(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】分包シートの検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20230801BHJP
G01N 21/3563 20140101ALI20230801BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20230801BHJP
【FI】
G01N21/85 A
G01N21/3563
G01N21/359
(21)【出願番号】P 2019200551
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】富永 成典
(72)【発明者】
【氏名】佐野 嘉彦
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-68765(JP,A)
【文献】特開2017-158947(JP,A)
【文献】特開2017-78601(JP,A)
【文献】特開平7-10102(JP,A)
【文献】米国特許第9272796(US,B1)
【文献】国際公開第2012/070643(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/081261(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/147907(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 21/84-G01N 21/958
A61J 1/00-A61J 19/06
B65B 1/00-B65B 3/36
B65B 37/00-B65B 39/14
B65B 57/00-B65B 57/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形薬剤が収容された内部空間を有しており、少なくとも当該内部空間に対応する部分が透光性を有するフィルムにより形成されたシート形状の分包袋が、行方向及び列方向に並んだ分包シートを検査する検査装置であって、
第1支持位置において上記分包シートを支持する支持部と、
上記第1支持位置の上記分包袋の内部空間へ、第1方向から可視光を照射する第1照射部と、
上記第1支持位置の上記分包袋の内部空間へ、上記第1方向と異なる第2方向から可視光を照射する第2照射部と、
上記第1支持位置の上記分包袋の内部空間を撮影して画像データを出力するカメラと、
上記第1照射部、上記第2照射部、及び上記カメラを上記支持部に対して行方向及び列方向へ走査する第1走査部と、
コントローラと、
メモリと、を具備しており、
上記コントローラは、
処方箋情報を取得して上記メモリに記憶する取得処理と、
上記第1走査部を駆動して、特定の分包袋に対応する開始位置から、当該特定の分包袋と異なる分包袋に対応する終了位置へ向けて、上記分包シートの各分包袋に対応する各検査位置へ、上記第1照射部、上記第2照射部、及び上記カメラを、行方向又は列方向に隣り合う検査位置へ順次移動する第1走査処理と、
上記第1走査部を駆動して、上記第1照射部、上記第2照射部、及び上記カメラを、上記終了位置から、行方向又は列方向に隣り合う上記各検査位置へ順次移動する第2走査処理と、
上記第1走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記第1照射部から可視光を照射して、上記カメラにより撮影して得られた第1画像データを上記メモリに記憶する第1撮影処理と、
上記第1走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記第2照射部から可視光を照射して、上記カメラにより撮影して得られた第2画像データを上記メモリに記憶する第2撮影処理と、
上記第2走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記第1照射部及び上記第2照射部から可視光を照射して、上記カメラにより撮影して得られた第3画像データを上記メモリに記憶する第3撮影処理と、
上記メモリに記憶された一の分包袋に対応する上記第1画像データにおける刻印を有する第1固形薬剤の画像と、当該分包袋に対応する上記第2画像データにおける当該第1固形薬剤の画像とを合成して、合成データを生成する合成処理と、
上記合成データから上記第1固形薬剤に付された刻印を判定する第1判定処理と、
上記第3画像データにおける第2固形薬剤に付された印刷を判定する第2判定処理と、
判定した上記第1固形薬剤の刻印及び上記第2固形薬剤の印刷の少なくとも一方を用いて各分包袋に封入された固形薬剤の種類を判定し、当該判定結果と上記メモリに記憶された上記処方箋情報とを対比して対比結果を出力する第1対比処理と、を実行する検査装置。
【請求項2】
上記第1照射部及び上記第2照射部を、第1照射位置と、上記第1支持位置の上記分包シートに対して当該第1照射位置よりも近い位置である第2照射位置へ移動する移動部を更に備えており、
上記コントローラは、
上記第1撮影処理において上記第1照射部を上記第2照射位置に位置させ、
上記第2撮影処理において上記第2照射部を上記第2照射位置に位置させ、
上記第3撮影処理において上記第1照射部及び上記第2照射部を上記第1照射位置に位置させる請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
上記第1支持位置の上記分包袋の内部空間へ、上記第1方向及び上記第2方向と異なる第3方向から
可視光を照射する第3照射部と、
上記第1支持位置の上記分包袋の内部空間へ、上記第1方向、上記第2方向、及び上記第3方向と異なる第4方向から
可視光を照射する第4照射部と、を更に具備しており、
上記第1照射部、上記第2照射部、上記第3照射部、及び上記第4照射部は、周方向の位置が相互に異なる環状に配置されたものであり、
上記第1走査部は、上記第1照射部及び上記第2照射部と共に上記第3照射部及び上記第4照射部を上記支持部に対して行方向及び列方向へ走査するものであり、
上記コントローラは、
上記第1走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記第3照射部から
可視光を照射して、上記カメラにより撮影して得られた第3画像データを上記メモリに記憶する第4撮影処理と、
上記第1走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記第4照射部から
可視光を照射して、上記カメラにより撮影して得られた第4画像データを上記メモリに記憶する第5撮影処理と、を更に実行し、
上記合成処理において、上記第1画像データにおける上記第1固形薬剤の画像と、当該分包袋に対応する上記第2画像データにおける当該第1固形薬剤の画像と、当該分包袋に対応する上記第3画像データにおける当該第1固形薬剤の画像と、当該分包袋に対応する上記第4画像データにおける当該第1固形薬剤の画像と、を合成して、上記合成データを生成する請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
上記支持部は、上記第1支持位置と異なる第2支持位置において上記分包シートを支持するものであり、
上記メモリは、複数種類の固形薬剤のスペクトルデータを含む周波数特性データベースを記憶しており、
上記第2支持位置の上記分包袋の内部空間へ近赤外光を照射する近赤外光照射部と、
上記第2支持位置の上記分包袋の内部空間から反射した近赤外光を受光してスペクトルデータを出力するスペクトルカメラと、
上記近赤外光照射部及び上記スペクトルカメラを、上記支持部に対して行方向及び列方向へ走査する第2走査部と、を更に具備しており、
上記コントローラは、
上記第2走査部を駆動して、上記第2支持位置の上記分包シートの各分包袋に対応する各検査位置へ、上記近赤外光照射部及び上記スペクトルカメラを、行方向又は列方向に隣り合う検査位置へ順次移動する第3走査処理と、
上記第3走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記近赤外光照射部から近赤外光を照射して、上記スペクトルカメラが出力するスペクトルデータを上記メモリに記憶する第6撮影処理と、
上記スペクトルデータにおける特定の固形薬剤のスペクトル情報と、上記周波数特性データベースにおける当該固形薬剤のスペクトルデータとを対比して特定の固形薬剤の種類を判定し、当該判定結果と上記メモリに記憶された上記処方箋情報とを対比して対比結果を出力する第2対比処理と、を実行する請求項1から3のいずれかに記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分包シートの各分包袋内の固形薬剤が正しいことを確認するための検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、調剤薬局などでは、患者の便宜のために薬剤が一包化されるようになってきた。すなわち、服用時期が同一である薬剤や一回に何種類かの薬剤を服用する場合のために、それらの薬剤はまとめて一つの分包袋に封入される。ただし、分包袋に封入される薬剤は、処方箋に従って薬剤を調剤した薬剤師が、各分包袋用に準備する。この作業は人間によるものであるため、ミスが発生する可能性がある。
【0003】
これに対して、分包袋内に正しく固形薬剤が入っていることを確認するための装置がある。このような装置の例として、固形薬剤の表面には印字や印影を読み取るために、透明または半透明の分包袋をカメラで撮像して印字や印影を判別する装置がある(特許文献1,特許文献2)。この他にも、分包袋内の薬剤の判別ではないが、固形薬剤に付された文字などを、印字色と背景色とのコントラストが最大となるようにして読み取る装置がある(特許文献3)。さらに、撮像用のカメラは用いずに、スペクトルカメラを用いて薬剤の種類を認識する装置もある(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-117921号公報
【文献】特許第6100136号公報
【文献】特開2010-190786号公報
【文献】特許第5917711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、分包袋内の薬剤の数や種類に間違いがあってはならないのに対して、これら装置それぞれによる確認の精度は十分であるとは言えない。そのため、分包袋内の薬剤の数や種類を精度よく確認できる装置が望まれている。また、装置が確認に要する時間も短いことが望ましい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の分包袋からなる分包シートにおいて、各分包袋内の薬剤を高い精度で確認でき、また、短時間で確認可能な検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、固形薬剤が収容された内部空間を有しており、少なくとも当該内部空間に対応する部分が透光性を有するフィルムにより形成されたシート形状の分包袋が、行方向及び列方向に並んだ分包シートを検査する検査装置に関する。本検査装置は、第1支持位置において上記分包シートを支持する支持部と、上記第1支持位置の上記分包袋の内部空間へ、第1方向から可視光を照射する第1照射部と、上記第1支持位置の上記分包袋の内部空間へ、上記第1方向と異なる第2方向から可視光を照射する第2照射部と、上記第1支持位置の上記分包袋の内部空間を撮影して画像データを出力するカメラと、上記第1照射部、上記第2照射部、及び上記カメラを上記支持部に対して行方向及び列方向へ走査する第1走査部と、コントローラと、メモリと、を具備する。上記コントローラは、処方箋情報を取得して上記メモリに記憶する取得処理と、上記第1走査部を駆動して、特定の分包袋に対応する開始位置から、当該特定の分包袋と異なる分包袋に対応する終了位置へ向けて、上記分包シートの各分包袋に対応する各検査位置へ、上記第1照射部、上記第2照射部、及び上記カメラを、行方向又は列方向に隣り合う検査位置へ順次移動する第1走査処理と、上記第1走査部を駆動して、上記第1照射部、上記第2照射部、及び上記カメラを、上記終了位置から、行方向又は列方向に隣り合う上記各検査位置へ順次移動する第2走査処理と、上記第1走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記第1照射部から可視光を照射して、上記カメラにより撮影して得られた第1画像データを上記メモリに記憶する第1撮影処理と、上記第1走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記第2照射部から可視光を照射して、上記カメラにより撮影して得られた第2画像データを上記メモリに記憶する第2撮影処理と、上記第2走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記第1照射部及び上記第2照射部から可視光を照射して、上記カメラにより撮影して得られた第3画像データを上記メモリに記憶する第3撮影処理と、上記メモリに記憶された一の分包袋に対応する上記第1画像データにおける刻印を有する第1固形薬剤の画像と、当該分包袋に対応する上記第2画像データにおける当該第1固形薬剤の画像とを合成して、合成データを生成する合成処理と、上記合成データから上記第1固形薬剤に付された刻印を判定する第1判定処理と、上記第3画像データにおける第2固形薬剤に付された印刷を判定する第2判定処理と、判定した上記第1固形薬剤の刻印及び上記第2固形薬剤の印刷の少なくとも一方を用いて各分包袋に封入された固形薬剤の種類を判定し、当該判定結果と上記メモリに記憶された上記処方箋情報とを対比して対比結果を出力する第1対比処理と、を実行する。
【0008】
開始位置から終了位置に向けて、第1照射部、第2照射部、及びカメラが、行方向又は列方向に隣り合う検査位置へ順次移動し、終了位置から、第1照射部、第2照射部、及びカメラが行方向又は列方向に隣り合う検査位置へ順次移動するので、往路において固形薬剤の刻印を判定するための第1画像データおよび第2画像データを取得し、復路において印刷を判定するための第3画像データが取得される。そのため、第1走査処理と第2走査処理とが効率的に行われる。
【0009】
(2) 好ましくは、上記検査装置は、上記第1照射部及び上記第2照射部を、第1照射位置と、上記第1支持位置の上記分包シートに対して当該第1照射位置よりも近い位置である第2照射位置へ移動する移動部を更に備えており、上記コントローラは、上記第1撮影処理において上記第1照射部を上記第2照射位置に位置させ、上記第2撮影処理において上記第2照射部を上記第2照射位置に位置させ、上記第3撮影処理において上記第1照射部及び上記第2照射部を上記第1照射位置に位置させる。
【0010】
第1照射部又は第2照射部が第2照射位置に位置されて可視光が照射されることによって、第1照射位置から可視光が照射されるよりも、第1画像データ及び第2画像データにおける固形薬剤の刻印の印影が濃くなり、刻印の判定精度が向上する。第1照射部及び第2照射部が第1照射位置に位置されて可視光が照射されることによって、第2照射位置から可視光が照射されるよりも、第3画像データにおいて固形薬剤の印影が少なくなり、印刷の判定精度が向上する。
【0011】
(3) 好ましくは、上記検査装置は、上記第1支持位置の上記分包袋の内部空間へ、上記第1方向及び上記第2方向と異なる第3方向から可視光を照射する第3照射部と、上記第1支持位置の上記分包袋の内部空間へ、上記第1方向、上記第2方向、及び上記第3方向と異なる第4方向から可視光を照射する第4照射部と、を更に具備しており、上記第1照射部、上記第2照射部、上記第3照射部、及び上記第4照射部は、周方向の位置が相互に異なる環状に配置されたものであり、上記第1走査部は、上記第1照射部及び上記第2照射部と共に上記第3照射部及び上記第4照射部を上記支持部に対して行方向及び列方向へ走査するものであり、上記コントローラは、上記第1走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記第3照射部から可視光を照射して、上記カメラにより撮影して得られた第3画像データを上記メモリに記憶する第4撮影処理と、上記第1走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記第4照射部から可視光を照射して、上記カメラにより撮影して得られた第4画像データを上記メモリに記憶する第5撮影処理と、を更に実行し、上記合成処理において、上記第1画像データにおける上記第1固形薬剤の画像と、当該分包袋に対応する上記第2画像データにおける当該第1固形薬剤の画像と、当該分包袋に対応する上記第3画像データにおける当該第1固形薬剤の画像と、当該分包袋に対応する上記第4画像データにおける当該第1固形薬剤の画像と、を合成して、上記合成データを生成する。
【0012】
上記構成によれば、刻印の判定精度が更に向上する。
【0013】
(4) 好ましくは、上記支持部は、上記第1支持位置と異なる第2支持位置において上記分包シートを支持するものであり、上記メモリは、複数種類の固形薬剤のスペクトルデータを含む周波数特性データベースを記憶しており、上記検査装置は、上記第2支持位置の上記分包袋の内部空間へ近赤外光を照射する近赤外光照射部と、上記第2支持位置の上記分包袋の内部空間から反射した近赤外光を受光してスペクトルデータを出力するスペクトルカメラと、上記近赤外光照射部及び上記スペクトルカメラを、上記支持部に対して行方向及び列方向へ走査する第2走査部と、を更に具備しており、上記コントローラは、上記第2走査部を駆動して、上記第2支持位置の上記分包シートの各分包袋に対応する各検査位置へ、上記近赤外光照射部及び上記スペクトルカメラを、行方向又は列方向に隣り合う検査位置へ順次移動する第3走査処理と、上記第3走査処理における上記各検査位置において、対応する分包袋の内部空間へ上記近赤外光照射部から近赤外光を照射して、上記スペクトルカメラが出力するスペクトルデータを上記メモリに記憶する第6撮影処理と、上記スペクトルデータにおける特定の固形薬剤のスペクトル情報と、上記周波数特性データベースにおける当該固形薬剤のスペクトルデータとを対比して特定の固形薬剤の種類を判定し、当該判定結果と上記メモリに記憶された上記処方箋情報とを対比して対比結果を出力する第2対比処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る検査装置によれば、複数の分包袋からなる分包シートに対して、各分包袋内の薬剤を高い精度で確認でき、また、短時間で確認可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図3は、検査装置10によって検査される分包シート20の上面図である。
【
図4】
図4は照明装置42の下面図であり、(A)~(D)はそれぞれ第1走査処理における照明体14-1~14-4の作動を示す図である。
【
図5】
図5は照明装置42の下面図であり、第2走査処理における照明体14-1~14-4の作動を示す図である。
【
図6】
図6は分包シート20に対する照明装置42の位置を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0017】
[検査装置10]
図1および
図2に示されるように、検査装置10は、搬送装置30、画像検査部40、成分検査部50および制御装置60を有する。検査装置10は、搬送装置30によって搬送されてくる分包シート20を検査する。
【0018】
[分包シート20]
図3に示されるように分包シート20は、行方向X1および列方向Y1に並んだ複数の分包袋21を有する。分包シート20は、行方向X1および列方向Y1において隣り合う分包袋21がミシン目の境界22において接している。分包シート20は薬剤の一包化に対応したものである。そのため、図示の例では行方向X1に4つの分包袋21が並んでいるが、これらにはそれぞれ朝、昼、晩および就寝前の服用ごとに1つ以上の固形薬剤が個別包装されている。そして、図示の例では列方向Y1に7つの分包袋21が並んでいるが、これらはそれぞれ一週間の各曜日の服用のためのものである。
【0019】
分包袋21は、平面視が四角形の袋であり、それぞれが内部空間21aを有する。分包袋21は、少なくとも内部空間21aに対応する部分が透光性を有するフィルムにより形成されている。このようなフィルムは例えば合成樹脂製のフィルムである。分包袋21の内部空間21aには1つ以上の固形薬剤3が収容されている。固形薬剤3には、錠剤のみならずカプセル剤も含まれる。また、錠剤は割線で分割された半錠であってもよい。固形薬剤3の表面には、通常、薬剤の製品名や識別コードが印字または刻印されている。本実施形態に係る検査装置10は、以下に詳述するように、固形薬剤3の印字または刻印された製品名や識別コードを画像から判定し、かつ、固形薬剤3の成分を判定して、分包シート20の分包袋21それぞれに正しく薬剤が分包されているかを検査する。
【0020】
[搬送装置30]
図1および
図2に示されるように、搬送装置30は画像検査部40および成分検査部50の下方に配置される。搬送装置30は、搬送ベルト32(支持部の一例)、駆動プーリ34および従動プーリ36を有する。駆動プーリ34は、図示しないモータに接続されており、モータの駆動によって回転する。この図示しないモータは、検査装置10の制御装置60に接続されており、制御装置60によって制御される。従動プーリ36は駆動プーリ34の回転に追従して回転する。これらプーリ34,36の回転により、搬送ベルト32が、分包シート20の行方向X1(
図3参照)と反対方向である行方向X2に駆動される。このようにして、搬送ベルト32に載置された分包シート20が、画像検査部40または成分検査部50の各直下を搬送される。ここで、分包シート20の位置として、画像検査部40の直下における位置は画像検査用位置(第1支持位置)P1であり、成分検査部50の直下における位置は成分検査用位置(第2支持位置)P2である。つまり、搬送ベルト32は、画像検査用位置P1および成分検査用位置P2において分包シート20を支持する。
【0021】
[画像検査部40]
画像検査部40は、可視光照明装置42、デジタルカラーカメラ44、および画像検査用走査装置46を備える。可視光照明装置42は環状であり、上方に位置する支持部12、および下方に位置する照明器群13からなる。可視光照明装置42は、照明器群13を下側から見ると、
図4(A)および(B)に示されるように、8つの照明器13aから構成される。照明器群13は環状であり、照明器13aは、環状の照明部13が周方向に沿って8等分されたものである。本実施形態では、これら8つの照明器13aが、互いに隣接する一対の照明器13aで照明体14を構成する。そのため、図示の例では、照明器群13は第1から第4の照明体(照射部)14-1~14-4を備える。
【0022】
照明器13aは例えばそれぞれ可視波長域のLED(発光ダイオード)照明器である。ただし、照明器13aは可視光を照射してデジタルカラーカメラ44の撮影に役立つものであればいかなる照明器であってもよい。これら照明器13aは個別に制御可能であるが、本実施形態では照明体14ごとに作動と停止が行われる。なお、図示されていないが、可視光照明装置42は、デジタルカラーカメラ44と共に移動可能に支持されている。
【0023】
デジタルカラーカメラ44は、例えば、CCDデジタルカラーカメラである。デジタルカラーカメラ44は真下にレンズが向くように配置されている。つまり、デジタルカラーカメラ44は、真下に位置する物の画像を撮影できる。したがって、デジタルカラーカメラ44は、分包シート20が画像検査用位置P1に位置すると、分包シート20の1つ以上の分包袋21を撮影することができる。
【0024】
画像検査用走査装置46は、デジタルカラーカメラ44に接続されて左右方向Xに延びる第1アーム46aと、画像走査用第1アーム46aに接続されて前後方向Yに延びる画像走査用第2アーム46bとを有する。例えば、図示しないモータの駆動が伝達されて、デジタルカラーカメラ44が画像走査用第1アーム46aに沿って左右方向Xに移動する。同様に例えば、図示しないモータの駆動が伝達されることによって、画像走査用第1アーム46aが画像走査用第2アーム46bに沿って前後方向Yに移動する。なお、前後方向Yは、搬送ベルト32に載置された分包シート20の行方向X1と、搬送ベルト32の行方向X2との両方向である。同様に、左右方向Xは、搬送ベルト32に載置された分包シート20の列方向Y1と、その反対方向Y2との両方向である。
【0025】
以上の構成により、デジタルカラーカメラ44は前後方向Yおよび左右方向Xに移動可能である。これにより、デジタルカラーカメラ44による撮影箇所が変更される。また、上述のように可視光照明装置42はデジタルカラーカメラ44によって支持されているため、可視光照明装置42もデジタルカラーカメラ44に連動して前後方向Yおよび左右方向Xに移動される。
【0026】
画像検査用走査装置46は、また、可視光照明装置42を上下方向Zに移動させる図示しない移動機構を備える。これにより、
図6に示されるように、可視光照明装置42は実線で示す上方位置P11と二点鎖線で示す下方位置P12との間を移動可能である。可視光照明装置42を上方位置P11に配置する場合と下方位置P12に配置する場合ついて後で詳述する。
【0027】
[成分検査部50]
成分検査部50は、近赤外照明装置52、近赤外スペクトルカメラ54、および成分検査用走査装置56を備える。近赤外照明装置52は、前後方向Yに沿った2つのLED照明器52aであって、近赤外波長域のLED照明器52aからなる。本実施形態では、これらLED照明器52aは同時に作動と停止が行われる。なお、近赤外照明装置52は、図示しない複数のリンクで上方の近赤外スペクトルカメラ54によって支持されている。
【0028】
近赤外スペクトルカメラ54は、ライン走査型のハイパースペクトルカメラである。そのため、近赤外スペクトルカメラ54は、ライン状のハイパースペクトル画像を取得ラインを走査するものである。このようにして、近赤外スペクトルカメラ54は下方の水平面内の波長分布を取得する。
【0029】
成分検査用走査装置56は、近赤外スペクトルカメラ54に接続されて左右方向Xに延びる成分検査用第1アーム56aと、成分検査用第1アーム56aに接続されて前後方向Yに延びる成分検査用第2アーム56bとを有する。例えば、図示しないモータの駆動が伝達されることによって、近赤外スペクトルカメラ54は、成分検査用第1アーム56aに沿って前後方向Yに移動する。同様に例えば、図示しないモータの駆動が伝達されることによって、成分検査用第2アーム56aが成分検査用第2アーム56bに沿って前後方向Yに移動する。近赤外照明装置52は、上述のように近赤外スペクトルカメラ54によって支持されているため、近赤外照明装置52も近赤外スペクトルカメラ54も近赤外スペクトルカメラ54に連動して前後方向Yおよび左右方向Xに移動される。
【0030】
[制御装置60]
制御装置60は、画像検査部40および成分検査部50に接続され、これら検査部40,50を制御する装置である。制御装置60は、
図7に示されるように、コントローラ62およびメモリ64を有する。制御装置60は、その内部または図示のように外部に、処方箋情報を入力するためのユーザインタフェース63を有する。ユーザインタフェース63は、例えば、薬剤師などが手動入力するための画面および入力装置(キーボードやマウス)である。処方箋情報が電子データである場合には、ユーザインタフェース63は通信部(図示せず)であってもUSB(Universal Serial Bus)メモリなどのための端子(図示せず)であってもよい。
【0031】
コントローラ62は、検査全体のために、統合コントロールモジュール66、および取得モジュール68を備える。コントローラ62は、画像検査のために、往路走査モジュール71、第1往路撮影モジュール72、第2往路撮影モジュール73、合成モジュール74、刻印判定モジュール75、復路走査モジュール76、復路撮影モジュール77、印刷判定モジュール78、および画像検査対比モジュール79を備える。コントローラ62は、さらに、成分検査のために、ライン走査モジュール81、スペクトル撮影モジュール82、および成分検査対比モジュール83を備える。
【0032】
メモリ64は、処方箋データ記憶部90、周波数特性データベース91、第1中間画像データ記憶部92、第2中間画像データ記憶部93、刻印用画像データ記憶部94、印刷用画像データ記憶部95、およびスペクトルデータ記憶部96を備える。上記各モジュールによる処理、およびこれらモジュールによる上記データの書込みおよび読取りについては、検査装置10の動作方法の説明に関連して後述する。
【0033】
なお、
図1および
図2では制御装置60は搬送装置30の側方に設けられているものとしたが、制御装置60はいかなる場所に設けられていてもよい。例えば、制御装置60はパーソナルコンピュータにおいて実現されていてもよい。その場合制御装置60は、有線または無線で搬送装置30、画像検査部40、および成分検査部50に接続されてもよい。また、制御装置60は複数の装置やコンピュータに分散して実現されてもよい。
【0034】
[検査装置10の動作方法]
以下、
図1から
図7を参照して、検査装置10の動作方法が説明される。まず、薬剤師が処方箋に従って調剤して一包化した分包シート20が、1つ以上準備されているものとする。薬剤師の調剤の前または後に、ユーザインタフェース63を介して処方箋情報が制御装置60に入力される。取得モジュール68がこの処方箋情報を取得して、処方箋データ記憶部90に処方箋データとして記憶する(取得処理の一例)。周波数特性データベース91は、複数種類の固形薬剤3のスペクトルデータを含む。
【0035】
準備された分包シート20は、例えば、搬送ベルト32または搬送ベルト32に連結された載置部に載置される。なお、
図1および
図2には、搬送ベルト32に2つの分包シート20が載置されている状態が示されているが、いくつ載置されていてもよい。
【0036】
[画像検査]
検査対象である一の分包シート20が画像検査用位置P1に到達すると、統合コントロールモジュール66が往路走査モジュール(第1走査処理を実行するモジュール)71に指令を送信する。この指令によって画像検査が開始する。本実施形態では、画像検査の開始時において、可視光照明装置42は
図6に示される下方位置P12に位置している。また、画像検査開始時点において、デジタルカラーカメラ44および可視光照明装置42はそれらの開始位置にあるものとする。これら開始位置とは、
図3の分包シート20の特定の分包袋21(図示の例では、紙面右上の分包袋21-S)を撮影するのにデジタルカラーカメラ44と可視光照明装置42が適した水平方向における位置のことである。この開始位置では、分包袋21-Sの内部空間21aさえ撮影されればよく、他の分包袋21の内部空間21aは撮影されない。
【0037】
この状態で、第1往路撮影モジュール(第1撮影処理を実行するモジュール)72は、照明体14-1(
図4(A))を作動して、他の照明体14-2~14-4(
図4(A))は停止したままにしておく。なお、
図4においては、作動により点灯している照明器13aにハッチングが付されており、停止により消灯している照明器13aにはハッチングが付されていない。第1往路撮影モジュール72は、次に、デジタルカラーカメラ44により分包袋21-Sの内部空間21aを撮影してその画像を第1中間画像データ記憶部92に記憶する。この後、第2往路撮影モジュール(第2撮影処理を実行するモジュール)73が、照明体14-2(
図4(A))を停止して照明体14-2(
図4(A))を作動する。第2往路撮影モジュール73は、次に、デジタルカラーカメラ44により分包袋21-Sの内部空間21aを撮影してその画像を第2中間画像データ記憶部93に記憶する。なお、
図7には示されていないが、コントローラ62はさらに第3および第4往路撮影モジュールを備え、メモリ64は第3および第4中間画像データ記憶部を備える。第3および第4往路撮影モジュール(第4撮影処理を実行するモジュール及び第5撮影処理を実行するモジュール)は、第1および第2往路撮影モジュールに続いて、それぞれ、照明体14-3(
図4(C))または14-4(
図4(D))のみを作動してから、デジタルカラーカメラ44により分包袋21-Sの内部空間21aを撮影してそれら画像をそれぞれ第3および第4中間画像データ記憶部に記憶する。
【0038】
このように、可視光照明装置42が下方位置P12に位置する状態で、斜め上方の一方向から照明体14-1~14-4が分包袋21-Sの内部空間21aへ可視光を照射するため、内部空間21a内の固形薬剤3に刻印が施されていると、各画像データに刻印の縁に沿った影が現れる。刻印の縁に沿った影は、可視光の照射方向において異なるので、第1~第4中間画像データ記憶部に記載された画像データを合成モジュール(合成処理を実行するモジュール)74が合成すると、合成された画像には固形薬剤3に施された刻印の縁すべてに沿った影が鮮明に現れる。なお、画像を合成する処理については公知の技術が採用される。合成モジュール74は、合成した画像のデータを刻印用画像データ記憶部94に記憶する。なお、合成された画像には、固形薬剤3の刻印が鮮明に現れている。合成した画像からは、また、各固形薬剤3の形状の認識も可能である。そのため、各分包袋21内の固形薬剤3の数が判定される。
【0039】
刻印判定モジュール(第1判定処理を実行するモジュール)75が、刻印用画像データ記憶部94に記憶された合成データから、刻印が施された固形薬剤3の刻印を判定する。なお、刻印を判定するための画像処理については公知の技術が採用される。
【0040】
その後、往路走査モジュール71が、画像検査用走査装置46を駆動して、デジタルカラーカメラ44および可視光照明装置42を、開始位置に位置する分包袋21-Sとは異なる分包袋(図示の例では、紙面左下の分包袋21-E)を撮影するのに適した位置に向けて以下の手順で移動させる。具体的には、往路走査モジュール71は、デジタルカラーカメラ44および可視光照明装置42を、分包袋21-Sに隣接した分包袋(図示の例では、分包袋21-Sの紙面下の分包袋21-12)を撮影するのに適した位置に移動させる。この状態で、第1~第4往路撮影モジュールが分包袋21-Sの場合と同様の処理を行い、刻印判定モジュール75が、刻印が施された固形薬剤3の刻印を判定する。
【0041】
往路走査モジュール71は、同様に、デジタルカラーカメラ44および可視光照明装置42を、分包袋21-12に隣接した分包袋(図示の例では、分包袋21-12の紙面下の分包袋21-13)を撮影するのに適した位置に移動させて、同様の処理が行われ、次に、同様に、デジタルカラーカメラ44および可視光照明装置42を、分包袋21-12に隣接した分包袋(図示の例では、分包袋21-13の紙面下の分包袋21-14)を撮影するのに適した位置に移動させて、同様の処理が行われる。この処理は、
図3の二点鎖線で示す経路に従って、分包袋21ごとに繰り返される。すなわち、紙面下側の分包袋21に順次移動して紙面最下の分包袋21に到達すると、紙面左側の分包袋21に移動してから紙面上側の分包袋21に順次移動して紙面最上の分包袋21に到達すると、紙面左側の分包袋21に移動する。このようにして、終了位置に対応する分包袋21-Eに至るまで同様の処理が行われる。
【0042】
以上のようにして、全ての分包袋21について、刻印が施された固形薬剤3の刻印を判定することができる。なお、刻印判定モジュール75による判定の処理は、全ての分包袋21について合成データが刻印用画像データ記憶部94に記憶された後に、一括して行われてもよい。
【0043】
図示しない移動機構が、可視光照明装置42を下方位置P12から上方位置P11に移動させる。そして、復路撮影モジュール(第3撮影処理を実行するモジュール)77は、
図5に示されるように、全ての照明体14-1~14-4を作動する。復路撮影モジュール77は、次に、デジタルカラーカメラ44により分包袋21-Eの内部空間21aを撮影してその画像を印刷用画像データ記憶部95に記憶する。
【0044】
このように、可視光照明装置42が上方位置P11に位置する状態で、斜め上方の全方向から照明体14-1~14-4が分包袋21-Sの内部空間21aへ可視光を照射するため、内部空間21a内の固形薬剤3に印刷が施されていると、撮影された画像には印影が生じ難く、印刷が鮮明に現れる。復路撮影モジュール77は、撮影した画像のデータを印刷用画像データ記憶部95に記憶する。印刷判定モジュール(第2判定処理を実行するモジュール)78が、印刷用画像データ記憶部95に記憶された画像データから、印刷が施された固形薬剤3の印刷を判定する。なお、印刷を判定するための画像処理については公知の技術が採用される。画像データは、また、各固形薬剤3の形状の認識も可能である。上述のように刻印用画像データ記憶部94の画像データから各分包袋21内の固形薬剤3の数が判定されるが、これに代えて、または加えて、印刷用画像データ記憶部95の画像データから各分包袋21内の固形薬剤3の数が判定されてもよい。両方の記憶部94,95の画像データを用いれば、検査の精度が向上する。
【0045】
その後、復路走査モジュール76が、画像検査用走査装置46を駆動して、デジタルカラーカメラ44および可視光照明装置42を、終了位置から、分包袋21-Eに隣接した分包袋(図示の例では、分包袋21-Eの紙面上の分包袋21-73)を撮影するのに適した位置に移動させる。この状態で、復路撮影モジュール77が分包袋21-Eの場合と同様の処理を行い、撮影した画像のデータを刻印用画像データ記憶部94に記憶する。
【0046】
復路走査モジュール76は、同様に、デジタルカラーカメラ44および可視光照明装置42を、分包袋21-73に隣接した分包袋(図示の例では、分包袋21-73の紙面上の分包袋21-72)を撮影するのに適した位置に移動させて、同様の処理が行われ、次に、同様に、デジタルカラーカメラ44および可視光照明装置42を、分包袋21-72に隣接した分包袋(図示の例では、分包袋21-72の紙面上の分包袋21-71)を撮影するのに適した位置に移動させて、同様の処理が行われる。この処理は、
図3の二点鎖線で示す経路に従って、分包袋21ごとに繰り返される。すなわち、往路走査モジュール71の走査経路を戻るようにして分包袋21に順次移動して開始位置に対応する分包袋21-Sに至るまで同様の処理が行われる。
【0047】
以上のようにして、全ての分包袋21について、印刷が施された固形薬剤3の印刷を判定することができる。なお、印刷判定モジュール78による判定の処理は、全ての分包袋21について画像データが印刷用画像データ記憶部95に記憶された後に、一括して行われてもよい。
【0048】
画像検査対比モジュール(第1対比処理を実行するモジュール)79が、刻印が施された固形薬剤3の刻印であって、刻印判定モジュール75に判定された刻印と、印刷が施された固形薬剤3の印刷であって、印刷判定モジュール78に判定された刻印の少なくとも一方を用いて、各分包袋21に封入された固形薬剤3の種類(製品名や識別番号)を判定し、この判定結果と処方箋データ記憶部90に記憶された処方箋情報とを対比して対比結果を制御装置60の内部または外部の画面に出力する。この画面は、処方箋情報が入力されるユーザインタフェース63であってもよい。なお、対比結果の出力は、判定結果と処方箋情報とが一致しない場合に限って出力されてもよい。出力される対比結果では、判定結果と処方箋情報とが一致しない分包袋21が特定されているのが好ましい。
【0049】
[成分検査]
画像検査が行われた分包シート20は、搬送装置30が画像検査用位置P1から成分検査用位置P2に搬送する。ただし、対比結果において、判定結果と処方箋情報とが一致しない場合には、その分包シート20は成分検査用位置P2を超えて図示しない取出位置まで搬送されてもよい。つまり、少なくとも一つの分包袋21において正しく薬剤が分包されていない可能性があるため、成分検査は行われずに薬剤師の目視による確認を促すように画像検査対比モジュール79が出力を行ってもよい。
【0050】
画像検査をパスした分包シート20が画像検査用位置P1から成分検査用位置P2に到達すると、統合コントロールモジュール66がライン走査モジュール(第3走査処理を実行するモジュール)81に指令を送信する。この指令によって成分検査が開始する。本実施形態では、成分検査開始時点において、近赤外スペクトルカメラ54および近赤外照明装置52はそれらの開始位置にあるものとする。これら開始位置とは、
図3の分包シート20の特定の分包袋21(図示の例では、紙面左下の分包袋21-E)の紙面左端からライン走査するのに近赤外スペクトルカメラ54と近赤外照明装置52が適した水平方向における位置のことである。この位置では、近赤外照明装置52は分包袋21-Eの紙面左端部分に近赤外線を照射でき、近赤外スペクトルカメラ54は図示のライン5における分包袋21-Eおよびその内部の物体からのスペクトルデータを取得する。
【0051】
成分検査が開始すると、ライン走査モジュール81が成分検査用走査装置56を駆動して、近赤外スペクトルカメラ54および近赤外照明装置52を、行方向X1に沿ってライン走査を行う。ライン走査の最中、スペクトル撮影モジュール(第6撮影処理を実行するモジュール)82は、ライン5に近赤外照明装置52から近赤外光を照射して、近赤外スペクトルカメラ54がそのライン5からの分光スペクトルを取得する。そのため、ライン5を行方向X2に走査すれば、分包袋21-E,21-64,21-54,21-44,21-34,21-24,21-14にわたる平面視長方形状の空間におけるスペクトルデータが取得され、スペクトル撮影モジュール82がそのスペクトルデータをスペクトルデータ記憶部96に記憶する。
【0052】
搬送装置30または成分検査用走査装置56には、図示しないエンコーダが設けられている。エンコーダにより、近赤外スペクトルカメラ54および近赤外照明装置52の変位位置が検出される。この変位位置から、分包袋21-E,21-64,…,21-14と、取得される波長分布との関係が得られる。また、変位位置から、近赤外スペクトルカメラ54および近赤外照明装置52が、紙面右下の分包袋21-14の右端に達したことが判定されて、成分検査用走査装置56が停止される。
【0053】
ライン走査モジュール81は次に、成分検査用走査装置56を駆動して、紙面右下の分包袋21-14の紙面上側の分包袋21-13の紙面右端にライン5が位置するように、近赤外スペクトルカメラ54および近赤外照明装置52を移動させる。その後、ライン走査モジュール81は、成分検査用走査装置56を駆動して、近赤外スペクトルカメラ54および近赤外照明装置52を、行方向X2にライン走査を行う。ライン走査の最中、スペクトル撮影モジュール82は、ライン5に近赤外照明装置52から近赤外光を照射して、近赤外スペクトルカメラ54がそのライン5からの分光スペクトルを取得する。そのため、ライン5を行方向X2に走査すれば、分包袋21-13,21-23,…,21-63,21-73にわたる平面視長方形状の空間におけるスペクトルデータが取得され、スペクトル撮影モジュール82がそのスペクトルデータをスペクトルデータ記憶部96に記憶する。
【0054】
同様に、分包袋21-73の紙面上側の分包袋21-72から行方向X1にライン5が走査されて、分包袋21-72,21-62,…,21-22,21-12にわたる平面視長方形状の空間におけるスペクトルデータが取得され、スペクトル撮影モジュール82がそのスペクトルデータをスペクトルデータ記憶部96に記憶する。さらに同様に、分包袋21-12の紙面上側の分包袋21-Sから行方向X2にライン5が走査されて、分包袋21-S,21-21,…,21-61,21-71にわたる平面視長方形状の空間におけるスペクトルデータが取得され、スペクトル撮影モジュール82がそのスペクトルデータをスペクトルデータ記憶部96に記憶する。
【0055】
成分検査対比モジュール(第2対比処理を実行するモジュール)83が、スペクトルデータ記憶部96における特定の固形薬剤3のスペクトル情報と、周波数特性データベース91に記憶された各スペクトルデータとを対比して、当該固形薬剤3の種類を判定する。成分検査対比モジュール83は、この判定結果と処方箋データ記憶部90に記憶された処方箋情報とを対比して対比結果を制御装置60の内部または外部の画面に出力する。この画面は、処方箋情報が入力されるユーザインタフェース63であってもよい。なお、対比結果の出力は、判定結果と処方箋情報とが一致しない場合に限って出力されてもよい。出力される対比結果では、判定結果と処方箋情報とが一致しない分包袋21が特定されているのが好ましい。
【0056】
[実施形態の作用効果]
前述された実施形態によれば、分包袋21-Sに対応する開始位置から分包袋21-Eに対応する終了位置に向けて、第1照射部14-1、第2照射部14-2、及びカメラ44を行方向又は列方向に隣り合う検査位置へ順次移動する第1走査処理を第1および第2往路走査モジュール71が実行し、終了位置から開始位置へ向けて、第1照射部14-1、第2照射部14-2、及びカメラ44を行方向又は列方向に隣り合う検査位置へ順次移動する第2走査処理を復路走査モジュール76が実行するため、往路において固形薬剤3の刻印を判定するための第1中間画像データおよび第2中間画像データを取得し、復路において印刷を判定するための印刷用画像データが取得される。そのため、第1走査処理と第2走査処理とを効率的に行うことができる。
【0057】
また、第1往路撮影モジュール72による第1撮影処理において第1照射部14-1を第2照射位置P12に位置させ、第2往路撮影モジュール73による第2撮影処理において第2照射部14-2を第2照射位置P12に位置させ、復路撮影モジュール77による第3撮影処理において第1および第2照射部14-1,14-2を第1照射位置P11に位置させ、第1照射位置P11よりも第2照射位置P12が分包シート20に近いため、第2照射位置P12に位置させた第1照射部14-1および第2照射部14-2から可視光を照射することによって、固形薬剤に対する照射角度が小さくなる。そのため、固形薬剤3に付された刻印の陰影が明瞭となる。また、第1照射位置P11に位置させた第1照射部14-1および第2照射部14-2から可視光を照射することによって、分包袋21の内部空間21aの全体を均一に照らすことができる。さらに、第1走査処理および第2走査処理の各々においては、第1照射部14-1および第2照射部14-2の位置を第1照射位置P11と第1照射位置P12の間で移動させる必要が無いので、第1走査処理および第2走査処理が効率的に行われる。
【0058】
また、第1照射部14-1、第2照射部14-2、第3照射部14-3、および第4照射部14-4が、周方向の位置が相互に異なる環状に配置され、第1走査処理における各検査位置において、対応する分包袋21の内部空間21aへ第1~第4照射部14-1~14-4から光を照射して、カメラ44により撮影するため、固形薬剤3に対して4方向から可視光が照射される。したがって、固形薬剤3の刻印全体の陰影が明瞭となる。
【0059】
また、第1支持位置P1とは異なる第2支持位置P2において、スペクトルデータが取得されるため、固形薬剤3に付された刻印または印刷による種類の判定に加えて、固形薬剤3のスペクトル情報による種類の判定がなされる。したがって、固形薬剤3の種類の判定の精度が向上する。
【0060】
[変形例]
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。上記実施形態に係る検査装置10の各構成要素に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換、及び追加が行われてもよい。
【0061】
例えば、
図3において二点鎖線で示される分包シート20の走査経路は、隣り合う分包袋21に移動するようなものであり、最小経路で全ての分包袋21を走査できるのであれば、いかなる経路であってもよい。また、往路走査モジュール71による第1走査処理と、復路走査モジュール76による第2走査処理とにおいて、異なる走査経路が採られてもよい。
【0062】
上記実施形態においては、画像検査用走査装置46によりデジタルカラーカメラ44と可視光照明装置42が水平移動するものとしたが、これらは固定されて、代わりに搬送ベルト32上の分包シート20が図示しない水平移動自在な支持部上で水平移動してもよい。すなわち、デジタルカラーカメラ44および可視光照明装置42と分包シート20とが相対移動できるのであれば、いずれの要素が移動するものであってもよい。
【0063】
上記実施形態においては、固形薬剤3に付された刻印を判定するための第1撮影処理の後に、固形薬剤3に付された印刷を判定するための第2撮影処理を実行するものとしたが、これら処理の順番は逆であってもよい。また、画像検査と成分検査の順番も逆であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、分包シート20の全ての分包袋21に対して走査がされつつ第1撮影処理及び第2撮影処理が実行されたが、分包シート20の一部の分包袋21のみについて第1撮影処理及び第2撮影処理が実行され、その他の分包袋21に対する走査においては、第1撮影処理及び第2撮影処理ではない別の撮影処理が実行されてもよい。例えば、朝、昼、晩および就寝前の行方向X1に並んだ4個の分包袋21に対する走査においては、第1撮影処理及び第2撮影処理が実行され、その他の24個の分包袋21に対する走査においては、各分包袋21に収容されている固形薬剤3の個数をカウント可能な撮影処理が実行されてもよい。固形薬剤3の個数をカウントするには、例えば、画像検査部40により撮影した分包袋21の画像においてエッジ検出処理などを実行して、エッジにより囲まれる形状の個数をカウントするなどの公知の処理を用いることができる。少なくとも1つの行方向X1に並んだ4個の分包袋21に対する走査においては、第1撮影処理及び第2撮影処理が実行されることにより、分包袋21内の固形薬剤3を精度よく確認することができ、その他の分包袋21に対しては、同じ行方向X1の位置、すなわち朝、昼、晩および就寝前の服用タイミングが同じであって第1撮影処理及び第2撮影処理が実行された各分包袋21における固形薬剤3の個数と同数の固形薬剤3が封入されていることにより、簡易的に固形薬剤3を確認することができる。これにより、1枚の分包シート20に対する固形薬剤3の確認時間を一層短縮することができる。
【0065】
また、検査装置10により検査される分包シート20は、必ずしも行方向X1及び列方向Y1に複数の分包袋21が並んだものに限定されず、行方向X1のみ、又は列方向Y1のみに複数の分包袋21が並んだものであってもよい。つまり、行方向X1のみ、又は列方向Y1のみへ走査がされるときに、第1撮影処理及び第2撮影処理が実行されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
3・・・固形薬剤
10・・・検査装置
14-1・・・第1照射部
14-2・・・第2照射部
14-3・・・第3照射部
14-4・・・第4照射部
20・・・分包シート
21・・・分包袋
21a・・・内部空間
32・・・支持部
44・・・カメラ
46・・・第1操作部
62・・・コントローラ
64・・・メモリ
P1・・・第1支持位置
P11・・・第1照射位置
P12・・・第2照射位置