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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20230801BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20230801BHJP
   H01L 23/58 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/56 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019188629
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021064707
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】脇山 智之
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/103036(WO,A1)
【文献】特開2012-212863(JP,A)
【文献】特開2008-171876(JP,A)
【文献】特開平11-258063(JP,A)
【文献】特開2018-014356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁板の上面に回路板が配置され、前記絶縁板の下面に放熱板が配置された積層基板と、
前記回路板の上面に配置される半導体素子と、
前記半導体素子の上面に配置される金属配線板と、
前記金属配線板の上面に配置され、前記半導体素子の温度を検出する温度センサと、を備え、
前記金属配線板は、前記半導体素子の熱を遮蔽する熱遮蔽部を有する半導体モジュール。
【請求項2】
前記金属配線板は、
前記半導体素子が接合される第1端部と、
前記第1端部とは反対側に位置する第2端部と、を有し、
前記熱遮蔽部は、少なくとも一部が前記温度センサよりも前記第1端部から前記第2端部に向かう方向の下流側に配置される請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記熱遮蔽部は、前記第1端部から前記第2端部に向かう方向に対して交差する方向に延びる切欠き部で形成される請求項2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記温度センサは、平面視で前記半導体素子に重なるように配置される請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記熱遮蔽部は、平面視で前記半導体素子に重なるように配置される請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記熱遮蔽部は、前記温度センサの周囲を囲うように配置される請求項5に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記熱遮蔽部は、平面視における前記半導体素子の熱の拡散範囲内に配置される請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体モジュール。
【請求項8】
前記熱遮蔽部は、断面視における前記半導体素子の熱の拡散範囲よりも外側に配置される請求項7に記載の半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等の半導体素子が設けられた基板を有し、インバータ装置等に利用されている。
【0003】
民生・産業用のモータ駆動用等に広く用いられるインバータ装置は、MOSFETやIGBT等の半導体スイッチング素子(スイッチング素子)と、その半導体スイッチング素子を駆動する駆動用集積回路(ICチップ)から構成される。また、機器の小型化と保護回路内蔵のための手段として、上記したスイッチング素子とICチップを1パッケージ化したIPM(Intelligent Power Module)が用いられる。
【0004】
この種の半導体装置(半導体モジュール)においては、半導体素子の温度を検出するための温度センサ(サーミスタ)が設けられる。例えば特許文献1では、金属ベースの表面に絶縁層を介して銅回路が形成された回路基板に、半導体素子及びサーミスタが配置されている。半導体素子とサーミスタはそれぞれ独立した銅回路上に配置されており、半導体素子のゲートにサーミスタがボンディングワイヤを介して接続されている。また、特許文献2では、ベース板上にパワー半導体チップ及びサーミスタが配置されている。更に特許文献3では、半導体チップ上に温度センサが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-188336号公報
【文献】特開2017-4999号公報
【文献】特開2004-127983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、半導体素子とサーミスタが互いに独立した銅回路上に配置されることで、半導体素子とサーミスタの位置が離れている。このため、サーミスタが半導体素子の熱をダイレクトに受けることができず、感知精度に影響を与えるおそれがある。また、特許文献2のように同じベース板上に半導体素子とサーミスタを配置した場合、ベース板上の回路板の配置に制約が生じる。また、特許文献3のように、感知精度を考慮して半導体素子に直接温度センサを配置することも考えられるが、温度センサの専有面積だけ半導体素子の活性面積が削減される。すなわち、半導体素子の活性面積の一部が犠牲となる結果、半導体装置の性能に影響を与えるおそれがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、半導体素子の本来の性能に影響を与えることなく、半導体素子の温度検知精度を高めることができる半導体モジュールを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の半導体モジュールは、絶縁板の上面に回路板が配置され、前記絶縁板の下面に放熱板が配置された積層基板と、前記回路板の上面に配置される半導体素子と、前記半導体素子の上面に配置される金属配線板と、前記金属配線板の上面に配置され、前記半導体素子の温度を検出する温度センサと、を備え、前記金属配線板は、前記半導体素子の熱を遮蔽する熱遮蔽部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体素子の本来の性能に影響を与えることなく、半導体素子の温度検知精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る半導体モジュールの一例を示す平面模式図である。
図2図1のA-A線に沿って切断した断面模式図である。
図3図1のB-B線に沿って切断した断面模式図である。
図4図1の熱遮蔽部を示す部分拡大図である。
図5】変形例に係る熱遮蔽部を示す平面模式図である。
図6】他の変形例に係る熱遮蔽部を示す平面模式図である。
図7】熱遮蔽部の配置例のバリエーションを示す平面模式図である。
図8】温度センサと熱遮蔽部との位置関係を示す模式図である。
図9】本実施の形態の他の例に係る半導体モジュールを示す平面模式図である。
図10図9のC-C線に沿って切断した断面模式図である。
図11図9の熱遮蔽部を示す部分拡大図である。
図12】他の実施の形態に係る半導体モジュールの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用可能な半導体モジュールについて説明する。図1は、本実施の形態に係る半導体モジュールの一例を示す平面模式図である。図2は、図1のA-A線に沿って切断した断面模式図である。図3は、図1のB-B線に沿って切断した断面模式図である。なお、以下に示す半導体モジュールはあくまで一例にすぎず、これに限定されることなく適宜変更が可能である。
【0012】
また、以下の図において、半導体モジュールの長手方向(後述する金属配線板が半導体素子から延びる方向)をX方向、短手方向(前記X方向に直交する方向)をY方向、高さ方向をZ方向と定義することにする。図示されたX、Y、Zの各軸は互いに直交し、右手系をなしている。また、場合によっては、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向と呼ぶことがある。これらの方向(前後左右上下方向)は、説明の便宜上用いる文言であり、半導体モジュールの取付姿勢によっては、XYZ方向のそれぞれとの対応関係が変わることがある。例えば、半導体モジュールの放熱面側(冷却器側)を下面側とし、その反対側を上面側と呼ぶことにする。また、本明細書において、平面視は、半導体モジュールの上面をZ方向正側からみた場合を意味する。
【0013】
半導体モジュール1は、例えばパワーモジュール等の電力変換装置に適用されるものである。図1から図3に示すように、半導体モジュール1は、ケース部材10内に積層基板2、半導体素子3、金属配線板4、5及び温度センサ6等を配置して構成される。
【0014】
積層基板2は、金属層と絶縁層とを積層して形成され、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板やAMB(Active Metal Brazing)基板、あるいは金属ベース基板で構成される。具体的に積層基板2は、絶縁板20と、絶縁板20の下面に配置された放熱板21と、絶縁板20の上面に配置された複数の回路板22と、を有する。積層基板2は、例えばY方向に比べてX方向が長い平面視矩形状に形成される。
【0015】
絶縁板20は、Z方向に所定の厚みを有し、上面と下面を有する平板状に形成される。絶縁板20は、例えばアルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)等のセラミックス材料、エポキシ等の樹脂材料、又はセラミックス材料をフィラーとして用いたエポキシ樹脂材料等の絶縁材料によって形成される。なお、絶縁板20は、絶縁層又は絶縁フィルムと呼ばれてもよい。
【0016】
放熱板21は、Z方向に所定の厚みを有し、絶縁板20の下面全体を覆うように形成される。放熱板21は、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導性の良好な金属板によって形成される。放熱板21の下面は放熱面となっており、放熱面には図示しない冷却器が取り付けられる。
【0017】
絶縁板20の主面には、複数の回路板22が島状(電気的に互いに絶縁された状態)に形成されている。図1では便宜上、1つの回路板22のみ示している。回路板22は、銅箔等によって形成される所定厚みの金属層で構成される。
【0018】
回路板22の上面には、半田等の接合材Sを介して半導体素子3が配置される。半導体素子3は、例えばシリコン(Si)、炭化けい素(SiC)等の半導体基板によって平面視方形状に形成される。本実施の形態において、半導体素子3は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子とFWD(Free Wheeling Diode)素子の機能を一体化したRC(Reverse Conducting)-IGBT素子で構成される。
【0019】
なお、半導体素子3は、これに限定されず、IGBT、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子、FWD(Free Wheeling Diode)等のダイオードを組み合わせて構成されてもよい。また、半導体素子3として逆バイアスに対して十分な耐圧を有するRB(Reverse Blocking)-IGBT等を用いてもよい。半導体素子3は縦型のスイッチング素子およびダイオードであってよい。また、半導体素子3の形状、配置数、配置箇所等は適宜変更が可能である。
【0020】
また、積層基板2の外周側の上面には、枠状のケース部材10が配置される。ケース部材10は、例えば合成樹脂によって成形され、接着剤(不図示)を介して絶縁板20の上面に接合される。ケース部材10は、積層基板2の外周を囲う環状壁部11を有している。環状壁部11は、積層基板2の外形に沿う平面視四角環状に形成されている。
【0021】
環状壁部11は、半導体モジュール1の厚み方向(Z方向)に立ち上がっている。環状壁部11の下面側には、積層基板2の外周縁が係合可能な所定深さの凹部12が形成されている。凹部12は、積層基板2の厚み(絶縁板20と放熱板21の合計厚み)に対応した深さを有している。積層基板2が凹部12に係合した状態において、回路板22は環状壁部11の内側に位置している。
【0022】
また、環状壁部11の上面の内周側には、一段下がった段部13が形成されている。段部13は、四角環状の凸部で形成され、環状壁部11の上面に対して段部13の上面(底面)が低い位置に設けられている。
【0023】
ケース部材10には、端子部材が一体成型により埋め込まれている。具体的に端子部材は、主端子14、15、制御端子16、及び温度センサ端子17によって構成される。これらの端子部材は、銅素材、銅合金系素材、アルミニウム合金系素材、鉄合金系素材等の金属素材により形成された板状体で構成される。
【0024】
主端子14、15は、環状壁部50の長手方向(X方向)で対向する一対の壁部にそれぞれ埋め込まれている。半導体素子3のエミッタ側に接続される側(図1の紙面左側)の端子部材が主端子14であり、回路板22を介して半導体素子3のコレクタ側に接続される側(図1の紙面右側)の端子部材が主端子15である。
【0025】
主端子14及び主端子15は、例えばX方向に延びる長尺体で形成される。主端子14の一端側は、環状壁部11の内側で段部13の上面(底面)に露出している。主端子14の他端側は、環状壁部11を貫通してケース部材10の外側に突出している。同様に主端子15の一端側は、環状壁部11の内側で段部13の上面(底面)に露出している。主端子15の他端側は、環状壁部11を貫通してケース部材10の外側に突出している。
【0026】
制御端子16及び温度センサ端子17は、X方向に延びる環状壁部11の一壁部に埋め込まれている。制御端子16及び温度センサ端子17は、例えばY方向に延びる長尺体で形成され、それぞれX方向に並んで一対ずつ設けられている。制御端子16及び温度センサ端子17の一端側は、環状壁部11の内側で段部13の上面(底面)に露出している。制御端子16及び温度センサ端子17の他端側は、環状壁部11を貫通してケース部材10の外側に突出している。
【0027】
半導体素子3と主端子14は、金属配線板4によって電気的に接続される。また、回路板22と主端子15は、金属配線板5によって電気的に接続される。金属配線板4、5は、上面と下面を有する板状体で構成され、例えば、銅素材、銅合金系素材、アルミニウム合金系素材、鉄合金系素材等の金属素材により形成される。金属配線板4、5は、例えばプレス加工により、所定の形状に形成される。なお、以下に示す金属配線板4、5の形状はあくまで一例を示すものであり、適宜変更が可能である。また、金属配線板は、リードフレームと呼ばれてもよい。
【0028】
金属配線板4は、X方向に長い長尺体であり、側面視L字状に屈曲した形状を有している。金属配線板4の一端側(後述する第1端部4a)は、例えば半田等の接合材(不図示)を介して半導体素子3の上面に接合されている。金属配線板4が接合される半導体素子3の上面電極はエミッタおよびアノード電極である。半導体素子3がMOSFETまたはダイオードの場合、上面電極はそれぞれソース電極、アノード電極であってよい。接合材は焼結材であってもよい。金属配線板4の他端側(後述する第2端部4b)は、主端子14の上方において下方に屈曲して主端子14の上面に接合されている。また、金属配線板4のY方向の幅は、第1端部4aから第2端部4bに至るまで一様な大きさとなっている。
【0029】
詳細は後述するが、特に第1端部4aのY方向の幅は、半導体素子3の幅よりも小さくなっている。なお、第1端部4aの幅は、これに限定されず、半導体素子3の主電極とエッジ構造が短絡しないよう処理したうえで、例えば半導体素子3の幅と同じ、又はそれよりも大きく設定されてもよい。また、図1では、第1端部4aから第2端部4bに至るまで金属配線板4のY方向の幅が一様な場合を例示しているが、これに限定されない。金属配線板4のY方向の幅は、第1端部4aから第2端部4bに至る間で部分的に変化してもよい。以下に示す金属配線板5も同様である。
【0030】
金属配線板5は、X方向に長い長尺体であり、側面視で複数回屈曲されたクランク形状を有している。金属配線板5の一端側は、回路板22の上面に接合されている。金属配線板5の他端側は、主端子15の上面に接合されている。上記したように金属配線板5のY方向の幅は、一端側から他端側に至るまで一様な大きさとなっているが、これに限定されず、途中で部分的に変化してもよい。
【0031】
図1に示すように、金属配線板4からはみ出た半導体素子3の上面には、電極パッド3a、3bが設けられている。電極パッド3a、3bは、それぞれ配線部材W1を介して制御端子16に電気的に接続される。
【0032】
金属配線板4の上面には、接合材Sを介して温度センサ6が配置されている。この場合、温度センサ6の2電極はそれぞれが離れており、且つ、温度センサ6と金属配線板4は例えば接合材Sにより電気的に絶縁されていることが好ましい。また、金属配線板4と温度センサ6を接合する接合材Sは、接着剤であってもよい。
【0033】
温度センサ6は、金属配線板4の一端側(第1端部4a側)において、平面視で半導体素子3と重なるように配置される。すなわち、温度センサ6は、半導体素子3の真上に位置している。温度センサ6は、半導体素子3の温度を検出する。具体的に温度センサ6は、サーミスタで構成される。なお、温度センサ6は、サーミスタに限定されず、他のタイプの測温抵抗体、又は熱電対で構成されてもよい。
【0034】
温度センサ6は、半導体素子3に比べて十分に小さい面積を有し、例えば平面視でX方向に長い長尺形状を有する。温度センサ6は、例えば、半導体素子3(金属配線板4)の幅方向(X方向又はY方向)の中央に配置されている。なお、温度センサ6の形状及び配置箇所はこれに限定されず、適宜変更が可能である。
【0035】
温度センサ6の一端側(例えばX方向の一端部)は、配線部材W2を介して一方の温度センサ端子17に電気的に接続される。温度センサ6の他端側(X方向反対側の他端部)は、配線部材W2を介して他方の温度センサ端子17に電気的に接続される。
【0036】
上記した配線部材W1、W2には、導体ワイヤ(ボンディングワイヤ)が用いられる(後述する配線部材W3も含む)。導電ワイヤの材質は、金、銅、アルミニウム、金合金、銅合金、アルミニウム合金のいずれか1つ又はそれらの組み合わせを用いることができる。また、配線部材として導電ワイヤ以外の部材を用いることも可能である。例えば、配線部材としてリボンを用いることができる。
【0037】
なお、温度センサ6の電気的な出力の取出し方は、上記した配線方法に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、金属配線板4上に、半導体素子3のカソード電極及びアノード電極に対応した2つの電極パッドを形成してもよい。2つの電極パッドは、金属配線板4とは、電気的に独立した状態で配置される。例えば、各電極パッドとリードフレームとの間に絶縁板が配置されることが好ましい。この場合、温度センサ6の一端は一方の電極パッドに電気的に接続され、温度センサ6の他端は他方の電極パッドに電気的に接続される。
【0038】
また、環状壁部11により規定されるケース部材10の内部空間に、封止樹脂7が充填される。これにより、積層基板2、半導体素子3、主端子14、主端子15、金属配線板4、5、温度センサ6、及び配線部材W1、W2が封止される。ケース部材10は積層基板2、半導体素子3、金属配線板4、5、温度センサ6、配線部材W1、W2、及び封止樹脂7を収容する空間を画定する。なお、封止樹脂7には、エポキシ樹脂やシリコーンゲルを用いることが可能である。封止樹脂7の種類によってケース部材10への充填量は適宜設定される。例えば、封止樹脂7が、エポキシなどの非軟質の樹脂である場合、環状壁部11の上面に至るまで封止樹脂7を充填することが多く、シリコーンゲルなどの軟質の樹脂である場合、内部の部材を包埋する範囲で充填することが多い。
【0039】
また、上記構成に限らず、ケース部材10と封止樹脂7とが一体化したフルモールド構造であってもよい。この場合、ケース部材10は、半導体モジュールの環状壁部11を形成すると共に、積層基板、半導体素子3、主端子14、主端子15、金属配線板4、5及び温度センサ6を封止する。このようなフルモールド構造は、トランスファー成型等により形成することができる。なお、封止樹脂7が一体化したケース部材10には、エポキシ樹脂を用いることが好適である。
【0040】
ところで、一般に半導体モジュールにおいては、半導体素子の動作を適切に制御するために半導体素子の温度を検出する必要がある。半導体素子の温度を検出する温度センサとして、例えばサーミスタが採用される。温度センサは、例えば上面に複数の回路板が形成された積層基板上に配置される。より具体的に温度センサは、半導体素子が配置される回路板とは独立した回路板上に配置される。また、温度センサは、半導体素子上の所定領域に配置されることもある。
【0041】
しかしながら、温度センサが半導体素子と独立した回路板に配置される場合、温度センサと半導体素子が離れてしまう。このため、温度センサは、半導体素子の熱をダイレクトに受けることができず、感知精度に影響を与えるおそれがある。また、半導体素子内部に温度センサを配置した場合、温度センサの専有面積だけ半導体素子の活性面積が削減されてしまう。すなわち、半導体素子の活性面積の一部が犠牲となる結果、半導体装置の性能に影響を与えるおそれがある。
【0042】
一方で、従来より、半導体素子と絶縁基板上の回路板との電気的な接続は、ボンディングワイヤ等の配線部材によって実現されていた。昨今では、ワイヤによる配線に代わり、板状の金属配線板構造が採用された半導体モジュールが開発されている。金属配線板構造によれば、表面積が増えることで放熱量が拡大され、チップ温度を低減することが可能である。更にワイヤ配線に比べて接続が単純であり、生産性に優れている等のメリットがある。
【0043】
そこで、本件発明者は、金属配線板が板状体で形成され、金属配線板が半導体素子の上面に配置されると金属配線板の上面に所定のスペースが確保される点に着目して本発明に想到した。本実施の形態では、半導体素子3の上面に配置された金属配線板4の上面に温度センサ6を配置している。
【0044】
この構成によれば、温度センサ6と半導体素子3を近づけて配置することができ、半導体素子3の熱が金属配線板4を介して温度センサ6に伝わり易くなる。したがって、熱の損失が少なく温度センサ6の検知精度を向上することが可能である。
【0045】
ところが、金属配線板4は、熱伝導性のよい金属材料で形成されているため、半導体素子3の熱が金属配線板4の伝熱方向下流側の主端子14に向かって拡散し、半導体素子と温度センサの温度が乖離するおそれがある。このため、更に本実施の形態では、半導体素子3の熱の拡散を抑制するための熱遮蔽部として、金属配線板4に切欠き部40を形成している。
【0046】
この構成によれば、半導体素子3から金属配線板4に伝わった熱が切欠き部40によって遮られる。この結果、熱の拡散が抑制され、温度センサ6の周囲に半導体素子3の熱が留まることになる。よって、半導体素子3上の金属配線板4の温度が半導体素子3の温度に近づき、温度センサ6の温度検知精度を高めることが可能である。
【0047】
このように、本実施の形態では、金属配線板4の上面に温度センサ6を配置したことで金属配線板4上のスペースを有効活用している。これにより、温度センサ6を半導体素子3上に直に配置する必要がなくなる。このため、半導体素子3の活性面積の一部が犠牲とならず、活性面積を最大限に活用して半導体素子3の性能を向上することが可能である。また、金属配線板4に熱遮蔽部として切欠き部40を設けたことで、温度センサ6の周囲の熱の拡散を防止することが可能である。すなわち、半導体素子3の本来の性能に影響を与えることなく、半導体素子3の温度検知精度を高めることが可能である。
【0048】
ここで、熱遮蔽部としての切欠き部40の具体的な形状及びレイアウトについて説明する。図4は、図1の熱遮蔽部を示す部分拡大図である。上記したように、金属配線板4は、一端側である第1端部4aのY方向の幅が半導体素子3のY方向の幅より小さくなっている。図1から図4に示すように、切欠き部40は、金属配線板4を厚み方向(Z方向)に貫通してY方向に延びる矩形穴で形成される。切欠き部40は、少なくとも一部が温度センサ6よりも伝熱方向下流側に配置されている。
【0049】
伝熱方向下流側とは、発熱源である半導体素子3の熱が金属配線板4の延在方向に沿って伝わる方向(図3の矢印Tの方向)の下流側を意味している。言い換えると、伝熱方向とは、金属配線板4の第1端部4aから第2端部4bに向かう方向を表している。上記したように、第1端部4aは、半導体素子3の真上に位置し、接合材(不図示)を介して半導体素子3に接合されている。第2端部4bは、切欠き部40を挟んで第1端部4aの反対側に位置している。本実施の形態では、半導体素子3から主端子14に向かう方向(X方向負側)が伝熱方向となっている。なお、伝熱方向は、上記した例に限らず、金属配線板4や切欠き部40の形状、配置箇所等に応じて適宜変更される概念である。また、図1から図4では、温度センサ6が平面視で半導体素子3と重なるように配置される一方、切欠き部40が温度センサ6の伝熱方向下流側で平面視で半導体素子3と重ならないように配置されている。
【0050】
また、図4においては、切欠き部40は短冊形であり、切欠き部40が金属配線板4の幅方向(Y方向)の両端部を残すように金属配線板4のY方向の幅より小さい幅で形成されている。このように、切欠き部40は、半導体素子3の伝熱経路の一部を遮るように形成される。
【0051】
切欠き部40が温度センサ6よりも伝熱方向下流側に配置されることで、切欠き部40よりも伝熱方向上流側、すなわち温度センサ6及び半導体素子3の近傍において、半導体素子3から金属配線板4に伝わった熱を温度センサ6の周囲に留まらせて熱拡散を防止することが可能である。これにより、温度センサ6は、半導体素子3の温度に近い金属配線板4の温度を検知することができ、その検知精度を高めることが可能である。
【0052】
また、切欠き部40が金属配線板4の両端部を残すように形成されている。すなわち、切欠き部40は金属配線板4の幅方向における伝熱経路を全て分断するのではなく、伝熱経路の一部のみを遮って他の一部を残すように形成されている。このため、温度センサ6の周囲に熱をこもらせつつも、一部の熱は切欠き部40よりも伝熱方向下流側に放出して半導体素子3の過熱を防止することが可能である。すなわち、図4の矢印Tは、残された他の一部の伝熱経路Tを表している。なお、詳細は後述するが、切欠き部40の幅は、温度センサ6の温度検知精度を向上しつつ、半導体素子3の放熱性を阻害しない程度に設定されることが好ましい。また、伝熱経路とは、モジュールの駆動によって半導体素子3で発生した熱が金属配線板4内を伝わる経路を示している。図4では、半導体素子3が接合された第1端部4aから第2端部4bに向かう方向(X方向)に対して交差する方向(Y方向)に切欠き部40が延びるように形成されている。なお、切欠き部40は、X方向に対して直交する方向ではなく、違う方向に延びてもよい。
【0053】
なお、上記実施形態において、切欠き部40は、金属配線板4に両端部を残すように形成される場合について説明したが、この構成に限定されない。例えば、図5及び図6のような構成としてもよい。図5は、変形例に係る熱遮蔽部を示す平面模式図である。図6は、他の変形例に係る熱遮蔽部を示す平面模式図である。
【0054】
図5に示す変形例では、Y方向に延びる一対の切欠き部41が金属配線板4に形成されている。一対の切欠き部41は、温度センサ6よりも伝熱方向下流側において、平面視で半導体素子3と重ならないように配置されている。また、一対の切欠き部41は、金属配線板4のY方向の端部から中央に向かって延び、金属配線板4の中央部分を残すように形成されている。すなわち、一対の切欠き部41は、Y方向で対向配置されている。これにより、金属配線板4のY方向中央に所定幅の伝熱経路Tが形成される。このような構成においても、図4と同様の効果を得ることが可能である。
【0055】
また、図6に示す変形例では、Y方向に並んで断続的に配置された複数の切欠き部42が金属配線板4に形成されている。複数の切欠き部42は、温度センサ6よりも伝熱方向下流側において、平面視で半導体素子3と重ならないように配置されている。Y方向で隣接する2つの切欠き部42の間に所定幅の伝熱経路Tが形成される。なお、切欠き部42の数は、適宜変更が可能である。このような構成においても、図4及び図5と同様の効果を得ることが可能である。複数の切欠き部42はそれぞれ平面視において矩形の孔であってよく、また円形の孔であってもよい。
【0056】
なお、図4から図6に示す伝熱経路Tの幅は金属配線板4上の導電性を確保できる程度の幅であることが好ましい。すなわち、伝熱経路Tは半導体素子3の放熱経路であると共に、金属配線板4上で電流が流れる電流経路でもある。
【0057】
また、図4から図6に示す例では、熱遮蔽部としての切欠き部40~42が、平面視で半導体素子3と重ならないように配置される場合について説明したが、この構成に限定されない。また、上記の例では、金属配線板4のY方向の幅が半導体素子3のY方向の幅よりも小さい場合について説明したが、この構成に限定されない。例えば、図7に示す構成としてもよい。図7図7A及び図7B)は、熱遮蔽部の配置例のバリエーションを示す平面模式図である。
【0058】
図7A及び図7Bに示すように、金属配線板4のY方向の幅が半導体素子3のY方向の幅よりも大きくなっている。また、金属配線板4には、温度センサ6の周囲を囲うように複数の切欠き部43が形成されている。複数の切欠き部43は、平面視で半導体素子3と重なるように配置されている。各切欠き部43は、図7Aのように所定方向に延びる長尺形状の貫通穴で形成されてもよいし、図7Bに示すように平面視L字状の貫通穴で形成されてもよい。複数の切欠き部43により温度センサ6が囲われることで、温度センサ6の周囲に熱が留まり易くなり、温度センサ6による温度検知精度を高めることが可能である。なお、図7では、温度センサ6の周囲を囲うように複数の切欠き部43が形成される場合、すなわち、複数の切欠き部43が断続的に形成される場合について説明したが、この構成に限定されない。切欠き部43は、温度センサ6の周囲を囲うように、連続的な環状に形成されてもよい。すなわち、図7において、「温度センサ6の周囲を囲う」とは、連続的に形成された環状の切欠き部43で温度センサ6の周囲を囲うだけでなく、断続的に形成される複数の切欠き部43で温度センサ6の周囲を囲う態様も含み得る概念である。したがって、温度センサ6は、切欠き部43によって完全に囲われなくてもよく、少なくとも一部が囲われていればよい。また、図7の場合、複数の切欠き部43のうち、少なくとも一部が温度センサ6よりも伝熱方向下流側(第1端部4aから第2端部4bに向かう方向の下流側)に位置している。
【0059】
また、上記実施の形態において、切欠き部40の幅は、温度センサ6の温度検知精度を向上しつつ、半導体素子3の放熱性を阻害しない程度に設定されることが好ましい。ここで、図8を参照して切欠き部40の幅D1と、切欠き部40及び温度センサ6間の距離D2について説明する。図8は、温度センサと熱遮蔽部との位置関係を示す模式図である。具体的に、図8Aは熱遮蔽部周辺の平面模式図であり、図8Bは熱遮蔽部周辺の断面模式図である。
【0060】
図8A及び図8Bに示すように、半導体素子3で発生した熱は、所定の拡散範囲を有している。例えば、図8Aに示す平面視において、半導体素子3から金属配線板4を介して温度センサ6に伝わった熱、すなわち温度センサ6を通過した半導体素子3の熱は、切欠き部40に近い側の端部から所定の角度範囲θ1で拡散する傾向がある。角度範囲θ1は、例えば90度である。
【0061】
この場合、切欠き部40の幅D1は、温度センサ6から見て角度範囲θ1以上であることが好ましい。この構成によれば、半導体素子3の熱の拡散を許容しつつも、温度センサ6の熱の拡散を抑制して温度検知精度を効果的に高めることが可能である。なお、切欠き部40の幅D1は、温度センサ6の温度検知精度よりも半導体素子3の熱拡散を優先して、角度範囲θ1の内側に収まるようにしてもよい。
【0062】
この場合、切欠き部40の幅D1が角度範囲θ1よりも極端に小さすぎると、熱の遮蔽が不十分となってしまう。一方で、切欠き部40の幅D1が角度範囲θ1以上で金属配線板4のY方向の幅まで近すぎると、センシングに必要とする以上に熱を遮蔽し放熱も阻害してしまうおそれがある。したがって、切欠き部40の幅D1は、上記した温度センサ6の温度検知精度の確保と半導体素子3の熱拡散を両立する範囲で設定されることが好ましい。
【0063】
また、図8Bに示す断面視において、半導体素子3の熱は、上面側に配置される金属配線板4に対して上方に向かって所定の角度範囲θ2で拡散する傾向がある。角度範囲θ2は、例えば90度である。
【0064】
この場合、切欠き部40と温度センサ6の対向間隔(距離D2)は、切欠き部40が角度範囲θ2よりも外側に配置されるように設定されることが好ましい。この構成によれば、半導体素子3の熱の拡散を許容しつつも、温度センサ6を通過した熱の拡散を抑制して温度検知精度を効果的に高めることが可能である。なお、切欠き部40は、半導体素子3の放熱よりも温度センサ6を通過した熱の拡散防止を優先して、角度範囲θ2内に収まるように配置してもよい。
【0065】
次に、図9から図11を参照して、他の例に係る半導体モジュールについて説明する。図9は、本実施の形態の他の例に係る半導体モジュールを示す平面模式図である。図10は、図9のC-C線に沿って切断した断面模式図である。図11は、図9の熱遮蔽部を示す部分拡大図である。図9から図11の態様では、図1から図4に示す半導体モジュールに対して、回路板及び一部の端子部材のレイアウトが相違すると共に、金属配線板の一部形状が相違する。このため、主に相違点のみ説明し、共通する構成は同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0066】
図9から図11に示す半導体モジュール1において、絶縁板20の主面には、2つの回路板22a、22bが島状に形成されている。2つの回路板22a、22bは、Y方向に長い矩形状を有し、X方向に並んで配置されている。回路板22aの上面には、接合材Sを介して半導体素子3が配置されている。半導体素子3の上面には、半導体素子3の外形より僅かに小さい矩形状の主電極30が形成されている。また、半導体素子3の上面には、主電極30の外側に電極パッド3a、3bが形成されている。
【0067】
半導体素子3の上面には、金属配線板4が配置されている。金属配線板4は、平面視において2つの回路板22a、22bを跨ぐようにX方向に延びた長尺体であり、側面視で複数回屈曲されたクランク形状を有している。金属配線板4の一端側(第1端部4a)は、半田等の接合材Sを介して半導体素子3の主電極30の上面に電気的に接合される。金属配線板4の他端側(第2端部4b)は、半田等の接合材Sを介して回路板22bの上面に電気的に接合される。金属配線板4は、平面視において、第1端部4aのY方向の幅が半導体素子3(主電極30)のY方向の幅よりも小さく、第2端部4bのY方向の幅が第1端部4aの幅よりも大きくなるように形成されている。
【0068】
金属配線板4の第1端部4a側の上面には、厚み方向に貫通する切欠き部40が形成されている。切欠き部40は、Y方向に延びる長尺形状を有し、半導体素子3(主電極30)の真上に配置されている。また、金属配線板4の第1端部4a側の上面には、接合材(不図示)を介して温度センサ6が配置されている。切欠き部40及び温度センサ6は、平面視で半導体素子3(主電極30)に重なるように配置される。また、切欠き部40は、金属配線板4の第1端部4aから第2端部4bに向かう方向において、温度センサ6よりも下流側に配置されている。
【0069】
特に切欠き部40の少なくとも一部は、接合材Sによって満たされており、接合材Sの上面がフィレット形状を成している(図10参照)。このような構成においては、切欠き部40が温度センサ6よりも伝熱方向下流側に配置され、切欠き部40に満たされた接合材S(半田)の熱伝導率が金属配線板4の熱伝導率よりも小さいため、温度センサ6の直下に位置する半導体素子3から発生する熱を遮蔽する効果が得られる。すなわち、切欠き部40及び切欠き部40内に入り込んだ接合材Sが、熱遮蔽部として機能する。
【0070】
また、図11に示すように、金属配線板4のY方向の幅を幅Wとし、金属配線板4のY方向の両端部から切欠き部40の端部までの距離をそれぞれY1、Y2とする。また、切欠き部40と温度センサ6との対向間隔をX1とし、金属配線板4の第1端部4aから温度センサ6の一端部までの距離をX2とする。更に、温度センサ6のX方向負側の端部と、切欠き部40の端部とを接続する一対の直線が成す角をθ3とする。この場合、X1≦X2、85°≦θ3≦95°、Y1≧X1、Y2≧X1であることが好ましい。これらの範囲は、切欠き部40の寸法、配置箇所を設定する上で、温度センサ6の温度検知精度の確保と半導体素子3の熱拡散を両立可能な範囲を表している。
【0071】
次に、図12を参照して他の実施の形態について説明する。図12は、他の実施の形態に係る半導体モジュールの模式図である。
【0072】
図1から図11の例では、金属配線板4の上面に温度センサ6を配置した場合について説明した。これに対し、図12に示す例では、温度センサ6に対応する箇所に熱遮蔽部として切欠き部44(開口)を金属配線板4に形成している。切欠き部44は、温度センサ6よりも大きい面積を有している。温度センサ6は、切欠き部44内において、接合材Sを介して直接半導体素子3に接合されている。
【0073】
この構成によれば、温度センサ6が直接半導体素子3に接合されるため、温度センサ6は、半導体素子3の熱を直接受けることが可能である。このため、温度センサ6による温度検知精度を高めることが可能である。また、温度センサ6に対応して温度センサ6よりも大きい切欠き部44を金属配線板4に形成したことで、温度センサ6と金属配線板4が直接触れることがない。このため、半導体素子3から温度センサ6に伝わった熱が、金属配線板4に拡散することを防止できる。よって、上記と同様に温度センサ6による温度検知精度をより高めることが可能である。
【0074】
以上説明したように、本発明によれば、半導体素子3から温度センサ6に伝わった熱の金属配線板を介した拡散を熱遮蔽部によって遮蔽することで、半導体素子の本来の性能に影響を与えることなく、半導体素子の温度検知精度を高めることが可能である。
【0075】
なお、上記実施の形態において、積層基板2に配置される半導体素子3や金属配線板4に配置される温度センサ6の個数及び配置箇所は、上記構成に限定されず、適宜変更が可能である。
【0076】
また、上記実施の形態において、回路板22の個数及びレイアウトは、上記構成に限定されず、適宜変更が可能である。
【0077】
また、上記実施の形態では、半導体素子3が平面視矩形状に形成される構成としたが、この構成に限定されない。半導体素子3は、矩形以外の多角形状に形成されてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態では、温度センサ6がX方向に長い長尺形状を有する場合について説明したが、この構成に限定されない。温度センサ6はY方向に長い長尺形状であってよく、また長尺形状に限らず、その形状及び配置箇所は適宜変更が可能である。
【0079】
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0080】
また、本実施の形態は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0081】
下記に、上記実施の形態における特徴点を整理する。
上記実施の形態に記載の半導体モジュールは、絶縁板の上面に回路板が配置され、前記絶縁板の下面に放熱板が配置された積層基板と、前記回路板の上面に配置される半導体素子と、前記半導体素子の上面に配置される金属配線板と、前記金属配線板の上面に配置され、前記半導体素子の温度を検出する温度センサと、を備え、前記金属配線板は、前記半導体素子の熱を遮蔽する熱遮蔽部を有する。
【0082】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記金属配線板は、前記半導体素子が接合される第1端部と、前記第1端部とは反対側に位置する第2端部と、を有し、前記熱遮蔽部は、少なくとも一部が前記温度センサよりも前記第1端部から前記第2端部に向かう方向の下流側に配置される。
【0083】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記熱遮蔽部は、前記第1端部から前記第2端部に向かう方向に対して交差する方向に延びる切欠き部で形成される。
【0084】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記温度センサは、平面視で前記半導体素子に重なるように配置される。
【0085】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記熱遮蔽部は、平面視で前記半導体素子に重なるように配置される。
【0086】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記熱遮蔽部は、前記温度センサの周囲を囲うように配置される。
【0087】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記熱遮蔽部は、平面視における前記半導体素子の熱の拡散範囲内に配置される。
【0088】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールにおいて、前記熱遮蔽部は、断面視における前記半導体素子の熱の拡散範囲よりも外側に配置される。
【0089】
また、上記実施の形態に記載の半導体モジュールは、絶縁板の上面に回路板が配置され、前記絶縁板の下面に放熱板が配置された積層基板と、前記回路板の上面に配置される半導体素子と、前記半導体素子の上面に配置される金属配線板と、前記半導体素子の上面に設けられた前記金属配線板の開口に配置され、前記半導体素子の温度を検出する温度センサと、を備える。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本発明は、半導体素子の本来の性能に影響を与えることなく、半導体素子の温度検知精度を高めることができるという効果を有し、特に、半導体モジュールに有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 :半導体モジュール
2 :積層基板
3 :半導体素子
3a :電極パッド
3b :電極パッド
4 :金属配線板
4a :第1端部
4b :第2端部
5 :金属配線板
6 :温度センサ
7 :封止樹脂
10 :ケース部材
11 :環状壁部
12 :凹部
13 :段部
14 :主端子
15 :主端子
16 :制御端子
17 :温度センサ端子
20 :絶縁板
21 :放熱板
22 :回路板
40 :切欠き部
41 :切欠き部
42 :切欠き部
43 :切欠き部
44 :切欠き部
D1 :切欠き部の幅
D2 :距離
S :接合材
T :伝熱経路
θ1 :角度範囲
θ2 :角度範囲
θ3 :角度範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12