(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/358 20210101AFI20230801BHJP
H01M 50/383 20210101ALI20230801BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230801BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230801BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20230801BHJP
【FI】
H01M50/358
H01M50/383
H01M50/209
H01M10/613
H01M10/658
(21)【出願番号】P 2020005856
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】森田 秀世
(72)【発明者】
【氏名】上原 雄司
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/039999(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/150051(WO,A1)
【文献】特開2018-073559(JP,A)
【文献】特開2015-133266(JP,A)
【文献】特開2018-073561(JP,A)
【文献】特開2013-218790(JP,A)
【文献】特開2019-102421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 50/30-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型形状を有し、複数の電池セルが積層された積層型電池セルを内部に格納する電池室と、
箱型形状を有し、前記電池室とは別個の
筐体からなるガス室と、
前記電池室を構成する筐体と前記ガス室を構成する筐体同士が直接接触しないよう、前記電池室と前記ガス室の間に設けられた断熱部と、を備え、
前記電池室を構成する筐体には、第1の開口部が設けられ、
前記ガス室を構成する筐体には、第2、第3及び第4の開口部が設けられ、
前記電池室と前記ガス室は、前記第1の開口部と前記第2の開口部を通じて内部が連通しており、
前記ガス室には、前記
第2の開口部と前記
第3及び第4の開口部とを結ぶ直線経路を遮るようにして遮蔽部が設けられて
おり、
前記第1及び第2の開口部を介して前記電池室から前記ガス室内に流入したガスのガス経路は、第1の方向に進行する第1のガス経路と、前記第1の方向とは逆の第2の方向に進行する第2のガス経路に分けられ、
前記第1のガス経路を経由するガスは前記第3の開口部から外部に流出し、前記第2のガス経路を経由するガスは前記第4の開口部から外部に流出することを特徴とするバッテリパック。
【請求項2】
前記
第3及び第4の開口部は、前記ガス室の、
前記第2の開口部が設けられた面に対向する面以外の面に備えられていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
前記ガス室の、
前記第2の開口部が設けられた面に対向する面には、前記電池室から放出されたガスの
ガス経路を前記第1のガス経路と前記第2のガス経路に分ける分岐部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバッテリパック。
【請求項4】
前記第3及び第4の開口部は、前記ガス室の互いに異なる面に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のバッテリパック。
【請求項5】
前記第3及び第4の開口部は、前記ガス室の互いに同じ面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は類焼防止性に優れたバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やパソコン等の電子機器のコードレス化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として、小型、軽量で高エネルギー密度を有する二次電池の利用が高まっている。このような状況下において、充放電容量が大きく、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-301877号公報
【文献】特表2012-511802号公報
【文献】特開2010-218716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池として、複数のリチウムイン二次電池セルが積層してなる積層型バッテリパックが考案されている。しかし、積層型リチウムイオン二次電池においては、電解液の酸化等による発熱、金属リチウムの析出等による短絡などに起因して電池セルが発熱等する場合があり、発熱等が生じた場合に、他の電池セルへの類焼を防止するための類焼防止構造が必要となる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、類焼防止性に優れたバッテリパックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるバッテリパックは、複数の電池セルが積層された積層型電池セルを内部に格納する電池室と、電池室に連通し、電池室とは別個の室であるガス室であって、外部に連通する開口部が設けられたガス室と、を備え、ガス室には、電池セルと開口部とを結ぶ直線経路を遮るようにして遮蔽部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、電池室のセルが発熱した場合に、電池室から噴出する高温ガスの経路が遮蔽部により遮蔽され、これによって電池室から開口部に至るガスの経路が長くなる。このため、ガスの温度が、長くなった経路を通過する間に低下するため、ガスが開口部から外部に排出した際に空気中の酸素と接触して発火に至ることを抑制することが可能となる。また、ガスの温度が低下されるため、ガスの逆流によるバックドラフトの発生が抑制され、電池室での発火、及び類焼を抑制することが可能となる。
【0008】
本発明において、開口部は、ガス室の、電池室に対向する面以外の面に備えられている構成を採用することができる。これによれば、電池室から噴出した高温のガスが直接的に開口部を通過して外部に出ることなく、ガス室内で方向を変えた後に開口部から外部に流出する。従って、ガスの温度が低下してから外部に流出するため、高温のまま空気中の酸素と接触して発火に至ることを抑制することが可能となる。
【0009】
本発明において、ガス室の、電池室に対向する面には、電池室から放出されたガスの経路の向きを変える分岐部を備える構成を採用することができる。これによれば、電池室から噴出した高温のガスの方向を滑らかに側面方向に変更させることができる。このため、ガスの経路を長くしてガスの温度を低下させることが可能となり、電池室の発火を抑制することが可能となる。
【0010】
本発明によれば、電池室と、ガス室との間に、熱伝導を抑制する断熱部が設けられている構成を採用することができる。これによれば、電池室から噴出した高温のガスの熱により高温となったガス室の筐体の熱が、電池室を構成する筐体へ直接的に伝達されることを抑制させることが可能となる。これにより、電池室の高温化を抑制し、他の電池セルへの類焼を抑制することが可能となる。
【0011】
本発明によれば、ガス室内には、ガス室の内壁から所定の距離だけ離間して設けられた板部が備えられている構成を採用することができる。これによれば、電池室から噴出した高温のガスの熱が、ガス室を構成する筐体に直接的に伝達されることを抑制することができる。これにより、電池室を構成する筐体への熱伝達が抑制される。これにより、電池室の高温化が抑制され、他の電池セルへの類焼を抑制することが可能となる。
【0012】
本発明によれば、板部の表面には、電池室から放出されたガスの流れを阻害する障害部が設けられている構成を採用することができる。これによれば、板部の表面に設けられた障害部によりガスの流れが乱されることにより、ガスの流速が低下し、開口部から外部に流出するまでの時間が長くなるため、その間にガスの温度が低下する。これにより、電池室の高温化が抑制され、ガスの他の電池セルへの類焼が抑制される。
【0013】
本発明によれば、板部は回路基板であり、障害部は電子部品である構成を採用することができる。これによれば、回路基板をガス室に配置することにより回路基板をガスの温度低下に利用することができるため、他の部材を別途設ける必要がなく、コスト削減に貢献する。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、類焼防止性に優れたバッテリパックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態によるバッテリパック1Aの外観の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、バッテリパック1Aからケース2を削除した状態の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、バッテリパック1Aの内部構成の概略を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態によるバッテリパック1Bの外観の概略を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、バッテリパック1Bの内部構成の概略を示すための透視斜視図である。
【
図6】
図6は、バッテリパック1Bの概略構造を示すための分解斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3実施形態によるバッテリパック1Cの外観の概略を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、バッテリパック1Cの内部構成の概略を示すための透視斜視図である。
【
図9】
図9は、ガス室ケース5の概略構成を示すとともに、ガスの放出経路の概略を示すxy平面における横断面図である。
【
図10】
図10は、ガス室ケース5の概略構成を示すとともに、ガスの放出経路の概略を示す一部破断斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の第4実施形態によるバッテリパック1Dの外観の概略を示すxy平面における横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明おいて、すでに説明した部材と同様の部材には同様の符号又は名称を付し、その説明については省略する。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るバッテリパック1Aについて、
図1から
図3を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるバッテリパック1Aの外観の概略を示す斜視図である。
図2は、バッテリパック1Aからケース2を削除した状態の概略構成を示す斜視図である。
図3は、バッテリパック1Aの内部構成の概略を示す斜視図である。
【0018】
図1に示すようにバッテリパック1Aはその外部を箱型のケース2により構成されている。ケース2は例えばアルミニウムのような金属により構成されている。バッテリパック1Aには、電力の授受のための端子線3a、3bが接続されている。
【0019】
図2に示すように、ケース2内には、筐体10が格納されている。筐体10は、トップ筐体10a、及び側部筐体10bを備えている。ケース2と筐体10との間には隙間が設けられており、ガスが通過可能となっている。
【0020】
筐体10の側部筐体10bには複数の開口部10cが設けられている。開口部10cにより、筐体10の内外でガスが連通可能となっている。
図2では、開口部10cは丸い孔として構成されているが、開口部10cの形状はこれに限定されない。開口部10cは、例えば長方形のスリット孔として構成されていてもよい。
【0021】
また、筐体10のうち、ガス通路孔18aを介して電池セル14に対向する位置には対向面10dが配置されている。開口部10cは、電池セル14に対向する面である対向面10d以外の面である側部筐体10bに配置されている。
【0022】
図3に示すように、筐体10の内部は、複数の電池セル14が積層されてなる積層型電池セルが格納される電池室12が備えられている。また、電池室12に隣接して、電池室12内部と空間的に連続し、内部のガスが連通可能であり、電池室12とは別個の室であるガス室16が備えられている。
図3においては、電池室12及びガス室16は内部空洞の箱型形状を呈している。
【0023】
仕切り板18と電池室12との間には、断熱部22が配置されている。断熱部22は、金属よりも熱伝導率が小さい材料により構成されている。断熱部22は、電池室12とガス室16との間の熱伝播を阻害する。
【0024】
電池室12とガス室16との間には、両者を空間的に間仕切るための仕切り板18が設けられている。仕切り板18には、電池室12とガス室16との間でガスを通過させるためのガス通路孔18aが設けられている。
図3において、ガス通路孔18aは矩形形状の開口部として構成されているが、形状はこれに限定さない。例えば、丸形の孔であってもかまわない。
【0025】
ガス室16内であって、側部筐体10bの開口部10cに対面した箇所には、遮蔽部20が設けられている。遮蔽部20は例えばアルミニウムのような金属により構成されている。遮蔽部20は、側部筐体10bと平行な並行部20aと、並行部20aに連続し側部筐体10bからガス室16の内部方向に斜めに配置される斜め部20bと、斜め部20bに連続し並行部20aに平行となるように配置され、側部筐体10bから所定の距離だけ離間する離間部20cを備えている。遮蔽部20は、斜め部20b及び離間部20cで形成される立体構造により、ガス通路孔18aと開口部10cとの直線経路を遮蔽するようにして配置されている。遮蔽部20と対向面10dとの間は離間しており、隙間を形成している。
【0026】
上記に説明したバッテリパック1Aによれば、電池室12にて発熱が生じた場合に、発生した発熱ガスは
図3に示すガス経路Aを通過して外部に流出する。すなわち、電池室12で発生したガスは、ガス通路孔18aを通過してガス室16内に流入し、ガス通路孔18aに対向する対向面10dによって方向を変更される。その後、遮蔽部20と対向面10dとの間の隙間を通過して遮蔽部20と側部筐体10bとの間に導かれ、開口部10cから筐体10外部に流出する。ガス経路Aは、ガス通路孔18aと開口部10cとの直線経路よりも距離が長い。
【0027】
このように、電池室12で発生した高温のガスが、ガス通路孔18aから直線的に開口部10cから外部に流出することなく、遮蔽部20により遮蔽されることにより湾曲されて距離が長くなったガス経路Aに沿って移動する。このようにガス経路Aの距離が長くなっているため、ガス経路Aを通過する間に電池室12から流出した高温ガスの温度が低下する。そして、十分に温度が低下したガスが開口部10cから外部に流出するため、外部の酸素と高温状態のガスが接触することがなく、そのため、ガスの発火を抑制することが可能となる。
【0028】
また、ガス経路Aの距離が長くなったこと、ガスの温度が低下すること、及び、電池室12と開口部10cとの直線経路を遮蔽する遮蔽部20が配置されたことにより、ガスの逆流が抑制され、これにより、電池室12内でのバックドラフトによる発火が抑制される。このようにして、電池室12で電池セル14の発熱による高温ガスの流出があった場合でも、他の電池セルへの類焼が抑制される。
【0029】
また、電池室12とガス室16との間に、断熱部22が配置される。これにより、電池室12とガス室16を構成する筐体同士が直接接触することがないため、ガス室16内に流入した高温ガスによる温度が電池室12内に伝播することを抑制することができる。これにより、電池室12内における他の電池セルへの類焼が抑制される。
【0030】
また、開口部10cは、ガス室16の、電池室12に対向する対向面10d以外の面に備えられている。これによれば、電池室12から噴出し対向面10d方向に向かう高温のガスの向きを変更してから開口部10cに向かうことになるため、高温ガスのガス経路が長くなり、ガスの温度が低下する。従って、高温のまま空気中の酸素と接触することによる発火、ガスの逆流、及びバックドラフトを抑制することが可能となる。これにより、電池室12内における他の電池セルへの類焼が抑制される。
【0031】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図4、
図5、
図6を参照しながら説明する。
図4は、本発明の第2実施形態によるバッテリパック1Bの外観の概略を示す斜視図である。
図5は、バッテリパック1Bの内部構成の概略を示すための透視斜視図である。
図6は、バッテリパック1Bの概略構造を示すための分解斜視図である。
【0032】
図4に示すように、バッテリパック1Bは、その外部を電池室ケース4、及びガス室ケース5により構成されている。電池室ケース4及びガス室ケース5は例えばアルミニウムのような金属板により構成されている。
【0033】
図5に示すように、電池室ケース4の内部は、複数の電池セル14が積層されてなる積層型電池セルが格納される電池室12となっている。また、ガス室ケース5の内部は、電池室12と空間的に連続し、電池室12の内部のガスが連通可能なガス室16となっている。
【0034】
図6(a)、(b)、及び(c)に示すように、電池室ケース4は、上部筐体12aと底部筐体12bとが組み合わさることにより箱体形状となるように構成されている。
図6(c)に示すように、底部筐体12bのx方向には、電池室12がガス室16と連通するための開口部12cが設けられている。
図6(b)に示すように、電池セル14とガス室16との間には仕切り板18が設けられている。仕切り板18には、電池室12で発生したガスが通過可能なガス通路孔18aが設けられている。電池室12内で発生したガスは、ガス通路孔18a、開口部12cを通過してガス室16に流入する。
【0035】
図6(d)、(e)、及び(f)に示すように、ガス室ケース5は、上部筐体16aと底部筐体16bとが組み合わされることにより箱体形状となるように構成されている。内部に、上部筐体16aの任意の面に平行となるようにして、所定の距離だけ離間して板部24が設けられている。ここでは、ガス室16の上部に位置する面に対して平行となるように配置されている。板部24上には障害部24aが設けられている。障害部24aは例えば電子部品である。障害部24aは、ガス室16に流入したガスの流れを乱す作用を発揮する。
【0036】
上記に説明した第2実施形態に係るバッテリパック1Bによれば、ガス室16内には、ガス室16の内壁から所定の距離だけ離間して設けられた板部24が備えられている。これによれば、電池室12から噴出した高温のガスの熱が、ガス室16を構成する筐体であるガス室ケース5に直接当たることがないため、高温の熱がガス室ケース5に伝達されることを抑制することができる。これにより、ガス室ケース5から電池室12を構成する筐体である電池室ケース4へ熱が伝達することを抑制させることが可能となる。これにより、電池室12の高温化を抑制し、他の電池セル14への類焼を抑制することが可能となる。
【0037】
また、板部24の表面には、電池室12から放出されたガスの流れを乱す障害部24aが設けられている。これによれば、板部24の表面に設けられた障害部24aによりガスの流速が低下する。これにより、高温ガスが、ガス通路孔18aからバッテリパック1Bの外部に流出するまでの時間が長くなるため、その間にガスの温度が低下する。これにより、他の電池セル14への類焼が抑制される。
【0038】
また、本実施形態においては、板部24は回路基板であり、障害部24aは回路基板上に設けられた電子部品である。これによれば、回路基板をガス室16に配置することによりガスの温度低下に利用することができるため、他の部材を別途設ける必要がなく、コスト削減に貢献する。
【0039】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るバッテリパック1Cについて、
図7から
図10を参照して説明する。
【0040】
図7は、本発明の第3実施形態によるバッテリパック1Cの外観の概略を示す斜視図である。
図8は、バッテリパック1Cの内部構成の概略を示すための透視斜視図である。
図9は、ガス室ケース5の概略構成を示すとともに、ガスの放出経路の概略を示す横断面図である。
図10は、ガス室ケース5の概略構成を示すとともに、ガスの放出経路の概略を示す一部破断斜視図である。
【0041】
図7に示すように、バッテリパック1Cは、電池室ケース4及びガス室ケース5を備えている。電池室ケース4には、電源線などが接続されるコネクタ部6が設けられている。ガス室ケース5は、y方向に位置しxz面を構成する対向面5a、及び、x方向に位置しyz面を構成する側部5bを備えており、側部5bには複数の開口部5cが設けられている。開口部5cにより、ガス室ケース5の内外でガスが連通可能となっている。
図7では、開口部5cは丸い孔として構成されているが、開口部5cの形状はこれに限定されない。開口部5cは、例えば所定の幅と所定の長さを備えるスリット孔として構成されていてもよい。
【0042】
電池室ケース4とガス室ケース5との間には、断熱部22が設けられている。
【0043】
図8に示すように、電池室ケース4の内部は、複数の電池セル14が積層されてなる積層型電池セルが格納される電池室12となっている。また、電池室12に隣接して、電池室12内部と空間的に連続し、内部のガスが連通可能なガス室ケース5内はガス室16となっている。
図7及び
図8においては、電池室12及びガス室16は内部空洞の箱型形状を呈している。
【0044】
図8、
図9、及び
図10に示すように、ガス室16には、電池室12からガス室16内に突出する遮蔽部26が備えられている。遮蔽部26は上底開放の筒状形状を呈しており、電池室12とガス室16とを連通する。遮蔽部26は、電池セル14から流出するガスを電池室12からガス室16内に導くため導風部としても機能する。遮蔽部26は例えばアルミニウムのような金属により構成されている。遮蔽部26の電池室12の側端部は電池室12と境界線に位置し、略正方形の開口部26aを備えている。遮蔽部26のガス室16側端部は、ガス室16の内部にまで伸びており、丸形の開口部26bとなっている。対向面5aの内面であって、遮蔽部26に対向する位置には、xy断面が三角形状をなす分岐部30が設けられている。分岐部30を構成する三角形の一つの頂点は遮蔽部26方向に指向している。ガス室ケース5の対向面5aのx方向の端部には、端部の角度を鈍角にする角部32が形成されている。
【0045】
このように構成されたバッテリパック1Cの電池室12において、電池セル14の発熱に伴う高温ガスの流出が生じると、高温ガスは、電池室12から遮蔽部26を通過してガス室16内に流入する。遮蔽部26は、電池セル14のガス室16側端と開口部5cとの直線経路を遮蔽する遮蔽部として機能する。ガス室16内に流入したガスのガス経路Aは、対向面5aに備えられた分岐部30によって、+x方向、及び、-x方向に分けられる。分岐部30によって進行方向が分かれたガスは、対向面5a、角部32により流れの方向が変更され、開口部5cに導かれて、バッテリパック1Cの外部に流出する。
【0046】
第3実施形態に係るバッテリパック1Cによれば、第1実施形態に係るバッテリパック1Cと同様の効果を奏する。第3実施形態に係るバッテリパック1Cによれば、遮蔽部26に対向する対向面5aに設けられた分岐部30により、ガスのガス経路Aが分岐され、さらに角部32によりガス経路Aが滑らかに開口部5cに導かれる。これにより、電池室12から、y方向に進み、分岐部30により向きを変更されて湾曲しつつ開口部5cまで導かれるガス経路Aを形成することが可能となる。ガス流路Aは、電池室12と開口部5cとを直線的に結ぶ直線経路よりも長い。
【0047】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係るバッテリパック1Dについて、
図11を参照して説明する。
【0048】
図11は、本発明の第4実施形態によるバッテリパック1Dの外観の概略を示すxy平面における横断面図である。
図11に示すように、バッテリパック1Dは、電池室ケース4と、ガス室ケース5とを備えている。電池室ケース4は、複数の電池セル14が積層されてなる積層型電池セルが格納される電池室12を構成している。ガス室ケース5は、電池室12からガスが流入されるガス室16を構成している。
【0049】
電池室ケース4は、ガス室ケース5内部と連通可能とするための開口部4aを備えている。ガス室ケース5は、電池室ケース4内部と連通可能とするための開口部5dを備えている。電池室ケース4とガス室ケース5とは、開口部4aと開口部5dの接触部で、断熱部22を介して接しており、電池室12内部とガス室16内部は開口部4a及び開口部5dを通じて内部が連通している。
【0050】
ガス室ケース5の壁面であって、電池セル14に対向する面には対向面5aが備えられており、対向面5aには開口部5cが形成されている。ガス室16と外部とは開口部5cを通じて連通している。
【0051】
ガス室16には、電池室12側の開口部5dと、対向面5aに形成された開口部5cとの直線経路を遮蔽する遮蔽部34が設けられている。遮蔽部34は例えばアルミニウムのような金属により構成されている。遮蔽部34は対向面5a側に凸となるように湾曲する凸部34aを備え、x方向の端部において、対向面5a側に折れ曲がる折れ部34bを備えている。遮蔽部34はガス室ケース5の内壁から離間しており、その間にはガスが通過可能な隙間を備えている。
【0052】
電池室12からガス室16に流入したガスは、
図11のガス流路Aに示すように、遮蔽部34により遮蔽されて遮蔽部34の端部からガス室ケース5との隙間を通過し、対向面5a側に流入して、開口部5cから外部に流出する。ガス流路Aは、電池室12と開口部5cとを直線的につなぐ直線経路よりも距離が長い。
【0053】
第4実施形態に係るバッテリパック1Dによれば、第1実施形態に係るバッテリパック1Dと同様の効果を奏する。第4実施形態に係るバッテリパック1Dによれば、電池室12に対向する位置に配置される対向面5aに開口部5cを配置することが可能となるため、開口部5cの配置個所の自由度が増す。
【0054】
上述した複数の実施形態において、ケース2、電池室ケース4、ガス室ケース5、筐体10、上部筐体12a、底部筐体12b、上部筐体16a、底部筐体16bは金属で構成されており、その材質としてアルミニウムを例示したがこれに限定されることはない。これらはアルミニウム以外の金属により構成されていてもよいし、金属以外の例えば高耐熱性を備えたエンジニアリングプラスチック等により構成されていてもよい。遮蔽部20、遮蔽部26、遮蔽部34についても同様に金属に限定されることはなく、高耐熱性を備えたその他の材料により構成することができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1A~1D バッテリパック
2 ケース
3a 端子線
3b 端子線
4 電池室ケース
4a、5c、5d、10c、12c、16c 開口部
5 ガス室ケース
5a 対向面
5b 側部
6 コネクタ部
10 筐体
10a トップ筐体
10b 側部筐体
12 電池室
12a 上部筐体
12b 底部筐体
14 電池セル
16 ガス室
16a上 部筐体
16b 底部筐体
18 仕切り板
18a ガス通路孔
20、26、34 遮蔽部
22 断熱部
24 板部
24a 障害部
30 分岐部
32 角部
34a 凸部
34b 折れ部
A ガス経路