(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-31
(45)【発行日】2023-08-08
(54)【発明の名称】乗客コンベアの清掃システム、移動体、および乗客コンベアの清掃方法
(51)【国際特許分類】
B66B 31/02 20060101AFI20230801BHJP
【FI】
B66B31/02 A
(21)【出願番号】P 2023515980
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2021016329
(87)【国際公開番号】W WO2022224411
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-05-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松元 響士
(72)【発明者】
【氏名】堂安 省吾
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-165085(JP,A)
【文献】特開2004-018174(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111511669(CN,A)
【文献】特開2019-001612(JP,A)
【文献】特開2000-342496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/02
B08B、A47L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に設けられた乗客コンベアの乗降口において前記乗客コンベアの移動手摺が循環移動する経路の一部に向けた清掃配置に置かれるときに前記移動手摺の循環移動によって前記移動手摺を清掃する清掃部を有する移動体に、前記乗降口まで前記施設を移動することで前記清掃部を前記清掃配置に置く清掃要求を無線信号によって送信する通信部と、
前記清掃要求を受信した前記移動体が前記清掃部を前記清掃配置に置いている間に、前記移動手摺を駆動する駆動装置に前記移動手摺を循環移動させる制御部と、
を備える乗客コンベアの清掃システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記駆動装置が前記移動手摺を循環移動させている場合に前記移動体が前記乗降口に到着するまでに前記駆動装置に前記移動手摺の循環移動を停止させ、前記移動体が前記清掃部を前記清掃配置に置いた後に前記駆動装置に前記移動手摺の循環移動を開始させる
請求項1に記載の乗客コンベアの清掃システム。
【請求項3】
前記乗客コンベアの利用状況を検出する第1検出部
を備え、
前記制御部は、前記乗客コンベアに乗っている利用者がいないことを前記第1検出部が検出した後に、前記移動手摺の循環移動を停止させる
請求項2に記載の乗客コンベアの清掃システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記乗客コンベアに乗る前の利用者がいないことを前記第1検出部が検出した後に、前記移動手摺の循環移動を停止させる
請求項3に記載の乗客コンベアの清掃システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記移動体が前記清掃部を前記清掃配置に置いたことを報告する配置報告を前記移動体からの無線信号によって前記通信部が受信した後に、前記駆動装置に前記移動手摺の循環移動を開始させる
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の乗客コンベアの清掃システム。
【請求項6】
前記移動体の状況を検出する第2検出部を備え、
前記制御部は、前記移動体が前記清掃部を前記清掃配置に置いたことを前記第2検出部が検出した後に、前記駆動装置に前記移動手摺の循環移動を開始させる
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の乗客コンベアの清掃システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記清掃要求を受信した前記移動体が前記清掃部を前記清掃配置に置いている間に、前記移動体がいる前記乗降口を出発側として前記駆動装置に前記移動手摺を循環移動させる
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の乗客コンベアの清掃システム。
【請求項8】
前記通信部は、前記清掃部が前記清掃配置に置かれている間の前記移動手摺の循環移動の継続時間が、前記移動手摺の循環時間より長く予め設定された時間を超えた後に、前記施設を移動することで前記移動手摺から離れる離脱要求を無線信号によって前記移動体に送信する
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の乗客コンベアの清掃システム。
【請求項9】
施設に設けられた乗客コンベアの乗降口において前記乗客コンベアの移動手摺が循環移動する経路の一部に向けた清掃配置に置かれるときに前記移動手摺の循環移動によって前記移動手摺を清掃する清掃部を有する移動体と、
前記移動体に、前記乗降口まで前記施設を移動することで前記清掃部を前記清掃配置に置く清掃要求を無線信号によって送信する通信部と、
前記清掃要求を受信した前記移動体が前記清掃部を前記清掃配置に置いている間に、前記移動手摺を駆動する駆動装置に前記移動手摺を循環移動させる制御部と、
を備える乗客コンベアの清掃システム。
【請求項10】
施設に設けられた乗客コンベアの乗降口において前記乗客コンベアの移動手摺が循環移動する経路の一部に向けた清掃配置に置かれるときに、前記移動手摺の循環移動によって前記移動手摺を清掃する清掃部と、
前記移動手摺の清掃要求を無線信号によって受信するときに、前記清掃部を前記清掃配置に置くように前記乗降口まで前記施設を移動する駆動力を発生させる駆動部と、
を備える移動体。
【請求項11】
前記清掃部は、前記清掃配置に置かれているときに前記移動手摺に接触し、前記清掃配置に置かれていないときに交換可能である清掃体を含む
請求項10に記載の移動体。
【請求項12】
施設に設けられた乗客コンベアの乗降口において前記乗客コンベアの移動手摺が循環移動する経路の一部に向けた清掃配置に置かれるときに前記移動手摺の循環移動によって前記移動手摺を清掃する清掃部を有する移動体に、前記乗降口まで前記施設を移動することで前記清掃部を前記清掃配置に置く清掃要求を無線信号によって送信する通信工程と、
前記清掃要求を受信した前記移動体が前記清掃部を前記清掃配置に置いている間に、前記移動手摺を駆動する駆動装置に前記移動手摺を循環移動させる制御工程と、
を備える乗客コンベアの清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアの清掃システム、移動体、および乗客コンベアの清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エスカレーターの清掃装置の例を開示する。清掃装置は、エスカレーターにおいて所定の位置に配置された清掃布を備える。清掃布は、移動手摺の循環移動によって移動手摺を清掃する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の清掃装置において、清掃布はエスカレーターに内蔵される。このため、清掃布が交換されるまでの期間が長くなる場合に、清掃布に付着した汚れがエスカレーターなどの乗客コンベアの移動手摺に再付着して不衛生となる可能性がある。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、乗客コンベアの移動手摺をより衛生的に清掃できる清掃システム、移動体、および清掃方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る乗客コンベアの清掃システムは、施設に設けられた乗客コンベアの乗降口において前記乗客コンベアの移動手摺が循環移動する経路の一部に向けた清掃配置に置かれるときに前記移動手摺の循環移動によって前記移動手摺を清掃する清掃部を有する移動体に、前記乗降口まで前記施設を移動することで前記清掃部を前記清掃配置に置く清掃要求を無線信号によって送信する通信部と、前記清掃要求を受信した前記移動体が前記清掃部を前記清掃配置に置いている間に、前記移動手摺を駆動する駆動装置に前記移動手摺を循環移動させる制御部と、を備える。
本開示に係る乗客コンベアの清掃システムは、施設に設けられた乗客コンベアの乗降口において前記乗客コンベアの移動手摺が循環移動する経路の一部に向けた清掃配置に置かれるときに前記移動手摺の循環移動によって前記移動手摺を清掃する清掃部を有する移動体と、前記移動体に、前記乗降口まで前記施設を移動することで前記清掃部を前記清掃配置に置く清掃要求を無線信号によって送信する通信部と、前記清掃要求を受信した前記移動体が前記清掃部を前記清掃配置に置いている間に、前記移動手摺を駆動する駆動装置に前記移動手摺を循環移動させる制御部と、を備える。
【0007】
本開示に係る移動体は、施設に設けられた乗客コンベアの乗降口において前記乗客コンベアの移動手摺が循環移動する経路の一部に向けた清掃配置に置かれるときに、前記移動手摺の循環移動によって前記移動手摺を清掃する清掃部と、前記移動手摺の清掃要求を無線信号によって受信するときに、前記清掃部を前記清掃配置に置くように前記乗降口まで前記施設を移動する駆動力を発生させる駆動部と、を備える。
【0008】
本開示に係る乗客コンベアの清掃方法は、施設に設けられた乗客コンベアの乗降口において前記乗客コンベアの移動手摺が循環移動する経路の一部に向けた清掃配置に置かれるときに前記移動手摺の循環移動によって前記移動手摺を清掃する清掃部を有する移動体に、前記乗降口まで前記施設を移動することで前記清掃部を前記清掃配置に置く清掃要求を無線信号によって送信する通信工程と、前記清掃要求を受信した前記移動体が前記清掃部を前記清掃配置に置いている間に、前記移動手摺を駆動する駆動装置に前記移動手摺を循環移動させる制御工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る清掃システム、移動体、または清掃方法であれば、乗客コンベアの移動手摺がより衛生的に清掃される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアの構成図である。
【
図4】実施の形態1に係る清掃システムの動作の例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る清掃システムの動作の例を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る清掃システムの動作の例を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る清掃システムの動作の例を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る清掃システムの主要部のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。なお、本開示の対象は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、または実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る乗客コンベア1の構成図である。
【0013】
乗客コンベア1は、施設に適用される。施設は、例えば屋内施設もしくは屋外施設、または複合施設などである。乗客コンベア1は、施設において利用者を乗せて輸送する装置である。この例において、施設は、複数の階床を有している。乗客コンベア1は、例えば傾斜式のエスカレーターである。乗客コンベア1は、施設の上階と下階との間において掛け渡される。このとき、乗客コンベア1は、上階および下階の間で利用者を輸送する。施設の上階側および下階側において、乗客コンベア1の乗降口2が設けられる。乗降口2は、利用者が乗客コンベア1から乗降する場所である。一方の乗降口2は、利用者が乗客コンベア1に乗り込む出発側の乗降口2である。他方の乗降口2は、利用者が乗客コンベア1から降りる到着側の乗降口2である。
【0014】
乗客コンベア1は、駆動装置3と、複数のステップ4と、一対の移動手摺5と、を備える。駆動装置3は、駆動力を発生させる装置である。駆動装置3は、例えばモータなどである。各々のステップ4は、駆動装置3が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。各々のステップ4は、出発側の乗降口2から到着側の乗降口2まで往路を移動し、到着側の乗降口2から出発側の乗降口2まで往路より下方の帰路を移動する。複数のステップ4は、往路において階段状に配置される。各々の移動手摺5は、駆動装置3が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。各々の移動手摺5は、出発側の乗降口2から到着側の乗降口2まで往路を移動し、到着側の乗降口2から出発側の乗降口2まで往路より下方の帰路を移動する。各々の移動手摺5は、可撓性を有する環状の部材からなる。各々の移動手摺5は、両側の乗降口2において円弧状に曲げられている。一方の移動手摺5は、複数のステップ4の左側に配置される。他方の移動手摺5は、複数のステップ4の右側に配置される。
【0015】
通常運転において、乗客コンベア1は、例えば一方の移動手摺5を掴みながらいずれかのステップ4の上に立ち止まっている利用者を駆動装置3が発生させる駆動力によって輸送する。このとき、各々のステップ4は、例えば予め設定された通常速度で移動する。各々の移動手摺5は、各々のステップ4に合わせた移動速度で循環移動する。なお、各々のステップ4および各々の移動手摺5の移動速度および移動方向は、乗客コンベア1の利用状況に応じて可変であってもよい。
【0016】
乗客コンベア1は、赤外線センサ6と、カメラ7と、を備える。赤外線センサ6は、赤外線によって乗客コンベア1の利用者などを検知する機器である。赤外線センサ6は、例えば、両側の乗降口2において、各々の移動手摺5の円弧状の部分の下方に配置される。カメラ7は、乗客コンベア1を撮影する機器である。この例において、2つのカメラ7が、各々の乗降口2を撮影しうる位置に配置される。また、カメラ7は、乗客コンベア1の往路を撮影しうる位置に配置されていてもよい。
【0017】
乗客コンベア1は、制御盤8を備える。制御盤8は、乗客コンベア1の動作を制御する装置である。制御盤8は、第1検出部9と、制御部10と、を備える。第1検出部9は、乗客コンベア1の利用状況を検出する部分である。乗客コンベア1の利用状況は、乗客コンベア1に乗っている利用者の有無、または乗客コンベア1に乗る前の利用者の有無などを含む。第1検出部9は、例えば、出発側の乗降口2において赤外線センサ6が利用者を検知するときに、乗客コンベア1に乗る前の利用者がいることを検出する。第1検出部9は、例えば、乗客コンベア1が休止している場合に、いずれかの乗降口2において赤外線センサ6が利用者を検知するときに、乗客コンベア1に乗る前の利用者がいることを検出する。第1検出部9は、例えば、いずれかの乗降口2に対して予め設定された範囲の利用者をカメラ7の画像に基づいて認識するときに、乗客コンベア1に乗る前の利用者がいることを検出する。第1検出部9は、例えば、乗客コンベア1の往路において利用者をカメラ7の画像に基づいて認識するときに、乗客コンベア1に乗る前の利用者がいることを検出する。制御部10は、乗客コンベア1の動作を制御する部分である。乗客コンベア1の動作は、駆動装置3の起動もしくは停止、運転速度の変更、または運転方向の切り替えなどを含む。制御部10は、例えば、乗客コンベア1が休止している場合に、乗客コンベア1に乗る前の利用者がいることを第1検出部9が検出するときに駆動装置3を起動させるなどの制御を行う。
【0018】
乗客コンベア1において、清掃システム11が適用される。清掃システム11は、乗客コンベア1の移動手摺5を清掃するシステムである。清掃システム11は、移動体12と、処理部13と、を備える。
【0019】
移動体12は、施設を移動する装置である。移動体12は、例えばロボットなどの自律移動体である。移動体12は、乗客コンベア1の清掃に用いられる。
【0020】
処理部13は、清掃システム11における乗客コンベア1側の情報処理などを担う部分である。処理部13の機能は、例えば乗客コンベア1の制御盤8に搭載される。処理部13の機能の一部または全部は、有線または無線の通信によって制御盤8に接続される1つまたは複数の装置に搭載されていてもよい。当該装置の一部または全部は、例えば施設内に配置される。あるいは、当該装置の一部または全部は、施設外に配置されてインターネットまたは電話回線網などの通信網を通じて制御盤8に接続されるものであってもよい。この例において、処理部13の機能は、乗客コンベア1の制御盤8に搭載される。処理部13は、第1検出部9および制御部10を含む。処理部13は、第1通信部14と、第2検出部15と、を備える。
【0021】
第1通信部14は、移動体12などの装置との通信を行う部分である。第1通信部14は、無線通信の機能を搭載する。第2検出部15は、移動体12の状況を検出する部分である。第2検出部15は、例えば赤外線センサ6またはカメラ7などから取得する情報などに基づいて移動体12の状況を検出する。
【0022】
図2は、実施の形態1に係る移動体12の側面図である。
【0023】
移動体12は、第2通信部16と、駆動部17と、清掃部18と、を備える。第2通信部16は、処理部13などとの通信を行う部分である。第2通信部16は、無線通信の機能を搭載する。駆動部17は、移動体12が施設を移動する駆動力を発生させる部分である。駆動部17は、例えばモータおよびタイヤなどを含む。
【0024】
移動体12は、清掃部18を備える。清掃部18は、移動手摺5を清掃する部分である。清掃部18は、例えば移動手摺5の表面に接触して清掃する清掃体19、移動手摺5の表面の塵埃を吸い込む吸引器もしくは塵埃を吹き飛ばす送風機、または移動手摺5の表面に紫外線を照射する消毒器などを含む。清掃体19は、例えば清掃布、スポンジもしくはブラシなどを含む。清掃部18は、洗剤または消毒液などの清掃液を貯留するタンク、および清掃液を清掃体19に供給する供給機構を含んでもよい。この例において、清掃体19は、交換可能である。
【0025】
移動体12は、乗客コンベア1の清掃を行うときに、清掃部18を清掃配置に置く。清掃配置は、移動手摺5が循環移動する経路の一部に清掃部18を向ける配置である。清掃配置は、例えば、移動手摺5の乗降口2において円弧状に曲げられた部分に清掃部18を向ける配置である。清掃配置は、例えば、当該円弧状の部分の下側に清掃部18を向ける配置である。清掃部18が清掃体19を含むときに、清掃配置は、清掃体19が移動手摺5の表面に接触する配置である。この例において、清掃部18は、乗降口2で移動体12が移動手摺5の円弧状の部分に乗客コンベア1の進行方向に沿って接近することで清掃配置に置かれるように、移動体12において配置されている。
【0026】
図3は、実施の形態1に係る移動体12の正面図である。
【0027】
移動体12は、表示部20を備える。表示部20は、情報を表示する部分である。表示部20は、例えば液晶ディスプレイパネルである。表示部20は、例えば移動体12が乗客コンベア1の移動手摺5を清掃している間、「清掃中」などの表示を行う。
【0028】
続いて、
図4から
図7を用いて、清掃システム11の動作の例を説明する。
図4から
図7は、実施の形態1に係る清掃システム11の動作の例を示す図である。
図4から
図7において、側方から見た乗客コンベア1が示される。
【0029】
図4に示されるように、乗客コンベア1の清掃を行っていないときに、移動体12は、予め設定された待機場所において待機している。
【0030】
乗客コンベア1の清掃は、例えば予め設定されたタイミングで行われる。予め設定されたタイミングは、例えば定期的なタイミングなどである。乗客コンベア1の清掃を行うタイミングにおいて、第1検出部9は、赤外線センサ6またはカメラ7などから取得する情報に基づいて、乗客コンベア1の利用状況を検出する。乗客コンベア1に乗っている利用者がいないことを第1検出部9が検出するときに、制御部10は、駆動装置3を停止させる。ここで、制御部10は、乗客コンベア1に乗る前の利用者がいないことを第1検出部9がさらに検出するときに、駆動装置3を停止させるものとしてもよい。
【0031】
制御部10が駆動装置3を停止させた後に、第1通信部14は、清掃要求を無線信号によって送信する。清掃要求は、移動体12に乗客コンベア1の清掃を要求する信号である。
【0032】
図5に示されるように、第1通信部14からの清掃要求を第2通信部16で受信した移動体12は、駆動部17が発生させる駆動力によって、乗客コンベア1の乗降口2まで施設を移動する。移動体12は、乗降口2に到着した後に、清掃部18が左右のいずれかの移動手摺5に対する清掃配置に置くように移動する。
【0033】
その後、
図6に示されるように、清掃部18が清掃配置に置かれた後に、移動体12の第2通信部16は、配置報告を無線信号によって送信する。配置報告は、清掃部18を清掃配置においたことを報告する信号である。このとき、移動体12は、表示部20において「清掃中」などの情報を表示してもよい。
【0034】
第2通信部16からの配置報告を第1通信部14が受信するときに、制御部10は、駆動装置3を起動させる。このとき、制御部10は、駆動装置3を通常速度より遅い低速で運転させる。また、制御部10は、移動体12のいる乗降口2が出発側となるように駆動装置3を運転させる。
【0035】
制御部10は、駆動装置3を起動させてからの経過時間が予め設定された清掃時間を超えるまで、駆動装置3の運転を継続させる。清掃時間は、例えば低速での運転における移動手摺5の循環時間などである。移動手摺5の循環時間は、移動手摺5の一周に要する時間である。清掃時間の間、清掃部18は清掃配置に置かれているので、清掃部18は循環移動する移動手摺5の全長にわたって清掃を行うこととなる。移動体12は、清掃部18が清掃体19を有する場合に、清掃体19を移動手摺5に押し当てていてもよい。
【0036】
その後、
図7に示されるように、制御部10は、駆動装置3を起動させてからの経過時間が清掃時間を超えた後に、駆動装置3を停止させる。制御部10が駆動装置3を停止させた後に、第1通信部14は、離脱要求を無線信号によって送信する。離脱要求は、移動体12に移動手摺5から離れるように要求する信号である。
【0037】
第1通信部14からの離脱要求を第2通信部16で受信した移動体12は、駆動部17が発生させる駆動力によって、乗客コンベア1の移動手摺5から離れるように施設を移動する。このとき、移動体12は、表示部20における「清掃中」などの情報の表示を終了してもよい。移動体12は、例えば、待機場所まで移動する。待機場所において、移動体12は、清掃体19の交換を行う。交換された使用済みの清掃体19は、例えば廃棄されてもよいし、清掃体19の洗浄槽などに投入されてもよい。また、待機場所において、移動体12は、充電などを行っていてもよい。
【0038】
なお、移動体12は、乗客コンベア1の乗降口2において左右の一方の移動手摺5の清掃を終了した後に、当該乗降口2において左右の他方の移動手摺5の清掃を引き続き行ってもよい。このとき、第1通信部14は、1つめの移動手摺5の清掃が終了した後に、離脱要求に換えて清掃要求を再度送信してもよい。また、移動体12は、乗客コンベア1の乗降口2において両方の移動手摺5の清掃を終了した後に、他の乗客コンベア1の移動手摺5を清掃しうるように、当該他の乗客コンベア1の乗降口2まで移動してもよい。
【0039】
また、移動体12は、乗客コンベア1の乗降口2において左右の両方の移動手摺5の清掃を行う装置であってもよい。このとき、移動体12は、清掃中の乗客コンベア1に利用者が乗り込まないように、左右の移動手摺5の間にわたるブリッジを有していてもよい。なお、清掃中の乗客コンベア1への利用者の乗込みが許容できる場合に、ブリッジは、利用者がくぐって通れる高さ、またはまたいで通れる高さのものなどであってもよい。ブリッジの高さは、可変であってもよい。このとき、ブリッジの高さは、例えば移動手摺5が循環移動していないときに利用者の通行を妨げる高さに配置され、移動手摺5が循環移動しているときに利用者の通行を妨げない高さに配置される。
【0040】
また、移動体12は、乗降口2に到着してから清掃部18を清掃配置に置くまでの間に利用者などの接近を検知するときに、当該利用者が乗降口2から乗客コンベア1に乗れるように、乗降口2から一時的に退避してもよい。
【0041】
また、乗客コンベア1は、階段状の複数のステップ4に替えて、循環移動するスロープを有するものであってもよい。乗客コンベア1は、水平式の乗客コンベアであってもよい。
【0042】
以上に説明したように、実施の形態1に係る清掃システム11は、第1通信部14と、制御部10と、を備える。第1通信部14は、清掃部18を有する移動体12に、清掃要求を無線信号によって送信する。清掃部18は、施設に設けられた乗客コンベア1の乗降口2において清掃配置に置かれるときに、移動手摺5の循環移動によって移動手摺5を清掃する。清掃配置は、乗客コンベア1の移動手摺5が循環移動する経路の一部に向けられる配置である。清掃要求は、乗降口2まで施設を移動することで清掃部18を清掃配置に置くことを要求する信号である。制御部10は、清掃要求を受信した移動体12が清掃部18を清掃配置に置いている間に、移動手摺5を駆動する駆動装置3に移動手摺5を循環移動させる。
また、実施の形態1に係る移動体12は、清掃部18と、駆動部17と、を備える。清掃部18は、清掃配置に置かれるときに、移動手摺5の循環移動によって移動手摺5を清掃する。駆動部17は、移動手摺5の清掃要求を無線信号によって受信するときに、清掃部18を清掃配置に置くように乗降口2まで施設を移動する駆動力を発生させる。
また、実施の形態1に係る乗客コンベア1の清掃方法は、通信工程と、制御工程と、を含む。通信工程は、清掃部18を有する移動体12に、清掃要求を無線信号によって送信する工程である。制御工程は、清掃要求を受信した移動体12が清掃部18を清掃配置に置いている間に、移動手摺5を駆動する駆動装置3に移動手摺5を循環移動させる工程である。
【0043】
このような構成により、移動手摺5を清掃する清掃部18は施設を移動する移動体12に搭載されているので、同じ清掃布が継続して使用され続けることによる移動手摺5への汚れまたは細菌もしくはウィルスなどの再付着などが防がれる。これにより、乗客コンベア1の移動手摺5がより衛生的に清掃されるようになる。また、移動手摺5の清掃が清掃員などの人の手を介さずに行われるので、清掃員と利用者との接触機会が抑えられる。このため、感染症が流行している状況下においても、清掃員および利用者の相互の感染リスクの増加が抑えられる。
【0044】
また、制御部10は、駆動装置3が移動手摺5を循環移動させている場合に、移動体12が乗降口2に到着するまでに駆動装置3に移動手摺5の循環移動を停止させる。制御部10は、移動体12が清掃部18を清掃配置に置いた後に、駆動装置3に移動手摺5の循環移動を開始させる。
また、清掃システム11は、第1検出部9を備える。第1検出部9は、乗客コンベア1の利用状況を検出する。制御部10は、乗客コンベア1に乗っている利用者がいないことを第1検出部9が検出した後に、移動手摺5の循環移動を停止させる。
また、制御部10は、乗客コンベア1に乗る前の利用者がいないことを第1検出部9が検出した後に、移動手摺5の循環移動を停止させる。
また、制御部10は、配置報告を移動体12からの無線信号によって第1通信部14が受信した後に、駆動装置3に移動手摺5の循環移動を開始させる。配置報告は、移動体12が清掃部18を清掃配置に置いたことを報告する信号である。
【0045】
このような構成により、移動体12は、停止している移動手摺5に対して清掃部18を清掃配置に置くようになる。このため、移動体12による清掃部18の清掃配置への位置合わせなどが容易になる。また、移動手摺5およびステップ4の循環移動は同期しているので、移動手摺5の停止中において利用者は乗客コンベア1に乗らない。このため、移動体12および利用者の接触が予防される。
【0046】
また、制御部10は、清掃要求を受信した移動体12が清掃部18を清掃配置に置いている間に、移動体12がいる乗降口2を出発側として駆動装置3に移動手摺5を循環移動させる。
【0047】
このような構成により、移動手摺5は移動体12の清掃部18から繰り出されるように循環移動するので、清掃部18への引き込みなどが予防される。
【0048】
また、第1通信部14は、清掃部18が清掃配置に置かれている間の移動手摺5の循環移動の継続時間が、移動手摺5の循環時間より長く予め設定された時間を超えた後に、離脱要求を無線信号によって移動体12に送信する。離脱要求は、施設を移動することで前記移動手摺5から離れることを要求する信号である。
【0049】
このような構成により、移動体12は、移動手摺5の循環移動によって移動手摺5の全長を清掃できるようになる。また、第1通信部14から離脱要求が送信されるので、移動体12は、移動手摺5の長さなどの情報を把握する必要がない。また、移動体12は、移動手摺5の移動速度などを監視する必要がない。これにより、移動体12をより簡易に構成できるようになる。
【0050】
また、清掃部18は、清掃体19を含む。清掃体19は、清掃部18が清掃配置に置かれているときに移動手摺5に接触する。清掃体19は、清掃配置に置かれていないときに交換可能である。
【0051】
このような構成により、移動手摺5に接触する清掃体19が交換可能になるので、清掃体19から移動手摺5への汚れなどの再付着が防がれる。これにより、乗客コンベア1の移動手摺5がより衛生的に清掃されるようになる。
【0052】
なお、清掃システム11は、第2検出部15を備えていてもよい。第2検出部15は、移動体12の状況を検出する部分である。このとき、制御部10は、移動体12が清掃部18を清掃配置に置いたことを第2検出部15が検出した後に、駆動装置3に移動手摺5の循環移動を開始させる。
【0053】
このような構成により、移動体12が清掃部18を清掃配置に置いている間、移動手摺5は停止しているようになる。このため、移動体12による清掃部18の清掃配置への位置合わせなどが容易になる。
【0054】
続いて、
図8を用いて、清掃システム11のハードウェア構成の例について説明する。
図8は、実施の形態1に係る清掃システム11の主要部のハードウェア構成図である。
【0055】
清掃システム11の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。処理回路は、プロセッサ100aおよびメモリ100bと共に、あるいはそれらの代用として、少なくとも1つの専用ハードウェア200を備えてもよい。
【0056】
処理回路がプロセッサ100aとメモリ100bとを備える場合、清掃システム11の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ100bに格納される。プロセッサ100aは、メモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、清掃システム11の各機能を実現する。
【0057】
プロセッサ100aは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ100bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどの、不揮発性または揮発性の半導体メモリなどにより構成される。
【0058】
処理回路が専用ハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
【0059】
清掃システム11の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、清掃システム11の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。清掃システム11の各機能について、一部を専用ハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、専用ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで清掃システム11の各機能を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示に係る清掃システムおよび清掃方法は、乗客コンベアの移動手摺の清掃に適用できる。本開示に係る移動体は、当該清掃システムに適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 乗客コンベア、 2 乗降口、 3 駆動装置、 4 ステップ、 5 移動手摺、 6 赤外線センサ、 7 カメラ、 8 制御盤、 9 第1検出部、 10 制御部、 11 清掃システム、 12 移動体、 13 処理部、 14 第1通信部、 15 第2検出部、 16 第2通信部、 17 駆動部、 18 清掃部、 19 清掃体、 20 表示部、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 専用ハードウェア