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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】順送プレス加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/02 20060101AFI20230801BHJP
   B21D 43/00 20060101ALI20230801BHJP
   B21D 43/09 20060101ALI20230801BHJP
   B21D 53/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B21D43/02 D
B21D43/00 R
B21D43/09 A
B21D53/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020021442
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021126667
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平田 和之
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-127330(JP,U)
【文献】特開2003-062626(JP,A)
【文献】特開2017-159325(JP,A)
【文献】特開2015-042418(JP,A)
【文献】特開2014-078336(JP,A)
【文献】特開平08-019823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/00-43/02
B21D 43/09
B21D 53/00
B30B 13/00
H01M 8/0202
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型との間に水平方向に延びるよう帯状素材が配置される一方、それら上型と下型との対向する部分には前記帯状素材の長手方向に沿って複数のプレス加工部が順に設けられており、前記上型及び前記下型の型開きと型締めとを繰り返す際の型開き毎に、前記帯状素材における製品形成領域の幅に対応したピッチで、同帯状素材を長手方向に送ることにより、型締めによる複数の前記プレス加工部での前記帯状素材の製品形成領域に対するプレス加工を通じて板状製品を形成する順送プレス加工装置において、
前記帯状素材を載せるためのものであって、前記プレス加工部における下型側の部分に転動可能且つ同下型に対し出没可能に設けられており、前記下型から前記上型に向けて突出するよう付勢部材によって付勢されているとともに、その付勢力に抗して前記下型に没入可能とされている下ローラーと、
前記下型に設けられて前記下ローラーの前記下型に対する出没動作と一体に上下動する退避ブロックと、
前記プレス加工部における上型側の部分に出没可能に設けられて同上型から前記下型に向けて突出しており、且つ、弾性部材を介して前記上型に連結されて同弾性部材の弾性力に抗して前記上型に没入することが可能とされている抑え部材と、
前記上型であって前記退避ブロックと対向する位置に設けられて前記抑え部材の前記上型に対する出没動作と一体に上下動する押圧ブロックと、
を備えており、
前記弾性部材の弾性力が前記付勢部材の付勢力よりも小さくされており、型締めに伴い前記退避ブロックに対し前記押圧ブロックが当接したとき、前記抑え部材と前記下ローラーとが前記帯状素材の厚さに対応する距離まで接近するようにされている
ことを特徴とする順送プレス加工装置。
【請求項2】
前記抑え部材は、転動可能に支持されている上ローラーである請求項1に記載の順送プレス加工装置。
【請求項3】
前記上ローラー及び前記下ローラーは上下一対となるものであり、それら上ローラーと下ローラーとの各対が前記帯状素材の長手方向に定められた間隔をおいて設けられている請求項2に記載の順送プレス加工装置。
【請求項4】
上下一対の前記上ローラーと前記下ローラーとの各対は、型開き状態のもとでは、帯状素材の送り方向後側のものほど、前記上ローラーと前記下ローラーとの距離が短くなるようにされている請求項3に記載の順送プレス加工装置。
【請求項5】
前記板状製品は、燃料電池用のセパレータである請求項1~4のいずれか一項に記載の順送プレス加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順送プレス加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板状製品を製造する際には、製造効率を向上させるため、特許文献1に示されるような順送プレス加工を行うことが考えられる。そうした順送プレス加工を実現する順送プレス加工装置としては、例えば次のようなものを用いることが考えられる。
【0003】
この順送プレス加工装置では、上型と下型との間に水平方向に延びるよう帯状素材が配置される。そして、板状製品は、上記順送プレス加工装置の動作を通じて、上記帯状素材により同帯状素材の長手方向に沿って並ぶように形成されるとともに、上記帯状素材の長手方向の端部で同帯状素材から分断される。従って、上記帯状素材においては、板状製品を形成するための製品形成領域が、同帯状素材の長手方向に並んだ状態となる。
【0004】
上記順送プレス加工装置の上型と下型との対向する部分には、帯状素材の長手方向に沿って複数のプレス加工部が順に設けられる。同装置では、上型及び下型の型開きと型締めとを繰り返す際の型開き毎に、帯状素材における製品形成領域の幅に対応したピッチで、同帯状素材が長手方向に送られる。そして、板状製品は、同装置の型締めによる上記プレス加工部での帯状素材の上記製品形成領域に対するプレス加工を通じて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-19823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記順送プレス加工装置では、型開き毎に帯状素材が製品形成領域の幅に対応したピッチで長手方向に送られ、型締め毎に各製品形成領域に対しプレス加工部によってプレス加工が施されるため、帯状素材における送り方向の前側の部分ほどプレス加工による反り(湾曲)が生じやすくなる。そして、こうした反りが生じた状態で帯状素材の製品形成領域に対するプレス加工部によるプレス加工が行われると、製品形成領域における適切な位置に対しプレス加工を行うことが困難になるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、帯状素材に反りが生じた状態でプレス加工が行われることを抑制できる順送プレス加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する順送プレス加工装置においては、上型と下型との間に水平方向に延びるよう帯状素材が配置される一方、それら上型と下型との対向する部分には帯状素材の長手方向に沿って複数のプレス加工部が順に設けられる。そして、同装置では、上型及び下型の型開きと型締めとを繰り返す際の型開き毎に、帯状素材における製品形成領域の幅に対応したピッチで、同帯状素材が長手方向に送られる。これにより、型締めによる複数のプレス加工部での帯状素材の製品形成領域に対するプレス加工を通じて、板状製品が形成される。同装置のプレス加工部における下型側の部分には、帯状素材を載せるための下ローラーが、転動可能且つ同下型に対し出没可能に設けられている。この下ローラーは、下型から上型に向けて突出するよう付勢部材によって付勢されているとともに、その付勢力に抗して下型に没入可能とされている。下型には、下ローラーの同下型に対する出没動作と一体に上下動する退避ブロックが設けられている。一方、プレス加工部における上型側の部分には、上型から下型側に向けて突出する抑え部材が上型に対し出没可能に設けられている。この抑え部材は、弾性部材を介して上型に連結されており、その弾性部材の弾性力に抗して上型に没入することが可能とされている。上型であって退避ブロックと対向する位置には、抑え部材の上型に対する出没動作と一体に上下動する押圧ブロックが設けられている。同装置では、弾性部材の弾性力が付勢部材の付勢力よりも小さくされており、型締めに伴い退避ブロックに対し押圧ブロックが当接したとき、抑え部材と下ローラーとが帯状素材の厚さに対応する距離まで接近するようにされている。
【0009】
上記構成によれば、下型の下ローラーに載せられた帯状素材が、型開き毎に製品形成領域の幅に対応したピッチで長手方向に送られる。このとき、帯状素材の移動に伴って下ローラーが転動するため、その移動の際に帯状素材が擦れることが抑制される。また、帯状素材の長手方向に並ぶ各製品形成領域に対しては、型締め毎にプレス加工部によってプレス加工が施される。詳しくは、型締めの際、プレス加工部における上型側の部分と下型側の部分とが接近し、帯状素材における製品形成領域に対するプレス加工部によるプレス加工が行われる。こうしたプレス加工が施されるため、帯状素材における送り方向の前側の部分ほど、上記プレス加工による反り(湾曲)が生じやすくなる。しかし、帯状素材に反りが生じていたとしても、型締め時に上型と下型とが接近するとき、上型の抑え部材が上記反りの生じた帯状素材に当たることにより、その反りが抑えられるようになる。
【0010】
その後、型締めに伴って抑え部材と下ローラーとが帯状素材の厚さに対応した距離まで接近すると、上型の押圧ブロックが下型の退避ブロックに当たり、上型が下型に接近するに従って押圧ブロック及び抑え部材が弾性部材の弾性力に抗して同抑え部材を上型に没入させる方向に変位する。このときの変位は、抑え部材と下ローラーとの距離を帯状素材の厚さに対応する値に保ったまま行われる。更に、抑え部材が上型に没入して帯状素材が上型に当たり、且つ、弾性部材が最大に縮むと、下型に対する上型の接近に伴い、押圧ブロックが下型の退避ブロックを付勢部材の付勢力に抗して押圧する。その結果、下ローラーを下型に没入させる方向に退避ブロック及び下ローラーが変位し、下ローラーに載せられているとともに上型に当たっている帯状素材が下型に当たり、その帯状素材の製品形成領域に対し、上型と下型との間のプレス加工部によるプレス加工が行われる。
【0011】
このように型締めの際には、抑え部材と下ローラーとが帯状素材の厚さに対応した距離まで接近し、その距離を保った状態で抑え部材及び下ローラーが上型及び下型に没入しつつ、帯状素材の製品形成領域に対しプレス加工部によるプレス加工が行われる。従って、そのプレス加工の前に帯状素材の反りが解消されるようになり、そうした反りが生じた状態で帯状素材の製品形成領域に対しプレス加工が行われることを抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】順送プレス加工装置による帯状素材からのセパレータの製造態様を概略的に示す平面図。
図2】順送プレス加工装置を概略的に示す側面図。
図3】同装置のバーリング形成部を示す拡大断面図。
図4】同装置における第2ピンを示す側面図。
図5】下型及び上型における支持部材周りの構造を示す断面図。
図6】上型及び下型における上ローラー及び下ローラー、並びに、それらの周辺構造を示す略図。
図7】上型及び下型における上ローラー及び下ローラー、並びに、それらの周辺構造を示す略図。
図8】上型及び下型における上ローラー及び下ローラー、並びに、それらの周辺構造を示す略図。
図9】上型及び下型における上ローラー及び下ローラー、並びに、それらの周辺構造を示す略図。
図10】上型及び下型における上ローラー及び下ローラー、並びに、それらの周辺構造を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、順送プレス加工装置の一実施形態について、図1図10を参照して説明する。
図1及び図2はそれぞれ、順送プレス加工装置1による金属製の帯状素材2からの板状製品(例えば燃料電池用のセパレータ3)の製造態様、及び、順送プレス加工装置1を側方から見た状態を概略的に示している。
【0014】
図1から分かるように、帯状素材2は、その長手方向(図1及び図2の左右方向)に沿って、セパレータ3を形成するための製品形成領域4が隙間無く並んでいる。帯状素材2の製品形成領域4によって形成されるセパレータ3は、燃料電池に対し給排される流体、すなわち燃料ガス(水素)、酸化ガス(空気)、及び冷却液(冷却水)といった流体を通過させるための穴5~7や流路8を備えている。ちなみに、この例のセパレータ3は、帯状素材2の幅方向(図1の上下方向)を長辺とする長方形の板状となっている。更に、上記穴5~7はセパレータ3の長辺方向の両側にそれぞれ形成されており、上記流路8はセパレータ3の長辺方向の中央部に形成されている。
【0015】
図2に示すように、順送プレス加工装置1は、型開きと型締めとを繰り返す上型9と下型10とを備えており、型開きの際には上型9を上昇させて下型10に対し離間させる一方、型締めの際には上型9を下降させて下型10に対し接近させる。順送プレス加工装置1の上型9と下型10との間には、上記帯状素材2が水平方向に延びるよう配置される。この帯状素材2は、上型9及び下型10の型開きと型締めとを繰り返す際の型開き毎に、製品形成領域4の幅(製品形成領域4における帯状素材2の長手方向の長さ)に対応したピッチで、帯状素材2の長手方向における図2の右側に送られる。
【0016】
順送プレス加工装置1における上型9と下型10との対向する部分には、上記帯状素材2の送り方向の後側から前側に向けてパイロット穴形成部11、成形部12、打ち抜き部13、及び分断部14が順に設けられている。これらパイロット穴形成部11、成形部12、打ち抜き部13、及び分断部14は、型締め毎に帯状素材2の製品形成領域4に対するプレス加工を行い、そのプレス加工を通じてセパレータ3を形成する複数のプレス加工部としての役割を担う。
【0017】
次に、順送プレス加工装置1における上記パイロット穴形成部11、成形部12、打ち抜き部13、及び分断部14の詳細について個別に説明する。
[パイロット穴形成部11]
上記パイロット穴形成部11は、型締め時に帯状素材2の製品形成領域4に位置決め用のパイロット穴15(図1)を形成するものである。詳しくは、図2に示すように、パイロット穴形成部11における上型9に対応する部分にはパイロット穴15を打ち抜くためのパイロット穴用パンチ16が設けられている。そして、型締め時には、パイロット穴形成部11の上記パイロット穴用パンチ16で製品形成領域4における定められた箇所が打ち抜かれることにより、その製品形成領域4にパイロット穴15(図1)が形成される。なお、製品形成領域4におけるパイロット穴15の形成位置は、製品形成領域4におけるセパレータ3の穴5~7を形成予定の部分のうち、帯状素材2における送り方向の後端(図2の左端)に位置する穴5を形成予定の部分とされている。
【0018】
[成形部12]
上記成形部12は、型締め時に帯状素材2の製品形成領域4の一部に形状加工を施してセパレータ3の流路8(図1)を形成するとともに、製品形成領域4における上記パイロット穴15(図1)に対応する部分に帯状素材2の位置決めを行うための位置決め部17(図1)を形成するものである。詳しくは、図2に示すように、成形部12には、上記流路8を形成するための流路成形面18、及び、上記パイロット穴15(図1)に対しバーリング加工を施すバーリング形成部19が設けられている。
【0019】
図3に示すように、バーリング形成部19は、帯状素材2のパイロット穴15に対応して位置しており、上型9側に位置するバーリングピン20と下型10側に位置するダイ21とを備えている。そして、型締め時には、製品形成領域4のパイロット穴15がバーリングピン20で広げられるよう、同ピン20とダイ21とが互いに接近する方向に相対移動する。これにより、パイロット穴15に対しバーリング加工が施され、そのバーリング加工を通じてパイロット穴15の周りに帯状素材2の位置決めを行うための位置決め部17が形成される。
【0020】
従って、図1に示すように、上記パイロット穴15は、上述したパイロット穴形成部11により、製品形成領域4における上記位置決め部17を形成予定の部分に形成されていることになる。また、この位置決め部17は、製品形成領域4におけるセパレータ3の穴5~7を形成予定の部分のうち、帯状素材2における送り方向の後端に位置する穴5を形成予定の部分に形成されていることにもなる。
【0021】
一方、型締め時には、上述したバーリング加工が行われると同時に、流路成形面18(図2)による上記流路8の形成(形状加工)も行われる。こうした流路8の形成時における帯状素材2の位置決めは、上記バーリング加工に伴うバーリングピン20のパイロット穴15に対する挿入を通じて行われる。従って、帯状素材2が位置決めされた状態のもとで上記流路8の形成が行われることになり、製品形成領域4(帯状素材2)に対し上記流路8を適正な位置に形成することができるようになる。言い換えれば、上記流路8を形成するための形状加工が、位置決め部17を基準として精度よく行われるようになる。
【0022】
[打ち抜き部13]
図2に示すように、上記打ち抜き部13における上型9に対応する部分には、型締め時に帯状素材2の位置決めを行うための第1ピン22が設けられている。この第1ピン22は、型締め時に図1に示す位置決め部17(パイロット穴15)に対し挿入されることにより、その位置決め部17での帯状素材2における製品形成領域4の位置決めを行う。
【0023】
また、図2に示すように、打ち抜き部13の上型9に対応する部分には、流体穴用パンチ23~25が設けられている。流体穴用パンチ23,24は、製品形成領域4におけるセパレータ3の穴5~7(図1)を形成予定の部分のうち、位置決め部17が形成されていない部分、すなわち穴6,7を形成予定の部分を打ち抜くためのものである。言い換えれば、流体穴用パンチ23,24は、製品形成領域4における打ち抜き予定の部分のうち、位置決め部17が形成されていない部分を打ち抜くためのものである。
【0024】
更に、流体穴用パンチ25は、上記製品形成領域4に対し帯状素材2の送り方向の前側で隣り合う製品形成領域4における位置決め部17が形成されている部分、すなわち穴5を形成予定の部分を打ち抜くためのものである。言い換えれば、流体穴用パンチ25は、上記隣合う製品形成領域4における打ち抜き予定の部分のうち、位置決め部17が形成されている部分を打ち抜くためのものである。ちなみに、上記位置決め部17は、製品形成領域4における流体穴用パンチ25による打ち抜き予定の部分に、上記成形部12によって形成されるものとも言える。
【0025】
図2に示すように、打ち抜き部13の上型9に対応する部分には、第2ピン26も設けられている。第2ピン26は、型締め時に上記隣り合う製品形成領域4における形成済みの穴6(図1)に挿入されて同穴6における帯状素材2の送り方向の前側の内縁に接することにより、上記製品形成領域4に対し係合されて帯状素材2の第1ピン22側への変位を規制するものである。図4に示すように、第2ピン26の先端部(図4の下端部)の外周面であって穴6における帯状素材2の送り方向の前側(図4の右側)の部分は、第2ピン26の先端に向かうほど同ピン26の幅が狭くなるよう傾斜している。
【0026】
このため、型締め時に第2ピン26が穴6に対し容易に挿入されるようになる。更に、第2ピン26が穴6に挿入されたとき、同ピン26の外周面により穴6における帯状素材2の送り方向の前側の内縁が、第1ピン22(図2)から離れる方向(図2の右側)に押されるようになる。その結果、帯状素材2の位置決めが第1ピン22及び第2ピン26によってより確実に行われる。
【0027】
そして、型締め時には、図1に示すように、第1ピン22が帯状素材2における製品形成領域4の位置決め部17(パイロット穴15)に挿入されるとともに、第2ピン26が上記製品形成領域4に対し帯状素材2の送り方向の前側で隣り合う製品形成領域4の穴6に挿入されることにより、帯状素材2が位置決めされる。更に、帯状素材2が位置決めされた状態のもと、第1ピン22が挿入された位置決め部17(パイロット穴15)を含む製品形成領域4に対し流体穴用パンチ23,24(図2)によって穴6,7が形成される。
【0028】
また、このときには上記製品形成領域4に対し帯状素材2の送り方向の前側で隣り合う製品形成領域4、すなわち第2ピン26が挿入された穴6を含む製品形成領域4に対し流体穴用パンチ25によって穴5が形成される。この製品形成領域4における穴5の形成予定の部分(打ち抜き予定の部分)には位置決め部17が存在しているが、その位置決め部17は上記流体穴用パンチ25によって上記製品形成領域4における穴5の形成予定の部分と共に打ち抜かれる。
【0029】
[分断部14]
図2に示すように、上記分断部14は、型締め時に帯状素材2から製品形成領域4を分断することにより、その分断された製品形成領域4をセパレータ3(図1)とするものである。上記分断部14における上型9側の部分には分断用パンチ27が設けられており、上記分断部14における下型10側の部分にはストリッパ28が設けられている。そして、型締め時には、分断用パンチ27とストリッパ28との間の剪断力により、帯状素材2における送り方向の最も前側に位置する製品形成領域4が分断される。こうして帯状素材2から分断された製品形成領域4がセパレータ3となり、製造された同セパレータ3はコンベア等により所定の場所に運ばれる。
【0030】
次に、順送プレス加工装置1によるセパレータ3の製造態様について説明する。
図1に示されるように、順送プレス加工装置1においては、帯状素材2における所定の製品形成領域4がパイロット穴形成部11に対応して位置しており、その状態で型締めが行われることによって上記製品形成領域4にパイロット穴15が形成される。その後、型開きされている間に上記帯状素材2が製品形成領域4の幅(図1の左右方向の長さ)に対応したピッチで図1の右側に送られることにより、上記製品形成領域4が成形部12に対応して位置するようになる。
【0031】
上記製品形成領域4が成形部12に対応して位置した状態のもとで型締めが行われると、同製品形成領域4のパイロット穴15に対応した部分に位置決め部17が形成される。また、その位置決め部17による帯状素材2(製品形成領域4)の位置決めが行われた状態のもとで、同製品形成領域4に流路8が形成されるようにもなる。その後、型開きされている間に帯状素材2が上記ピッチで図1の右側に送られることにより、上記製品形成領域4が打ち抜き部13に対応して位置するようになる。
【0032】
上記製品形成領域4が打ち抜き部13に対応して位置した状態のもとで型締めが行われると、同製品形成領域4における穴5~7の形成予定の部分に穴6,7が形成される。また、このときには、上記製品形成領域4に対し帯状素材2の送り方向の前側で隣り合う製品形成領域4も上記打ち抜き部13に対応して位置しており、上記型締めに伴って同製品形成領域4に穴5が形成されるとともに位置決め部17が打ち抜かれる。この製品形成領域4には前回の型締め時に穴6,7が形成されており、今回の型締め時には上記穴6に対する第2ピン26の挿入、及び、上記製品形成領域4に対し帯状素材2の送り方向の後側(図1の左側)で隣り合う製品形成領域4の位置決め部17に対する第1ピン22の挿入により、帯状素材2の位置決めが行われることとなる。
【0033】
その後、型開きされている間に帯状素材2が上記ピッチで図1の右側に送られることにより、帯状素材2における送り方向の前端に位置する製品形成領域4と、その製品形成領域4に対し帯状素材2の送り方向の後側で隣合う製品形成領域4との境界が分断部14に対応して位置するようになる。この状態のもとで型締めが行われることにより、上記境界で帯状素材2が分断され、帯状素材2における送り方向の前端に位置する製品形成領域4が帯状素材2から切り離されてセパレータ3となる。
【0034】
次に、順送プレス加工装置1において、プレス加工に伴う帯状素材2の反り(湾曲)を解消するための構造について説明する。
順送プレス加工装置1では、型開き毎に帯状素材2が製品形成領域4の幅に対応したピッチで長手方向に送られ、型締め毎に各製品形成領域4に対しパイロット穴形成部11、成形部12、打ち抜き部13、及び分断部14によるプレス加工が施される。このため、帯状素材2における送り方向の前側の部分ほどプレス加工による反り(湾曲)が生じやすくなる。そして、こうした反りが生じた状態でプレス加工が行われると、製品形成領域4の適切な位置に対しプレス加工を行うことが困難になるため、順送プレス加工装置1では以下のような構造が採用されている。
【0035】
すなわち、図5に示すように、順送プレス加工装置1のパイロット穴形成部11、成形部12、及び打ち抜き部13における下型10側の部分にはそれぞれ、帯状素材2を載せるための下ローラー29、及び、その下ローラー29を転動可能に支持するための支持部材30が設けられている。下ローラー29及び支持部材30は、帯状素材2の長手方向に沿って定められた間隔をおいて設けられている。更に、下ローラー29及び支持部材30はそれぞれ、帯状素材2における幅方向(図5の紙面と直交する方向)の両側に設けられている。
【0036】
また、各支持部材30はそれぞれ、ばね31を介して下型10に対し上下動可能に支持されている。これら各支持部材30は、上下方向に一体移動できるよう水平方向に延びる連結プレート32によって互いに連結されている。各支持部材30に転動可能に支持された下ローラー29は、各支持部材30の上下動に伴い下型10に対し出没する。下ローラー29及び支持部材30は、付勢部材としての役割を担う上記ばね31の付勢力により、下ローラー29が下型10から上型9に向けて突出するよう付勢されている。下ローラー29は、ばね31の付勢力に抗して下型10に没入することが可能となっている。
【0037】
順送プレス加工装置1のパイロット穴形成部11、成形部12、及び打ち抜き部13における上型9側の部分にはそれぞれ、抑え部材としての役割を担う上ローラー35、及び、その上ローラー35を転動可能に支持するための支持部材36が設けられている。支持部材36は上型9に対し上下動可能となっており、支持部材36によって転動可能に支持された上ローラー35は、支持部材36の上下動に伴い上型9に対し出没する。上ローラー35及び支持部材36は、帯状素材2の長手方向に沿って定められた間隔をおいて設けられている。更に、上ローラー35及び支持部材36はそれぞれ、帯状素材2における幅方向(図5の紙面と直交する方向)の両側に対応して設けられており、下型10における下ローラー29及び支持部材30に対応して位置している。また、上ローラー35は、対応して位置する下ローラー29と対向している。
【0038】
上型9における帯状素材2と向かい合う部分には、上型9に対し出没可能なストリッパプレート41がばね42を介して同上型9に対し連結されている。ストリッパプレート41は、上型9から下型10(帯状素材2)に向けて突出しており、ばね42を縮めながら上型9に没入するようになっている。なお、上ローラー35及び支持部材36は、ストリッパプレート41に対し上下方向に相対移動可能な状態で、同ストリッパプレート41を上下方向に貫通している。
【0039】
上ローラー35及び下ローラー29は、帯状素材2の厚さ方向の両側に位置しており、対向する上ローラー35と下ローラー29とで一対となっている。上下一対の上ローラー35と下ローラー29との各対のうち、パイロット穴形成部11に一つの対が設けられており、成形部12に二つの対が設けられており、打ち抜き部13に三つの対が設けられている。そして、打ち抜き部13における三つの上記対、及び、成形部12の二つの上記対のうちの帯状素材2の送り方向前側(図5の右側)の対は、型開き状態のもとでは、帯状素材2の送り方向後側(図5の左側)のものほど、上ローラー35と下ローラー29との距離が短くなるようにされている。
【0040】
なお、パイロット穴形成部11の一つの上記対、及び、成形部12の二つの上記対のうちの帯状素材2の送り方向後側(図5の左側)の対については、型開き状態のもとでの上ローラー35と下ローラー29との距離が、打ち抜き部13における三つの上記対のうちの帯状素材2の送り方向の最前側の対と等しくされている。
【0041】
図6は、図5の成形部12における上下一対の上ローラー35と下ローラー29との二つの対のうち、帯状素材2の送り方向前側(図5の右側)の対、及び、その対の周辺構造を概略的に示している。
【0042】
図6から分かるように、下型10において、連結プレート32には、下型10から上型9側に向けて突出する退避ブロック33が連結されている。退避ブロック33は、連結プレート32に連結されることにより、下ローラー29及び支持部材30と一体に、言い換えれば下ローラー29の下型10に対する出没動作と一体に上下動することが可能となっている。また、退避ブロック33は、ばね34を介して下型10に対し上下動可能に支持されている。これら退避ブロック33及びばね34は、上下一対の上ローラー35と下ローラー29との各対毎に設けられている。なお、上記ばね34も、上記ばね31と同様に上記付勢部材としての役割を担う。
【0043】
一方、上型9において、上ローラー35及び支持部材36は、連結バー43を介して押圧ブロック37に連結されている。押圧ブロック37は、連結バー43に連結されることにより、上ローラー35及び支持部材36と一体に、言い換えれば上ローラー35の上型9に対する出没動作と一体に上下動することが可能となっている。また、押圧ブロック37は、下型10の退避ブロック33と対向する位置で上型9から下型10に向けて突出するように設けられており、弾性部材としての役割を担うばね44を介して上型9に対し連結されている。このばね44の弾性力により、上ローラー35が上型9から下型10に向けて突出するよう付勢されている。また、上ローラー35は、ばね44の弾性力に抗して上型9に没入することが可能となっている。従って、上ローラー35は、ばね44を介して上型9に連結された状態となっている。
【0044】
連結バー43、押圧ブロック37、及びばね44は、上下一対の上ローラー35と下ローラー29との各対毎に個別に設けられている。このため、上ローラー35は、各対毎に個別に上型9に対し上下動(出没動作)することが可能となる。型締め時に上型9が下型10に接近すると、上型9の押圧ブロック37が退避ブロック33に当接する。このとき、上ローラー35と下ローラー29とが帯状素材2の厚さに対応する距離、例えば帯状素材2の厚さよりも僅かに長い距離まで接近する。すなわち、押圧ブロック37と退避ブロック33とが当接したとき、上ローラー35と下ローラー29との間の距離が上述した距離となるよう、退避ブロック33並びに下ローラー29及び支持部材30と、押圧ブロック37並びに上ローラー35及び支持部材36との上下方向についての位置関係が定められている。
【0045】
型締め時に上型9が下型10に対し更に接近すると、それに伴い押圧ブロック37が退避ブロック33を押圧する。このときには、押圧ブロック37には退避ブロック33側に向けたばね44の弾性力が作用する一方、退避ブロック33には押圧ブロック37側に向けたばね31,34の付勢力が作用する。上記ばね44の弾性力の合計値は、上記ばね31,34の付勢力の合計値よりも小さくされている。このため、型締め時に上型9の下型10に対する接近に伴い、押圧ブロック37が退避ブロック33を押圧すると、ばね44が縮んで押圧ブロック37及び上ローラー35が上型9に対し没入する方向に変位する。ちなみに、上記ばね44の弾性力の合計値については、ばね44とばね42との合計値が上記ばね31,34の付勢力の合計値より小さくなるようにもされている。
【0046】
上型9には、押圧ブロック37の上型9に対する没入方向への変位を規制するストッパ面45が設けられている。そして、押圧ブロック37に対する上型9に対する没入が進み、押圧ブロック37がストッパ面45に当接することにより、同押圧ブロック37の上型9に対する没入方向への変位が規制される。また、このときにはばね44が最大に縮んだ状態となる。このときには、上ローラー35と下ローラー29とが帯状素材2の厚さに対応する距離まで接近した状態を保持したまま、上ローラー35全体が上型9に対し没入する。すなわち、そうなるように上型9におけるストッパ面45の上下方向についての位置が定められている。
【0047】
なお、図6では、上ローラー35と下ローラー29との各対のうち、成形部12における帯状素材2の送り方向前側(図5の右側)の対を示したが、その対よりも型開き時の上ローラー35と下ローラー29との距離が長い他の対については、上ローラー35の位置が上型9に近くなるよう、ばね44が図6に示すばね44よりも短くされている。このばね44を短くするほど、型開き時の上ローラー35の位置が上型9に近くなり、上ローラー35と下ローラー29との距離が短くなる。
【0048】
次に、順送プレス加工装置1の型締め時における上型9及び下型10の動作態様、詳しくは押圧ブロック37、上ローラー35及び支持部材36、ストリッパプレート41、退避ブロック33、並びに下ローラー29及び支持部材30の動作態様について、図6図10を参照して説明する。
【0049】
図6に示すように型開きされているとき、下型10の下ローラー29に載せられた帯状素材2が製品形成領域4の幅に対応したピッチで長手方向(図6の紙面と直交する方向)に送られる。このとき、帯状素材2を載せた下ローラー29が転動することにより、上述したように送られる帯状素材2に擦り傷がつかないようにされる。
【0050】
その後、型締めに伴い上型9が下型10に接近すると、図7に示すように上型9の押圧ブロック37が退避ブロック33に当接する。このときには、上ローラー35と下ローラー29とが帯状素材2の厚さに対応する距離まで接近する。仮に帯状素材2に反りが生じていたとすると、上述したように上ローラー35と下ローラー29とが接近するとき、上ローラー35が上記反りの生じた帯状素材2に当たることにより、その反りが抑えられる。また、このように上ローラー35が帯状素材2の反りを抑えるときには、上ローラー35と帯状素材2とが当たる際に同上ローラー35が転動することにより、帯状素材2に擦り傷が付かないようにされる。
【0051】
上型9の押圧ブロック37が下型10の退避ブロック33に当たった後、型締めに伴って上型9が下型10に更に接近すると、押圧ブロック37及び上ローラー35がばね44の弾性力に抗して同上ローラー35を上型9に没入させる方向に変位する。このときの変位は、上ローラー35と下ローラー29との距離を帯状素材2の厚さに対応する値に保ったまま行われる。そして、図8に示すように、上型9のストリッパプレート41が、下型10の下ローラー29に載せられた帯状素材2に当接すると、下型10に対する上型9の接近に伴いストリッパプレート41が下型10の下ローラー29との間に帯状素材2を挟んだ状態で、図9に示すようにばね42の弾性力に抗して上型9に没入する。このときには、上ローラー35も上型9に没入した状態となる。
【0052】
上述したようにストリッパプレート41及び上ローラー35が上型9に没入して帯状素材2が上型9に当たり、且つ、ばね44が最大に縮むと、下型10に対する上型9の接近に伴い、押圧ブロック37が下型10の退避ブロック33をばね31,34の付勢力に抗して押圧する。その結果、図10に示すように、下ローラー29を下型10に没入させる方向に退避ブロック33及び下ローラー29が変位し、下ローラー29に載せられているとともに上型9に当たっている帯状素材2が下型10に当たる。そして、その帯状素材2の製品形成領域4に対し、上型9と下型10との間のプレス加工部によるプレス加工、すなわちパイロット穴形成部11、成形部12、打ち抜き部13、及び分断部14によるプレス加工が行われる。
【0053】
その後、型開きされると、図6に示すように、上型9の押圧ブロック37並びに上ローラー35及び支持部材36がばね44の弾性力によって元の位置に戻るとともに、ストリッパプレート41がばね42の弾性力によって元の位置に戻る。一方、下型10では、退避ブロック33並びに下ローラー29及び支持部材30が、ばね31,34の付勢力によって元の位置に戻る。
【0054】
次に、本実施形態における順送プレス加工装置1の作用効果について説明する。
(1)順送プレス加工装置1では、下型10の下ローラー29に載せられた帯状素材2が、型開き毎に製品形成領域4の幅に対応したピッチで長手方向に送られる。このとき、帯状素材2の移動に伴って下ローラー29が転動するため、その移動の際に帯状素材2が擦れることが抑制される。また、帯状素材2の長手方向に並ぶ各製品形成領域4に対しては、型締め毎にパイロット穴形成部11、成形部12、打ち抜き部13、及び分断部14といったプレス加工部によってプレス加工が施される。詳しくは、型締めの際、プレス加工部における上型9側の部分と下型10側の部分とが接近し、帯状素材2における製品形成領域4に対するプレス加工が行われる。こうしたプレス加工が施されるため、帯状素材2における送り方向の前側の部分ほど、上記プレス加工による反り(湾曲)が生じやすくなる。しかし、帯状素材2に反りが生じていたとしても、型締め時に上型9と下型10とが接近するとき、上型9の上ローラー35が上記反りの生じた帯状素材2に当たることにより、その反りが抑えられるようになる。
【0055】
その後、型締めに伴って上ローラー35と下ローラー29とが帯状素材2の厚さに対応した距離まで接近すると、上型9の押圧ブロック37が下型10の退避ブロック33に当たり、上型9が下型10に接近するに従って押圧ブロック37及び上ローラー35がばね44の弾性力に抗して同上ローラー35を上型9に没入させる方向に変位する。このときの変位は、上ローラー35と下ローラー29との距離を帯状素材2の厚さに対応する値に保ったまま行われる。更に、上ローラー35が上型9に没入して帯状素材2が上型9に当たり、且つ、ばね44が最大に縮むと、下型10に対する上型9の接近に伴い、押圧ブロック37が下型10の退避ブロック33をばね31,34の付勢力に抗して押圧する。その結果、下ローラー29を下型10に没入させる方向に退避ブロック33及び下ローラー29が変位し、下ローラー29に載せられているとともに上型9に当たっている帯状素材2が下型10に当たり、その帯状素材2の製品形成領域4に対し、上型9と下型10との間のプレス加工部によるプレス加工が行われる。
【0056】
このように型締めの際には、上ローラー35と下ローラー29とが帯状素材2の厚さに対応した距離まで接近し、その距離を保った状態で上ローラー35及び下ローラー29が上型9及び下型10に没入しつつ、帯状素材2の製品形成領域4に対しプレス加工が行われる。従って、そのプレス加工の前に帯状素材2の反りが解消されるようになり、そうした反りが生じた状態で帯状素材2の製品形成領域4に対しプレス加工が行われることを抑制できるようになる。
【0057】
(2)上ローラー35が転動可能となっているため、プレス加工による反りが生じた帯状素材2に対し、型締め時に上ローラー35が当たって上記反りが抑えられるとき、上ローラー35が転動することによって帯状素材2に擦り傷が付くことを抑制できる。なお、燃料電池用のセパレータ3では、擦り傷が付くことによって製品としての機能に支障を来すおそれがあるため、製造時に擦り傷が付かないようにすることが要求されているが、そうした要求を満たすことができる。
【0058】
(3)型締めの際には、上ローラー35と下ローラー29とが帯状素材2の厚さよりも僅かに長い距離まで接近し、その距離を保った状態で上ローラー35及び下ローラー29が上型9及び下型10に没入しつつ、帯状素材2の製品形成領域4に対しプレス加工が行われる。従って、型締めの際、反り解消のために帯状素材2が上ローラー35と下ローラー29との間に挟まれるとき、帯状素材2が上ローラー35と下ローラー29とによって潰されることはない。このため、帯状素材2に対し、上ローラー35と下ローラー29との挟み込みに伴う圧痕が形成されることを抑制できる。
【0059】
(4)順送プレス加工装置1においては、上下一対の上ローラー35と下ローラー29との各対が帯状素材2の長手方向に定められた間隔をおいて設けられている。このため、プレス加工によって反りの生じた帯状素材2が型締め時に長手方向に沿って上ローラー35及び下ローラー29の各対によって挟み込まれ、そうした挟み込みによって帯状素材2の上記反りが効果的に解消される。
【0060】
(5)帯状素材2は、プレス加工時の反りが送り方向前側の部分ほど大きくなりやすくなる。そうしたことに対応して、上下一対の上ローラー35と下ローラー29との各対のうち、打ち抜き部13における三つの上記対、及び、成形部12の二つの上記対のうちの帯状素材2の送り方向前側(図2の右側)の対が、次のようにされている。すなわち、型開き状態のもとでは、上記対のうち、帯状素材2の送り方向後側(図2の左側)のものほど、上ローラー35と下ローラー29との距離が短くなるようにされている。このため、型締めの過程で、上ローラー35及び下ローラー29の上記各対により、上述したように反りが生じる帯状素材2を徐々に真っ直ぐにすることができる。
【0061】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・型開き時や型締め時における上下一対の上ローラー35と下ローラー29との距離については適宜変更することが可能である。なお、型締め時には上ローラー35と下ローラー29との距離を帯状素材2の厚さに対応した距離としたが、そうした距離としては必ずしも帯状素材2の厚さよりも僅かに長い距離である必要はなく、帯状素材2と等しい距離とすることも可能である。
【0062】
・上下一対の上ローラー35及び下ローラー29の数を適宜変更してもよい。
・抑え部材として上ローラー35に代えて抑え用のプレート等を用いてもよい。
・上ローラー35及び支持部材36を省略し、ストリッパプレート41を抑え部材として機能させるとともに、ばね42を弾性部材として機能させてもよい。
【0063】
この場合、型締め時に上型9と下型10とが接近するとき、帯状素材2に反りが生じていたとしても、上型9のストリッパプレート41が上記反りの生じた帯状素材2に当たることにより、その反りが抑えられるようになる。
【0064】
その後、型締めに伴ってストリッパプレート41と下ローラー29とが帯状素材2の厚さに対応した距離(この場合は上記厚さと等しい距離)まで接近すると、下型10に対する上型9の更なる接近に従ってストリッパプレート41がばね42の弾性力に抗して上型9に没入させる方向に変位する。このときの変位は、ストリッパプレート41と下ローラー29との距離を帯状素材2の厚さに対応する値に保ったまま行われる。
【0065】
更に、ストリッパプレート41が上型9に没入して帯状素材2が上型9に当たると、下型10に対する上型9の接近に伴い、押圧ブロック37が下型10の退避ブロック33をばね31,34の付勢力に抗して押圧する。その結果、下ローラー29を下型10に没入させる方向に退避ブロック33及び下ローラー29が変位し、下ローラー29に載せられているとともに上型9に当たっている帯状素材2が下型10に当たり、その帯状素材2の製品形成領域4に対し、上型9と下型10との間のプレス加工部によるプレス加工が行われる。
【0066】
・順送プレス加工装置1によって製造される板状製品として燃料電池用のセパレータ3を例示したが、それ以外の板状製品を製造することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…順送プレス加工装置
2…帯状素材
3…セパレータ
4…製品形成領域
5~7…穴
8…流路
9…上型
10…下型
11…パイロット穴形成部
12…成形部
13…打ち抜き部
14…分断部
15…パイロット穴
16…パイロット穴用パンチ
17…位置決め部
18…流路成形面
19…バーリング形成部
20…バーリングピン
21…ダイ
22…第1ピン
23~25…流体穴用パンチ
26…第2ピン
27…分断用パンチ
28…ストリッパ
29…下ローラー
30…支持部材
31…ばね
32…連結プレート
33…退避ブロック
34…ばね
35…上ローラー
36…支持部材
37…押圧ブロック
41…ストリッパプレート
42…ばね
43…連結バー
44…ばね
45…ストッパ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10