(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ステップ付の車両
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20230801BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B60R3/00
B60J5/04 Z
(21)【出願番号】P 2020053988
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門田 豪郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 佑斗
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-138944(JP,A)
【文献】特開昭62-020745(JP,A)
【文献】特開2019-085781(JP,A)
【文献】特開2019-073949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平回動させることで車両ボディのドア開口部を開閉するドアと、前記ドア開口部の下側で水平に出し入れ可能なステップ板とを備えるステップ付の車両であって、
前記ドアの回動力を前記ステップ板の出し入れ力に変換する変換装置を備えており、
前記変換装置には、予め決められた角度まで前記ドアが回動したときに、前記ドアを予め決められた角度の位置に保持するドア保持機構が設けられて
おり、
前記変換装置は、前記ドアが閉位置から所定角度まで回動する際に、前記ステップ板を格納位置から突出量が最大になる展開位置まで移動させる駆動状態を構成する部分と、前記ドアが所定角度を超えて回動する際に、前記ステップ板を展開位置に保持する非駆動状態を構成する部分とを備えており、
前記非駆動状態を構成する部分に前記ドア保持機構が設けられており、
前記変換装置は、前記ドアの回動に連動して回動するステップ側リンクと、前記ステップ板に設けられており、前記ステップ側リンクの回動自由端側をガイドするレールとを備えており、
前記駆動状態を構成する部分は、前記レールにおいて前記ステップ側リンクの回動自由端側から車幅方向に押圧力を受ける部分であるステップ付の車両。
【請求項2】
水平回動させることで車両ボディのドア開口部を開閉するドアと、前記ドア開口部の下側で水平に出し入れ可能なステップ板とを備えるステップ付の車両であって、
前記ドアの回動力を前記ステップ板の出し入れ力に変換する変換装置を備えており、
前記変換装置には、予め決められた角度まで前記ドアが回動したときに、前記ドアを予め決められた角度の位置に保持するドア保持機構が設けられており、
前記変換装置は、前記ドアが閉位置から所定角度まで回動する際に、前記ステップ板を格納位置から突出量が最大になる展開位置まで移動させる駆動状態を構成する部分と、前記ドアが所定角度を超えて回動する際に、前記ステップ板を展開位置に保持する非駆動状態を構成する部分とを備えており、
前記非駆動状態を構成する部分に前記ドア保持機構が設けられており、
前記変換装置は、前記ドアの回動に連動して回動するステップ側リンクと、前記ステップ板に設けられており、前記ステップ側リンクの回動自由端側をガイドするレールとを備えており、
前記レールには、前記駆動状態を構成する部分である直線部と、前記非駆動状態を構成する部分で、前記ステップ側リンクの回動自由端側の移動軌跡と重なる円弧部とが連続して設けられており、
前記ステップ側リンクの回動自由端側が円弧運動をしつつ前記レールの直線部に沿って移動することで、前記レールと前記ステップ板とが車幅方向に移動するステップ付の車両。
【請求項3】
請求項2に記載のステップ付の車両であって、
前記ドア保持機構は、前記レールの円弧部の壁面に設けられて、前記ドアが予め決められた角度まで回動したときに、前記ステップ側リンクの回動自由端側のローラが嵌合する嵌合部であるステップ付の車両。
【請求項4】
請求項3に記載のステップ付の車両であって、
前記ステップ側リンクのローラは、前記レールに対して変形し易く構成されており、前記ステップ側リンクが一定以上の回動力で前記ローラと前記レールの嵌合部との嵌合を解除する方向に回動することで、前記ローラが変形し、前記レールの嵌合部との嵌合が解除されるステップ付の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平回動させることで車両ボディのドア開口部を開閉するドアと、前記ドア開口部の下側で水平に出し入れ可能なステップ板とを備えるステップ付の車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のステップ付の車両に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1のステップ付の車両は、
図10に示すように、扇形のステップ板102を備えており、そのステップ板102の扇形の半径に相当する一辺がドア100の下端縁に取付けられている。また、車両ボディ103の床下側には、ステップ板102の扇形の円弧に相当する部分をガイドする円弧形のガイドレール(図示省略)が設けられている。これにより、ドア100を開方向に回動させることで、自動的にステップ板102を車両ボディ103の下から引き出すことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したステップ板102はドア100に取付けられているため、ドア100の回動角度が変化すれば、ステップ板102の引き出し量(突出量)も変化する。即ち、意に反してドア100の回動角度が変化すると、ステップ板102の突出量も意に反して変化する。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ドアの回動角度、及びステップ板の突出量を安定的に保持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、水平回動させることで車両ボディのドア開口部を開閉するドアと、前記ドア開口部の下側で水平に出し入れ可能なステップ板とを備えるステップ付の車両であって、前記ドアの回動力を前記ステップ板の出し入れ力に変換する変換装置を備えており、前記変換装置には、予め決められた角度まで前記ドアが回動したときに、前記ドアを予め決められた角度の位置に保持するドア保持機構が設けられており、前記変換装置は、前記ドアが閉位置から所定角度まで回動する際に、前記ステップ板を格納位置から突出量が最大になる展開位置まで移動させる駆動状態を構成する部分と、前記ドアが所定角度を超えて回動する際に、前記ステップ板を展開位置に保持する非駆動状態を構成する部分とを備えており、前記非駆動状態を構成する部分に前記ドア保持機構が設けられており、前記変換装置は、前記ドアの回動に連動して回動するステップ側リンクと、前記ステップ板に設けられており、前記ステップ側リンクの回動自由端側をガイドするレールとを備えており、前記駆動状態を構成する部分は前記レールにおいて前記ステップ側リンクの回動自由端側から車幅方向に押圧力を受ける部分である。
【0007】
本発明によると、変換装置によりドアを回動させることでステップ板を出し入れすることができる。また、変換装置にはドア保持機構が設けられているため、ドアを予め決められた角度の位置まで回動させると、ドアをその位置に保持できる。これにより、ステップ板の突出量もその状態に保持できる。即ち、ドア、及びステップ板が意に反して動くような不具合がない。
また、変換装置は、ステップ板を展開位置まで移動させる駆動状態を構成する部分と、ドアが所定角度を超えて回動する際に非駆動状態を構成する部分とを備えており、前記非駆動状態を構成する部分に前記ドア保持機構が設けられている。このため、ステップ板を展開位置に安定的に保持できる。
【0008】
第2の発明は、水平回動させることで車両ボディのドア開口部を開閉するドアと、前記ドア開口部の下側で水平に出し入れ可能なステップ板とを備えるステップ付の車両であって、前記ドアの回動力を前記ステップ板の出し入れ力に変換する変換装置を備えており、前記変換装置には、予め決められた角度まで前記ドアが回動したときに、前記ドアを予め決められた角度の位置に保持するドア保持機構が設けられており、前記変換装置は、前記ドアが閉位置から所定角度まで回動する際に、前記ステップ板を格納位置から突出量が最大になる展開位置まで移動させる駆動状態を構成する部分と、前記ドアが所定角度を超えて回動する際に、前記ステップ板を展開位置に保持する非駆動状態を構成する部分とを備えており、 前記非駆動状態を構成する部分に前記ドア保持機構が設けられており、前記変換装置は、前記ドアの回動に連動して回動するステップ側リンクと、前記ステップ板に設けられており、前記ステップ側リンクの回動自由端側をガイドするレールとを備えており、前記レールには、前記駆動状態を構成する部分である直線部と、前記非駆動状態を構成する部分で、前記ステップ側リンクの回動自由端側の移動軌跡と重なる円弧部とが連続して設けられており、前記ステップ側リンクの回動自由端側が円弧運動をしつつ前記レールの直線部に沿って移動することで、前記レールと前記ステップ板とが車幅方向に移動する。
【0010】
第3の発明によると、ドア保持機構は、前記レールの円弧部の壁面に設けられて、前記ドアが予め決められた角度まで回動したときに、前記ステップ側リンクの回動自由端側のローラが嵌合する嵌合部である。即ち、ローラがレールの円弧部の嵌合部と嵌合することで、ステップ側リンクの回動が止められ、ドア、及びステップ板がその位置に保持される。
【0011】
第4の発明によると、ステップ側リンクのローラは、レールに対して変形し易く構成されており、前記ステップ側リンクが一定以上の回動力で前記ローラと前記レールの嵌合部との嵌合を解除する方向に回動することで、前記ローラが変形し、前記レールの嵌合部との嵌合が解除される。このため、一定以上の回動力をドアに加えることで、予め決められた角度の位置に保持されたドアを開閉方向に回動させることができ、展開したステップ板を格納できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ドアの回動角度、及びステップ板の突出量を安定的に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係るステップ付の車両のドア開口部を室内側から見た模式斜視図である。
【
図2】前記車両の床下部を表す縦断面図(
図5のII-II矢視断面図)である。
【
図3】前記車両の床下部を表す縦断面図(
図5のIII-III矢視断面図)である。
【
図4】前記車両の床下部を表す縦断面図(
図5のIV-IV矢視断面図)である。
【
図5】前記ドア、変換装置、及びステップ板を表す全体平面図(ドア閉、ステップ板格納状態)である。
【
図6】前記ドア、変換装置、及びステップ板を表す全体平面図(ドア開途中、ステップ板展開状態)である。
【
図7】前記ドア、変換装置、及びステップ板を表す全体平面図(ドア全開、ステップ板展開状態)である。
【
図8】前記ステップ板に設けられたレールの円弧部の拡大平面図である。
【
図10】従来のステップ付の車両を表す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
以下、
図1~
図9に基づいて本発明の実施形態1に係るステップ付の車両について説明する。本実施形態に係るステップ付の車両は、例えば、車両ボディのフロントドア開口部の位置に可動ステップを備える車両である。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、本実施形態に係るステップ付の車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0015】
<車両ボディ10の概要について>
車両ボディ10の側面には、
図1に示すように、前部座席に対応するフロントドア開口部11と、中央部、及び後部座席に対応するリヤドア開口部(図示省略)とが形成されている。そして、フロントドア開口部11と前記リヤドア開口部の下縁部には、車両前後方向に延びる筒状のフレームであるロッカー30が設けられている。フロントドア開口部11の前側には車室の前側支柱であるフロントピラー12が立設されている。そして、フロントピラー12の側面に上下のドアヒンジ21を介してフロントドア20が水平回動可能な状態で連結されている。即ち、フロントドア20がドアヒンジ21を中心に水平回動することで、車両ボディ10のフロントドア開口部11が開閉される。
【0016】
フロントドア開口部11の下縁部にあるロッカー30は、
図2、
図3等の縦断面図に示すように、車両前後方向に延びる断面略U字形のロッカーインナー31とロッカーアウター32とが車幅方向(左右方向)から合わせられることで筒状に形成されている。また、ロッカー30内には、内部空間を車幅方向に仕切ることでそのロッカー30を補強するリインフォース35が設けられている。また、ロッカーインナー31の上面には、車両ボディ10のフロアパネル14の端縁14fが固定されている。さらに、ロッカーアウター32の下部側面には、
図1、
図3等に示すように、フロントドア開口部11の位置に固定ステップ37が水平に取付けられている。固定ステップ37は、
図3等に示すように、フロントドア20が閉じられた状態で、そのフロントドア20の下端部に設けられたガーニッシュ23に覆われる。また、固定ステップ37の下側には、可動ステップ装置40(後記する)のステップ板43が格納されている。なお、固定ステップ37、及びガーニッシュ23は省略可能である。
【0017】
<可動ステップ装置40の概要について>
可動ステップ装置40は、
図2~
図4に示すように、車両ボディ10の床下部に設けられている。可動ステップ装置40は、フロントドア20を開く際にステップ板43を固定ステップ37の下側から車幅方向外側に突出させ、フロントドア20を閉じる際にステップ板43を固定ステップ37の下側に格納する装置である。可動ステップ装置40は、
図5等に示すように、前記ステップ板43と、ステップ板43を水平に出し入れ可能に支持する四節リンク機構45と、フロントドア20の回動力をステップ板43の出し入れ力に変換する変換装置400とを備えている。ステップ板43は、前後に長い帯板状に形成されており、水平な状態で平面視においてロッカー30と平行に保持されている。
【0018】
<四節リンク機構45について>
四節リンク機構45は、
図4、
図5に示すように、ロッカー30の下面に固定されたリンクブラケット450と、リンクブラケット450に水平回動可能な状態で連結された前支持リンク451と後支持リンク455とから構成されている。前支持リンク451は、
図5に示すように、略L字形に形成されたリンクであり、ステップ板43の前部を下方から支えた状態で、その前支持リンク451の一端がステップ板43の前部中央に第1連結縦ピン451aにより水平回動可能な状態で連結されている。また、前支持リンク451の他端がリンクブラケット450の前部右側に第2連結縦ピン451bにより水平回動可能な状態で連結されている。
【0019】
後支持リンク455は、
図5に示すように、帯板状のリンクであり、ステップ板43の後部を下方から支えた状態で、その後支持リンク455の一端がステップ板43の後部中央に第3連結縦ピン455aにより水平回動可能な状態で連結されている。また、後支持リンク455の他端がリンクブラケット450の後部右側に第4連結縦ピン455bにより水平回動可能な状態で連結されている。そして、前支持リンク451と後支持リンク455とがリンクブラケット450側の第2連結縦ピン451b、第4連結縦ピン455bを中心に回動することで、
図5、
図6に示すように、ステップ板43はロッカー30と平行な状態で水平に円弧運動する。これにより、前記ステップ板43は、固定ステップ37の下側から車幅方向外側に突出し、あるいは固定ステップ37の下側に格納されるようになる。
【0020】
<変換装置400について>
変換装置400は、上記したように、フロントドア20の回動力をステップ板43の出し入れ力に変換する装置である。変換装置400は、
図3、及び
図5に示すように、ロッカーインナー31の下面に固定された装置ブラケット401と、装置ブラケット401に水平回転可能な状態で支持されたドア側歯車403、及びステップ側歯車405とを備えている。ドア側歯車403、及びステップ側歯車405は、共に平歯車であり、互いに噛合している。また、変換装置400は、フロントドア20とドア側歯車403とを連結するドア側リンク410と、ステップ側歯車405と一体で回動するステップ側リンク412と、ステップ側リンク412のローラ412rが係合するステップ板43側のレール415とを備えている。
【0021】
ドア側リンク410は、
図5、
図6に示すように、フロントドア20が開方向に回動する際にドア側歯車403が右回転し、フロントドア20が閉方向に回動する際にドア側歯車403が左回転するように、フロントドア20とドア側歯車403とを連結している。ドア側リンク410は、帯板状のリンクであり、一端側がフロントドア20の回動中心の近傍位置にドア側連結縦ピン410aにより水平回動可能な状態で連結されている。また、ドア側リンク410の他端側がドア側歯車403の回転中心C1から偏心した位置に歯車側連結縦ピン410bにより水平回動可能な状態で連結されている。
【0022】
ドア側リンク410は、
図2に示すように、ドア側歯車403に対して下側から歯車側連結縦ピン410bによって連結されている。そして、ドア側リンク410は、ロッカー30の下方で水平に保持された状態で、ドア側連結縦ピン410aによりフロントドア20の下端に設けられたピン支持部24に連結されている。ここで、ドア側リンク410とフロントドア20、及びドア側歯車403との連結位置は、例えば、フロントドア20のの回動角度が増加する際、ドア側歯車403の回転角度が増加するような位置に設定されている。
【0023】
ドア側歯車403と噛合するステップ側歯車405は、
図5等に示すように、ドア側歯車403と所定のギア比で製作されており、ドア側歯車403が回転することでドア側歯車403と反対方向に所定の角度だけ回転する。ステップ側歯車405の回転中心C2には、ステップ側リンク412の基端部が相対回転不能な状態で連結されている。ステップ側リンク412の基端部は、
図3に示すように、ロッカー30の下方で水平に保持された状態でステップ側歯車405の下面に固定されている。ステップ側リンク412の先端部には、ローラ支持ピン412pが縦向きに連結されていおり、そのローラ支持ピン412pの上端部にローラ412rが同軸に設けられている。そして、前記ローラ412rがステップ板43側のレール415に沿って転動可能な状態で、そのレール415と嵌合している。
【0024】
ステップ板43のレール415は、
図3に示すように、ステップ板43の下面に固定されたブラケット43pに支持されている。レール415は、断面略逆U字形に形成されて、ステップ側リンク412のローラ412rが下方から嵌合可能に構成されている。レール415は、
図5等に示すように、ステップ板43と平行に前後方向に延びる直線部415sと、直線部415sの前側に連続して設けられた円弧部415eとを備えている。レール415の円弧部415eは、
図6、
図7に示すように、ステップ側歯車405の回転中心C2を中心に回動するステップ側リンク412のローラ412rの移動軌跡と重なるように構成されている。そして、フロントドア20が閉じている状態では、
図5に示すように、ステップ側リンク412は斜め後方に延びた位置にあり、ローラ412rはレール415の直線部415sの後端位置に保持されている。
【0025】
レール415の円弧部415eの縦壁部には、
図8、
図9に示すように、ステップ側リンク412のローラ412rが嵌合する複数の凹部415zが形成されている。凹部415zは、レール415の円弧部415eの後端部と、円弧部415eの後端寄りの途中位置と、前記円弧部415eの前端部とに形成されている。レール415の凹部415zは、
図9に示すように、内側に凸となる一対の縦ビード415yの間に形成されている。ここで、レール415は、例えば、鋼板により形成されており、ローラ412rは、例えば、可撓性の樹脂等で形成されている。
【0026】
ステップ側リンク412のローラ412rがレール415の凹部415zに嵌合した状態では、ステップ側リンク412の回転中心C2を中心とする回動が止められる。しかし、ステップ側リンク412が一定以上の回動力でローラ412rとレール415の凹部415zとの嵌合を解除する方向に回動すると、ローラ412rが弾性変形し、ローラ412rとレール415の凹部415zとの嵌合が解除される。なお、
図8、
図9では、説明のために、縦ビード415yを誇張して大きく記載している。
【0027】
<可動ステップ装置40の動作について>
フロントドア20が閉じている状態では、
図3、
図5に示すように、ステップ板43は、固定ステップ37の下側の格納位置にある。また、ステップ板43にブラケット43pを介して取付けられたレール415は、
図3に示すように、ロッカー30の下側に格納されている。そして、上記したように、ステップ側リンク412は斜め後方に延びた位置にあり(
図5参照)、ステップ側リンク412の先端のローラ412rはレール415の直線部415sの後端位置に保持されている。
【0028】
この状態で、フロントドア20が開方向に回動(
図5において左回動)すると、ドア側リンク410がフロントドア20に引っ張られることで、ドア側歯車403が、
図5において右回転する。これにより、ドア側歯車403と噛合しているステップ側歯車405が所定角度だけ左回転する。この結果、ステップ側リンク412がステップ側歯車405と共に回転中心C2を中心に左回動する。これにより、ステップ側リンク412の先端のローラ412rは、ステップ板43に設けられたレール415の直線部415sの後端位置からそのレール415の直線部415sに沿って前方に転動する。
【0029】
即ち、ステップ側リンク412の回動自由端側で回転中心C2を中心に円弧運動をするローラ412rがレール415の直線部415sに沿って前方に転動するため、レール415の直線部415sはローラ412rから直角方向(右方向)の押圧力を受ける。この結果、レール415を介してステップ板43が右方向(車幅方向外側)に押され、レール415、及びステップ板43は、
図6に示すように、四節リンク機構45の働きでロッカー30と平行な状態で水平に円弧運動し、固定ステップ37の下側から突出する。そして、
図6に示すように、ステップ側リンク412の左回動により、そのステップ側リンク412の先端のローラ412rがレール415の直線部415sの前端位置(円弧部415eの後端位置)まで到達した段階で、ステップ板43の突出量が最大になる。即ち、ステップ板43が展開位置まで移動する。
【0030】
ここで、ステップ板43の突出量が最大になるときのフロントドア20の回動角度は、
図6に示すように、θであり、例えば、フロントドア20の半開角度よりも小さな値に設定されている。そして、ステップ側リンク412の先端のローラ412rがレール415の円弧部415eの後端位置まで到達した段階で、
図8に示すように、ローラ412rがレール415の凹部415zと嵌合する。これにより、ステップ側リンク412の回動が止められる。このため、フロントドア20から手を放しても、ローラ412rとレール415の凹部415zとの嵌合力で、フロントドア20は回動角度θの位置に保持される。また、フロントドア20が回動角度θの位置に保持されることで、ステップ板43が展開位置に保持される。
【0031】
フロントドア20に対してローラ412rとレール415の凹部415zとの嵌合力以上の力を開方向に加えると、ドア側リンク410、ドア側歯車403、及びステップ側歯車405の働きでステップ側リンク412がさらに左回動する。即ち、ステップ側リンク412のローラ412rが弾性変形することで、そのローラ412rとレール415の凹部415zとの嵌合が解除される。そして、ステップ側リンク412の先端のローラ412rがレール415の円弧部415eに沿って前方に転動する。ここで、レール415の円弧部415eは、ステップ側リンク412のローラ412rの移動軌跡と重なるように構成されている。このため、ステップ側リンク412のローラ412rがレール415の円弧部415eに沿って前方に転動することで、ステップ板43の突出量は最大の状態に保持される。そして、フロントドア20が、例えば、半開角度まで回動した段階で、
図8の点線、及び
図9に示すように、ステップ側リンク412のローラ412rがレール415の円弧部415eの途中位置にある凹部415zと嵌合する。
【0032】
このため、フロントドア20から手を放しても、ローラ412rとレール415の凹部415zとの嵌合力で、フロントドア20は半開位置に保持される。また、ステップ板43も引き続き展開位置に保持される。フロントドア20に対してさらに力を開方向に加えると、ローラ412rの弾性変形により、そのローラ412rとレール415の凹部415zとの嵌合が解除され、ステップ側リンク412が左回動する。そして、フロントドア20が全開位置まで回動することで、
図7に示すように、ステップ側リンク412が左回動限位置まで回動し、ステップ側リンク412のローラ412rがレール415の円弧部415eの前端位置に到達する。これにより、
図8の二点鎖線に示すように、ステップ側リンク412のローラ412rがレール415の円弧部415eの前端位置にある凹部415zと嵌合するようになる。
【0033】
フロントドア20を全開位置から閉方向に回動(右回動)させると、ドア側リンク410がフロントドア20に押されてドア側歯車403を左回転させる。これにより、ステップ側歯車405が右回転してステップ側リンク412が右回動する。この結果、ステップ側リンク412のローラ412rとレール415の凹部415zとの嵌合が解除され、ローラ412rがレール415の円弧部415eに沿って後方に転動する。そして、ステップ側リンク412のローラ412rがレール415の直線部415sに沿って後方に転動することで、レール415の直線部415sは左方向(車幅方向内側)に引っ張り力を受ける。これにより、ステップ板43が固定ステップ37の下側に格納される。
【0034】
<本実施形態で使用した用語と本発明に係る用語との対応について>
前記フロントドア20が本発明のドアに相当し、フロントドア開口部11が本発明のドア開口部に相当する。また、ステップ板43に設けられたレール415の円弧部415eの凹部415z、及びステップ側リンク412のローラ412rが本発明のドア保持機構に相当する。また、円弧部415eの凹部415zが本発明の嵌合部に相当する。さらに、変換装置400を構成するレール415の直線部415sが本発明の変換装置における駆動状態を構成する部分に相当し、レール415の円弧部415eが本発明の変換装置における非駆動状態を構成する部分に相当する。また、フロントドア20の回動角度θの位置、半開位置、全開位置が本発明のドアの予め決められた角度の位置に相当し、フロントドア20の回動角度θが本発明のドアの所定角度に相当する。
【0035】
<本実施形態に係る可動ステップ装置40の長所について>
本実施形態に係る可動ステップ装置40によると、変換装置400によりフロントドア20を回動させることでステップ板43を出し入れすることができる。また、変換装置400にはドア保持機構(レール415の凹部415z)が設けられているため、フロントドア20を回動角度θ等の位置(予め決められた角度の位置)まで回動させると、フロントドア20をその位置に保持できる。これにより、ステップ板43の突出量もその状態に保持できる。即ち、フロントドア20、及びステップ板43が意に反して動くような不具合がない。また、ステップ側リンク412のローラ412rは、レール415に対して変形し易く構成されており、ステップ側リンク412が一定以上の回動力でローラ412rとレール415の凹部415zとの嵌合を解除する方向に回動することで、ローラ412rが変形し、レール415の凹部415zとの嵌合が解除される。
【0036】
[変更例]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態に係る可動ステップ装置40では、レール415の円弧部415eに一対の縦ビード415yを形成することで、ローラ412rと嵌合する凹部415zを設ける例を示した。しかし、レール415の円弧部415eの壁面に、例えば、半球状の複数の突起を形成することで凹部を設けることも可能である。また、レール415の円弧部415eの壁面から内側に突出する板バネ状の部材により、ローラ412rと嵌合する凹部を形成する構成でも可能である。また、本実施形態では、変換装置400の歯車を互いに噛合するドア側歯車403とステップ側歯車405とから構成する例を示した。しかし、ドア側歯車403とステップ側歯車405間に中間歯車を設けて三連歯車とすることも可能である。これにより、ステップ側歯車405の回転方向を逆方向にできる。また、本実施形態では、車両ボディ10のフロントドア開口部11に可動ステップ装置40を設け、フロントドア20を開閉する力でステップ板43を出し入れする例を示した。しかし、車両ボディ10のリヤドア開口部に可動ステップ装置40を設け、リヤドアを開閉する力でステップ板43を出し入れする構成でも可能である。
【符号の説明】
【0037】
10・・・・車両ボディ
11・・・・フロントドア開口部(ドア開口部)
20・・・・フロントドア(ドア)
43・・・・ステップ板
400・・・変換装置
412・・・ステップ側リンク
412r・・ローラ(ドア保持機構)
415・・・レール
415e・・円弧部(非駆動状態を構成する部分)
415z・・凹部(ドア保持機構、嵌合部)
415s・・直線部(駆動状態を構成する部分)
θ・・・・・回動角度(所定角度、予め決められた角度)