(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】ダブルデッキエレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 1/14 20060101AFI20230801BHJP
B66B 1/40 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B66B1/14 D
B66B1/40 B
(21)【出願番号】P 2022094757
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【氏名又は名称】森 優
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【氏名又は名称】浅野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】服部 丈仁
(72)【発明者】
【氏名】山岡 俊平
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190220(JP,A)
【文献】特開2019-116337(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318734(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外かご枠を昇降路内で目標停止位置まで昇降させ、前記外かご枠内に上下方向に設けられた上かごと下かごをそれぞれの目的階に着床させるダブルデッキエレベータであって、
前記上かごが目的階に着床したことを検出する上かご検出手段と、
前記下かごが目的階に着床したことを検出する下かご検出手段と、
データ取得運転の際に、前記上かご検出手段と前記下かご検出手段の両方が同時に着床を検出
した位置を前記目標停止位置に設定する目標停止位置設定手段と、
を有し、
前記目標
停止位置設定手段によって設定された目標停止位置まで前記外かご枠を昇降させることを特徴とするダブルデッキエレベータ。
【請求項2】
前記上かご検出手段は、前記上かごに設けられた第1近接センサと、前記上かごの目的階毎に設置され、前記第1近接センサによって検出される複数の第1被検出体とを含み、
前記下かご検出手段は、前記下かごに設けられた第2近接センサと、前記下かごの目的階毎に設置され、前記第2近接センサによって検出される複数の第2被検出体とを含み、
前記上かごと前記下かごの上下方向におけるかご間隔を上下二つの目的階の階高に調整するかご間隔調整手段と、
前記かご間隔調整手段によって前記外かご枠内を上下に変位する前記上かごと前記下かごの前記外かご枠に対する上下方向の絶対位置を検出する絶対位置検出手段と、
前記外かご枠の昇降中に、前記第1
近接センサと前記第2
近接センサのいずれかが前記第1被検出体と前記第2被検出体のいずれかを検出することで、前記上かごまたは前記下かごの昇降路内における上下方向の昇降位置が特定されると、当該特定された昇降位置と、特定されたかごの特定された時点における前記絶対位置検出手段によって検出された前記絶対位置とから、前記外かご枠の昇降位置を特定する外かご枠昇降位置特定手段と、
を有し、
前記外かご枠昇降位置特定手段によって特定される前記外かご枠の昇降位置を参照して、当該外かご枠の昇降制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のダブルデッキエレベータ。
【請求項3】
前記かご間隔調整手段は、前記上かごと前記下かごがそれぞれ着床されている目的階から、次の各目的階へ向け前記外かご枠が昇降中に前記かご間隔を調整することを特徴とする請求項2に記載のダブルデッキエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルデッキエレベータに関し、特に、外かご枠内に上かごと下かごとが設けられてなるダブルデッキエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
昇降路内を昇降する外かご枠内に設置された上かごと下かごとで2階建て構成とされるダブルデッキエレベータは、単一のかごで構成されるエレベータと比較して、輸送力で優れる。また、同等の輸送力を得るための設置スペースが少なくて済む。このため、大規模高層建物への導入が進められている。
【0003】
前記外かご枠はカウンタウエイトと主ロープで連結されており、当該主ロープは、昇降路上部の機械室に設置された巻上機の綱車に掛けられている。そして、前記巻上機を構成する巻上機モータを駆動して、前記綱車を回転させることにより、外かご枠、ひいては
上・下かごの各々が昇降路内を昇降する。
【0004】
上記昇降の制御において、上・下かご各々の目的階に対応する目標停止位置まで外かご枠を昇降させるために、例えば、近接センサの一種であるフォトセンサと、フォトセンサの検出対象として、複数の遮光板とが用いられる(特許文献1)。フォトセンサは、外かご枠に取り付けられている。一方、複数の遮光板の各々は、前記目標停止位置の各々に対応させて、昇降路内にそれぞれ設置されている。
【0005】
通常運転の際には、上記巻上機モータを制御して外かご枠を昇降させ、最終的に上記近接センサが一の目標停止位置に対応した遮光板を検出した位置で停止させることで、上・下かご各々を目的階に停止させるようになっている。
【0006】
また、上かごと下かごの各々が対応する目的階に正確に着床したか否かを検出するため、上かごと下かごのそれぞれにフォトセンサが、昇降路内の目的階の各々に対応する位置には遮光板が設置されている。
【0007】
そして、外かごが上記目標停止位置まで昇降され停止された後、上かごおよび下かごに設けられた上記フォトセンサが目的階の遮光板を検出していることが確認されて初めて、かごドアが開閉されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6658240号公報
【文献】国際公開第2012/131755号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、外かご枠の昇降制御に用いられる遮光板は、上記した通り、外かご枠の目標停止位置毎に設けられているため、その取付けに多くの時間を要し、ダブルデッキエレベータの設置工数に影響を及ぼしている。
【0010】
本発明は、上記した課題に鑑み、設置工数を短縮し得るダブルデッキエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明に係るダブルデッキエレベータは、外かご枠を昇降路内で目標停止位置まで昇降させ、前記外かご枠内に上下方向に設けられた上かごと下かごをそれぞれの目的階に着床させるダブルデッキエレベータであって、前記上かごが目的階に着床したことを検出する上かご検出手段と、前記下かごが目的階に着床したことを検出する下かご検出手段と、データ取得運転の際に、前記上かご検出手段と前記下かご検出手段の両方が同時に着床を検出した位置を前記目標停止位置に設定する目標停止位置設定手段と、を有し、前記目標停止位置設定手段によって設定された目標停止位置まで前記外かご枠を昇降させることを特徴とする。
【0012】
また、前記上かご検出手段は、前記上かごに設けられた第1近接センサと、前記上かごの目的階毎に設置され、前記第1近接センサによって検出される複数の第1被検出体とを含み、前記下かご検出手段は、前記下かごに設けられた第2近接センサと、前記下かごの目的階毎に設置され、前記第2近接センサによって検出される複数の第2被検出体とを含み、前記上かごと前記下かごの上下方向におけるかご間隔を上下二つの目的階の階高に調整するかご間隔調整手段と、前記かご間隔調整手段によって前記外かご枠内を上下に変位する前記上かごと前記下かごの前記外かご枠に対する上下方向の絶対位置を検出する絶対位置検出手段と、前記外かご枠の昇降中に、前記第1近接センサと前記第2近接センサのいずれかが前記第1被検出体と前記第2被検出体のいずれかを検出することで、前記上かごまたは前記下かごの昇降路内における上下方向の昇降位置が特定されると、当該特定された昇降位置と、特定されたかごの特定された時点における前記絶対位置検出手段によって検出された前記絶対位置とから、前記外かご枠の昇降位置を特定する外かご枠昇降位置特定手段と、を有し、前記外かご枠昇降位置特定手段によって特定される前記外かご枠の昇降位置を参照して、当該外かご枠の昇降制御を行うことを特徴とする。
【0013】
さらに、前記かご間隔調整手段は、前記上かごと前記下かごがそれぞれ着床されている目的階から、次の各目的階へ向け前記外かご枠が昇降中に前記かご間隔を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記の構成を有する本発明に係るダブルデッキエレベータによれば、上かご検出手段と下かご検出手段が利用されて、外かご枠の目標停止位置が設定される。これにより、特許文献1に記載されたダブルデッキエレベータが備える、外かご枠に設けられたフォトセンサはもとより、当該フォトセンサによって検出される複数の遮光板は不要となる。その結果、当該複数の遮光板の設置工事が削減される分、ダブルデッキエレベータの設置工数を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るダブルデッキエレベータの概略構成を示す図である。
【
図2】上記ダブルデッキエレベータに設けられた上かご検出手段、および下かご検出手段を構成するフォトセンサと遮光板の概略構成を示す、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【
図3】巻上機および巻上機等を制御する主制御装置、並びに、移動ユニットおよび移動ユニット等を制御する副制御装置を示したブロック図である。
【
図4】(a)は、昇降テーブルを示す図であり、(b)は、かご間隔情報テーブルを示す図である。
【
図5】(a)は、下かごが最下階に着床している状態を示す図であり、(b)は、目標停止位置に向かって昇降中の外かご枠を示す図である。
【
図6】その他の実施形態に係るダブルデッキエレベータの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るダブルデッキエレベータの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
〔全体構成〕
図1に、実施形態に係るダブルデッキエレベータ10の概略構成を示す。ダブルデッキエレベータ10は、上梁12A、下梁12B、および上梁12Aと下梁12Bとを連結する2つの立枠12C,12Dを含み、正面視で、縦方向に(上下方向に)長い略長方形をした外かご枠12を有する。
【0017】
外かご枠12内側には、上かご14と下かご16とが上下方向に並んで設けられている。
【0018】
外かご枠12には、従動シーブ18が取り付けられており、上かご14よりも上方で従動シーブ18に掛けられて折り返されたワイヤロープ20の一端部が上かご14に連結され、他端部が下かご16に連結されている。これにより、従動シーブ18に掛けられたワイヤロープ20の一端側で上かご14が吊り下げられ、他端側で下かご16が吊り下げられた構成となっている。従動シーブ18は、後述するように、下かご16の上下移動に伴って走行するワイヤロープ20に従動して回転するシーブである。なお、上かご14と下かご16とは、上梁12Aと下梁12Bとの間に設置された、一対のガイドレール(不図示)によって、上下方向に移動自在に案内されている。
【0019】
外かご枠12における下かご16の下方には、下かご16を上下方向に移動させるための移動ユニット22が取り付けられている。移動ユニット22は、上下に変位するアクチュエータ24Aを有するねじ式ジャッキ24(以下、単に「ジャッキ24」と言う。)とジャッキ24を駆動するモータ26とを有し、前記アクチュエータ24Aの上端部が下かご16の下端部に連結されている。
【0020】
モータ26には、その出力軸の回転角を検出するロータリエンコーダ27(
図3)が設けられており、ロータリエンコーダ27からの出力結果に基づいて、前記出力軸の回転角(回転回数)を制御することにより、アクチュエータ24Aの上下方向の変位量の制御が可能となっている。
【0021】
ジャッキ24を駆動して、下かご16を上方へ移動させると、従動シーブ18に掛けられたワイヤロープ20で下かご16と連結された上かご14は、その自重により、下かご16の移動距離と同じ距離分下方へ移動する。これにより、上かご14と下かご16の上下方向における間隔(以下、「かご間隔」と言う。)を短くすることができる。
【0022】
一方、ジャッキ24を駆動して、下かご16を下方へ移動させると、上かご14は、引き上げられるため、かご間隔を長くすることができる。
【0023】
このように、移動ユニット22は、下かご16を上下方向に移動させることにより、かご間隔を調整するかご間隔調整手段として機能する。
【0024】
ここで、かご間隔とは、下かご16の床面16Aと上かご14の床面14Aとの間の上下方向における距離(D)を言う。本例において、調整されるべきかご間隔Dは、例えば、D1、D2、D3、D4の4通りとする。すなわち、ダブルデッキエレベータ10が設置される建築物において、下かご14と上かご16とが同時に着床される二つの階の間の階高は4通り存在することとする。
【0025】
かご間隔Dを正確に調整するため、本実施形態では、上かご14と下かご16の、外かご枠12に対する上下方向の絶対位置を検出する絶対位置検出手段を有している。
【0026】
この絶対位置検出手段として、ダブルデッキエレベータ10は、アブソリュートタイプの磁気式リニアスケール28(以下、「磁気スケール28」と言う。)を備えている。
【0027】
磁気スケール28は、一端部から他端部に至る間の絶対位置(距離)情報を、例えば、0.5mmの分解能で、磁気パターン(磁気目盛り)として記録した記録テープである磁気テープ30と磁気テープ30から前記磁気目盛りを読み取る2台の読取ユニット32,34とを含む。この磁気スケール28には、例えば、エルゴエレクトロニク株式会社製の「アブソリュート磁気スケール LIMAXシリーズ」など、公知のものを用いることができる。
【0028】
磁気テープ30は、外かご枠12に、長さ方向が上下方向となるように取り付けられている。本例では、上梁12Aと下梁12Bとの間に、張架されている。
【0029】
本例において、磁気テープ30は、目盛りが下から上に目盛られた状態となる向き(すなわち、上側程、目盛りの値が大きくなる向き)に取り付けられている。また、本例では、下梁12Bの位置が「0」目盛りになるよう取付けられている。なお、磁気テープ30を外かご枠12に取り付ける向きは、この逆であっても構わない。
【0030】
読取ユニット32は上かご14に固定され、もう一方の読取ユニット34は下かご16に固定されている。なお、読取ユニット32,34各々の上かご14、下かご16に対する上下方向における固定位置は任意である。読取ユニット32,34各々の上かご14、下かご16に対する固定位置は、上かご14と下かご16が移動ユニット22によって上下に移動される際、読取ユニット32,34各々が、磁気テープ30に沿って移動でき、磁気テープ30に記録された磁気目盛りを読み取ることができるような位置であれば構わない。
【0031】
上記のようにして設けられた磁気スケール28において、読取ユニット32で読み取られる磁気目盛りの値が、読取時における上かご14の外かご枠12に対する上下方向の絶対位置を指標し、読取ユニット34で読み取られる磁気目盛りの値が、読取時における下かご16の外かご枠12に対する上下方向の絶対位置を指標する。すなわち、磁気スケール28によって、上かご14と下かご16の外かご枠12に対する上下方向の絶対位置を検出することができる。
【0032】
また、読取ユニット32と読取ユニット34が読み取った磁気目盛りの値(以下、「目盛値」と言う。)の差分(以下、「目盛差」と言う。)は、かご間隔Dと一対一で対応するため、かご間隔Dを指標する。
図1に示すように、上かご14と下かご16各々の床面14A,16Aから同じ高さに読取ユニット32,34がそれぞれ固定されている場合、前記目盛差は、かご間隔Dと等しくなる。読取ユニット32,34が読み取る目盛値が参照されて、後述するようにかご間隔Dが目的階の階高に調整される。
【0033】
上記のように、上かご14、下かご16等が設けられた外かご枠12が昇降する昇降路36上部には、機械室38が設けられており、機械室38には、巻上機40が設置されている。巻上機40は、巻上機モータ40A(
図3)、巻上機モータ40Aの出力軸(不図示)に設けられた綱車40B、および前記出力軸と同軸上に設けられたロータリエンコーダ40C等を含む。
【0034】
巻上機40に隣接して、そらせ車42が設置されており、巻上機40の綱車40Bとそらせ車42には、主ロープ44が掛けられている。
【0035】
主ロープ44の一端部には外かご枠12が連結されており、他端部にはカウンタウエイト46が連結されている。
【0036】
上記の構成において、巻上機モータ40A(
図3)を駆動源として、綱車40Bが回転されると、外かご枠12、ひいては上かご14および下かご16とカウンタウエイト46とは、昇降路36内を互いに反対向きに昇降する。
【0037】
昇降後に、上かご14が目的階に着床したか否かを検出する上かご検出手段50と、下かご16が目的階に着床したか否かを検出する下かご検出手段52とが設けられている。
【0038】
上かご検出手段50は、上かご14に固定された一対のフォトセンサ54A、55Aと昇降路36の側壁36Aに固定された、フォトセンサ54A、55Aによって検出される被検出体である遮光板56Aを含む。
【0039】
下かご検出手段52は、下かご16に固定された一対のフォトセンサ54B、55Bと昇降路36の側壁36Aに固定された、フォトセンサ54B、55Bによって検出される被検出体である遮光板56Bを含む。
【0040】
フォトセンサ54A、54Bの各々およびフォトセンサ55A、55Bの各々は、いずれも基本的に同じ構成なので、これらを区別する必要のない場合は、アルファベットの添え字(A、B)を省略して説明する。また、遮光板56A、56Bについても同様とする。
【0041】
図2(a)にフォトセンサ54と遮光板56の平面図を、
図2(b)にフォトセンサ54、55と遮光板56の側面図をそれぞれ示す。
【0042】
フォトセンサ54は、
図2(a)に示すように、発光素子542と受光素子544とが対向して設けられてなる透過型のフォトセンサであり、発光素子542と受光素子544の対向領域に相対的に進入する遮光板56を検出する構成となっている。
【0043】
フォトセンサ55はフォトセンサ54と同じセンサであり、不図示の発光素子と受光素子の対向領域に進入する遮光板56を検出する構成の透過型フォトセンサである。
【0044】
図1に戻り、遮光板56A、56B各々の上下方向における固定位置について説明する。
【0045】
遮光板56Aは、上かご14が目的階に着床した状態のときに、フォトセンサ54Aとフォトセンサ55Aで同時に検出される位置に固定されている。
【0046】
遮光板56Bは、下かご16が目的階に着床したときに、フォトセンサ54Bとフォトセンサ55Bで同時に検出される位置に固定されている。
【0047】
よって、フォトセンサ54A、55A、フォトセンサ54B、55Bが遮光板56A、56Bをそれぞれ検出しているか否かによって、上かご14、下かご16の各々が目的階に着床しているかどうかを判断することができる。
【0048】
遮光板56Aと遮光板56Bは、上かご14と下かご16とが同時に着床する二つの目的階毎に、一対として設けられている。すなわち、当該一対は、外かご枠12の昇降路36内の上下方向における目標停止位置毎に設けられている。
【0049】
上記の構成を有するダブルデッキエレベータ10は、主制御装置58と副制御装置66とによって、運転制御等がなされる。
【0050】
主制御装置58は、機械室38に設置されており、巻上機40の巻上機モータ40A(
図3)などの駆動制御を行う。主制御装置58は、巻上機40のロータリエンコーダ40Cからの出力値(回転角)に基づき、巻上機モータ40Aを回転制御して、外かご枠12を昇降させる。副制御装置66は、外かご枠12に設置されている。副制御装置66は、移動ユニット22を駆動制御して、かご間隔Dを調整する。
【0051】
主制御装置58は、
図3に示すように、CPU60にRAM62やROM64が接続された構成を有している。CPU60は、ROM64に格納された各種制御プログラムを実行することにより、巻上機モータ40Aなどを統括的に制御して、円滑な外かご枠12(上かご14、下かご16)の昇降路36における昇降動作等による運転を実現する。RAM62は、CPU60が各種制御プログラムを実行する際のワークメモリとして用いられる。
【0052】
ROM64は、
図4(a)に示すように、昇降テーブル640を有する。昇降テーブル640は、下かご16と上かご14が同時に着床する階(目的階)の組毎に、ロータリエンコーダの目標回転角およびかご間隔識別情報を対応付けて記憶したテーブルである。当該対応付けの各々はID(000、001、002、…)で識別される。
【0053】
目標回転角は、外かご枠12の昇降制御において、CPU60により参照される。CPU60は、ロータリエンコーダ40Cからの出力値(回転角)が、目的階に対応する目標回転角(E0、E1、E2、…のいずれか)と一致するまで、巻上機モータ40Aを回転駆動させ、一致した状態で巻上機モータ40Aを停止させる。これにより、外かご枠12は、昇降路36内の上下方向において、上かご14と下かご16が各々の目的階に同時に着床することができる位置(目標停止位置)に停止されることとなる。目標回転角は、昇降路36内の上下方向における外かご枠12の目標停止位置と一対一で対応しているため、目標回転角は、目標停止位置に他ならない。目標回転角の設定方法については後述する。
【0054】
かご間隔識別情報d1、d2、d3、d4は、かご間隔D1、D2、D3、D4をそれぞれ特定するものである。例えば、下かご16の目的階が1、上かご14の目的階が2の場合、かご間隔DはD1に調整されるべきであるので、昇降テーブル640のかご間隔識別情報のID=000に対応する欄には「d1」が記憶されている。
【0055】
副制御装置66は、
図3に示すように、CPU68とCPU68に接続されたROM70およびRAM72を有している。ROM70は、CPU68が実行する各種プログラムを格納している他、各種の情報を記憶するテーブルや記憶領域を有している。
【0056】
RAM72は、CPU68が各種プログラムを実行する際のワークメモリとして用いられる他、各種の記憶領域を有している。
【0057】
ROM70は、
図4(b)に示すように、かご間隔情報テーブル700を有する。かご間隔情報テーブル700は、かご間隔識別情報d1、d2、d3、d4とそれぞれに対応する目盛差ΔS1、ΔS2、ΔS3、ΔS4とを対応付けて記憶している。目盛差ΔS1~ΔS4を以下、「基準目盛差」と言う。基準目盛差ΔS1~ΔS4の各々は、必要とされるかご間隔精度を考慮して、許容される幅をもったものとされている。主制御装置58からかご間隔識別情報(d1、d2、d3、d4のいずれか)を含むかご間隔調整指令を受け取ると、CPU68は、かご間隔情報テーブル700から、対応する基準目盛差(ΔS1、ΔS2、ΔS3、ΔS4のいずれか)を読み出す。そして、CPU68は、読取ユニット32,34が読み取る目盛値から得られる目盛差が基準目盛差の範囲に入るように、移動ユニット22を制御して、上かご14と下かご16を上下方向に移動させる。これにより、かご間隔Dが、上下二つの目的階の階高に適合したかご間隔(D1~D4のいずれか)に調整される。
【0058】
〔目標停止位置設定〕
昇降テーブル640内の目標回転角の各々は、データ取得運転の際に格納(設定)される。以下、データ取得運転の一例について説明する。
【0059】
主制御装置58を手動で操作し、外かご枠12を最下階かその近傍(昇降テーブル640のかご間隔識別情報のID=000に対応する位置)に位置させる。また、副制御装置66を手動で操作し、かご間隔をD1に調整させる。
【0060】
この状態で、主制御装置58にデータ取得運転を開始させる(データ取得運転プログラムを実行させる)。
先ず、主制御装置58は、巻上機40を制御して、フォトセンサ54A、55Aが遮光板56Aを同時に検出し、フォトセンサ54B、55Bが遮光板56Bを同時に検出するまで、外かご枠12を少しの範囲で昇降させる。主制御装置58は、フォトセンサ54A、55Aが遮光板56Aを同時に検出し、フォトセンサ54B、55Bが遮光板56Bを同時に検出する位置で外かご枠12を停止させ、昇降テーブル640のID=000に対応する目標回転角を0(E0)にリセットする。
【0061】
続いて、主制御装置58は、外かご枠12をゆっくり上昇させる一方、副制御装置66に対し、次のID=001に対応する位置におおよそ外かご枠12が到達するまでに、かご間隔を次のID=001に対応するかご間隔d2に変更するよう指示する。
【0062】
フォトセンサ54A、55AがID=001に対応する遮光板56Aを同時に検出し、フォトセンサ54B、55BがID=001に対応する遮光板56Bを同時に検出すると、検出されたときにロータリエンコーダ40Cが出力する出力値(回転角E1)をID=001に対応させて、昇降テーブル640に格納する。
【0063】
主制御装置58は、外かご枠12を継続してゆっくりと上昇させる一方、副制御装置66に対し、おおよそ次のID=002に対応する位置に外かご枠12が到達するまでに、かご間隔を次のID=002に対応するかご間隔d2に変更するよう指示する(本例の場合、かご間隔はD2のままなので、変更はされない)。
【0064】
フォトセンサ54A、55AがID=002に対応する遮光板56Aを同時に検出し、フォトセンサ54B、55BがID=002に対応する遮光板56Bを同時に検出すると、検出されたときにロータリエンコーダ40Cが出力する出力値(回転角E2)をID=002に対応させて、昇降テーブル640に格納する。
【0065】
以降、最終のIDに対応する遮光板56A、56Bが検出するまで、上記の処理を繰り返して、データ取得運転(データ取得運転プログラム)を終了する。当該データ取得運転により、上かご検出手段50と下かご検出手段52の両方が同時に着床を検出する位置が目標停止位置である目標回転角として昇降テーブル640に格納される(設定される)。すなわち、主制御装置58と副制御装置66は、上かご検出手段50と下かご検出手段52の両方が同時に着床を検出する位置を目標回転角(目標停止位置)に設定する目標停止位置設定手段として機能する。
【0066】
以上説明したように、実施形態に係るダブルデッキエレベータ10によれば、上かご検出手段50と下かご検出手段52が利用されて、外かご枠12の目標停止位置が設定される。これにより、特許文献1に記載されたダブルデッキエレベータが備える、外かご枠に設けられたフォトセンサはもとより、当該フォトセンサによって検出される複数の遮光板は不要となる。その結果、当該複数の遮光板の設置工事が削減される分、ダブルデッキエレベータの設置工数を短縮することができる。
【0067】
また、特許文献1に記載されたダブルデッキエレベータでは、上かごと下かごを吊り下げるワイヤロープに経年変化などによる伸びが生じ、外かご枠に対して上かごと下かごが相対的に下方へ変位した場合、当該ワイヤロープの伸び量を取得する処理を行い、取得された伸び量に応じた距離分、外かご枠の目標停止位置を補正することとしている。これに対し、実施形態に係るダブルデッキエレベータ10では、外かご枠を目標停止位置に停止させる目的では、上記伸び量の取得の処理や目標停止位置の補正処理は不要であり、定期的にデータ取得運転を実施することで、たとえ、ワイヤロープに伸びが生じていたとしても、適切な目標停止位置に更新されるのである。
【0068】
なお、データ取得運転は、ダブルデッキエレベータ10が、建築物に設置されたとき、およびその後、定期的に行われ、昇降テーブル640の目標回転角は適時に更新される。
【0069】
〔外かご枠の昇降制御〕
ダブルデッキエレベータ10の通常運転では、外かご枠12をスピーディかつスムーズに加速、等速、減速させ、目標停止位置まで昇降させるため、昇降する外かご枠12の上下方向の位置を把握して巻上機40の制御(巻上機モータ40Aの回転制御)が行われる。
【0070】
昇降する外かご枠12の昇降路36内における上下方向の位置を把握するため、上かご検出手段50または下かご検出手段52を用いる。いずれの検出手段を用いてもかまわないのであるが、ここでは、下かご検出手段52を用いる例について説明する。
【0071】
図5(a)は、ID=000の位置である、下かご16が1階、上かご14が2階に着床している状態を示している。すなわち、外かご枠12の昇降制御における目標回転角がE0の位置で、かご間隔がD1に調整されている状態である(
図4(a))。
【0072】
ここで、本例では、外かご枠12の上下方向の位置は、下梁12Bを基準とすることとする。また、下かご16の外かご枠12に対する上下方向の位置は、下梁12Bからフォトセンサ54B、55Bの取付け位置(フォトセンサ54Bとフォトセンサ55Bの中間位置)までの距離とする。上下方向の距離及び高さは、ロータリエンコーダ40Cの回転角(回転量)に換算した値とする。
【0073】
さらに、
図5(a)に示す上記状態における、外かご枠12の下梁12Bからの遮光板56各々の高さをH1、H2、H3、…とする。また、
図5(b)に示すように、読取ユニット34の読取値に基いて得られるフォトセンサ54B、55Bの上記取付け位置(外かご枠12に対する下かご16の上下方向の絶対位置)をTxとする。
【0074】
図5(a)の状態から、次の目標停止位置まで外かご枠12を上昇させる際の上昇中における外かご枠12の昇降路36内の上下方向における昇降位置の特定について、
図5(b)を参照しながら説明する。
【0075】
上昇する外かご枠12内に設けられたフォトセンサ54B、55Bは、遮光板56を次々に検出する。例えば、高さH5の位置に設置された遮光板56を検出すると、そのとき下かご16は昇降路36内において高さH5の位置にあることが特定できる。
【0076】
一方、フォトセンサ54B、55Bが上記遮光板56を検出したときの読取ユニット34の読取値から、下かご16の外かご枠12に対する上下方向の絶対位置であるTxを得る。そして、外かご枠12の昇降位置Exを式Ex=H5-Txにより算出する。
【0077】
すなわち、外かご枠12の昇降中に、フォトセンサ54B、55Bが遮光板56を検出することで、下かご16の昇降路36内における上下方向の昇降位置(H5)が特定されると、当該特定された昇降位置(H5)と、前記特定された時点における下かご16の外かご枠12に対する上下方向の絶対位置(Tx)とから、外かご枠12の昇降位置(Ex)を特定する(Ex=H5-Tx)のである。
【0078】
フォトセンサ54B、55Bで遮光板56を検出する度に上記の処理を行って、そのときの外かご枠12の昇降位置を把握し、当該昇降位置を参照して、加速から等速へ移行するタイミング、等速から減速へ移行するタイミング等を図る外かご枠12の昇降制御を行う。
【0079】
なお、フォトセンサ54B、55Bが、複数ある遮光板56のいずれを検出しているかは、例えば、以下のようにして認識することができる。
図5(a)に示す状態で、主制御装置58のCPU60の内部カウンタを「1」にセットし、以降、昇降中に遮光板56を検出する毎に、当該カウンタをカウントアップさせ、下降中に遮光板56を検出する毎に、カウントダウンさせて、遮光板56を検出したときの前記内部カウンタのカウント値を参照することにより、いずれの遮光板56を検出したかを認識することができる。
【0080】
以上説明したように、実施形態に係るダブルデッキエレベータ10によれば、一の目標停止位置から次の目標停止位置まで外かご枠12を昇降させながら、次の目的階に合わせてかご間隔を調整中であっても、下かご16の昇降路36内における昇降位置と、外かご枠12に対する下かご16の絶対位置とから、昇降路36内における外かご枠12の昇降位置を特定することができ、この特定された外かご枠12の昇降位置が参照されて、外かご枠12の昇降制御(巻上機40の巻上機モータ40Aの回転制御)がなされる。
【0081】
なお、上記の例では、昇降する外かご枠12の昇降路36内における昇降位置を特定するため、下かご検出手段52を用いたが、これに限らず、上かご検出手段50を用いても構わない。
【0082】
以上、本発明の係るダブルデッキエレベータを実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
【0083】
(1)実施形態に係るダブルデッキエレベータ10は、上かご14と下かご16の一方を(本例では、下かご16を)、ジャッキ24で上下方向に移動させるジャッキ式のダブルデッキエレベータであったが、
図6に示すダブルデッキエレベータ80は、上かご14と下かご16とを連結するワイヤロープ20が、外かご枠12の上梁12Aに設置された副巻上機82の駆動シーブ82Aに掛けられて、駆動シーブ82Aをモータ82Bで回転駆動することにより、かご間隔を変更するトラクション式のダブルデッキエレベータである。
【0084】
ダブルデッキエレベータ80は、上かご14と下かご16のかご間隔を変更するための駆動方式が異なる以外は、実質的に、ダブルデッキエレベータ10(
図1)と同じ構成である。よって、
図6において、
図1に示したダブルデッキエレベータ10と実質的に同じ構成には、同じ符号を付して、その説明については省略する。
【0085】
(2)上記実施形態では、上かご14と下かご16の外かご枠12に対する上下方向の絶対位置を検出する検出手段として磁気スケール28を用いたが、これに限らず、例えば、以下のものを用いても構わない。なお、以下の検出手段を用いた場合の詳細については、特許文献1に記載されているため、ここでは、その詳細については省略し、当該検出手段を列挙するに止める。
(a)光学式1次元コード位置(距離)センサ
(b)光学式2次元コード位置(距離)センサ
(c)レーザ距離センサ
(d)超音波距離センサ
(e)赤外線距離センサ
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、外かご枠内に上かごと下かごとが設けられてなるダブルデッキエレベータに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
10、80 ダブルデッキエレベータ
12 外かご枠
14 上かご
16 下かご
50 上かご検出手段
52 下かご検出手段
58 主制御装置
66 副制御装置
【要約】
【課題】設置工数を短縮し得るダブルデッキエレベータを提供する。
【解決手段】外かご枠12を昇降路36内で目標停止位置まで昇降させ、外かご枠12内に上下方向に設けられた上かご14と下かご16をそれぞれの目的階に着床させるダブルデッキエレベータ10において、上かご14が目的階に着床したことを検出する上かご検出手段50と、下かご16が目的階に着床したことを検出する下かご検出手段52と、上かご検出手段50と下かご検出手段52の両方が同時に着床を検出する位置を前記目標停止位置に設定する目標停止位置設定手段として機能する主制御装置58、副制御装置66と、を有し、前記目標位置設定手段によって設定された目標停止位置まで前記外かご枠12を昇降させる構成とした。
【選択図】
図1