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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】天井搬送車
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20230801BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
B65G1/04 551B
H01L21/68 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022561321
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2021036619
(87)【国際公開番号】W WO2022102280
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2020187426
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/174809(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079146(WO,A1)
【文献】特開2019-218180(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146276(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/217632(WO,A1)
【文献】特開2006-8354(JP,A)
【文献】特開2009-176765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
H01L 21/677
B61B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に沿って走行可能な本体部と、物品を把持する把持部を有すると共に前記本体部に対して吊持部材によって昇降される昇降部と、を備えた天井搬送車であって、
前記昇降部は、
前記把持部が設けられるベース部と、
鉛直方向下方から前記ベース部を鉛直方向に移動可能に支持する第一緩衝部を有し、鉛直方向から見た平面視において前記本体部の走行方向に直交する幅方向の一方において前記吊持部材に接続される第一支持部と、
鉛直方向下方から前記ベース部を鉛直方向に移動可能に支持する第二緩衝部を有し、前記本体部の前記幅方向の他方において前記吊持部材に接続される第二支持部と、
前記第一支持部と前記第二支持部とを連結すると共に、鉛直方向における前記第一支持部と前記ベース部との間の第一距離と、鉛直方向における前記第二支持部と前記ベース部との間の第二距離とを互いに近づけるように動作するリンク機構と、を備え、
前記リンク機構は、前記第一支持部及び前記第二支持部に対して前記ベース部の前記走行方向における相対移動を可能にする第三緩衝部、及び前記第一支持部と前記第二支持部とに対して前記ベース部の前記幅方向における相対移動を可能にする第四緩衝部の少なくとも一方を有している、天井搬送車。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記第三緩衝部を有している、請求項1記載の天井搬送車。
【請求項3】
前記リンク機構は、前記第三緩衝部及び前記第四緩衝部の両方を有している、請求項1又は2記載の天井搬送車。
【請求項4】
前記第三緩衝部又は前記第四緩衝部は、弾性部材を含んで形成されている、請求項1~3の何れか一項記載の天井搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、天井搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
軌道に沿って走行可能な本体部と、物品を把持する把持部を有すると共に前記本体部に対し複数の吊持部材が巻き取り及び繰り出しされることにより昇降する昇降部と、を備えた天井搬送車が知られている。例えば、特許文献1には、昇降部が、把持部が設けられるベース部と、緩衝部を介してベース部を鉛直方向下方から鉛直方向に移動可能に支持する支持部を有すると共に吊持部材が取り付けられる複数の緩衝機構と、を備え、これらの複数の緩衝機構がリンク機構によって連結されている天井搬送車が開示されている。この天井搬送車では、リンク機構は、互いに連結されている複数の緩衝機構における支持部とベース部との間の各距離同士を互いに近づけるように動作するので、物品に伝わる振動を低減しつつ、物品の揺れを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/079146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の天井搬送車は、物品に伝わる振動を低減しつつ、物品の揺れを抑制することができるものの、搬送する物品の多様化に伴って、より一層の振動の低減が求められている。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、物品に伝わる振動の更なる低減を図りつつ、物品の揺れを抑制することができる、天井搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る天井搬送車は、軌道に沿って走行可能な本体部と、物品を把持する把持部を有すると共に本体部に対して吊持部材によって昇降される昇降部と、を備えた天井搬送車であって、昇降部は、把持部が設けられるベース部と、鉛直方向下方からベース部を鉛直方向に移動可能に支持する第一緩衝部を有し、鉛直方向から見た平面視において本体部の走行方向に直交する幅方向の一方において吊持部材に接続される第一支持部と、鉛直方向下方からベース部を鉛直方向に移動可能に支持する第二緩衝部を有し、幅方向の他方において吊持部材に接続される第二支持部と、第一支持部と第二支持部とを連結すると共に、鉛直方向における第一支持部とベース部との間の第一距離と、鉛直方向における第二支持部とベース部との間の第二距離とを互いに近づけるように動作するリンク機構と、を備え、リンク機構は、第一支持部及び第二支持部に対してベース部の走行方向における相対移動を可能にする第三緩衝部、及び第一支持部と第二支持部とに対してベース部の幅方向における相対移動を可能にする第四緩衝部の少なくとも一方を有している。
【0007】
この構成の天井搬送車では、鉛直方向における第一支持部とベース部との間の第一距離と、鉛直方向における第二支持部とベース部との間の第二距離とを互いに近づけるように動作するリンク機構が設けられているので、昇降装置の左右方向における傾きが低減され、物品の揺れを抑制することができる。また、第一支持部及び第二支持部には、第一支持部及び第二支持部に対してベース部の鉛直方向における移動を可能にする緩衝部(第一緩衝部及び第二緩衝部)が設けられているので、昇降部を介して物品に伝達される鉛直方向の振動を低減することができる。更に、リンク機構には、第一支持部及び第二支持部に対してベース部の水平方向における移動を可能にする緩衝部(第三緩衝部及び第四緩衝部の少なくとも一方)が設けられているので、昇降部を介して物品に伝達される水平方向の振動を低減することができる。これらの結果、物品に伝わる振動の更なる低減を図りつつ、物品の揺れを抑制することができる。
【0008】
本発明の一側面に係る天井搬送車では、リンク機構は、第三緩衝部を有していてもよい。この構成では、昇降部を介して物品に伝達される前後方向の振動を低減することができる。
【0009】
本発明の一側面に係る天井搬送車では、リンク機構は、第三緩衝部及び第四緩衝部の両方を有していてもよい。この構成では、昇降部を介して物品に伝達される前後方向及び左右方向の両方の振動を低減することができる。
【0010】
本発明の一側面に係る天井搬送車では、第三緩衝部又は第四緩衝部は、弾性部材を含んで形成されていてもよい。昇降部を介して物品に伝達される水平方向の振動を低減することができる。この構成では、簡易な構成で効率的に振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、物品に伝わる振動の更なる低減を図りつつ、物品の揺れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る天井搬送車を示す正面図である。
図2図2は、昇降装置を前方向から見た側面図である。
図3図3は、昇降装置を斜め上方から見た斜視図である。
図4図4は、ベース部を取り除いた状態の昇降装置を斜め上方から見た斜視図である。
図5図5(A)及び図5(B)は、第二支持部及びリンク機構の一部を拡大して示した斜視図である。
図6図6(A)及び図6(B)は、第一支持部及びリンク機構の一部を拡大して示した斜視図である。
図7図7は、第二支持部及びリンク機構の一部を拡大して示した斜視図である。
図8図8は、ベース部を取り除いた状態の変形例に係る昇降装置を斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、一実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る天井搬送車を示す正面図であり、図2は、昇降装置を前方向から見た側面図である。図1及び図2では、リンク機構70(図3参照)の図示は省略している。図1に示される天井搬送車1は、クリーンルームの天井等、床面より高い位置に設けられる走行レール(軌道)2に沿って走行する。天井搬送車1は、例えば保管設備と所定のロードポートとの間で物品としてのFOUP(Front Opening Unified Pod)90を搬送する。FOUP90には、例えば、複数枚の半導体ウェハ等が収容される。FOUP90は、天井搬送車1に保持されるフランジ98を有している。
【0015】
以下の説明では、説明の便宜のため、図1における左右方向(X軸方向)を天井搬送車1の走行方向とする(以下、「前後方向」とも称する)。図1における上下方向(Z軸方向)を天井搬送車1の上下方向とする(以下、「鉛直方向」とも称する)。図1における奥行方向(Y軸方向)を天井搬送車1の幅方向とする(以下、「左右方向」とも称する)。X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する。
【0016】
図1に示されるように、天井搬送車1は、走行駆動部3と、水平駆動部(本体部)5と、回転駆動部(本体部)6と、昇降駆動部(本体部)7と、昇降装置(昇降部)10と、保持装置(把持部)11と、第一支持部50(図3及び図4参照)と、第二支持部40(図3及び図4参照)と、リンク機構70(図3及び図4参照)と、を有している。
【0017】
天井搬送車1には、水平駆動部5、回転駆動部6、昇降駆動部7、昇降装置10及び保持装置11を覆うように前後方向に一対のカバー8,8が設けられている。一対のカバー8,8は、昇降装置10が上昇端まで上昇した状態において保持装置11の下方に、FOUP90が収容される空間を形成している。落下防止機構8Aは、昇降装置10が上昇端まで上昇した状態において保持装置11に保持されたFOUP90の落下を防止する。揺れ抑制機構8Bは、走行時における保持装置11に保持されたFOUP90の天井搬送車1の前後方向(走行方向)及び左右方向の揺れを抑制する。
【0018】
走行駆動部3は、天井搬送車1を走行レール2に沿って移動させる。走行駆動部3は、走行レール2内に配置されている。走行駆動部3は、走行レール2を走行するローラ(図示しない)を駆動する。走行駆動部3の下部には、軸3Aを介して水平駆動部5が設けられている。水平駆動部5は、回転駆動部6、昇降駆動部7及び昇降装置10を水平面内で走行レール2の延在方向に直交する方向(左右方向)に移動させる。回転駆動部6は、水平面内で昇降駆動部7及び昇降装置10を回転させる。昇降駆動部7は、四本のベルト(吊持部材)9の巻き上げ及び繰り出しにより昇降装置10を昇降させる。なお、昇降駆動部7におけるベルト9は、ワイヤ及びロープ等、適宜の吊持部材を用いてもよい。
【0019】
図1及び図2に示されるように、本実施形態における昇降装置10は、昇降駆動部7によって昇降可能に設けられており、天井搬送車1における昇降台として機能している。昇降装置10は、FOUP90を把持する保持装置11を有すると共に、本体部としての水平駆動部5、回転駆動部6、及び昇降駆動部7に対してベルト9によって昇降される。保持装置11は、FOUP90を保持する。保持装置11は、L字状である一対のアーム12,12と、各アーム12,12に固定されたハンド13,13と、一対のアーム12,12を開閉させる開閉機構15と、を備えている。
【0020】
一対のアーム12,12は、開閉機構15に設けられている。開閉機構15は、一対のアーム12,12を、互いに近接する方向及び互いに離間する方向に移動させる。開閉機構15の動作により、一対のアーム12,12は、前後方向に進退する。これにより、アーム12,12に固定された一対のハンド13,13が開閉する。本実施形態では、一対のハンド13,13が開状態のときに、ハンド13の保持面がフランジ98の下面の高さより下方となるように、保持装置11(昇降装置10)の高さ位置が調整される。そして、この状態で一対のハンド13,13が閉状態となることで、ハンド13,13の保持面がフランジ98の下面の下方へ進出し、この状態で昇降装置10を上昇させることにより、一対のハンド13,13によってフランジ98が保持(把持)され、FOUP90の支持が行われる。
【0021】
昇降装置10は、保持装置11が設けられるベース部10Aと、ベース部10Aを覆うカバー部10Bと、第一支持部50と、第二支持部40と、を備える。図3及び図4に示されるように、第一支持部50及び第二支持部40は、ベルト9と昇降装置10とを連結する機構であると共に、走行駆動部3が走行するとき又は昇降装置10が昇降するときの振動がFOUP90に伝わることを抑制する機構である。
【0022】
第一支持部50は、鉛直方向下方からベース部10Aを鉛直方向に移動可能に支持する弾性部材(第一緩衝部)58を有し、鉛直方向から見た平面視において天井搬送車1の走行方向に直交する幅方向の一方に配置される。本実施形態では、第一支持部50は、左右方向において昇降装置10の右側に設けられている。第一支持部50は、接続部材51と、揺動部材53と、第一本体部材54と、第二本体部材56と、一対の弾性部材58,58と、を有している。
【0023】
接続部材51は、ベルト9に取り付けられる部材である。揺動部材53は、接続部材51に連結される部材である。揺動部材53は、ピン部材52を介して接続部材51に双方向に回転可能に連結される。第一本体部材54は、略L字状の部材であり、その底部は、平坦となるように形成されている。第一本体部材54は、その一部が揺動部材53に接続されている。第一本体部材54は、底部が第二本体部材56の接続部56Bにボルト等によって接続されている。
【0024】
図3図4図6(A)及び図6)に示されるように、第二本体部材56は、本体部56Aと、接続部56Bと、第一側面部56Cと、第二側面部56Dと、を有している。本体部56Aは、弾性部材58を下方から支持する平板状の部材である。接続部56Bは、一端が第一本体部材54の底部に接続され、他端が本体部56A及び第一側面部56Cに接続されている。第一側面部56Cは、本体部56Aから立設している。第二側面部56Dは、本体部56Aから立設すると共に、第一側面部56Cに直交している。第一側面部56C及び第二側面部56Dは、本体部56Aから折り曲げられることにより形成されている。
【0025】
一対の弾性部材58,58は、所定のバネ定数を有するコイルバネである。一対の弾性部材58,58は、本体部56Aに支持されると共にベース部10Aを下方から支持する。弾性部材58の下端は、本体部56Aに固定されている。弾性部材58の上端は、ベース部10Aには固定されておらず、接触することによってベース部10Aを支持する。すなわち、一対の弾性部材58,58のそれぞれは、本体部56Aとベース部10Aとの両方に接触した状態で縮んだ状態にあるとき、本体部56Aとベース部10Aとを互いに遠ざける方向に付勢する。弾性部材58は、互いに接触する部材間に伝わる振動を低減する役割を有する。なお、ベース部10Aに固定され、本体部56Aに離接可能に設けられてもよい。
【0026】
第二支持部40は、鉛直方向下方からベース部10Aを鉛直方向に移動可能に支持する弾性部材(第二緩衝部)48を有し、鉛直方向から見た平面視において天井搬送車1の走行方向に直交する幅方向の他方(幅方向において第一支持部50とは反対側)に配置される。本実施形態では、第二支持部40は、左右方向において昇降装置10の左側に設けられている。第二支持部40は、接続部材41,41と、揺動部材43と、第三本体部材45と、第四本体部材46と、規制部材47と、一対の弾性部材48,48と、を有している。
【0027】
接続部材41,41は、ベルト9,9が取り付けられる部材である。揺動部材43は、一対の接続部材41,41と、第三本体部材45とを連結する部材である。一対の接続部材41,41と揺動部材43とは、双方向に回転可能に連結され、一対のピン部材42,42を介して連結される。揺動部材43と第三本体部材45とは、双方向に回転可能に連結され、ピン部材44を介して連結されている。
【0028】
図5(A)、図5(B)及び図7に示されるように、第四本体部材46は、本体部46Aと、第一側面部46Cと、第二側面部46Dと、を有している。本体部46Aは、弾性部材48,48を下方から支持する。本体部46Aは、弾性部材48,48を下方から支持する平板状の部材である。第一側面部46Cは、本体部46Aから立設している。第二側面部46Dは、本体部46Aから立設すると共に、第一側面部46Cに直交している。第一側面部46C及び第二側面部46Dは、本体部46Aから折り曲げられることにより形成されている。
【0029】
一対の弾性部材48,48は、所定のバネ定数を有するコイルバネである。一対の弾性部材48,48は、本体部46Aに支持されていると共にベース部10Aを下方から支持する。弾性部材48の下端は、本体部46Aに固定されている。規制部材47(図7参照)は、本体部46Aに対してベース部10Aが所定距離以上離れることを規制する。より詳細には、規制部材47は、本体部46Aに対して所定距離以上離れようとするベース部10Aの上面を係止する。弾性部材48の上端は、ベース部10Aには固定されておらず、接触することによってベース部10Aを支持する。すなわち、一対の弾性部材48,48のそれぞれは、本体部46Aとベース部10Aとの両方に接触した状態にあるとき、本体部46A及びベース部10Aを互いに遠ざける方向に付勢する。弾性部材48は、互いに接触する部材間に伝わる振動を低減する役割を有する。なお、弾性部材48は、ベース部10Aに固定され、本体部46Aに離接可能に設けられてもよい。
【0030】
図4に示されるように、リンク機構70は、第一支持部50と第二支持部40とを連結すると共に、鉛直方向における第一支持部50とベース部10Aとの間の距離(第一距離)と、鉛直方向における第二支持部40とベース部10Aとの間の距離(第二距離)とを互いに近づけるように動作する。以下、リンク機構70の詳細について説明する。
【0031】
リンク機構70は、第一シャフト(第三緩衝部)71と、第二シャフト(第三緩衝部)72と、第三シャフト73と、第一ブッシュ81と、第二ブッシュ82と、第一ブロック83と、第二ブロック84と、を有している。
【0032】
第一シャフト71は、図3図4図5(A)及び図5(B)に示されるように、第二支持部40における第四本体部材46の第二側面部46Dに設けられた第一ブッシュ81に支持されており、前後方向に延在している。第一シャフト71は、第一ブッシュ81の挿通孔81Aに挿通され、第一ブッシュ81に対して回転可能かつ軸方向へ摺動可能に設けられている。第一ブッシュ81の材料は、第一シャフト71の軸部71Cが所定の回転性かつ所定の摺動性を有するように適宜選定される。第一シャフト71,71は、前後方向において、第二支持部40の両端に配置されている。前後方向に配列される二つの第一シャフト71,71は、前後方向に略一直線上に配置されている。
【0033】
第一シャフト71は、第一本体部71Aと、第二本体部71Bと、軸部71Cと、を有している。第一本体部71Aは、第三シャフト73の一端に連結されており、軸部71Cと一体的に形成されている。第一本体部71Aの径は、軸部71Cの径よりも大きい。第二本体部71Bは、軸部71Cを外挿可能かつ軸部71Cに対して移動可能に形成されている。第二本体部71Bの径は、軸部71Cの径よりも大きい。弾性部材(第三緩衝部)75は、軸部71Cに外挿されると共に、第一本体部71Aと第二本体部71Bとの間に配置される。弾性部材75は、所定のバネ定数を有するコイルバネであり、第二本体部71Bを第四本体部材46の第二側面部46Dに対して付勢する。軸部71Cの一方の端部には、第一シャフト71が傾くことを防止するストッパ71Dが設けられている。当該ストッパ71Dは、第四本体部材46の本体部46Aに対して前後方向への摺動を可能にする材料によって形成されている。
【0034】
このような構成の第一シャフト71は、第二支持部40がベース部10Aに対する定位置から前後方向(走行方向)へ相対的に移動することを可能としている。また、図4に示されるように、前後方向に第二支持部40を挟んで設けられる一対の弾性部材75,75は、ベース部10Aに対する定位置から前後方向(走行方向)へ移動する第二支持部40を上記定位置に復帰させる機能を有している。例えば、第二支持部40がベース部10Aに対する定位置から前後方向の前側に相対的に移動した場合には、前後方向の前側に配置される第一シャフト71に設けられている弾性部材75が圧縮される。第二支持部40は、このときの弾性部材75の反発力によってベース部10Aに対する定位置に戻される。また、例えば、第二支持部40がベース部10Aに対する定位置から前後方向の後側に相対的に移動した場合には、前後方向の後側に配置される第一シャフト71に設けられている弾性部材75が圧縮される。第二支持部40は、このときの弾性部材75の反発力によってベース部10Aに対する定位置に戻される。
【0035】
第二シャフト72は、図3図4図6(A)及び図6(B)に示されるように、第一支持部50における第二本体部材56の第二側面部56Dに設けられた第二ブッシュ82に支持されており、前後方向に延在している。第二シャフト72は、第二ブッシュ82の挿通孔82Aに挿通され、第二ブッシュ82に対して回転可能かつ軸方向へ摺動可能に設けられている。第二ブッシュ82の材料は、第二シャフト72の軸部72Cが所定の回転性かつ所定の摺動性を有するように適宜選定される。第二シャフト72,72は、前後方向において、第一支持部50の両端に配置されている。前後方向に配列される二つの第二シャフト72,72は、前後方向に略一直線上に配置されている。
【0036】
第二シャフト72は、第一本体部72Aと、第二本体部72Bと、軸部72Cと、を有している。第一本体部72Aは、第三シャフト73の他端に連結されており、軸部72Cと一体的に形成されている。第一本体部72Aの径は、軸部72Cの径よりも大きい。第二本体部72Bは、軸部72Cを外挿可能かつ軸部72Cに対して移動可能に形成されている。第二本体部72Bの径は、軸部72Cの径よりも大きい。弾性部材(第三緩衝部)76は軸部72Cに外挿されると共に、第一本体部72Aと第二本体部72Bとの間に配置される。弾性部材76は、所定のバネ定数を有するコイルバネであり、第二本体部72Bを第二本体部材56の第二側面部56Dに対して付勢する。
【0037】
このような構成の第二シャフト72は、第一支持部50がベース部10Aに対する定位置から前後方向(走行方向)へ相対的に移動することを可能としている。また、図4に示されるように、前後方向に第一支持部50を挟んで設けられる一対の弾性部材76,76は、ベース部10Aに対する定位置から前後方向(走行方向)へ移動する第二支持部40を上記定位置に復帰させる機能を有している。例えば、第一支持部50がベース部10Aに対する定位置から前後方向の前側に相対的に移動した場合には、前後方向の前側に配置される第二シャフト72に設けられている弾性部材76が圧縮される。第一支持部50は、このときの弾性部材76の反発力によってベース部10Aに対する定位置に戻される。また、例えば、第一支持部50がベース部10Aに対する定位置から前後方向の後側に相対的に移動した場合には、前後方向の後側に配置される第二シャフト72に設けられている弾性部材76が圧縮される。第一支持部50は、このときの弾性部材76の反発力によってベース部10Aに対する定位置に戻される。
【0038】
第三シャフト73は、図3図4図5(A)、図5(B)、図6(A)及び図6(B)に示されるように、ベース部10Aの底面に固着された第一ブロック83及び第二ブロック84に支持されており、左右方向に延在している。第三シャフト73は前後方向にそれぞれ配置されており、二本の第三シャフト73,73は、それぞれ平行となるように配置されている。第三シャフト73は、第一ブロック83の挿通孔83A及び第二ブロック84の挿通孔84Aに挿通され、第一ブロック83及び第二ブロック84に対して回転可能かつ軸方向へ摺動可能に設けられている。
【0039】
左右方向における第三シャフト73の一端は第一シャフト71に連結され、第三シャフト73の他端は、第二シャフト72に連結されている、具体的には、第三シャフト73の一端が第一シャフト71に形成された挿通孔に挿通されることによって連結され、第三シャフト73の他方の端部が第二シャフト72に形成された挿通孔に挿通されることによって連結されている。
【0040】
次に、主に図3図4図5(A)、図5(B)、図6(A)及び図6(B)を用いて第一支持部50の動作の一例を説明する。保持装置11によって被収容物が収容されたFOUP90又は空のFOUP90が把持されると、弾性部材58に荷重が作用され、弾性部材58が圧縮される。弾性部材58が圧縮されると反発力が生じ、ベース部10Aは付勢される。走行駆動部3が走行するとき又は昇降装置10が昇降するときに保持装置11を介してFOUP90に伝達される振動は、第一支持部50に設けられた弾性部材58によって低減される。
【0041】
次に、第二支持部40の動作の一例を説明する。保持装置11によって被収容物が収容されたFOUP90又は空のFOUP90が把持されると、弾性部材48に荷重が作用され、弾性部材48が圧縮される。弾性部材48が圧縮されると反発力が生じ、ベース部10Aは付勢される。走行駆動部3が走行するとき又は昇降装置10が昇降するときに保持装置11を介してFOUP90に伝達される振動は、第二支持部40に設けられた弾性部材48によって低減される。
【0042】
次に、左右方向に配列された第二支持部40と第一支持部50とを連結するリンク機構70の動作の一例を説明する。例えば、走行時の遠心力により、左側の第二支持部40の弾性部材48,48に力が作用したとする。第二支持部40の弾性部材48,48に力が作用すると弾性部材48,48は縮められ、第四本体部材46は上方(矢印D1)に移動する。すなわち、第四本体部材46とベース部10Aとの距離が近くなる。なお、本動作における上方への移動とは、ベース部10Aに近づく相対的な移動を示しており、下方への移動とは、ベース部10Aから遠ざかる相対的な移動を示している。第四本体部材46が上方に移動すると、第四本体部材46に第一ブッシュ81を介して固定された第一シャフト71の第一ブッシュ81側の端部が上方(矢印D2)に移動し、第一シャフト71の第三シャフト73に連結される側の端部が下方(矢印D3)に移動する。
【0043】
第一シャフト71の第三シャフト73側の端部が下方に移動すると、第三シャフト73も下方(矢印D4)に移動する。第三シャフト73が下方に移動すると、第三シャフト73に連結される共に第二本体部材56に第二ブッシュ82を介して固定された第二シャフト72の第三シャフト73側の端部が下方(矢印D5)に移動し、第二ブッシュ82側の端部が上方(矢印D6)に移動する。これにより、第二本体部材56は上方(矢印D7)に押し上げられる。第二本体部材56が押し上げられると、第一支持部50の弾性部材58,58が縮められ、第一本体部材54とベース部10Aとの距離が短くなる。
【0044】
一方、弾性部材48,48が引っ張られ、弾性部材48,48が伸ばされると、第四本体部材46は下方(矢印D1とは反対方向)に移動する。すなわち、第四本体部材46とベース部10Aとの距離が広がる。第四本体部材46が下方に移動すると、第四本体部材46に第一ブッシュ81を介して固定された第一シャフト71の第一ブッシュ81側の端部が下方(矢印D2とは反対方向)に移動し、第一シャフト71の第三シャフト73に連結される側の端部が上方(矢印D3とは反対方向)に移動する。
【0045】
第一シャフト71の第三シャフト73側の端部が上方に移動すると、第三シャフト73も上方(矢印D4とは反対方向)に移動する。第三シャフト73が上方に移動すると、第三シャフト73に連結される共に第二本体部材56に第二ブッシュ82を介して固定された第二シャフト72の第三シャフト73側の端部が上方(矢印D5とは反対方向)に移動し、第二ブッシュ82側の端部が下方(矢印D6とは反対方向)に移動する。これにより、第二本体部材56は下方(矢印D7とは反対側)に押し下げられる。第二本体部材56が押し下げられると、第一支持部50の弾性部材58,58が伸ばされ、第一本体部材54とベース部10Aとの距離が長くなる。
【0046】
このように、左右方向に配列される第二支持部40と第一支持部50とを連結するリンク機構70は、第二支持部40の弾性部材48,48及び第一支持部50の弾性部材58,58が縮んだり伸びたりすれば、ベース部10Aの底面に固着された第一ブロック83及び第二ブロック84を支点に第三シャフト73が追従して回転運動し、第二支持部40の弾性部材48,48及び第一支持部50の弾性部材58,58を縮めたり、伸ばしたりする。すなわち、リンク機構70は、互いに連結されている第二支持部40及び第一支持部50におけるベース部10Aと第四本体部材46との距離と、ベース部10Aと第二本体部材56との距離との間に差が生じたときに、互いに連結されている第二支持部40及び第一支持部50におけるベース部10Aと第四本体部材46との距離と、ベース部10Aと第二本体部材56との距離とを互いに近づけるように動作する。
【0047】
リンク機構70は、ベース部10Aと第四本体部材46との距離と、ベース部10Aと第二本体部材56との距離との間に差が生じたときに応力(捻り応力)が発生する第三シャフト73を有している。第三シャフト73に発生した応力に対する反力は、ベース部10Aと第四本体部材46との距離と、ベース部10Aと第二本体部材56との距離とを互いに近づける力として作用する。
【0048】
上記実施形態の天井搬送車1の作用効果について説明する。上記実施形態の天井搬送車1では、鉛直方向における第一支持部50とベース部10Aとの間の距離と、鉛直方向における第二支持部40とベース部10Aとの間の距離とを互いに近づけるように動作するリンク機構70が設けられている。これにより、昇降装置10(ベース部10A)にロール運動が生じることを抑制できる。このため、ベース部10Aにおける左右方向における傾きを小さくすることができ、FOUP90の揺れを抑制できる。
【0049】
また、第一支持部50及び第二支持部40には、第一支持部50及び第二支持部40に対してベース部10Aの鉛直方向における移動を可能にする弾性部材48,58が設けられているので、昇降装置10を介してFOUP90に伝達される鉛直方向の振動を低減することができる。更に、リンク機構70は、第一支持部50に対してベース部10Aの水平方向における移動を可能にすると共に弾性部材76、76によって定(中立)位置に戻そうとする力が常時作用し、また、第二支持部40に対してベース部10Aの水平方向における移動を可能にすると共に弾性部材75、75によって定位置に戻そうとする力が常時作用するので、昇降装置10を介してFOUP90に伝達される水平方向の振動、より詳細には前後方向の振動を低減することができる。これらの結果、FOUP90に伝わる振動の更なる低減を図りつつ、FOUP90の揺れを抑制することができる。
【0050】
上記実施形態の天井搬送車1では、弾性部材48,58,75,76は、バネ部材により形成されているので、簡易な構成で効率的に振動を低減することができる。
【0051】
以上、一実施形態について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
上記実施形態の天井搬送車1では、ベース部10Aに対して第一支持部50の走行方向における相対移動を可能にすると共に弾性部材76,76によって第一支持部50を定位置に戻そうとする力が常時作用し、また、ベース部10Aに対して第二支持部40の走行方向における相対移動を可能にすると共に弾性部材75,75によって第二支持部40を定位置に戻そうとする力が常時作用している例を挙げて説明したが、当該構成に加えて、ベース部10Aに対して第一支持部50及び第二支持部40の左右方向における相対移動を可能にすると共に、弾性部材77によって第一支持部50及び第二支持部40を定位置に戻そうとする力が常時作用する構成を備えてもよい。
【0053】
具体的には、図8に示されるように、第三シャフト(第四緩衝部)73のそれぞれには、第一本体部72Aと第二ブロック84との間に弾性部材77が配置され、第一本体部71Aと第一ブロック83との間に弾性部材77が配置されている。このような構成の第三シャフト73は、第一支持部50及び第二支持部40がベース部10Aに対する定位置から左右方向(幅方向)へ相対的に移動することを可能としている。また、左右方向において第三シャフト73の両端に配置される弾性部材77,77は、ベース部10Aに対する定位置から左右方向(幅方向)へ移動する第一支持部50及び第二支持部40を上記定位置に復帰させる機能を有している。
【0054】
例えば、第一支持部50又は第二支持部40がベース部10Aに対する定位置から左右方向の右側に相対的に移動した場合には、左右方向の右側に配置されている弾性部材77が圧縮される。第一支持部50又は第二支持部40は、このときの弾性部材77の反発力によってベース部10Aに対する定位置に戻される。また、例えば、第一支持部50又は第二支持部40がベース部10Aに対する定位置から左右方向の左側に相対的に移動した場合には、左右方向の左側に配置されている弾性部材77が圧縮される。第一支持部50又は第二支持部40は、このときの弾性部材77の反発力によってベース部10Aに対する定位置に戻される。この変形例に係る構成の天井搬送車1では、昇降装置10を介してFOUP90に伝達される前後方向及び左右方向の両方の振動を低減することができる。
【0055】
また、上記実施形態の天井搬送車1のベース部10Aに対して第一支持部50の走行方向における相対移動を可能にする構成(第二シャフト72及び弾性部材76,76)及び第二支持部40の走行方向における相対移動を可能にする構成(第一シャフト71及び弾性部材75,75)を備える構成に代えて、上述の変形例の構成(弾性部材77)を備える構成としてもよい。この変形例に係る構成の天井搬送車1では、昇降装置10を介してFOUP90に伝達される左右方向の振動を低減することができる。
【0056】
上記実施形態及び変形例では、弾性部材48,58,75,76,77の例としてコイルバネを例に挙げて説明したが、例えばシリコーン樹脂等によって形成されるゲル状の弾性体を配置してもよい。この場合であっても、コイルバネと同様に振動及び衝撃を吸収することができる。
【0057】
上記実施形態及び変形例では、第一支持部50は左右方向において昇降装置10の右側に設けられ、第二支持部40は左右方向において昇降装置10の左側に設けられる例を挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、左右方向において第一支持部50と第二支持部40との位置を入れ替えた構成の天井搬送車1であってもよい。また、例えば、左右方向の両側に第一支持部50又は第二支持部40を配置する等、ベルト9とベース部10Aとを接続する支持部の構成は、互いに同じであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…天井搬送車、2…走行レール(軌道)、9…ベルト(吊持部材)、10…昇降装置(昇降部)、10A…ベース部、11…保持装置(把持部)、40…第二支持部、48…弾性部材(第二緩衝部)、50…第一支持部、58…弾性部材(第一緩衝部)、70…リンク機構、71…第一シャフト(第三緩衝部)、72…第二シャフト(第三緩衝部)、73…第三シャフト(第四緩衝部)、75…弾性部材(第三緩衝部)、76…弾性部材(第三緩衝部)、77…弾性部材(第四緩衝部)、90…FOUP(物品)。
図1
図2
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図7
図8