(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル用巻き取りボビン
(51)【国際特許分類】
B65H 75/14 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B65H75/14
(21)【出願番号】P 2020552597
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2019041756
(87)【国際公開番号】W WO2020085443
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018200828
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】武田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】江川 晋爾
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開実用新案第20-2014-0003937(KR,U)
【文献】特開2004-338838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルが巻き付けられる胴体部材と、該胴体部材の両端にそれぞれ設けられる一対の鍔部材とを備えた光ファイバケーブル用巻き取りボビンであって、
前記鍔部材が、ABS樹脂からなり、
前記胴体部材が、前記鍔部材より線膨張係数の小さい
、タルクを含むABS樹脂からなる光ファイバケーブル用巻き取りボビン。
【請求項2】
前記胴体部材の線膨張係数が、100[×10
-6/℃]より小さい請求項1に記載の光ファイバケーブル用巻き取りボビン。
【請求項3】
前記胴体部材の表面に保護シートが巻かれている請求項1
または請求項2に記載の光ファイバケーブル用巻き取りボビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボビンに関する。
本出願は、2018年10月25日出願の日本出願第2018-200828号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバケーブル等を巻き取るために使用するボビンとして、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂を使用して射出成形されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、温度変化の激しい環境下でも使用できるボビンとして、ガラスフィラーを添加したポリアミド系樹脂からなるボビンが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平5-8505号公報
【文献】特開2005-84236号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る光ファイバケーブル用巻き取りボビンは、光ファイバケーブルが巻き付けられる胴体部材と、該胴体部材の両端にそれぞれ設けられる一対の鍔部材とを備えた光ファイバケーブル用巻き取りボビンであって、前記鍔部材が、ABS樹脂からなり、前記胴体部材が、前記鍔部材より線膨張係数の小さい、タルクを含むABS樹脂からなる。
なお、ここでいう「光ファイバケーブル」とは、ケーブルコアに外被を被せた通常のケーブル形態のほか、光ファイバテープ心線、光ファイバテープ心線を撚り合わせた光ユニットも含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の実施形態である光ファイバケーブル用巻き取りボビンの斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態である光ファイバケーブル用巻き取りボビンの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
上記特許文献1のボビンでは、合成樹脂の中でも比較的線膨張係数が高いABS樹脂を使用しているため、強度はあるものの、光ファイバケーブルを巻き取った状態でボビンを温度変化の激しい環境下で保存しておくと、ボビンの収縮によって、光ファイバケーブルが巻き崩れを起こしてしまう恐れがある。
【0008】
一方、上記特許文献2のボビンは、胴部も鍔部もガラスフィラーを添加したポリアミド系樹脂で形成されており、ポリアミド系樹脂から毛羽立ったガラスフィラーが光ファイバケーブルを傷つけてしまう恐れがある。
また、一般的な樹脂にガラスフィラーを添加する必要があるため、コストもかかる。
【0009】
本開示は、このような実情に鑑みてなされたものであり、低コストで、温度変化による光ファイバケーブルの巻き崩れ防止と光ファイバケーブルの損傷防止とを両立させた光ファイバケーブル用巻き取りボビンを提供することをその目的とする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示によれば、低コストで、温度変化による光ファイバケーブルの巻き崩れ防止と、光ファイバケーブルの損傷防止とを両立させることができる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様の内容を列記して説明する。
本開示の一態様に係る光ファイバケーブル用巻き取りボビンは、(1)光ファイバケーブルが巻き付けられる胴体部材と、該胴体部材の両端にそれぞれ設けられる一対の鍔部材とを備えた光ファイバケーブル用巻き取りボビンであって、前記鍔部材が、ABS樹脂からなり、前記胴体部材が、前記鍔部材より線膨張係数の小さい、タルクを含むABS樹脂からなる。
これにより、温度変化に対する胴体部材の収縮が抑制されていると共に鍔部材にガラス繊維などの光ファイバケーブルに使用される材料(ガラス)と同程度の硬度を有する材料が含有されていないため、低コストで、温度変化による光ファイバケーブルの巻き崩れ防止と、光ファイバケーブルの損傷防止とを両立させることができる。
また、胴体部材のみ、タルクを含んだABS樹脂で構成されることにより、線膨張係数が低くなるため、温度変化による光ファイバケーブルの巻き崩れを防止することができる。
【0012】
(2)上記の光ファイバケーブル用巻き取りボビンにおいて、前記胴体部材の線膨張係数が、100[×10-6/℃]より小さい。
これにより、より確実に温度変化による光ファイバケーブルの巻き崩れを防止することができる。
【0015】
(3)上記のケーブル用巻き取りボビンにおいて、前記胴体部材の表面に保護シートが巻かれている。
これにより、胴体部材の表面においてガラス繊維が毛羽立っていたとしても、この毛羽立ったガラス繊維が光ファイバケーブルと当接することがないため、光ファイバケーブルがガラス繊維によって削られる恐れを抑制することができる。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光ファイバケーブル用巻き取りボビンの具体例を
図1乃至
図3を参照しつつ説明する。
図1は本開示の実施形態である光ファイバケーブル用巻き取りボビンの斜視図であり、
図2は本開示の実施形態である光ファイバケーブル用巻き取りボビンの分解斜視図であり、
図3は
図1に示すIII-III断面図である。
なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内ですべての変更が含まれることを意図する。
【0017】
図1乃至
図3に示すように、本開示の実施形態である光ファイバケーブル用巻き取りボビン100は、円筒状の胴体部材110と、この胴体部材110の両端にそれぞれ設けられる一対の円盤状の鍔部材120と、胴体部材110に巻き付けられ光ファイバと胴体部材110との接触を防止する保護シート130とを備えている。
【0018】
胴体部材110には、保護シート130を介して光ファイバケーブルが巻き付けられている。
また、この胴体部材110は、ガラス繊維を含むABS樹脂で形成されている。
このガラス繊維を含むABS樹脂の線膨張係数は、ガラス繊維を含まないABS樹脂の線膨張係数(100[×10-6/℃])よりも小さく、例えば、40[×10-6/℃]である。
【0019】
そして、胴体部材110の長手方向の両端面には、例えば、ネジ孔111が4つずつ形成されている。
【0020】
鍔部材120は、胴体部材110に巻き付けられた光ファイバケーブルが脱落することを防ぐために、胴体部材110の両端にそれぞれ設けられる一対の部材である。
また、この鍔部材120は、胴体部材110よりも線膨張係数が大きいABS樹脂で形成されている(換言すると、胴体部材110は、鍔部材120よりも線膨張係数が小さい部材で形成されている)。
【0021】
そして、鍔部材120には、例えば、厚み方向に貫通する貫通孔121が4つ形成されている。
この貫通孔121の中心は、胴体部材110のネジ孔111の中心と一致している。
これにより、胴体部材110と鍔部材120とはボルトBで固定される。
【0022】
保護シート130の幅は、胴体部材110の幅方向(鍔部材120の間)の長さとほぼ等しくなっている。
また、この保護シート130は、例えば、EMMA(エチレン-メチルメタクリレート共重合体)樹脂で形成されている。
【0023】
光ファイバケーブル用巻き取りボビン100が保護シート130を備えていることにより、光ファイバを光ファイバケーブル用巻き取りボビン100に巻き付ける際、光ファイバケーブルと胴体部材110との間に保護シート130が介在することになる。
これにより、胴体部材110の表面においてガラス繊維が毛羽立っていたとしても、この毛羽立ったガラス繊維が光ファイバケーブルと当接することがないため、光ファイバケーブルがガラス繊維によって削られる恐れが抑制されている。
【0024】
ここで、光ファイバケーブル用巻き取りボビンには、一般に、設備稼働時や輸送時の振動で破損しないことと、外気温の変化(特に低温収縮)時に収縮しないこと等が求められている。
すなわち、設備稼働時や輸送時の振動で破損しないためには鍔部材の強度が必要であり、外気温の変化(特に低温収縮)時に収縮しないためには胴体部材の線膨張係数の低さが必要とされている。
そこで、本開示の実施形態である光ファイバケーブル用巻き取りボビン100のように、胴体部材110と鍔部材120とを異なった部材で形成し、鍔部材をABS樹脂、胴体部材を鍔部材より線膨張係数の小さい材料(ガラス繊維を含むABS樹脂)とすることにより、上記の2つの要求を満たすことができる。
【0025】
[変形例]
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上記に限定されるものではない。
【0026】
例えば、胴体部材110の材質はガラス繊維を含むABS樹脂に限定されるものではなく、鍔部材120の線膨張係数(100[×10-6/℃])よりも線膨張係数が小さい材料であれば、如何なるものであってもよく、例えば、タルクを含むABS樹脂(線膨張係数:70[×10-6/℃])であってもよい。
【0027】
例えば、保護シート130の材質は、EMMA樹脂以外であってもよい。
【0028】
また、前述した実施形態が備える各要素は技術的に可能である限り組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本開示の特徴を含む限り本開示の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0029】
100 … 光ファイバケーブル用巻き取りボビン
110 … 胴体部材
111 … ネジ孔
120 … 鍔部材
121 … 貫通孔
130 … 保護シート
B … ボルト