刷テープに貼り合わされる接着面を有する。
【0104】
追加スプール22は、回転軸心周りに回転可能である。追加スプール22の回転軸心は、第2供給スプール15の回転軸心(つまり上下方向)と平行である。追加スプール22は、後述する追加ギア23の回転によりインクリボンを巻き取る巻取スプールである。
【0105】
追加ギア23は、追加スプール22に連結されると共に、アイドルギア20に係合している。追加ギア23は、入力ギア19に入力された駆動力によって回転し、追加スプール22を回転させる。
【0106】
追加ギア23は、外歯ギア23Aと、複数の凸部23Bと、軸部23Cとを有する。外歯ギア23Aは、上下方向と平行な回転軸心を有する。複数の凸部23Bは、軸部23Cを囲うように、軸部23Cの周面に沿って配置されている。複数の凸部23B及び軸部23Cは、外歯ギア23Aから下方に突出している。
【0107】
ピンチローラ24は、後述する押圧ローラ106と共に、ラミネートテープを印刷後の被印刷テープに押し付ける。ピンチローラ24は、ヘッド開口33Bよりも被印刷テープの搬送方向の下流に配置されている。
【0108】
第2クラッチ17Aは、入力ギア19を追加スプール22に駆動連結している。具体的には、第2クラッチ17Aは、入力ギア19と駆動連結された追加ギア23と、追加スプール22とを駆動連結している。第2クラッチ17Aは、クラッチ17と同様のバネホルダ71と、クラッチバネ72とを有している。
【0109】
図13A,13Bに示すように、第2クラッチ17Aの第2円筒部71B及びコイル部72Aは、追加ギア23の複数の凸部23Bの内側に配置されている。また、第2円筒部71Bの内部には、追加ギア23の軸部23Cが挿通されている。
【0110】
第2クラッチ17Aの第1円筒部71Aは、追加スプール22の内周面に固定されている。第2クラッチ17Aの第1係合部及び第2係合部(図示省略)は、追加ギア23の複数の凸部23Bに係合している。
【0111】
第2クラッチ17Aの第1円筒部71Aの内部には、第2蓋部39に設けられた第5軸部39Aが挿入されている。追加スプール22は、第1円筒部71Aを介して、第5軸部39Aによって軸回転可能に軸支されている。
【0112】
追加スプール22には、第2クラッチ17Aのバネホルダ71の第2円筒部71Bとクラッチバネ72のコイル部72Aとの間の摺動摩擦によって抵抗が付される。つまり、第2クラッチ17Aは、インクリボンの巻取スプールに回転抵抗を付している。インクリボンを巻き取るためのトルクは、第2クラッチ17Aの回転抵抗によって設定することができる。
【0113】
また、本実施形態では、第1実施形態と同じクラッチ17によって、ラミネートテープロール21に回転抵抗が付されている。
【0114】
<印刷装置>
印刷装置100Aは、第1実施形態の印刷装置100に、
図12に示される押圧ローラ106を追加したものである。印刷装置100Aのその他の構成は、以下に説明する点を除き、第1実施形態の印刷装置100と同じであるため、説明を省略する。
【0115】
押圧ローラ106は、
図14に示すように、可動部107に取り付けられ、プラテンローラ103及びプラテンギア104と共に揺動可能に構成されている。つまり、押圧ローラ106は、
図15Aに示す印刷用カセット10Aと離間した位置と、
図15Bに示すピンチローラ24と共に被印刷テープ及びラミネートテープを押圧する位置との間で揺動可能である。
【0116】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)第1実施形態と同様の利点を有したまま、ラミネートテープによって被印刷テープの印刷内容を保護することができる。
【0117】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0118】
(3a)上記実施形態の印刷装置は、インクリボンを用いて印刷するものに限定されない。印刷装置は、被印刷テープとして帯状の感熱紙を用いて印刷を行ってもよい。また、印刷用カセットは、必ずしもインクリボンロールと第2供給スプールとを有しなくてもよい。
【0119】
例えば、
図16に示す印刷用カセット10Bは、第1実施形態の印刷用カセット10において、被印刷テープロール11を感熱紙の被印刷テープロール51に置き換えると共に、インクリボンロール14をラミネートテープのラミネートテープロール52に置き換えたものである。
【0120】
印刷用カセット10Bでは、ラミネートテープロール52は、第2実施形態の第3供給スプール25に巻回されている。また、印刷用カセット10Bは、第2実施形態のピンチローラ24を備える一方で、第2供給スプール15は備えない。
【0121】
(3b)上記実施形態の印刷用カセットにおいて、プラテンローラに駆動力を伝達する出力部は、ギアに限定されない。例えば、出力部として、ローラ又はスプールが用いられてもよい。また、駆動源からの駆動力が入力される入力部も、ギアに限定されない。例えば、入力部として、ローラ又はスプールが用いられてもよい。
【0122】
(3c)第2実施形態の印刷用カセットにおいて、ラミネートテープが追加スプールに巻回されてもよい。
【0123】
例えば、
図17に示す印刷用カセット10Cは、第2実施形態の印刷用カセット10Aにおいて、追加スプール22にラミネートテープのラミネートテープロール21を巻回したものである。印刷用カセット10Cは、第2実施形態の第3供給スプール25に代えて、第1実施形態の入力スプール16を備える。入力スプール16は、インクリボンの巻取スプールとして使用される。
【0124】
(3d)上記実施形態の印刷用カセットは、被印刷テープロール、出力ギア、及び被印刷テープの印刷又は保護に用いられる補助テープの補助テープロール(つまりインクリボンロール又はラミネートテープロール)が上下方向に並ぶものに限定されない。印刷用カセットにおいて、被印刷テープは、上下方向と垂直な方向において、補助テープロールと重なるように配置されてもよい。
【0125】
例えば、
図18に示す印刷用カセット10Dは、第2実施形態の印刷用カセット10Aにおいて、第1蓋部36、第1ケース部37、第2ケース部38及び第2蓋部39に代えて、第1ケース部41、第2ケース部42及び蓋部43を用いたものである。
【0126】
第1ケース部41は、
図12の第1ケース部37の左右方向の長さを調整したものから、内壁32Gよりも下側の部分を取り出したものである。第2ケース部42は、
図12の第2ケース部38の左右方向の長さを調整したものである。蓋部43は、
図12の第2蓋部39の左右方向の長さを調整したものである。
【0127】
印刷用カセット10Dの第3供給スプール25には、ラミネートテープロール21に代えて被印刷テープロール11が巻回されている。インクリボンは、第2実施形態と同様に、追加スプール22によって巻き取られる。
【0128】
さらに、印刷用カセット10Dにおいて、被印刷テープとして感熱紙を用いてもよい。この場合、インクリボンロール14、第2供給スプール15、追加スプール22及び追加ギア23は不要となり、印刷用カセット10Dは、ロールとして被印刷テープロール11のみを備える。
【0129】
(3e)上記実施形態の印刷用カセットは、2つ以上のアイドルギアを有してもよい。つまり、印刷用カセットは、入力ギアと係合する伝達ギア列を有してもよい。また、入力ギアと出力ギアとは、アイドルギアを介さずに直接係合してもよい。
【0130】
(3f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくと
も一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0131】
1…印刷システム、10…印刷用カセット、11…被印刷テープロール、
12…第1供給スプール、14…インクリボンロール、15…第2供給スプール、
16…入力スプール、17,17A…クラッチ、18…出力ギア、19…入力ギア、
19A…外歯ギア、19B…内歯ギア、20…アイドルギア、
21…ラミネートテープロール、22…追加スプール、23…追加ギア、
24…ピンチローラ、25…第3供給スプール、31…第1蓋部、
32…第1ケース部、33…第2ケース部、33B…ヘッド開口、34…第2蓋部、
35…ケース、71…バネホルダ、72…クラッチバネ、100…印刷装置、
101…カセット装着部、102…印刷ヘッド、103…プラテンローラ、
104…プラテンギア、105…駆動シャフト、107…可動部。