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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】多層濾材
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20230801BHJP
   B01D 39/14 20060101ALI20230801BHJP
   B03C 3/013 20060101ALI20230801BHJP
   B03C 3/28 20060101ALI20230801BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
A61L9/01 Z
B01D39/14 K
B01D39/14 C
B01D39/14 E
B03C3/013 Z
B03C3/28
B01D53/04 110
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019517438
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2019013746
(87)【国際公開番号】W WO2019189638
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2018067922
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八並 裕治
(72)【発明者】
【氏名】浅田 康裕
(72)【発明者】
【氏名】高木 由扶子
【審査官】本間 友孝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-134783(JP,U)
【文献】特開2002-085536(JP,A)
【文献】特表2012-512742(JP,A)
【文献】国際公開第2009/041257(WO,A1)
【文献】特開2000-233111(JP,A)
【文献】特開2011-072911(JP,A)
【文献】特開2015-062860(JP,A)
【文献】特開2002-177717(JP,A)
【文献】特開2002-331212(JP,A)
【文献】特開平11-300126(JP,A)
【文献】特開2003-334410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00 ー 9/22
B01D 39/00ー41/04
B01D 53/02ー53/12
B03C 3/00ー11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の不織布層が重ねられ、前記不織布層のうち隣接する2層によって構成される層間領域を2以上有する多層濾材であって、前記層間領域のうちの第1の層間領域には平均粒子径50~100μmの機能粒子Aが存在しており、その他の層間領域から選ばれる第2の層間領域には平均粒子径150~500μmの機能粒子Bが存在しており、前記機能粒子Aおよび前記機能粒子Bは、酸性ガスの吸着能を有する機能粒子、塩基性ガスの吸着能を有する機能粒子、およびアルデヒドガスの吸着能を有する機能粒子からなる群から選ばれる、互いに異なる機能粒子である、多層濾材。
【請求項2】
前記機能粒子Aおよび前記機能粒子Bの一方が、酸性ガスの吸着能を有する機能粒子であり、前記機能粒子Aおよび前記機能粒子Bの他方が、塩基性ガスの吸着能を有する機能粒子である、請求項1に記載の多層濾材。
【請求項3】
前記機能粒子A及び前記機能粒子Bの少なくともいずれか一方が、アルデヒドガスを選択的に化学吸着するものである、請求項1に記載の多層濾材。
【請求項4】
前記機能粒子Aおよび前記機能粒子Bの一方が、酸性ガスの吸着能を有する機能粒子であり、前記機能粒子Aおよび前記機能粒子Bの他方が、アルデヒドガスの吸着能を有する機能粒子である、請求項3に記載の多層濾材。
【請求項5】
前記第1の層間領域における前記機能粒子Aの目付が、20~80g/mであり、
前記第2の層間領域における前記機能粒子Bの目付が、20~600g/mである、請求項1~4のいずれかに記載の多層濾材。
【請求項6】
前記3層以上の不織布層のうち、少なくとも1層以上の不織布層が帯電した不織布である請求項1~5のいずれかに記載の多層濾材。
【請求項7】
平均粒子径0.3μmの粒子に対する捕集効率が99.97%以上である請求項1~6のいずれかに記載の多層濾材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の多層濾材を用いたエアフィルター。
【請求項9】
前記不織布層から選ばれる第1の不織布層の表面に、前記機能粒子Aを配置する工程と、
前記不織布層から選ばれる第2の不織布層の表面に、前記機能粒子Bを配置する工程と、
前記3層以上の不織布層を重ねる工程とを有する、請求項1~7のいずれかに記載の多層濾材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルター用に好適な多層濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気中の汚染物質などによる人の健康への関心が高まっており、室内空気の質への注目が集まっている。汚染物質の種類は塵埃、臭いなど多岐にわたり、これらを除去するために、除塵のみならず、脱臭性能を有した空気清浄機が普及している。
【0003】
脱臭性能を有するエアフィルターに用いられる濾材として、2層の不織布層の間の層間領域に脱臭機能を有する機能粒子が2層の不織布層の間の層間領域に配置されてなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、脱臭機能を有する機能粒子としては、ヒドラジン化合物が付着したシリカ粒子などが知られている。そして、長期の濾材保管後の濾材の脱臭性能の劣化を抑制する観点からは、粒子径の大きい機能粒子を用いることが有効である。その一方で、特許文献2に開示があるように、濾材の脱臭性能を優れたものとする観点からは、粒子径の小さい機能粒子を用いることが有効であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-139720号公報
【文献】特開2007-136029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の事項などを考慮すると、長期の濾材保管後の濾材の脱臭性能の劣化を抑制でき、かつ、脱臭性能が優れた濾材を得るためには、例えば、特許文献1に開示された濾材において、2つの不織布層の間の層間領域に粒子径の大きい機能粒子と粒子径の小さい機能粒子とが配置されたものとすることが考えられる。
【0007】
本発明者の知見によると、この場合には、この濾材を用いたエアフィルターの圧力損失が高くなり、この濾材はエアフィルター用途には適さないものとなるとの課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、長期の濾材保管後の脱臭性能の劣化が抑制され、かつ、脱臭性能に優れ、さらに、圧力損失が低い多層濾材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような構成を採用する多層濾材である。
(1) 3層以上の不織布層が重ねられ、前記不織布層のうち隣接する2層によって構成される層間領域を2以上有する多層濾材であって、前記層間領域のうちの第1の層間領域には平均粒子径50~100μmの機能粒子Aが存在しており、その他の層間領域から選ばれる第2の層間領域には平均粒子径150~500μmの機能粒子Bが存在している、多層濾材。
(2) 前記第1の層間領域における前記機能粒子Aの目付が、20~80g/m2であり、
前記第2の層間領域における前記機能粒子Bの目付が、20~600g/m2である、前記多層濾材。
(3) 前記機能粒子Aおよび前記機能粒子Bの一方が、酸性ガスの吸着能を有する機能粒子であり、前記機能粒子Aおよび前記機能粒子Bの他方が、塩基性ガスの吸着能を有する機能粒子である、前記いずれかの多層濾材。
(4) 前記3層以上の不織布層のうち、少なくとも1層以上の不織布層が帯電した不織布である前記いずれかの多層濾材。
(5) 平均粒子径0.3μmの粒子に対する捕集効率が99.97%以上である前記いずれかの多層濾材。
(6) 前記機能粒子A及び、前記機能粒子Bの少なくともいずれか一方が、揮発性有機化合物ガスを化学吸着するものである前記いずれかの多層濾材。
(7) 前記機能粒子A及び、前記平機能粒子Bの少なくともいずれか一方が、アルデヒドガスを選択的に化学吸着するものである前記いずれかの多層濾材。
(8) 前記いずれかの多層濾材を用いたエアフィルター。
(9) 前記不織布層から選ばれる第1の不織布層の表面に、前記機能粒子Aを配置する工程と、
前記不織布層から選ばれる第2の不織布層の表面に、前記機能粒子Bを配置する工程と、
前記3層以上の不織布層を重ねる工程とを有する、前記いずれかの多層濾材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期の濾材保管後の脱臭性能の劣化が抑制され、かつ、脱臭性能に優れ、さらに、圧力損失が低い多層濾材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の多層濾材は、3層以上の不織布層を有し、前記不織布層の隣接する2層によって構成される層間領域を有2以上有する。また、これらの2つ以上の層間領域のうちの第1の層間領域には平均粒子径50~100μmの機能粒子(以下機能粒子Aとする)が存在し、これらの2つ以上の層間領域のうちの第2の層間領域には平均粒子径150~500μmの機能粒子(以下機能粒子Bとする)が存在している。
【0012】
すなわち、本発明の多層濾材が備える第1の層間領域には機能粒子Aが配置されており、本発明の多層濾材が備える第2の層間領域には機能粒子Bが配置されている。このように、本発明の多層濾材が備える別々の層間領域に機能粒子Aと機能粒子Bとが分離されて配置されていることで、本発明の多層濾材は、長期の濾材保管後の濾材の脱臭性能の劣化が抑制され、かつ、濾材の脱臭性能が優れ、さらに、この多層濾材の圧力損失は低いものとなる。
【0013】
本発明の多層濾材にて、上記の効果が奏される理由は以下のとおりと考える。長期の濾材保管後の濾材の脱臭性能の劣化が抑制され、かつ、脱臭性能が優れた濾材を得るためには、機能粒子Aおよび機能粒子Bを用いる。しかし、これらの機能粒子AとBとが多層濾材が備える同一の層間領域に配置された場合には、この多層濾材を用いたエアフィルターの圧力損失が高いものとなる。これは、多層濾材の1つの層間領域に粒子径の小さい機能粒子Aと粒子径の大きな機能粒子Bとが混在することで、これらの機能粒子AとBとの配置が以下のとおりとなるためと考える。すなわち、この1つの層間領域に機能粒子Bが存在することで、この1つの層間領域は厚さが大きく、かつ、低密度なものとなる。そして、この1つの層間領域に、さらに、機能粒子Aが存在することで、機能粒子Aが複数の機能粒子Bにより形成される隙間に入り込み、この1つの層間領域は厚さが大きく、かつ、密に機能粒子AとBとが充填されたものとなる。そして、このような1つの層間領域を有する多層濾材に通風を行った場合における、この1つの層間領域の通気性は低いものとなり、結果として、この多層濾材の圧力損失は高いものとなると考える。
【0014】
以下、本発明の多層濾材に用いられる材料の詳細や、本発明の多層濾材の構成の詳細について説明する。
【0015】
<機能粒子>
まず、機能粒子について説明する。本発明に用いることができる機能粒子としては、具体的に、活性炭粒子、二酸化ケイ素粒子、ゼオライト粒子、活性アルミナ粒子、活性白土粒子、ケイ酸アルミニウム粒子、ケイ酸マグネシウム粒子、イオン交換樹脂粒子および、これらの粒子に後述する薬剤が添着されてなるもの等を挙げることができる。そして、これらの粒子は、単独で用いられても良いし、併用されてもよい。そして、これらの粒子のうち、活性炭粒子、二酸化ケイ素粒子、ゼオライト粒子および、これらの粒子に後述する薬剤が添着されてなるものは、アルデヒドガスのような揮発性有機化合物(VOC)ガスを吸着する能力に優れており、ガス吸着材として本発明の多層濾材に好適に用いられる。また、詳細は後述するが、機能粒子は、活性炭粒子や二酸化ケイ素粒子、ゼオライト粒子に後述する薬剤が添着されてなるものであることが、多層濾材の脱臭性能がより優れたものとなるとの理由から好ましい。また、これらの粒子は多孔質体であることが、多層濾材の脱臭性能がより優れたものとなるとの理由から好ましい。また、上記のとおり、機能粒子として、活性炭粒子や二酸化ケイ素粒子等が併用されてもよい。よって、例えば、活性炭粒子と二酸化ケイ素粒子とから混成される機能粒子であって、全体の平均粒子径が50~100μmのものは機能粒子Aとなる。
【0016】
<機能粒子の平均粒子径>
本発明の多層濾材では、平均粒子径が相互に異なる2種類以上の機能粒子を用いており、機能粒子Aは体積あたりの表面積が大きく、ガスとの接触効率が高いため、この機能粒子を有する本発明の多層濾材は特に脱臭性能が優れたものとなる。一方で、機能粒子Bは体積あたりの表面積が小さく、機能粒子のガス吸着性能の経時劣化を促進する空気との接触効率が小さいため、この機能粒子を有する本発明の多層濾材を長期間保管した後の濾材の脱臭性能の劣化を抑制することができる。
【0017】
そして、機能粒子Aおよび機能粒子Bを有する多層濾材は、脱臭性能に優れるとともに、長期保管後の濾材の脱臭性能の劣化も抑制することができる。
【0018】
ここで、機能粒子Aの平均粒子径は50~100μmである。機能粒子Aの平均粒子径が50μm未満であると、多層濾材の吸着対象ガスの吸着速度は速くなるが、その一方で、多層濾材が有する不織布層のポアサイズによっては多層濾材から機能粒子Aが脱落する傾向がみられる。また、機能粒子Aの平均粒子径が50μm未満であると、機能粒子Aの取り扱い性や加工性が低下する傾向がみられる。一方で、機能粒子Aの平均粒子径が100μmを超えるものであると、機能粒子Aの体積に対する機能粒子Aの表面積が小さくなるため、機能粒子Aの吸着対象ガスの吸着速度が遅くなり、脱臭性能が低下する傾向がみられる。次に、機能粒子Bの平均粒子径は150~500μmである。機能粒子Bの平均粒子径が150μm未満であると、多層濾材の吸着対象ガスの吸着速度は速くなるが、特に、機能粒子Bが二酸化ケイ素粒子等に薬剤が添着されてなるものである場合には、空気との接触により経時的に吸着対象ガスの吸着性能が低下し、脱臭性能の維持期間が短期化する傾向がみられる。一方で、機能粒子Bの平均粒子径が500μmを超えるものであると、濾材にプリーツ加工等をする際に濾材に挟み込まれた機能粒子Bが不織布層を突き破ったり、上記のプリーツ加工等において機能粒子が破壊されやすくなる傾向がみられる。そして、機能粒子が破壊された場合には、50μm以下の機能粒子の微粉が発生する傾向がある。
【0019】
ここで、機能粒子の平均粒子径とは、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、その観察像から直接個々の粒子のサイズを計測する手法により、粒子径を測定した。具体的には、以下のようにして平均粒子径を求めた。
【0020】
測定対象である機能粒子をSEMにより観察する。無作為に観察視野を設定する。観察視野内において、粒子の全体像を表す輪郭が把握できる全ての粒子(すなわち粒子の一部が他の粒子に遮られているか視野外にはみ出ているために粒子の輪郭が把握できない粒子を除く全ての粒子)を選択する。この方法で選択した粒子について、それぞれSEM像における粒子の輪郭からその粒子の投影面積Sを求める。投影面積Sは画像処理を利用して測定することができる。その投影面積Sと等しい面積を持つ円の直径Dをその粒子の円相当径Dとする。選択した粒子の総数が200個以上となるまで、測定を繰り返す。円相当径Dの総和を選択した粒子の総数Nで除した値を平均粒子径とする。
【0021】
また、本発明の機能粒子は、粒度分布がシャープであることが好ましい。例えば、次式により定まる変動係数CVが0.7以下であることが好ましく、0.5以下がより好ましい。
CV=σ/D50
ここでσは機能粒子の円相当径の標準偏差、D50は機能粒子の平均粒子径である。
【0022】
<機能粒子の目付>
次に、本発明の多層濾材における機能粒子Aの目付と機能粒子Bの目付について説明する。ここで、機能粒子の目付とは、多層体が有する複数の層間領域のうちの1つの層間領域における機能粒子の目付をいう。
【0023】
また、本発明では、機能粒子Aと機能粒子Bとが、それぞれ別々の層間領域に分離して配置されている。そして、本発明の多層濾材は、上記のような構成となっていることで、長期保管後の多層濾材の脱臭性能の劣化を抑制でき、かつ、濾材の脱臭性能が優れ、さらに、この多層濾材の圧力損失は低いものとなる。そして、別々の層間領域に分離して配置された機能粒子Aと機能粒子Bとの目付には、それぞれ好適な範囲がある。後述する好適な目付の範囲内で機能粒子Aと機能粒子Bとを分離して2つ以上の層間領域に配置すると、上記の本発明の効果がより顕著なものとなる。
【0024】
機能粒子Aと機能粒子Bのそれぞれの目付について、好適な範囲を以下に記述する。
【0025】
機能粒子Aの目付は20g/m2~80g/m2の範囲が好ましい。機能粒子Aの目付は30g/m2以上であることがより好ましい。機能粒子Aの目付は60g/m2以下であることがより好ましい。機能粒子Aの目付を20g/m2以上とすることで、濾材の脱臭性能が優れ、かつ、長期保管後の濾材の脱臭性能の劣化を抑制することができる。また、機能粒子Aの目付を80g/m2以下とすることで、この多層濾材の通気性が特に優れたものとなり、圧力損失の上昇を、より抑えることができる。
【0026】
機能粒子Bの目付は20g/m2~600g/m2の範囲が好ましい。機能粒子Bの目付は100g/m2以上であることがより好ましい。機能粒子Bの目付は500g/m2以下であることが好ましい。機能粒子Bの目付を20g/m2以上とすることで、濾材の初期の脱臭性能が優れ、かつ、濾材の長期保管後の脱臭性能の劣化を抑制できる。また、機能粒子Bの目付を600g/m2以下とすることで、この多層濾材の通気性が特に優れたものとなり、圧力損失の上昇を、より抑えることができ、さらに、多層濾材が嵩高なものとなり、この濾材にプリーツ加工等を施した際に、濾材の内外径の差が大きくなることも抑えることができるため、破れが生じることを抑制できる。
【0027】
<機能粒子の細孔径>
効率よくガスを除去することを目的として、本発明で採用する機能粒子Aの細孔径は、0.5~100nmであることが好ましい。機能粒子Aの細孔径が100nm以下であることで、機能粒子Aの比表面積が大きくなり、高い脱臭性能を実現することができる。また、機能粒子Aの細孔径が0.5nm以上であることで、除去の対象となるガス成分の細孔内部への侵入が促進される。また、本発明で採用する機能粒子Bの細孔径は、0.5nm以上であることが好ましい。機能粒子Bの細孔径が0.5nm以上であることで、除去の対象となるガス成分の細孔内部への侵入が促進される。また、機能粒子の細孔径については、細孔の形状を円筒状と仮定し、後述するBET比表面積(S)とBET比表面積測定の際に得られる細孔容積(V)から次式により平均細孔径(D)として算出する。
D=4V/S 。
【0028】
<機能粒子の比表面積>
本発明で採用する機能粒子の比表面積は、脱臭性能の面から大きいほど好ましい。
【0029】
例えば、機能粒子Aの比表面積としては、BET比表面積で50m/g以上であることが好ましい。機能粒子AのBET比表面積が50m/g以上であることで、除去の対象となるガス成分と機能粒子Aとが接触する実効的な面積を確保することができ、機能粒子Aの除去の対象となるガスを除去する速度がより速くなる。機能粒子が無多孔質の場合、機能粒子Aとして粒子径を小さくすることで、幾何学的表面積を大きくでき接触する面積を確保できる点で、脱臭性能を向上させることができる。
【0030】
また、本発明で採用する機能粒子Bの比表面積としては、BET比表面積で50~2000m/gであることが好ましい。機能粒子BのBET比表面積が50m/g以上であることで、除去の対象となるガス成分と機能粒子Bとが接触する実効的な面積を確保することができ、機能粒子Bの除去の対象となるガスを除去する速度がより速くなる。また、機能粒子BのBET比表面積が2000m/g以下であることで、ガス吸着性能の経時劣化を促進する空気との接触効率が小さいため、長期保管後の機能粒子Bの脱臭性能の劣化を抑制することができる。
【0031】
<薬剤>
上記のとおり、機能粒子の一形態として、二酸化ケイ素粒子などの粒子に薬剤が添着されてなるものが含まれる。以下、上記の薬剤について説明する。
【0032】
機能粒子への物理吸着による除去が困難なガスは、機能粒子を二酸化ケイ素粒子などに薬剤を担持させてなるものとすることで、化学的に除去することもできる。薬剤として、例えば、アルデヒドガスを除去することを目的とした、酸ジヒドラジド化合物や酸性ガス除去を目的とした金属炭酸塩や塩基性ガス除去を目的とした酸性化合物が好適である。
【0033】
酸ジヒドラジドとしては例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、安息香酸ヒドラジド等、分子内に1個の酸ヒドラジド基を有する酸モノヒドラジドや、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド等、分子内に2個の酸ヒドラジド基を有する酸ジヒドラジド、さらには、ポリアクリル酸ヒドラジド等、分子内に3個以上の酸ヒドラジド基を有する酸ポリヒドラジドが挙げられる。なかでも、ジヒドラジド類が好ましく、とりわけアジピン酸ジヒドラジドがアルデヒド類の吸着性能の点で好ましい。
【0034】
酸ヒドラジド化合物は、カルボン酸とヒドラジンとから誘導される-CO-NHNH2で表される酸ヒドラジド基を有する化合物であり、ヒドラジド末端のα位に、更に非共有電子対を有する窒素原子が結合しており、これにより求核反応性が著しく向上する。この非共有電子対がアルデヒド類のカルボニル炭素原子を求核的に攻撃して反応し、アルデヒド類をヒドラジン誘導体として固定化することにより、アルデヒド類の除去性能を発現できる。
【0035】
本発明の多層濾材に用いる機能粒子における酸ジヒドラジド化合物の担持量は、機能粒子100質量部に対して1~50質量部であることが好ましい。この下限は3質量部以上であることが好ましく、この上限は30質量部以下であることが好ましい。この担持量を1質量部以上であることで、アルデヒド類の除去効率及び吸着容量の実効を得ることができる。この担持量を50質量部以下であることで、機能粒子上で酸ジヒドラジド化合物が結晶化するのを抑制することができ、機能粒子の細孔が結晶化した酸ジヒドラジド化合物により閉塞されるのを抑制することができ、このことにより機能粒子のガス吸着速度の低下を抑制することができる。さらに、この担持量を50質量部以上であることで、機能粒子からの薬剤の脱落の原因ともなるため、担持量は50質量部以下とすることが好ましい。
【0036】
また、酸ジヒドラジド化合物を担持した機能粒子を含む層間領域のpHは、3.0~7.5の範囲であることが好ましい。上記層間領域のpHが7.5以下であることで、酸ヒドラジド化合物の非共有電子対によるアルデヒド類のカルボニル炭素原子への求核的攻撃による反応から生成した中間体が、酸性の反応場においてプロトン化されることで脱水され易くなり、誘導体への固定化反応が十分に進む。すなわち、上記層間領域のpHが7.5以下であることで、酸ヒドラジド化合物によるアルデヒド類の分解がより促進される。また、上記層間領域のpHが3.0以上であることで、酸ヒドラジド化合物の非共有電子対がアルデヒド類のカルボニル炭素原子を求核的に攻撃する活性を十分に維持することができる。すなわち、上記層間領域のpHが3.0以上であることも、酸ヒドラジド化合物によるアルデヒド類の分解がより促進される。なお、上記層間領域のpHは、上記層間領域に配置されたガス吸着剤が5質量%となるように上記ガス吸着剤を、25℃の純水に浸漬し、軽く攪拌した後10分間放置し、上澄み液のpHをpH計にて測定した値をいう。なお、測定は3回行い、平均値を採用する。
【0037】
ここで、下記の酸性ガス除去を目的として金属炭酸塩を担持した機能粒子や、下記の塩基性ガス除去を目的とした酸性化合物を担持した機能粒子は、層間領域のpHを変動させる傾向がある。そして、上記のとおり、酸ヒドラジド化合物によるアルデヒド類の除去性能は、層間領域のpHの影響を受ける。よって、本発明の多層濾材は、酸ジヒドラジド化合物を担持した機能粒子と酸性ガス除去を目的として金属炭酸塩を担持した機能粒子を、それぞれ多層濾材の異なる層間領域に有するものであることが好ましい。
【0038】
また、酸性ガス除去を目的とした金属炭酸塩として、例えば、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩が好適に用いられる。塩基性ガス除去を目的とした酸性化合物として、例えば、燐酸、硫酸、硝酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が好適に用いられる。
【0039】
本発明の多層濾材に用いる機能粒子における金属炭酸塩の担持量は、機能粒子100質量部に対して1~20質量部であることが好ましい。この上限は10質量部以下であることがより好ましい。この担持量が1質量部以上であることで、機能粒子による酸性ガスの除去効率がより優れたものとなり、かつ、機能粒子の酸性ガスの吸着容量もより優れたものとなる。一方で、酸性ガス除去化合物を過剰に添加すると、機能粒子の細孔を塞いでしまい、これにより吸着速度の低下や機能粒子からの薬剤の脱落が発生するため、担持量は10質量部以下とすることが好ましい。本発明の多層濾材に用いる機能粒子における酸性化合物の担持量は、機能粒子100質量部に対して1~20質量部であることが好ましい。この上限は10質量部以下であることがより好ましい。この担持量が1質量部以上であることで、機能粒子による塩基性ガスの除去効率がより優れたものとなり、かつ、機能粒子の塩基性ガスの吸着容量もより優れたものとなる。一方で、酸性化合物を過剰に添加すると、機能粒子の細孔を塞いでしまい、これにより吸着速度の低下や粉落ちするため、添加量は10質量部以下とすることが好ましい。
【0040】
また、多層濾材の同一の層間領域に配置された、酸性ガス除去を目的として金属炭酸塩を担持した機能粒子と塩基性ガス除去を目的とした酸性化合物を担持した機能粒子とは、互いに各々のガス除去の性能を低下させる傾向にある。これは、中和反応によるものであると考えられる。以上のことから、本発明の多層濾材は、酸性ガス除去を目的として金属炭酸塩を担持した機能粒子と塩基性ガス除去を目的とした酸性化合物を担持した機能粒子とを、それぞれ多層濾材の異なる層間領域に有するものであることが好ましい。具体的には、本発明の多層濾材は、機能粒子Aおよび機能粒子Bの一方が、酸性ガスの吸着能を有する機能粒子であり、かつ、機能粒子Aおよび機能粒子Bの他方が、塩基性ガスの吸着能を有する機能粒子であることが好ましい。
【0041】
<濾材構成>
本発明の多層濾材は、3層以上の不織布層を有するが、多層濾材の集塵性能を優れたものとすることができるとの理由から、これらの3層以上の不織布層のうち、少なくとも1層の不織布層が、帯電した不織布から構成されるものであることが好ましい。
【0042】
<エレクトレット不織布層>
本発明の多層濾材を構成する不織布層のうち、少なくとも一層の不織布層がエレクトレット処理されていることが好ましい。エレクトレット処理された不織布層を用いることにより、不織布層の繊維へのダストの物理的捕集だけでなく、静電的捕集が可能となり、より簡便に低い圧力損失で平均粒子径0.3μmの粒子に対する捕集効率99.97%以上を達成することができる。
【0043】
エレクトレット処理された不織布層、すなわち、帯電した不織布を構成する材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成高分子材料等の、高い電気抵抗率を有する材料が好ましい。
【0044】
<多層濾材の製造方法>
本発明の多層濾材の製造方法としては、以下のものを例示できる。すなわち、本発明で使用される不織布層から選ばれる第1の不織布層の表面に、機能粒子Aを配置する工程Iと、3層以上の別不織布層第2の不織布層の表面に、機能粒子Bを配置する工程IIと、3層以上の不織布層を重ねる工程IIIとを有する多層濾材の製造方法である。
【実施例
【0045】
<測定方法>
(1)捕集効率〔%〕
平面状の濾材を有効間口面積0.01mのホルダーにセットし、面風速4.5m/minで鉛直方向に空気を通過させ、フィルター上流および下流の粒子径0.3~0.5μmの大気塵粉塵数をパーティクルカウンター(RION社製、型式:KC-01D)で測定し、次式より算出する。
捕集効率(%)=1-(下流粒子数/上流粒子数)×100 。
測定は1検体から任意に5か所をサンプリングして行い、その平均値を用いる。
【0046】
(2)圧力損失〔Pa〕
平面状の濾材を有効間口面積0.01mのホルダーにセットし、面風速4.5m/minで鉛直方向に空気を通過させ、フィルター上下流の圧力差をMODUS社製デジタルマノメータMA2-04P差圧計で測定する。測定は1検体から任意に5か所をサンプリングして行い、その平均値を用いる。
【0047】
(3)薬剤の担持量〔%〕
薬剤の水溶液を機能粒子に含浸させて乾燥させた後の機能粒子の質量と含浸・乾燥前の機能粒子の質量との差から総担持量を算出し、当該総担持量に各成分の仕込み量比を掛け、機能粒子に対する担持量に換算して算出する。
【0048】
(4)アセトアルデヒドの除去効率〔%〕と吸着容量〔g/m2
各実施例・比較例で作製した12cm角サイズの平板状の濾材を10cm角サイズの実験用のダクトに取り付け、ダクトに温度23℃、湿度50%RHの空気を0.2m/secの速度で送風する。さらに上流側から、標準ガスボンベによりアセトアルデヒドを上流濃度10ppmとなるように添加し、濾材の上流側と下流側とにおいてエアをサンプリングし、赤外吸光式連続モニターを使用してそれぞれのアセトアルデヒド濃度を経時的に測定し、次式にて除去効率を算出する。
除去効率(%)=[(C0-C)/C0]×100
ここに、C0:上流側のアセトアルデヒド濃度(=10ppm)
C:下流側のアセトアルデヒド濃度(ppm)。
【0049】
アセトアルデヒドの添加開始から2分後の除去効率を初期除去効率とし、2分後以降の除去効率を経時的に測定する。また、上流側の濃度と下流側の濃度との差が5%になるまでの吸着量を評価する。前記吸着量をアセトアルデヒドガスの脱臭性能評価に用いた濾材面積(10cm角サイズ)で割り返すことで、濾材単位mあたりの吸着量(=吸着容量〔g/m2〕)を算出する。
【0050】
(5)酢酸の除去効率〔%〕と吸着容量〔g/m2
各実施例・比較例で作製した12cm角サイズの平板状の濾材を10cm角サイズの実験用のダクトに取り付け、ダクトに温度23℃、湿度50%RHの空気を0.2m/secの速度で送風する。さらに上流側から、標準ガスボンベにより酢酸ガスを上流濃度10ppmとなるように添加し、濾材の上流側と下流側とにおいてエアをサンプリングし、赤外吸光式連続モニターを使用してそれぞれの酢酸濃度を経時的に測定し、次式にて除去効率を算出する。
除去効率(%)=[(C0-C)/C0]×100
ここに、C0:上流側の酢酸濃度(=10ppm)
C:下流側の酢酸濃度(ppm)。
【0051】
酢酸の添加開始から2分後の除去効率を初期除去効率とし、2分後以降の除去効率を経時的に測定する。また、上流側の濃度と下流側の濃度との差が5%になるまでの吸着量を評価する。前記吸着量を酢酸ガスの脱臭性能評価に用いた濾材面積(10cm角サイズ)で割り返すことで、濾材単位mあたりの吸着量(=吸着容量〔g/m2〕)を算出する。
【0052】
(6)アンモニアの除去効率〔%〕と吸着容量〔g/m2
各実施例・比較例で作製した12cm角サイズの平板状の濾材を10cm角サイズの実験用のダクトに取り付け、ダクトに温度23℃、湿度50%RHの空気を0.2m/secの速度で送風する。さらに上流側から、標準ガスボンベによりアンモニアを上流濃度10ppmとなるように添加し、濾材の上流側と下流側とにおいてエアをサンプリングし、赤外吸光式連続モニターを使用してそれぞれの酢酸濃度を経時的に測定し、次式にて除去効率を算出する。
除去効率(%)=[(C0-C)/C0]×100
ここに、C0:上流側のアンモニア濃度(=10ppm)
C:下流側のアンモニア濃度(ppm)。
【0053】
アンモニアの添加開始から2分後の除去効率を初期除去効率とし、2分後以降の除去効率を経時的に測定する。また、上流側の濃度と下流側の濃度との差が5%になるまでの吸着量を評価する。前記吸着量をアンモニアガスの脱臭性能評価に用いた濾材面積(10cm角サイズ)で割り返すことで、濾材単位mあたりの吸着量(=吸着容量〔g/m2〕)を算出する。
【0054】
(7)トルエンの除去効率〔%〕と吸着容量〔g/m2
各実施例・比較例で作製した12cm角サイズの平板状の濾材を10cm角サイズの実験用のダクトに取り付け、ダクトに温度23℃、湿度50%RHの空気を0.2m/secの速度で送風する。さらに上流側から、標準ガスボンベによりトルエンを上流濃度80ppmとなるように添加し、シートの上流側と下流側とにおいてエアをサンプリングし、赤外吸光式連続モニターを使用してそれぞれのトルエン濃度を経時的に測定し、これからトルエンの脱臭効率を求める。
脱臭効率(%)=[(C0-C)/C0]×100
ここで、C0:上流側のトルエン濃度(=80ppm)
C:下流側のトルエン濃度( ppm)。
【0055】
トルエンの添加開始から2分後の脱臭効率を初期脱臭効率とし、2分後以降の除去効率を経時的に測定する。また、上流側の濃度と下流側の濃度との差が5%になるまでの吸着量を評価する。前記吸着量をトルエンガスの脱臭性能評価に用いた濾材面積(10cm角サイズ)で割り返すことで、濾材単位mあたりの吸着量(=吸着容量〔g/m2〕)を算出する。
【0056】
(8)多層濾材に含まれる機能粒子の平均粒子径〔μm〕
多層濾材の不織布層を単離し、不織布層上の機能粒子を光学顕微鏡(デジタルマクロスコープ(KEYENCE製 型番VHX-6000))を用いて、視野のサイズ1700μm×1300μmを倍率200倍、解像度1600ピクセル×1200ピクセルで観察する。円相当径および変動係数CV値は上述の方法で求めた。
【0057】
(9)目付〔g/m2
機能粒子1および熱可塑性樹脂(バインダー)等の添加物1を混合攪拌した混合粉体1を不織布層1(面積:1m)に散布した後、さらに他の不織布層2(面積:1m)を重ね合わせて熱プレスを行い一体化し(積層濾材1)、その総目付を測定し、総目付から不織布層1と不織布層2の目付を差し引いた値に、機能粒子1の仕込み量比を掛け、積層濾材1に配置された機能粒子1の単位mあたりの含有量を算出し、目付とする。
【0058】
次に、機能粒子2および熱可塑性樹脂(バインダー)等の添加物2を混合攪拌した混合粉体2を積層濾材1に散布した後、さらに他の不織布層3(面積:1m)を重ね合わせて熱プレスを行い一体化し(多層濾材2)する。そして、その総目付を測定し、総目付から積層体1と不織布層3の目付を差し引いた値に、機能粒子2の仕込み量比を掛け、多層濾材2に配置された機能粒子2の単位mあたりの含有量を算出し、目付とする。
【0059】
以降、この操作を繰り返すことで、多層濾材n(nは2以上の自然数)に配置された機能粒子nの単位mあたりの含有量を算出し、目付とする。すなわち、機能粒子nおよび熱可塑性樹脂(バインダー)等の添加物nを混合攪拌した混合粉体nを積層濾材n-1に散布した後、さらに他の不織布層n+1(面積:1m)を重ね合わせて熱プレスを行い一体化し(多層濾材n)、その総目付を測定し、総目付から多層濾材n-1(n=2の場合のみ多層濾材1ではなく積層体1となる)と不織布層n+1の目付を差し引いた値に、機能粒子nの仕込み量比を掛け、多層濾材nに配置された機能粒子nの単位mあたりの含有量を算出し、目付とする。
【0060】
(10)薬剤検出方法
前記平均粒子径と同様の方法で多層濾材から不織布層を引きはがし、機能粒子を取り出した。機能粒子2gを秤取した後、50mLガラス製遠沈管へ採取し、アセトニトリル/水(1:1)20mLに溶解させた。調製した溶液をPTFEディスクフィルタ(0.45μm)で濾過した濾液を溶液として、カラム温度45℃、流量0.3mL/min、注入量1μLの条件で液体クロマトグラフィー質量分析(液体クロマトグラフィーのシステム:島津製作所製 型式;LC-20A、カラム:YMC社製 型式;YMC Triart-PFP(3×150mm, 3μm)、質量分析計:Sciex社製 型式;API4000)に供した。
【0061】
<製造例>
実施例及び比較例で使用した機能粒子、エレクトレット不織布層、濾材剛性を向上させるためのシート、多層濾材は以下の方法で製造した。
【0062】
(機能粒子:アルデヒド脱臭剤)
平均粒子径50μmの多孔質シリカ100質量部へ、アルデヒドガス除去を目的とする薬剤として、アジピン酸ジヒドラジド「ケムキャッチ6000HS(大塚化学社製)」7.2質量部を添着した機能粒子Aを用いた。ここで、上記(8)で測定した、この機能粒子Aの平均粒子径は50μmであった。
【0063】
平均粒子径75μmの多孔質シリカ100質量部へ、アルデヒドガス除去を目的とする薬剤として、アジピン酸ジヒドラジド「ケムキャッチ6000HS(大塚化学社製)」7.2質量部を添着した機能粒子Aを用いた。ここで、上記(8)で測定した、この機能粒子Aの平均粒子径は75μmであった。
【0064】
平均粒子径100μmの多孔質シリカ100質量部へ、アルデヒドガス除去を目的とする薬剤として、アジピン酸ジヒドラジド「ケムキャッチ6000HS(大塚化学社製)」7.2質量部を添着した機能粒子Aを用いた。ここで、上記(8)で測定した、この機能粒子Aの平均粒子径は100μmであった。
【0065】
平均粒子径300μmの多孔質シリカ100質量部へ、アルデヒドガス除去を目的とする薬剤として、アジピン酸ジヒドラジド「ケムキャッチ6000HS(大塚化学社製)」7.2質量部を添着した機能粒子Bを用いた。ここで、上記(8)で測定した、この機能粒子Bの平均粒子径は300μmであった。
【0066】
(機能粒子:有機ガス・酸性ガス脱臭剤)
平均粒子径75μmの活性炭を機能粒子Bとして用いた。ここで、上記の平均粒子径〔μm〕(8)で測定した、この機能粒子Bの平均粒子径は75μmであった。
平均粒子径300μmの活性炭を機能粒子Bとして用いた。ここで、上記の平均粒子径〔μm〕(8)で測定した、この機能粒子Bの平均粒子径は300μmであった。
【0067】
(機能粒子:陽イオン交換樹脂)
平均粒子径75μmの陽イオン交換樹脂を機能粒子Aとして用いた。ここで、上記の平均粒子径〔μm〕(8)で測定した、この機能粒子Aの平均粒子径は75μmであった。
平均粒子径300μmの陽イオン交換樹脂を機能粒子Aとして用いた。ここで、上記の平均粒子径〔μm〕(8)で測定した、この機能粒子Aの平均粒子径は300μmであった。
【0068】
(機能粒子:酸性ガス脱臭剤)
平均粒子径75μmの活性炭100質量部へ、酸性ガス除去を目的とする薬剤として、炭酸カリウムを20質量部を添着した機能粒子Bを用いた。ここで、上記の平均粒子径〔μm〕(8)で測定した、この機能粒子Bの平均粒子径は75μmであった。
平均粒子径300μmの活性炭100質量部へ、酸性ガス除去を目的とする薬剤として、炭酸カリウムを20質量部を添着した機能粒子Bを用いた。ここで、上記の平均粒子径〔μm〕(8)で測定した、この機能粒子Bの平均粒子径は300μmであった。
【0069】
(機能粒子:アルカリ性ガス脱臭剤)
平均粒子径75μmの活性炭100質量部へ、アルカリガス除去を目的とする薬剤として、酢酸を20質量部を添着した機能粒子Bを用いた。ここで、上記の平均粒子径〔μm〕(8)で測定した、この機能粒子Bの平均粒子径は75μmであった。
平均粒子径300μmの活性炭100質量部へ、アルカリガス除去を目的とする薬剤として、酢酸を20質量部を添着した機能粒子Bを用いた。ここで、上記の平均粒子径〔μm〕(8)で測定した、この機能粒子Bの平均粒子径は300μmであった。
【0070】
(エレクトレット不織布層)
エレクトレット処理したポリプロピレンメルトブロー不織布層(繊維径2.6μm、目付19.5g/m、捕集効率99.975%、圧力損失33.3Pa、厚さ0.16mm)を使用した。
【0071】
(濾材剛性を向上させるための不織布層(以下「剛性向上用シート」という。))
ガラス繊維と、ポリビニルアルコール繊維と、酢酸ビニル樹脂とを質量比16:3:1で含む不織布層(繊維径13μm、目付25.3g/m、圧力損失0.8Pa、厚み0.20mm)を使用した。
【0072】
(実施例、比較例)
以下の説明において、比較例2および7を除き、各実施例および各比較例において、不織布層に次の剛性向上用シートを重ね、さらに不織布を重ねる工程がある。1回目の重置で層間に生じるところが層間領域1となり、2回目の重置で層間に生じるところが層間領域2となる。
【0073】
実施例1
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径50μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ25g/mと7.5g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ75g/mと22.5g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Aを作製した。多層濾材Aを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材A’も作製した。
【0074】
実施例2
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径50μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Bを作製した。多層濾材Bを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材B’も作製した。
【0075】
実施例3
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径50μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ75g/mと22.5g/mとを散布した後剛性向上用シートを積層し、その上から平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ25g/mと7.5g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を積層し、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Cを作製した。多層濾材Cを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材C’も作製した。
【0076】
実施例4
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ25g/mと7.5g/mとを散布した)、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ75g/mと22.5g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Dを作製した。多層濾材Dを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材D’も作製した。
【0077】
実施例5
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Eを作製した。多層濾材Eを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材E’も作製した。
【0078】
実施例6
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ75g/mと22.5g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ25g/mと7.5g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Fを作製した。多層濾材Fを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材F’も作製した。
【0079】
実施例7
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径100μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ25g/mと7.5g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ75g/mと22.5g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Gを作製した。多層濾材Gを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材G’も作製した。
【0080】
実施例8
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径100μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Hを作製した。多層濾材Hを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材H’も作製した。
【0081】
実施例9
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径100μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ75g/mと22.5g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ25g/mと7.5g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Iを作製した。多層濾材Iを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材I’も作製した。
【0082】
実施例10
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記陽イオン交換樹脂とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記活性炭とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ150g/mと45g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Jを作製した。
【0083】
実施例11
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、加熱により低融点樹脂粉末を溶融させ、その上から平均粒子径300μmの前記活性炭とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ150g/mと45g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ねて多層濾材Kを作製した。
【0084】
実施例12
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記リン酸添着炭とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記炭酸カリウム添着炭とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ150g/mと45g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Lを作製した。
【0085】
実施例13
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記炭酸カリウム添着炭とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記リン酸添着炭とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ150g/mと45g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Mを作製した。
【0086】
実施例14
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記炭酸カリウム添着炭とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ150g/mと45g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Nを作製した。
【0087】
比較例1
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径75μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し濾材製造直後の多層濾材Oを作製した。多層濾材Oを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材O’も作製した。
【0088】
比較例2
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレン低融点樹脂粉末をそれぞれ100g/mと25g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上からポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ5g/mとを散布し(層間領域2)、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し濾材製造直後の多層濾材Pを作製した。多層濾材Pを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後のも多層濾材P’も作製した。
【0089】
比較例3
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布し)、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し濾材製造直後の多層濾材Qを作製した。多層濾材Qを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材Qも作製した。
【0090】
比較例4
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレン低融点樹脂粉末をそれぞれ100g/mと25g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上からポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ5g/mとを散布し(層間領域2)、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し濾材製造直後の多層濾材Rを作製した。多層濾材Rを切り出し、その一部を25℃、湿度50%RHの室内環境下に1年間静置し、濾材保管1年後の多層濾材R’も作製した。
【0091】
比較例5
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記アルデヒド脱臭剤と平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレン低融点樹脂粉末をそれぞれ25g/mと75g/mと30g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上からポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ5g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し層濾材Sを作製した。
【0092】
比較例6
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径300μmの前記陽イオン交換樹脂とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記活性炭とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ150g/mと45g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Tを作製した。
【0093】
比較例7
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記活性炭とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ150g/mと45g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径75μmの前記陽イオン交換樹脂とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと15g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Uを作製した。
【0094】
比較例8
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径300μmの前記炭酸カリウム添着炭とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ75g/mと22.5g/mとを散布した後、剛性向上用シートを重ね、その上から平均粒子径300μmの前記アルデヒド脱臭剤とポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ150g/mと45g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Vを作製した。
【0095】
比較例9
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記炭酸カリウム添着炭(第1の機能粒子)と平均粒子径300μmの前記リン酸添着炭(第2の機能粒子)とポリエチレン低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと150g/mと60g/mとを散布した後(層間領域1)、剛性向上用シートを重ね、その上からポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ5g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し多層濾材Wを作製した。
【0096】
比較例10
前記エレクトレット不織布層上に、平均粒子径75μmの前記アルデヒド脱臭剤(第1の機能粒子)と平均粒子径300μmの前記炭酸カリウム添着炭(第2の機能粒子)とポリエチレン低融点樹脂粉末をそれぞれ50g/mと150g/mと30g/mとを散布した後、剛性向上用シートを積層し、その上からポリエチレンの低融点樹脂粉末をそれぞれ5g/mとを散布し、さらにその上から前記エレクトレット不織布層を重ね、加熱によりふたつの層間領域にある低融点樹脂粉末を溶融し、隣接する層同士を部分的に接着し濾材製造直後の多層濾材Xを作製した。実施例1~14、比較例1~10で得られたサンプルについて、前記捕集効率〔%〕、圧力損失〔Pa〕、脱臭性能〔%〕、各層間領域の平均粒子径〔μm〕を測定した。また、構成と測定結果を表1~表6にまとめた。
【0097】
比較例2、比較例7は機能粒子が一つの層間領域に密に詰まっているため、圧力損失が高くなった。また、比較例1については、機能粒子Aの劣化が促進され、実施例1~3と比べて濾材保管1年後のアルデヒドガスの脱臭性能が著しく低下していた。さらに、比較例3および4については、製造直後の脱臭性能が実施例2、5および8と比べて、著しく劣っていた。比較例5は機能粒子の粒子径分布が広いため、複数の粒子径の大きい機能粒子により形成される隙間に粒子径の小さい機能粒子が入り込み密に詰まっているため、圧力損失が高くなった。比較例6はアルカリ性ガス脱臭剤の粒子径が大きいため、比表面積が小さくなりアンモニアガスの脱臭性能が低下した。比較例8はアルデヒドガス脱臭剤の粒子径が大きいため、比表面積が小さくなりアルデヒドガスの脱臭性能が低下した。比較例9は酸性ガス脱臭剤とアルカリ性ガス脱臭剤が一つの層間領域にあるため、脱臭剤の薬剤同士が中和反応し、酢酸ガスおよびアンモニアガスの脱臭性能が低下した。比較例10は酸性ガス脱臭剤とアルデヒドガス脱臭剤が一つの層間領域にあるため、酸性ガス脱臭剤とアルデヒドガス脱臭剤が配置されている層間領域のpHが10となった。アルデヒドガス脱臭剤として用いているアジピン酸ジヒドラジドを添着した多孔質シリカは、pH3.0~7.5で脱臭性能が高い性質を持つため、アルデヒドガスの脱臭性能が低下した。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
【表5】
【0103】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の多層濾材は長期の濾材保管後の脱臭性能の劣化を抑制することができ、かつ、脱臭性能に優れ、さらに、圧力損失が低いものであり、この多層濾材は、空気清浄機用フィルターや自動車用キャビンフィルター等に好適に用いることができる。