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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】呼出システム及び呼出方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B66B3/00 T
B66B3/00 E
B66B3/00 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019215568
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021084773
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金子 智弥
(72)【発明者】
【氏名】大本 絵利
(72)【発明者】
【氏名】井田 慎太郎
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-109973(JP,U)
【文献】特開平5-210414(JP,A)
【文献】特開2010-023959(JP,A)
【文献】国際公開第2005/082764(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/026015(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-3/02;
9/00-9/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送かごの出入口に設けられた第1構内通話機と、
前記搬送かごの操作者が利用する第2構内通話機とを含む構内機器を用いて、自走する移動体が乗車する搬送かごを呼び出す呼出システムであって、
前記呼出システムが、
前記搬送かごへの乗車を待機する待機場所で前記移動体を検知するセンサと、
前記センサにおける前記移動体の検知に応じて、前記第1構内通話機を介して、前記第2構内通話機に呼出信号を出力する呼出信号送出部と、
前記第2構内通話機からの応答に基づいて、前記第1構内通話機を介して、前記第2構内通話機に前記移動体の待機情報を出力する待機情報出力部とを備えたことを特徴とする呼出システム。
【請求項2】
前記待機情報出力部が、前記第1構内通話機が設置された場所の位置情報を保持し、
前記待機情報に、前記位置情報を含めることを特徴とする請求項1に記載の呼出システム。
【請求項3】
前記待機情報出力部が、前記待機情報を前記第1構内通話機で聞き取り可能な音声で出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の呼出システム。
【請求項4】
前記待機情報出力部が、前記待機場所で検知した前記移動体から移動体識別情報を取得し、
前記待機情報に、前記移動体識別情報を含めることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の呼出システム。
【請求項5】
搬送かごの出入口に設けられた第1構内通話機と、
前記搬送かごの操作者が利用する第2構内通話機とを含む構内機器を用いて、自走する移動体が乗車する搬送かごを呼び出す呼出システムを用いた呼出方法であって、
前記呼出システムが、
前記搬送かごへの乗車を待機する待機場所で前記移動体を検知し、
前記移動体の検知に応じて、前記第1構内通話機を介して、前記第2構内通話機に呼出信号を出力し、
前記第2構内通話機からの応答に基づいて、前記第1構内通話機を介して、前記第2構内通話機に前記移動体の待機情報を出力することを特徴とする呼出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ等の搬送かごを呼び出すための呼出システム及び呼出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場においては、資機材を搬送するために、ジャッキを備えた搬送装置を用いることがある(例えば、特許文献1参照)。この文献に記載された台車は、ホイールとジャッキとを備えている。台車の制御部は、ホイールがそれぞれ取り付けられたモータの回転方向及び速度を制御することにより、台車を、所定方向(前後方向、左右方向、斜め方向)に走行させ又は旋回させる。制御部は、ポンプを駆動制御し、各ポンプに接続されているジャッキのラムを昇降させて、ラムの先端に固定された載置台を昇降させる。
【0003】
このような搬送装置がエレベータを利用する場合もある。そこで、既設のエレベータにおいて、人間と無人搬送台車がエレベータを共有するための技術も検討されている(例えば、特許文献2参照)。この文献に記載の技術においては、建造物階層間を移動する昇降手段と、昇降手段の諸動作を制御する昇降手段制御部とを備える。また、各階層に配置され昇降手段制御部に対し各階層への呼出し指令を人間の操作によって行なう手動呼出装置と、建造物階層間の移動データを通信手段によって伝える自動呼出装置駆動部とを備える。更に、移動データに基づき自動呼出装置駆動部によって駆動され、昇降手段制御部に対し各階層への呼出し指令を行なう自動呼出装置を備える。この自動呼出装置は、手動呼出装置に配置された人間用の呼出しボタンと並列に配置され、昇降手段制御部に対して人間用の呼出しボタンと同じ作用を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-113283号公報
【文献】特開2004-149251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2では、壁面に取付けられる呼出装置において、異なる押しボタンを選択することにより、上下階への移動を伝える。しかしながら、建設現場等に配置された仮設エレベータは、簡易な構成であり、上階ボタン、下階ボタンは、通常、設けられていない。具体的には、エレベータ入口に配置されたインターホンを用いて、エレベータ内のオペレータと会話して、オペレータに操作を依頼する。従って、このようなエレベータに台車が乗るためには、オペレータを呼び出す必要がある。しかしながら、台車が自動的にオペレータを呼び出せるようにするには、エレベータの制御装置の改造や、エレベータの周囲に無線或いは有線の通信手段の増設等が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する搬送かごの呼出システムは、搬送かごの出入口に設けられた第1構内通話機と、前記搬送かごの操作者が利用する第2構内通話機とを含む構内機器を用いて、自走する移動体が乗車する搬送かごを呼び出す。前記呼出システムが、前記搬送かごへの乗車を待機する待機場所で前記移動体を検知するセンサと、前記センサにおける前記移動体の検知に応じて、前記第1構内通話機を介して、前記第2構内通話機に呼出信号を出力する呼出信号送出部と、前記第2構内通話機からの応答に基づいて、前記第1構内通話機を介して、前記第2構内通話機に前記移動体の待機情報を出力する待機情報出力部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エレベータ等の搬送かごを効率的に呼び出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における呼出システムの機能の説明図。
図2】実施形態におけるエレベータ利用の説明図。
図3】実施形態における台車の外観斜視図。
図4】実施形態における情報処理装置の構成例の説明図。
図5】実施形態における搬送管理処理の処理手順の説明図。
図6】実施形態におけるエレベータ利用の処理手順の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図6を用いて、呼出システム及び呼出方法を具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、呼出装置10、台車20、オペレータ端末30、インターホンP1,P2を用いる。台車20は、呼出装置10及びオペレータ端末30と、無線通信によりデータの送受信を行なう。なお、この無線通信は、大規模な無線LAN通信環境である必要はなく、ごく短距離の通信方式でよい。呼出装置10、台車20、オペレータ端末30は、情報処理装置として機能する。
【0010】
図2に示すように、建築現場において、移動体としての台車20は、搬送対象物を載置したコンテナ40を搬送する。ここでは、建築現場のフロアF1からフロアF2へと異なる階層に搬送する場合に、仮設エレベータを利用する。この場合、台車20を移動させる搬送かごとして、仮設エレベータの昇降かごE1を用いる。この昇降かごE1には、オペレータOP1が乗車している。オペレータOP1は、仮設エレベータの操作装置を用いて、昇降かごE1を目的階に昇降させる。このオペレータOP1は、台車20と通信を行なうオペレータ端末30を所持している。インターホンP1,P2は、建築現場に設置された既設の構内機器である。
【0011】
仮設エレベータを利用する場合、各フロアF1,F2の仮設エレベータ出入口に設置してあるインターホンP1(第1構内通話機)を用いる。このインターホンP1は、昇降かごE1内のインターホンP2(第2構内通話機)に接続されている。そして、インターホンP1の呼出ボタンを押下することにより、インターホンP2から呼出音が発せられる。そして、仮設エレベータの利用希望者は、インターホンP1を用いて、所在フロア(待機階)を音声でインターホンP2を介してオペレータOP1に伝える。この場合、オペレータOP1は、仮設エレベータの操作装置を操作して、昇降かごE1を待機階に移動させる。利用希望者が昇降かごE1に乗車した場合には、目的階を確認して、オペレータOP1は、仮設エレベータの操作装置を操作して、昇降かごE1を目的階に移動させる。
台車20が仮設エレベータを利用する場合には、インターホンP1に接続された呼出装置10を用いる。この呼出装置10の詳細は後述する。
【0012】
(台車20の構成)
図3に示すように、台車20は、水平断面が略四角形状をした本体部に、駆動車輪としてのホイール24、昇降機構としてのジャッキ25を備える搬送装置である。このホイール24は、コンピュータにより制御される。本実施形態では、ホイール24として、メカナムホイールを用いる。メカナムホイールを用いることにより、台車20を、任意のスピードにおいて、前後進、横移動、旋回、斜め移動させることができる。
【0013】
本体部は、固定筐体部201と可動筐体部202とから構成されている。固定筐体部201は、台車20のホイール24やキャスタ(図示せず)によって移動可能に支持されている。可動筐体部202には、板形状の載置台が設けられている。この載置台は、ジャッキ25により、固定筐体部201に対して昇降可能になっている。
【0014】
ジャッキ25は、固定筐体部201に固定されており、載置台の下方に配置されている。ジャッキ25は、それぞれホイール24の間で一つずつ配置させることにより、複数のホイール24に囲まれた領域に配置される。本実施形態では、ジャッキ25は、載置面に対してバランスよく配置される。本実施形態では、ジャッキ25として、油圧ジャッキを用いる。
【0015】
更に、台車20は、カメラ26、測域センサ27を備える。
カメラ26は、台車20の正面の可視画像を撮影することにより、2次元画像を取得する。
【0016】
測域センサ27は、レーザ光をスキャニングしながら検出物までの距離を測定することにより、配置情報を取得する走査型の光距離センサである。本実施形態では、測域センサ27は、2次元走査型の光距離センサを用いて、2次元配置情報を取得するが、2軸走査により3次元配置情報を取得するようにしてもよい。そして、測域センサ27を用いて、フロアの環境マップの作成や、コンテナの形状の特定、障害物の認識等の周囲状況を取得する。
【0017】
(情報処理装置の構成例)
図4は、呼出装置10、台車20、オペレータ端末30等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
【0018】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0019】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースカードや無線インタフェース等である。
【0020】
入力装置H12は、利用者等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
【0021】
記憶部H14は、呼出装置10~オペレータ端末30の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置(例えば、後述するメモリ13、マップ記憶部22、設定情報記憶部23)である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0022】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、呼出装置10~オペレータ端末30等として機能する情報処理装置H10における各処理(例えば、後述する出力制御部14,制御部21における処理)を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、呼出装置10~オペレータ端末30のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0023】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行うものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0024】
(呼出装置10の機能)
次に、図1を用いて、呼出システムとしての呼出装置10の機能を説明する。呼出装置10は、インターホンP1,P2を用いて、仮設エレベータの昇降かごE1を呼び出す装置である。呼出装置10は、マイク11、録音部12、メモリ13、出力制御部14、スピーカ15、操作部16、セレクタ17、センサ18を備える。
【0025】
マイク11は、音声の集音装置である。
録音部12は、マイク11で集音した音声を、パターン番号に関連付けてメモリ13に記録する。パターン番号は、録音された各音声を特定するための識別子である。
【0026】
メモリ13は、パターン番号に関連付けて、音声データを記録する。ここでは、パターン番号に関連付けて、呼出装置10が設置されるフロアの〔階数〕が記録される。そして、台車20から取得した〔台車識別子〕に基づいて、「〔台車識別子〕の台車が〔階数〕で待機しています」を再生するための音声データが記録される。
【0027】
出力制御部14は、インターホンP1に対して、ブザー信号を出力する呼出信号送出部として機能する。更に、メモリ13に記録された音声データを再生する待機情報出力部として機能する。
【0028】
スピーカ15は、再生された音声データを出力する。
操作部16は、音声の登録時や再生時の操作を行なうためのユーザインターフェースである。
セレクタ17は、操作部によって指定されたパターン番号の音声データを、メモリ13において選択する。
センサ18は、台車20が発信した到着信号を受信する。
【0029】
(台車20の機能)
次に、図1を用いて、台車20の機能を説明する。
台車20は、制御部21、マップ記憶部22、設定情報記憶部23を備える。上述したように、更に、台車20は、ホイール24、ジャッキ25、カメラ26、測域センサ27を備える。
【0030】
各ホイール24は、それぞれホイール駆動部241により駆動され、回転速度や回転方向が制御される。ホイール駆動部241は、モータ、ホイールエンコーダを備える。これにより、台車20を、任意のスピードにおいて、前後進、横移動、旋回、斜め移動させることができる。
【0031】
各ジャッキ25は、それぞれジャッキ駆動部251により、昇降制御される。これにより、台車20の載置面を上昇させたり降下させたりすることができる。
制御部21は、台車識別子に関する移動体識別情報を保持しており、走行制御段階、積載制御段階等の情報処理を実行する。このため、制御部21には、搬送実行プログラムが格納されている。この搬送実行プログラムを起動することにより、制御部21は、走行制御部211、積載制御部212として機能する。
【0032】
走行制御部211は、ホイール24を駆動して、目的地(搬送元、搬送先)に移動する処理を実行する。この場合、走行制御部211は、積載制御部212が特定した搬送対象物(コンテナ)の下までの走行経路を決定し、この走行経路に応じて、ホイール24を駆動する。
【0033】
積載制御部212は、搬送対象物を載置したコンテナ40を荷積みする処理を実行する。本実施形態では、コンテナ40の配色、形状を含めた画像認識、及びコンテナ40に付されたマーカーの読み取りにより、搬送対象物を特定する。更に、特定したコンテナ40の下に潜り込んで、台車20の載置面を昇降させる。
【0034】
マップ記憶部22には、各フロアのフロアマップが記録される。フロアマップには、各フロアのレイアウトが設定される。フロアマップでは、フロアの壁、障害物及び仮設エレベータ等の配置が記録される。
【0035】
設定情報記憶部23には、予め設定された搬送についての設定情報が記録される。設定情報には、エリア情報、経路情報、コンテナ情報等が記録される。
エリア情報には、フロアマップの2次元座標に対して設定された各エリアの配置が記録される。例えば、ストックエリア、ゴールエリア、ホームポジション等の配置が設定される。ストックエリアは、コンテナ40を荷積み(ジャッキアップ)して搬送を開始する搬送元の搬送開始領域である。ゴールエリアは、コンテナ40を荷下ろし(ジャッキダウン)して搬送を終了する搬送先の搬送終了領域である。ホームポジションは、搬送作業を終了した台車20が戻り、次の搬送指示を待機する場所である。各エリアには、台車20が一旦停止する停止位置(アプローチ)が設定されている。本実施形態では、ストックエリアとホームポジションとは同じフロアに所在する場合を想定する。
【0036】
経路情報には、フロアマップにおいて設定された各エリア間の移動順番が記録される。搬送元と搬送先とが異なる階層の場合には、仮設エレベータを用いる経路が設定される。
コンテナ情報には、台車20により搬送するコンテナ40に関する情報が記録される。具体的には、コンテナ情報には、コンテナID、サイズ、ストックエリア、ゴールエリア等に関する情報が記録される。
【0037】
オペレータ端末30は、仮設エレベータの昇降かごE1の昇降を操作するオペレータOP1が使用するコンピュータ端末である。オペレータ端末30を用いることにより、無線通信により、台車20に対して仮設エレベータの昇降かごE1への乗車や降車の指示を行なう。
【0038】
(搬送管理処理)
次に、図5を用いて、搬送管理処理について説明する。
まず、台車20の制御部21は、ホームポジションにて待機処理を実行する(ステップS1-1)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、ホームポジションにおいて、管理端末(図示せず)からの搬送開始指示の受信を待機する。
【0039】
次に、台車20の制御部21は、搬送開始指示の取得処理を実行する(ステップS1-2)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、管理端末から搬送開始指示を取得する。この搬送開始指示には、エリア情報、経路情報、コンテナ情報が含まれる。そして走行制御部211は、取得したエリア情報、経路情報、コンテナ情報を設定情報記憶部23に記録する。
【0040】
次に、台車20の制御部21は、搬送元への移動処理を実行する(ステップS1-3)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、設定情報記憶部23に記録された設定情報を用いて、搬送元のストックエリアに移動するように、ホイール駆動部241を制御する。この場合、走行の精度を上げるために、制御部21は、測域センサ27を作動させて、環境マップを作成しながら走行する。この環境マップの作成では、周囲の形状データを取得し、フロアマップに対応させたSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)地図を作成し、マップ記憶部22に記録する。そして、台車20の自己位置の推定には、環境マップとオドメトリ情報とを用いる。このオドメトリ情報は、ホイール駆動部241のホイールエンコーダのカウンタ値から算出する。
【0041】
次に、台車20の制御部21は、積載処理を実行する(ステップS1-4)。具体的には、制御部21の積載制御部212は、ストックエリアに到着した場合、コンテナ40の認識、コンテナ40への接近、コンテナ40への潜り込み、載置面への荷積みを行なう。コンテナ40の認識では、積載制御部212は、カメラ26を用いて、各コンテナ40のマーカーを読み取り、コンテナIDをデコードする。そして、積載制御部212は、設定情報記憶部23に記録された搬送対象のコンテナIDを特定する。次に、コンテナ40への接近では、積載制御部212は、搬送対象のコンテナIDのコンテナ40に、カメラ26、測域センサ27を用いて接近する。そして、コンテナ40への潜り込みでは、積載制御部212は、測域センサ27を用いて、コンテナ40の下側に入り込むように、走行制御を行なう。そして、載置面への荷積みでは、制御部21の積載制御部212は、ジャッキ駆動部251を駆動して、ジャッキ25により、搬送対象物が載置されたコンテナ40を持ち上げる。
【0042】
次に、台車20の制御部21は、搬送先への経路の特定を実行する(ステップS1-5)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、設定情報記憶部23に記録された設定情報を用いて、コンテナ40の搬送先のゴールエリアを特定する。
【0043】
次に、台車20の制御部21は、エレベータ利用かどうかについての判定処理を実行する(ステップS1-6)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、設定情報記憶部23に記録された経路情報を用いて、エレベータ利用かどうかを判定する。搬送先フロアが、搬送元フロアと異なっており、経路情報において、仮設エレベータを用いる経路が設定されている場合にはエレベータ利用と判定する。
【0044】
エレベータ利用と判定した場合(ステップS1-6において「YES」の場合)、台車20の制御部21は、エレベータ移動処理を実行する(ステップS1-7)。この場合には、仮設エレベータの昇降かごE1に乗車し、ゴールエリアが設定された搬送先フロアで降車するように移動制御を行なう。詳細は後述する。
【0045】
そして、台車20の制御部21は、搬送先への移動処理を実行する(ステップS1-8)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、マップ記憶部22のフロアマップを用いて、設定情報の経路情報に応じて、ホイール駆動部241を制御する。なお、エレベータ利用でないと判定した場合(ステップS1-6において「NO」の場合)、台車20の制御部21は、エレベータ移動処理(ステップS1-7)をスキップする。
【0046】
次に、台車20の制御部21は、荷下ろし処理を実行する(ステップS1-9)。具体的には、制御部21の積載制御部212は、ジャッキ駆動部251を駆動して、ジャッキ25により、搬送対象物が載置されたコンテナ40を搬送先エリアに着地させる。
次に、台車20の制御部21は、ホームポジションへの移動処理を実行する(ステップS1-10)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、設定情報記憶部23に記録された経路情報に設定されたホームポジションに移動するように、ホイール駆動部241を制御する。なお、ホームポジションが設定されたフロアが、搬送先フロアと異なる場合には、制御部21の走行制御部211は、上述したように、エレベータ利用と判定し(ステップS1-6において「YES」)、エレベータ移動処理(ステップS1-7)を実行した後、ホームポジションに移動する。
【0047】
(エレベータ移動処理)
次に、図6を用いて、エレベータ移動処理を説明する。この処理は、設定情報記憶部23に記録された経路情報に、仮設エレベータの利用が設定されている場合に行なわれる。ここでは、ストックエリアからゴールエリアへの往路を説明するが、復路も同様な処理を実行する。
【0048】
まず、台車20の制御部21は、待機場所への移動処理を実行する(ステップS2-1)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、フロアF1において、設定情報記憶部23に記録された経路情報の仮設エレベータのアプローチ(停止位置)に移動するように、ホイール駆動部241を制御する。
【0049】
次に、台車20の制御部21は、エレベータ前到着検知処理を実行する(ステップS2-2)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、マップ記憶部22に記録されたフロアマップにおいて、仮設エレベータのアプローチに到着したかどうかを判定する。
【0050】
次に、台車20の制御部21は、識別信号の送信処理を実行する(ステップS2-3)。具体的には、仮設エレベータのアプローチに到着したと判定した場合、制御部21の走行制御部211は、通信装置H11を介して、到着信号を無線通信により、呼出装置10に対して送信する。この到着信号には、台車20の台車識別子を含める。
【0051】
次に、台車20の制御部21は、乗車指示の待機処理を実行する(ステップS2-4)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、仮設エレベータのアプローチの位置で、乗車指示を取得するまで停止する。
【0052】
一方、台車20から無線で識別信号を受信した呼出装置10は、インターホン呼出処理を実行する(ステップS3-1)。具体的には、センサ18において到着信号を受信した出力制御部14は、インターホンP1に呼出信号を送信する。この場合、インターホンP1は、インターホンP2に対して呼出音を出力する。
【0053】
次に、呼出装置10は、オペレータ応答の待機処理を実行する(ステップS3-2)。具体的には、出力制御部14は、呼出音を出力してからの経過時間を計測しながら待機する。
【0054】
次に、呼出装置10は、応答を検知したかどうかについての判定処理を実行する(ステップS3-3)。具体的には、出力制御部14は、マイク11を用いて、インターホンP1からオペレータOP1の応答音声を取得したかどうかを判定する。
【0055】
応答を検知できない場合(ステップS3-3において「NO」の場合)、呼出装置10は、許容時間が経過したかどうかについての判定処理を実行する(ステップS3-4)。具体的には、出力制御部14は、呼出音を出力してからの経過時間と許容時間とを比較する。
【0056】
許容時間が経過していない場合(ステップS3-4において「NO」の場合)、オペレータ応答の待機処理を継続する(ステップS3-2)。
オペレータOP1からの応答を検知できず、許容時間が経過した場合(ステップS3-4において「YES」の場合)、呼出装置10は、再度、インターホン呼出処理を実行する(ステップS3-1)。
【0057】
一方、オペレータからの応答を検知した場合(ステップS3-3において「YES」の場合)、呼出装置10は、呼出音声の送出処理を実行する(ステップS3-5)。具体的には、出力制御部14は、セレクタ17を用いて、メモリ13に記録された音声データを呼び出す。ここでは、取得した台車20の識別信号と、インターホンP1が設置された階数に対応する音声データを呼びだす。そして、出力制御部14は、スピーカ15を用いて、メモリ13から取得した音声データを再生する。再生された音声は、インターホンP1で集音され、インターホンP2から出力される。この場合、インターホンP2から出力された音声を聞いたオペレータOP1は、音声に含まれる階数である台車20の待機フロアに、昇降かごE1を移動させる。
【0058】
その後、台車20の制御部21は、乗車指示の取得処理を実行する(ステップS2-5)。具体的には、台車20の待機フロアに昇降かごE1が到着した場合、オペレータOP1は、台車20とオペレータ端末30とを無線接続する。この場合、制御部21の走行制御部211は、オペレータ端末30に対して、ゴールエリアが設定されたフロア情報(降車階)を送信する。そして、降車階を確認したオペレータOP1は、オペレータ端末30を用いて、台車20に対して乗車指示を送信する。
【0059】
次に、台車20の制御部21は、乗車処理を実行する(ステップS2-6)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、仮設エレベータの昇降かごE1内に移動するように、ホイール駆動部241を制御する。そして、台車20は、昇降かごE1内で走行を停止する。
【0060】
次に、台車20の制御部21は、降車指示の待機処理を実行する(ステップS2-7)。具体的には、制御部21の走行制御部211は、オペレータ端末30から降車指示を取得するまで待機する。
そして、オペレータOP1は、台車20から取得した降車階に、仮設エレベータの昇降かごE1を移動するように操作する。
【0061】
次に、台車20の制御部21は、降車指示の取得処理を実行する(ステップS2-8)。具体的には、降車階に到着した場合、オペレータOP1は、オペレータ端末30を用いて、台車20に対して降車指示を送信する。この場合、制御部21の走行制御部211は、オペレータ端末30から降車指示を取得する。
【0062】
次に、台車20の制御部21は、降車処理を実行する(ステップS2-9)。具体的には、走行制御部211は、仮設エレベータの昇降かごE1から降車階のフロアF2に移動するように、ホイール駆動部241を制御する。そして、走行制御部211は、降車階で、ゴールエリア(目的地)に移動するように、ホイール駆動部241を制御する。
【0063】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、台車20は、制御部21、マップ記憶部22、設定情報記憶部23、カメラ26、測域センサ27を備える。これにより、設定情報記憶部23に記録された経路で、カメラ26で識別した搬送対象物を、測域センサ27を用いて自走し、ストックエリアからゴールエリアに効率的に搬送することができる。
【0064】
(2)本実施形態では、エレベータ利用と判定した場合(ステップS1-6において「YES」の場合)、台車20の制御部21は、エレベータ移動処理を実行する(ステップS1-7)。これにより、階層が異なる場所への台車20を移動させることができる。
【0065】
(3)本実施形態では、台車20の制御部21は、待機場所に移動処理(ステップS2-1)、エレベータ前到着検知処理(ステップS2-2)を実行する。これにより、昇降かごE1の到着を台車20がエレベータの出入口前で待機することができる。
【0066】
(4)本実施形態では、台車20の制御部21は、識別信号の送信処理を実行する(ステップS2-3)。これにより、待機している台車20の識別信号を、呼出装置10に伝えることができる。
(5)本実施形態では、呼出装置10は、インターホン呼出処理を実行する(ステップS3-1)。これにより、台車20がエレベータの出入口前で待機している場合には、エレベータのオペレータOP1を呼び出すことができる。従って、台車が乗るエレベータのオペレータOP1を効率的に呼び出すことができる。
【0067】
(6)本実施形態では、オペレータOP1からの応答を検知した場合(ステップS3-3において「YES」の場合)、呼出装置10は、呼出音声の送出処理を実行する(ステップS3-5)。これにより、既設のインターホンを利用して、乗車を待機している台車20の状況を知らせることができる。
(7)本実施形態では、オペレータOP1からの応答を検知できず、許容時間が経過した場合(ステップS3-4において「YES」の場合)、呼出装置10は、再度、インターホン呼出処理を実行する(ステップS3-1)。これにより、仮設エレベータのオペレータOP1の注意を喚起することができる。
【0068】
(8)本実施形態では、台車20の制御部21は、乗車指示の取得処理(ステップS2-5)、乗車処理(ステップS2-6)、降車指示の取得処理(ステップS2-8)、降車処理(ステップS2-9)を実行する。これにより、仮設エレベータのオペレータOP1の指示に応じて、台車20は乗降車を行なうことができる。
【0069】
(9)本実施形態では、到着信号の送信処理(ステップS2-3)において、台車20は呼出装置10との間で無線通信を行なう。また、乗車指示の取得処理(ステップS2-5)、降車指示の取得処理(ステップS2-8)において、台車20はオペレータ端末30との間で無線通信を行なう。これらの無線通信時には、台車20が呼出装置10やオペレータ端末30の近傍にあるときにだけに行なわれるので、簡易な通信装置H11で実現できる。すなわち、エレベータの昇降範囲全体をカバーし、隔地と無線通信を行なうための環境や設備は必要がない。
【0070】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、オペレータ端末30を用いて、乗車指示や降車指示を台車20に送信する。各指示の提供方法は、オペレータ端末30を用いる場合に限定されない。例えば、台車20に操作部を設けて、オペレータOP1がこの操作部を介して、乗車指示や降車指示を入力してもよい。
【0071】
また、台車20のカメラ26を用いて指示を提供してもよい。この場合には、走行制御部211においてジェスチャパターンを記録させておく。そして、オペレータOP1は、予め定められた乗車時や降車時のジェスチャ動作を行なう。そして、走行制御部211は、カメラ26の撮影画像の画像認識によりジェスチャパターンを検出した場合に乗車や降車を行なう。
また、台車20にマイクを設け、オペレータOP1が発した音声の認識に基づいて、乗車や降車を行なうようにしてもよい。
【0072】
・上記実施形態では、台車20は、台車識別子を含めた到着信号を送信する。到着信号に含める情報は台車識別子に限定されるものではない。例えば、搬送先フロアや、コンテナ40のサイズを含めてもよい。この場合には、出力制御部14が出力する音声に、台車20から取得した情報を含める。これにより、オペレータOP1は、待機している台車20の状況を把握することができる。
【0073】
・上記実施形態では、呼出装置10に、メモリ13に記録された音声データを再生する待機情報出力部として機能する出力制御部14を設ける。そして、呼出装置10のスピーカ15を用いて、インターホンP1に対して音声を出力する。これに代えて、台車20に待機情報出力部を設けてもよい。この場合には、台車20にマイク11、録音部12、メモリ13を設けて、台車20が音声を出力するようにしてもよい。具体的には、オペレータからの応答を検知した場合(ステップS3-3において「NO」の場合)、台車20は、呼出音声の送出処理を実行する(ステップS3-5)。この場合、設定情報記憶部23に記録された経路情報を用いて、現在位置のフロア(待機階)に関する情報を含めた音声を出力する。
【0074】
・上記実施形態では、台車20の制御部21は、到着信号の送信処理を実行する(ステップS2-3)。ここでは、仮設エレベータのアプローチに到着した場合、制御部21の走行制御部211は、通信装置H11を介して、到着信号を無線通信により送信する。到着信号の送信方法は、無線通信に限定されるものではない。赤外通信や、物理的接続による通信を用いることも可能である。例えば、出力制御部14に、呼出ボタンを押下する機構を外付けしてもよい。また、アプローチに重量センサを設け、重量センサにおいて台車20の乗車を検知した場合に到着信号を出力するようにしてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、搬送かごとして、仮設エレベータの昇降かごE1を用いる。搬送かごは、移動体を搬送するかごであればよく、仮設エレベータの昇降かごE1に限定されるものではない。例えば、台車20を載置して水平移動する搬送装置等にも適用することも可能である。
【0076】
・上記実施形態では、移動体としての台車20を用いる。この台車20は、本体部に、ホイール24、ジャッキ25を備える搬送装置である。ホイール24、ジャッキ25の配置や構成は、上記実施形態に限定されるものではない。また、移動体は自走する装置であればよく、台車20に限定されるものではない。例えば、掃除ロボット等にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
F1,F2…フロア、OP1…オペレータ、P1…インターホン、P2…インターホン、10…呼出装置、11…マイク、12…録音部、13…メモリ、14…出力制御部、15…スピーカ、16…操作部、17…セレクタ、18…センサ、20…台車、30…オペレータ端末、40…コンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6