(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】バイオ化成品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/48 20060101AFI20230801BHJP
C12P 1/02 20060101ALI20230801BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20230801BHJP
【FI】
C12P7/48
C12P1/02 Z
C12P21/00 Z
(21)【出願番号】P 2023510441
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2022040763
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2022055346
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】吉川 修
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/053364(WO,A1)
【文献】特開2009-254311(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159818(WO,A1)
【文献】KUMNEADKLANG, Sureeporn,Development of bioethanol production process from oil palm trunk with ethanol membrane separation,DSpace/Manakin Repository [online],2019年,[retrieved on 2022-12-11],Retrieved from the Internet: <URL: http://ir.tsu.ac.th/xmlui/123456789/225>
【文献】本田裕樹 ほか,1Fp19 グリセロールを炭素源としたAspergillus nigerの半固体培養によるクエン酸生産,日本生物工学会大会講演要旨集,2009年08月25日,第61回,p. 72
【文献】THEGARATHAH, P. et al.,Bio-remediation of palm oil mill effluent (POME) using Aspergillus niger immobilized on coconut husk,IOP Conference Series: Materials Science and Engineering,2020年,Vol. 778,012131
【文献】NWUCHE, Charles O. et al.,Lipase Production from Palm Oil Mill Effluent by Aspergillus terreus Immobilized on Luffa Sponge,Journal of Applied Sciences,2013年,Vol. 13,pp. 5661-5671
【文献】小熊崇大 ほか,パーム産業における未利用バイオマスの有効利用と最適なプロセス開発,IHI技報,2019年,Vol. 59,No. 4,pp. 77-89
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半固体培地で微生物を培養してバイオ化成品を生成するバイオ化成品の製造方法であって、
前記バイオ化成品の製造方法は、第1リグノセルロースバイオマスからペレットを製造するペレット製造工程を含み、
前記バイオ化成品の製造方法は、液体培地と、担体とを接触させることによって
前記半固体培地を生成
する工程を含み、
前記バイオ化成品の製造方法は、前記第1リグノセルロースバイオマスからペレットを製造する
前記ペレット製造工程で
前記第1リグノセルロースバイオマスから前記液体培地を生成
する工程を含み、
前記バイオ化成品の製造方法は、第2リグノセルロースバイオマスから
前記担体を生成
する工程を含み、
前記半固体培地は、前記第1リグノセルロースバイオマスからペレットを製造するペレット製造工程で得られた前記第1リグノセルロースバイオマス由来の成分を含む前記液体培地と、前記液体培地と接触し、前記第2リグノセルロースバイオマス由来の前記担体とを含み、
前記第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は、前記第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖及び前記第1リグノセルロースバイオマスの油脂から生成されたグリセロールの少なくともいずれか一方を含み、
液体培地が吸着された担体の間には空隙が形成されており、
第1リグノセルロースバイオマスは、果実が取り除かれたオイルパームを含む、バイオ化成品の製造方法。
【請求項2】
前記第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は窒素、リン及びカリウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む、請求項1に記載のバイオ化成品の製造方法。
【請求項3】
前記担体は、果実が取り除かれたオイルパーム、バガス、ワラ、ミカン果皮、リンゴ果皮及びリンゴ芯部からなる群より選択される少なくとも1種から得られた繊維材料を含む、請求項1又は2に記載のバイオ化成品の製造方法。
【請求項4】
前記担体は前記ペレット製造工程で得られた第1リグノセルロースバイオマス由来の繊維材料を含む、請求項
1又は2に記載のバイオ化成品の製造方法。
【請求項5】
前記ペレットは前記微生物の培養後に殺菌された前記担体を含む、請求項
1又は2に記載のバイオ化成品の製造方法。
【請求項6】
前記バイオ化成品はクエン酸を含む、請求項
1又は2に記載のバイオ化成品の製造方法。
【請求項7】
前記微生物は菌糸を有する、請求項
1又は2に記載のバイオ化成品の製造方法。
【請求項8】
前記液体培地は前記第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖液を膜分離によって濃縮して得られた濃縮液を含む、請求項
1又は2に記載のバイオ化成品の製造方法。
【請求項9】
前記バイオ化成品は、有機酸、タンパク質、又はホルモンを含む、請求項1又は2に記載のバイオ化成品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイオ化成品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑制するため、天然ガスのような化石資源に代え、バイオマスのような再生可能エネルギーの利用が促進されている。
【0003】
特許文献1には、ストレプトマイセス属のバクテリア細胞を、有機性廃棄物若しくは残渣又はそれらの混合物を炭素源及び/又は栄養源として含む培地中で培養し、細胞又は培養培地から脂質を回収する方法が開示されている。回収された脂質は、バイオ燃料又は潤滑剤のために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パーム油はオイルパームの果実から採取される植物油であり、食品及び燃料などの多くの用途に利用されている。一方、従来、オイルパームから果実が取り除かれた後に残るパーム古木(OPT:Oil Palm Trunk)、パーム空果房(EFB:Empty Fruit Bunch)、剪定枝葉(OPF:Oil Palm Frond)及び中果皮繊維(MCF:Mesocarp Fiber)などのようなリグノセルロースバイオマスは廃棄処理されていた。これらのようなリグノセルロースバイオマスをペレットにして利用することも模索されているが、ペレット製造工程で用いられるリグノセルロースバイオマスをさらに有効利用することが求められている。
【0006】
そこで、本開示は、ペレット製造工程で得られたリグノセルロースバイオマス由来の原料を用いて化成品を生成することが可能なバイオ化成品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るバイオ化成品の製造方法は、半固体培地で微生物を培養してバイオ化成品を生成する。半固体培地は、第1リグノセルロースバイオマスからペレットを製造するペレット製造工程で得られた第1リグノセルロースバイオマス由来の成分を含む液体培地と、液体培地と接触し、第2リグノセルロースバイオマス由来の担体とを含む。第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は、第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖及び第1リグノセルロースバイオマスの油脂から生成されたグリセロールの少なくともいずれか一方を含む。
【0008】
第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は窒素、リン及びカリウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。
【0009】
担体は、果実が取り除かれたオイルパーム、バガス、ワラ、ミカン果皮、リンゴ果皮及びリンゴ芯部からなる群より選択される少なくとも1種から得られた繊維材料を含んでいてもよい。
【0010】
担体はペレット製造工程で得られた第1リグノセルロースバイオマス由来の繊維材料を含んでいてもよい。
【0011】
ペレットは微生物の培養後に殺菌された担体を含んでいてもよい。
【0012】
バイオ化成品はクエン酸を含んでいてもよい。
【0013】
微生物は菌糸を有していてもよい。
【0014】
液体培地は第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖液を膜分離によって濃縮して得られた濃縮液を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ペレット製造工程で得られたリグノセルロースバイオマス由来の原料を用いて化成品を生成することが可能なバイオ化成品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るバイオ化成品の製造方法の概要を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るバイオ化成品の製造方法の概要を示す図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るバイオ化成品の製造方法の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係るバイオ化成品の製造方法について、
図1を用いて説明する。本実施形態に係るバイオ化成品の製造方法では、半固体培地で微生物を培養してバイオ化成品を生成する。半固体培地は、液体培地と担体とを含んでいる。本実施形態では、液体培地及び担体の原料としてリグノセルロースバイオマスを用いることにより、これまで廃棄処理されていたような物質を、天然の培養培地として利用することができる。そのため、資源を有効利用するとともに、廃棄処理に必要な設備の削減やエネルギーの低減が可能になる。
【0019】
液体培地は、第1リグノセルロースバイオマスからペレットを製造するペレット製造工程S10で得られた第1リグノセルロースバイオマス由来の成分を含んでいる。このような成分を液体培地に用いることにより、ペレット製造工程S10で廃棄処理されていた廃棄物を有効利用することができる。
【0020】
第1リグノセルロースバイオマスは、リグノセルロースを含むバイオマスである。リグノセルロースは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいる。第1リグノセルロースバイオマスは、草木バイオマス、その加工物及び廃棄物からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。草木バイオマスは、草本バイオマス及び木本バイオマスの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。草本バイオマスは、オイルパーム、イネ、ムギ、バナナ、サトウキビ、トウモロコシ、キャッサバ、サゴ椰子、ニッパ椰子、ヤムイモ、ソルガム及び馬鈴薯からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。木本バイオマスは、スギ、ヒノキ、マツ、ユーカリ、ブナ、リンゴ及びミカンからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0021】
第1リグノセルロースバイオマスは、果実が取り除かれたオイルパームを含んでいてもよい。具体的には、第1リグノセルロースバイオマスは、パーム古木、オイルパームのパーム空果房、オイルパームの剪定枝葉及びオイルパームの中果皮繊維からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0022】
[ペレット製造工程S10]
次に、ペレット製造工程S10の詳細について説明する。ペレット製造工程S10は、破砕工程S11と、搾汁工程S12と、抽出工程S13と、摩砕工程S14と、脱水工程S15と、乾燥工程S16と、成形工程S17とを含んでいる。本実施形態では、破砕工程S11、搾汁工程S12、抽出工程S13、摩砕工程S14、脱水工程S15、乾燥工程S16、及び成形工程S17はこの順番で実施される。
【0023】
破砕工程S11では、第1リグノセルロースバイオマスを破砕する。これにより、第1リグノセルロースバイオマスを搾汁工程S12に適した形状にすることができる。例えば第1リグノセルロースバイオマスがパーム古木である場合、丸太状のパーム古木を最大寸法2.0~8.0cm程度のチップに破砕してもよい。なお、破砕後のパーム古木の最大寸法は3cm以上であってもよい。また、破砕後のパーム古木の最大寸法は5cm以下であってもよい。破砕工程S11により、繊維状のリグノセルロースバイオマスだけでなく、パーム古木のようなリグノセルロースバイオマスもペレットの原料とすることができる。第1リグノセルロースバイオマスの破砕は、一般的な破砕機を用いて破砕することができる。なお、第1リグノセルロースバイオマスが繊維状リグノセルロースバイオマスである場合など、第1リグノセルロースバイオマスを破砕する必要がない場合には、破砕工程S11は実施しなくてもよい。破砕工程S11で破砕された第1リグノセルロースバイオマスは搾汁工程S12が実施される。
【0024】
搾汁工程S12は、第1リグノセルロースバイオマスを搾汁し、第1リグノセルロースバイオマスから糖液を得る工程である。搾汁工程S12では、ロータリースクリーン、遠心分離機、スクリュープレス及びフィルタープレスからなる群より選択される少なくとも1種の分離機によって第1リグノセルロースバイオマスを搾汁してもよい。搾汁工程S12で得られる糖液の糖濃度は質量比で例えば5%~15%程度である。搾汁後に残った固体分は、抽出工程S13が実施されてもよい。
【0025】
抽出工程S13では、第1リグノセルロースバイオマス中の灰分及び糖分の少なくともいずれか一方を、水を含む抽出液で抽出する。灰分は、ペレットを燃焼器で燃焼させた場合に、燃焼器に付着して燃焼器の燃焼効率を低下させる原因物質となるおそれがある。そのため、ペレットを成形する前に灰分を第1リグノセルロースバイオマスから抽出することにより、灰分の少ないペレットを製造することができる。また、抽出液は水を含んでおり、水が灰分を溶解することができるため、第1リグノセルロースバイオマスから灰分を効率よく抽出することができる。
【0026】
また、搾汁工程S12で搾汁された第1リグノセルロースバイオマスには、糖分が含まれている場合がある。第1リグノセルロースバイオマスに糖分が含まれている場合、抽出工程S13では、第1リグノセルロースバイオマスに含まれているグルコース、スクロース及びフルクトースなどの糖分を、浸透圧によって抽出液に抽出することができる。抽出液は、水道水、地下水、河川水、湖水又は純水などの淡水であってもよい。これらの水は浸透圧によって灰分又は糖分を効率よく抽出することができる。
【0027】
抽出工程S13では、水槽中の抽出液に第1リグノセルロースバイオマスを浸漬することによって灰分及び糖分を抽出してもよい。第1リグノセルロースバイオマスから抽出される灰分及び糖分は、第1リグノセルロースバイオマスを抽出液に接触させる時間が長い程多くなる傾向にある。第1リグノセルロースバイオマスの抽出液への浸漬時間は、10分以上であってもよい。浸漬時間の上限は特に限定されないが、浸漬時間は24時間以下であってもよく、12時間以下であってもよく、3時間以下であってもよい。装置が大きくなるのを抑制する観点からは、浸漬時間は短い方が好ましい。抽出液の温度は例えば20℃のような常温以上40℃以下であってもよい。抽出温度を常温以上とすることで抽出効果が高くなる。また、抽出温度を40℃以下とすることで昇温のエネルギーを低減することができるとともに、冷却に必要な設備等を簡略化することができる。第1リグノセルロース1gに対する抽出液の添加量は1mL以上5mL以下であってもよい。抽出工程S13では、抽出液を第1リグノセルロースバイオマスに掛け流すことで灰分及び糖分を抽出してもよい。抽出工程S13で得られた固体分は摩砕工程S14で摩砕されてもよい。また、抽出工程S13で得られた液体分である抽出液はメタン発酵工程S18でメタン発酵の原料として用いられてもよい。
【0028】
摩砕工程S14では、第1リグノセルロースバイオマスを摩砕する。第1リグノセルロースバイオマスを摩砕することにより、第1リグノセルロースバイオマスの維管束及び柔組織を破壊してスラリー状にし、脱水工程S15において第1リグノセルロースバイオマスの脱水効率を向上させることができる。
【0029】
摩砕工程S14では、第1リグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む抽出液で抽出してもよい。摩砕工程S14では、抽出工程S13と同様に、ペレットを成形する前に灰分を第1リグノセルロースバイオマスから抽出することにより、灰分の少ないペレットを製造することができる。また、摩砕工程S14では、第1リグノセルロースバイオマスに含まれている糖分を、浸透圧によって抽出液に抽出してもよい。摩砕工程S14では、第1リグノセルロースバイオマスが摩砕されて微細化されているため、灰分及び糖分を効率的に抽出することができる。抽出液は、上述したように、水道水、地下水、河川水、湖水又は純水などの淡水であってもよい。抽出液の温度は例えば20℃のような常温℃以上40℃以下であってもよい。
【0030】
摩砕工程S14では、石臼式摩砕機で第1リグノセルロースバイオマスを摩砕してもよい。石臼式摩砕機を用いることにより、第1リグノセルロースバイオマスを微細に摩砕することができる。石臼式摩砕機は、上部グラインダと、下部グラインダとを含んでいてもよい。上部グラインダと下部グラインダとはクリアランスを挟んで対向して配置されており、上部グラインダ及び下部グラインダのいずれか一方は回転可能に設けられていてもよい。上部グラインダ及び下部グラインダは中央部に開口部を有した円環形状をしていてもよい。第1リグノセルロースバイオマスが円環中央の開口部から供給されると、第1リグノセルロースバイオマスは上部グラインダ及び下部グラインダのいずれか一方の回転によってクリアランス内で摩砕されながら、円環の外周縁側から摩砕物として排出されてもよい。クリアランスは、50μm以上1000μm以下であってもよい。
【0031】
摩砕は湿式摩砕であってもよく、乾式摩砕であってもよい。湿式摩砕の場合、第1リグノセルロースバイオマスと抽出液の混合物を摩砕することにより、第1リグノセルロースバイオマスを摩砕によって微細化するとともに抽出液によって灰分及び糖分を抽出することができる。湿式摩砕の場合、第1リグノセルロースバイオマスに対する抽出液の添加量は質量比で1以上5以下であってもよい。また、第1リグノセルロースバイオマスは、連続的に摩砕してもよく、断続的に摩砕してもよい。
【0032】
脱水工程S15では、第1リグノセルロースバイオマスの固体分と、灰分及び糖分を含む液体分である抽出液とが分離される。脱水後の第1リグノセルロースバイオマスの水分含有率は40質量%以上60質量%以下であってもよい。脱水工程S15では、ロータリースクリーン、遠心分離機、スクリュープレス及びフィルタープレスからなる群より選択される少なくとも1種の分離機を用いて抽出液を分離してもよい。固体分には、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンからなる群より選択される少なくとも一種が含まれている。また、液体分には、灰分及び糖分が含まれている。脱水工程S15で得られた固体分である第1リグノセルロースバイオマスは乾燥工程S16で乾燥されてもよい。また、脱水工程S15で得られた液体分である抽出液はメタン発酵工程S18でメタン発酵の原料として用いられてもよい。
【0033】
乾燥工程S16では、第1リグノセルロースバイオマスを乾燥する。乾燥工程S16では、例えば第1リグノセルロースバイオマスの水分含有率が10質量%以上20質量%以下程度となるように第1リグノセルロースバイオマスを乾燥する。第1リグノセルロースバイオマスの水分含有率を上記の範囲内とすることにより、成形工程S17で第1リグノセルロースバイオマスからペレットを容易に成形することができる。乾燥工程S16における乾燥温度は、例えば100℃前後であってもよい。また、乾燥工程S16における乾燥時間は、例えば気流乾燥では1~2分、ドラム乾燥では10~15分であってもよい。
【0034】
なお、ペレット中の灰分の影響が小さい場合、抽出工程S13、摩砕工程S14及び脱水工程S15は実施しなくてもよい。また、第1リグノセルロースバイオマスの水分含有率が十分に小さい場合、乾燥工程S16は実施しなくてもよい。
【0035】
成形工程S17では、乾燥工程S16で乾燥された第1リグノセルロースバイオマスをペレットに成形する。成形工程S17で成形されたペレットは持ち運びが容易になるため、市場への流通性が向上する。成形工程S17では、ペレタイザを用いて第1リグノセルロースバイオマスをペレット状に加圧成形してもよい。成形工程S17で得られたペレットは、固体燃料として用いられてもよく、成形体を成形するための素材として用いられてもよい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係るペレット製造工程S10によってペレットを製造することができる。また、上述したように、抽出工程S13で得られた液体分である抽出液、及び脱水工程S15で得られた液体分である抽出液はメタン発酵工程S18でメタン発酵の原料として用いられてもよい。
【0037】
メタン発酵工程S18では、メタン菌などの微生物の作用により、糖分を含む抽出液からメタン及び二酸化炭素を含むバイオガスが生成される。また、メタン発酵工程S18では、バイオリアクタにおけるメタン発酵によって、消化液も生成される。消化液は、公知の活性汚泥処理方法によって処理することができる。メタン発酵工程S18で生成されたバイオガスに含まれるメタンを燃料として発電してもよい。発電によって得られた電力は、バイオ化成品の製造における駆動エネルギーとして用いてもよい。
【0038】
上述したように、本実施形態に係るバイオ化成品の製造方法では、半固体培地で微生物を培養してバイオ化成品を生成する。半固体培地は、液体培地と担体とを含んでいる。液体培地は、第1リグノセルロースバイオマスからペレットを製造するペレット製造工程S10で得られた第1リグノセルロースバイオマス由来の成分を含んでいる。
【0039】
第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は、第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖及び第1リグノセルロースバイオマスの油脂から生成されたグリセロールの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。すなわち、第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は、第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖又は第1リグノセルロースバイオマスの油脂から生成されたグリセロールのいずれか一方を含んでいてもよい。また、第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は、第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖及び第1リグノセルロースバイオマスの油脂から生成されたグリセロールを含んでいてもよい。
【0040】
第1リグノセルロースバイオマス由来の成分が第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖を含む場合、ペレット製造工程S10で生成される搾汁液などの糖液を微生物の炭素源として有効利用することができる。糖は、単糖、二糖、オリゴ糖、及び多糖からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。単糖は、グルコース、フルクトース、マンノース及びキシロースからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。二糖は、セロビオース及びキシロビオースの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。オリゴ糖は、3~20の単糖を含んでおり、マルトトリオース、ラフィノース及びスタキオースからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。多糖は20を超える単糖を含んでおり、水溶性デンプン及びキシランの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。
【0041】
第1リグノセルロースバイオマス由来の成分がグリセロールを含む場合、これまで廃棄処理されていたグリセロールを有用物質に転換することができる。例えばオイルパームのパーム空果房には多くの油脂が含まれており、この油脂からバイオディーゼルを生成することができる。油脂からバイオディーゼルを生成する場合、バイオディーゼルの生成過程において、グリセロールが副生成物として生成される。一方、グリセロールからクエン酸などのようなバイオ化成品を生成する微生物が存在する。そのため、グリセロールを含む液体培地を用いて微生物を培養することにより、バイオディーゼルの副生成物であるグリセロールからバイオ化成品を生成することができる。
【0042】
第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は、窒素、リン及びカリウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。これらの元素は、微生物の生育の促進に寄与し、バイオ化成品の高い生産性が期待できる。また、第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は、有機酸及び油脂の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。これらの化合物も、微生物の生育の促進に寄与し、バイオ化成品の高い生産性が期待できる。
【0043】
第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は、本実施形態においては、搾汁工程S12で得られた搾汁液である。第1リグノセルロースバイオマス由来の成分が第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖を含む場合、搾汁工程S12で得られた搾汁液の原液を液体培地として直接用いてもよいが、搾汁液を原液として濃縮工程S19で濃縮してもよい。
【0044】
濃縮工程S19は、第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖液を濃縮する工程である。具体的には、濃縮工程S19は、搾汁工程S12で得られた搾汁液のような糖液を濃縮して濃縮液を得る工程である。これにより、搾汁工程S12で得られた搾汁液よりも糖濃度が高い濃縮された糖液が得られるため、糖液が腐敗するのを抑制することができる。濃縮された糖液の糖濃度は質量比で20%以上であってもよく、25%以上であってもよい。濃縮された糖液の糖濃度の上限は特に限定されないが、糖濃度は例えば重量比で90%以下であってもよく、60%以下であってもよく、30%以下であってもよい。糖濃度の測定方法については後述する。
【0045】
液体培地は第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖液を膜分離によって濃縮して得られた濃縮液を含んでいてもよい。これにより、糖液から濃縮液を連続的に得ることができるため、濃縮液の生成効率を向上させることができる。膜分離では、逆浸透膜(RO膜)を用いて糖液を濃縮してもよい。また、逆浸透膜を用いて糖液を濃縮する前に、限外濾過膜(UF膜)を用いて糖液をろ過してもよい。これにより、粒子径の大きい粒子を取り除くと共に、第1リグノセルロースバイオマス中のリグニンを除去することができるため、微生物によるバイオ化成品の高い生産性が期待できる。ただし、糖液の濃縮は、膜分離に限らず、真空蒸発濃縮、加熱濃縮、真空濃縮、及び凍結濃縮などの方法により実施してもよい。濃縮液の一部はメタン発酵工程S18でメタン発酵の原料として用いられてもよい。
【0046】
液体培地は、液体培地と接触し、第2リグノセルロースバイオマス由来の担体を含んでいる。このような担体を、微生物を培養する際の足場材として利用することにより、微生物によるバイオ化成品の高い生産性が期待できる。担体は繊維材料を含んでいてもよい。担体が繊維材料を含んでいることにより、微生物が担体を足場材として利用しやすくなる場合がある。
【0047】
担体は、果実が取り除かれたオイルパーム、バガス、ワラ、ミカン果皮、リンゴ果皮及びリンゴ芯部からなる群より選択される少なくとも1種から得られた繊維材料を含んでいてもよい。これらの繊維材料はリグノセルロースバイオマス由来であり、かつ、容易に入手することができる。また、これらの繊維材料を用いることにより、微生物によるバイオ化成品の高い生産性が期待できる。担体は上記材料を乾燥して得られた繊維材料を含んでいてもよい。なお、上述したように、果実が取り除かれたオイルパームは、パーム古木、パーム空果房、剪定枝葉及び中果皮繊維からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。また、ワラは、イナワラ及びムギワラの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。
【0048】
担体はペレット製造工程S10で得られた第1リグノセルロースバイオマス由来の繊維材料を含んでいてもよい。従来、ペレットを製造する過程で発生した不要な第1リグノセルロースバイオマスは廃棄処理されていた。しかしながら、このような繊維材料を担体として用いることにより、第1リグノセルロースバイオマスの廃棄処理量を低減し、第1リグノセルロースバイオマスをより有効に利用することができる。
【0049】
担体は液体培地中に浸漬されていてもよく、流れる液体培地が担体に接触しながら通過してもよい。また、担体に液体培地が吸着されていてもよい。また、液体培地が吸着された担体の間には空隙が形成されていてもよい。特に、担体が繊維材料であり、繊維材料に液体培地が吸着されている場合、液体培地が吸着された繊維材料の間に複数の空隙が形成される。このような空隙により、担体の表面積が大きくなり、液体培地と空気との接触面積が大きくなることから、空気中の酸素を液体培地中に多く溶存させることができる。そのため、微生物による酸素呼吸が阻害されるのを抑制することができ、バイオ化成品の生成を促進することができる。また、液体培地を撹拌しなくても液体培地中の溶存酸素濃度が高くなりやすいことから、微生物のダメージを低減することができる。特に、菌糸を有する微生物は、強い撹拌によって菌糸が切れやすいためこのような空隙が有効となる。
【0050】
半固体培地における担体の含有量は、例えば10質量%以上30質量%以下であってもよい。担体の含有量を10質量%以上とすることにより、各担体の表面を液体培地で均一に覆うことができる。また、担体の含有量を30質量%以下とすることにより、液体培地が流れるのを抑制し、バイオ化成品の生産効率を向上させることができる。また、担体として繊維を用いた場合には、液体培地が吸着された繊維間に複数の空隙が設けられた構造を形成することができる。そのため、液体培地と空気との接触面積が多くなり、液体培地中の溶存酸素濃度を高くすることができる。バイオ化成品の生産性の観点から、担体は、繊維長の異なる複数の繊維を含んでいることが好ましい。
【0051】
培養工程S20では半固体培地で微生物を培養する。微生物の培養条件は特に限定されず、培養する微生物の特性に適した条件で培養することができる。したがって、培養温度、培養時間及び振とう速度などは微生物に適した条件に適宜設定することができる。また、微生物の培養は、連続培養、流加培養及び回分培養からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0052】
微生物は、細菌、古細菌及び真核生物からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。細菌は、例えば大腸菌及び放線菌の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。古細菌は、例えばメタン菌、好塩菌及び好熱菌からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。真核生物は、例えば菌類を含んでいてもよい。菌類は、例えば糸状菌及び酵母の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。糸状菌としては、例えば、アスペルギルス属菌、ペニシリウム属菌、アクレモニウム属菌、トリコデルマ属菌などが挙げられる。これらのような糸状菌を培養することにより、アルコール、有機酸、タンパク質及びホルモンなどのようなバイオ化成品を生成することができる。微生物は糸状菌であるコウジカビを含んでいてもよい。
【0053】
微生物は菌糸を有していてもよい。菌糸を有する微生物は、担体を足場材として菌糸を伸ばすことができる。また、このような微生物は、菌糸の先端からバイオ化成品を放出することができる。したがって、このような微生物を用いることにより、バイオ化成品の高い生産性が期待できる。菌糸を有する微生物は、糸状菌及び放線菌の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。
【0054】
ペレットは微生物の培養後に殺菌された担体を含んでいてもよい。これにより、微生物の培養後に廃棄されていた担体を再利用することができる。特に、担体が繊維材料を含む場合、ペレット製造工程S10において、ペレットの製造が容易になる。殺菌は上記乾燥工程S16において培養後の繊維材料を乾燥させることで殺菌してもよい。これにより、繊維材料の廃棄処理に必要な工程及びエネルギーを削減することができる。
【0055】
また、微生物培養後の液体培地は、メタン発酵工程S18でメタン発酵の原料として用いてもよい。これにより、微生物培養後の液体培地の廃棄処理費用を低減することができる。また、培養後の液体培地には、メタン発酵に必要な成分が残存している場合があるため、このような液体培地をメタン発酵の原料として用いることにより、資源を有効利用することができる。
【0056】
バイオ化成品は、微生物を培養して得られるものであれば特に限定されない。バイオ化成品は、クエン酸などの有機酸、抗生物質及び酵素などのタンパク質、アルコール、及びホルモンなどが挙げられる。バイオ化成品は例えば有機酸の一種であるクエン酸を含んでいてもよい。クエン酸は食品及び洗浄剤などに用いられており、近年需要が増加している物質である。クエン酸は、例えばコウジカビによって生成することができる。
【実施例】
【0057】
以下、本実施形態を実施例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
まず、ペレット製造工程S10によってパーム古木からペレットを製造した。また、ペレット製造工程S10の搾汁工程S12で得られた搾汁液を得た。搾汁液におけるグルコース及びフルクトースの糖濃度は質量比で10%であった。糖濃度はHPLC(SHIMADZU Prominence、Nexera-i)を使用して測定した。糖濃度の分析においては、Shin-pack SCR-101Hカラム(SHIMADZU、粒子径10mm、サイズ7.9mm×300mm)を使用し、溶離液としてpH2.0の過塩素酸水溶液を使用した。また、カラム温度60℃、流速0.7mL/minでPDA(フォトダイオードアレイ)検出器(UV-254nm)及びRI(示差屈折率)検出器を使用して糖濃度を分析した。
【0059】
次に、搾汁工程S12で得られた搾汁液を濃縮工程S19において逆浸透膜を用いて濃縮し、濃縮液を生成した。濃縮液におけるグルコース及びフルクトースの糖濃度は質量比で16.7%であった。糖濃度は上記と同様にして測定した。また、濃縮液のpHを測定したところ、pHは4~5であった。このようにして得られた濃縮液を液体培地として用いた。
【0060】
次に、ペレット製造工程S10の乾燥工程S16で得られた繊維状のパーム古木を担体として準備した。繊維状のパーム古木は、長さが5mm~30mm程度、直径が1mm~2mm程度の繊維であった。
【0061】
上記のようにして得られた担体3.9gをシャーレ内に入れた。そして、シャーレ内の担体に搾汁液及び濃縮液を含むOPTジュースの液体培地15mLを滴下した。担体の表面が液体培地によって十分に覆われるように担体に液体培地を吸着させ、半固体培地を作製した。担体である繊維の間には複数の空隙が形成されていた。
【0062】
次に、液体培地が吸着された担体にコウジカビの分生子を所定量接種してシャーレの蓋を閉じた。このシャーレを温度30℃で4日間培養した。
【0063】
上記培養後、コウジカビによって生成されたクエン酸の量を測定したところ、実施例1の培養方法により生成されたクエン酸の量は80.2%であった。なお、ここでいうクエン酸の量は、液体培地における糖(グルコース及びフルクトース)の重量に対するクエン酸の重量の割合を意味する。これらの結果から、半固体培地を用いることにより、クエン酸の生成量を増やすことが可能なことを確認できた。また、実施例1の培養方法により生成されたクエン酸の量は、液体培地中の糖濃度から算出される理論値よりも多く、予想以上の効果が得られることが確認できた。
【0064】
なお、コウジカビは糖からクエン酸を生成するが、グリセロールからクエン酸を生成するコウジカビも存在する。そのため、第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖だけでなく、第1リグノセルロースバイオマスの油脂から生成されたグリセロールを含む液体培地を用いた場合であっても、微生物を培養することによりバイオ化成品を生成することができると考えられる。
【0065】
また、本例では、コウジカビを用いてバイオ化成品を生成したが、本液体培地を用いて大腸菌を培養した場合においてもバイオ化成品が生成されることを確認している。
【0066】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るバイオ化成品の製造方法について、
図2を用いて説明する。本実施形態に係るバイオ化成品の製造方法は、第1実施形態に係るバイオ化成品の製造方法と比較し、液体培地を得る方法が異なっている。第1実施形態に係るバイオ化成品の製造方法では、搾汁工程S12で得られた搾汁液を濃縮工程S19で濃縮し、得られた濃縮液を液体培地として用いていた。一方、本実施形態に係るバイオ化成品の製造方法では、抽出工程S13で得られた糖を含む抽出液を濃縮工程S19で濃縮し、得られた濃縮液を液体培地として用いている。本実施形態に係る方法によっても、第1実施形態と同様にバイオ化成品を生成することができる。
【0067】
また、第1実施形態に係るバイオ化成品の製造方法では、抽出工程S13で得られた抽出液及び脱水工程S15で得られた抽出液をメタン発酵工程S18でメタン発酵の原料として用いていた。一方、本実施形態に係るバイオ化成品の製造方法では、搾汁工程S12で得られた搾汁液及び脱水工程S15で得られた糖を含む抽出液をメタン発酵工程S18でメタン発酵の原料として用いている。このような方法であってもメタン発酵によりバイオガスを生成することができる。
【0068】
なお、上記以外は第1実施形態に係るバイオ化成品の製造方法と同じであるため説明を省略する。
【0069】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るバイオ化成品の製造方法について、
図3を用いて説明する。本実施形態に係るバイオ化成品の製造方法は、第1実施形態に係るバイオ化成品の製造方法と比較し、液体培地を得る方法が異なっている。第1実施形態に係るバイオ化成品の製造方法では、搾汁工程S12で得られた搾汁液を濃縮工程S19で濃縮し、得られた濃縮液を液体培地として用いていた。一方、本実施形態に係るバイオ化成品の製造方法では、脱水工程S15で得られた糖を含む抽出液を濃縮工程S19で濃縮し、得られた濃縮液を液体培地として用いている。本実施形態に係る方法によっても、第1実施形態と同様にバイオ化成品を生成することができる。
【0070】
また、第1実施形態に係るバイオ化成品の製造方法では、抽出工程S13で得られた抽出液及び脱水工程S15で得られた抽出液をメタン発酵工程S18でメタン発酵の原料として用いていた。一方、本実施形態に係るバイオ化成品の製造方法では、搾汁工程S12で得られた搾汁液及び抽出工程S13で得られた糖を含む抽出液をメタン発酵工程S18でメタン発酵の原料として用いている。このような方法であってもメタン発酵によりバイオガスを生成することができる。
【0071】
なお、上記以外は第1実施形態に係るバイオ化成品の製造方法と同じであるため説明を省略する。
【0072】
なお、第1実施形態から第3実施形態では、搾汁工程S12で得られた搾汁液、抽出工程S13で得られた抽出液、及び脱水工程S15で得られた抽出液を濃縮工程S19で濃縮し、得られた濃縮液を液体培地として用いる例について説明した。しかしながら、バイオ化成品の製造方法はこのような形態に限定されず、搾汁工程S12で得られた搾汁液、抽出工程S13で得られた抽出液、又は、脱水工程S15で得られた抽出液を糖液として、そのまま液体培地として用いてもよい。そのため、搾汁工程S12で得られた搾汁液、抽出工程S13で得られた抽出液、脱水工程S15で得られた抽出液、及びこれらを濃縮工程S19で濃縮して得られた濃縮液からなる群より選択される少なくとも1つを混合した混合液を液体培地として用いてもよい。また、搾汁工程S12で得られた搾汁液、抽出工程S13で得られた抽出液、脱水工程S15で得られた抽出液、これらを濃縮工程S19で濃縮して得られた濃縮液、又はこれらの混合液を希釈した希釈液を液体培地として用いてもよい。
【0073】
以上説明した通り、本実施形態に係るバイオ化成品の製造方法は、半固体培地で微生物を培養してバイオ化成品を生成する。半固体培地は、第1リグノセルロースバイオマスからペレットを製造するペレット製造工程S10で得られた第1リグノセルロースバイオマス由来の成分を含む液体培地と、液体培地と接触し、第2リグノセルロースバイオマス由来の担体とを含む。第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は、第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖及び第1リグノセルロースバイオマスの油脂から生成されたグリセロールの少なくともいずれか一方を含む。
【0074】
本実施形態に係るバイオ化成品の製造方法によれば、第1リグノセルロースバイオマス及び第2リグノセルロースバイオマスを用いてバイオ化成品を生成する。また、ペレットは、ペレット製造工程S10によって第1リグノセルロースバイオマスから生成される。したがって、ペレット製造工程S10で得られたリグノセルロースバイオマス由来の原料を用いた培地から化成品を生成することができる。
【0075】
特願2022-055346号(出願日:2022年3月30日)の全内容は、ここに援用される。
【0076】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0077】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12『持続可能な生産消費形態を確保する』、目標13『気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる』、目標15『陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する』及び目標17『持続可能な開発のための実施形態を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する』に貢献することができる。
【符号の説明】
【0078】
S10 ペレット製造工程
【要約】
バイオ化成品の製造方法は、半固体培地で微生物を培養してバイオ化成品を生成するバイオ化成品の製造方法であって、半固体培地は、第1リグノセルロースバイオマスからペレットを製造するペレット製造工程(S10)で得られた第1リグノセルロースバイオマス由来の成分を含む液体培地と、液体培地と接触し、第2リグノセルロースバイオマス由来の担体とを含み、第1リグノセルロースバイオマス由来の成分は、第1リグノセルロースバイオマスから得られた糖及び第1リグノセルロースバイオマスの油脂から生成されたグリセロールの少なくともいずれか一方を含む。