(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】偏光子保護フィルム、偏光板及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230801BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20230801BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230801BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230801BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/022
B32B7/023
B32B27/36
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2020020389
(22)【出願日】2020-02-10
(62)【分割の表示】P 2019542260の分割
【原出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2017177630
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 勝貴
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 靖
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170216(WO,A1)
【文献】特開2001-98089(JP,A)
【文献】特開2004-226799(JP,A)
【文献】特開2014-219438(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/04
B32B 7/022
B32B 7/023
B32B 27/32
B32B 27/36
C08J 7/04
G02B 5/30
G02F 1/1335 - 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の一方の面に積層される偏光子保護用ポリエステルフィルム
の製造方法であって、
ポリエステルフィルムをTDに延伸する工程、延伸後に熱固定する工程、及び熱固定後の冷却過程においてTDに再度延伸する工程を含み、前記偏光子は、ヨウ素を含むポリビニルアルコールフィルムであり、前記
偏光子保護用ポリエステルフィルムは、3000~30000nmのリタデーションを有し、且つ、以下の要件(1)
及び(2
)を満たす
、製造方法。
(1)偏光子の透過軸と平行な方向における、前記
偏光子保護用ポリエステルフィルムの収縮力F
fが800N/m以上9000N/m以下である(ただし、収縮力F
f(N/m)は、
偏光子保護用ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm
2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000である。ここで、弾性率は、偏光子の透過軸と平行な方向における、
偏光子保護用ポリエステルフィルムの弾性率であり、熱収縮率は、偏光子の透過軸と平行な方向における、
偏光子保護用ポリエステルフィルムの熱収縮率である。)
(2)偏光子の透過軸と平行な方向における、前記
偏光子保護用ポリエステルフィルムの収縮力F
fと偏光子の吸収軸と平行な方向における、前記
偏光子保護用ポリエステルフィルムの収縮力F
vの比(F
f/F
v)が2.5以上12.0以下である(ただし、収縮力F
v(N/m)は、
偏光子保護用ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm
2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000である。ここで、弾性率は、偏光子の吸収軸と平行な方向における、
偏光子保護用ポリエステルフィルムの弾性率であり、熱収縮率は、偏光子の吸収軸と平行な方向における、
偏光子保護用ポリエステルフィルムの熱収縮率である。
)
(ただし、前記
偏光子保護用ポリエステルフィルムのTDは前記偏光子の透過軸と平行である。)
【請求項2】
前記
偏光子保護用ポリエステルフィルムの熱収縮率が最大となる方向と偏光子の透過軸と平行な方向とのなす角の絶対値が15度以下である、請求項1に記載の
製造方法。
【請求項3】
前記
偏光子保護用ポリエステルフィルムの厚みが40~200μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の
製造方法。
【請求項4】
前記
偏光子保護用ポリエステルフィルムの、偏光子が積層される面とは反対側の面に、ハードコート層、反射防止層、低反射層、防眩層、又は、反射防止防眩層を有する、請求項1~3のいずれかに記載の
製造方法。
【請求項5】
偏光子の少なくとも一方の面に請求項1~4のいずれかに記載の
製造方法で製造された偏光子保護用ポリエステルフィルムを積層
する工程を含む、偏光板
の製造方法。
【請求項6】
偏光子の一方の面に請求項1~4のいずれかに記載の
製造方法で製造された偏光子保護用ポリエステルフィルム
を積層する工程を含む、偏光子のもう一方の面にはフィルムを有しない偏光板
の製造方法。
【請求項7】
偏光板が長方形の形状であり、偏光板の長辺とその透過軸とが平行である、請求項5又は6に記載の
製造方法。
【請求項8】
バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置
の製造方法であって、前記2つの偏光板のうち少なくとも一方
を請求項5又は6に記載の
製造方法で製造する工程を含む、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子保護フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶テレビやパソコンの液晶ディスプレイ等の用途で、需要が拡大している。通常、液晶表示装置は、透明電極、液晶層、カラーフィルター等をガラス板で挟み込んだ液晶セルと、その両側に設けられた2枚の偏光板で構成されており、それぞれの偏光板は、偏光子(偏光膜ともいう)を2枚の光学フィルム(例えば、偏光子保護フィルム及び位相差フィルム)で挟んだ構成となっている。
【0003】
ところで、近年、液晶テレビ画面の薄型化、大型化、さらには光源にLEDのバックライトが使用されるようになり、液晶パネルに使用されるガラス基板の厚さが0.7mmより薄くされたことに伴い、表示ムラが発生するという問題が起こり、その改善が求められている。
表示ムラの発生機構は、偏光子が収縮することが主な原因で発生しており、偏光子が高温高湿下に置かれたときに、配向を緩和しようとするため配向方向に収縮力が働き、その結果液晶パネルが反り、バックライトユニット側に膨らむことによって、表示ムラになると考えられている。
【0004】
なお、従来は、下記特許文献1及び特許文献2のように、液晶パネルに使用されるガラス基板の厚さが0.7mm以上と厚かったため、ガラスの高剛性によって、偏光子の収縮が抑えられるため、液晶パネルが反ることはなく、表示ムラは問題とはならなかった。
【0005】
そこで、ガラス基板を0.7mmより薄くした場合に発生する液晶パネルの反りを、光学フィルムで改善することが試みられている。
例えば、偏光子保護フィルムとして、シクロオレフィン系樹脂を使用した場合、液晶パネルの反りの改善が不十分で、かつ、偏光子に接着するための水糊の乾燥性が悪いため、生産性が低下するという問題があった。
また、偏光子保護フィルムとして、従来のトリアセチルセルロース(TAC)を使用した場合は、液晶パネルが反るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-107499号公報
【文献】特開2009-198666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、液晶パネルの反りを抑制することができる偏光子保護フィルム、偏光板及び液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、偏光子の透過軸と平行な方向における、偏光子保護用ポリエステルフィルムの収縮力を特定範囲にすることによって、液晶パネルの反りを改善することが出来ることを見出し、この知見をもとに本発明に至った。
【0009】
詳細には、液晶表示装置は、通常、液晶セルの一方の面に、偏光子の透過軸方向が液晶表示装置の長辺方向と平行となるよう偏光板が積層され、もう一方の面に、偏光子の吸収軸方向が液晶表示装置の長辺と平行となるよう偏光板が積層されている。市販の各種液晶表示装置を用いて鋭意検討を行った結果、収縮力の大きい偏光子の吸収軸方向が長辺となる偏光板が収縮することでカールが発生しやすくなる形状因子の問題(カールは一般的に長辺方向に発生しやすい)や、液晶パネル内の上下の偏光板の非対称構成による影響により、液晶パネルは、クロスニコルに配置される上下偏光板の偏光子透過軸が長辺となる偏光板側に凸になることが問題の本質であることを本発明者らは見出した。
【0010】
更に、鋭意検討を行った結果、偏光子透過軸が長辺になる偏光板の長辺方向の収縮力は、保護フィルムの残留歪によって制御出来ることが明らかになり、この収縮力によって、液晶パネルのカールを制御出来ることが分った。
【0011】
ここで、偏光子保護用ポリエステルフィルムの収縮力の測定方法について記述する。一般的に、フィルムの収縮力はTMAなどを用いて、試験開始の低い温度状態で極小荷重で初期長を設定し、初期長の長さを保ったまま昇温中の収縮方向の力を計測する。しかしながら、昇温過程ではポリマーのコンフォメーション変化を伴う残留歪の回復による収縮(以下、単に熱収縮と記載する)と同時に、昇温によってポリマーの自由体積・占有体積が増加することによる熱膨張(以下、単に熱膨張と記載する)が発生する為、ポリエステルフィルムのガラス転移温度付近(例えば~Tg+50℃程度)の温度域においては、しばしば熱収縮<熱膨張の関係となることからフィルム全体としては膨張し、収縮力は観測されない。
【0012】
検討の結果、TMA昇温過程で収縮力が発生しない場合であっても、TMA冷却過程で収縮力が発生することが明らかになった。これは、熱膨張による歪は可逆変化であるため昇温冷却後に元の状態に戻るが、昇温過程で収縮した熱収縮分だけ寸法が小さい状態で冷却されることから、冷却過程で熱応力が発生するためである。つまり、熱応力の歪をフィルムの熱収縮率に置き換えることができ、冷却後の収縮力は下記式で表現される。尚、本発明における熱収縮率とは、熱処理中の水分率変化を含んだものである。
収縮力(N/m)=フィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×熱収縮率(%)÷100×1000
【0013】
つまり、代表的な本発明は、以下の通りである。
項1.
偏光子の一方の面に積層される偏光子保護用ポリエステルフィルムであって、以下の要件(1)及び(2)を満たす偏光子保護用ポリエステルフィルム。
(1)偏光子の透過軸と平行な方向における、前記ポリエステルフィルムの収縮力Ffが800N/m以上9000N/m以下である(ただし、収縮力Ff(N/m)は、ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000である。ここで、弾性率は、偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの弾性率であり、熱収縮率は、偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの熱収縮率である。)
(2)偏光子の透過軸と平行な方向における、前記ポリエステルフィルムの収縮力Ffと偏光子の吸収軸と平行な方向における、前記ポリエステルフィルムの収縮力Fvの比(Ff/Fv)が2.5以上12.0以下である(ただし、収縮力Fv(N/m)は、ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000である。ここで、弾性率は、偏光子の吸収軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの弾性率であり、熱収縮率は、偏光子の吸収軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの熱収縮率である。)
項2.
さらに以下の要件(3)を満たす、項1に記載の偏光子保護用ポリエステルフィルム。
(3)前記ポリエステルフィルムの熱収縮率が最大となる方向と偏光子の透過軸と平行な方向が略平行である
項3.
前記ポリエステルフィルムが3000~30000nmのリタデーションを有する項1又は2に記載の偏光子保護用ポリエステルフィルム。
項4.
前記ポリエステルフィルムの厚みが40~200μmであることを特徴とする項1~3のいずれかに記載の偏光子保護用ポリエステルフィルム。
項5.
前記ポリエステルフィルムの、偏光子が積層される面とは反対側の面に、ハードコート層、反射防止層、低反射層、防眩層、又は、反射防止防眩層を有する、項1~4のいずれかに記載の偏光子保護用ポリエステルフィルム。
項6.
偏光子の一方の面に積層される偏光子保護用ポリエステルフィルムであって、以下の要件(1)及び(2)を満たす偏光子保護用ポリエステルフィルム。
(1)前記ポリエステルフィルムのTDの収縮力FTDが800N/m以上9000N/m以下である(ただし、収縮力FTD(N/m)は、ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000である。ここで、弾性率は、ポリエステルフィルムのTDの弾性率であり、熱収縮率は、ポリエステルフィルムのTDの熱収縮率である。)
(2)前記ポリエステルフィルムのTDの収縮力FTDと前記ポリエステルフィルムのMDの収縮力FMDの比(FTD/FMD)が2.5以上12.0以下である(ただし、収縮力FMD(N/m)は、ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000である。ここで、弾性率は、ポリエステルフィルムのMDの弾性率であり、熱収縮率は、ポリエステルフィルムのMDの熱収縮率である。)
項7.
さらに以下の要件(3)を満たす、項6に記載の偏光子保護用ポリエステルフィルム。
(3)前記ポリエステルフィルムの熱収縮率が最大となる方向とTDが略平行である
項8.
偏光子の少なくとも一方の面に項1~7のいずれかに記載の偏光子保護用ポリエステルフィルムを積層した偏光板。
項9.
偏光子の一方の面に項1~7のいずれかに記載の偏光子保護用ポリエステルフィルムが積層され、偏光子のもう一方の面にはフィルムを有しない偏光板。
項10.
偏光板が長方形の形状であり、偏光板の長辺とその透過軸とが平行である、項8又は9に記載の偏光板。
項11.
バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、前記2つの偏光板のうち少なくとも一方が項8~10のいずれかに記載の偏光板である、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液晶パネルの反りを抑制することができる偏光子保護フィルム、偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムからなり、偏光子(例えば、ポリビニルアルコールと色素からなるフィルム)の少なくとも一方の面に積層されて偏光板を作成するための偏光子保護フィルムである。
【0016】
本明細書において、偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの収縮力とは、ポリエステルフィルムの片面に積層される偏光子の透過軸と平行な方向の、ポリエステルフィルムの収縮力の意味である。
偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの熱収縮率とは、ポリエステルフィルムの片面に積層される偏光子の透過軸と平行な方向の、ポリエステルフィルムの熱収縮率の意味である。
偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの弾性率とは、ポリエステルフィルムの片面に積層される偏光子の透過軸と平行な方向の、ポリエステルフィルムの弾性率の意味である。
また、偏光子の吸収軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの収縮力とは、ポリエステルフィルムの片面に積層される偏光子の吸収軸と平行な方向の、ポリエステルフィルムの収縮力の意味である。
偏光子の吸収軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの熱収縮率とは、ポリエステルフィルムの片面に積層される偏光子の吸収軸と平行な方向の、ポリエステルフィルムの熱収縮率の意味である。
偏光子の吸収軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの弾性率とは、ポリエステルフィルムの片面に積層される偏光子の吸収軸と平行な方向の、ポリエステルフィルムの弾性率の意味である。
偏光子の透過軸と平行な方向は、偏光子の透過軸方向と簡略化して呼ぶことがある。また、偏光子の吸収軸と平行な方向は、偏光子の吸収軸方向と簡略化して呼ぶことがある。
【0017】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、偏光子の透過軸と平行な方向とポリエステルフィルムの熱収縮率が最大となる方向が略平行の関係にあることが好ましい。略平行であるとは、偏光子の透過軸方向とポリエステルフィルムの熱収縮率が最大となる方向とのなす角の絶対値(以降、熱収縮率の傾きと簡略化して呼ぶことがある)が15度以下であることを許容する。前記熱収縮率の傾きは、好ましくは12度以下であり、より好ましくは10度以下であり、さらに好ましくは8度以下であり、より更に好ましくは6度以下であり、特に好ましくは4度以下であり、最も好ましくは2度以下である。熱収縮率の傾きは小さいほど好ましいことから下限は0度である。ポリエステルフィルムの熱収縮率の傾きが大きいと、ポリエステルフィルムを含む偏光板の斜め方向の反りが生じ、液晶パネルの反りを低減する効果が薄れる傾向にある。
但し、偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの収縮力Ffと偏光子の吸収軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの収縮力Fvの比(Ff/Fv)が2.5以上12.0以下の場合は、偏光子の透過軸と平行な方向とポリエステルフィルムの熱収縮率が最大となる方向とのなす角の絶対値が40度以下であっても、液晶パネルの反りを低減することができる。前記角度は好ましくは35度以下である。
ポリエステルフィルムの熱収縮率、ポリエステルフィルムの熱収縮率の傾き、及び、ポリエステルフィルムの熱収縮率が最大となる方向は、後述する実施例で採用した方法で測定することができる。
【0018】
通常、液晶表示装置の中には、2枚の偏光板がクロスニコルの関係となるように配置されている。2枚の偏光板をクロスニコル関係で配置すると、通常、光は2枚の偏光板を通過しない。しかし、上述した偏光子の収縮又は反りにより、結果として完全なクロスニコルの関係が崩れ、光漏れが発生するおそれがある。光の漏れを抑える観点からは、偏光子保護フィルムの熱収縮率が最大となる方向と、偏光子の透過軸とのなす角度が小さいほうが好ましい。
【0019】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの収縮力Ffの値が800N/m以上9000N/m以下であることが望ましい。Ffの下限値が800N/m未満では、液晶パネルの反りを十分低減することができないおそれがある。また、Ffの上限値が9000N/mを超えると、収縮力が強すぎ逆方向に液晶パネルが反り返ってしまうおそれがある。好ましい収縮力の範囲は900N/m以上8000N/m以下であり、より好ましくは1000N/m以上8000N/m以下であり、さらに好ましくは1100N/m以上8000N/m以下であり、よりさらに好ましくは1200N/m以上8000N/m以下である。なお、上限は6000N/m以下、5500N/m以下、4800N/m以下であることが好ましい。
【0020】
ここで、収縮力Ffは、偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの収縮力を指し、ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000で定義される。
ここで、弾性率は、偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの弾性率のことである。また、熱収縮率は、偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの熱収縮率(80℃・30分熱処理における熱収縮率)のことである。
【0021】
偏光子の吸収軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの収縮力をFvとする。収縮力Fvは、ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000で定義される。ここで、弾性率は、偏光子の吸収軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの弾性率のことである。熱収縮率は、偏光子の吸収軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの熱収縮率(80℃・30分熱処理における熱収縮率)のことである。
【0022】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、Ff/Fvが1.0以上12.0以下であることが好ましい。より好ましくは2.5以上12.0以下である。Ff/Fvの下限値が1.0未満では、液晶パネルの反りを十分に低減することが出来ない恐れがある。また、Ff/Fvの上限値が12.0を超えると、一方向への熱変形が大きくなり、偏光子の、偏光子保護用ポリエステルフィルムを積層した面とは反対側の面に積層される保護フィルムや位相差フィルムに応力がかかり、表示品質が低下する恐れがある。また、製膜安定性が低下し破断する場合がある。
【0023】
上記式の範囲内に収縮力を制御する方法としては、フィルム延伸後の熱処理工程が完了した後に、フィルムの巻き取り張力を制御しながら、再度延伸する方法などが挙げられる。
【0024】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、偏光子の透過軸方向における、ポリエステルフィルムの弾性率が1000~9000N/mm2であることが好ましい。ポリエステルフィルムの収縮力は弾性率で制御可能ではあるが、偏光子の透過軸方向のポリエステルフィルムの弾性率を高めるためには、ポリエステルフィルムを偏光子の透過軸方向に高度に配向させ、且つ、結晶化度を高くする必要がある。そのため、偏光子の透過軸方向のポリエステルフィルムの弾性率が9000N/mm2を超える場合には、裂けやすくなるなどのおそれがあるため、上限は9000N/mm2が好ましく、より好ましくは8000N/mm2であり、更に好ましくは7000N/mm2である。
一方で、配向が低く、且つ、結晶化度が低い場合には、ロールに巻き取った際に厚み斑に起因するロール凹凸によってフィルムが変形し、平面性不良となるおそれがある。よって、弾性率の下限は1000N/mm2が好ましく、より好ましくは1500N/mm2であり、更に好ましくは1800N/mm2である。弾性率は、後述する実施例で採用した方法で測定できる。
【0025】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、偏光子の透過軸方向における、ポリエステルフィルムの80℃、30分熱処理時の熱収縮率が0.10~5.0%であることが好ましい。熱収縮率の下限は、0.10%以上が好ましく、0.15%以上がより好ましく、0.20%以上が最も好ましい。熱収縮率の上限は、4.5%以下が好ましく、4.0%以下がより好ましく、3.0%以下がさらに好ましく、2%以下がさらにより好ましく、1.4%以下が最も好ましい。熱収縮率が0.10%よりも低い場合、つまり0.01~0.099%の範囲においては、熱収縮率をバラツキなく制御することが困難な場合がある。また、熱収縮率を5.0%よりも高めるには、結晶化度やガラス転移温度をより一層低下させる必要が有り、それによって平面性不良などの不具合が生じるおそれがある。熱収縮率は、後述する実施例で採用した方法で測定できる。
【0026】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、厚みが40~200μmであることが好ましく、より好ましくは40~100μであり、さらに好ましくは40~80μmである。ポリエステルフィルムの厚みが40μm未満である場合、割れ易く、また、剛性不足により平面性不良になりやすい傾向にある。また、薄い場合にはそれに応じて偏光子の透過軸方向におけるポリエステルフィルムの弾性率または熱収縮率を高める必要があるが、前述のように夫々のパラメータにも上限があるため、実質的に40μmが下限である。また、フィルムの厚みが200μmを超える場合には、それに応じて偏光子の透過軸方向におけるポリエステルフィルムの弾性率または熱収縮率のバラツキが大きくなり、その制御が困難となるおそれがあり、またコストも上昇する。ポリエステルフィルムの厚みは、後述する実施例で採用した方法で測定できる。
【0027】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、液晶表示装置の画面上に観察される虹斑を抑制する観点から、面内リタデーションが特定範囲にあることが好ましい。面内リタデーションの下限は、3000nm以上、5000nm以上、6000nm以上、7000nm以上、又は8000nm以上であることが好ましい。面内リタデーションの上限は、30000nm以下が好ましく、より好ましくは18000nm以下、さらに好ましくは15000nm以下である。特に、薄膜化の観点からは、面内リタデーションは10000nm未満、9000nm以下が好ましい。
【0028】
ポリエステルフィルムのリタデーションは、2軸方向の屈折率と厚みを測定して求めることもできるし、KOBRA-21ADH(王子計測機器株式会社)といった市販の自動複屈折測定装置を用いて求めることもできる。なお、屈折率は、アッベの屈折率計(測定波長589nm)によって求めることができる。
【0029】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、面内リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)との比(Re/Rth)が、好ましくは0.2以上、好ましくは0.3以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上である。上記面内リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が大きいほど、複屈折の作用は等方性を増し、観察角度による虹状の色斑の発生が生じ難くなる傾向にある。完全な1軸性(1軸対称)フィルムでは上記リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)は2.0となることから、上記リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)の上限は2.0が好ましい。好ましいRe/Rthの上限は、1.2以下である。なお、厚さ方向位相差は、フィルムを厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz、△Nyzにそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られる位相差の平均を意味する。
【0030】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、より虹状の色斑を抑制する観点から、ポリエステルフィルムのNZ係数は2.5以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下、よりさらに好ましくは1.6以下である。そして、完全な一軸性(一軸対称)フィルムではNZ係数は1.0となるため、NZ係数の下限は1.0である。しかし、完全な一軸性(一軸対称)フィルムに近づくにつれ配向方向と直行する方向の機械的強度が著しく低下する傾向があるため留意する必要がある。
【0031】
NZ係数は、|Ny-Nz|/|Ny-Nx|で表され、ここでNyはポリエステルフィルムの遅相軸方向の屈折率、Nxは遅相軸と直交する方向の屈折率(進相軸方向の屈折率)、Nzは厚み方向の屈折率を表す。分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いてフィルムの配向軸を求め、配向軸方向とこれに直交する方向の二軸の屈折率(Ny、Nx、但しNy>Nx)、及び厚み方向の屈折率(Nz)をアッベの屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求める。
こうして求めた値を、|Ny-Nz|/|Ny-Nx|に代入してNZ係数を求めることができる。
【0032】
また、本発明のポリエステルフィルムは、より虹状の色斑を抑制する観点から、ポリエステルフィルムのNy-Nxの値は、0.05以上が好ましく、より好ましくは0.07以上、さらに好ましくは0.08以上、よりさらに好ましくは0.09以上、最も好ましくは0.1以上である。上限は特に定めないが、ポリエチレンテレフタレート系フィルムの場合には上限は1.5程度が好ましい。
【0033】
本発明のポリエステルフィルムは、任意のポリエステル樹脂から得ることができる。ポリエステル樹脂の種類は、特に制限されず、ジカルボン酸とジオールとを縮合させて得られる任意のポリエステル樹脂を使用することができる。
【0034】
ポリエステル樹脂の製造に使用可能なジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3-ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカジカルボン酸等が挙げられる。
【0035】
ポリエステル樹脂の製造に使用可能なジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
【0036】
ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分とジオール成分は、いずれも1種又は2種以上を用いることができる。ポリエステルフィルムを構成する好適なポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられ、より好ましくはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを挙げることができるが、これらは更に他の共重合成分を含んでも良い。これらの樹脂は透明性に優れるとともに、熱的、機械的特性にも優れている。特に、ポリエチレンテレフタレートは高弾性率を達成可能であり、また、熱収縮率の制御も比較的容易であることから好適な素材である。
【0037】
ポリエステルフィルムの熱収縮率を高度に高める必要がある場合には、共重合成分を添加して結晶化度を適度に低くすることが望ましい。また、ガラス転移温度付近以下の変形に対しては弾性歪や永久歪の割合が高いため、熱収縮率を高度に高くすることは一般的に困難である。そのため、必要に応じてガラス転移温度の低い成分を導入することも好ましい実施形態である。具体的には、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオールなどである。
【0038】
(機能層の付与)
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムを用いた偏光板は、ポリエステルフィルムの熱収縮率が残っている状態で液晶セルのガラス板と一体化されることが望ましいため、易接着層、ハードコート層、防眩層、反射防止層、低反射層、低反射防止層、反射防止防眩層、低反射防眩層、及び、帯電防止層などの機能層を付与する場合には、乾燥温度を低く設定することや、UV照射や電子線照射などの熱履歴の小さい方法で行うことが望ましい実施形態である。また、これらの機能層をポリエステルフィルムの製膜工程中で付与することは、高めた熱収縮率を損なわずに、本発明の偏光板と液晶セルのガラス板を一体化することが可能になるため、より望ましい実施形態である。
易接着層、ハードコート層、防眩層、反射防止層、低反射層、低反射防止層、反射防止防眩層、低反射防眩層、帯電防止層等の機能層は、ポリエステルフィルムの、偏光子が積層される面とは反対側の面に積層され、これらの機能層が積層された状態で収縮力Ff、Fvが前述した条件を有していることが好ましい。
【0039】
(配向ポリエステルフィルムの製造方法)
本発明で使用するポリエステルフィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理(熱固定)を施す方法が挙げられる。一軸延伸フィルムでも、二軸延伸フィルムであっても良い。好ましくは、主に横方向に強く延伸した一軸延伸フィルムまたは主に縦方向に強く延伸した一軸延伸フィルムであり、いずれも主延伸方向とは垂直方向に若干延伸されていてもよい。なお、MDとはMachine Directionの略であり、本明細書中では、フィルム流れ方向、長手方向、縦方向と呼ぶことがある。また、TDとはTransverse Directionの略であり、本明細書中では、幅方向、横方向と呼ぶことがある。
【0040】
ポリエステルフィルムは、収縮力Ffが800N/m以上9000N/m以下となるように、フィルム厚み、弾性率及び熱収縮率を調節することが好ましい。
【0041】
(ポリエステルフィルムの弾性率の調整方法)
偏光子保護フィルムとして使用するポリエステルフィルムの弾性率は、偏光子透過軸方向がポリエステルフィルムの製膜時のMDと一致する場合にはMDの弾性率を、ポリエステルフィルムの製膜時のTDと一致する場合にはTDの弾性率を、延伸ポリエステルフィルムの従来公知の方法で調整すればよい。
具体的には、該方向が延伸方向の場合には、延伸倍率を高く、該方向が延伸方向と直交方向の場合には延伸倍率を低く設定すればよい。
【0042】
(ポリエステルフィルムの熱収縮率の調整方法)
偏光子保護フィルムとして使用するポリエステルフィルムの熱収縮率は、偏光子の透過軸方向がポリエステルフィルムの製膜時のMDと一致する場合にはMDの熱収縮率を、ポリエステルフィルムの製膜時のTDと一致する場合にはTDの熱収縮率を、延伸ポリエステルフィルムの従来公知の方法で調整すればよい。
【0043】
ポリエステルフィルムのMDの熱収縮率を調整する場合は、例えば、延伸・熱固定後の冷却過程においてフィルム幅方向端部を把持しているクリップと隣接するクリップの間隔を拡大することでMDに延伸する方法や、クリップ間隔を縮小することによりMDに収縮させることにより調整することが出来る。また、延伸・熱固定後の冷却過程で、フィルム幅方向端部を把持するクリップからフィルムを切断もしくは分離する場合には、フィルムを引き取る力を調整することにより、フィルムをMDに延伸もしくは収縮させることによって調整することが可能である。また製膜後のオフライン工程で、機能層などを付与する目的で昇温する場合には、昇温冷却過程で熱収縮率が変化するため、フィルムを引き取る力を調整してMDに延伸もしくは収縮させることで調整することも可能である。
【0044】
ポリエステルフィルムのTDの熱収縮率を調整する場合は、例えば、延伸・熱固定後の冷却過程において、フィルム幅方向端部を把持しているクリップと幅方向の反対側に位置するクリップの間隔を拡大することでTDに延伸する方法や、縮小することによりTDに収縮させることにより調整することが出来る。
【0045】
収縮力Fvは、収縮力の比(Ff/Fv)が1.0以上12.0以下となるように、より好ましくは2.5以上12.0以下となるように、ポリエステルフィルムの弾性率、熱収縮率を調整することが好ましい。
【0046】
(ポリエステルフィルムの収縮主軸の傾きの調整方法)
偏光子保護フィルムとして使用するポリエステルフィルムの収縮主軸の傾きは、PCT/JP2014/073451(WO2015/037527)で公開されているように、ポリエステルフィルムのテンターによる延伸・熱処理後の冷却過程または、製膜後のオフライン工程で調整することが可能である。具体的には、冷却工程では熱固定工程で除去しきれなかった延伸に伴う収縮と冷却に伴う熱応力が発生しており、フィルム流れ方向における両者のバランス次第で上流側への引き込みもしくは下流側への引き込みが発生し、収縮主軸が傾く現象が発生する。収縮主軸の傾きを低減するためには、冷却工程でのフィルム流れ方向の収縮力(延伸に伴う収縮力と冷却に伴う収縮力の合計)が均一になるように調整することが必要である。均一にするためには、フィルム流れ方向で収縮力が高い温度域でフィルム流れ方向に収縮させるか、または、フィルム流れ方向で収縮力が低い温度域でフィルム流れ方向に延伸することが望ましい。収縮または延伸させる方法は従来公知の方法を用いれば良い。また、フィルム端部を切断または分離する場合には、切断・分離した温度域以下では幅方向に自由に収縮し、該温度域以下の熱収縮率が小さくなることから注意が必要である。
【0047】
偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に、本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムが積層されている。偏光子のもう一方の面には、TACフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム等の複屈折性を有しないフィルムが積層されていることが好ましい。もしくは、偏光子のもう一方の面には、何らフィルムが積層されていない偏光板も薄型の観点からは好ましい態様である。この場合、偏光子のもう一方の面に、フィルムは積層しないが、偏光子に塗布層が積層されていてもよい。塗布層としては、ハードコート層等の機能層であってもよいし、塗工により形成される位相差膜であってもよい。
なお、本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルム以外のフィルムや塗布層を偏光子に積層する場合、偏光子の透過軸と平行な方向における、偏光子保護用ポリエステルフィルム以外のフィルムや塗布層の収縮力、及び、偏光子の吸収軸と平行な方向における、偏光子保護用ポリエステルフィルム以外のフィルムや塗布層の収縮力は、いずれも偏光子保護用ポリエステルフィルムのFfの値以下が好ましく、より好ましくは偏光子保護用ポリエステルフィルムのFvの値以下が好ましい。また、偏光子の透過軸と平行な方向における、偏光子保護用ポリエステルフィルム以外のフィルムや塗布層の収縮力、及び、偏光子の吸収軸と平行な方向における、偏光子保護用ポリエステルフィルム以外のフィルムや塗布層の収縮力は、好ましくは250N/m以下、200N/m以下がより好ましい。偏光子保護用ポリエステルフィルム以外のフィルムや塗布層の収縮力は、ポリエステルフィルムの場合と同様に測定することができる。すなわち、フィルム又は塗布層の厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000である。
【0048】
工業的には、偏光板は、偏光子の長尺物と偏光子保護用ポリエステルフィルムの長尺物とを、ロールツーロールの形式で接着剤を介して積層される。そして、偏光子は通常、縦方向に延伸されて製造されるため、MDに吸収軸を有し、TDに透過軸を有する。
【0049】
そのため、工業的に偏光板を製造する観点からは、本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、以下の(1)、(2)であることが好ましい。
(1)ポリエステルフィルムのTDの収縮力FTDが800N/m以上9000N/m以下である。
ただし、収縮力FTD(N/m)は、ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000である。ここで、弾性率、熱収縮率は、それぞれポリエステルフィルムのTDの弾性率、TDの熱収縮率である。
(2)ポリエステルフィルムのTDの収縮力FTDとポリエステルフィルムのMDの収縮力FMDの比(FTD/FMD)が2.5以上12.0以下であることが好ましい。
ただし、収縮力FMD(N/m)は、ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000である。ここで、弾性率、熱収縮率は、それぞれ、ポリエステルフィルムのMDの弾性率、MDの熱収縮率である。
【0050】
また、本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの熱収縮率が最大となる方向とTDが略平行であることが好ましい。
略平行であるとは、ポリエステルフィルムの熱収縮率が最大となる方向とTD方向とのなす角の絶対値(熱収縮率の傾き)が15度以下であることを許容する。前記熱収縮率の傾きは、好ましくは12度以下であり、より好ましくは10度以下であり、さらに好ましくは8度以下であり、より更に好ましくは6度以下であり、特に好ましくは4度以下であり、最も好ましくは2度以下である。熱収縮率の傾きは小さいほど好ましいことから下限は0度である。
但し、ポリエステルフィルムのTDの収縮力FTDとポリエステルフィルムのMDの収縮力FMDの比(FTD/FMD)が2.5以上12.0以下の場合は、ポリエステルフィルムの熱収縮率が最大となる方向とTDとのなす角の絶対値が40度以下であっても、液晶パネルの反りを低減することができる。前記角度は好ましくは35度以下である。
【0051】
なお、上記のようにロールツーロール等の形式で工業的に偏光板を製造することを考慮した場合においては、FTDはFfに相当するものであるから、FTDの好ましい範囲とFfの好ましい範囲は同一である。また、FTD/FMDはFf/Fvに相当するものであるから、両者の好ましい範囲は同一である。「ポリエステルフィルムのTDの弾性率」は「偏光子の透過軸方向における、ポリエステルフィルムの弾性率」に相当するものであるから、両者の好ましい範囲は同一である。「ポリエステルフィルムの80℃、30分間熱処理時のTDの熱収縮率」は、「偏光子の透過軸方向における、ポリエステルフィルムの80℃、30分間熱処理時の熱収縮率」に相当するものであるから、両者の好ましい範囲は同一である。
【0052】
液晶表示装置は、少なくとも、バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルを有する。前記2つの偏光板のうち少なくとも一方が、本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムを偏光子保護フィルムとする偏光板であることが好ましい。液晶表示装置は、前記2つの偏光板の両方が本発明の偏光板を使用するものであってもよい。
【0053】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、視認側偏光板の偏光子を起点として視認側の偏光子保護フィルム及び/又は光源側偏光板の偏光子を起点として光源側の偏光子保護フィルムの位置に用いられることが好ましい。
【0054】
通常、液晶表示装置は、長方形の形状をしており(液晶表示装置内に使用される2枚の偏光板も長方形)、一方の偏光板はその長辺と吸収軸が平行であり、もう一方の偏光板はその長辺と透過軸が平行であり、互いに吸収軸が垂直関係になるようにして配置される。そして、通常、偏光板の長辺と吸収軸が平行の関係を有する偏光板は、液晶表示装置の視認側偏光板として使用され、偏光板の長辺と透過軸が平行の関係を有する偏光板は、液晶表示装置の光源側偏光板として使用される。少なくとも、偏光板の長辺と透過軸が平行の関係を有する偏光板として、本発明の偏光板が使用されることが、液晶パネルの反りを抑制する観点から好ましい。また、偏光板の長辺と透過軸が平行の関係を有する偏光板及び偏光板の長辺と吸収軸が平行の関係を有する偏光板の両方に、本発明の偏光板を用いることも好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
(1)収縮力Ff
ポリエステルフィルムの収縮力Ffは、以下の式から計算した。尚、ポリエステルフィルムの厚み、弾性率、熱収縮率は、以下に説明される測定値である。弾性率は、偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの弾性率のことである。熱収縮率は、偏光子の透過軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの熱収縮率のことである。
収縮力Ff(N/m) = ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000
【0057】
(2)収縮力Fv
ポリエステルフィルムの収縮力Fvは、以下の式から計算した。尚、ポリエステルフィルムの厚み、弾性率、熱収縮率は、以下に説明される測定値である。弾性率は、偏光子の吸収軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの弾性率のことである。熱収縮率は、偏光子の吸収軸と平行な方向における、ポリエステルフィルムの熱収縮率のことである。
収縮力Fv(N/m) = ポリエステルフィルムの厚み(mm)×弾性率(N/mm2)×80℃・30分処理の熱収縮率(%)÷100×1000
【0058】
(3)フィルム厚み
ポリエステルフィルムの厚み(mm)は、25℃50RH%の環境で168時間静置後に電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をmmに換算した。
【0059】
(4)ポリエステルフィルムの弾性率
ポリエステルフィルムの弾性率は、25℃50RH%の環境で168時間静置後にJIS-K7244(DMS)にしたがって、セイコーインスツルメンツ社製の動的粘弾性測定装置(DMS6100)を用いて評価を行った。引張モード、駆動周波数は1Hz、チャック間距離は5mm、昇温速度は2℃/minの条件で25℃~120℃の温度依存性を測定し、30℃~100℃の貯蔵弾性率の平均を弾性率とした。こうして、ポリエステルフィルムについて、偏光子透過軸と平行な方向のポリエステルフィルムの弾性率及び偏光子吸収軸と平行な方向のポリエステルフィルムの弾性率を測定した。
なお、上記測定はポリエステルフィルム単体(偏光子保護用ポリエステルフィルム単体)で行った。
【0060】
(5)ポリエステルフィルムの熱収縮率および熱収縮率の傾き
ポリエステルフィルムを25℃50RH%の環境で168時間静置した後に直径80mmの円を描き、円の直径を画像寸法測定器(KEYENCE社製イメージメジャーIM6500)を用いて、1°毎に測定し、処理前の長さとした。次に、80℃に設定したギアオーブンを用いて30分間の熱処理を行い、その後、室温25℃に設定された環境で10分間冷却した後に処理前と同様の方法で1°毎に評価を行い、処理後の長さとした。なお、上記処理は、ポリエステルフィルム単体(偏光子保護用ポリエステルフィルム単体)で行った。
【0061】
以下の計算式を用いて、各角度毎に熱収縮率を評価した。
熱収縮率=(処理前の長さ-処理後の長さ)/処理前の長さ×100
こうして、ポリエステルフィルムについて、偏光子透過軸と平行な方向のポリエステルフィルムの熱収縮率及び偏光子吸収軸と平行な方向のポリエステルフィルムの熱収縮率を求めた。
【0062】
上記で1°毎に360°の評価を行い、熱収縮率が最大となる方向を特定し、その方向と偏光子の透過軸方向とのなす角度の絶対値を、熱収縮率の傾きとした。なお、熱収縮率の傾きは、偏光子の透過軸方向からの狭角で定義され、0~90°の範囲となる。
【0063】
(6)液晶パネルの反り
各実施例・比較例で作製した液晶パネルを80℃に設定したギアオーブンを用いて30分間の熱処理を行い、その後、室温25℃50%RHに設定された環境で30分間冷却した後に、凸側を下にして水平面に置き、4隅の高さをメジャーで計測し、最大値を反り量とした。反り量を以下のようにして評価した。
○:0mm以上、2.0mm未満
△:2.0mm以上、3.0mm以下
×:3.0mm超え
【0064】
(7)ポリエステルフィルムの屈折率
分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いて、フィルムの遅相軸方向を求め、遅相軸方向が測定用サンプル長辺と平行になるように、4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(遅相軸方向の屈折率:Ny、進相軸(遅相軸方向と直交する方向の屈折率):Nx)、及び厚さ方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求めた。これらの値を用いてNZ係数を求めた。
【0065】
リタデーションとは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|Nx-Ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性、異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)は、以下の方法により求めた。分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いて、フィルムの遅相軸方向を求め、遅相軸方向が測定用サンプル長辺と平行になるように、4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(遅相軸方向の屈折率:Ny,遅相軸方向と直交する方向の屈折率:Nx)、及び厚さ方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求め、前記二軸の屈折率差の絶対値(|Nx-Ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)とした。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、リタデーション(Re)を求めた。
【0066】
(8)厚さ方向リタデーション(Rth)
厚さ方向リタデーションとは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|Nx-Nz|)、△Nyz(=|Ny-Nz|)にそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られるリタデーションの平均を示すパラメーターである。リタデーションの測定と同様の方法でNx、Ny、Nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)と(△Nyz×d)との平均値を算出して厚さ方向リタデーション(Rth)を求めた。
【0067】
(製造例1-ポリエステルA)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
【0068】
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は0.62dl/gであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。(以後、PET(A)と略す。)
【0069】
(製造例2-ポリエステルB)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)10質量部、粒子を含有しないPET(A)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を得た。(以後、PET(B)と略す。)
【0070】
(製造例3-接着性改質塗布液の調整)
常法によりエステル交換反応及び重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%及び5-スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%及びネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n-ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、接着性改質塗布液を得た。
【0071】
(実施例1)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム1の製造>
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層及び外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0072】
次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
【0073】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度105℃の熱風ゾーンに導き、TDに4.0倍に延伸した。次に、温度180℃、30秒間で熱処理を行い、その後、100℃まで冷却したフィルムを幅方向に1.0%延伸し、その後、60℃まで冷却したフィルムの両端部を把持しているクリップを開放して350N/mの張力で引き取り、フィルム厚み約80μmの一軸配向PETフィルムからなるジャンボロールを採取し、得られたジャンボロール3等分して、3本のスリットロール(L(左側),C(中央),R(右側))を得た。Rに位置するスリットロールより偏光子保護用ポリエステルフィルム1を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム1は、熱収縮率が最大となる方向が、TDから7.0度であった。
【0074】
<液晶パネルの作成>
PVAとヨウ素とホウ酸からなる偏光子の片側に偏光子保護用ポリエステルフィルム1を偏光子の透過軸と偏光子保護用ポリエステルフィルム1のTDが平行になるように貼り付けた。また、偏光子の反対の面にTACフィルム(富士フィルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付け、光源側偏光板を作成した。
【0075】
液晶セルに厚さ0.4mmのガラス基板を用いた46インチサイズのIPS型液晶テレビから液晶パネルを取り出した。液晶パネルから光源側偏光板を剥がして、その代わりに、上記で作成した光源側偏光板を、偏光子の透過軸が、剥がす前の光源側偏光板の透過軸方向(水平方向と平行)と一致するように、PSAを介して液晶セルに貼り合せ、液晶パネルを作成した。
なお、偏光子保護用ポリエステルフィルム1が液晶セルとは遠位側(反対側)となるように、光源側偏光板を液晶セルに貼り合わせた。また、視認側偏光板は、偏光子の両面にTACフィルムが積層されたものであり、偏光子の吸収軸方向が水平方向と平行となるように液晶セルに貼り合されていた。
【0076】
(実施例2)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム2の製造>
実施例1の偏光子保護用ポリエステルフィルム1の製膜において、100℃まで冷却したフィルムを幅方向に1.5%延伸とした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム1と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム2を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム2は、熱収縮率が最大となる方向が、TDから6.5度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例1において、偏光子保護用ポリエステルフィルム1を偏光子保護用ポリエステルフィルム2に代えた以外は実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0077】
(実施例3)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム3の製造>
実施例1の偏光子保護用ポリエステルフィルム1の製膜において、100℃まで冷却したフィルムを幅方向に1.7%延伸とした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム1と同様にして偏光子保護フィルム3を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム3は、熱収縮率が最大となる方向が、TDから5.3度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例1において、偏光子保護用ポリエステルフィルム1を偏光子保護用ポリエステルフィルム3に代えた以外は実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0078】
(実施例4)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム4の製造>
実施例1の偏光子保護用ポリエステルフィルム1の製膜において、100℃まで冷却したフィルムを幅方向に2.0%延伸としたこと、TDに4倍延伸後で温度180℃、30秒間の熱処理前の時点でポリエステルフィルムの片面にハードコート層塗布液を塗布したこと以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム1と同様にして偏光子保護フィルム4を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム4は、熱収縮率が最大となる方向が、TDから4.8度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例1において、偏光子保護用ポリエステルフィルム1を偏光子保護用ポリエステルフィルム4に代えた以外は実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0079】
(実施例5)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム5の製造>
キャスティングロールの回転速度を調整することで延伸後のフィルム厚みを160μmとした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム4と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム5を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム5は、熱収縮率が最大となる方向が、TDから4.8度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例1において、偏光子保護用ポリエステルフィルム1を偏光子保護用ポリエステルフィルム5に代えたこと以外は実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0080】
(実施例6)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム6の製造>
実施例1の偏光子保護用ポリエステルフィルム1の製膜において、100℃まで冷却したフィルムを流れ方向に1.5%延伸とした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム1と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム6を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム6は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから9.0度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例1の光源側偏光板の作成において、偏光子保護用ポリエステルフィルムの代わりに偏光子保護用ポリエステルフィルム6を使用し、偏光子の透過軸と偏光子保護用ポリエステルフィルム6のMDが平行になるように貼りつけて光源側偏光板を作成したこと以外は実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0081】
(実施例7)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム7の製造>
実施例1の偏光子保護用ポリエステルフィルム1の製膜において、100℃まで冷却したフィルムを流れ方向に1.7%延伸とした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム1と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム7を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム7は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから8.3度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例6において、偏光子保護用ポリエステルフィルム6を偏光子保護用ポリエステルフィルム7に代えた以外は実施例6と同様にして液晶パネルを作成した。
【0082】
(実施例8)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム8の製造>
実施例1の偏光子保護用ポリエステルフィルム1の製膜において、100℃まで冷却したフィルムを流れ方向に2.0%延伸とした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム1と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム8を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム8は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから7.0度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例6において、偏光子保護用ポリエステルフィルム6を偏光子保護用ポリエステルフィルム8に代えた以外は実施例6と同様にして液晶パネルを作成した。
【0083】
(実施例9)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム9の製造>
キャスティングロールの回転速度を調整することで延伸後のフィルム厚みを160μmとした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム8と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム9を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム9は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから7.0度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例6において、偏光子保護用ポリエステルフィルム6を偏光子保護用ポリエステルフィルム9に代えた以外は実施例6と同様にして液晶パネルを作成した。
【0084】
(実施例10)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム10の製造>
TDに4.0倍に延伸していたのを、MDに4.0倍、TDに1.0倍延伸したことに変更した以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム6と同様にして偏光子保護フィルム10を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム10は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから8.7度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例6において、偏光子保護用ポリエステルフィルム6を偏光子保護用ポリエステルフィルム10に代えた以外は実施例6と同様にして液晶パネルを作成した。
【0085】
(実施例11)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム11の製造>
実施例10の偏光子保護用ポリエステルフィルム10の製膜において、100℃まで冷却したフィルムを流れ方向に1.7%延伸とした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム10と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム11を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム11は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから7.5度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例10において、偏光子保護用ポリエステルフィルム10を偏光子保護用ポリエステルフィルム11に代えた以外は実施例10と同様にして液晶パネルを作成した。
【0086】
(実施例12)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム12の製造>
実施例10の偏光子保護用ポリエステルフィルム10の製膜において、100℃まで冷却したフィルムを幅方向に5.0%延伸とした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム10と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム12を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム12は、熱収縮率が最大となる方向が、TDから1.8度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例1において、偏光子保護用ポリエステルフィルム1を偏光子保護用ポリエステルフィルム12に代えた以外は実施例1と同様にして液晶パネルを
作成した。
【0087】
(実施例13)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム13の製造>
キャスティングロールの回転速度を調整することで延伸後のフィルム厚みを60μmとした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム4と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム13を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム13は、熱収縮率が最大となる方向が、TDから4.8度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例1において、偏光子保護用ポリエステルフィルム1を偏光子保護用ポリエステルフィルム13に代えたこと以外は実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0088】
(実施例14)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム14の製造>
幅方向に1.7%延伸したあとの冷却工程において、フィルムの両端部を把持しているクリップ幅を変更せずに通膜した以外は偏光子保護フィルム3と同様に偏光子保護フィルム14を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム14は、熱収縮率が最大となる方向が、TDから33.0度であった。
<液晶パネルの作成>
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム14に代えたこと以外は、実施例3と同様にして液晶パネルを作成した。
【0089】
(比較例1)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム15の製造>
キャスティングロールの回転速度を調整することで延伸後のフィルム厚みを200μmとしたこと、延伸・熱固定後の冷却工程でフィルムの両端部を把持しているクリップ幅を変更させずに通膜した以外は偏光子保護フィルム1と同様に偏光子保護フィルム15を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム15は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから20.0度であった。
<液晶パネルの作成>
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム15に代えたこと、偏光子の透過軸と偏光子保護フィルムのMDが平行になるように貼り合わせて光源側偏光板を作成したこと以外は、実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0090】
(比較例2)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム16の製造>
延伸・熱固定後の冷却工程において、幅方向に1.0%延伸処理することなく、フィルムの両端部を把持しているクリップを95℃で解放した以外は偏光子保護フィルム1と同様に偏光子保護フィルム16を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム16は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから1.0度であった。
<液晶パネルの作成>
偏光子保護フィルム1を偏光子保護フィルム16に代えたこと、偏光子の透過軸と偏光子保護フィルムのMDが平行になるように貼り合わせて光源側偏光板を作成したこと以外は、実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0091】
(比較例3)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム17の製造>
キャスティングロールの回転速度を調整することで延伸後のフィルム厚みを50μmとした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム1と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム17を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム17は、熱収縮率が最大となる方向が、TDから7.0度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例1において、偏光子保護用ポリエステルフィルム1を偏光子保護用ポリエステルフィルム17に代えたこと以外は実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0092】
(比較例4)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム18の製造>
キャスティングロールの回転速度を調整することで延伸後のフィルム厚みを160μmとした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム11と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム18を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム18は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから6.5度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例11において、偏光子保護用ポリエステルフィルム11を偏光子保護用ポリエステルフィルム18に代えたこと以外は実施例11と同様にして液晶パネルを作成した。
【0093】
(比較例5)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム19の製造>
キャスティングロールの回転速度を調整することで延伸後のフィルム厚みを160μmとしたこと、実施例1の偏光子保護用ポリエステルフィルム1の製膜において、100℃まで冷却したフィルムを流れ方向に1.0%延伸とした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム1と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム19を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム19は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから11.0度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例1の光源側偏光板の作成において、偏光子保護用ポリエステルフィルムの代わりに偏光子保護用ポリエステルフィルム19を使用し、偏光子の透過軸と偏光子保護用ポリエステルフィルム19のTDが平行になるように貼りつけて光源側偏光板を作成したこと以外は実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0094】
(比較例6)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム20の製造>
キャスティングロールの回転速度を調整することで延伸後のフィルム厚みを80μmとした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム19と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム20を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム20は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから11.0度であった。
<液晶パネルの作成>
比較例5において、偏光子保護用ポリエステルフィルム19を偏光子保護用ポリエステルフィルム20に代えた以外は比較例5と同様にして液晶パネルを作成した。
【0095】
(比較例7)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム21の製造>
偏光子保護フィルム20と同様にして偏光子保護フィルム21を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム21は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから11.0度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例1の光源側偏光板の作成において、偏光子保護用ポリエステルフィルム1の代わりに偏光子保護用ポリエステルフィルム21を使用し、偏光子の透過軸と偏光子保護用ポリエステルフィルム21のMDが平行になるように貼りつけて光源側偏光板を作成したこと以外は実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0096】
(比較例8)
<液晶パネルの作成>
偏光子保護フィルム15を、偏光子の透過軸と偏光子保護フィルムのTDが平行になるように貼り合わせて光源側偏光板を作成したこと以外は、実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0097】
(比較例9)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム22の製造>
キャスティングロールの回転速度を調整することで延伸後のフィルム厚みを160μmとしたこと、実施例1の偏光子保護用ポリエステルフィルム1の製膜において、100℃まで冷却したフィルムを流れ方向に1.0%延伸とした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム1と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム22を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム22は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから11.0度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例1の光源側偏光板の作成において、偏光子保護用ポリエステルフィルム1の代わりに偏光子保護用ポリエステルフィルム22を使用し、偏光子の透過軸と偏光子保護用ポリエステルフィルム22のMDが平行になるように貼りつけて光源側偏光板を作成したこと以外は実施例1と同様にして液晶パネルを作成した。
【0098】
(比較例10)
<偏光子保護用ポリエステルフィルム23の製造>
実施例10の偏光子保護用ポリエステルフィルム10の製膜において、100℃まで冷却したフィルムを流れ方向に2.0%延伸とした以外は偏光子保護用ポリエステルフィルム10と同様にして偏光子保護用ポリエステルフィルム23を得た。偏光子保護用ポリエステルフィルム23は、熱収縮率が最大となる方向が、MDから4.5度であった。
<液晶パネルの作成>
実施例10において、偏光子保護用ポリエステルフィルム10を偏光子保護用ポリエステルフィルム23に代えた以外は実施例10と同様にして液晶パネルを作成した。
【0099】
【0100】
表1に示した結果より、本発明に係る偏光子保護フィルムを使用した偏光板は、比較例の偏光板に比べて、パネルの反りを抑制できることが認められた。
【0101】
(実施例1A~実施例5A、実施例13A)
なお、実施例1~5、13の各実施例で用いた光源側偏光板と同構成の偏光板を、光源側偏光板及び視認側偏光板として両方の偏光板に用いた以外は実施例1~5、13と同様にして別途評価した場合も、上記表1の実施例1~5、13の結果と同様に、パネルの反り評価において良好な結果(○)が得られた。なお、偏光子保護用ポリエステルフィルムが液晶セルとは遠位側(反対側)となるように、光源側偏光板及び視認側偏光板を液晶セルに貼り合わせた。
【0102】
(実施例1B~実施例5B、実施例13B)
実施例1A~実施例5A、実施例13Aにおいて、液晶セル側の偏光子保護フィルムとしてTACフィルムを用いなかったこと以外は、実施例1A~実施例5A、実施例13Aと同様にして別途評価した場合も、実施例1A~実施例5A、実施例13Aと同様に、パネルの反り評価において良好な結果(○)が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、液晶パネルの反りを抑制することができる偏光子保護フィルム、偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。