(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】アンカーボルト用吊り治具
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
E02D27/00 B
(21)【出願番号】P 2019238705
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】永房 裕
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-013260(JP,U)
【文献】実開昭49-108607(JP,U)
【文献】実開昭55-157559(JP,U)
【文献】特開平06-346462(JP,A)
【文献】特開2001-020295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E04B 1/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持材にボルト部が挿通されたアンカーボルトを、当該支持材に対して吊り下げるアンカーボルト用吊り治具であって、
第1方向に沿って延びる第1プレートと、
上記第1方向に沿って延びており、上記第1プレートの主面と直交する第2方向に上記第1プレートと離間する第2プレートと、
上記第1プレートと上記第2プレートとを連結する本体と
、
上記本体に取り付けられた取っ手と、を備えるアンカーボルト用吊り治具。
【請求項2】
上記第1方向及び上記第2方向と直交する第3方向に離間する複数の上記第1プレートと、
上記第3方向に離間する複数の上記第2プレートと、を備える請求項1に記載のアンカーボルト用吊り治具。
【請求項3】
複数の上記第2プレートは、上記第3方向において、複数の上記第1プレートの間に位置する請求項2に記載のアンカーボルト用吊り治具。
【請求項4】
本体と、当該本体から第1方向に沿って延びており、当該第1方向と交差する第2方向において互いに離間する一対の第1プレートと、当該本体から上記第1方向に沿って延びており、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向において上記第1プレートと離間する第2プレートと、を備えるアンカーボルト用吊り治具を用いた基礎構造体の施工方法であって、
水平方向に互いに離間する一対の型枠を地面に設置する第1工程と、
上記一対の型枠の上面間に支持材を架け渡して当該支持材を当該型枠に取り付ける第2工程と、
第1ナットが取り付けられたアンカーボルトのボルト部を上記支持材が有する挿通孔に下方から挿通させてアンカーボルトを配置する第3工程と、
上記支持材の側方から上記吊り治具を水平方向に移動させ、上記第1プレートの下面が上記支持材の上面に当接し、上記第2プレートの上面が上記第1ナットの下端に当接する位置に上記支持材を配置する第4工程と、
上記ボルト部に、第2ナットを取りつけ、当該第2ナットの下端が上記支持材の上面に当接するまで当該第2ナットを締め付ける第5工程と、
上記吊り治具を水平方向に移動させて当該吊り治具を上記支持材から取り外す第6工程と、
上記一対の型枠間に生コンクリートを投入して基礎を打設する第7工程と、
上記型枠及び上記支持材を上記基礎から取り外す第8工程と、を備える基礎構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーボルトを吊り下げて支持する治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基礎と、当該基礎に下部が埋設されたアンカーボルトとを有する基礎構造を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された基礎構造は、例えば、水平方向に離間する一対の型枠を地面に設置し、当該一対の型枠の上面間に架け渡して支持材を型枠に取り付け、当該支持材にアンカーボルトを取り付けた後、当該一対の型枠間に生コンクリートを流し込んで基礎を打設する。
【0005】
アンカーボルトを支持材に取り付ける作業において、作業者は、例えば、アンカーボルトを手に持って、アンカーボルトのボルト部を、支持材が有する挿通孔に下方から挿通させる。そして、アンカーボルトを片手で保持しながら、他方の手を用いて、ボルト部にナットを取り付ける。ボルト部に取り付けられたナットの下端が支持材の上面に当接することにより、アンカーボルトが支持材に支持される。
【0006】
アンカーボルトを片手で保持しながら、他方の手でナットをボルト部に取り付ける取付作業は、重労働となる。特に、アンカーボルトが重くなるほど、或いは作業者が高齢者或いは女性である場合、当該取付作業が困難になる。
【0007】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、アンカーボルトを支持材に取り付ける作業者の作業を容易にする吊り治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係るアンカーボルト用吊り治具は、支持材にボルト部が挿通されたアンカーボルトを、当該支持材に対して吊り下げる治具である。当該アンカーボルト用吊り治具は、第1方向に沿って延びる第1プレートと、上記第1方向に沿って延びており、上記第1プレートの主面と直交する第2方向に上記第1プレートと離間する第2プレートと、上記第1プレートと上記第2プレートとを連結する本体と、を備える。
【0009】
支持材は、例えば、基礎を打設するために地面に設置された型枠の上面に載置される。作業者は、ナットが締結されたアンカーボルトを片手で持って、アンカーボルトのボルト部の上部が支持部材に挿通された状態とし、当該状態でアンカーボルトを保持する。次いで、作業者は、アンカーボルトを保持する一方の手と異なる他方の手でアンカーボルト用吊り治具を持つ。作業者は、第1プレートが支持材上となる位置まで、支持材の側方から支持材に向かってアンカーボルト用吊り治具を移動させる。作業者がアンカーボルト用吊り治具から手を離すと、第1プレートの下面が支持材の上面と当接して、アンカーボルト用吊り治具が支持材に保持される。次いで、作業者がアンカーボルトから手を離すと、アンカーボルトに締結されたナットがアンカーボルト用吊り治具の第2プレートの上面に当接して、アンカーボルトが、ナットを介してアンカーボルト用吊り治具によって支持される。そして、作業者は、他のナットをアンカーボルトのボルト部に締結する。アンカーボルトは、支持材を上下に挟む2つのナットによって支持材に固定される。作業者は、アンカーボルトを支持材に固定した後、アンカーボルト用吊り治具を支持材の側方へ移動させて、支持材からアンカーボルト用吊り治具を取り外す。アンカーボルト用吊り治具がアンカーボルトを保持するので、作業者は、アンカーボルトを保持することなく、ナットをアンカーボルトに締結することができる。その結果、本発明に係るアンカーボルト用吊り治具は、アンカーボルトを支持材に取り付ける作業者の作業を容易にすることができる。
【0010】
(2) 本発明に係るアンカーボルト用吊り治具は、上記第1方向及び上記第2方向と直交する第3方向に離間する複数の上記第1プレートと、上記第3方向に離間する複数の上記第2プレートと、を備えていてもよい。
【0011】
複数の第1プレートを有するので、支持材に対してアンカーボルト用吊り治具が安定して載置される。複数の第2プレートを有するので、第2プレートがアンカーボルトを支持した状態でアンカーボルト用吊り治具のバランスがよい。
【0012】
(3) 複数の上記第2プレートは、上記第3方向において、複数の上記第1プレートの間に位置していてもよい。
【0013】
第2プレートに支持されたアンカーボルトのボルト部と、第1プレートとが離れるので、使い勝手がよい。
【0014】
(4) 本発明に係るアンカーボルト用吊り治具は、上記本体に取り付けられた取っ手をさらに備えていてもよい。
【0015】
作業者は、取っ手を把持して吊り部材を支持材に取り付ける。したがって、吊り治具は、吊り治具を支持材に取り付ける作業者の作業を容易にすることができる。
【0016】
(5) 本発明に係る基礎構造体の施工方法は、本体と、当該本体から第1方向に沿って延びており、当該第1方向と交差する第2方向において互いに離間する一対の第1プレートと、当該本体から上記第1方向に沿って延びており、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向において上記第1プレートと離間する第2プレートと、を備えるアンカーボルト用吊り治具を用いた施工方法である。当該基礎構造体の施工方法は、水平方向に互いに離間する一対の型枠を地面に設置する第1工程と、上記一対の型枠の上面間に支持材を架け渡して当該支持材を当該型枠に取り付ける第2工程と、第1ナットが取り付けられたアンカーボルトのボルト部を上記支持材が有する挿通孔に下方から挿通させてアンカーボルトを配置する第3工程と、上記支持材の側方から上記吊り治具を水平方向に移動させ、上記第1プレートの下面が上記支持材の上面に当接し、上記第2プレートの上面が上記第1ナットの下端に当接する位置に上記支持材を配置する第4工程と、上記ボルト部に、第2ナットを取りつけ、当該第2ナットの下端が上記支持材の上面に当接するまで当該第2ナットを締め付ける第5工程と、上記吊り治具を水平方向に移動させて当該吊り治具を上記支持材から取り外す第6工程と、上記一対の型枠間に生コンクリートを投入して基礎を打設する第7工程と、上記型枠及び上記支持材を上記基礎から取り外す第8工程と、を備える。
【0017】
本発明は、基礎構造体の施工方法として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るアンカーボルト用吊り治具は、アンカーボルトを支持材に取り付ける作業者の作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、基礎構造体10の一部の斜視図である。
【
図2】
図2は、アンカーボルト用吊り治具20の斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、アンカーボルト用吊り治具20における第1プレート22及び本体21の縦断面図であり、
図3(B)は、アンカーボルト用吊り治具20における第2プレート23及び本体21の縦断面図であり、
図3(C)は、アンカーボルト用吊り治具20における取っ手24及び本体21の縦断面図である。
【
図4】
図4は、アンカーボルト13の正面図である。
【
図5】
図5は、アンカーボルト用吊り治具20を支持材19に支持させる前の状態を示す図である。
【
図6】
図6は、アンカーボルト用吊り治具20を支持材19に支持させた後の状態を示す図である。
【
図7】
図7は、アンカーボルト用吊り治具20の使用方法を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、アンカーボルト用吊り治具20の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0021】
図1は、建物の躯体(不図示)を支持する布基礎10の一部の斜視図である。布基礎10は、本発明の基礎構造体の一例である。ただし、基礎構造体は、べた基礎などであってもよい。
【0022】
布基礎10は、フーチング11と、立上り部12と、複数のアンカーボルト13と、を備える。フーチング11は、地中に埋設されている。立上り部12は、フーチング11から上方に向かって突出している。すなわち、立上り部12は、地面から上向きに突出している。
【0023】
アンカーボルト13は、
図4に示されるように、立上り部12に埋設された埋設部14と、埋設部14から上方へ向かって突出するボルト部15と、を有する。埋設部14は、板状であって、ボルト部15の端部(
図4における下端部)を固定している。
図4に示す例では、埋設部14は、2つのボルト部15の下端部を固定している。すなわち、アンカーボルト13は、2つのボルト部15を有している。
【0024】
図1に示されるように、ボルト部15は、立上り部12の上面から上向きに突出している。複数のアンカーボルト13は、例えば、立上り部12が延びる方向(水平方向)に沿って所定の間隔で配置されている。
【0025】
不図示の柱が、立上り部12の上面に載置される。柱は、アンカーボルト13のボルト部15が挿通される挿通孔を有する。挿通孔に挿通されたボルト部15に不図示のナットが締結されることにより、柱が布基礎10に固定される。複数の不図示の梁が柱の上面に載置され、ボルト及びナットなどの不図示の固着具を用いて梁が柱に固定される。柱及び梁は、建物の躯体を構成する。
【0026】
布基礎10は、
図5に示されるように、地面に設けた溝16に砕石(不図示)を敷設した後、溝16に沿って型枠18を設置するとともに、型枠18に保持させて鉄筋(不図示)及びアンカーボルト13を設置した後、型枠18内に生コンクリートを流し込んで打設される。作業者が、型枠18を地面に設置する工程は、本発明の第1工程の一例である。
【0027】
型枠18へのアンカーボルト13の設置について詳しく説明すると、作業者は、水平方向において互いに対向する一対の型枠18の上面間に支持材19を架け渡して支持材19を型枠18に取り付ける。そして、作業者は、アンカーボルト用吊り治具20を用いて、アンカーボルト13を支持材19に吊り下げる。作業者が、支持材19を型枠18に取り付ける工程は、本発明の第2工程の一例である。
【0028】
以下、アンカーボルト用吊り治具20について、及びアンカーボルト用吊り治具20を用いた作業者の作業について、詳しく説明する。
【0029】
アンカーボルト用吊り治具20は、
図2に示されるように、本体21と、本体21に固定された一対の第1プレート22、一対の第2プレート23、及び取っ手24と、を備える。
【0030】
本体21は、矩形板状に形成された樹脂或いは鋼板からなる。以下では、本体21の厚みに沿う方向を厚み方向31と記載し、本体21の主面25の短辺に沿う方向を短手方向32と記載し、本体21の主面25の長辺に沿う方向を長手方向33と記載して説明する。厚み方向31は、本発明の第1方向の一例である。短手方向32は、本発明の第2方向の一例である。長手方向33は、本発明の第3方向の一例である。
【0031】
本体21は、第1プレート22を取り付けるボルト51が挿通可能な複数の第1取付孔41を備える。第1取付孔41及び後述の第1プレート22の挿通孔63に挿通されたボルト51と、ボルト51に締結されたナット54とによって、第1プレート22が本体21に固定されている。
【0032】
第1取付孔41は、厚み方向31において本体21を貫通している。また、第1取付孔41は、短手方向32における本体21の一端部(
図2における上端部)に設けられている。すなわち、後述の第1プレート22は、短手方向32における本体21の一端部(上端部)に固定されている。
【0033】
複数の第1取付孔41は、長手方向33に並んで設けられている。長手方向33に並ぶ複数の第1取付孔41が本体21に設けられることにより、第1プレート22の取付位置は、長手方向33において変更可能である。
図2に示す例では、一対の第1プレート22は、長手方向33における本体21の両端部に取り付けられている。
図2に示す第1プレート22の取付位置から、長手方向33における本体21の中心に向かって、第1プレート22の取付位置を変更することができる。
【0034】
本体21は、第2プレート23を取り付けるボルト52が挿通可能な複数の第2取付孔42を備える。第2取付孔42及び後述の第2プレート23の挿通孔73に挿通されたボルト52と、ボルト52に締結されたナット55とによって、第2プレート23が本体21に固定されている。
【0035】
第2取付孔42は、厚み方向31において本体21を貫通している。また、第2取付孔42は、短手方向32における本体21の他端部(
図2における下端部)に設けられている。すなわち、後述の第2プレート23は、短手方向32における本体21の他端部(下端部)に固定されている。
【0036】
複数の第2取付孔42は、長手方向33に並んで設けられている。長手方向33に並ぶ複数の第2取付孔42が本体21に設けられることにより、第2プレート23の取付位置を、長手方向33において変更可能である。
図2に示す例では、一対の第2プレート23は、長手方向33における本体21の両端部に取り付けられている。
図2に示す第1プレート22の取付位置から、長手方向33における本体21の中心に向かって、第1プレート22の取付位置を変更することができる。
【0037】
本体21は、取っ手24を取付けるボルト53が挿通された第3取付孔43を有する。第3取付孔43は、厚み方向31において本体21を貫通している。第3取付孔43は、長手方向33における本体21の中央部に設けられている。
図3に示す例では、短手方向32に並ぶ2つの第3取付孔43が本体21に設けられている。2つの第3取付孔43及び後述の取っ手24の2つの挿通孔84にそれぞれ挿通された2つのボルト53と、各ボルト53にそれぞれ締結された2つのナット56とによって、取っ手24が本体21に固定されている。
【0038】
第1プレート22は、
図2に示されるように、矩形板状のプレート本体61及び取付片62を有する。プレート本体61は、本体21の短手方向32を厚みとし、主面26の長辺が本体21の厚み方向31に沿い、主面26の短辺が本体21の長手方向33に沿う矩形板状である。取付片62は、本体21の厚み方向31を厚みとし、主面27(
図3)の長辺が本体21の短手方向32に沿い、主面27の短辺が本体21の長手方向33に沿う矩形板状である。本体21の短手方向32における取付片62の端部(
図2における上端部)は、本体21の厚み方向31におけるプレート本体61の端部と繋がっている。
【0039】
取付片62は、
図3(A)に示されるように、第1プレート22を取り付けるボルト51が挿通された1つの挿通孔63を備える。ただし、取付片62は、複数の挿通孔63を有していてもよい。
【0040】
第1プレート22は、例えば、鋼板を所定の大きさに切断した後、パンチング加工によって挿通孔を設けるとともに、プレスによって折り曲げて作製される。
【0041】
図2に示されるように、一対の第1プレート22が本体21に取り付けられている。一対の第1プレート22は、本体21の長手方向33において互いに離間している。一対の第1プレート22の内側離間距離D1は、アンカーボルト13の2つのボルト部15の外側離間距離D2(
図4)よりも長い。すなわち、アンカーボルト用吊り治具20は、
図7(B)に示されるように、一対の第1プレート22が2つのボルト部15の外側に位置するように配置することができる。
【0042】
第2プレート23は、
図2に示されるように、矩形板状のプレート本体71及び取付片72を有する。プレート本体71は、本体21の短手方向32を厚みとし、主面28の長辺が本体21の厚み方向31に沿い、主面28の短辺が本体21の長手方向33に沿う矩形板状である。取付片72は、本体21の厚み方向31を厚みとし、主面29(
図3)の長辺が本体21の短手方向32に沿い、主面29の短辺が本体21の長手方向33に沿う矩形板状である。本体21の短手方向32における取付片72の端部(
図2における下端部)は、本体21の厚み方向31におけるプレート本体71の端部と繋がっている。
【0043】
取付片72は、第2プレート23を取り付けるボルト52が挿通された挿通孔73を備える。
図3(B)に示す例では、1つの挿通孔73が取付片72に設けられている。ただし、複数の挿通孔73が取付片72に設けられていてもよい。
【0044】
第2プレート23は、例えば、鋼板を所定の大きさに切断した後、パンチング加工によって挿通孔を設けるとともに、プレスによって折り曲げて作製される。
【0045】
図2に示されるように、一対の第2プレート23が本体21に取り付けられている。一対の第2プレート23は、本体21の長手方向33において互いに離間している。一対の第2プレート23の内側離間距離D5は、アンカーボルト13の2つのボルト部15の外側離間距離D2(
図4)と略同一である。すなわち、アンカーボルト用吊り治具20は、
図7(B)に示されるように、一対の第2プレート23が2つのボルト部15の外側に位置するように配置することができる。
【0046】
また、一対の第2プレート23の内側離間距離D5は、一対の第1プレート22の内側離間距離D1よりも短い。すなわち、一対の第2プレート23は、一対の第1プレート22の内側に位置している。
【0047】
取っ手24は、作業者が把持する把持棒81と、把持棒81に固着された取付片82と、を備える。把持棒81は、本体21の短手方向32に沿って延びる円柱状である。把持棒81は、本体21の短手方向32における端部(
図2における下端部)に、取付片82が嵌入された嵌入溝83を有する。取付片82は、本体21の厚み方向31を厚みとする矩形板状である。本体21の短手方向32における取付片82の端部(
図2における上端部)は、把持棒81の嵌入溝83に嵌入されている。把持棒81と取付片82とは、例えばボルト及びナットを用いて相互に固定されている。
【0048】
取付片82は、ボルト53が挿通された挿通孔84を有する。挿通孔84は、本体21の厚み方向31において取付片82を貫通している。
図3(C)に示す例では、2つの挿通孔84が取付片82に設けられている。2つの挿通孔84は、本体21の短手方向32において並んでいる。取っ手24は、取付片82の挿通孔84及び本体21の第3取付孔43に挿通されたボルト53と、ボルト53に締結されたナット56とによって本体21に固定されている。
【0049】
次に、アンカーボルト用吊り治具20を用いた作業者の作業について、
図5、
図6、及び
図7を参照して説明する。まず、作業者は、アンカーボルト13の2つのボルト部15にナット57(
図7)をそれぞれ締結する。ナット57は、本発明の第1ナットの一例である。
【0050】
作業者は、ナット57が締結されたボルト部15が埋設部14から上向きに突出する姿勢でアンカーボルト13を片手で保持し、アンカーボルト13を支持材19の下方から支持材19に向かって移動させ、ボルト部15を支持材19の挿通孔34に下方から挿通させる(
図5、
図7(A))。作業者が、ボルト部15を挿通孔34に挿通させる工程は、本発明の第3工程の一例である。
【0051】
次に、作業者は、アンカーボルト13を保持した手とは反対側の手で、アンカーボルト用吊り治具20の取っ手24を把持し、本体21の短手方向32が鉛直方向に沿う姿勢でアンカーボルト用吊り治具20を保持する(
図5)。そして、作業者は、保持したアンカーボルト用吊り治具20を、支持材19の側方から支持材19に近づけ、アンカーボルト用吊り治具20の第1プレート22のプレート本体61が支持材19の上方に位置し、かつ一対の第2プレート23のプレート本体71が一対のボルト部15の外側に位置するようにアンカーボルト用吊り治具20を配置する(
図6、
図7(B))。そして、作業者は、アンカーボルト用吊り治具20及びアンカーボルト13から手を離す。手を離されたアンカーボルト用吊り治具20は、第1プレート22のプレート本体61の下面が支持材19の上面に当接することにより、支持材19によって支持される。手を離されたアンカーボルト13は、ボルト部15に締結されたナット57の下端がアンカーボルト用吊り治具20の第2プレート23のプレート本体71の上面に当接することにより、支持材19に支持されたアンカーボルト用吊り治具20によって支持される(
図7(B))。すなわち、アンカーボルト13は、アンカーボルト用吊り治具20を介して支持材19に支持される。作業者が、アンカーボルト用吊り治具20の第1プレート22のプレート本体61が支持材19の上方に位置するようにアンカーボルト用吊り治具20を配置して、アンカーボルト用吊り治具20及びアンカーボルト13から手を離す工程は、本発明の第4工程の一例である。
【0052】
両手の空いた作業者は、支持材19の挿通孔34に挿通されたアンカーボルト13のボルト部15の先端部に、下端が支持材19の上面に当接する位置までナット58を締結する(
図7(C))。下端が支持材19の上面に当接するナット58を介して、アンカーボルト13が支持材19に支持される。すなわち、アンカーボルト13は、支持材19に吊り下げられた状態となる。ナット58は、本発明の第2ナットの一例である。作業者が、ナット58をボルト部15に締結する工程は、第5工程の一例である。
【0053】
作業者は、ナット58をボルト部15に締結した後、アンカーボルト用吊り治具20を水平方向に移動させて、アンカーボルト用吊り治具20を支持材19から取り外す。作業者が、アンカーボルト用吊り治具20を支持材19から取り外す工程は、本発明の第6工程の一例である。
【0054】
次に、作業者は、アンカーボルト13のボルト部15に締結された下側のナット57を回し、ナット57の上端を支持材19の下面に当接させる(
図7(D))。すなわち、下側のナット57及び上側のナット58は、支持材19を上下に挟む。支持材19を上下に挟むナット57、58により、アンカーボルト13は、支持材19に確実に固定される。
【0055】
次に、作業者は、型枠18の内側に生コンクリートを投入し、布基礎10を打設する。作業者が布基礎10を打設する工程は、第7工程の一例である。
【0056】
作業者は、布基礎10を打設した後、型枠18及び支持材19を布基礎10から取り外す。作業者が、布基礎10から型枠18及び支持材19を取り外す工程は、第8工程の一例である。
【0057】
[実施形態の作用効果]
本実施形態では、アンカーボルト13のボルト部15にナット58を締結するまでは、アンカーボルト用吊り治具20がアンカーボルト13を支持する。したがって、作業者は、アンカーボルト13を支持することなく、ボルト部15にナット58を締結することができる。その結果、アンカーボルト13を支持材19に取り付ける作業者の作業が容易になる。
【0058】
本実施形態では、アンカーボルト用吊り治具20は、一対の第1プレート22を備える。したがって、1つの第1プレート22のみが設けられる場合に比べ、アンカーボルト用吊り治具20が支持材19に確実に支持される。
【0059】
本実施形態では、アンカーボルト用吊り治具20は、一対の第2プレート23を備えるので、アンカーボルト用吊り治具20のバランスがよい。
【0060】
また、一対の第2プレート23は、一対のボルト部15の両側に位置する。したがって、ボルト部15に締結されたナット57が第2プレート23から外れることが防止される。その結果、1つの第2プレート23のみが設けられる場合に比べ、アンカーボルト用吊り治具20は、アンカーボルト13を確実に支持することができる。
【0061】
本実施形態では、一対の第2プレート23は、一対の第1プレート22の内側に位置する。したがって、第2プレート23に支持されるアンカーボルト13のボルト部15と第1プレート22とは、水平方向において離間する。その結果、アンカーボルト用吊り治具20の使い勝手が良くなる。
【0062】
本実施形態では、アンカーボルト用吊り治具20は、取っ手24を有する。したがって、アンカーボルト用吊り治具20の使い勝手が良い。
【0063】
本実施形態では、アンカーボルト用吊り治具20は、アンカーボルト13のボルト部15にナット58が締結された後、支持材19から取り外される。したがって、作業者は、1つのアンカーボルト用吊り治具20で、複数のアンカーボルト13を支持材19に吊り下げる作業を行うことができる。
【0064】
[変形例]
上述の実施形態では、一対の第2プレート23の内側離間距離D5(
図2)が、アンカーボルト13の2つのボルト部15の外側離間距離D2(
図4)よりも長く、一対の第2プレート23が2つのボルト部15の外側に位置するように配置される例(
図7(B))が説明された。しかしながら、一対の第2プレート23の外側離間距離D5(
図2)が、アンカーボルト13の2つのボルト部15の内側側離間距離D4(
図4)よりも短くされていてもよい。その場合、
図8(A)に示されるように、一対の第2プレート23は、2つのボルト部15の内側に位置する。
【0065】
上述の実施形態では、一対の第1プレート22の内側離間距離D1(
図2)が、アンカーボルト13の2つのボルト部15の外側離間距離D2(
図4)よりも長く、一対の第1プレート22が2つのボルト部15の外側に位置するように配置される例(
図7(B))が説明された。しかしながら、一対の第1プレート22の外側離間距離D3(
図2)が、アンカーボルト13の2つのボルト部15の内側側離間距離D4(
図4)よりも短くされていてもよい。その場合、
図8(B)に示されるように、一対の第1プレート22は、2つのボルト部15の内側に位置する。
【0066】
上述の実施形態では、アンカーボルト吊り治具20が一対の第2プレート23を備える例が説明された。しかしながら、アンカーボルト吊り治具20は、
図8(C)に示されるように、1つの第2プレート23のみを備えていてもよい。その場合、長手方向33における第2プレート23の長さは、一対のボルト部15の内側離間距離D4の長さよりも若干短くされる。
【0067】
上述の実施形態では、アンカーボルト吊り治具20が一対の第1プレート22を備える例が説明された。しかしながら、アンカーボルト吊り治具20は、
図8(D)に示されるように、1つの第1プレート22のみを備えていてもよい。その場合、長手方向33における第1プレート22の長さは、一対のボルト部15の内側離間距離D4の長さよりも短くされる。
【0068】
上述の実施形態では、アンカーボルト用吊り治具20が、2つのボルト部15を有するアンカーボルト13の設置に用いられる例が説明された。しかしながら、アンカーボルト用吊り治具20は、1つのボルト部15を有するアンカーボルト13の設置に用いられてもよい。その場合、例えば、一対の第2プレート23の内側離間距離D5(
図2)は、ボルト部15の直径と略同一の長さとされる。すなわち、一対の第2プレート23は、ボルト部15を水平方向における両側から挟む。
【0069】
上述の実施形態では、アンカーボルト用吊り治具20の第1プレート22、第2プレート23、及び取っ手24が、ボルト51、52、53及びナット54、55、56を用いて本体21に固定された例が説明された。しかしながら、第1プレート22、第2プレート23、及び取っ手24は、ビスや接着剤など、ボルト及びナット以外の固着具を用いて本体21に固定されていてもよい。
【0070】
上述の実施形態では、取っ手24が丸棒状である例が説明された。しかしながら、取っ手24は、枠状やL字状など、他の形状であってもよい。
【0071】
上述の実施形態では、本体21が矩形板状である例が説明された。しかしながら、本体21は、台形や楕円形や枠状や格子状など、他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
10・・・布基礎
13・・・アンカーボルト
15・・・ボルト部
18・・・型枠
19・・・支持材
20・・・アンカーボルト用吊り治具
21・・・本体
22・・・第1プレート
23・・・第2プレート
24・・・取っ手
26・・・主面
31・・・厚み方向(第1方向)
32・・・短手方向(第2方向)
33・・・長手方向(第3方向)